IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7468114制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム
<>
  • 特許-制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム 図1
  • 特許-制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム 図2
  • 特許-制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム 図3
  • 特許-制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム 図4
  • 特許-制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム 図5
  • 特許-制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20240409BHJP
   H04B 7/022 20170101ALI20240409BHJP
   H04B 7/0452 20170101ALI20240409BHJP
【FI】
H04B7/0456 120
H04B7/022
H04B7/0452
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020075287
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021175019
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】式田 潤
(72)【発明者】
【氏名】石井 直人
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030896(JP,A)
【文献】特開2012-160844(JP,A)
【文献】特開2007-215045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線端末と通信する第1無線装置、及び第2無線端末と通信する第2無線装置と接続する制御装置であって、
前記第1無線装置と前記第1無線端末との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列、及び前記第2無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、前記第1無線端末及び前記第2無線端末の各々のデータ信号に対応する第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定する受信ウェイト決定部と、
前記第1チャネル行列と前記第1受信ウェイト行列とに基づいて、前記第1無線装置から前記第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出するデータチャネル算出部と、
前記第1無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と前記第2受信ウェイト行列とを用いて、前記第1無線装置が前記第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する干渉チャネル算出部と、
前記データチャネル行列と前記干渉チャネル行列とに基づいて、前記第1無線装置が前記干渉を抑圧しつつ前記第1無線端末にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する送信ウェイト算出部と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記受信ウェイト決定部は、前記第1チャネル行列及び前記第2チャネル行列に対する特異値分解を行い、前記第1受信ウェイト行列及び前記第2受信ウェイト行列を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記受信ウェイト決定部は、前記第1チャネル行列の相関行列及び前記第2チャネル行列の相関行列に対する固有値分解を行い、前記第1受信ウェイト行列及び前記第2受信ウェイト行列を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記受信ウェイト決定部は、予め用意された受信ウェイトベクトルに基づいて、前記第1受信ウェイト行列及び前記第2受信ウェイト行列を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記受信ウェイト決定部は、予め用意された送信ウェイトベクトルに基づいて、前記第1受信ウェイト行列及び前記第2受信ウェイト行列を算出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記干渉チャネル算出部は、前記干渉の大きさに基づいて前記干渉チャネル行列の要素数を削減する、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
第1無線端末と通信する第1無線装置、及び第2無線端末と通信する第2無線装置と接続する制御装置により実行される無線通信方法であって、
前記第1無線装置と前記第1無線端末との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列、及び前記第2無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、前記第1無線端末及び前記第2無線端末の各々のデータ信号に対応する第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定し、
前記第1チャネル行列と前記第1受信ウェイト行列とに基づいて、前記第1無線装置から前記第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出し、
前記第1無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と前記第2受信ウェイト行列とを用いて、前記第1無線装置が前記第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出し、
前記データチャネル行列と前記干渉チャネル行列とに基づいて、前記第1無線装置が前記干渉を抑圧しつつ前記第1無線端末にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する、無線通信方法。
【請求項8】
第1無線端末と通信する第1無線装置、及び第2無線端末と通信する第2無線装置と接続する制御装置に実行させる無線通信プログラムであって、
前記第1無線装置と前記第1無線端末との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列、及び前記第2無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、前記第1無線端末及び前記第2無線端末の各々のデータ信号に対応する第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定し、
前記第1チャネル行列と前記第1受信ウェイト行列とに基づいて、前記第1無線装置から前記第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出し、
前記第1無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と前記第2受信ウェイト行列とを用いて、前記第1無線装置が前記第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出し、
前記データチャネル行列と前記干渉チャネル行列とに基づいて、前記第1無線装置が前記干渉を抑圧しつつ前記第1無線端末にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する、処理を含む無線通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、送受信ポイントを分散して複数配置し、各送受信ポイントに対応するベースバンド信号処理機能を制御装置で集約するネットワーク構成が導入されている。ベースバンド信号処理機能を集約することで、複数の送受信ポイント間の協調制御が容易となり、送受信ポイントの配置効果を高めることができる。
【0003】
複数の送受信ポイント間の協調送信技術として、協調ビームフォーミング(CB:Coordinated Beamforming)が検討されている(例えば、特許文献1及び2)。協調ビームフォーミングは、送受信ポイントがビームフォーミングを用いて、他の送受信ポイントと通信する無線端末への干渉を抑圧しつつ通信相手の無線端末にデータを送信する方式である。協調ビームフォーミングを用いることで、通信相手でない送受信ポイントからの干渉を低減することができ、無線端末の通信品質を改善できる。
【0004】
特許文献1及び2には、協調ビームフォーミングを用いたデータ送受信方法が記載されている。特許文献1及び2には、無線基地局が、無線端末との間のチャネルに関する情報を無線端末から受信し、受信した情報を用いて、他の無線基地局と通信する無線端末に与える干渉を抑圧しつつ、通信相手の無線端末にデータを送信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-223141号公報
【文献】特開2015-228664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
協調ビームフォーミングにおいて、各送受信ポイントが干渉抑圧の対象とするチャネルの数は、他の送受信ポイントと通信する無線端末毎のアンテナ数である。一方、干渉抑圧できるチャネルの数には制限があり、干渉抑圧するチャネルの数と、送信するデータ信号の数との合計が、送受信ポイントのアンテナ数以下でなければならない。そのため、他の送受信ポイントと通信する無線端末数又は無線端末のアンテナ数が多い場合、干渉抑圧するチャネルの数が多くなり、その分だけデータ信号の数が少なくなり、高いスループットを達成できなくなってしまう。したがって、特許文献1及び2に開示された技術を用いたとしても、他の送受信ポイントと通信する無線端末数又は無線端末のアンテナ数が多い場合、高いスループットを達成できなくなってしまう。
【0007】
本開示の目的の1つは、上述した課題を解決するためになされたものであり、スループットを向上させることが可能な制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる制御装置は、
第1無線端末と通信する第1無線装置、及び第2無線端末と通信する第2無線装置と接続する制御装置であって、
前記第1無線装置と前記第1無線端末との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列、及び前記第2無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、前記第1無線端末及び前記第2無線端末の各々のデータ信号に対応する第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定する受信ウェイト決定部と、
前記第1チャネル行列と前記第1受信ウェイト行列とに基づいて、前記第1無線装置から前記第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出するデータチャネル算出部と、
前記第1無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と前記第2受信ウェイト行列とを用いて、前記第1無線装置が前記第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する干渉チャネル算出部と、
前記データチャネル行列と前記干渉チャネル行列とに基づいて、前記第1無線装置が前記干渉を抑圧しつつ前記第1無線端末にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する送信ウェイト算出部と、を備える。
【0009】
本開示にかかる無線通信方法は、
第1無線端末と通信する第1無線装置、及び第2無線端末と通信する第2無線装置と接続する制御装置により実行される無線通信方法であって、
前記第1無線装置と前記第1無線端末との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列、及び前記第2無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、前記第1無線端末及び前記第2無線端末の各々のデータ信号に対応する第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定し、
前記第1チャネル行列と前記第1受信ウェイト行列とに基づいて、前記第1無線装置から前記第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出し、
前記第1無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と前記第2受信ウェイト行列とを用いて、前記第1無線装置が前記第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出し、
前記データチャネル行列と前記干渉チャネル行列とに基づいて、前記第1無線装置が前記干渉を抑圧しつつ前記第1無線端末にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する、無線通信方法である。
【0010】
本開示にかかる無線通信プログラムは、
第1無線端末と通信する第1無線装置、及び第2無線端末と通信する第2無線装置と接続する制御装置に実行させる無線通信プログラムであって、
前記第1無線装置と前記第1無線端末との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列、及び前記第2無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、前記第1無線端末及び前記第2無線端末の各々のデータ信号に対応する第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定し、
前記第1チャネル行列と前記第1受信ウェイト行列とに基づいて、前記第1無線装置から前記第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出し、
前記第1無線装置と前記第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と前記第2受信ウェイト行列とを用いて、前記第1無線装置が前記第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出し、
前記データチャネル行列と前記干渉チャネル行列とに基づいて、前記第1無線装置が前記干渉を抑圧しつつ前記第1無線端末にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する、処理を含む無線通信プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、スループットを向上させることが可能な制御装置、無線通信方法及び無線通信プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態にかかる制御装置の構成例を示す図である。
図2】第2の実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。
図3】第2の実施形態にかかるセンター無線信号処理部の構成例を示す図である。
図4】第2の実施形態にかかるプリコーディングウェイト生成部の構成例を示す図である。
図5】第2の実施形態にかかるプリコーディングウェイト生成部の動作例を示すフローチャートである。
図6】本開示の各実施形態にかかる制御装置等を実現可能な、コンピュータ(情報処理装置)のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
(第1の実施形態)
図1を用いて、第1の実施形態にかかる制御装置1について説明する。図1は、第1の実施形態にかかる制御装置の構成例を示す図である。制御装置1は、第1無線装置(不図示)及び第2無線装置(不図示)と接続し、第1無線装置及び第2無線装置を制御する。第1無線装置は、第1無線端末(不図示)と無線通信を行う。第2無線装置は、第2無線端末(不図示)と無線通信を行う。第1無線装置及び第2無線装置は、無線信号を送受信する送受信ポイントと称されてもよい。制御装置1、第1無線装置及び第2無線装置は、無線通信システムにおける無線基地局を構成してもよい。なお、制御装置1は、第1無線装置及び第2無線装置に加えて、他の無線装置と接続するように構成されてもよい。また、第1無線装置及び第2無線装置は、それぞれ複数の無線端末と通信するように構成されてもよい。
【0015】
制御装置1は、受信ウェイト決定部2と、データチャネル算出部3と、干渉チャネル算出部4と、送信ウェイト算出部5とを備える。
【0016】
受信ウェイト決定部2は、無線装置と無線端末との間のチャネル応答に基づくチャネル行列を用いて、無線装置から無線端末に送信されるデータ信号の各々に対応する受信ウェイト行列を算出する。
【0017】
ここで、第1無線装置と第1無線端末との間のチャネル応答に基づくチャネル行列を第1チャネル行列とする。第2無線装置と第2無線端末との間のチャネル応答に基づくチャネル行列を第2チャネル行列とする。第1無線端末のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を第1受信ウェイト行列とする。第2無線端末のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を第2受信ウェイト行列とする。受信ウェイト決定部2は、第1チャネル行列及び第2チャネル行列を用いて、第1受信ウェイト行列及び第2受信ウェイト行列を決定する。
【0018】
データチャネル算出部3は、第1チャネル行列と、受信ウェイト決定部2が決定した第1受信ウェイト行列とに基づいて、第1データ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。データチャネル算出部3は、第1チャネル行列と、受信ウェイト決定部2で決定した第1受信ウェイト行列とを乗算して、第1無線装置から第1無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。
【0019】
干渉チャネル算出部4は、第1無線装置と第2無線端末との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列と第2受信ウェイト行列とを用いて、第1無線装置が第2無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。干渉チャネル算出部4は、チャネル行列と、受信ウェイト決定部2が決定した受信ウェイト行列とを乗算して、無線装置が通信相手でない無線端末に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。
【0020】
ここで、受信ウェイト決定部2が決定した第2受信ウェイトは、第2無線端末のアンテナ数と、第2無線装置から第2無線端末に伝送されるデータ信号数とに応じた次元の行列である。また、第3チャネル行列は、第1無線装置と第2無線端末との間のチャネル応答に基づく行列であり、第1無線装置のアンテナ数と、第2無線端末のアンテナ数とに応じた次元の行列である。干渉チャネル算出部4は、第3チャネル行列と第2受信ウェイト行列とを乗算することにより、第1無線装置が第2無線端末に与える干渉信号数に応じた次元の行列を算出し、算出した行列を干渉チャネル行列とする。すなわち、干渉チャネル算出部4は、第3チャネル行列と第2受信ウェイト行列とを乗算することにより、各無線端末に対して干渉抑圧するチャネル数が、無線端末のアンテナ数からデータ信号数に変更された干渉チャネル行列を求める。
【0021】
送信ウェイト算出部5は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とに基づいて、第1無線装置が第2無線通信端末に与える干渉を抑圧しつつ第1データ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する。つまり、送信ウェイト算出部5は、算出されたデータチャネル行列と、算出された干渉チャネル行列とを用いて、無線装置が通信相手でない無線端末に与える干渉を抑圧しながらデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する。
【0022】
以上説明したように、制御装置1は、各無線端末のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を算出する。制御装置1は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを乗算して、無線装置から無線端末に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。制御装置1は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを乗算して、無線装置から通信相手でない無線端末へ与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。制御装置1は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とを用いて、無線装置が通信相手でない無線端末へ与える干渉を抑圧しながらデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する。
【0023】
制御装置1は、データ信号に対応する受信ウェイト行列を用いて干渉チャネル行列を算出するので、データ信号に与える干渉を精度よく求めることができる。また、制御装置1は、干渉チャネル行列を干渉抑圧に用いることで、各無線端末に対して干渉抑圧するチャネルの数を、無線端末のアンテナ数からデータ信号数に変更することができる。そのため、制御装置1は、データ信号数が無線端末のアンテナ数よりも少ない場合、干渉抑圧性能を維持しながら干渉抑圧するチャネルの数を減らすことができる。その結果、制御装置1は、減らしたチャネルを、データ信号に割り当てることができる。すなわち、制御装置1を用いることにより、干渉抑圧するチャネル数を減らし、データ信号数を増加させることができる。したがって、第1の実施形態にかかる制御装置1によれば、データ信号数を増やすことができるため、スループットを向上できる。
【0024】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態を具体的にした実施形態である。
【0025】
<無線通信システムの構成例>
図2を用いて、第2の実施形態にかかる無線通信システム100の構成例を説明する。図2は、第2の実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。図2に示すように、無線通信システム100は、コアネットワーク10と、制御装置20と、無線装置30-1及び30-2と、無線端末40-1及び40-2とを備える。なお、無線通信システム100は、2つの無線装置(無線装置30-1及び30-2)を備える構成としているが、3つ以上の無線装置を備える構成であってもよい。また、無線通信システム100は、2つの無線端末(無線端末40-1及び40-2)を備える構成としているが、3つ以上の無線端末を備える構成であってもよい。
【0026】
コアネットワーク10は、例えば、3GPP(Third Generation Partnership Project)において規定されているコアネットワーク装置により構成されるネットワークである。コアネットワーク10は、制御装置20と接続されており、制御装置20と異なる制御装置から無線端末40にデータが送信される場合、制御装置20は、当該データをコアネットワーク10から受信する。なお、制御装置20と異なる制御装置から無線端末40にデータが送信される場合、制御装置20は、他の制御装置との間のインターフェースを用いて当該データを受信してもよい。
【0027】
制御装置20は、第1の実施形態における制御装置1に対応する。制御装置20は、例えば、CU(Central Unit又はCentralized Unit)等であってもよく、C-RAN(Centralized Radio Access Network)構成における集約ノードであってもよい。制御装置20は、伝送路50-1を介して無線装置30-1と接続及び通信を行う。また、制御装置20は、伝送路50-2を介して無線装置30-2と接続及び通信を行う。伝送路50-1及び50-2は、例えば、光ファイバ、メタルケーブル、無線伝搬路といった情報伝送に使用される媒体である。なお、以降の説明において、伝送路50-1及び50-2を区別する必要がない場合、単に「伝送路50」と記載することがある。
【0028】
無線装置30-1及び30-2は、例えば、RU(Radio Unit又はRemote Unit)、DU(Distributed Unit)、TRP(Transmission Reception Point)であってもよく、C-RAN構成における分散ノードであってもよい。無線装置30-1及び30-2の少なくとも一方は、制御装置20と物理的に離れた位置に設けられてもよい。無線装置30-1及び30-2は、無線端末40-1及び40-2と無線伝搬路を介して接続及び無線通信を行う。なお、以降の説明において、無線装置30-1は無線端末40-1と、無線装置30-2は無線端末40-2と、無線通信を行うものとする。また、無線装置30-1は、無線装置#1と称して記載することがあり、無線装置30-2は、無線装置#2と称して記載することがある。さらに、無線装置30-1及び30-2を区別する必要がない場合、単に「無線装置30」と記載することがある。
【0029】
無線端末40-1及び40-2は、例えば、移動局、UE(User Equipment)又は中継機能を有する中継装置であってもよい。無線端末40-1及び40-2は、アンテナ41-1~41-M(Mは2以上の整数)、無線送受信部(不図示)及び無線信号処理部(不図示)を備える。なお、以降の説明において、無線端末40-1は、無線端末#1と記載することがあり、無線端末40-2は、無線端末#2と記載することがある。また、無線端末40-1及び40-2を区別する必要がない場合、単に「無線端末40」と記載することがある。さらに、アンテナ41-1~41-Mを区別する必要がない場合、単に「アンテナ41」と記載することがある。
【0030】
<制御装置の構成例>
次に、制御装置20の構成例について説明する。図2に示すように、制御装置20は、センター無線信号処理部21、及び伝送路IF(Interface)22を備える。
【0031】
センター無線信号処理部21は、PHY(Physical)層の一部の機能、及びPHY層よりも上位の層の機能を有する。なお、センター無線信号処理部21の機能の一部が、物理的に離れた他の装置で制御される構成であってもよい。センター無線信号処理部21の詳細な構成については後述する。
伝送路IF22は、伝送路50を介して無線装置30の伝送路IF31と通信を行う。
【0032】
<無線装置の構成例>
次に、無線装置30の構成例について説明する。図2に示すように、無線装置30は、伝送路IF(Interface)31、リモート無線信号処理部32、無線送受信部33、及びアンテナ34-1~34-N(Nは2以上の整数)を備える。
【0033】
伝送路IF31は、伝送路50を介して制御装置20の伝送路IF22と通信を行う。
リモート無線信号処理部32は、PHY層の一部の機能を有する。リモート無線信号処理部32は、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)機能、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)機能、及びプリコーディングウェイトの乗算機能等を有する。
【0034】
無線送受信部33は、ベースバンド信号を無線周波数信号に変換し、無線周波数信号をベースバンド信号に変換する。
アンテナ34-1~34-Nは、無線端末40に無線周波数信号を送信し、無線端末40が送信した無線周波数信号を受信する。なお、以降の説明において、アンテナ34-1~34-Nを区別する必要がない場合、単に「アンテナ34」と記載することがある。
【0035】
<センター無線信号処理部の構成例>
次に、図3を用いて、センター無線信号処理部21の詳細な構成について説明する。図3は、第2の実施形態にかかるセンター無線信号処理部の構成例を示す図である。図3に示すように、センター無線信号処理部21は、プリコーディングウェイト生成部211と、送信信号生成部212と、スケジューリング部213とを備える。なお、図3において、本開示と直接の関連がない機能ブロックについては図示を省略している。
【0036】
プリコーディングウェイト生成部211は、伝送路IF22を介して無線装置30から受信信号を受信する。また、プリコーディングウェイト生成部211は、無線装置30のアンテナ34の各々と、無線端末40のアンテナ41の各々との間のチャネル応答の推定値を受信する。プリコーディングウェイト生成部211は、受信した受信信号又はチャネル応答の推定値を用いてプリコーディングウェイトを生成し、生成したプリコーディングウェイトを、伝送路IF22を介して無線装置30へ伝送する。
【0037】
なお、本実施形態では、無線装置30が、プリコーディングウェイト生成部211から受信したプリコーディングウェイトの乗算機能を備えることとして説明するが、送信信号生成部212がプリコーディングウェイトの乗算機能を備えてもよい。この場合、プリコーディングウェイト生成部211は、生成したプリコーディングウェイトを送信信号生成部212へ伝送する。プリコーディングウェイト生成部211の詳細な構成は後述する。
【0038】
送信信号生成部212は、無線端末40へ送信する信号を生成し、伝送路IF22を介して無線装置30へ伝送する。なお、上述したように、送信信号生成部212が、プリコーディングウェイトの乗算機能を有する構成であってもよい。
【0039】
スケジューリング部213は、無線装置30と無線端末40との間の通信についてのスケジューリングを行う。スケジューリング部213は、プリコーディングウェイト生成部211からプリコーディングウェイト及びチャネル応答の推定値を受信し、受信したプリコーディングウェイト及びチャネル応答の推定値を用いてスケジューリングを行ってもよい。
【0040】
<プリコーディングウェイト生成部の構成例>
次に、図4を用いて、プリコーディングウェイト生成部211の詳細な構成について説明する。図4は、第2の実施形態にかかるプリコーディングウェイト生成部の構成例を示す図である。図4に示すように、プリコーディングウェイト生成部211は、チャネル行列生成部2111と、受信ウェイト決定部2112と、データチャネル算出部2113と、干渉チャネル算出部2114と、送信ウェイト算出部2115と、を備える。
【0041】
チャネル行列生成部2111は、無線装置30のアンテナ34-1~34-Nの各々と無線端末40のアンテナ41-1~41-Mの各々との間のチャネル応答の推定値を取得し、チャネル応答の推定値を各要素に持つチャネル行列を生成する。チャネル行列生成部2111は、無線装置30-1と、無線端末40-1との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列を算出する。チャネル行列生成部2111は、無線装置30-2と、無線端末40-2との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を算出する。チャネル行列生成部2111は、無線装置30-1と、無線端末40-2との間のチャネル応答に基づく第3チャネル行列を算出する。チャネル行列生成部2111は、無線装置30-2と、無線端末40-1との間のチャネル応答に基づく第4チャネル行列を算出する。
【0042】
チャネル行列生成部2111は、チャネル応答を推定することにより、チャネル応答の推定値を取得してもよい。もしくは、無線装置30のリモート無線信号処理部32がチャネル応答を推定し、チャネル行列生成部2111は、リモート無線信号処理部32から伝送路50を介してチャネル応答の推定値を取得してもよい。もしくは、リモート無線信号処理部32がチャネル応答の推定値を要素に持つチャネル行列を生成し、チャネル行列生成部2111は、リモート無線信号処理部32から伝送路50を介して、当該チャネル行列を取得してもよい。チャネル行列生成部2111は、生成したチャネル行列又はリモート無線信号処理部32から取得したチャネル行列を受信ウェイト決定部2112に伝送する。
【0043】
受信ウェイト決定部2112は、第1の実施形態における受信ウェイト決定部2に対応する。受信ウェイト決定部2112は、チャネル行列生成部2111から伝送されたチャネル行列を用いて、無線装置30から無線端末40に送信されるデータ信号に対応する受信ウェイト行列を算出する。
【0044】
具体的には、受信ウェイト決定部2112は、無線装置30-1と無線端末40-1との間のチャネル応答に基づく第1チャネル行列を用いて、無線端末40-1のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を算出する。また、受信ウェイト決定部2112は、無線装置30-2と無線端末40-2との間のチャネル応答に基づく第2チャネル行列を用いて、無線端末40-2のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を算出する。受信ウェイト決定部2112は、算出した受信ウェイト行列とチャネル行列とをデータチャネル算出部2113及び干渉チャネル算出部2114へ伝送する。
【0045】
データチャネル算出部2113は、第1の実施形態におけるデータチャネル算出部3に対応する。データチャネル算出部2113は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1から無線端末40-1及び無線装置30-2から無線端末40-2に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。データチャネル算出部2113は、算出したデータチャネル行列を送信ウェイト算出部2115へ伝送する。
【0046】
ここで、無線装置30-1と、無線端末40-1との間のチャネル応答に基づくチャネル行列は第1チャネル行列である。無線装置30-2と、無線端末40-2との間のチャネル応答に基づくチャネル行列は第2チャネル行列である。無線端末40-1のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を第1受信ウェイト行列とする。無線端末40-2のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を第2受信ウェイト行列とする。データチャネル算出部2113は、第1チャネル行列と、第1受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1から無線端末40-1に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。データチャネル算出部2113は、第2チャネル行列と、第2受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-2から無線端末40-2に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。
【0047】
干渉チャネル算出部2114は、第1の実施形態における干渉チャネル算出部4に対応する。干渉チャネル算出部2114は、受信ウェイト決定部2112から伝送されたチャネル行列と受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1から無線端末40-2及び無線装置30-2から無線端末40-1に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。干渉チャネル算出部2114は、算出した干渉チャネル行列を送信ウェイト算出部2115へ伝送する。
【0048】
ここで、無線装置30-1と、無線端末40-2との間のチャネル応答に基づくチャネル行列は第3チャネル行列である。無線装置30-2と、無線端末40-1との間のチャネル応答に基づくチャネル行列は第4チャネル行列である。干渉チャネル算出部2114は、第3チャネル行列と、第2受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1が無線端末40-2に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。また、干渉チャネル算出部2114は、第4チャネル行列と、第1受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-2が無線端末40-1に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。
【0049】
送信ウェイト算出部2115は、第1の実施形態における送信ウェイト算出部5に対応する。送信ウェイト算出部2115は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とを用いて、無線装置30-1及び30-2の各々がデータ信号を送信する際に用いる送信ウェイト行列を算出する。送信ウェイト算出部2115は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とに基づいて、無線装置30-1が、無線端末40-2に与える干渉を抑圧しつつ無線端末40-1にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する。送信ウェイト算出部2115は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とに基づいて、無線装置30-2が、無線端末40-1に与える干渉を抑圧しつつ無線端末40-2にデータ信号を送信するための送信ウェイト行列を算出する。送信ウェイト算出部2115は、算出した送信ウェイト行列を、プリコーディングウェイトとして、伝送路IF22を介して、対応する無線装置30へ伝送する。
【0050】
<プリコーディングウェイト生成部の動作例>
次に、図5を用いて、プリコーディングウェイト生成部211の動作例を説明する。図5は、第2の実施形態にかかるプリコーディングウェイト生成部の動作例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、チャネル行列生成部2111は、無線装置30のアンテナ34-1~34-Nの各々と無線端末40のアンテナ41-1~41-Mの各々との間のチャネル応答の推定値に基づくチャネル行列を生成する(ステップS101)。チャネル行列生成部2111は、無線装置30-b(bは1又は2)のアンテナ34-1~34-Nの各々と無線端末40-k(kは1又は2)のアンテナ41-1~41-Mの各々との間のチャネル応答の推定値を取得する。チャネル行列生成部2111は、チャネル応答の推定値を要素に持つM×N次元のチャネル行列Hb,kを生成する。
【0052】
次に、受信ウェイト決定部2112は、生成されたチャネル行列を用いて、無線装置30から無線端末40に送信されるデータ信号に対応する受信ウェイト行列を算出する(ステップS102)。
【0053】
ここで、受信ウェイト決定部2112が受信ウェイト行列を決定する方法について説明する。以降の説明では、無線装置30-bから無線端末40-kに伝送されるデータ信号数をDとする。なお、Dは1以上、かつM以下であるとする。また、無線端末40-kに対応するM×D次元受信ウェイト行列をUとする。
【0054】
受信ウェイト行列の決定方法の一例として、チャネル行列に対する特異値分解を用いる方法がある。受信ウェイト決定部2112は、M×N次元チャネル行列の特異値分解により算出されるM次元左特異ベクトルの中から特異値の大きいD個のM次元左特異ベクトルを選択する。受信ウェイト決定部2112は、選択したD個のM次元左特異ベクトルを、受信ウェイト行列Uの各列ベクトルとして、受信ウェイト行列Uを決定する。
【0055】
受信ウェイト行列の決定方法の第2の例として、チャネル行列の相関行列に対する固有値分解を用いる方法がある。受信ウェイト決定部2112は、チャネル行列と、チャネル行列のエルミート転置との積であるM×M次元相関行列の固有値分解により算出されるM次元固有ベクトルの中から固有値の大きいD個のM次元固有ベクトルを選択する。受信ウェイト決定部2112は、選択したD個のM次元固有ベクトルを、受信ウェイト行列Uの各列ベクトルとして、受信ウェイト行列Uを決定する。
【0056】
受信ウェイト行列の決定方法の第3の例として、予め用意された複数の受信ウェイトベクトルの中から選択(構成)する方法がある。受信ウェイト決定部2112は、予め用意された複数のM次元の受信ウェイトベクトルの各々をM×N次元チャネル行列に乗算する。受信ウェイト決定部2112は、算出されたN次元ウェイトベクトルのノルムが大きいD個のM次元ウェイトベクトルを、受信ウェイト行列Uの各列ベクトルとして、受信ウェイト行列Uを決定する。
【0057】
受信ウェイト行列の決定方法の第4の例として、予め用意された送信ウェイトベクトルを用いて算出する方法がある。受信ウェイト決定部2112は、予め用意されたN次元の送信ウェイトベクトルの各々をM×N次元チャネル行列に乗算する。なお、予め用意したN次元の送信ウェイトベクトルは、送信ウェイト算出部2115が算出する送信ウェイト行列とは異なる仮の送信ウェイトベクトルである。受信ウェイト決定部2112は、算出されたM次元ベクトルの中からノルムの大きいD個を選択し、受信ウェイト行列Uの各列ベクトルとする。なお、受信ウェイト決定部2112は、受信ウェイト行列の各列ベクトルが、ノルムが1となるように正規化してもよい。
【0058】
図5に戻り説明を続ける。データチャネル算出部2113は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1から無線端末40-1、及び無線装置30-2から無線端末40-2に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する(ステップS103)。
【0059】
データチャネル行列は、チャネル行列のエルミート転置と、受信ウェイト行列との積により算出される。無線装置30-b(bは1又は2)から無線端末40-k(kは1又は2)へ送信されるデータ信号に対応するN×D次元データチャネル行列をFb,kとする。このとき、データチャネル行列Fb,kは、次式(1)により計算される。データチャネル算出部2113は、チャネル行列Hb,kと、受信ウェイト行列Uと、式(1)とを用いて、データチャネル行列Fb,kを算出する。
【数1】
ただし、はエルミート転置を表す。
【0060】
次に、干渉チャネル算出部2114は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1が無線端末40-2、及び無線装置30-2が無線端末40-1に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する(ステップS104)。
【0061】
干渉チャネル行列は、チャネル行列のエルミート転置と、受信ウェイト行列との積により算出される。ここで、無線装置30-b(bは1又は2)が無線端末40-j(jは1又は2)のデータ信号に与える干渉に対応するN×D次元干渉チャネル行列をGb,jとする。このとき、干渉チャネル行列Gb,jは、次式(2)により計算される。干渉チャネル算出部2114は、チャネル行列Hb,kと、受信ウェイト行列Uと、式(2)とを用いて、データチャネル行列Gb,jを算出する。
【数2】
【0062】
なお、干渉チャネル算出部2114は、干渉の大きさに基づいて、干渉チャネル行列の要素数を削減してもよい。干渉チャネル算出部2114は、例えば、Gb,jの各列ベクトルのノルムを計算し、ノルムが小さい列ベクトルをGb,jから除くことにより、干渉チャネル行列Gb,jの列数をDより少なくしてもよい。
【0063】
最後に、送信ウェイト算出部2115は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とを用いて、無線装置30-1及び30-2の各々がデータ信号を送信する際に用いる送信ウェイト行列を算出する(ステップS105)。送信ウェイト算出部2115は、算出した送信ウェイト行列を、プリコーディングウェイトとして、伝送路IF22を介して、対応する無線装置30へ伝送する。
【0064】
ここで、送信ウェイト算出部2115が実行する送信ウェイト行列の算出方法について説明する。以下では、無線装置30-1に対する送信ウェイト行列の算出方法を一例として説明するが、無線装置30-2に対しても同様の算出方法が適用される。
【0065】
送信ウェイト算出部2115は、無線端末40-1に対するデータチャネル行列と無線端末40-2に対する干渉チャネル行列とを要素に持つN×(D+D)次元行列Aを生成する。このとき、Aは次式(3)のように表せる。
【数3】
【0066】
次に、送信ウェイト算出部2115は、N×(D+D)次元行列Aを用いて、次式(4)のようにZF(Zero Forcing)方式のN×(D+D)次元ウェイト行列Wを生成する。
【数4】
【0067】
なお、本実施形態では、送信ウェイト算出部2115は、ウェイト行列の生成にZF方式を用いることとするが、MMSE(Minimum Mean Square Error)方式、SLNR(Signal-to-Leakage-plus-Noise Ratio)方式、ブロック対角化方式等を用いてもよい。
【0068】
送信ウェイト算出部2115は、N×(D+D)次元ウェイト行列Wの第1~D列ベクトルを、無線端末40-1に対するN×D次元プリコーディングウェイト行列として無線装置30-1へ伝送する。なお、送信ウェイト算出部2115は、プリコーディングウェイト行列の各列ベクトルが、ノルムが1となるように正規化してもよい。
【0069】
以上説明したように、チャネル行列生成部2111は、無線装置30と無線端末40との間のチャネル行列を生成する。受信ウェイト決定部2112は、無線端末40-1及び40-2のデータ信号に対応する受信ウェイト行列を算出する。データチャネル算出部2113は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1から無線端末40-1及び無線装置30-2から無線端末40-2に送信されるデータ信号に対応するデータチャネル行列を算出する。干渉チャネル算出部2114は、チャネル行列と受信ウェイト行列とを用いて、無線装置30-1から無線端末40-2及び無線装置30-2から無線端末40-1に与える干渉に対応する干渉チャネル行列を算出する。送信ウェイト算出部2115は、データチャネル行列と干渉チャネル行列とを用いて、無線装置30-1及び30-2の各々がデータ信号を送信する際に用いる送信ウェイト行列を算出する。
【0070】
干渉チャネル算出部2114は、データ信号に対応する受信ウェイト行列を用いて干渉チャネル行列を算出するので、データ信号に与える干渉を精度よく求めることができる。また、送信ウェイト算出部2115は、干渉チャネル行列を干渉抑圧に用いることで、各無線端末に対して干渉抑圧するチャネルの数を、無線端末のアンテナ数からデータ信号数に変更する。具体的には、干渉チャネル算出部2114は、式(2)に示すように、M×N次元のチャネル行列Hb,jと、N×D次元の受信ウェイト行列Uとを乗算するため、N×D次元の干渉チャネル行列を算出する。送信ウェイト算出部2115は、N×D次元の干渉チャネル行列を干渉抑圧に用いるため、各無線端末に対して干渉抑圧するチャネルの数を、無線端末のアンテナ数からデータ信号数に変更することができる。そのため、データ信号数が無線端末のアンテナ数よりも少ない場合、制御装置20は、干渉抑圧性能を維持しながら干渉抑圧するチャネルの数を減らすことができる。すなわち、制御装置20を用いることにより、干渉抑圧するチャネル数を減らし、データ信号数を増加させることができる。したがって、第2の実施形態にかかる制御装置20によれば、データ信号数を増やすことができるため、スループットを向上できる。
【0071】
(他の実施形態)
上述した実施形態にかかる制御装置1及び20(以下、制御装置1等と称する)は次のようなハードウェア構成を有していてもよい。図6は、本開示の各実施形態にかかる制御装置等を実現可能な、コンピュータ(情報処理装置)のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0072】
図6を参照すると、制御装置1等は、ネットワーク・インターフェース1201、プロセッサ1202、及びメモリ1203を含む。ネットワーク・インターフェース1201は、無線装置30-1及び30-2等、無線通信システムに含まれる他の通信装置と通信するために使用される。
【0073】
プロセッサ1202は、メモリ1203からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述した実施形態においてフローチャートを用いて説明された制御装置1等の処理を実行する。プロセッサ1202は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ1202は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0074】
メモリ1203は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1203は、プロセッサ1202から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ1202は、図示されていないI/O(Input/Output)インターフェースを介してメモリ1203にアクセスしてもよい。
【0075】
図6の例では、メモリ1203は、ソフトウェアモジュール群を格納するために使用される。プロセッサ1202は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ1203から読み出して、当該ソフトウェアモジュール群による指示に応じた処理を実行することで、上述した実施形態において説明された制御装置1等の動作を実現できる。
【0076】
図6を用いて説明したように、制御装置1等が有するプロセッサの各々は、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1または複数のプログラムを実行する。
【0077】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、半導体メモリを含む。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0078】
本明細書における、ユーザ端末(User Equipment、UE)(もしくは移動局(mobile station)、移動端末(mobile terminal)、モバイルデバイス(mobile device)、または無線端末(wireless device)などを含む)は、無線インターフェースを介して、ネットワークに接続されたエンティティである。
【0079】
本明細書は、専用の通信装置に限定されるものではなく、次のような通信機能を有する任意の機器に適用することが可能である。
【0080】
用語として「(3GPPで使われる単語としての)ユーザ端末(User Equipment、UE)」、「移動局」、「移動端末」、「モバイルデバイス」、「無線端末」のそれぞれは、一般的に互いに同義であることを意図しており、ターミナル、携帯電話、スマートフォン、タブレット、セルラIoT(Internet of Things)端末、IoTデバイス、などのスタンドアローン移動局であってもよい。用語として「移動局」「移動端末」「モバイルデバイス」は、長期間にわたって備え付けられている装置も包含することが理解されよう。
【0081】
またUEは、例えば、生産設備・製造設備および/またはエネルギー関連機械のアイテム(一例として、ボイラー、機関、タービン、ソーラーパネル、風力発電機、水力発電機、火力発電機、原子力発電機、蓄電池、原子力システム、原子力関連機器、重電機器、真空ポンプなどを含むポンプ、圧縮機、ファン、送風機、油圧機器、空気圧機器、金属加工機械、マニピュレータ、ロボット、ロボット応用システム、工具、金型、ロール、搬送装置、昇降装置、貨物取扱装置、繊維機械、縫製機械、印刷機、印刷関連機械、紙工機械、化学機械、鉱山機械、鉱山関連機械、建設機械、建設関連機械、農業用機械および/または器具、林業用機械および/または器具、漁業用機械および/または器具、安全および/または環境保全器具、トラクター、軸受、精密ベアリング、チェーン、歯車(ギアー)、動力伝動装置、潤滑装置、弁、管継手、および/または上記で述べた任意の機器又は機械のアプリケーションシステムなど)であっても良い。
【0082】
またUEは、例えば、輸送用装置のアイテム(一例として、車両、自動車、二輪自動車、自転車、列車、バス、リヤカー、人力車、船舶(ship and other watercraft)、飛行機、ロケット、人工衛星、ドローン、気球など)であっても良い。
【0083】
またUEは、例えば、情報通信用装置のアイテム(一例として、電子計算機及び関連装置、通信装置及び関連装置、電子部品など)であっても良い。
【0084】
またUEは、例えば、冷凍機、冷凍機応用製品および装置、商業およびサービス用機器、自動販売機、自動サービス機、事務用機械及び装置、民生用電気・電子機械器具(一例として音声機器、スピーカー、ラジオ、映像機器、テレビ、オーブンレンジ、炊飯器、コーヒーメーカー、食洗機、洗濯機、乾燥機、扇風機、換気扇及び関連製品、掃除機など)であっても良い。
【0085】
またUEは、例えば、電子応用システムまたは電子応用装置(一例として、X線装置、粒子加速装置、放射性物質応用装置、音波応用装置、電磁応用装置、電力応用装置など)であっても良い。
【0086】
またUEは、例えば、電球、照明、計量機、分析機器、試験機及び計測機械(一例として、煙報知器、対人警報センサ、動きセンサ、無線タグなど)、時計(watchまたはclock)、理化学機械、光学機械、医療用機器および/または医療用システム、武器、利器工匠具、または手道具などであってもよい。
【0087】
またUEは、例えば、無線通信機能を備えたパーソナルデジタルアシスタントまたは装置(一例として、無線カードや無線モジュールなどを取り付けられる、もしくは挿入するよう構成された電子装置(例えば、パーソナルコンピュータや電子計測器など))であっても良い。
【0088】
またUEは、例えば、有線や無線通信技術を使用した「あらゆるモノのインターネット(IoT)」において、以下のアプリケーション、サービス、ソリューションを提供する装置またはその一部であっても良い。
【0089】
IoTデバイス(もしくはモノ)は、デバイスが互いに、および他の通信デバイスとの間で、データ収集およびデータ交換することを可能にする適切な電子機器、ソフトウェア、センサ、ネットワーク接続、などを備える。
【0090】
またIoTデバイスは、内部メモリの格納されたソフトウェア指令に従う自動化された機器であっても良い。
【0091】
またIoTデバイスは、人間による監督または対応を必要とすることなく動作しても良い。
またIoTデバイスは、長期間にわたって備え付けられている装置および/または、長期間に渡って非活性状態(inactive)状態のままであっても良い。
【0092】
またIoTデバイスは、据え置き型な装置の一部として実装され得る。IoTデバイスは、非据え置き型の装置(例えば車両など)に埋め込まれ得る、または監視される/追跡される動物や人に取り付けられ得る。
【0093】
人間の入力による制御またはメモリに格納されるソフトウェア命令、に関係なくデータを送受信する通信ネットワークに接続することができる、任意の通信デバイス上に、IoT技術が実装できることは理解されよう。
【0094】
IoTデバイスが、機械型通信(Machine Type Communication、MTC)デバイス、またはマシンツーマシン(Machine to Machine、M2M)通信デバイス、と呼ばれることもあるのは理解されよう。
【0095】
またUEが、1つまたは複数のIoTまたはMTCアプリケーションをサポートすることができることが理解されよう。
【0096】
MTCアプリケーションのいくつかの例は、以下の表(出典:3GPP TS22.368 V13.2.0(2017-01-13) Annex B、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に列挙されている。このリストは、網羅的ではなく、一例としてのMTCアプリケーションを示すものである。
【表1】
【0097】
アプリケーション、サービス、ソリューションは、一例として、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)サービス/システム、防災無線サービス/システム、構内無線電話(PBX(Private Branch eXchange:構内交換機))サービス/システム、PHS/デジタルコードレス電話サービス/システム、POS(Point of sale)システム、広告発信サービス/システム、マルチキャスト(MBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service))サービス/システム、V2X(Vehicle to Everything:車車間通信および路車間・歩車間通信)サービス/システム、列車内移動無線サービス/システム、位置情報関連サービス/システム、災害/緊急時無線通信サービス/システム、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)サービス/システム、コミュニティーサービス/システム、映像配信サービス/システム、Femtoセル応用サービス/システム、VoLTE(Voice over LTE)サービス/システム、無線TAGサービス/システム、課金サービス/システム、ラジオオンデマンドサービス/システム、ローミングサービス/システム、ユーザ行動監視サービス/システム、通信キャリア/通信NW選択サービス/システム、機能制限サービス/システム、PoC(Proof of Concept)サービス/システム、端末向け個人情報管理サービス/システム、端末向け表示・映像サービス/システム、端末向け非通信サービス/システム、アドホックNW/DTN(Delay Tolerant Networking)サービス/システムなどであっても良い。
【0098】
なお、上述したUEのカテゴリは、本明細書に記載された技術思想及び実施形態の応用例に過ぎない。これらの例に限定されるものではなく、当業者は種々の変更が可能であることは勿論である。
【0099】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1、20 制御装置
2 受信ウェイト決定部
3 データチャネル算出部
4 干渉チャネル算出部
5 送信ウェイト算出部
10 コアネットワーク
21 センター無線信号処理部
22 伝送路IF
30-1、30-2 無線装置
31 伝送路IF
32 リモート無線信号処理部
33 無線送受信部
34-1~34-N、41-1~41-M アンテナ
40-1、40-2 無線端末
100 無線通信システム
211 プリコーディングウェイト生成部
212 送信信号生成部
213 スケジューリング部
2111 チャネル行列生成部
2112 受信ウェイト決定部
2113 データチャネル算出部
2114 干渉チャネル算出部
2115 送信ウェイト算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6