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特許7468123ステープラ、画像形成装置及び後処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ステープラ、画像形成装置及び後処理装置
(51)【国際特許分類】
   B27F 7/36 20060101AFI20240409BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240409BHJP
   B27F 7/19 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B27F7/36
B65H37/04 D
B27F7/19
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020080672
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172070
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千明 義雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利行
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-183561(JP,A)
【文献】特開2008-127119(JP,A)
【文献】特開2004-240318(JP,A)
【文献】特開2007-076866(JP,A)
【文献】特開平8-183007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27F 7/36
B65H 37/04
B27F 7/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束を把持するクランプ部と、
前記用紙束にステープルを貫通させる貫通部と、
前記用紙束を貫通した前記ステープルを折り曲げて前記用紙束を綴じるクリンチ部と、
ギアを含み、当該ギアの回転により前記クランプ部、前記貫通部及び前記クリンチ部を駆動する駆動部と
備え、
少なくとも、前記クランプ部により前記用紙束を把持するクランプ工程、前記貫通部により前記用紙束に前記ステープルを貫通させる貫通工程及び前記クリンチ部により前記用紙束を貫通した前記ステープルを折り曲げるクリンチ工程の各工程を経て綴じ処理を行う電動ステープラであって、
前記ギアの回転位置から前記各工程のうちどの工程を実行しているかを検出するとともに、検出した前記各工程における前記駆動部の状態を検出する状態検出部と、
前記検出された前記各工程の状態を記憶する記憶部と
記憶された各工程の状態に基づき、異常のある工程を判定する異常判定部と、
を備える電動ステープラ。
【請求項2】
前記状態検出部により検出される前記駆動部の状態は、前記各工程における前記駆動部の駆動電流である
請求項1に記載の電動ステープラ。
【請求項3】
前記状態検出部により検出される前記駆動部の状態は、前記各工程における前記駆動部の駆動時間である
請求項1に記載の電動ステープラ。
【請求項4】
前記状態検出部により検出される前記駆動部の状態は、目標とする前記駆動部の状態と、検出された前記駆動部の状態との差である
請求項1に記載の電動ステープラ。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記クランプ工程における前記駆動部の状態に基づき、前記クランプ工程の異常の有無を判定する
請求項1から4のいずれか一項に記載の電動ステープラ。
【請求項6】
前記異常判定部は、前記貫通工程における前記駆動部の状態に基づき、前記貫通工程の異常の有無を判定する
請求項5に記載の電動ステープラ。
【請求項7】
前記異常判定部は、前記クリンチ工程における前記駆動部の状態に基づき、前記クリンチ工程の異常の有無を判定する
請求項からのいずれか一項に記載の電動ステープラ。
【請求項8】
前記綴じ処理が行われる度に、工程ごとに異常の数をカウントするカウント部を備え、
前記記憶部は、前記カウントされた前記工程ごとの異常の数を記憶する
請求項からのいずれか一項に記載の電動ステープラ。
【請求項9】
前記カウント部は、前記綴じ処理が行われる度に、工程ごとに正常の数をカウントし、
前記記憶部は、前記カウントされた前記工程ごとの正常の数を記憶する
請求項に記載の電動ステープラ。
【請求項10】
前記カウントされた前記異常の数と前記正常の数とから工程ごとの異常発生率を算出する異常発生率算出部を備え、
前記記憶部は、前記異常発生率を記憶する
請求項に記載の電動ステープラ。
【請求項11】
請求項1~1のいずれか一項に記載される電動ステープラを備える画像形成装置。
【請求項12】
請求項1~1のいずれか一項に記載される電動ステープラを備える後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステープラ、画像形成装置及び後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙束をステープル(針)により自動で綴じる電動ステープラが広く知られている。そしてこれら電動ステープラにおいて、綴じ処理時の動作不良を判定できるものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステープル打ち込み時の負荷を検出してステープルが用紙に正常に打ち込まれたかを判定するシート綴じ装置が開示されている。また、特許文献2には、ホームセンサからの信号に基づきステープラの状態を判定する紙綴じ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-146673号公報
【文献】特開平4-348995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるステープラは、ステープル打ち込み時以外の動作不良を判定することができない。また、特許文献2に開示されるステープラは、ホームセンサからの信号に基づきステープラの異常を判定しているため、その異常が一連の綴じ処理工程(例えば、用紙束を把持するクランプ工程、ステープルを用紙束に貫通させる貫通工程及び用紙束を貫通したステープルの針足を曲げるクリンチ工程)のうちのどの工程で発生し、しかもどのような異常であったかまでを判定することはできない。このため、ステープラの不具合原因を調査しようとした場合、不具合原因の詳細を特定するまでに多くの時間を必要としてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ステープラの不具合(異常)原因を含めたステープラの状態を、工程ごとに判定することが可能なステープラ、画像形成装置及び後処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電動ステープラは、用紙束を把持するクランプ部と、前記用紙束にステープルを貫通させる貫通部と、前記用紙束を貫通した前記ステープルを折り曲げて前記用紙束を綴じるクリンチ部と、ギアを含み、当該ギアの回転により前記クランプ部、前記貫通部及び前記クリンチ部を駆動する駆動部と備え、少なくとも、前記クランプ部により前記用紙束を把持するクランプ工程、前記貫通部により前記用紙束に前記ステープルを貫通させる貫通工程及び前記クリンチ部により前記用紙束を貫通した前記ステープルを折り曲げるクリンチ工程の各工程を経て綴じ処理を行う電動ステープラであって、前記ギアの回転位置から前記各工程のうちどの工程を実行しているかを検出するとともに、検出した前記各工程における前記駆動部の状態を検出する状態検出部と、前記検出された前記各工程の状態を記憶する記憶部と、記憶された各工程の状態に基づき、異常のある工程を判定する異常判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、工程ごとに駆動部の状態を検出することができるため、例えば動作不良がどの工程で発生したかを判定することができる。また、工程ごとの駆動部の状態を記憶部に記憶しておくことで、後にステープラの不具合原因を調査しようとした場合、記憶部に記憶された情報をもとに容易に調査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る画像形成システムの概要図である。
図2】本実施の形態に係るステープラの側面図である。
図3】本実施の形態に係るステープラの斜視図である。
図4】本実施の形態に係る後処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】各工程におけるモータへの電流値の取得及び記憶に関する処理の流れを示すフローチャートである。
図6】各工程の動作時間の計測及び計測された動作時間の記憶に関する処理の流れを示すフローチャートである。
図7】各工程におけるモータの目標電力又は電流値と実際に検出された電力又は電流値との差(偏差)を算出し、記憶する処理の流れを示すフローチャートである。
図8】記憶部に記憶された電流値に基づいて貫通工程の異常診断を実行する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
<画像形成システム100の構成例>
図1は、本実施の形態に係る画像形成システム100の概要を示す構成図である。
【0012】
図1に示すように、画像形成システム100は、用紙に所定の画像を形成する画像形成装置200と、用紙に対して少なくとも1種類の後処理(例えば用紙束の綴じ処理)を実行可能な後処理装置300とを備える。
【0013】
画像形成装置200は、装置内又は外部の図示しない給紙部から供給された用紙に所定の画像を形成し、その用紙を後処理装置300に搬送する。画像形成装置200は、例えば、走査露光による静電潜像の形成、トナーによる静電潜像の現像、トナーの用紙への転写及び定着処理により用紙に画像を形成する。画像形成装置200の上面部には、印刷及び後処理に関する条件等を入力するための操作パネル210が設けられる。
【0014】
後処理装置300は、画像形成装置200の用紙搬送方向の下流側に接続され、用紙束をステープルにより綴じる綴じ処理を実行するための電動ステープラ1を備える。電動ステープラ1の詳細については後述する。後処理装置300の画像形成装置200とは反対側の側面には用紙が載置されるトレイ310が設けられる。
【0015】
<電動ステープラ1の構成例>
図2は本実施の形態に係る電動ステープラ1の側面図、図3は本実施の形態に係る電動ステープラ1の斜視図である。
【0016】
電動ステープラ1は、ステープル10の供給及び打ち出しが行われる針打出ユニット2と、針打出ユニット2との協働で、ステープル10の一対の針足をカットし、カットした針足を内側に折り曲げて用紙束をステープル10で綴じる綴じユニット3とを備える。
【0017】
針打出ユニット2は、ステープル10が収納される針カートリッジ90が着脱可能に取り付けられるステープラ本体20と、針カートリッジ90から送り出されるステープル10を用紙束に打ち込んで用紙束にステープル10を貫通させる貫通部22とを備える。
【0018】
ステープル10は、例えば直線状の複数本のステープル10を接着によりシート状に連結したステープルシート101として提供される。複数枚のステープルシート101は、積層された状態で針カートリッジ90に収納される。針カートリッジ90に収納されたステープルシート101は、一枚ずつ所定の搬送方向に搬送され、搬送されたステープルシート101の(搬送方向における)最先端のステープル10が貫通部22によって打ち出される。そしてこのとき、2本目又は3本目のステープル10は打ち出しに先立ち、予め略U字形状に成形される。なお、ステープルシート101は、針カートリッジ90に直接収納される場合の他、針カートリッジ90に対して着脱可能なリフィルという収納ボックスを介して収納されるようにしても良い。
【0019】
綴じユニット3は、用紙束を貫通したステープル10の針足を所定の長さにカットするカット部30と、用紙束を貫通し、所定の長さにカットされたステープル10の針足を用紙束の方向へ折り曲げて用紙束を綴じるクリンチ部31を備える。クリンチ部31は、貫通部22と対向した位置に設けられ、クリンチ部31に近接する位置には、カット部30が配置される。なお、カット部30は電動ステープラ1にとって必ずしも必須の構成ではなく、針足をカットせずに折り曲げるようにしても良い。
【0020】
電動ステープラ1は、針打出ユニット2と綴じユニット3との間に用紙束を挟持(把持)するクランプ部4を備える。クランプ部4は、針打出ユニット2の貫通部22と、綴じユニット3のクリンチ部31が設けられた電動ステープラ1の一方の側に設けられる。
【0021】
クランプ部4は、ステープル10による用紙束の綴じ位置が、貫通部22とクリンチ部31との間に位置できるようにするため、電動ステープラ1の正面側と、左右の両側面の3方向が開口した形状である。
【0022】
電動ステープラ1は、クランプ部4、貫通部22、カット部30及びクリンチ部31等を駆動する駆動部5を備える。駆動部5は、針打出ユニット2に設けられたモータ50と、モータ50の駆動軸(出力軸)に接続され、モータ50により駆動されるギア51と、ギア51の動作を貫通部22及びクリンチ部31等の各部に伝達するリンク部52とを備える。
【0023】
綴じユニット3は、ギア51の回転によりリンク部52等を介して動作し、針打出ユニット2に対して離接する方向に移動する。本実施の形態では、綴じユニット3は軸32を支点とした回転動作で、針打出ユニット2に対して離接する方向に移動する。
【0024】
クランプ部4は、ギア51がホームポジション(初期位置)から1方向に回転すると、綴じユニット3が針打出ユニット2に近づく方向に移動し、綴じユニット3と針打出ユニット2との間に設置された用紙束を所定のタイミングで挟持する。そしてギア51がさらに回転すると、貫通部22が動作し、挟持された用紙束にステープル10が貫通する。その後さらにギア51が回転すると、今後はカット部30及びクリンチ部31が動作し、ステープル10の針足をカットした後、カットされた針足を用紙束に向けて折り曲げる。その後、ギア51が更に回転すると、綴じユニット3が針打出ユニット2から離れる方向に移動して用紙束の挟持を解除する。そして、これら一連の綴じ処理が完了すると、ギア51は再びホームポジションに戻るように設定される。このように、ギア51が1方向に1回転する間に、クランプ部4により用紙束を挟持(把持)するクランプ工程、貫通部22により用紙束にステープル10を貫通させる貫通工程、用紙束を貫通したステープル10を折り曲げて用紙束を綴じるクリンチ工程及び綴じユニット3が針打出ユニット2から離れて用紙束の挟持を解放するリターン工程を含む一連の綴じ処理が実行される。
【0025】
電動ステープラ1は、カット部30でカットされたカット針13を収納するカット針収納部6を備える。カット針収納部6は、クランプ部4が設けられた側と反対の電動ステープラ1の後側に、電動ステープラ1に対して着脱可能に取り付けられる。
【0026】
カット針収納部6は、2本の回収路60L、60Rを備える。回収路60L、60Rは、カット針収納部6が電動ステープラ1に取り付けられたとき、ステープラ本体20に着脱される針カートリッジ90の着脱経路を塞がないように、ステープラ本体20の両側に分岐して配置される。
【0027】
綴じユニット3は、カット針13をカット針収納部6に誘導する排出路33を備える。排出路33は、ステープラ本体20に着脱される針カートリッジ90の着脱経路を塞がないように、カット部30に連通した1本の排出路33が2本の排出路33L、33Rに分岐して、ステープラ本体20の左右両側に配置される。
【0028】
一方の排出路33Lの排出口34Lは、カット針収納部6の一方の回収路60Lの回収口61Lと連通し、他方の排出路33Rの排出口34Rは、カット針収納部6の他方の回収路60Rの回収口61Rと連通する。
【0029】
これにより、一方の排出路33Lを通るカット針13は回収口61Lから回収路60Lを通ってカット針収納部6に収納され、他方の排出路33Rを通るカット針13は回収口61Rから回収路60Rを通ってカット針収納部6に収納される。
【0030】
<後処理装置300のハードウェア構成例>
図4は、後処理装置300のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0031】
図4に示すように、後処理装置300は、後処理装置300全体の動作を制御し、CPU(Central Processing Unit)を含む第1制御部310と、第1制御部310からの指示に基づいて綴じ処理を実行する電動ステープラ1とを備える。第1制御部310は、画像形成装置200と連動した制御を実行することで所定の後処理を実現する。
【0032】
電動ステープラ1は、CPUを含む第2制御部70と、モータ駆動部72と、モータ50と、ホームポジションセンサ(HPセンサ)76と、モータ50の駆動電流を検出する電流センサ(状態検出部)78と、記憶部80とを備える。
【0033】
第2制御部70は、第1制御部310に接続され、記憶部80又は他の記憶部に格納されているプログラムに従って綴じ処理に関する制御を実行する。第2制御部70は、設定されたモータ50の目標回転速度と図示しないセンサからのモータ50の位置情報等に基づいてモータ駆動信号を生成し、モータ50を駆動する。
【0034】
第2制御部70は、綴じ処理の実行時に、クランプ工程、貫通工程、クリンチ工程及びリターン工程の各工程におけるモータ50への電流値(駆動電流)を電流センサ78より取り込み、記憶部80に書き込む(記憶させる)。
【0035】
また、第2制御部70は、各工程の動作時間をタイマ(状態検出部)70aにより計測し、工程ごとの動作時間を記憶することもできる。さらに第2制御部70は、行程ごとに目標とするモータ50の電力やモータ50への電流値と、実際に検出された電力や電流値との差(偏差)を算出し(この場合、第2制御部70は差を算出する状態検出部を有する)、その値を記憶部80に記憶することもできる。
【0036】
第2制御部70は、検出又は算出した電流値、動作時間、偏差等から、工程ごとの異常の有無を判定する判定部(異常判定部)70cを備えることもできる。また、第2制御部70は、カウント部70bと異常発生率算出部70dを有し、カウント部70bにて、綴じ処理の実行回数(例えば用紙束を100部綴じた場合には100回)や、全実行回数のうち工程ごとに異常が何回あったかを示すエラー回数等をカウントするとともに、異常発生率算出部70dにて、工程ごとのエラー発生頻度(異常発生率)等も算出することができる。
【0037】
モータ駆動部72は、例えば複数のスイッチング素子(FET、IGBT等)を有するインバータ回路を含み、第2制御部70からの駆動信号に基づいてオン及びオフのスイッチング動作を行い、図示しない直流電源から供給される直流電力を所定のデューティ比からなる電力に変換してモータ50に供給する。
【0038】
モータ50は、例えばブラシレスモータにより構成され、モータ駆動部72からの電力に基づいて所定の速度で回転することで、ギア51を介して貫通部22及びクリンチ部31等を駆動する。
【0039】
ホームポジションセンサ76は、ギア51の回転位置が綴じ処理の開始位置にあたるホームポジション位置(初期位置)にあるか否かを検出するためのセンサである。ホームポジションセンサ76からの信号は第2制御部70に供給される。したがって、ギア51がホームポジション位置から回転を開始すると綴じ処理が開始され、ギア51が1回転して再びホームポジション位置に戻ってくることで1回の綴じ処理が完了する。
【0040】
記憶部80は、例えばHDD(hard disk drive)、SSD(solid state drive)又は半導体メモリから構成され、プログラム及び各種データ等を記憶する。記憶部80には、工程ごとのモータ50の電流値(工程内における電流値の推移等)が記憶される。また、各工程の動作時間が計測され、又は各行程の目標とするモータ50の電力や電流値と実際に検出された電力や電流値との差等が算出される場合には、それらのデータも記憶部80に記憶される。
【0041】
図5から図7は、第2制御部の処理の流れを示すフローチャートであり、図5は、各工程におけるモータ50への電流値の取得及び記憶に関する処理の流れを示すフローチャート、図6は、各工程の動作時間の計測及び計測された動作時間の記憶に関する処理の流れを示すフローチャート、図7は、各工程におけるモータの目標電力又は電流値と実際に検出された電力又は電流値との差(偏差)を算出し、記憶する処理の流れを示すフローチャートである。また、図8は、記憶部80に記憶された電流値に基づいて貫通工程の異常診断を行う場合のフローチャートである。
【0042】
第2制御部70は、画像形成システム100から電動ステープラ1の綴じ指令を受信すると、モータ50を駆動し、ギア51を回転させる。これにより綴じ処理が開始される。
【0043】
<各工程におけるモータ50への電流値の取得(第1制御例)>
図5に示すように、ステップS100において現在の工程がクランプ工程であるか否かを判定し、クランプ工程であると判定した場合にはステップS110に進み、(クランプ工程における)モータ50への電流値を取得する。次いでステップS120において取得した電流値を記憶部80に記憶する。なお、現在の工程がクランプ工程、又は後述する貫通工程、クリンチ工程、リターン工程であるか否かの判定は、ギア51の回転位置(モータ50の回転量)を検出することにより判定する。
【0044】
ステップS100において、現在の工程がクランプ工程でないと判定した場合にはステップS130に進んで現在の工程が貫通工程であるか否かを判定する。ステップS130において現在の工程が貫通工程であると判定した場合にはステップS140に進んで(貫通工程における)モータ50への電流値を取得し、ステップS120において取得した電流値を記憶する。
【0045】
ステップS130において現在の工程が貫通工程でないと判定した場合にはステップS150に進んで現在の工程がクリンチ工程であるか否かを判定する。ステップS150において現在の工程がクリンチ工程であると判定した場合にはステップS160に進んで(クリンチ工程における)モータ50への電流値を取得し、ステップS120において取得した電流値を記憶する。
【0046】
ステップS150において現在の工程がクリンチ工程でないと判定した場合にはステップS170に進んで現在の工程がリターン工程であるか否かを判定する。ステップS170において現在の工程がリターン工程であると判定した場合にはステップS180に進んで(リターン工程における)モータ50への電流値を取得し、ステップS120において取得した電流値を記憶する。一方、ステップS170において現在の工程がリターン工程でないと判定した場合にはこのループの処理を終了する。
【0047】
<各工程の動作時間の計測(第2制御例)>
図6に示すように、ステップS200において現在の工程がクランプ工程であるか否かを判定し、クランプ工程であると判定した場合にはステップS210に進み、タイマ70aはクランプ工程の動作時間を計測する。次いでステップS220において計測したクランプ工程の動作時間を記憶部80に記憶する。なお、現在の工程がクランプ工程、又は後述する貫通工程、クリンチ工程、リターン工程であるか否かの判定は、ギア51の回転位置(モータ50の回転量)を検出することにより判定する。
【0048】
ステップS200において、現在の工程がクランプ工程でないと判定した場合にはステップS230に進んで現在の工程が貫通工程であるか否かを判定する。ステップS230において現在の工程が貫通工程であると判定した場合にはステップS240に進んでタイマ70aは貫通工程の動作時間を計測し、ステップS220において取得した貫通工程の動作時間を記憶する。
【0049】
ステップS230において現在の工程が貫通工程でないと判定した場合にはステップS250に進んで現在の工程がクリンチ工程であるか否かを判定する。ステップS250において現在の工程がクリンチ工程であると判定した場合にはステップS260に進んでクリンチ工程の動作時間を計測し、ステップS220において計測したクリンチ工程の動作時間を記憶する。
【0050】
ステップS250において現在の工程がクリンチ工程でないと判定した場合にはステップS270に進んで現在の工程がリターン工程であるか否かを判定する。ステップS270において現在の工程がリターン工程であると判定した場合にはステップS280に進んでタイマ70aはリターン工程の動作時間を計測し、ステップS220において計測したリターン工程の動作時間を記憶する。一方、ステップS270において現在の工程がリターン工程でないと判定した場合にはこのループの処理を終了する。
【0051】
<各工程におけるクランプ工程時のモータ50の目標電力又は目標電流値と実際に検出されたモータ50の電力又は電流値との差の算出(第3制御例)>
図7に示すように、ステップS300において現在の工程がクランプ工程であるか否かを判定し、クランプ工程であると判定した場合にはステップS310に進み、クランプ工程時のモータ50の目標電力と実際に検出されたモータ50の電力との電力差を算出する。次いでステップS320において算出した電力差を記憶部80に記憶する。なお、現在の工程がクランプ工程、又は後述する貫通工程、クリンチ工程、リターン工程であるか否かの判定は、ギア51の回転位置(モータ50の回転量)を検出することにより判定する。また、目標電力は各工程が正常に動作している場合のモータ50の電力に相当するものであり、予め設定される。
【0052】
ステップS300において、現在の工程がクランプ工程でないと判定した場合にはステップS330に進んで現在の工程が貫通工程であるか否かを判定する。ステップS330において現在の工程が貫通工程であると判定した場合にはステップS340に進んで貫通工程時のモータ50の目標電力と実際に検出されたモータ50の電力との電力差を算出し、ステップS320において算出した電力差を記憶する。
【0053】
ステップS330において現在の工程が貫通工程でないと判定した場合にはステップS350に進んで現在の工程がクリンチ工程であるか否かを判定する。ステップS350において現在の工程がクリンチ工程であると判定した場合にはステップS360に進んでクリンチ工程時のモータ50の目標電力と実際に検出されたモータ50の電力との電力差の算出し、ステップS320において算出した電力差を記憶する。
【0054】
ステップS350において現在の工程がクリンチ工程でないと判定した場合にはステップS370に進んで現在の工程がリターン工程であるか否かを判定する。ステップS370において現在の工程がリターン工程であると判定した場合にはステップS380に進んでリターン工程時のモータ50の目標電力と実際に検出されたモータ50の電力との電力差の算出し、ステップS320において算出した電力差を記憶する。一方、ステップS370において現在の工程がリターン工程でないと判定した場合にはこのループの処理を終了する。
【0055】
<故障診断(第4制御)>
第2制御部70は、第1制御~第3制御の実行により記憶部80に記憶された各種データを用いて綴じ処理の工程ごとの異常診断を実行するが、以下では、図8に基づき貫通工程における異常診断処理を例に説明する。なお、クランプ工程、クリンチ工程及びリターン工程についても、貫通工程と同様の異常診断処理が行われる。
【0056】
図8に示すように、ステップS400において綴じ処理が完了すると、ステップS410において、貫通工程における電流値を記憶部80より読み込み、読み込んだ電流値が異常値を示していないかを判定部70cにより判定する。例えば、記憶された(実際に検出された)電流値と予め設定された第1閾値とを比較し、電流値が第1閾値を上回っている(或いは下回っている)場合には異常と判定する。なお、異常の例としては、電流値が第1閾値を超えた高い値を示していた場合、機械的な摩耗や異物の噛み込み、モータ50の異常(故障等)、用紙束をステープル10が貫通できなかったといったことが想定される。一方、電流値が低い値を示していた場合、ステープル10の座屈や空打ち等が想定される。
【0057】
ステップS410において、判定部70cによる異常の有無の判定を行った結果、貫通工程が異常と判定した場合、ステップS420において異常回数のカウント値をインクリメント(1つ増加)し、そのカウント値を記憶部80に記憶する。一方、ステップS410において、貫通工程が正常と判定した場合、ステップS430において正常回数のカウント値をインクリメントし、そのカウント値を記憶部80に記憶する。
【0058】
ステップS440において、綴じ処理回数が予め設定された規定綴じ処理回数以下の場合はステップS400に戻って綴じ処理を継続し、綴じ処理回数が規定綴じ処理回数を超えた場合、ステップS450に進み、異常発生率算出部70dにて貫通工程の異常発生率を算出するとともに、算出した異常発生率が予め設定された第2閾値を超えたか否かを判定する。第2閾値は、綴じ処理における動作保証等を考慮して設定され、例えば異常の発生頻度が所定値を超えると故障が発生する可能性が高いといった過去のデータなどを参考に設定される(例えばこの場合の所定値が第2閾値となる)。また、異常発生率は、「異常回数(異常動作のあった回数)/綴じ処理回数(綴じ処理のトータル動作回数)」により算出する。
【0059】
ステップS450において、貫通工程における異常発生率が第2閾値以下の場合はステップS400に戻って綴じ処理を継続し、異常発生率が第2閾値を超えると判定した場合、ステップS460に進んで貫通工程における故障診断を行う。具体的には、異常発生率が第2閾を超えて異常発生頻度が高いことから、貫通部22が将来的に故障する可能性が高い又は故障している可能性が高いと診断する。なお、故障の可能性が高いと診断した場合、例えば画像形成システム100に設けられた操作パネル210の画面上にその旨のメッセージ又は部品の交換、修理等を促すメッセージを表示させるようにしても良い。報知手段の別の構成としては、例えば、警報ランプを点灯させたり、警報ブザーを鳴らしたり、サービスマン及びユーザーが所持する情報処理装置に、部品の交換、修理等を促すメッセージを表示させたりしても良い。
【0060】
図8の例では、モータ50への電流値をもとに異常診断(異常判定、故障診断)を行ったが、貫通工程における動作時間、検出された電力又は電流値と目標とする電力又は電流値との差(偏差)に基づいて異常診断を行うようにしても良いのは勿論である。或いは、電流値、動作時間、差(偏差)のいずれかひとつのデータを用いて異常診断を行うのではなく、電流値、動作時間、差(偏差)のすべて又は2つのデータを検出・記憶し、これら複数のデータを用いて異常診断を行っても良い。
【0061】
また、モータ50への電流値が第1閾値を超えたか否かではなく、電流値の変化率を算出し、変化率に基づいて異常診断を行っても良い。具体的には、n回目の綴じ処理の貫通工程のモータ50への電流値とn+1回目の綴じ処理の貫通工程のモータ50への電流値との間で前後の変化率が大きくなっている場合、異常が発生したと判定する。電流値の変化率が予め設定された閾値(基準変化率)よりも大きい場合、貫通工程で用いられる部品(ドライバ等)の摩耗等が発生しており、将来的に故障する可能性が高い又は現段階で故障している可能性が高いとの故障診断を行う。
【0062】
図8では、貫通工程における異常診断について例示したが、クランプ工程やクリンチ工程における異常診断についても同様の処理が行われる。例えば、クリンチ工程において、電流値が高い値を示した場合、貫通工程とほぼ同様に、機械的な摩耗、異物の噛み込み、モータ50の異常等が想定され、電流値が低い場合、空打ち(例えばステープル10が用紙束を貫通していない)、空振り(例えばクリンチ部31におけるクリンチャとステープル10の位置ずれ)等が想定される。
【0063】
なお、第4制御では、綴じ処理の各工程が終了するごとにその工程の異常の有無を判定したが、これに限定されることはない。例えば、一連(一回)の綴じ処理が完了した後に、記憶部80に記憶されたデータをもとに工程ごとに異常に有無を判定しても良く、綴じ処理が所定回数行われた後に所定綴じ処理回数分の各工程における異常の有無をまとめて判定しても良い。もちろん、綴じ処理がすべて完了した後、すなわち電動ステープラ1による綴じ動作がすべて完了した後に、記憶部80に記憶されたデータをもとに異常に有無を判定しても良い。
【0064】
また、第4制御において、綴じ処理の工程ごとではなく、綴じ処理全体で異常が発生したか否かを判定するようにしても良い。具体的には、綴じ処理が正常に終了した場合における1回の綴じ処理の基準動作時間をモータ50のホールセンサにより検出されるパルス数又はモータ50の駆動軸角度に基づいて設定し、実際に計測された1回の綴じ処理の動作時間と基準動作時間とを比較し、実際の綴じ処理の動作時間が基準動作時間を超えた場合に綴じ処理が異常であると判定し、異常診断を行うようにしても良い。
【0065】
本実施の形態によれば、綴じ処理の工程ごとにモータ50への電流値、工程ごとの動作時間、各工程時のモータ50の目標電力又は目標電流値と実際に検出されたモータ50の電力又は電流値との差等の状態を検出することができるため、例えば動作不良がどの工程で発生したかを判定することができる。また、工程ごとのモータ50への電流値等を記憶部80に記憶しておくことで、後に電動ステープラ1の不具合原因を調査しようとした場合、記憶部80に記憶されたモータ50への電流値等の情報をもとに容易に調査を行うことができる。これにより、電動ステープラ1の不具合の解析の効率化及び時間短縮を図ることができる。また、電動ステープラ1の交換又は修理等のサービス対応を、電動ステープラ1の故障等が発生する前に事前に実施できるので、ユーザーの利便性の向上を図ることができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、電動ステープラ1の記憶部80に記憶された異常動作(エラー)の回数等に基づいて、電動ステープラ1の寿命を予測及び判定することができるので、電動ステープラ1をリユースする際に電動ステープラ1の状態を迅速に判定できる。
【0067】
さらに、本実施の形態によれば、電動ステープラ1の記憶部80に記憶された異常動作回数又は異常発生率から、電動ステープラ1の故障を予測することができるので、電動ステープラ1をリユースする際における電動ステープラ1の状態を迅速に判定できると共に、電動ステープラ1が故障に至る前に電動ステープラ1の交換又は修理を実施することができる。これにより、ユーザーがステープル機能を使用できない期間(ダウンタイム)を短くすることができる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更 例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、上述した第1~第4制御において、異常発生時のギア51の回転量等の情報、例えばロック時におけるギア51の工程ごとの停止位置を示す情報を、モータ50のホールセンサにより検出されたパルス数又はモータ50の駆動軸角度から算出して記憶部80に記憶するようにしても良い。この場合、記憶部80に記憶されたギア51の停止位置を示す情報を参照して例えば貫通工程でロックが発生したと判定した場合、用紙側の異常の可能性も考えられるため、直ちに故障と診断せずに、モータ50の逆転動作による初期化処理を実行し、再び綴じ処理を可能とする判定を行うようにしても良い。また、記憶部80に記憶されたギア51の停止位置を示す情報を参照し、通常起こり得ない位置、例えばリターン工程、クランプ工程でロックが発生したと判定した場合には、直ちに故障と診断し、サービスコールをサービスマン等の情報処理装置に送信するようにしても良い。さらに、ギア51の停止位置の情報に応じて、モータ50の逆転動作による初期化処理を正転で行うか、又は逆転で行うかを判定するようにしても良い。
【0070】
また、異常が有りと判定した電動ステープラ1の機械固体情報と、その電動ステープラ1で発生した具体的な異常内容を示す不具合発生情報とを関連付けて記憶部80に記憶するようにしても良い。また、電動ステープラ1において、故障診断の結果等を考慮して、第1閾値及び第2閾値の更新等を含めたソフトウェアのバージョンアップを行うようにしても良い。
【0071】
また、上述した実施の形態では、電動ステープラ1を後処理装置300に内蔵した例について説明したが、これに限定されることはなく、図1に示した例えば画像形成装置200に本開示の記憶部80を備えた電動ステープラ1を内蔵するようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 ステープラ
4 クランプ部
5 駆動部
22 貫通部
31 クリンチ部
50 モータ(駆動部)
51 ギア(駆動部)
70 第2制御部(状態検出部,異常判定部,異常発生率算出部)
70a タイマ(状態検出部)
70b カウント部
70c 判定部(異常判定部)
70d 異常発生率算出部
78 電流センサ(状態検出部)
80 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8