(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240409BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B6/12 311
G02B6/122 311
(21)【出願番号】P 2020072612
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-042225(JP,A)
【文献】特開平11-352345(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052343(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0067830(US,A1)
【文献】特表2017-504830(JP,A)
【文献】PALMER, R. et al.,Low-Loss Silicon Strip-to-Slot Mode Converters,IEEE Photonics Journal,2013年02月,Vol. 5, No. 1,pp.2200409-1 - 2200409-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット導波路と矩形導波路との間に設けられる光導波路素子であって、
テーパ部と、
前記テーパ部と前記矩形導波路との間に設けられる離間部と、を備え、
前記テーパ部は、
前記スロット導波路の一方のコアと結合する第1のコアと、
前記スロット導波路の他方のコアと結合し、前記第1のコアに平行に形成された第2のコアと、を備え、
前記離間部は、
前記第1のコアおよび前記矩形導波路に結合する第3のコアと、
前記第2のコアに結合する第4のコアと、を備え、
前記スロット導波路が設けられる側の前記テーパ部の端部である第1の端部において、前記第1のコアの断面積および前記第2のコアの断面積は互いに実質的に同じであり、
前記離間部が設けられる側の前記テーパ部の端部である第2の端部において、前記第1のコアの断面積は前記第2のコアの断面積より大きく、
前記テーパ部において、前記第1のコアの断面の形状は、前記第1の端部と前記第2の端部との間で連続的に変化し、
前記離間部において、前記第3のコアと前記第4のコアとの間隔が連続的に広くなっていく
ように、前記第4のコアが曲線導波路で形成されている
ことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
前記第4のコアの先端に光終端器をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記スロット導波路の一方のコアと前記第1の端部における前記第1のコアとの間で幅が連続的に変化する導波路、及び、前記スロット導波路の他方のコアと前記第1の端部における前記第2のコアとの間で幅が連続的に変化する導波路を更に備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記テーパ部が設けられていない側の前記離間部の端部における前記第3のコアと前記矩形導波路との間で幅が連続的に変化する導波路を更に備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記第1~第2のコアの断面の形状はそれぞれ矩形であり、
前記第1の端部の近傍かつ前記第1~第2のコアの周辺の領域に、前記第1~第2のコアと同じ材料で前記第1~第2のコアの高さより低いスラブを備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記スロット導波路のコアにはキャリアがドーピングされている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンフォトニクス技術により、小型化および/または高密度集積が可能な光集積素子の開発が進められている。シリコンフォトニクス技術においては、例えば、SOI(Silicon-On-Insulator)ウエハの表面領域に光導波路が形成される。この場合、
図1に示すように、コアは、例えばSiで形成され、クラッドは、例えばSiO2等で形成される。
【0003】
光導波路は、例えば、基板上で光信号を伝搬する光配線として使用される。この場合、コアの断面の形状は、例えば、
図1(a)に示すように矩形である。よって、以下の記載では、一般的な光導波路を矩形導波路と呼ぶことがある。
【0004】
他方、
図1(b)に示すように、並列に形成された1組のコアを含む光導波路を用いた光デバイス(例えば、光変調器)の開発が進められている。なお、以下の記載では、並列に形成された1組のコアを含む光導波路を「スロット導波路」と呼ぶことがある。
【0005】
例えば、スロット導波路を構成する2つのコアの間に、印加電圧に応じて屈折率が変化するポリマーが塗布される。そして、送信データを表す電圧信号を光導波路に印加することで、データを伝送する変調光信号が生成される。ここで、スロット導波路においては、2つのコアに挟まれた領域に光電界が集中する。このため、スロット導波路を用いた光変調器においては、電界と光との相互作用の効率が高くなる。なお、スロット導波路を用いた光変調器は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0006】
ただし、スロット導波路で曲げ半径の小さい光配線を形成すると、光損失が大きくなることがある。これに対して、矩形導波路においては、光電界がコアの内部に集中する。よって、矩形導波路で光配線を形成すれば、曲げ半径が小さい場合であっても、光がコアの外部に漏れることで生じる光損失が小さい。すなわち、光集積素子の小型化を実現するためには、矩形導波路で光配線を形成することが好ましい。
【0007】
このように、小型で効率の高い光変調器を含む光集積素子を構成する場合、基板上に矩形導波路およびスロット導波路が混在することがある。そして、このような光集積素子は、矩形導波路とスロット導波路とを結合する素子(即ち、矩形導波路とスロット導波路との間で導波路の構造を変換する素子)が必要である。なお、矩形導波路とスロット導波路との間で導波路の構造を変換するコンバータは、例えば、非特許文献2に記載されている。また、本件出願に関連する技術が特許文献1~4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-042115号公報
【文献】米国特許第9835798号
【文献】特開2007-148290号公報
【文献】米国特許第7546014号
【非特許文献】
【0009】
【文献】R. Palmer, et al., “Silicon-Organic Hybrid Electro-Optical Devices,” IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS, Vol.19, No.6, Feb.2013
【文献】R. Palmer, et al., “Low-Loss Silicon Strip-to-Slot Mode Converters,” IEEE Photonics Journal, Vol.5, No.1, Feb.2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、矩形導波路とスロット導波路との間で導波路の構造を変換するコンバータが提案されている。ただし、従来のコンバータでは、高次モード成分が伝搬するおそれがある。例えば、スロット導波路を伝搬する光を矩形導波路に導くケースでは、高次モード成分が高い効率で矩形導波路に伝搬するおそれがある。
【0011】
本発明の1つの側面に係わる目的は、矩形導波路とスロット導波路とを結合する光導波路素子において高次モード成分を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様に係わる光導波路素子は、スロット導波路と矩形導波路との間に設けられ、テーパ部と、前記テーパ部と前記矩形導波路との間に設けられる離間部と、を備える。前記テーパ部は、前記スロット導波路の一方のコアと結合する第1のコアと、前記スロット導波路の他方のコアと結合し、前記第1のコアに平行に形成された第2のコアと、を備える。前記離間部は、前記第1のコアおよび前記矩形導波路に結合する第3のコアと、前記第2のコアに結合する第4のコアと、を備える。前記スロット導波路が設けられる側の前記テーパ部の端部である第1の端部において、前記第1のコアの断面積および前記第2のコアの断面積は互いに実質的に同じである。前記離間部が設けられる側の前記テーパ部の端部である第2の端部において、前記第1のコアの断面積は前記第2のコアの断面積より大きい。前記テーパ部において、前記第1のコアの断面の形状は、前記第1の端部と前記第2の端部との間で連続的に変化する。前記離間部において、前記第3のコアと前記第4のコアとの間隔が連続的に広くなっていく。
【発明の効果】
【0013】
上述の態様によれば、矩形導波路とスロット導波路とを結合する光導波路素子において高次モード成分が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】矩形導波路およびスロット導波路の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係わる光集積素子の一例を示す図である。
【
図4】スロット導波路と矩形導波路とを結合するコンバータの一例を示す図である。
【
図5】
図4に示すコンバータにTE1成分が入力されたときの電界についてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係わるコンバータの一例を示す図である。
【
図7】コンバータの導波路を介して伝搬する光に対する実効屈折率を説明する図である。
【
図8】基本モードTE0の電界分布の例を示す図である。
【
図9】高次モードTE1の電界分布の例を示す図である。
【
図10】
図6に示すコンバータにTE1成分が入力されたときの電界についてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】基本モード成分TE0の損失および波長依存性を示す図である。
【
図12】上部クラッドの構成のバリエーションを示す図である。
【
図13】コアの断面の形状のバリエーションを示す図である。
【
図15】導波路の幅を変換する機能を備えるコンバータの一例を示す図である。
【
図16】スロット導波路がスラブを有するときのコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図17】キャリアがドーピングされたスロット導波路と矩形導波路とを結合するコンバータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係わる光集積素子の一例を示す。この実施例では、光集積素子100は、マッハツェンダ型光変調器を備える。ただし、光集積素子100は、他の光デバイスを備えてもよい。
【0016】
マッハツェンダ型光変調器は、入力光導波路、上アーム光導波路、下アーム光導波路、および出力光導波路を含む。上アーム光導波路および下アーム光導波路は、互いに並列に形成されている。入力CW光は、入力光導波路から上アーム光導波路および下アーム光導波路に導かれる。上アーム光導波路および下アーム光導波路の近傍には、それぞれ不図示の信号電極が設けられている。上アーム光導波路および下アーム光導波路を伝搬するCW光は、それぞれ、信号電極に印加される信号により位相が制御される。上アーム光導波路および下アーム光導波路から出力される光信号は、出力光導波路において合流する。この結果、変調光信号が生成される。
【0017】
上記構成の光集積素子100において、入力光導波路および出力光導波路は、それぞれ
図1(a)に示す矩形導波路で形成される。また、上アーム光導波路および下アーム光導波路は、それぞれ
図1(b)に示すスロット導波路で形成される。よって、光集積素子100は、
図2に示すように、矩形導波路とスロット導波路とを結合する光導波路素子(即ち、矩形導波路とスロット導波路との間で導波路の構造を変換する光導波路素子)を備える。以下の記載では、この光導波路素子を「コンバータ1」と呼ぶことがある。
【0018】
図3は、コンバータ1の機能を説明する図である。コンバータ1は、スロット導波路と矩形導波路との間に設けられる。
図3に示す例では、コンバータ1は、スロット導波路を伝搬する光を矩形導波路に導く。ただし、コンバータ1は、矩形導波路を伝搬する光をスロット導波路に導く構成であってもよい。
【0019】
コンバータ1は、光損失が小さいことが好ましい。特に、WDM(波長分割多重)信号を伝送する光通信システムにおいて使用される場合、コンバータ1は、広い帯域に渡って光損失が小さいことが好ましい。
【0020】
スロット導波路は、
図1(b)に示すように、並列に形成された2つのコアから構成される。このため、スロット導波路は、通常、2つの導波モード(基本モードおよび高次モード(1次の高次モード))を有するマルチモード導波路である。ここで、2つのコアの間の領域に光電界が集中するモードは、基本モードである。基本モードは、偶モードと呼ばれることもある。1次の高次モードは、奇モードと呼ばれることもある。
【0021】
尚、マルチモード導波路においては、導波路構造の製造誤差(例えば、コアの側壁荒れにより、光の進行方向に沿って導波路幅がランダムに変化する誤差)に起因して、基本モードと高次モードとの間で変換が生じることがある。また、EO(Electro-Optical)ポリマーの塗布のむら等に起因して、光の進行方向に垂直な断面において不連続境界を有する場合も、基本モードと高次モードとの間で変換が生じることがある。
【0022】
他方、光信号を伝搬させる光導波路(例えば、矩形導波路)において基本モード成分および高次モード成分が存在する場合、導波路構造の製造誤差等に起因して、高次モードが基本モードに変換することがある。そうすると、本来の基本モード成分と変換により発生した基本モード成分とが干渉する。この場合、通信品質が低下してしまう。したがって、コンバータ1は、
図3に示すように、スロット導波路で生じた高次モードを、矩形導波路へ伝搬させない機能を有することが望まれる。
【0023】
図4は、スロット導波路と矩形導波路とを結合するコンバータの一例を示す。この例では、コンバータは、スロット導波路を伝搬する光を矩形導波路に導く。
【0024】
コンバータは、領域Xおよび領域Yにわたって形成される。また、コンバータは、導波路11および導波路12から構成される。なお、以下の記載において、「導波路11」は導波路11のコアを意味することがある。また、「導波路12」は導波路12のコアを意味することがある。
【0025】
導波路11および導波路12は、
図4に示す端部A-Aにおいて、スロット導波路を構成する1組の光導波路に結合される。ここで、端部A-Aにおいて、導波路11の断面の形状および導波路12の断面の形状は、互いに同じである。他方、端部B-Bにおいて、導波路11は、矩形導波路に結合される。ここで、端部B-Bにおける導波路11の断面の面積は、端部A-Aにおける導波路11の断面の面積より大きい。具体的には、端部B-Bにおける導波路11の断面の幅は、端部A-Aにおける導波路11の断面の幅より大きい。なお、導波路11の形状は、領域Xにおいて連続的に変化する。具体的には、導波路11の幅は、領域Xにおいて、端部A-Aから端部B-Bに向って徐々に広くなっている。なお、領域Yにおいては、導波路11の幅はほぼ一定であるが、導波路12の幅は端部B-Bに向って徐々に狭くなっている。
【0026】
上記構成のコンバータは、この実施例では、スロット導波路を伝搬する光を矩形導波路に導く。すなわち、スロット導波路からコンバータに光信号が入力される。ここで、スロット導波路からコンバータへの入力光は、基本モード成分および高次モード成分を含むものとする。
【0027】
以下の記載では、一例として、TEモード光がコンバータに入力されるものとする。TEモードは、光の進行方向に垂直であり、且つ、基板に水平な電界成分が主となる導波モードである。また、以下の記載では、TEモード光の基本モードを「TE0」と呼び、TEモード光の1次の高次モードを「TE1」と呼ぶことがある。なお、TE0は、TEモードの中で最も実効屈折率が大きい導波モードである。TE1は、TEモードの中で2番目に実効屈折率が大きい導波モードである。
【0028】
図4に示すL1(光の進行方向における領域Xの長さ)およびL2(光の進行方向における領域Yの長さ)は、TE0成分がコンバータに入力されたとときに、導波路11を介して出力されるTE0成分の損失が十分に小さくなるように設計される。この例では、L1が17μmであり、L2が5μmである。なお、各導波路11、12のコアの高さは、均一であり、220nmである。端部A-Aにおいて、各導波路11、12のコアの幅は0.26μmである。領域Xと領域Yとの境界において、導波路11のコアの幅は0.48μmである。
【0029】
図5は、
図4に示すコンバータにTE1成分が入力されたときの電界についてのシミュレーション結果を示す。
図5において、白色に近いほど正の電界が強い状態を表している。また、黒色に近いほど負の電界が強い状態を表している。すなわち、白色および黒色から構成される縞模様は、コンバータの光導波路を介してTE1成分が伝搬している状態を表している。
【0030】
コンバータに入力されたTE1成分は、
図5に示すように、領域Xおよび領域Yを介して伝搬し、端部B-Bに到達する。そして、端部B-Bに到達したTE1成分の一部は、導波路11から矩形導波路に出力される。ここで、
図5に示すシミュレーションにおいては、コンバータに入力されたTE1成分のパワーの約70パーセントが矩形導波路に出力される。
【0031】
このように、
図4に示す構成では、コンバータにおいてTE1成分は除去されない。したがって、コンバータへの入力光がTE0成分およびTE1成分を含むときには、TE0成分だけでなくTE1成分も矩形導波路に導かれてしまう。この場合、矩形導波路において、本来のTE0成分とTE1成分から変換されるTE0成分とが干渉し、通信品質が低下するおそれがある。
【0032】
なお、
図4に示すコンバータにおいてTE1成分が十分に除去されないない理由は、コンバータの出力端(即ち、端部B-B)において、導波路11および導波路12が互いに近接している構成に起因する。すなわち、導波路12は、端部B-Bにおいて、光の進行方向に対してエッジを有している。このため、端部B-Bにおいて、導波路12を介して伝搬してきたTE1成分に起因する電界が生じる。ところが、端部B-Bにおいて、導波路11および導波路12が互いに近接しているので、導波路12のエッジの近傍でTE1成分に起因して生じた電界が導波路11に到達してしまう。この結果、TE1成分の一部が矩形導波路に導かれる。
【0033】
<実施形態>
図6は、本発明の実施形態に係わるコンバータの一例を示す。
図6に示すコンバータ1は、スロット導波路と矩形導波路との間に設けられ、スロット導波路と矩形導波路とを結合する光導波路素子として使用される。この実施例では、コンバータ1は、スロット導波路を伝搬する光を矩形導波路に導く。
【0034】
なお、以下の記載では、光導波路のコアを「導波路」を呼ぶことがある。例えば、「導波路11」は、導波路11のコアを意味することがある。同様に、「導波路12」は、導波路12のコアを意味することがある。
【0035】
コンバータ1は、
図6に示すように、テーパ部2および離間部3を備える。テーパ部2は、スロット導波路に接続する。離間部3は、テーパ部2と矩形導波路との間に設けられる。
【0036】
コンバータ1は、導波路11および導波路12を備える。なお、以下の記載では、導波路11のうち、テーパ部2に形成される部分を「導波路11a」と呼び、離間部3に形成される部分を「導波路11b」と呼ぶことがある。同様に、導波路12のうち、テーパ部2に形成される部分を「導波路12a」と呼び、離間部3に形成される部分を「導波路12b」と呼ぶことがある。
【0037】
テーパ部2は、導波路11aおよび導波路12aを備える。導波路11aはスロット導波路の一方のコアの結合し、導波路12aはスロット導波路の他方のコアに結合する。ここで、導波路11aおよび導波路12aは、それぞれ直線状に形成される。また、導波路11aおよび導波路12aは、互いに平行に形成される。「平行」は、「ほぼ平行」または「実質的に平行」を含むものとする。
【0038】
離間部3は、導波路11bおよび導波路12bを備える。導波路11bの一端は導波路11aに結合し、導波路11bの他端は矩形導波路に結合する。導波路12bは、導波路12aに結合する。
【0039】
「結合」は、導波路どうし(又は、導波路のコアどうし)が光学的に結合された状態を意味する。よって、例えば「導波路Aおよび導波路Bが結合する」は、導波路Aと導波路Bとが直接的に結合または接続している状態だけでなく、導波路Aと導波路Bとが他の導波路等を介して光学的に結合している状態を含むものとする。
【0040】
スロット導波路が設けられる側のテーパ部2の端部(即ち、端部A-A)において、導波路11aのコアの断面積および導波路12aのコアの断面積は互いに実質的に同じである。この実施例では、端部A-Aにおいて、導波路11aのコアの断面の形状および導波路12aのコアの断面の形状は、互いに実質的に同じである。なお、特に限定されるものではないが、端部A-Aにおいて、導波路11aおよび導波路12aのコアの幅は0.26μmであり、高さは0.22μmである。導波路(11a、11b、12a、12b)のコアの高さは、一定である。
【0041】
離間部3が設けられる側のテーパ部2の端部(即ち、端部C-C)において、導波路11aのコアの断面積は、導波路12aのコアの断面積より大きい。具体的には、端部C-Cにおいて、導波路11aのコアの幅は、導波路12aのコアの幅より大きい。なお、特に限定されるものではないが、端部C-Cにおける導波路11aのコアの幅は0.48μmである。
【0042】
テーパ部2において、導波路11aのコアの断面の形状は、端部A-Aと端部C-Cとの間で連続的に変化する。具体的には、テーパ部2おいて、導波路11aのコアの幅が端部A-Aから端部C-Cに向って徐々に広くなっていく。これに対して、導波路12aのコアの幅は、テーパ部2内でほぼ一定である。
【0043】
なお、テーパ部2の長さL1(端部A-Aから端末C-Cまでの長さ)は、例えば、
図4を参照して説明したポリシに従って設計される。この場合、TE0成分がコンバータ1に入力されたときに、矩形導波路に出力されるTE0成分の損失が十分に小さくなるように設計される。この例では、長さL1は17μmである。
【0044】
導波路11bは、導波路11aおよび導波路11bが同じ直線上に配置されるように、離間部3に形成される。なお、導波路11bの幅は、離間部3内で一定であり、端部C-Cにおける導波路11aの幅と同じである。
【0045】
導波路12bは、離間部3において、導波路11bを伝搬する光の方向および導波路12bを伝搬する光の方向が互いに異なるように形成される。具体的には、離間部3において、導波路11bと導波路12bとの間隔が連続的に広くなっていくように、導波路11bが形成される。ここで、導波路12bは、例えば、一定の曲率を有する曲線導波路により実現される。この場合、曲率半径Rは、特に限定されるものではないが、例えば20μm程度である。曲線導波路の曲率が一定である構成は、設計が容易である。ただし、導波路12bは、他の構成で実現してもよい。例えば、導波路12bの形状は、クロソイド曲線であってもよい。この場合、導波路12aと導波路12bとの境界において曲率が連続的に変化するので、不連続点で生じる高次モード成分(例えば、TE1)の散乱による影響が小さくなる。
【0046】
図7は、コンバータ1の導波路を介して伝搬する光に対する実効屈折率を説明する図である。なお、
図7に示すグラフの横軸は、コンバータ1内での位置を表す。「位置」は、端部A-Aを基準として光の進行方向における端部A-Aからの距離を表す。ここで、端部A-Aの位置が「ゼロ」であり、端部C-Cの位置が「10」である。すなわち、横軸は、テーパ部2に長さを「10」として正規化されている。縦軸は、実効屈折率を表す。
【0047】
実効屈折率は、光の導波モードに依存する。一般に、基本モードの実効屈折率は、高次モードの実効屈折率より大きい。
図7に示す例では、TE0の実効屈折率は、TE1の実効屈折率より大きくなっている。
【0048】
また、実効屈折率は、光が伝搬する導波路の形状に依存する。例えば、光が伝搬する導波路のコアの断面積が大きいほど実効屈折率が大きくなる傾向がある。ここで、互いに隣接する1組の導波路のコアの断面の面積が異なる場合、基本モードの電界は、コアの断面の面積が大きい方の導波路に局在する傾向がある。また、コンバータ1においては、端部A-Aから離れるにつれて、導波路11aのコアの断面の面積が大きくなっていく。すなわち、基本モード成分は、端部A-Aから離れるにつれて、導波路11aの影響が支配的になる。したがって、TE0の実効屈折率は、
図7に示すように、端部A-Aから離れるにつれて、徐々に大きくなっている。
【0049】
図8は、基本モードTE0の電界分布の例を示す。
図9は、高次モードTE1の電界分布の例を示す。なお、
図8~
図9において、X軸は、基板に対して平行、且つ、光の進行方向に対して直交する方向における位置を表す。Y軸は、基板に垂直な方向における位置を表す。また、
図5に示すケースと同様に、白色に近いほど正の電界が強い状態を表し、黒色に近いほど負の電界が強い状態を表す。なお、
図8~
図9に示す矩形枠は、導波路11aおよび導波路12aの位置を表す。
【0050】
ここで、互いに隣接する1組の導波路のコアの形状が互いに同じときは、それら1組の導波路において位相整合条件が成立する。そして、1組の導波路において位相整合条件が成立するときは、導波路を伝搬する光の電界は、2つのコアに対して均等に分布する。したがって、位置ゼロ(すなわち、テーパ部2の端部A-A)においては、1組の導波路11aおよび導波路12aに対して電界が均等に分布する。具体的には、位置ゼロにおける基本モード成分TE0の電界は、
図8に示すように、2つのコアの間の領域に局在する。位置ゼロにおける高次モード成分TE1に対しては、
図9に示すように、一方のコア(ここでは、導波路12aのコア)の近傍で正の電界が強くなり、他方のコア(ここでは、導波路11aのコア)の近傍で負の電界が強くなっている。
【0051】
互いに隣接する1組の導波路のコアの形状が互いに異なるときは、1組の導波路において位相整合条件が崩れる。この場合、各導波モードの成分は、いずれか一方のコアに局在する傾向がある。具体的には、コアの断面の面積が大きい方の導波路には、実効屈折率が大きい導波モードの電界が局在する傾向がある。また、コアの断面の面積が小さい方の導波路には、実効屈折率が小さい導波モードの電界が局在する傾向がある。よって、入力光が基本モード成分TE0および高次モード成分TE1を含むときは、コアの断面の面積が大きい方の導波路に基本モードTE0の電界が局在し、コアの断面の面積が小さい方の導波路に高次モードTE1の電界が局在する。
【0052】
ここで、コンバータ1においては、端部A-Aからの距離が大きくなるにつれて、導波路11aのコアの断面の面積が徐々に大きくなっていく。一方、導波路12aのコアの断面の面積はほぼ一定である。よって、基本モードTE0の電界は、
図8に示すように、端部A-Aからの距離が大きくなるにつれて、導波路11aに局在するようになる。具体的には、位置ゼロ(テーパ部2の端部A-A)においては、白色領域(即ち、電界が強い領域)が1組のコアの間に現れるが、位置10(テーパ部2の端部C-C)においては、白色領域が導波路11aのコア内に現れる。
【0053】
高次モードTE1の電界は、
図9に示すように、端部A-Aからの距離が大きくなるにつれて、導波路12aに局在するようになる。具体的には、位置ゼロ(テーパ部2の端部A-A)においては、白色領域(即ち、正の電界が強い領域)が導波路12aのコアの近傍に現れ、黒色領域(即ち、負の電界が強い領域)が導波路11aのコアの近傍に現れる。これに対して位置10(テーパ部2の端部C-C)においては、導波路11aのコアの近傍で電界が弱くなっている。
【0054】
ここで、各モードについて、両方のコアに電界が局在する位置0から、他方のコアに電界が局在する位置10の間は、光の進行方向に沿って導波路が連続、すなわちテーパ導波路になっている。テーパ長が十分緩やかに変化するとき、ある断面におけるモードは(例えば、断面0のTE0)、別の断面における同一モード(例えば、断面10のTE0)に無視できる程度の損失で変換することが可能である。これは、一般的に「断熱変換」と呼ばれる。
【0055】
この原理により、コンバータ1への入力光が基本モード成分TE0および高次モード成分TE1を含むときは、端部C-Cにおいて、基本モード成分TE0は、導波路11aを介して出力される。したがって、導波路11aから離間部3に入力される基本モード成分TE0は、導波路11bを介して矩形導波路に導かれる。
【0056】
高次モード成分TE1のパワーの大部分は、端部C-Cにおいて、導波路12aに局在している。そして、導波路12aに局在する高次モード成分TE1は、離間部3に形成される導波路12bに導かれる。ここで、
図6に示すように、離間部3において、導波路11bと導波路12bとの間隔が連続的に大きくなっていく。そして、導波路12bの先端は、導波路11bから大きく離れている。このため、導波路12bに導かれた高次モード成分TE1の電界は、実質的に、導波路11bには届かない。したがって、矩形導波路に出力される高次モード成分TE1は僅かである。すなわち、コンバータ1への入力光が基本モード成分TE0および高次モード成分TE1を含むとき、高次モード成分TE1は、コンバータ1において除去または抑制される。
【0057】
なお、導波路11bと導波路12bの先端との間の間隔が大きいときは、矩形導波路に出力される高次モード成分TE1が小さくなる。ただし、導波路11bと導波路12bの先端との間の間隔が大きいと、コンバータ1のサイズが大きくなってしまう。よって、導波路11bと導波路12bの先端との間の間隔は、これらの要件を考慮して設計することが好ましい。
【0058】
図10は、
図6に示すコンバータ1にTE1成分が入力されたときの電界についてのシミュレーション結果を示す。
図5に示す例と同様に、
図10においても、白色に近いほど正の電界が強い状態を表している。また、黒色に近いほど負の電界が強い状態を表している。すなわち、白色および黒色から構成される縞模様は、コンバータ1を構成する光導波路を介してTE1成分が伝搬している状態を表している。
【0059】
コンバータ1に入力されたTE1成分は、
図10に示すように、テーパ部2に形成されている1組の導波路11a/12aを介して伝搬し、端部C-Cに到達する。端部C-Cにおいては、TE1成分のパワーの大部分は導波路12aに局在している。そして、このTE1成分は、離間部3に形成されている導波路12bに導かれる。ここで、導波路12bは、端部B-Bにおいてエッジ(即ち、不連続点)を有する。このため、導波路12bの先端の近傍では、TE1成分の影響が発生する。ただし、導波路12bの先端は、導波路11bから十分に離れているので、TE1成分の電界は導波路11bには到達しない。したがって、矩形導波路に出力されるTE1成分のパワーは十分に小さい。なお、シミュレーションによれば、コンバータ1にTE1成分が入力されるとき、矩形導波路に出力されるTE1成分のパワーは、コンバータ1に入力されるTE1成分のパワーに対して、-14.8dB(すなわち、約3.3パーセント)である。
【0060】
図11(a)は、コンバータ1における基本モード成分TE0の損失を示す。横軸は、テーパ部2の長さを表す。縦軸は、FDTD(Finite Difference Time Domain)法で計算した損失を表す。なお、各導波路のコアの断面の形状は、
図4に示す通りである。
【0061】
損失は、テーパ部2に形成される導波路の長さL1に依存する。具体的には、L1が長くなると損失が小さくなる。この理由は、L1が長くなると、光の進行方向において導波路11aのコアの断面の形状の変化が緩やかになる、ことに起因すると考えられる。すなわち、断熱変換が成り立つためである。この実施例では、L1が17μmになると、損失が十分に小さくなっている。よって、コンバータ1のテーパ部2の長さは17μmに設定される。
【0062】
図11(b)は、コンバータ1における基本モード成分TE0の損失の波長依存性を示す。横軸は、コンバータ1への入力光の波長を表す。縦軸は、FDTD法で計算した損失を表す。なお、各導波路のコアの断面の形状は
図4に示す通りであり、テーパ部2の長さは17μmである。
【0063】
この例では、Cバンド及びLバンドを含む広い波長範囲において、損失は0.02dB以下である。すなわち、広い波長範囲に対して低損失のコンバータが実現される。なお、光の進行方向において導波路11aのコアの断面の形状の変化が緩やかであれば、入力光の波長が変化しても、変換効率は殆ど変化しないと考えられる。また、基本モード成分TE0のパワーの一部が導波路12bに導かれるときには、導波路12bの先端部で基本モード成分TE0の電界が散乱することがある。ところが、導波路12bの先端部は、導波路11bから十分に離れている。よって、導波路12bの先端部で発生する基本モード成分TE0の電界の散乱は、矩形導波路に出力される基本モード成分TE0の損失に影響を及ぼさない。
【0064】
このように、本発明の実施形態に係わる構成によれば、スロット導波路を伝搬する基本モード成分TE0が、低損失で、矩形導波路に導かれる。すなわち、スロット導波路と矩形導波路との間で、基本モード成分TE0に対して断熱変換が実現される。また、入力光が基本モード成分TE0および高次モード成分TE1を含むときは、コンバータ1において高次モード成分TE1の伝搬が十分に抑制される。したがって、本発明の実施形態に係わる構成は、通信品質の改善に寄与する。
【0065】
<バリエーション1>
光集積素子が光変調器を含む場合、マッハツェンダ干渉計を構成する上アーム光導波路および下アーム光導波路は、それぞれスロット導波路で構成されることがある。そして、光変調器を構成するスロット導波路の近傍には、例えば、
図12(a)に示すように、EOポリマーが塗布される。すなわち、スロット導波路の上部クラッドの材料として、EOポリマーが使用されることがある。なお、
図12に表記される「EOP」は、EOポリマーを表す。
【0066】
この場合、コンバータ1を構成する光導波路の上部クラッドは、一般的な材料で形成してもよい。すなわち、コンバータ1を構成する光導波路(11、12)の上部クラッドの材料は、スロット導波路の上部クラッドの材料と異なっていてもよい。
図12(a)に示す例では、コンバータ1を構成する光導波路の上部クラッドは、下部クラッドと同様に、SiO2で形成されている。この構成を採用する場合は、製造プロセスの安定性が高いので、光集積素子の特性が安定する。なお、
図12(a)に示す例では、コンバータ1の端部で上部クラッドの材料が変わるが、他の位置で上部クラッドの材料が変わってもよい。
【0067】
本発明の実施形態は、この構成に限定されるものではない。すなわち、コンバータ1を構成する光導波路(11、12)の上部クラッドの材料は、スロット導波路の上部クラッドの材料と同じであってもよい。
図12(b)に示す例では、スロット導波路のコアにEOポリマーが塗布される場合に、コンバータ1を構成する光導波路の上部クラッドもEOポリマーで形成される。この構成を採用する場合、スロット導波路が形成される領域とコンバータ1が形成される領域との境界で屈折率が不連続になることがないので、光の導波モードが安定し、コンバータ1における損失が小さくなる。
【0068】
<バリエーション2>
コンバータ1を構成する光導波路(11、12)のコアの断面の形状は、例えば、
図13(a)に示すように、矩形である。ただし、本発明の実施形態は、この構成に限定されるものではない。例えば、コンバータ1を構成する光導波路は、
図13(b)に示すように、スラブを有するリブ導波路であってもよい。また、矩形導波路、リブ導波路などの導波路の角は、製造上生じる角の丸みを帯びていても良く、実質的にまたはほぼ直角であればよい。導波路の側壁角は基板に対して垂直となっているが、製造上生じる傾斜を持っていても良い。
【0069】
光導波路のコア/クラッドの材料は、Si/SiO2に限定されるものではなく、例えば、SiO2ベースのPLC(Planar Lightwave Circuit)導波路またはInP導波路であってもよい。ただし、Siでコアを形成し、SiO2で上部クラッドおよび下部クラッドを形成する導波路は、コアとクラッドとの間で屈折率の差が大きく、デバイスの小型化が可能なので、好ましい。
【0070】
上述の実施例では、コンバータ1はスロット導波路から矩形導波路への変換を行うが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、受動導波路の時間に対する可逆性により、本発明の実施形態に係わる構成は、矩形導波路からスロット導波路への変換も可能である。また、コンバータ1は、TEモードだけでなく、TMモードに対しても同様の機能を有する。TMモードは、光の進行方向に垂直かつ基板に垂直な方向に主電界成分を持つ導波モードである。
【0071】
上述の実施例では、離間部3において、矩形導波路に結合する導波路(すなわち、導波路11b)が直線であり、矩形導波路に結合しない導波路(すなわち、導波路12b)が導波路11bに対して離間するように形成されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、導波路12bが直線であり、導波路11bが導波路12bに対して離間する構成であってもよい。また、導波路11bおよび導波路12bが互いに離間する構成であってもよい。ただし、導波路11bは、主信号(または、基本モード成分)が伝搬するので、曲げ損失を小さくするためには、導波路11bが直線であり、導波路12bが導波路11bに対して離間する構成が好ましい。
【0072】
上述の実施例では、コアの幅を変えることでコアの断面積が調整されるが、コアの高さを変えることでコアの断面積を調整してもよいし、幅および高さの双方を変えることでコアの断面積を調整してもよい。ただし、リソグラフィおよびエッチングにより導波路のコアを形成する場合は、マスクの形状によりコアの幅が決定される。したがって、製造工程を複雑にしないためには、コアの幅を変えることでコアの断面積を調整する方法が好ましい。
【0073】
<バリエーション3>
入力光が基本モード成分TE0および高次モード成分TE1を含むときは、高次モード成分TE1は、離間部3において導波路12に導かれる。そして、この高次モード成分TE1は、導波路12の先端において反射し、テーパ部2に戻ってくることがある。戻ってきた光は、側壁荒れによって再度反射し信号光と干渉する恐れがある。また、変調器の前段にレーザーを使用する場合、戻り光により発振波長が不安定動作する恐れがある。
【0074】
そこで、コンバータ1は、
図14(a)に示すように、導波路12の先端に光終端器21を備えてもよい。この構成によれば、離間部3において導波路12を伝搬する高次モード成分TE1は、光終端器21により終端されるので、反射が抑制される。すなわち、導波路12の先端に光終端器21を設けることにより、高次モード成分を除去または抑制する能力が向上する。これは、矩形導波路からスロット導波路に変換する部分で本願を用いる場合も同様であり、任意の部分で反射した光が導波路12の先端で反射し、再度光信号と同一方向に伝搬、その後側壁荒れ等の影響でTE0に変換し、信号光と干渉する恐れがある。そのため、使用するか所に寄らず終端を備える構造は効果がある。
【0075】
なお、光終端器21は、例えば、
図14(b)に示すように、導波路12の先端をテーパ構造にすることで実現される。この場合、離間部3において導波路12のコアの幅が徐々に狭くなるように形成される。また、光終端器21は、
図14(c)に示すように、導波路12の先端に近い部分に、光を吸収する物質を高濃度にドープすることで実現してもよい。この場合、例えば、離間部3において導波路12bのコアに、光を吸収する物質が高濃度にドープされる。光を吸収する物質は、特に限定されるものではなく、公知の材料を採用することができる。或いは、光終端器21は、
図14(d)に示すように、導波路12の先端にフォトダイオード等の受光器を設けることで実現してもよい。この場合、導波路12の先端に到達する光は、電流に変換されるので、反射が抑制される。
【0076】
<バリエーション4>
コンバータ1は、上述したように、スロット導波路と矩形導波路との間に設けられる。ただし、コンバータ1を構成する導波路(R1、R2)の幅は、必ずしもスロット導波路および/または矩形導波路の幅と同じではない。そこで、コンバータ1は、導波路の幅を変換する構成を備えてもよい。
【0077】
図15に示す例では、コンバータ1は、スロット導波路とテーパ部2との間に導波路幅変換部4を備える。導波路幅変換部4は、スロット導波路とテーパ部2に形成される導波路11、12との間で連続的に幅が変化するテーパ状の光導波路により実現される。この場合、導波路幅変換部4は、スロット導波路を構成する1組の導波路の間隔と、テーパ部2に形成される導波路11、12の間隔とを整合させてもよい。また、コンバータ1は、離間部3と矩形導波路との間に導波路幅変換部5を備える。導波路幅変換部5は、離間部3に形成される導波路11と矩形導波路との間で連続的に幅が変化するテーパ状の光導波路により実現される。この構成によれば、コンバータ1は、任意の形状のスロット導波路と矩形導波路とを結合できる。なお、導波路幅変換部4、5は、コンバータ1の一部であってもよいし、コンバータ1の外に形成されてもよい。
【0078】
<バリエーション5>
スロット導波路がスラブを有し、コンバータ1を構成する各導波路11、12の断面の形状が矩形である場合、コンバータ1は、
図16に示すように、スロット導波路とテーパ部2との間にスラブ発生部6を備えてもよい。スラブは、コアと同じ材料でレールより低く形成される。スラブ発生部6は、光の進行方向においてスラブ領域が徐々に狭くなるように形成される。すなわち、スロット導波路が形成されるX1-X1断面では、横方向にスラブが広がっている。スラブ発生部6が設けられるX2-X2断面では、X1-X1断面と比較して、スラブが形成される領域が小さくなっている。そして、テーパ部2が設けられるX3-X3断面では、スラブは形成されない。このように、スラブ発生部6において光の進行方向においてスラブ領域が徐々に狭くなるように形成されると、断熱変換が実現されるので、コンバータ1の低損失化に寄与する。
【0079】
<バリエーション6>
光集積素子が光変調器を含む場合、光変調器を構成する光導波路はスロット導波路で構成されることがある。この場合、スロット導波路の各コアにキャリアがドーピングされることがある。例えば、光導波路の近傍にEOポリマーが塗布される光変調器において、EOポリマーに電圧を印加するために、コアにキャリアをドーピングして電気抵抗を小さくする構成が知られている。
【0080】
図17は、キャリアがドーピングされたスロット導波路と矩形導波路とを結合するコンバータの一例を示す。なお、
図17に示す斜線領域は、キャリアがドーピングされた領域を表している。
【0081】
コンバータ1は、上述したように、入力光が基本モード成分TE0および高次モード成分TE1を含む場合、基本モード成分TE0から高次モード成分TE1を分離して導波路12に導く。ここで、
図14に示す光終端器21が設けられていないものとすると、高次モード成分TE1は、導波路12の先端で反射してスロット導波路に導かれる。ここで、スロット導波路のコアにキャリアがドーピングされていると、スロット導波路において吸収損失が発生する。ただし、基本モード成分TE0と比較して、高次モード成分TE1は電界が広がりやすい。このため、スロット導波路のコアにキャリアがドーピングされている場合、基本モード成分TE0の損失と比較して、高次モード成分TE1の損失が大きくなる。すなわち、導波路12の先端での反射により高次モード成分TE1がスロット導波路に導かれても、その高次モード成分TE1はスロット導波路内で吸収される。
【0082】
したがって、スロット導波路にキャリアがドーピングされているときは、
図14に示す光終端器21を設けなくても、高次モード成分TE1の影響が低減される。そして、光終端器21を設けなくてもよいのであれば、導波路12の先端の構成を任意に決めることができるので、設計の自由度が高くなる。ただし、スロット導波路にキャリアがドーピングされる構成であっても、導波路12の先端に光終端器21を設けてもよい。
【0083】
なお、
図6に示す実施形態およびバリエーション1~6は、任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 コンバータ
2 テーパ部
3 離間部
4、5 導波路幅変換部
6 スラブ発生部
11(11a、11b) 導波路
12(12a、12b) 導波路
21 光終端器
100 光集積素子