(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】無線通信装置、及び、無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 76/38 20180101AFI20240409BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20240409BHJP
H04W 72/54 20230101ALI20240409BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20240409BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240409BHJP
【FI】
H04W76/38
H04W72/0453
H04W72/54
H04W16/14
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2020073345
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】川田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 豊
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073675(JP,A)
【文献】特開2018-093289(JP,A)
【文献】特開2018-201238(JP,A)
【文献】特開2019-169869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉条件を検出することにより無線接続のチャネルを変更する変更処理を行う中継装置と通信を行う無線通信装置であって、
前記中継装置との前記無線接続を確立する無線通信部と、
設定されたタイムアウト時間に基づく期間、前記無線接続による前記中継装置との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う通信制御部と、を備え、
前記通信制御部は、前記設定されたタイムアウト時間が所定時間よりも短い場合であって前記変更処理の対象とする対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合に前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くし、前記設定されたタイムアウト時間が前記所定時間以上である場合に前記タイムアウト時間に基づく前記期間を維持する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記干渉条件は、DFS(Dynamic Frequency Selection)に対応する特定周波数の前記対象チャネルにより前記無線接続が行われることであり、
前記通信制御部は、前記対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合、前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を前記中継装置が行う干渉電波の監視に必要な監視時間よりも長くする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記タイムアウト時間は、第一時間に設定され、
前記通信制御部は、前記対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合、前記タイムアウト時間を前記第一時間よりも長い第二時間に変更する、請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合、DFSの処理に要する所定時間を前記第一時間に加算することにより、前記第二時間とする、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
干渉条件を検出することにより無線接続のチャネルを変更する変更処理を行う中継装置と通信を行う無線通信装置であって、
前記中継装置との前記無線接続を確立する無線通信部と、
設定されたタイムアウト時間に基づく期間、前記無線接続による前記中継装置との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う通信制御部と、を備え、
前記無線通信部は、画像処理に使用する第一ポートと、前記画像処理に使用しない第二ポートと、を備え、
前記通信制御部は、前記第一ポートが使用される場合であって
前記変更処理の対象とする対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合に前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くし、前記第二ポートが使用される場合に前記タイムアウト時間に基づく前記期間を維持する、無線通信装置。
【請求項6】
干渉条件を検出することにより無線接続のチャネルを変更する変更処理を行う中継装置と通信を行う無線通信方法であって、
前記中継装置との前記無線接続を確立する無線通信工程と、
設定されたタイムアウト時間に基づく期間、前記無線接続による前記中継装置との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う通信制御工程と、を含み、
前記設定されたタイムアウト時間が所定時間よりも短い場合であって前記変更処理の対象とする対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合に前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くし、前記設定されたタイムアウト時間が前記所定時間以上である場合に前記タイムアウト時間に基づく前記期間を維持する、
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置と通信を行う無線通信装置、及び、無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置として、アクセスポイントを介してホスト装置から印刷指示を受信するプリンターが使用されている。プリンターは、複数のホスト装置から印刷指示を受信するため、アクセスポイントとのリンクが切断されてから所定のタイムアウト時間を経過すると無線接続を切断する処理を行い、別のホスト装置から印刷指示を受信できるようにしている。
【0003】
また、近年のプリンターは、5GHz帯の無線通信をサポートしている機種がある。5GHz帯の無線通信は、IEEE802.11hに準拠している。ここで、IEEEは、Institute of Electrical and Electronic Engineersの略称である。IEEE802.11hに定められた無線LAN規格は、気象レーダー等で用いられる特定周波数のレーダー電波の検出により、特定周波数以外のチャネルを用いるよう変更するDFSを義務づけている。ここで、LANはLocal Area Networkの略称であり、DFSはDynamic Frequency Selectionの略称である。DFSを義務づけているのは、主に気象観測用として使われているCバンドレーダーへの悪影響を避けるためである。5GHz帯では、W53及びW56のチャネル帯がDFSの対象である。従って、5GHz帯の無線通信を行うアクセスポイントは、W53及びW56のチャネル帯に含まれるチャネルを使用する場合、レーダー等で用いられる周波数の電波を監視し、特定周波数のレーダー電波の検出処理を行っている間は、特定周波数帯のチャネルを無線通信に使用することを停止しなければならない。
【0004】
特許文献1には、親機としての無線通信装置と子機としての対向機の少なくとも一方が気象レーダー等のレーダー電波を検出すると、検出した機器が他方の機器にキープアライブ要求を送信することにより、親機と子機とがキープアライブ処理を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、タイムアウト時間を設定可能であり、親機である中継装置との無線通信がタイムアウト時間の間行われていない場合に、無線通信の接続を自動的に切断する機能を有する無線通信装置においては、中継装置に無線接続しているときに、中継装置がDFS機能により一定時間の間、特定周波数の電波の検出処理を行うと、中継装置と通信できない時間がタイムアウト時間を越え、中継装置との無線接続が切断してしまうことがあった。
尚、上述のような問題は、スキャナーやプロジェクター等、プリンター以外の無線通信装置にも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信装置は、干渉条件を検出することにより無線接続のチャネルを変更する変更処理を行う中継装置と通信を行う無線通信装置であって、
前記中継装置との前記無線接続を確立する無線通信部と、
設定されたタイムアウト時間に基づく期間、前記無線接続による前記中継装置との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う通信制御部と、を備え、
前記通信制御部は、前記変更処理の対象とする対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合、前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くする、態様を有する。
【0008】
また、本発明の無線通信方法は、干渉条件を検出することにより無線接続のチャネルを変更する変更処理を行う中継装置と通信を行う無線通信方法であって、
前記中継装置との前記無線接続を確立する無線通信工程と、
設定されたタイムアウト時間に基づく期間、前記無線接続による前記中継装置との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う通信制御工程と、を含み、
前記通信制御工程では、前記変更処理の対象とする対象チャネルにより前記無線接続が行われる場合、前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くする、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】無線通信装置を含む無線通信システムの例を模式的に示す図。
【
図2】無線通信装置の構成例を模式的に示すブロック図。
【
図3】初期状態のタイムアウト時間の例を模式的に示す図。
【
図5】タイムアウト時間設定処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図6】変更後のタイムアウト時間の例を模式的に示す図。
【
図7】無線通信システムのシーケンス例を模式的に示す図。
【
図8】無線通信システムのシーケンスの変形例を模式的に示す図。
【
図9】タイムアウト時間設定処理の変形例を模式的に示すフローチャート。
【
図10】比較例に係る無線通信システムのシーケンスを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~10に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0012】
態様1:
図1,2に例示するように、本技術の一態様に係る無線通信装置(例えばプリンター1)は、干渉条件(例えば干渉電波300)を検出することにより無線接続のチャネル400を変更する変更処理を行う中継装置(例えばアクセスポイント100)と通信を行う無線通信装置(1)であって、無線通信部U1、及び、通信制御部U2を備える。前記無線通信部U1は、前記中継装置(100)との前記無線接続を確立する。前記通信制御部U2は、設定されたタイムアウト時間Toに基づく期間、前記無線接続による前記中継装置(100)との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う。当該通信制御部U2は、前記変更処理の対象とする対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合、前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くする。
【0013】
以上より、変更処理の対象とする対象チャネル410により無線接続が行われる場合、無線接続が切断されるまでの期間が長くなる。従って、上記態様は、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させる無線通信装置を提供することができる。
【0014】
ここで、無線通信装置には、画像を扱う画像処理装置、携帯端末、等が含まれる。画像処理装置には、画像を形成する画像形成装置、画像を読み取る画像読取装置、等が含まれる。画像形成装置には、インクジェットプリンターや電子写真式プリンターといった印刷装置、複写機、ファクシミリ装置、これらの装置に設けられた機能の少なくとも一部を有する複合機、表示装置、等が含まれる。画像読取装置には、スキャナー、ファクシミリ装置、これらの装置に設けられた機能の少なくとも一部を有する複合機、撮像装置、等が含まれる。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
態様2:
図1に例示するように、前記干渉条件は、DFS(Dynamic Frequency Selection)に対応する特定周波数の前記対象チャネル410により前記無線接続が行われることでもよい。
図5等に例示するように、前記通信制御部U2は、前記対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合、前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を前記中継装置(100)が行う干渉電波300の監視に必要な監視時間Tmよりも長くしてもよい。本態様は、中継装置が干渉電波の検出に起因するチャネルの変更による無線接続の切断の可能性を低減させる無線通信装置を提供することができる。
尚、上記態様2には含まれないが、対象チャネルの電波の混雑が干渉条件である場合等も、本技術に含まれる。
【0016】
態様3:
図3に例示するように、前記タイムアウト時間Toは、第一時間T1に設定されてもよい。
図5等に例示するように、前記通信制御部U2は、前記対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合、前記タイムアウト時間Toを前記第一時間T1よりも長い第二時間T2に変更してもよい。本態様は、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させる好適な例を提供することができる。
ここで、本願における「第一」、「第二」、…は、互いに類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0017】
態様4:
また、前記通信制御部U2は、前記対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合、DFSの処理に要する所定時間(例えば監視時間Tm)を前記第一時間T1に加算することにより、前記第二時間T2としてもよい。本態様は、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させるさらに好適な例を提供することができる。
【0018】
態様5:
図2に例示するように、前記無線通信部U1は、画像処理に使用する第一ポートPO1と、前記画像処理に使用しない第二ポートPO2と、を備えていてもよい。前記通信制御部U2は、前記第一ポートPO1が使用される場合であって前記対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合に前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くしてもよく、前記第二ポートPO2が使用される場合に前記タイムアウト時間Toに基づく前記期間を維持してもよい。本態様は、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させる好適な例を提供することができる。
ここで、画像処理には、印刷や複写や表示といった画像形成、スキャンや撮像といった画像読み取り、等が含まれる。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0019】
態様6:
図9等に例示するように、前記通信制御部U2は、前記設定されたタイムアウト時間Toが所定時間(例えば監視時間Tm)よりも短い場合であって前記対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合に前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くしてもよく、前記設定されたタイムアウト時間Toが前記所定時間(Tm)以上である場合に前記タイムアウト時間Toに基づく前記期間を維持してもよい。本態様は、設定されたタイムアウト時間Toが長い場合に無線接続を長時間切断しない事態を抑制しながら、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させることができる。
【0020】
態様7:
ところで、
図5,7等に例示するように、本技術の一態様に係る無線通信方法は、干渉条件(300)を検出することにより無線接続のチャネル400を変更する変更処理を行う中継装置(100)と通信を行う無線通信方法であって、無線通信工程ST1、及び、通信制御工程ST2を含む。本無線通信方法は、前記無線通信工程ST1において、前記中継装置(100)との前記無線接続を確立する。本無線通信方法は、前記通信制御工程ST2において、設定されたタイムアウト時間Toに基づく期間、前記無線接続による前記中継装置(100)との通信が途絶えると、前記無線接続を切断する制御を行う。本無線通信方法は、さらに、前記通信制御工程ST2において、前記変更処理の対象とする対象チャネル410により前記無線接続が行われる場合、前記無線接続を切断する制御を行うまでの前記期間を長くする。従って、本態様は、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させる無線通信方法を提供することができる。
【0021】
さらに、本技術は、上述した無線通信装置を含む無線通信システム、該無線通信システムのための無線通信方法、上述した無線通信装置の制御プログラム、前述の無線通信システムの制御プログラム、前述のいずれかの制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。上述した無線通信装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0022】
(2)無線通信装置を含む無線通信システムの具体例:
図1は、本技術の無線通信装置の例であるプリンター1を含む無線通信システムSY1を模式的に例示している。
図1に示す無線通信システムSY1は、アクセスポイント100、プリンター1、及び、複数のホスト装置200を含んでいる。ホスト装置200には、アクセスポイント100に対して有線により接続されたホスト装置201、及び、アクセスポイント100に対して無線により接続されたホスト装置202が含まれる。
図1には、ホスト装置201のブロック内にホスト装置201,202の構成がまとめて示されている。尚、
図1,7,8,10に示すAPは、アクセスポイントの略称である。
【0023】
アクセスポイント100を介してプリンター1とホスト装置200とを無線により接続する無線ネットワークは、例えばIEEE802.11hに準拠する5GHz帯の無線通信が可能である。プリンター1は5GHz帯の無線通信をサポートし、ホスト装置200も5GHz帯の無線通信をサポートしていてもよい。上述したように、主に気象観測用として使われているCバンドレーダーへの悪影響を避けるため、IEEE802.11hに定められた無線LAN規格は、無線LANのチャネルをレーダー電波の検出により変更するDFSを義務づけている。
図1に示すプリンター1は、無線通信部U1、通信制御部U2、等を備え、ホスト装置200からの印字データに基づいて被印刷物(print substrate)ME1に印刷を行う。被印刷物は、印刷画像を保持する素材のことである。被印刷物には、ロール紙といった連続紙、長方形のカット紙、光ディスクといった略円形媒体、立体形状の媒体、等を用いることができる。被印刷物の材質は、感熱紙を含む紙に限定されず、樹脂、金属、等でもよい。プリンター1は、大型プリンターのように施設に据え置かれてもよいし、携帯可能な印刷装置でもよい。
【0024】
図1に示すアクセスポイント100は、AP制御部101、AP無線通信部105、干渉電波検出部106、有線通信部107、等を備えている。これらの要素101,105~107等は、電気的に接続されていることにより互いに情報を入出力可能である。AP制御部101は、プロセッサーであるCPU102、半導体メモリーであるROM103、半導体メモリーであるRAM104、等を備えている。ここで、CPUはCentral Processing Unitの略称であり、ROMはRead Only Memoryの略称であり、RAMはRandom Access Memoryの略称である。CPU102は、RAM104をワークエリアとして使用しながらROM103に保持されているプログラムを実行することにより各種処理を行う。
【0025】
図示していないが、アクセスポイント100は、自らを一意に識別するために物理的に割り当てられた識別番号であるMACアドレス、アクセスポイントの識別名であるSSID、該SSIDと組み合わされるパスワード、等を保持している。ここで、MACアドレスはMedia Access Control addressの略称であり、SSIDはService Set Identifierの略称である。AP無線通信部105は、プリンター1やホスト装置202等といった無線機器と無線接続を確立するために自らのMACアドレスやSSIDやパスワードを使用し、前述の無線機器と所定の規格に従って無線通信を行う。AP無線通信部105と無線機器とは、DFSの対象であるチャネルを使用する無線通信を行うだけでなく、W52のチャネル帯に含まれるチャネル、2.4GHz帯に含まれるチャネル、等を使用する無線通信を行ってもよい。
【0026】
干渉電波検出部106は、使用しているチャネルについて気象レーダーや軍事レーダー等のレーダーが送信する干渉電波300を監視する処理を行う。干渉電波検出部106は、レーダーによる干渉電波300を検出した場合、使用していたチャネルの使用を停止し、干渉電波300の監視対象である別のチャネルに移行する際に干渉電波300が検出されないか所定の監視時間Tmの間、監視する。監視時間Tmは、60秒と定められている。
【0027】
有線通信部107は、ホスト装置201といった有線機器と所定の規格に従って有線通信を行う。
【0028】
図1に示すホスト装置200は、プロセッサーであるCPU211、半導体メモリーであるROM212、半導体メモリーであるRAM213、記憶装置214、入力装置215、表示装置216、有線通信部217、無線通信部218、等を備えている。これらの要素211~218等は、電気的に接続されていることにより互いに情報を入出力可能である。CPU211は、RAM213をワークエリアとして使用しながらROM212に保持されているプログラムを実行することにより各種処理を行う。記憶装置214は、OS、プリンター1の制御プログラム、等を記憶している。ここで、OSは、オペレーティングシステムの略称である。入力装置215には、ポインティングデバイス、キーボードを含むハードキー、表示パネルの表面に貼り付けられたタッチパネル、等を用いることができる。表示装置216には、液晶表示パネル等を用いることができる。有線通信部217は、所定の規格に従ってアクセスポイント100と有線通信を行う。無線通信部218は、上述した無線LAN規格に従ってアクセスポイント100と無線通信を行う。
ホスト装置200には、パーソナルコンピューター、スマートフォンやタブレット端末といった携帯端末、カメラ、等を用いることができる。
【0029】
図2は、プリンター1の構成を模式的に例示している。印刷部10、通信制御部U2の例である通信部20、記憶部30、及び、無線通信部U1の例である制御部40を備えている。
図3は、初期状態のタイムアウト時間Toを模式的に例示している。
【0030】
図2に示す印刷部10は、駆動制御部11、印刷ヘッド12、主走査部13、及び、紙送り部14を有し、
図1で示した被印刷物ME1に印刷を行う。印刷ヘッド12は、被印刷物ME1に印刷を施す。印刷ヘッド12には、インクジェットヘッド、サーマルヘッド、等を用いることができる。主走査部13は、主走査用のモーターを有し、被印刷物ME1の送り方向に直交する往方向及び復方向へ印刷ヘッド12を移動させる。紙送り部14は、紙送り用のモーターを有し、被印刷物ME1を送り方向へ移動させる。駆動制御部11は、制御部40からの指示に従って、印刷ヘッド12による印刷動作、主走査部13の動作、及び、紙送り部14の動作を制御する。
【0031】
図2に示す通信部20は、プロセッサーであるCPU21a、半導体メモリーであるROM21b、半導体メモリーであるRAM21c、アクセスポイント100のAP無線通信部105と無線通信を行うことが可能な入出力部22、等を有している。通信部20は、所定のプロトコルに従ってアクセスポイント100との無線接続を確立する。CPU21aは、RAM21cをワークエリアとして使用しながらROM21bに保持されているプログラムを実行することにより各種処理を行う。入出力部22は、複数のポートのそれぞれに対応するポート番号を有し、アクセスポイント100から無線接続が要求された時に複数のポート番号から使用するポート番号を決定して制御部40に通知する。ポート番号は、制御部40で行われる処理を指定するための番号である。
【0032】
515番ポートは、LPRに従った印刷に使用される。ここで、LPRはLine Printer Daemon Protocolの略称である。
9100番ポートは、印刷、並びに、プリンター情報の取得及び設定に使用される。プリンター情報は、印刷部10が印刷を行う時に従う設定を表す。プリンター情報は、例えば、被印刷物ME1がロール紙であるかカット紙であるか等といった被印刷物ME1の種類、被印刷物ME1がA4サイズであるのかB5サイズであるのか等といった被印刷物ME1のサイズ、カラー印刷であるのかモノクロ印刷であるか等といった印刷モード、等を含む。プリンター情報の取得は、プリンター1に印字データを送信する外部装置がプリンター内のプリンター情報を取得することを意味する。プリンター情報の設定は、プリンター1に印字データを送信する外部装置がプリンター内のプリンター情報を設定することを意味する。515番ポートと9100番ポートは、画像処理に使用する第一ポートPO1の例である。
80番ポートは、プリンター情報のHTTPに従った取得及び設定に使用され、印刷に使用されない。ここで、HTTPは、HyperText Transfer Protocolの略称である。
443番ポートは、プリンター情報のHTTPSに従った取得及び設定に使用され、印刷に使用されない。ここで、HTTPSは、Hypertext Transfer Protocol over Transport Layer Securityの略称である。80番ポートと443番ポートは、画像処理に使用しない第二ポートPO2の例である。
【0033】
図2に示す記憶部30は、ファームウェアFW1等を記憶している。ファームウェアFW1は、印刷部10の動作を制御するプログラム、通信部20との間でデータの入出力を行うプログラム、
図5に示すタイムアウト時間設定処理を行うプログラム、等を含んでいる。
【0034】
図2に示す制御部40は、プロセッサーであるCPU41a、半導体メモリーであるROM41b、半導体メモリーであるRAM41c、時計回路41d、等を有している。また、制御部40は、
図3に示すように、ポート毎に設定されたタイムアウト時間Toを保持している。タイムアウト時間Toは、RAM41cに格納されてもよいし、記憶部30に記憶されてもよい。制御部40は、印刷部10による印刷の制御処理に加えて、設定されたタイムアウト時間Toに基づく期間、無線接続によるアクセスポイント100との通信が途絶えると、無線接続を切断する制御を行う。CPU41aは、RAM41cをワークエリアとして使用しながらROM41bに保持されているプログラム、及び、ファームウェアFW1を実行することにより各種処理を行う。時計回路41dは、現在の時刻を計時し、現在の時刻を出力可能である。
【0035】
例えば、ホスト装置200がアクセスポイント100を介してプリンター1に印刷指示を無線送信すると、通信部20は、515番ポート又は9100番ポートを無線通信用に選択し、選択したポート番号を制御部40に通知する。制御部40は、選択されたポート番号の通知を通信部20から受け取り、印刷指示に含まれる印刷データに基づいて印刷部10に印刷を実行させる。
【0036】
図3に示すように、各ポート番号において、初期状態のタイムアウト時間Toは、第一時間T1に設定されている。
図3に示す第一時間T1は全て30秒であるが、第一時間T1は、30秒に限定されず、ポート番号に応じて異なる時間でもよい。
【0037】
次に、
図4を参照して、5GHz帯に含まれる無線通信のチャネル400を説明する。
5GHz帯は、W52,W53,W56の3つのチャネル帯を含んでいる。W52のチャネル帯は、DFSの対象でない4つの36,40,44,48チャネルを含んでいる。W53のチャネル帯は、DFSの対象である4つの52,56,60,64チャネルを含んでいる。W56のチャネル帯は、DFSの対象である11の100,104,…,136,140チャネルを含んでいる。W53,W56のチャネル帯に含まれる15のチャネルは、干渉電波300の検出による変更の対象チャネル410である。
【0038】
(3)通信制御部の処理の具体例:
図5は、プリンター1の制御部40で行われるタイムアウト時間設定処理を模式的に例示している。タイムアウト時間設定処理は、通信制御工程ST2に対応している。
図6は、変更後のタイムアウト時間To模式的に例示している。
通信部20がアクセスポイント100との無線接続を確立すると、制御部40は、タイムアウト時間設定処理を開始させる。まず、制御部40は、ステップS102において、無線接続が確立されたポートの番号とチャネルの番号を取得する。以下、「ステップ」の記載を省略し、括弧内に各ステップの符号を示す。
【0039】
次いで、制御部40は、取得されたポート番号に基づいて、無線接続が確立されたポートが印刷すなわち画像処理に使用する第一ポートPO1であるか否かを判断する(S104)。例えば、制御部40は、取得されたポート番号が515又は9100である場合に第一ポートPO1であると判断し、取得されたポート番号が80又は443である場合に第一ポートPO1でないと判断すればよい。無線接続が確立されたポートが印刷に使用しない第二ポートPO2である場合、制御部40は、処理をS110に進める。
【0040】
無線接続が確立されたポートが印刷に使用する第一ポートPO1である場合、制御部40は、取得されたチャネル番号に基づいて、無線接続が確立されたチャネルが干渉電波300の検出による変更の対象チャネル410であるか否かを判断する(S106)。例えば、制御部40は、取得されたチャネル番号が52~140のいずれかである場合に対象チャネル410であると判断し、取得されたチャネル番号が52~140以外である場合に対象チャネル410でないと判断すればよい。無線接続が確立されたチャネルが対象チャネル410でない場合、制御部40は、処理をS110に進める。
【0041】
無線接続が確立されたチャネルが対象チャネル410である場合、制御部40は、無線接続が確立されたポートのタイムアウト時間Toをデフォルトの第一時間T1に監視時間Tm=60秒を加えた第二時間T2に設定する(S108)。
T2=T1+Tm …(1)
このようにして、制御部40は、印刷に使用する第一ポートPO1が使用される場合であって干渉電波300の検出による変更の対象チャネル410により無線接続が行われる場合、タイムアウト時間Toを干渉電波300の監視に必要な監視時間Tmよりも長くする。S108の処理後、制御部40は、タイムアウト時間設定処理を終了させる。
【0042】
無線接続が確立されたポートが印刷に使用しない第二ポートPO2であるか、無線接続が確立されたチャネルが対象チャネル410でない場合、制御部40は、無線接続が確立されたポートのタイムアウト時間Toとしてデフォルトの第一時間T1を維持する(S110)。S110の処理後、制御部40は、タイムアウト時間設定処理を終了させる。
【0043】
例えば、
図3に示すようにタイムアウト時間Toの初期状態が第一時間T1=30秒である515番ポートは、印刷に使用される。従って、無線接続が確立されたチャネルが対象チャネル410である場合、
図6に示すように、タイムアウト時間Toが監視時間Tmよりも長い第二時間T2=90秒に設定される。印刷に使用される9100番ポートも、第二時間T2=90秒に設定される。
一方、
図3に示すようにタイムアウト時間Toの初期状態が第一時間T1=30秒である80番ポートは、印刷に使用されない。従って、無線接続が確立されたチャネルが対象チャネル410であっても、
図6に示すように、タイムアウト時間Toとして初期状態の第一時間T1=30秒が維持される。印刷に使用されない443番ポートも、第一時間T1=30秒が維持される。
【0044】
ところで、タイムアウト時間設定処理が行われない場合、アクセスポイントがW53及びW56のチャネル帯に含まれるチャネルを移行する場合、アクセスポイントとプリンターとの無線通信が最低でも監視時間Tm=60秒の間停止してしまう。この間にタイムアウト時間Toが経過すると、ホスト装置とのセッションが切断され、印刷が完了しない。
【0045】
図10は、比較例に係る無線通信システムのシーケンスを模式的に示している。ここで、アクセスポイントとプリンターとは、DFSの対象であるW53又はW56のチャネル帯のチャネルを使用するものとする。アクセスポイントとホスト装置は、DFSの対象であるチャネルを使用する無線通信を行ってもよいが、W52のチャネル帯や2.4GHz帯のチャネルを使用する無線通信を行ってもよいし、有線通信を行ってもよい。
例えば、
図2に示される複数のポートのいずれかが使用される場合、ホスト装置がアクセスポイントを経由するTCP通信により印刷指示をプリンターに出す。ここで、TCPは、Transmission Control Protocolの略称である。
【0046】
具体的には、まず、ホスト装置がアクセスポイントを介してプリンターにSYNパケットを送信する(S902)。SYNはsynchronizeの略称であり、SYNパケットはTCPで接続を確立する際に送信元の機器から送信先の機器に送られるパケットである。SYNパケットを受信したプリンターは、アクセスポイントを介してホスト装置にSYN/ACKパケットを返信する(S904)。これをSYN/ACKパケット応答ともいう。ACKはacknowledgementの略称であり、SYN/ACKパケットはSYNフラグとACKフラグの両方が1にセットされたパケットである。SYN/ACKパケットを受信したホスト装置は、アクセスポイントを介してプリンターにACKパケットを返信する(S906)。これをACKパケット応答ともいう。ACKパケットは、ACKフラグを立てたパケットである。
S902~S906のスリーウェイハンドシェイク処理により、セッションが確立される。この時、アクセスポイントとプリンターとで無線接続が確立されたことになる。
【0047】
セッションの確立後、ホスト装置は、アクセスポイントを介してプリンターに印字データの送信を開始する(S908)。印字データの送信パケットを受信したプリンターは、アクセスポイントを介してホスト装置にACKパケットを返信する(S910)。
【0048】
ホスト装置が印字データを送信している途中でアクセスポイントがDFS機能により干渉電波を検出し、W53及びW56のチャネル帯の中で別のチャネルに移行する処理を開始したとする(S912)。アクセスポイントは移行先のチャネルで干渉電波が検出されないか監視時間Tm=60秒の間監視するため、TCP通信が接続状態のまま最低でも60秒間、アクセスポイントとプリンターとの間のリンクが切断されてしまう。タイムアウト時間Toが例えば30秒と監視時間Tmよりも短い場合、プリンターは、タイムアウト時間Toの経過時にアクセスポイントを介してホスト装置にRSTパケットを送信する処理を行う(S914)。これは、別のホスト装置から印刷指示を受信できるようにするためである。ここで、RSTはresetの略称であり、RSTパケットはTCP接続を中断したり拒否したりするためRSTフラグを1にセットしたパケットである。RSTパケットを送信する処理は、無線接続を切断する処理である。この処理により、無線接続が切断され、印刷が完了しない。
【0049】
また、図示していないが、ホスト装置200が全ての印字データを送信したが無線接続が正常に終了する前にアクセスポイントとプリンターとの間のリンクが切断される可能性もある。この場合、プリンターは、全ての印字データを受信した後にアクセスポイントを介してホスト装置にFINパケットを送信する処理を行う。FINはfinishの略称であり、FINパケットはTCP接続の終了を通知するためFINフラグを1にしたパケットである。無線接続は、FINパケットを受信したホスト装置がアクセスポイントを介してプリンターにFINパケットを返信することにより正常に終了する。しかし、アクセスポイントとプリンターとの間のリンクが切断されているので、ホスト装置によるFINパケットの返信処理が行われず、無線接続が終了しない。その結果、印刷が完了しなかったり、別のホスト装置がプリンターを使用できるまでタイムアウト時間Toの待機が生じたりする。
【0050】
尚、チャネル移行時のリンク切断を把握するために干渉電波を検出する回路をプリンターに設けることは、プリンターのコストアップになる。
【0051】
図7は、本具体例の無線通信システムSY1のシーケンスを模式的に例示している。アクセスポイント100とプリンター1とは、DFSの対象であるW53又はW56のチャネル帯の対象チャネル410を使用するものとする。アクセスポイント100とホスト装置200は、対象チャネル410を使用する無線通信を行ってもよいが、W52のチャネル帯や2.4GHz帯のチャネルを使用する無線通信を行ってもよいし、有線通信を行ってもよい。
図7において、S202~S206は、アクセスポイント100との無線接続を確立する無線通信工程ST1に対応している。また、S210~S214は、干渉電波300の検出による変更の対象チャネル410により無線接続が行われる場合に無線接続を切断する制御を行うまでの期間を長くする通信制御工程ST2に対応している。
【0052】
ホスト装置200がアクセスポイント100を介してプリンター1にSYNパケットを送信すると(S202)、SYNパケットを受信したプリンター1はアクセスポイント100を介してホスト装置200にSYN/ACKパケットを返信する(S204)。SYN/ACKパケットを受信したホスト装置200は、アクセスポイント100を介してプリンター1にACKパケットを返信する(S206)。S202~S206のスリーウェイハンドシェイク処理により、セッションが確立される。この時、アクセスポイント100とプリンター1とで無線接続が確立されたことになる。
【0053】
セッションの確立後、ホスト装置200は、アクセスポイント100を介してプリンター1に印字データの送信を開始する(S208)。印字データの送信パケットを受信したプリンター1は、アクセスポイント100を介してホスト装置200にACKパケットを返信する(S210)。
【0054】
ホスト装置200が印字データを送信している途中でアクセスポイント100がDFS機能により干渉電波300を検出し、W53及びW56のチャネル帯の中で別の対象チャネル410に移行する処理を開始したとする(S212)。アクセスポイント100は移行先の対象チャネル410で干渉電波300が検出されないか監視時間Tm=60秒の間監視するため、TCP通信が接続状態のまま最低でも60秒間、アクセスポイント100とプリンター1との間のリンクが切断される。本具体例では、タイムアウト時間Toが初期状態の第一時間T1=30秒から監視時間Tm=60秒よりも長い第二時間T2=90秒に変更されているので、プリンター1は、アクセスポイント100とプリンター1との間のリンクが回復するまで無線接続を維持する。ホスト装置200がアクセスポイント100を介してプリンター1に印字データの続きを送信すると(S214)、印字データの送信パケットを受信したプリンター1は、アクセスポイント100を介してホスト装置200にACKパケットを返信する(S216)。このように、干渉電波300の検出によりアクセスポイント100とプリンター1との間のリンクが監視時間Tmの間切断されても、印字データの送受信が継続し、印刷が完了する。従って、ホスト装置200は、干渉電波300の検出によるアクセスポイント100とプリンター1との間のリンク切断を考慮せずに印刷をプリンター1に実行させることができる。ユーザーから見れば、アクセスポイント100とプリンター1との間の意図しないリンク切断により印刷が正常に終了しない現象が抑制される。
【0055】
以上説明したように、干渉電波300の検出による変更の対象チャネル410により無線接続が行われる場合、無線接続が切断されるまでの期間が監視時間Tmよりも長くなる。従って、本具体例は、アクセスポイント100が干渉電波300の検出に起因するチャネル400の変更による無線接続の切断の可能性を低減させることができる。
【0056】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本技術を適用可能な無線通信装置は、プリンター以外の画像処理装置、携帯端末、等でもよい。画像処理装置は、プリンター以外の画像形成装置、画像を読み取る画像読取装置、等でもよい。画像形成装置には、インクジェットプリンターやレーザープリンターといった印刷装置に加えて、コピー機、ファクシミリ、これらの機能の少なくとも一部を有する複合機、プロジェクターといった表示装置、等が含まれる。画像読取装置には、スキャナー、ファクシミリ、これらの機能の少なくとも一部を有する複合機、カメラといった撮像装置、等が含まれる。
【0057】
上述した処理は、CPUが実行する例に限定されず、ASIC等といった他の電子部品によって実行されてもよい。ここで、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。むろん、上述した処理は、複数のCPUが協働することにより行われてもよいし、1以上のCPUとASICといった電子部品とが協働することにより行われてもよい。
プリンター1における通信制御部U2は、制御部40において実現される以外にも、通信部20等において実現されてもよい。
上述した処理は、順番を入れ替える等、適宜、変更可能である。例えば、
図5に示すタイムアウト時間設定処理において、S104の判断処理とS106の判断処理の順番を入れ替えることが可能である。
【0058】
アクセスポイントにおいて無線接続のチャネルを変更する干渉条件は、DFSに対応する特定周波数の対象チャネルにより無線接続が行われることに限られず、対象チャネルの電波の混雑度等でもよい。例えば、中継装置には、チャネル自動選択機能を備えたアクセスポイントがある。チャネル自動選択機能を備えたアクセスポイントは、無線接続が確立されたチャネルの電波の混雑度を取得する機能を有し、取得した混雑度が閾値を超えたことを検出すると混雑度がより低い別のチャネルに切り替える。チャネルの切り替え時に一時的にアクセスポイントと無線通信装置との間のリンクが切断されるので、中継装置にチャネル自動選択機能を備えたアクセスポイントを使用する場合も本技術を適用可能である。
【0059】
上述した実施形態ではタイムアウト時間Toを長くするときにタイムアウト時間Toをデフォルトの第一時間T1に監視時間Tmを加えた第二時間T2に変更したが、これに限定されない。第二時間T2は、監視時間Tmよりも長ければよいため、Tm<T2<T1+Tmを満たす第二時間T2にタイムアウト時間Toを変更してもよい。
上述した実施形態では画像処理に使用する第一ポートに限って干渉条件の検出による変更の対象チャネルにより無線通信が行われる場合にタイムアウト時間Toを長くしたが、これに限定されない。全てのポートについて干渉条件の検出による変更の対象チャネルにより無線通信が行われる場合にタイムアウト時間Toを長くすることも、本技術に含まれる。
【0060】
プリンターがチャネルボンディングという複数のチャネルを束ねる機能を有している場合も、本技術を適用可能である。この場合、複数のチャネルを含むチャネル束にタイムアウト時間Toが設定されることになる。無線接続が確立されたチャネル束に干渉条件の検出による変更の対象チャネルが一つでも含まれていれば、
図5で示したタイムアウト時間設定処理に従って、チャネル束に設定されたタイムアウト時間Toが監視時間Tmよりも長くされてもよい。
【0061】
図8に例示するように、無線接続を切断する制御を行うまでの期間を長くする方法は、タイムアウト時間Toの変更に限定されない。
図8は、初期状態のタイムアウト時間To=T1を維持しながら干渉条件の検出によるアクセスポイント100とプリンター1との間のリンク切断があっても無線接続を維持する無線通信システムのシーケンスを模式的に例示している。
図8に示すシーケンスは、
図7で示したシーケンスにS222の処理が付加されている。
図8に示すシーケンスのS202~S212,S214~S216は、
図7で示したシーケンスのS202~S212,S214~S216と同じである。
【0062】
アクセスポイント100が干渉電波300を検出し、W53及びW56のチャネル帯の中で別の対象チャネル410に移行する処理を開始すると(S212)、監視時間Tm=60秒の間、アクセスポイント100とプリンター1との間のリンクが切断される。その間にタイムアウト時間Toが経過するが、プリンター1は、タイムアウト時間Toの経過時にセッションをさらに監視時間Tm=60秒、維持する処理を行う(S222)。この処理は、RSTパケットの送信を監視時間Tm遅らせることによりリンク切断が解消されると印字データの受信を継続することを意味する。S222の処理により、アクセスポイント100とプリンター1との間のリンク切断が解消されるまで、プリンター1は無線接続を維持する。ホスト装置200がアクセスポイント100を介してプリンター1に印字データの続きを送信すると(S214)、印字データの送信パケットを受信したプリンター1は、アクセスポイント100を介してホスト装置200にACKパケットを返信する(S216)。このように、干渉電波300の検出によりアクセスポイント100とプリンター1との間のリンクが監視時間Tmの間切断されても、印字データの送受信が継続し、印刷が完了する。
【0063】
図9に例示するように、初期状態のタイムアウト時間Toが監視時間Tmを超えている可能性を考慮したタイムアウト時間設定処理が行われてもよい。
図9に示すタイムアウト時間設定処理は、
図5で示したタイムアウト時間設定処理にS302の判断処理が付加されている。
【0064】
制御部40は、無線接続が確立されたポートの番号とチャネルの番号を取得すると(S102)、タイムアウト時間Toが監視時間Tmよりも短いか否かを判断する(S302)。制御部40は、タイムアウト時間Toが監視時間Tm未満である場合に処理をS104に進め、タイムアウト時間Toが監視時間Tm以上である場合に処理をS110に進める。To<Tmである場合、無線接続が確立されたポートが印刷すなわち画像処理に使用する第一ポートPO1であり、且つ、無線接続が確立されたチャネルが干渉電波300の検出による変更の対象チャネル410であれば、タイムアウト時間Toが第二時間T2=T1+Tmに変更される(S108)。To≧Tmである場合、無線接続が確立されたポートのタイムアウト時間Toとしてデフォルトの第一時間T1が維持される(S110)。従って、制御部40は、設定されたタイムアウト時間Toが所定の監視時間Tmよりも短い場合であって対象チャネル410により無線接続が行われる場合に無線接続を切断する制御を行うまでの期間を長くし、設定されたタイムアウト時間Toが所定の監視時間Tm以上である場合にタイムアウト時間Toに基づく期間を維持する。
【0065】
以上より、初期状態のタイムアウト時間Toが監視時間Tm以上であれば変更されないので、本具体例は、初期状態のタイムアウト時間Toが長い場合に別のホスト装置からの印刷要求を長時間受け付けない事態を抑制することができる。
【0066】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、中継装置がチャネルを変更することによる無線接続の切断の可能性を低減させる無線通信装置等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…プリンター、10…印刷部、20…通信部、22…入出力部、30…記憶部、40…制御部、100…アクセスポイント、200,201,202…ホスト装置、300…干渉電波、400…チャネル、410…対象チャネル、PO1…第一ポート、PO2…第二ポート、SY1…無線通信システム、T1…第一時間、T2…第二時間、Tm…監視時間、To…タイムアウト時間、U1…無線通信部、U2…通信制御部。