(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】静電潜像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/09 20060101AFI20240409BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240409BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G9/097 371
G03G9/097 374
(21)【出願番号】P 2020078143
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 育子
(72)【発明者】
【氏名】宮島 謙史
(72)【発明者】
【氏名】萱森 隆成
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161825(JP,A)
【文献】特開2016-130806(JP,A)
【文献】特開2002-182433(JP,A)
【文献】特開2001-312099(JP,A)
【文献】特開2019-200345(JP,A)
【文献】特開2009-282351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナー母体粒子と外添剤からなるトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、着色剤と結着樹脂とを含有し、
前記着色剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される構造を有する金属含有化合物に配位した着色剤を含有し、
前記外添剤が、一次粒子の個数平均粒径が、8~50nmの範囲内の、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であり
、
前記表面修飾されたアルミナ微粒子の表面に残存する炭素含有量が、前記アルミナ微粒子に対して0.5~10質量%の範囲内であり、
前記トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内で前記外添剤を含
み、かつ、
ガラス転移温度が、30~65℃の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【化1】
(式中、Rx
1及びRx
2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Lxは、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1~20の、直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を表す。Gx1は、置換又は非置換の炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Gx
2は、置換又は非置換の炭素数1~5の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
Gx
3は、水素原子、ハロゲン原子、Gx
4-CO-NH-で表される基、又はGx
5-N(Gx
6)-CO-で表される基を表し、Gx
4は置換基を表し、Gx
5及びGx
6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
Qx
1、Qx
2、Qx
3、Qx
4、及びQx
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。)
【化2】
(式中、R
1は、置換又は非置換の、炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
R
2は、水素原子、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ニトロフェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
R
3は、置換又は非置換の炭素数9~120の芳香族炭化水素含有基を表す。
Mは、2価の金属元素を表す。)
【請求項2】
前記疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子が、下記式(1)で表されるシランカップリング剤により疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であることを特徴とする請求項
1に記載の静電潜像現像用トナー。
式(1): X
n-Si(OR)
m
(式中、Xは、炭素数1~16のアルキル基を表す。Rは、メチル基又はエチル基を表す。nは、1又は2を表し、mは、2又は3を表し、n+mは、4である。)
【請求項3】
前記トナー母体粒子が、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載の静電潜像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。より詳しくは、本発明は、環境変動における画質低下を抑制し、色再現性と低温定着性の優れた静電潜像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精細・高画質な画像への要求が高まり、画像を形成する静電潜像現像用トナー(以下単に「トナー」ともいう。)に関しては、高い色再現性が望まれている。色再現性に関しては、一般的に有機顔料や油溶性染料に機能が求められているが、これらは良好な分散性が得られにくく透明性が低下し十分な色再現性が得られていなかった。
【0003】
この対策として、特許文献1では、着色剤前駆体と金属含有化合物とからなる着色剤を使用することでトナー内の分散性が向上し、十分な色再現性が得られるという手法が提案されている。
【0004】
一方で、近年、省エネルギーの観点から低温定着トナーの開発が進み、トナーの樹脂は熱によって動きやすい性質を有するようになっている。このため、このような低温定着トナーに上記の着色剤を使用した場合、特に高温高湿下における画質の低下が顕著になることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、環境変動における画質低下を抑制し、色再現性と低温定着性の優れた静電潜像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、金属元素を有する着色剤を含有するトナー母体粒子と、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子を外添剤として用いることにより、特に高温高湿下における画質低下を抑制できるトナーを実現できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.少なくともトナー母体粒子と外添剤からなるトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、着色剤と結着樹脂とを含有し、
前記着色剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される構造を有する金属含有化合物に配位した着色剤を含有し、
前記外添剤が、一次粒子の個数平均粒径が、8~50nmの範囲内の、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であり、
前記表面修飾されたアルミナ微粒子の表面に残存する炭素含有量が、前記アルミナ微粒子に対して0.5~10質量%の範囲内であり、
前記トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内で前記外添剤を含み、かつ、
ガラス転移温度が、30~65℃の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【0009】
【0010】
(式中、
Rx1及びRx2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Lxは、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1~20の、直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を表す。Gx1は、置換又は非置換の炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Gx2は、置換又は非置換の炭素数1~5の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
Gx3は、水素原子、ハロゲン原子、Gx4-CO-NH-で表される基、又はGx5-N(Gx6)-CO-で表される基を表し、Gx4は置換基を表し、Gx5及びGx6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
Qx1、Qx2、Qx3、Qx4、及びQx5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。)
【0011】
【0012】
(式中、
R1は、置換又は非置換の、炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
R2は、水素原子、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ニトロフェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
R3は、置換又は非置換の炭素数9~120の芳香族炭化水素含有基を表す。
Mは、2価の金属元素を表す。)
【0014】
2.前記疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子が、下記式(1)で表されるシランカップリング剤により疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
式(1): Xn-Si(OR)m
(式中、Xは、炭素数1~16のアルキル基を表す。Rは、メチル基又はエチル基を表す。nは、1又は2を表し、mは、2又は3を表し、n+mは、4である。)
【0016】
3.前記トナー母体粒子が、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電潜像現像用トナー。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、環境変動における画質低下を抑制し、色再現性と低温定着性の優れた静電潜像現像用トナーを提供することができる。本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0018】
低温定着トナーにおいて着色剤を含有した場合に画像の劣化が生じる機構については、以下のように考えられる。低温定着トナーに含有された着色剤は低分子であることから、着色剤が有する金属イオンの極性によって徐々にトナー製造中にトナー表面に移動してくることが明らかになった。金属イオンを有する着色剤がトナー表面近傍に存在することで、空気中の水分子が配位しやすくなり、特に高湿高温下でのトナーの低帯電量化に伴い、画像の劣化が顕著になることが推定された。
【0019】
トナー母体粒子表面の水分子の配位のしやすさは、表面に疎水化処理された外添剤粒子を添加することで抑制できることが知られている。一般的に、外添剤は無機酸化物の微粉末、多くの場合シリカ・チタニア・アルミナが挙げられる。外添剤の表面は水分子の配位を抑制できる程度に疎水化処理を施すことが必要であり、その疎水化処理剤の量を増やすにしたがって粒子の抵抗はあがり転写不良に伴う画質の低下が生じるため、無機微粒子の基体自体の抵抗がなるべく低いことが要求される。
また、本検討の中で、無機微粒子の屈折率が大きいほど反射光が分散されて色再現性が低下することが明らかとなり、無機微粒子自体の屈折率は、なるべく小さいことが要求される。
【0020】
鋭意検討の結果、両者の要件を満たすものがアルミナ微粒子であり、特に一次粒子の個数平均粒径が、8~50nmの範囲内の粒子でその効果が顕著であることが分かった。8nmより小さい場合はトナー母体表面に埋没してその効果が弱まり、50nmより大きい場合では、屈折率の影響が大きく色再現性が低下することが分かった。また、トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内でアルミナ微粒子を含むことで、水分子の配位の抑制及び色再現性の確保の両立に効果があること分かった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくともトナー母体粒子と外添剤からなるトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、着色剤と結着樹脂とを含有し、前記着色剤が、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、前記一般式(2)で表される構造で表される金属含有化合物に配位した着色剤を含有し、前記外添剤が、一次粒子の個数平均粒径が、8~50nmの範囲内の、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であり、かつ、前記トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内で前記外添剤を含むことを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0022】
本発明の実施態様としては、水分子の配位の抑制と過剰帯電の抑制の観点から、前記表面修飾されたアルミナ微粒子の表面に残存する炭素含有量が、前記アルミナ微粒子に対して0.5~10質量%の範囲内であることが好ましい。
さらに、本発明においては、前記疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子が、前記式(1)で表されるシランカップリング剤により疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であることが好ましい。これにより、水分子配位の抑制の効果が得られる。
ガラス転移温度が、30~65℃の範囲内であることが、外添剤が埋没しにくく、高温高湿下での帯電量の変動が抑制されかつ低温定着性を確保する観点から好ましい。
本発明の実施態様としては、前記トナー母体粒子が、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。これにより、優れた色再現性が得られる。
【0023】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0024】
また、本発明において、トナーは、トナー粒子の集合体であり、トナー粒子は、トナー母体粒子とその表面に付着する外添剤とによって構成される。
【0025】
また、上記トナーは、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。一成分現像剤は、トナー粒子のみから構成され、二成分現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とによって構成される。
【0026】
《静電潜像現像用トナー》
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくともトナー母体粒子と外添剤からなるトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、着色剤と結着樹脂とを含有し、
前記着色剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される構造で表される金属含有化合物に配位した着色剤を含有し、
前記外添剤が、一次粒子の個数平均粒径が、8~50nmの範囲内の、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であり、かつ、
前記トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内で前記外添剤を含むことを特徴とする。
【0027】
【0028】
(式中、
Rx1及びRx2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Lxは、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1~20の、直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を表す。Gx1は、置換又は非置換の炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Gx2は、置換又は非置換の炭素数1~5の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
Gx3は、水素原子、ハロゲン原子、Gx4-CO-NH-で表される基、又はGx5-N(Gx6)-CO-で表される基を表し、Gx4は置換基を表し、Gx5及びGx6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
Qx1、Qx2、Qx3、Qx4、及びQx5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。)
【0029】
【0030】
(式中、
R1は、置換又は非置換の、炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
R2は、水素原子、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ニトロフェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
R3は、置換又は非置換の炭素数9~120の芳香族炭化水素含有基を表す。
Mは、2価の金属元素を表す。)
【0031】
[トナー母体粒子]
本発明に係るトナー母体粒子は、着色剤と結着樹脂とを含有し、前記着色剤が、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、前記一般式(2)で表される構造で表される金属含有化合物に配位した着色剤を含有している。他に離型剤や荷電制御剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
【0032】
<結着樹脂>
トナー粒子を構成する結着樹脂は、公知の非晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリエステル樹脂は他に比べて極性が高く本発明の着色剤化合物が分散しやすく十分な色再現性を得ることができるため好ましい。
【0033】
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
【0034】
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸を用いることができる。多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、及びピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸などを挙げることができる。多価カルボン酸モノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、特に、上記一般式(A)で表される不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。また、本発明においては無水マレイン酸などのジカルボン酸の無水物を用いることもできる。
【0035】
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、及びテトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
【0036】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000~100,000であることが好ましい。ポリエステル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばn-オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0037】
<非晶性ポリエステル樹脂>
本発明に係る非晶性ポリエステル樹脂は、通常は融点を有さず、比較的高いガラス転移点温度(Tg)を有するものである。より具体的には、ガラス転移点温度(Tg)は、30~65℃の範囲内であることが好ましい。30℃以上だと外添剤が埋没しにくくなり水分子の配位を抑制し高温高湿下での帯電量の変動が抑制される。65℃以下だと十分な低温定着性を保持することができる。
【0038】
非晶性ポリエステル樹脂を、結着樹脂を形成する樹脂成分に対して、好ましくは5~95質量%、より好ましくは65~95質量%、さらに好ましくは70~90質量%、特に好ましくは80~90質量% 含む。非晶性ポリエステル樹脂を上記範囲の含有量で用いることで、良好な低温定着性が得られる。
【0039】
<結晶性ポリエステル樹脂>
また上記非晶性樹脂に関わらず、低温定着性の観点から結晶性樹脂を併用することが好ましい。特に、上記非晶性樹脂との相溶性と製造性の点から結晶性ポリエステル樹脂を使用することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピーク(吸熱スペクトル曲線が変曲点を経て最高点に至り下降して変曲点に至る形状)を有する樹脂をいう。
【0040】
<スチレン-アクリル樹脂>
さらに、非晶性樹脂として、スチレン-アクリル樹脂を必要に応じて用いることができる。スチレン-アクリル樹脂とは、芳香族系ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とがラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものである。
【0041】
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、3,4-ジクロロスチレンなど及びその誘導体が挙げられる。
これらの芳香族系ビニル単量体は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、β-ヒドロキシアクリル酸エチル、γ-アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
<ガラス転移温度の測定方法>
ガラス転移温度(Tg)の測定は、上記したように、示差走査熱量測定で行うことができる。
トナーの示差走査熱量測定は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、昇降速度10℃/minで0℃から100℃まで昇温し、1分間100℃で等温保持する1回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで100℃から0℃まで冷却し、1分間0℃で等温保持する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から100℃まで昇温する2回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行われるものである。測定手順としては、トナー5.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。
【0044】
示差走査熱量計による昇温1回目に得られる上述のDSC曲線において、エンタルピー緩和に由来する吸熱ピークが現れる直前におけるベースラインAと吸熱ピークが現れた直後におけるベースラインBをそれぞれ水平に引く。ベースラインA及びBの中間点の線と、DSC曲線との交点Cをトナーのガラス転移温度Tgとする。
【0045】
<着色剤>
本発明に係る着色剤は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、後述する一般式(2)で表される構造で表される金属含有化合物に配位した着色剤である。
【0046】
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、色素であり、金属含有化合物に配位して着色剤として用いることが好ましい。
以下、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び一般式(2)で表される金属含有化合物について述べる。
(一般式(1)で表される構造を有する化合物)
【0047】
【0048】
(式中、
Rx1及びRx2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Lxは、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1~20の、直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を表す。
Gx1は、置換又は非置換の炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。
Gx2は、置換又は非置換の炭素数1~5の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
Gx3は、水素原子、ハロゲン原子、Gx4-CO-NH-で表される基、又はGx5-N(Gx6)-CO-で表される基を表し、Gx4は置換基を表し、Gx5及びGx6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
Qx1、Qx2、Qx3、Qx4、及びQx5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。)
【0049】
上記一般式(1)中、Rx1及びRx2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-アミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、3-メチルペンタン-2-イル基、3-メチルペンタン-3-イル基、4-メチルペンチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-(n-プロピル)ブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、1,1-ジメチルペンタン-1-イル基、2,2-ジメチルヘキサン-3-イル基、2,3-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、2-メチルヘプタン-2-イル基、3-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、1-エチル-4-メチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、1-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-(n-ブチル)ペンチル基、4-メチル-1-(n-プロピル)ペンチル基、1,5,5-トリメチルヘキシル基、1,1,5-トリメチルヘキシル基、2-メチルオクタン-3-イル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-(n-ブチル)ヘキシル基、1,1-ジメチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、1-エチルノニル基、n-ドデシル基、1-メチルウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、1-メチルトリデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-tert-ブチル-シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0050】
前記アルキル基の1つ以上の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。該置換基の例としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アルコキシアルキレンエーテル基(例えば、メトキシエチレンエーテル基)、アルキルアミノカルボニル基(例えば、ジエチルアミノカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、ホスホリル基(例えばジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ基)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ基)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシ基などが挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。これら置換基の中でも、芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6~20)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルコキシ基(好ましくは炭素数4~10)、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシアルキレンエーテル基(好ましくは炭素数1~10のアルコキシ気及び炭素数1~10のアルキレン基)、又はアルキルアミノカルボニル基(好ましくは炭素数1~10のアルキル基)が好ましい。
【0051】
Rx1及びRx2は、それぞれ独立して、非置換のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されたアルキル基が好ましく、非置換のアルキル基がより好ましい。
【0052】
また、Rx1で用いられるアルキル基に含まれる炭素数とRx2で用いられるアルキル基に含まれる炭素数との総和は、2以上であることが好ましい。
【0053】
上記一般式(1)中、Lxは、水素原子、又は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基である。アルキル基の具体例は、上記Rx1、Rx2で用いられるアルキル基と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。また、置換基の具体例は、上記Rx1、Rx2で用いられうる置換基と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。Lxは、好ましくは水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0054】
上記一般式(1)中、Gx1は、置換又は非置換の炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基である。アルキル基の具体的な例は、上記Rx1、Rx2で用いられるアルキル基のうち、メチル基を除いたものと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。また、置換基の具体例は、上記Rx1、Rx2で用いられうる置換基と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。Gx1は、好ましくは分枝状のアルキル基であり、より好ましくは3級のアルキル基であり、さらに好ましくはイソプロピル基又はt-ブチル基であり、特に好ましくはt-ブチル基である。
【0055】
上記一般式(1)中、Gx2は、置換又は非置換の炭素数1~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。Gx2で用いられるアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-アミル基、tert-ペンチル基、又はネオペンチル基が挙げられる。置換基の具体例は、上記Rx1、Rx2で用いられうる置換基と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。本発明の効果をより効果的に得るという観点から、Gx2は、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0056】
上記一般式(1)中、Gx3は水素原子、ハロゲン原子、Gx4-CO-NH-で表される基、又はGx5-N(Gx6)-CO-で表される基であり、この際、Gx4は置換基であり、Gx5及びGx6は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基である。Gx4、Gx5及びGx6で用いられる置換基の具体例としては、上記Rx1、Rx2で用いられうる置換基に加えて、炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられる。Gx3は、好ましくは水素原子又はジエチルアミンカルボニル基である。
【0057】
上記一般式(1)中、Qx1、Qx2、Qx3、Qx4、及びQx5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基である。Qx1、Qx2、Qx3、Qx4、及びQx5で用いられる置換基の具体例としては、上記Rx1、Rx2で用いられうる置換基に加えて、炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられる。Qx1、Qx2、Qx3、Qx4、及びQx5は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、又はアリール基であることが好ましく、全て水素原子であることがより好ましい。
一般式(1)で表される構造を有する化合物としては、下記化合物が例示できる。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
本発明に係る上記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、例えば、特開昭63-226653号公報、特開平10-193807号公報、同11-78258号公報、同6-250357号公報、同2-155693号公報、同1-110565号公報、同2-668号公報、同2-28264号公報、同2-53865号公報、同2-53866号公報、英国特許1,252,418号明細書、特開昭64-63194号公報、特開平2-208094号公報、同3-205189号公報、同2-265791号公報、同2-310087号公報、同2-53866号公報、特開平4-91987号公報、特開昭63-205288号公報、特開平3-226750号公報、英国特許1,183,515号明細書、特開平4-190348号公報、特開昭63-113077号公報、特開平3-275767号公報、同4-13774号公報、同4-89287号公報、特開平7-175187号公報、同10-60296号公報、同11-78258号公報、特開2004-138834号公報、特開2006-350300号公報等の各公報に記載された従来公知の方法を参考にして合成することができる。
【0062】
これら化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。一般式(1)で表される構造を有する化合物の含有量は、トナー全体に対して0.5~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましい。
【0063】
また一般式(1)で表される構造を有する化合物の以外にも既存の化合物を色素として入れても構わない。
【0064】
既存の他の色素としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができるが、耐光性や耐水性の観点から顔料を用いることが好ましい。一般式(1)で表される構造を有する化合物以外の色素を用いる場合、他の色素は、一般式(1)で表される構造を有する化合物に対して、0.5~1.5質量倍で用いるのが好ましい。
【0065】
他の色素としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの公知の顔料を使用することができる。
【0066】
各色のトナーを得るため色素は、各色について、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
(一般式(2)で表される構造を有する金属含有化合物)
【0068】
【0069】
上記一般式(2)中、R1は置換又は非置換の炭素数1~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基である。アルキル基の具体的な例は、上記一般式(1)中のRx1、Rx2で用いられるアルキル基と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0070】
上記アルキル基の1つ以上の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。該置換基の例としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、4-オクチルオキシベンゼン等)、複素アリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等)などが挙げられ、これらの基はさらに同様の基で置換されていてもよい。
【0071】
R1として、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0072】
上記一般式(2)中、R2は水素原子、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ニトロフェニル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。
【0073】
さらに具体的には、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニルカルボニル基などのアリールカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基等のアルキルスルホニルアミノ基、及びフェニルアミノスルホニル基、3-メチル-4-ドデシルオキシ-5-t-ブチルフェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等のアリールスルホニルアミノ基のスルファモイル基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等のスルフィニル基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基、4-メチルフェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等のアリールスルホニル基;アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等のアシル基;ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基などが挙げられる。
【0074】
R2として好ましくはアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~10)、アリールカルボニル基(好ましくは炭素数2~10)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数7~10)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~10)、アシル基(好ましくは炭素数2~10)、シアノ基であり、より好ましくはアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~10、アシル基(好ましくは炭素数2~10、シアノ基であり、さらに好ましくはシアノ基である。
【0075】
上記一般式(2)中、R3は置換又は非置換の炭素数9~120の芳香族炭化水素含有基である。
【0076】
ここで、炭素数9~120の芳香族炭化水素含有基とは、R3中の炭素数の合計が9~120であり、かつ、R3の中の任意の位置に芳香族炭化水素構造を含有している基を指す。芳香族炭化水素構造の例としては、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)であり、例えば、芳香族炭化水素構造がフェニル基の場合、さらに、炭素数が3以上の任意の置換基とともにR3を形成することになる。この場合、炭素数が1の置換基を3つ以上有してもよく、炭素数が1の置換基と炭素数が2の置換基をそれぞれ1つ以上有していてもよい。R3中の炭素数の合計は、9~40であることが好ましく、12~40であることがより好ましく、14~30であることがさらに好ましい。
【0077】
R3として好ましくは、下記一般式(3)で表される基である。
【0078】
【0079】
上記式一般式(3)中、Lは、炭素数1~15の直鎖状又は分枝状のアルキレン基、-SO2O-、-OSO2-、-SO2-、-CO-、-O-、-S-、-SO2NH-、-NHSO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、及びOOC-から選択される2価の連結基を単独又は複数組み合わせてできる基を表し、*において、一般式(2)のR3に隣接する酸素原子と結合する。
【0080】
炭素数1~15の直鎖状又は分枝状のアルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4-トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカ
メチレン基等が挙げられる。
【0081】
Lは、置換基を有してもよく、置換基としては上記一般式(2)のR1で用いられる置換基と同様の基をあげることができる。
【0082】
Lで表される2価の連結基として、好ましくはアルキレン基、又はアルキレン基を含む基である。アルキレン基を含む基とは、Lで表される2価の連結基中に任意の位置にアルキレン基を含んでいればよく、具体的にはアルキレン基と、-SO2O-、-OSO2-、-SO2-、-CO-、-O-、-S-、-SO2NH-、-NHSO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、及びOOC-から選択される2価の連結基を1つ、又は複数組み合わせてできる基のことである。
【0083】
Lは、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基、-R6-O-基、-R6-CO-基、-R6-NHCO-基、-R6-SO2-基、-R6-COS-基、-NH-SO2-基、-NH-SO2-R6-基、又はR6-O-R6-O-R6-基であり、この際、-R6-は炭素数1~10のアルキレン基である。
【0084】
R4は、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)を表す。以下に、Lで表される2価の連結基の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。Lは、*において、上記一般式(2)のR3に隣接する酸素原子、又はR4と結合する。
【0085】
R3及びR4は、置換基を有してもよく、置換基の例としては、上記一般式(2)のR1で用いられる置換基と同様の基を挙げることができる。
【0086】
L、R3及びR4に置換する好ましい置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20)、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20)、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルキルアミノカルボニル基(好ましくは炭素数2~20)、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基であり、さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基である。
【0087】
R4として、好ましくはフェニル基であり、より好ましくは置換基を有するフェニル基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はアミド基を有するフェニル基であり、特に好ましくはアルキル基、アルコキシ基を有するフェニル基である。
【0088】
R3としてより好ましくは、下記一般式(3-1)又は(3-2)で表される基である。
【0089】
【0090】
上記一般式(3-1)及び一般式(3-2)において、L及び*は、上記一般式(3)中のLと*と同義の基を表し、Xは、それぞれ独立して、-O-、-NHCO-、又はCOO-であり、R5は炭素数1~30の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、nは0~3の整数を表す。
【0091】
R5は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基である。R5は置換基を有してもよく、置換基としては上記一般式(2)のR1で用いられる置換基と同義の基をあげることができる。R5は直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子及び水素原子のみからなることがより好ましい。
nは、好ましくは0又は1である。
【0092】
Lは、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基、-R6-O-基、-R6-CO-基、-R6-NHCO-基、-R6-SO2-基、-R6-COS-基、-NH-SO2-基、-NH-SO2-R6-基、又はR6-O-R6-O-R6-基であり、この際、-R6は炭素数1~10のアルキレン基である。より好ましくは、Lは、炭素数1~6のアルキレン基、又はR6-O-基(この際、R6は好ましくは炭素数1~5である)である。
【0093】
上記一般式(2)中、Mは2価の金属元素である。2価の金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。一般式(1)で表される構造を有する化合物との反応性の観点から、Mは、好ましくは、マグネシウム、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、バナジル、チタニル、塩化錫(II)であり、より好ましくはマグネシウム、銅であり、さらに好ましくは銅(Cu)である。
【0094】
また、本発明に用いられる金属含有化合物は中心金属に応じて中性の配位子を有してもよく、代表的な配位子としては、H2O又はNH3が挙げられる。
【0095】
一般式(2)で表される構造で表される金属含有化合物としては、下記の構造が例示される。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
これら金属含有化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。金属含有化合物の含有量は、トナー全体に対して0.5~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましい。
【0101】
金属含有化合物は、下記一般式(2-1)で表される原料化合物に対して、2価の金属化合物を反応させることにより合成したものであることが好ましい。使用される2価の金属化合物としては、塩化金属(II)、酢酸金属(II)、過塩素酸金属などが挙げられる。下記式(2-1)におけるR1、R2及びR3は、一般式(2)におけるR1、R2及びR3と同義である。
【0102】
このような特定の金属含有化合物の合成方法は、「キレート化学(5)錯体化学実験法[I](南江堂編)」などに記載の方法に準じて合成することができる。
【0103】
【0104】
ここで、本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する化合物と一般式(2)で表される金属含有化合物とが配位した化合物が含有される。
【0105】
一般式(1)で表される構造を有する化合物を一般式(2)で表される構造を有する金属含有化合物に配位させる条件としては、特に制限されず、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び一般式(2)で表される金属含有化合物を溶媒中で混合し、例えば、好ましくは50~95℃、より好ましくは60~90℃で、さらに好ましくは75~87℃、好ましくは5~250分、より好ましくは10~60分、さらに好ましくは15~30分の間、撹拌することで化合物を得ることができる。具体的には、例えば、一般式(1)で表される構造を有する化合物(色素)の分散液(「色素微粒子分散液」又は単に「色素分散液」ともいう)、又は色素を含む樹脂微粒子分散液若しくはワックス含有樹脂微粒子分散液等の色素を含む分散液に金属含有化合物の分散液(金属含有化合物微粒子分散液)を添加することで分散液はいったん白濁するが、撹拌により分散液(上澄み液)が透明になる。これにより、一般式(1)で表される色素と一般式(2)で表される金属含有化合物との反応が終了し、反応化合物である着色剤が形成されたとみなされる。当該反応において用いられる溶媒としては、トナーを調製するときに用いられる溶媒を用いることが好ましく、具体的な溶媒としてはトナーの調製方法の項で述べられるものである。
【0106】
<その他の添加剤>
トナー母体粒子は、その他必要に応じて離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0107】
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。定着性の観点から、炭化水素系ワックスが好ましい。
【0108】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~10質量部である。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、離型剤の融点は、電子写真におけるトナーの低温定着性及び離型性の観点から、50~95℃であることが好ましい。
【0109】
(荷電制御剤)
荷電制御剤粒子を構成する荷電制御剤としては種々の公知のもので、かつ水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩、あるいはその金属錯体などが挙げられる。
【0110】
[外添剤]
本発明に係る外添剤は、一次粒子径の個数平均粒径が、8~50nmの範囲内の、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であり、かつ、前記トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内で前記外添剤を含んでいる。
【0111】
前述したように、表面修飾された特定粒径のアルミナ微粒子を外添剤として用いることにより、金属イオンを有する着色剤を有するトナーの低帯電量化に伴う画像の劣化が抑制され、かつアルミナ微粒子の屈折率が低いため、色再現性の低下も抑制することができる。
【0112】
(アルミナ微粒子)
アルミナは、Al2O3で表される酸化アルミニウムをさすものであり、α型、γ型、σ型及びその混合体等の形態が知られており、形状としてもその結晶系の制御によって立方形状のものから球状のものまである。
【0113】
アルミナは、公知の方法により作製することができる。アルミナを作製する方法としては、バイヤー法が一般的であるが、高純度かつナノサイズのアルミナを得るために、加水分解法(住友化学製)、気相合成法(シーアイ化成製)、火炎加水分解法(日本アエロジル製)、水中火花放電法(岩谷化学製)等を用いてもよい。
【0114】
(粒径)
本発明に係るアルミナ微粒子の個数平均一次粒子径は、8~50nmの範囲内が好ましく、特に10~40nmの範囲内であることが好ましい。8nmより大きい場合にはトナー母体表面に埋没することなくその効果を発揮することができ、50nm以下の場合では外添剤による屈折率の影響を受けにくく色再現性の低下を抑制することができる。
【0115】
<粒径の測定方法>
走査型電子顕微鏡(SEM)「JEM-7401F」(日本電子社製)を用いて、3万倍に拡大したトナーのSEM写真を撮影し、当該SEM写真を観察してアルミナ微粒子の一次粒子の粒径(フェレー径)を測定し、その合計値を個数で割って平均粒径を求める。粒径の測定は、SEM画像において粒子の総数が100~200個程度となるような領域を選択して行う
【0116】
(表面修飾)
本発明に係るアルミナ微粒子は、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であることが好ましい。具体的には表面修飾後、アルミナ微粒子表面に残存する炭素含有量は0.5~10質量%の範囲内であることが好ましく、1.5~5質量%であることがさらに好ましい。0.5質量%以上の場合、トナー粒子表面に水分子が配位しにくくなり高温高湿下での帯電量の変動が抑制される。10質量%以下の場合は、抵抗値が高くなりすぎず、過剰帯電を抑制することができる。
【0117】
<炭素含有量の測定方法>
アルミナ微粒子表面に残存する炭素含有量の測定は、以下の手順で行うことができる。
(1)BUCHI社製ソックスレー抽出装置を用い、疎水性アルミナ微粒子粉末0.7gを直径28mmの円筒濾紙に入れ、抽出溶媒にはヘキサンを使用し、抽出時間60分、リンス時間30分の条件で疎水性アルミナ微粒子粉末上の遊離表面修飾剤を取り除く。
(2)遊離表面修飾剤中に含まれる炭素量の定量は、CHN元素分析装置(CHNコーダー MT-5型(ヤナコ製))により測定した。
【0118】
(表面修飾剤)
表面修飾剤としては、一般的なカップリング剤やシリコーンオイルや脂肪酸、脂肪酸金属塩などを用いることができるが、一般的に負帯電性を示す、シラザン、アルコキシシラン、シリコーンオイルの場合に電荷拡散の効果が得られるため好ましい。
【0119】
シラザン、アルコキシシランの具体例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシランを代表的なものとして例示することができる。
【0120】
これらのうち、本発明では、疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子が、下記式(1)で表されるシランカップリング剤により疎水性に表面修飾されたアルミナ微粒子であることが好ましい。
【0121】
式(1): Xn-Si(OR)m
(式中、Xは、炭素数1~16のアルキル基を表す。Rは、メチル基又はエチル基を表す。nは、1又は2を表し、mは、2又は3を表し、n+mは、4である。)
このような表面修飾剤は、アルミナ微粒子表面のヒドロキシ基と反応して均一に基体を覆うことができ、水分子配位を抑制することができるため、特に好ましくい。例えば、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0122】
他に、表面修飾剤として使用できるシリコーンオイルの具体例としては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。また、側鎖、又は片末端や両末端や側鎖片末端や側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いても良い。変性基の種類としては、アルコキシ、カルボキシル、カルビノール、高級脂肪酸変性、フェノール、エポキシ、メタクリルなどが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0123】
また、例えば、アルコキシ変性など数種の変性基を有するシリコーンオイルであっても良い。また、ジメチルシリコーンオイルとこれら変性シリコーンオイル、更には他の表面修飾剤とを混合処理若しくは併用処理しても構わない。併用する処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等を例示することができる。
【0124】
表面修飾方法としては、例えば、気相中で浮遊させられた粒子に対して処理剤又は処理剤を含む溶液を噴霧するスプレードライ法等による乾式法や処理剤を含有する溶液中に粒子を浸漬し、乾燥する湿式法や処理剤と粒子を混合機により混合する混合法などが挙げられる。
【0125】
(添加量)
アルミナ微粒子の含有量は、前記トナー粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内であることが好ましい。0.1質量部以上含有した場合、十分にトナー表面を被覆し水分子の配位を抑制し狙いの効果を得ることができ、また、2.0質量部以下の場合、外添剤による屈折率の影響を受けにくく色再現性の低下を抑制することができる。
【0126】
(その他の外添剤)
外添剤として、本発明の効果を阻害しない公知の他の外添剤を含有してもよい。特に屈折率の低いシリカ粒子は色再現性の悪化に対する懸念が小さく好ましい。その他にも他の公知の外添剤をさらに含有してもよい。公知の外添剤としては、例えば、後述する無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を用いることができる。
【0127】
無機微粒子としては、例えば、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、又は、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これら無機微粒子は、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上等のために、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理、疎水化処理等が行われていてもよい。
【0128】
有機微粒子としては、例えば、個数平均一次粒子径が10~2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
【0129】
滑剤は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものである。滑剤としては、例えば、高級脂肪酸の金属塩が用いられうる。高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などが挙げられる。
【0130】
[静電荷像現像用トナーの物性について]
本発明のトナーは、ガラス転移温度が、低温定着性を得る観点から、30~65℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度は前記した方法で測定することができる。
【0131】
また、本発明の静電荷像現像用トナーの平均粒径は、例えば体積基準のメジアン径で3~9μmの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは3~8μmの範囲内である。この粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0132】
トナー粒子の体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。
【0133】
そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とすることができる。
【0134】
本発明のトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930~1.000であることが好ましく、より好ましくは0.940~0.995である。
【0135】
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA-2100」(Sysmex
社製)を用いて測定されるものである。
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-2100」(Sysmex社製)により、
測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより平均円形度を算出することができる。
式(T)
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0136】
《静電荷像現像用トナーの製造方法》
本発明のトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。
【0137】
<乳化凝集法>
乳化凝集法とは、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の粒子(以下、「樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて、色素の粒子(以下、「色素微粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
本発明に係るトナーの好ましい製造方法として、乳化凝集法を用いてコア-シェル構造を有するトナー粒子を得る場合の一例を以下に示す。
【0138】
本発明の電荷像現像用トナーの製造方法としては、以下から選択される工程を有するものが好ましい。
(1)各微粒子分散液の調製工程
(1M-1)水系媒体中において、第1の樹脂及びワックスが含有されたワックス含有第1の樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製するワックス含有第1の樹脂微粒子分散液調製工程
(1M-2)水系媒体中において、第2の樹脂による第2の樹脂微粒子を形成して当該第2の樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する第2の樹脂微粒子分散液調製工程
(1U)水系媒体中において、第1の樹脂、第2の樹脂、及びワックスが含有されたワックス含有第1及び第2の樹脂微粒子が分散されてなるワックス含有第1及び第2の樹脂微粒子分散液を調製するワックス含有第1及び第2の樹脂微粒子分散液調製工程
(1A)水系媒体中に、色素による色素微粒子が分散されてなる分散液を調製する色素微粒子分散液(色素の分散液)調製工程
(1B)水系媒体中に、金属含有化合物による金属含有化合物微粒子が分散されてなる分散液を調製する金属含有化合物微粒子分散液(金属含有化合物の分散液)調製工程
(1C)水系媒体中において、シェル樹脂によるシェル樹脂微粒子を形成して当該シェル樹脂微粒子が分散されてなるシェル樹脂微粒子分散液を調製するシェル樹脂微粒子分散液調製工程
(2)色素微粒子分散液と樹脂微粒子分散液との混合工程(第1の粒子(コア粒子)形成工程)
(2M-1)水系媒体中において、ワックス含有第1の樹脂微粒子分散液、第2の樹脂微粒子分散液、及び色素微粒子分散液を混合して、ワックス含有第1の樹脂微粒子、第2の樹脂微粒子及び色素微粒子を凝集させて、第1の粒子(コア粒子)を形成する第1の粒子形成工程
(2U)水系媒体中でワックス含有第1及び第2の樹脂微粒子分散液ならびに色素微粒子分散液を混合して、ワックス含有第1及び第2の樹脂微粒子及び色素微粒子を凝集させて第1の粒子(コア粒子)を形成する第1の粒子形成工程
(3)第1の粒子を被覆化してコア-シェル構造を形成する工程
(3M)第1の粒子(コア粒子)が分散されてなる水系媒体中に、シェル樹脂微粒子分散液を添加して第1の粒子(コア粒子)の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させてコア-シェル構造を有する第2の粒子を形成するシェル化工程
(4)第1の粒子又は第2の粒子を含む分散液に金属化合物微粒子分散液を混合して、第1の粒子又は第2の粒子及び金属含有化合物微粒子を凝集させてトナー母体粒子を形成する工程
(5)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程
(6)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)から第1の粒子又は第2の粒子(トナー母体粒子)を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(7)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(8)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程。
【0139】
本発明の静電荷像現像用トナーとしては、第1の樹脂として結晶性ポリエステル樹脂、第2の樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。この場合、静電荷像現像用トナーとしては単層構造でよいため、上記工程(1)~(4)において、(1A)、(1B)、(2U)及び(4)の工程を有するのが好ましい。
【0140】
すなわち、静電荷像現像用トナーの製造方法としては、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を含む分散液と、前記一般式(1)で表される色素を含む分散液とを混合する工程(a)と、
前記工程(1)で得られた分散液に、前記一般式(2)で表される金属含有化合物を含む分散液を混合する工程(b)と、を含むのが好ましい。
【0141】
なお、必要な場合にはさらに第3の樹脂微粒子(非晶性ポリエステル樹脂又はスチレン-アクリル樹脂)をシェルとして被覆させることも可能である。
【0142】
また、静電荷像現像用トナーとしては、第1の樹脂としてスチレン-アクリル樹脂、第2の樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を用いる場合は、コア-シェル構造を有するのが好ましく、この場合は、(1M-1)、(1M-2)、(1A)、(1B)、(1C)、(2M)、(3)及び(4)の工程を有するのが好ましい。
【0143】
本発明においては、色素と金属含有化合物とが、トナー粒子形成の際に同時に分散液に添加されず、色素を含む粒子を凝集させて成長させた後に、金属含有化合物が添加させるのが好ましい。こうすることで、電荷が分散し、電荷制御剤としての効果がより発揮される。
【0144】
<外添処理>
トナー母体粒子に対する外添剤の外添混合処理は、機械式混合装置を用いることができる。機械式混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサー等が使用できる。これらの中で、ヘンシェルミキサーのように処理される粒子に剪断力を付与できる混合装置を用いて、混合時間を長くする又は撹拌羽根の回転周速を上げる等の混合処理を行えばよい。また、複数種類の外添剤を使用する場合、トナー粒子に対して全ての外添剤を一括で混合処理するか、あるいは外添剤に応じて複数回に分けて分割して混合処理してもよい。
【0145】
外添剤の混合方法は、上記機械式混合装置を用いて、混合強度、すなわち撹拌羽根の周速、混合時間、あるいは、混合温度等を制御することによって外添剤の解砕度合いや付着強度を制御することができる。
【0146】
[現像剤]
本発明のトナーは、一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として好ましく使用することができる。キャリアは、キャリアコア(キャリア芯材)上にキャリア被覆樹脂を有することが好ましい。
【0147】
(キャリアコア)
本発明で用いられるキャリアコア(磁性体粒子)としては、鉄粉、マグネタイト、各種フェライト系粒子又はそれらを樹脂中に分散したものを挙げることができる。好ましくはマグネタイトや各種フェライト系粒子である。フェライトとしては、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する軽金属フェライトが好ましい。
【0148】
また、コア材として、Srを含有することが好ましい。Srを含有することで、コア材の表面の凹凸を大きくすることができ、樹脂をコートしても、表面が露出しやすくなり、キャリアの抵抗を調整しやすくなる。
【0149】
(キャリア粒径)
キャリアの体積平均粒径としては10~100μmであることが好ましく、更に好ましくは20~80μmの範囲内である。キャリアの体積平均粒径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0150】
(キャリア被覆樹脂)
キャリアの被覆層形成に好適な樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体やスチレン-アクリル酸共重合体等の共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成樹脂);ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素-ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等である。
特に好ましいのは、ポリアクリレート樹脂で、上述のように、吸湿性の低い脂環式メタアクリレートモノマーから形成される樹脂を含むことにより、環境差による帯電量変動の抑制及びトナーとキャリアの衝突によるアルミナ粒子の埋没が抑制されるため、好ましい。
【0151】
脂環式メタアクリレートモノマーは、機械的強度、帯電量の環境安定性(帯電量の環境差が小さい)、重合容易性及び入手容易性の観点から、炭素数5~8のシクロアルキル基を有することが好ましい。脂環式メタアクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル及び(メタ)アクリル酸シクロオクチルからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。中でも、機械的強度及び帯電量の環境安定性の観点から、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを含むことが好ましい。
【0152】
脂環式メタアクリレートモノマーの共重合体比率は50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。
【0153】
(コート方法)
被覆層の具体的作製法としては、湿式コート法、乾式コート法が挙げられる。以下に各方法について述べるが、乾式コート法は本発明に適用するのに特に望ましい方法であり、等に詳細に記載する。
【0154】
湿式コート法としては、下記のものがある。
(1)流動層式スプレーコート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動層を用いて磁性体粒子の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して被覆層を作製する方法
(2)浸漬式コート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して被覆層を作製する方法
(3)重合法
反応性化合物を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行い被覆層を作製する方法等を挙げることができる。
【0155】
(乾式コート法)
被覆しようとする粒子の表面に樹脂微粒子を被着させ、その後機械的衝撃力を加えて、被覆しようとする粒子表面に被着した樹脂微粒子を溶融或いは軟化させて固着し被覆層を作製する方法である。キャリア芯材、樹脂及び低抵抗微粒子等を非加熱下、もしくは加熱下で機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用い、高速撹拌して当該混合物に衝撃力を繰り返して付与し、磁性体粒子の表面に溶解あるいは軟化させて固着したキャリアを作製するのである。コート条件として、加熱する場合には、80~130℃が好ましく、衝撃力を起こす風速としては、加熱中は10m/s以上が好ましく、冷却時にはキャリア粒子同士の凝集を抑制するため5m/s以下が好ましい。衝撃力を付与する時間としては、20~60分が好ましい。
【0156】
前述した、樹脂のコート工程もしくはコート後の工程において、キャリアにストレスを加えることで芯材の凸部の樹脂を剥がし、芯材を露出させる手法について説明する。乾式コート法での樹脂コート工程においては、加熱温度を60℃以下に低温化しつつ、冷却時の風速を高速せん断にすることで樹脂はがれを生じさせることが出来る。また、コート後の工程としては、強制攪拌できる装置であれば可能であり、例えば、タービュラー、ボールミル、振動ミルなどで攪拌混合することが挙げられる。
【0157】
次に、前述した、コート樹脂に熱及び衝撃を加えることで凸部表面にある樹脂を凹部側に移動させることで芯材を露出させる手法としては、衝撃力を付与する時間を長くとることが有効となる。具体的には、1時間半以上にすることが好ましい。
【実施例】
【0158】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0159】
≪非晶性ポリエステル樹脂(A1)の作製≫
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物316質量部、テレフタル酸65質量部、フマル酸49質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。
【0160】
次いで、13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これを非晶性ポリエステル樹脂(A1)とした。DSC法により測定した非晶性ポリエステル樹脂(A1)のガラス転移温度は、45℃であった。
【0161】
≪結晶性ポリエステル樹脂(B1)の作製≫
フラスコに、1,9-ノナンジオール10質量部及び1,10-ドデカン二酸10質量部と、触媒Ti(OBu)4(多価カルボン酸成分に対し、0.014質量%)とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに、窒素ガスにより不活性雰囲気下として、機械撹拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて未反応のモノマー成分を除去し、220℃まで徐々に昇温を行って12時間撹拌し、粘稠な状態となったところでサンプリングし、結晶性ポリエステル樹脂(B1)を得た。結晶性ポリエステル樹脂(B1)の酸価は23mgKOH/gであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂(B1)の融解温度(Tc)は78℃であり、重量平均分子量は12000であり、数平均分子量は4000であった。
【0162】
≪ワックス含有樹脂微粒子分散液(1)の調製≫
結晶性ポリエステル樹脂(B1)90質量部と非晶性ポリエステル樹脂(A1)510質量部を、2400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に撹拌しながら添加して溶解させた後、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)30質量部を添加し加熱溶解させた。次いで、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液2400質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所製)でV-LEVEL 300μAで30分間超音波分散した後、50℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で6時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去することにより、体積基準のメジアン径(D50)が250nm、固形分量が20質量%であるワックス含有樹脂微粒子分散液(1)を調製した。
【0163】
≪着色剤粒子分散液の調製≫
<色素の合成>
<例示化合物(1-1)の合成>
【0164】
【0165】
中間体1:1.93g、中間体2:1.53gにトルエン:50mLとモルホリン:0.53gを攪拌しながら加え、加熱還流し、エステル管により脱水しながら8時間反応させる。反応終了後、反応液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒から再結晶し、DX-1:2.71gを得た。MASS、1H-NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。得られた例示化合物1-1の純度は、1H-NMRにより分析した結果、98%であった。例示化合物1-1の可視吸光スペクトル測定(溶媒:酢酸エチル)を行ったところ、極大吸収波長:535nm、モル吸光係数:71000(L/mol・cm)であった。
【0166】
以下、実施例で用いた一般式(1)で表される構造を有する化合物については、それぞれ対応する原料を用いて(対応する置換基を変更することで)、上記の方法と同様にして合成を行った。それぞれの純度は1H-NMRにより分析し、95%以上であることを確認した。
【0167】
<金属含有化合物(例示化合物2-8(金属:Cu))の合成>
【0168】
【0169】
(化合物Bの合成)
500mLの3つ口フラスコに化合物Aを90g、シアノ酢酸を21.5g、p-トルエンスルホン酸一水和物を1.31g、トルエン300mLを加えてエステル管を用いて脱水しながら2h加熱・還流し、溶媒を減圧留去後にアセトンを500mL加えて再結晶することにより化合物Bを94.4g得た。
【0170】
(化合物Cの合成)
100mLの3つ口フラスコに化合物Bを5g、トルエン25mL、トリエチルアミン3.3g、塩化カルシウム2.42gを加えて80℃まで加熱、撹拌した。内温が80℃に達した後に、アセチルクロライド2.1gを1hかけて滴下した。滴下終了後、冷却し、希塩酸で分液後に純水でpHを中性にして溶媒を留去した。トルエン50mL、酢酸エチル50mLを加えて再結晶することで化合物Cを4.3g得た。
【0171】
(金属含有化合物2-8の合成)
200mLの3つ口フラスコに化合物Cを2g、アセトンを80mL加えて内温が55℃になるまで加熱、撹拌した。その後MeOH/水=5/1の溶媒5mLに酢酸銅1水和物を0.55g溶解し、30分かけて滴下した。滴下終了後、析出している固体をろ過することで金属含有化合物(例示化合物2-8(金属:Cu))を1.4g得た。得られた例示化合物2-8(金属:Cu)は、500nmの透過率が98%(溶媒:THF)であり、純度は98%であった。
【0172】
以下、実施例で用いた一般式(2)で表される金属含有化合物については、それぞれ対応する原料を用いて(対応する置換基を変更することで)、上記の方法と同様にして合成を行った。それぞれの金属含有化合物の純度は、500nmの透過率を測定することで、純度が90%以上であることを確認した。
【0173】
<色素分散液の調製>
色素分散液(1)の調製[(1A)の工程]
n-ドデシル硫酸ナトリウム 63質量部をイオン交換水880質量部に攪拌溶解することによって界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液に、色素として例示化合物1-1 80質量部とキナクリドン100質量部を徐々に添加し、次いで、「クレアミックス(登録商標)WモーションCLM-0.8」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、色素(例示化合物1-1)の粒子が分散された固形分16質量%の色素分散液(1)を調製した。
この色素分散液(1)における色素の粒子の粒子径について、体積基準のメジアン径を測定したところ、260nmであった。
【0174】
なお、体積基準のメジアン径は、「MICROTRAC UPA-150」(HONEYWELL社製)を用い、サンプル屈折率1.59、サンプル比重1.05(球状粒子換算)、溶媒屈折率1.33、溶媒粘度0.797(30℃)及び1.002(20℃)の測定条件により、測定セルにイオン交換水を投入することによって0点調整を行なうことによって測定した。
【0175】
金属含有化合物の分散液(1)の調製[(1B)の工程]
表1で示される金属含有化合物(化合物番号2-8(金属:Cu))89質量部を、ドデシル硫酸ナトリウム16質量部をイオン交換水530質量部中に溶解した溶液中に添加し、撹拌及び超音波を付与することにより、固形分14質量%の金属含有化合物(1)の分散液を調製した。なお、体積基準のメジアン径は、270nmであった。
【0176】
≪トナー母体粒子の作製≫
<トナー母体粒子(1)の作製>
撹拌装置、冷却管、温度センサーを備えた5Lのステンレス製反応器に、ワックス含有樹脂微粒子分散液(1)2250質量部、イオン交換水1400質量部、色素分散液(1)138質量部を投入し、撹拌しながら5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。次いで、撹拌下、塩化マグネシウム・六水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下し、内温を75℃まで昇温させ、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製、アパーチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、平均粒径が6.5μmに到達した時点で、金属含有化合物分散液(1)125質量部を滴下した。その後、反応液の上澄みが透明になった時点(色素と金属含有化合物との反応が終了し反応化合物を形成)で、塩化ナトリウム50質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で内温を25℃まで冷却した。この得られたトナー母体粒子(1)の体積基準のメジアン径(D50)は6.1μmであった。
【0177】
<冷却工程>
その後、「FPIA-3000」を用い形状係数が0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液(1)を得た。
【0178】
<濾過・洗浄工程及び乾燥工程>
その後、濾過し、イオン交換水で充分洗浄した。次いで、40℃にて乾燥して、トナー母体粒子(1)を得た。得られたトナー母体粒子(1)は、体積基準のメジアン径は6.0μm、平均円形度は0.972であった。
【0179】
<トナー母体粒子2~9、12~15、18~26の作製>
上記トナー母体粒子1の作製において、色素である例示化合物1-1と金属含有化合物2-8を表Iの記載の通りに変更してトナー母体粒子2~9、12~15、18~26を作製した。
なお、トナー母体粒子18の作製においては、色素として例示化合物1-1 80質量部の代わりに以下に示す構造のキナクリドン顔料180質量部を用いた。また、トナー母体粒子18及び19の作製においては、金属含有化合物の分散液は添加しなかった。
【0180】
【0181】
<トナー母体粒子10の作製>
≪非晶性ポリエステル樹脂(A2)の作製≫
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 316質量部、テレフタル酸 65質量部、フマル酸 49質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド 2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。
【0182】
次いで、13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これを非晶性ポリエステル樹脂(A2)とした。DSC法により測定した非晶性ポリエステル樹脂(A2)のガラス転移点は、29℃であった。
【0183】
上記トナー母体粒子1の作製において、一般式(1)及び(2)で表される構造を有する化合物を表Iに示した化合物に変えて、さらに非晶性ポリエステル(A1)を(A2)に変更してトナー母体粒子10を作製した。
【0184】
<トナー母体粒子11の作製>
≪非晶性ポリエステル樹脂(A3)の作製≫
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 316質量部、テレフタル酸 95質量部、フマル酸 19質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド 2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。
【0185】
次いで、13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これを非晶性ポリエステル樹脂(A3)とした。DSC法により測定した非晶性ポリエステル樹脂(A3)のガラス転移点は、65℃であった。
【0186】
上記トナー母体粒子1の作製において、一般式(1)及び(2)で表される構造を有する化合物を表Iに示した化合物に変えて、さらに非晶性ポリエステル(A1)を(A3)に変更してトナー母体粒子11を作製した。
【0187】
<トナー母体粒子16の作製>
≪スチレンアクリル樹脂(C1)の調製≫
(1-1)第1段重合
攪拌装置、温度センサー、温度制御装置、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、予めアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。このアニオン性界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム(KPS)」9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
溶液(1)
スチレン 540質量部
n-ブチルアクリレート 154質量部
メタクリル酸 77質量部
n-オクチルメルカプタン 17質量部
からなる溶液(1)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・攪拌することによって重合(第1段重合)を行うことにより、「樹脂微粒子(c1)」の分散液を調製した。
【0188】
(1-2)第2段重合:中間層の形成
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、
溶液(2)
スチレン 94質量部
n-ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n-オクチルメルカプタン 5質量部
からなる溶液(2)に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させて単量体溶液〔2〕を調製した。
【0189】
一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温した。この界面活性剤溶液に上記の「樹脂微粒子(c1)」の分散液を、樹脂微粒子(c1)の固形分換算で28質量部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)により、前記単量体溶液〔2〕を4時間混合・分散させ、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製した。この分散液に重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、この系を90℃において2時間にわたって加熱・攪拌することによって重合(第2段重合)を行うことにより、「樹脂微粒子(c11)」の分散液を調製した。
【0190】
(1-3)第3段重合:外層の形成
上記の「樹脂微粒子(c11)」の分散液に、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS(44) JP 2015-161825 A 2015.9.710203040)2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
溶液(3)
スチレン 230質量部
n-ブチルアクリレート 100質量部
n-オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなる溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・攪拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、イオン交換水を加えて固形分量が30質量%となるように調整し、非晶性の「スチレンアクリル樹脂(C1)分散液1」を調製した。
【0191】
≪非晶性ポリエステル樹脂(A1)の分散液1の調製≫
上記で得られた非晶性ポリエステル樹脂(A1)100質量部を、酢酸エチル400質量部に溶解させた。次いで、5.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液25質量部を添加して、樹脂溶液を形成した。この樹脂溶液を、攪拌装置を有する容器へ投入し、樹脂溶液を攪拌しながら、0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部を30分かけて滴下混合した。上記ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を全量滴下後、樹脂溶液粒子が均一に分散した乳化液が得られた。次に、上記乳化液を40℃に加熱し、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用して、150hPaの減圧下で酢酸エチルを蒸留留去し、固形分20質量%に調整した「非晶性ポリエステル樹脂(A1)の分散液1」を得た。
【0192】
≪結晶性ポリエステル樹脂(B1)の分散液1の調製≫
上記非晶性ポリエステル樹脂(A1)の分散液1の調製において、非晶性ポリエステル樹脂(A1)の代わりに結晶性ポリエステル樹脂(B1)を用いたこと以外は同様にして、「結晶性ポリエステル樹脂(B1)の分散液1」を調製した。
【0193】
(トナー母体粒子16の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、スチレンアクリル樹脂(C1)分散液1を1125質量部、結晶性ポリエステル樹脂(B1)の分散液1を337.5質量部、イオン交換水1380質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを25℃において10に調整した。その後、「色素微粒子分散液1」を140質量部投入した。
【0194】
次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールターベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.0μmになった時点で、「非晶性ポリエステル樹脂(A1)の分散液1」225質量部を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、金属含有化合物の分散液を120質量部滴下した。反応液の上澄みが透明になった時点(色素と金属含有化合物との反応が終了し反応化合物を形成)で、塩化ナトリウム53質量部をイオン交換水210質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。
【0195】
さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却し、「トナー母体粒子16の分散液」を調製した。この得られたトナー母体粒子16の体積基準のメジアン径(D50)は6.2μmであった。
【0196】
<ナー母体粒子17の作製>
(トナー母体粒子17の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、スチレンアクリル樹脂(C1)分散液1を1275質量部、結晶性ポリエステル樹脂(B1)の分散液1を337.5質量部、イオン交換水1380質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを25℃において、10に調整した。その後、「色素微粒子分散液1」を140質量部投入した。
【0197】
次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールターベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.0μmになった時点で、金属含有化合物の分散液を120質量部滴下した。反応液の上澄みが透明になった時点(色素と金属含有化合物との反応が終了し反応化合物を形成)で、塩化ナトリウム53質量部をイオン交換水210質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。
【0198】
さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却し、「トナー母体粒子17の分散液」を調製した。この得られたトナー母体粒子17の体積基準のメジアン径(D50)は6.1μmであった。
【0199】
[外添剤]
≪外添剤1の調製≫
(アルミナ微粒子の調製)
アルミナ微粒子は、公知の手法で製造したものを用いることができ、以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係るアルミナの製造方法の一例として、特開2012-224542の記載内容を参考にしてヨーロッパ特許第0585544号明細書の実施例1中に記載された公知バーナー装置に適合させて作製を行った。
【0200】
具体的には、三塩化アルミニウム(AlCl3)320kg/hを約200℃で蒸発装置中で蒸発させ、塩化物の蒸気を、窒素により、バーナーの混合チャンバー中に通過させる。ここで、気体流を水素100Nm3/h及び空気450Nm3/hと混合し、中央チューブ(直径7mm)を介して火炎へ供給する。結果、バーナー温度は230℃であり、チューブの排出速度は約35.8m/sである。水素0.05Nm3/hをジャケットタイプの気体として外側チューブを介して供給する。気体は反応チャンバー中で燃焼し、下流の凝集ゾーンで約110℃まで冷却される。そこでは、アルミナの一次粒子の凝集が行われる。同時に生成される塩酸含有ガスから、得られた酸化アルミニウム粒子をフィルター又はサイクロン中で分離し、湿空気を有する粉末を約500~700℃で処理することにより、接着性の塩化物を除去する。こうしてアルミナ微粒子1を得ることができた。
【0201】
(表面疎水化処理)
上記で得られたアルミナ微粒子1を反応容器に入れて、窒素雰囲気下、粉末を回転羽根で撹拌しながら、アルミナ粉体100gに対して疎水化処理剤オクチルトリエトキシシラン20gをヘキサン60gで希釈させたものを添加し、200℃120分加熱撹拌後冷却水で冷却し、外添剤1を得た。
【0202】
前述した測定方法により測定した結果、表面修飾後の炭素含有量は3.0質量%であった。
【0203】
≪外添剤2~4、13及び14の調製≫
上記外添剤1の調製において、反応条件、たとえば火炎温度、水素又は酸素の含有率、三塩化アルミニウムの品質、火炎中での滞留時間又は凝集ゾーンの長さを変更して外添剤粒子2~4、13、14を調製した。
【0204】
≪外添剤5~10及び15の調製≫
上記外添剤1の調製において、実施例表に記載の表面修飾剤の種類、量を変更して外添剤粒子5~10を調製した。
表面修飾を行っていない外添剤粒子を外添剤15とした。
【0205】
≪外添剤11の調製≫
個数平均一次粒子径が15nmのシリカ粉末100質量部を反応器に入れ、窒素雰囲気化、攪拌しながら、水3.0gを噴霧し、これに、疎水化処理剤であるイソブチルトリメトキシシラン10質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱攪拌し、その後冷却し外添剤11を得た。
【0206】
≪外添剤12の調製≫
個数平均一次粒子径が15nmのチタニア粉末100質量部を反応器に入れ、窒素雰囲気化、攪拌しながら、水3.0gを噴霧し、これに、疎水化処理剤であるイソブチルトリメトキシシラン10質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱攪拌し、その後冷却し外添剤12を得た。
【0207】
[現像剤の作製]
≪トナー粒子1の作製≫
(外添剤添加工程)
トナー母体粒子1に、外添剤1を0.6質量部及び疎水性シリカ「RY50(日本アエロジル(株)製)」0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて20分混合することにより、トナー粒子1を作製した。
【0208】
≪トナー粒子2~26の作製≫
トナー粒子1の作製において、表Iに記載のようにトナー母体粒子と外添剤を変更することにより、トナー粒子2~26を作製した。
【0209】
(ガラス転移温度Tg)
作製したトナー粒子1~26のそれぞれについて、前記した示差走査熱量測定法でガラス転移温度を測定した。結果を表Iに示した。
【0210】
なお、表Iには以下に示す材料を用いた。
イソブチルシラン:イソブチルトリメトキシシラン
オクチルシラン: n-オクチルトリエトキシシラン
C16シラン: n-ヘキサデシルトリメトキシシラン
HMDS:ヘキサメチルジシラザン
PDMS:ジメチルシリコーンオイル(Mw=9900)
【0211】
また、表中以下の略号を用いた。
PES:非晶性ポリエステル樹脂
StAc/PES:非晶性ポリエステル樹脂/スチレンアクリル樹脂
StAc:スチレンアクリル樹脂
【0212】
≪キャリア粒子の作製≫
(キャリア芯材粒子の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe2O3:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0213】
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。バインダーとしてPVAを固形分に対して0.8質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1350℃、5時間保持し、本焼成を行った。
【0214】
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、キャリア芯材粒子を得た。キャリア芯材粒子1の粒径は35μmであった。
【0215】
(芯材被覆用樹脂の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを「質量比=5:5」(共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、「被覆材」を作製した。得られた被覆材1における重量平均分子量は50万であった。
【0216】
(キャリアの作製)
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、芯材粒子として上記で準備した「キャリア芯材粒子」100質量部と、「被覆材」を4.5質量部投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆材を被覆させて、「キャリア」を製造した。
【0217】
≪現像剤の作製≫
上記のようにして作製したトナー粒子及びキャリア粒子を、トナー濃度が7質量%となるようにして混合し、現像剤を作製した。混合機はV型混合機(株式会社徳寿工作所製)を用い、25℃で30分間混合した。
【0218】
《評価》
市販のカラー複合機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、常温常湿環境(温度20℃、湿度50%RH)で、A4版の上質紙(坪量65g/m2)上に、テスト画像として印字率が5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を5万枚行った。次に高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)に移りテスト画像として印字率が5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を5万枚行った。
印刷後、それぞれに於いて下記の評価を行った。
【0219】
(帯電量)
このサンプルにおけるトナーの帯電量を帯電量測定装置「ブローオフ式TB-200」(東芝社製)により測定した。装置に400メッシュのステンレス製スクリーンを装着し、ブロー圧0.5kgf/cm2の条件で10秒間窒素ガスにてブローする。測定された電荷を飛翔したトナー質量でわることによって帯電量(μC/g)を算出した。
【0220】
(ドット再現性)
階調率24段階の階調パターンを出力し、この粒状性を評価することにより、ドット再現性を評価した。具体的には、この階調パターンにCCDによる読み取り値にMTF(Modulation Transfer Function)補正を考慮したフーリエ変換処理を施し、人間の比視感度に合わせたGI値(Graininess Index)を測定し、24段階の階調パターンのなかで、最大の粒状性(GI値)を求めた。GI値は、小さいほど良く、小さいほど画像の粒状感が少ないことを表している。なお、このGI値は、日本画像学会誌39(2)、84-93(2000)に掲載されている値である。下記評価基準にしたがって上記画像における階調パターンの粒状性を評価した。
【0221】
○:最大GI値が、0.170以下で良好なレベル
△:最大GI値が、0.170超0.180以下で良好なレベル
×:最大GI値が、0.180超で問題となるレベル
【0222】
(色再現性)
前記「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、デフォルトモードで色域測定用のテストチャートを出力し、出力した色域測定用のテストチャートを「蛍光分光濃度計 FD-7 (コニカミノルタ株式会社製)」で測定した。色域測定は以下の条件で行った。
【0223】
測定条件
光源:D50光源
観測視野:2°
濃度:ANSI T
白色基準:Abs
フィルター:UV Cut
測定モード:リフレクタンス
言語:Japanese
【0224】
なお、色域測定の評価は、イエロー単色(Y)、マゼンタ単色(M)、シアン単色(C)、レッド(R)、ブルー(B)、グリーン(G)の各ベタ画像(2cm×2cm)を作製する。これらベタ画像によるY/M/C/R/G/Bからなる色域をa*-b*座標に表し、その面積を色域面積として測定した。比較例の静電潜像現像用トナー18で作製した画像の色域面積を100として相対値で色再現範囲を評価した。
【0225】
〇:色再現性が、110を超えて良好なレベル
△:色再現性が、100超110以下で良好なレベル
×:色再現性が、100以下で問題となるレベル
【0226】
(低温定着性)
前記「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、定着装置における加熱ローラーの表面温度を140~200℃の範囲で、5℃刻みで変更することができるように改造し、常温常湿(温度20℃、湿度55%RH)環境下においてA4サイズの上質紙(坪量64g/m2)に2cm×2cmのベタ画像(トナー付着量3.0mg/cm2)を定着させる定着実験を、設定される定着温度(加熱ローラーの表面温度)を120℃、135℃・・・と5℃刻みで上昇させるよう変更しながら繰り返し行った。各定着実験において得られたベタ画像を真中から2つに折り曲げて、その画像の剥離性を目視にて観察し、全く画像の剥離のない定着実験のうち、最低の定着温度を定着下限温度とした。
【0227】
〇:定着下限温度が、140℃以下で良好なレベル
△:定着下限温度が、140℃を超えて150℃以下で良好なレベル
×:定着下限温度が、150℃を超えて問題となるレベル
以上の結果を表Iに示す。
【0228】
【0229】
表Iより、本発明の静電潜像現像用トナーは、環境変動における画質低下を抑制し、高温高湿下でもドット再現性が優れ、色再現性と低温定着性にも優れた静電潜像現像用トナーであることが分かる。