(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240409BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20240409BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240409BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/32 624D
B60H1/32 621C
B60H1/22 651A
F25B1/00 399Y
F25B1/00 101E
F25B5/02 A
F25B1/00 304T
(21)【出願番号】P 2020080913
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 功嗣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】牧原 正径
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】茅野 健太
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 徹
(72)【発明者】
【氏名】牧本 直也
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023023(JP,A)
【文献】特開平10-053019(JP,A)
【文献】特開2014-037959(JP,A)
【文献】特開2009-280020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/32
F25B 1/00
F25B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、前記圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる凝縮器(12)と、空調対象空間に対して送風される送風空気との熱交換によって、前記凝縮器から流出した冷媒を蒸発させる空調用蒸発器(15)と、前記凝縮器から流出した冷媒を蒸発させる冷却用蒸発器(16)と、冷媒が前記空調用蒸発器を経由するように形成された空調側流路(17b)と、冷媒が前記空調用蒸発器を迂回するように形成された迂回流路(17c)と、前記空調側流路に配置され、前記空調用蒸発器へ流入する冷媒を減圧させると共に、前記空調用蒸発器へ流入する冷媒の流量を調整する空調用流量調整部(14a)と、を備える冷凍サイクル(10)と、
前記送風空気の流れに関して前記空調用蒸発器よりも下流側に配置され、前記空調用蒸発器を通過した前記送風空気の少なくとも一部を加熱する加熱部(20)と、
少なくとも前記空調用流量調整部の作動を制御する制御部(50)と、を有し、
前記制御部は、前記空調用流量調整部によって前記空調用蒸発器に対する冷媒の流入が禁止された状態で、前記迂回流路を介して冷媒が前記冷却用蒸発器を流通している場合に、前記空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮が発生すると想定される凝縮発生条件を満たすか否かを判定する判定部(50a)を有し、
前記判定部によって前記凝縮発生条件を満たすと判定された場合に、前記空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮を抑制する為の凝縮抑制動作として、前記空調用蒸発器への冷媒の流入量を調整し、
前記冷却用蒸発器は、熱媒体回路(30)を循環する熱媒体との熱交換によって、前記凝縮器から流出した冷媒を蒸発させ、
前記熱媒体回路は、発熱機器(B)と熱媒体と熱交換させる機器用熱交換部(32)と、熱媒体と外気とを熱交換させる外気熱交換器(33)と、熱媒体の循環流路を、前記機器用熱交換部を経由する循環流路と、前記外気熱交換器を経由する循環流路とに切り替える切替部(34)と、を有し、
前記制御部は、前記凝縮抑制動作として、前
記空調用流量調整部により前記空調用蒸発器に対する冷媒の流入を許容している状態において、前記切替部により前記外気熱交換器を経由する循環径路に切り替えられた場合
、前記空調用蒸発器に対する冷媒の流入を許容し続けるように、前記空調用流量調整部の作動を制御する車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調用蒸発器における前記送風空気の冷却の有無を切り替える為の切替操作に用いられる操作部(51)を有し、
前記制御部は、前記操作部による切替操作によって、前記空調用蒸発器において前記送風空気の冷却をしないように定められている場合に、前記判定部による前記凝縮発生条件に関する判定を行う請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調用蒸発器における前記送風空気の冷却の有無を切り替える為の切替操作に用いられる操作部(51)を有し、
前記制御部は、前記凝縮抑制動作として、前記空調用流量調整部によって前記空調用蒸発器に対する冷媒の流入を許容している状態において、前記操作部を用いた特殊操作が行われた場合に、前記操作部の操作に連動する前記空調用流量調整部の作動を許容する
請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記冷凍サイクルは、前記冷却用蒸発器へ流入する冷媒を減圧させると共に、前記冷却用蒸発器へ流入する冷媒の流量を調整する冷却用流量調整部(14b)と、を備え、
前記空調用蒸発器に対して流入する前記送風空気の温度である吸込空気温度を取得する吸込空気温度取得部(53c)と、
前記空調用蒸発器の内部における冷媒の冷媒飽和温度を取得する冷媒飽和温度取得部(52f)と、を有し、
前記制御部は、少なくとも前記空調用流量調整部及び前記冷却用流量調整部の作動を制御し、
前記判定部によって前記凝縮発生条件を満たすと判定された場合に、前記空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮を抑制する為の凝縮抑制動作として、前記冷媒飽和温度が前記吸込空気温度よりも低くなるように、前記冷却用流量調整部における減圧量を調整する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調用蒸発器に対して流入する前記送風空気の温度である吸込空気温度を取得する吸込空気温度取得部(53c)と、
前記空調用蒸発器の内部における冷媒の冷媒飽和温度を取得する冷媒飽和温度取得部(52f)と、を有し、
前記判定部は、前記冷媒飽和温度が前記吸込空気温度よりも高い場合に、前記凝縮発生条件を満たすと判定する
請求項1ないし4の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記冷却用蒸発器は、熱媒体回路(30)を循環する熱媒体との熱交換によって、前記凝縮器から流出した冷媒を蒸発させ、
前記熱媒体回路を循環する前記熱媒体の温度である熱媒体温度を取得する熱媒体温度取得部(54d)と、
前記空調用蒸発器に対して流入する前記送風空気の温度である吸込空気温度を取得する吸込空気温度取得部(53c)と、を有し、
前記判定部は、前記熱媒体温度が前記吸込空気温度よりも高い場合に、前記凝縮発生条件を満たすと判定する
請求項1ないし4の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記冷却用蒸発器は、熱媒体回路(30)を循環する熱媒体との熱交換によって、前記凝縮器から流出した冷媒を蒸発させ、
前記空調用蒸発器に対して流入する前記送風空気の温度である吸込空気温度を取得する吸込空気温度取得部(53c)と、を有し、
前記判定部は、前記熱媒体回路を循環する前記熱媒体の温度である熱媒体温度の目標値として定められた目標熱媒体温度が前記吸込空気温度よりも高い場合に、前記凝縮発生条件を満たすと判定する
請求項1ないし4の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記加熱部(20)は、前記冷凍サイクルの前記凝縮器(12)を含んでおり、前記凝縮器にて凝縮される高圧冷媒の有する熱を熱源として用いて、前記送風空気を加熱する
請求項1ないし7の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクルを用いて、車両における空調対象空間の空調と、車両に搭載された対象機器の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルを利用して車室内の空調と車載機器の温度調整を行う車両用空調装置に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1の車両用空調装置では、冷凍サイクルのエバポレータを通過した送風空気をヒータコアで加熱して車室内の空調を行っている。又、特許文献1では、冷凍サイクルの冷媒-水熱交換器がエバポレータに並列に配置されており、冷媒及び冷却水を利用してバッテリを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ここで、特許文献1の技術では、エバポレータを使用していない状態で、バッテリの冷却を行った場合、エバポレータの内部にて冷媒が凝縮してしまい、冷媒の寝こみが生じる虞がある。エバポレータを通過する吸込空気の温度と冷媒温度との関係によっては、エバポレータの流出口側から気相冷媒がエバポレータの内部に流入して、吸込空気との熱交換によって凝縮するものと考えられる。
【0005】
エバポレータの内部にて、冷媒の寝こみが生じてしまうと、冷凍サイクルを循環する冷媒量が不足してしまう為、冷媒-水熱交換器における冷却性能が低下してしまい、バッテリの温度調整に影響が及ぶことが想定される。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮を抑制して、冷却用蒸発器における冷却性能を確保することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本開示の第1態様に係る車両用空調装置は、冷凍サイクル(10)と、加熱部(20)と、制御部(50)と、を有している。冷凍サイクルは、圧縮機(11)と、凝縮器(12)と、空調用蒸発器(15)と、冷却用蒸発器(16)と、空調側流路(17b)と、迂回流路(17c)と、空調用流量調整部(14a)と、を備える。
【0008】
圧縮機は冷媒を圧縮して吐出する。凝縮器は、圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる。空調用蒸発器は、空調対象空間に対して送風される送風空気との熱交換によって、凝縮器から流出した冷媒を蒸発させる。冷却用蒸発器は、凝縮器から流出した冷媒を蒸発させる。空調側流路は、冷媒が空調用蒸発器を経由するように形成されている。迂回流路は、冷媒が空調用蒸発器を迂回するように形成されている。空調用流量調整部は、空調側流路に配置され、空調用蒸発器へ流入する冷媒を減圧させると共に、空調用蒸発器へ流入する冷媒の流量を調整する。
【0009】
加熱部は、送風空気の流れに関して空調用蒸発器よりも下流側に配置され、空調用蒸発器を通過した送風空気の少なくとも一部を加熱する。制御部は、少なくとも空調用流量調整部の作動を制御する。
【0010】
制御部は判定部(50a)を有している。判定部は、空調用流量調整部によって空調用蒸発器に対する冷媒の流入が禁止された状態で、迂回流路を介して冷媒が冷却用蒸発器を流通している場合に、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮が発生すると想定される凝縮発生条件を満たすか否かを判定する。
【0011】
そして、制御部は、判定部によって凝縮発生条件を満たすと判定された場合に、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮を抑制する為の凝縮抑制動作として、空調用蒸発器への冷媒の流入量を調整する。冷却用蒸発器は、熱媒体回路を循環する熱媒体との熱交換によって、凝縮器から流出した冷媒を蒸発させる。熱媒体回路は、発熱機器と熱媒体と熱交換させる機器用熱交換部と、熱媒体と外気とを熱交換させる外気熱交換器と、熱媒体の循環流路を、機器用熱交換部を経由する循環流路と、外気熱交換器を経由する循環流路とに切り替える切替部と、を有する。制御部は、凝縮抑制動作として、空調用流量調整部により空調用蒸発器に対する冷媒の流入を許容している状態において、切替部により外気熱交換器を経由する循環径路に切り替えられた場合、空調用蒸発器に対する冷媒の流入を許容し続けるように、空調用流量調整部の作動を制御する。
【0012】
これによれば、冷凍サイクルの運転態様として、空調用蒸発器に対して冷媒を流通させることなく、冷却用蒸発器に冷媒を流通させると共に、加熱部によって送風空気を加熱する態様を実現することができる。この運転態様では、空調用流量調整部によって空調用蒸発器に対する冷媒の流入が禁止された状態で、迂回流路を介して冷媒が冷却用蒸発器を流通する為、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮及び冷媒の寝こみが生じることが考えられる。
【0013】
車両用空調装置によれば、このような場合にも判定部によって凝縮発生条件を満たすか否かを判定して、凝縮抑制動作として、空調用流量調整部の作動を制御して、空調用蒸発器に対する冷媒の流入を許容する。この結果、空調用蒸発器の内部を通過する冷媒の流れが生じる為、空調用蒸発器内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制することができる。更に、空調用蒸発器内部における冷媒の寝こみを抑制することで、冷凍サイクルを循環する冷媒量を確保することができるので、冷却用蒸発器における冷却性能を維持することができる。
【0014】
又、本開示の第2態様に係る車両用空調装置は、冷凍サイクル(10)と、加熱部(20)と、吸込空気温度取得部(53c)と、冷媒飽和温度取得部(52f)と、制御部(50)と、を有している。冷凍サイクルは、圧縮機(11)と、凝縮器(12)と、空調用蒸発器(15)と、冷却用蒸発器(16)と、空調側流路(17b)と、迂回流路(17c)と、空調用流量調整部(14a)と、冷却用流量調整部(14b)と、を備える。
【0015】
圧縮機は冷媒を圧縮して吐出する。凝縮器は、圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる。空調用蒸発器は、空調対象空間に対して送風される送風空気との熱交換によって、減圧部から流出した冷媒を蒸発させる。冷却用蒸発器は、空調用蒸発器とは異なる位置に配置され、減圧部から流出した冷媒を蒸発させる。空調側流路は、冷媒が空調用蒸発器を経由するように形成されている。迂回流路は、冷媒が空調用蒸発器を迂回するように形成されている。空調用流量調整部は、空調側流路に配置され、空調用蒸発器へ流入する冷媒を減圧させると共に、空調用蒸発器へ流入する冷媒の流量を調整する。冷却用流量調整部は、冷却用蒸発器へ流入する冷媒を減圧させると共に、冷却用蒸発器へ流入する冷媒の流量を調整する。
【0016】
加熱部は、送風空気の流れに関して空調用蒸発器よりも下流側に配置され、空調用蒸発器を通過した送風空気の少なくとも一部を加熱する。吸込空気温度取得部は、空調用蒸発器に対して流入する送風空気の温度である吸込空気温度を取得する。冷媒飽和温度取得部は、空調用蒸発器の内部における冷媒の冷媒飽和温度を取得する。制御部は、少なくとも空調用流量調整部減圧部及び冷却用流量調整部の作動を制御する。
【0017】
制御部は判定部(50a)を有している。判定部は、空調用流量調整部によって空調用蒸発器に対する冷媒の流入が禁止された状態で、迂回流路を介して冷媒が冷却用蒸発器を流通している場合に、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮が発生すると想定される凝縮発生条件を満たすか否かを判定する。
【0018】
そして、制御部は、判定部によって凝縮発生条件を満たすと判定された場合に、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮を抑制する為の凝縮抑制動作として、冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも低くなるように、冷却用流量調整部における減圧量を調整する。
【0019】
これによれば、冷凍サイクルの運転態様として、空調用蒸発器に対して冷媒を流通させることなく、冷却用蒸発器に冷媒を流通させると共に、加熱部によって送風空気を加熱する態様を実現することができる。この運転態様では、空調用流量調整部によって空調用蒸発器に対する冷媒の流入が禁止された状態で、迂回流路を介して冷媒が冷却用蒸発器を流通する為、空調用蒸発器の内部における冷媒の凝縮及び冷媒の寝こみが生じることが考えられる。
【0020】
車両用空調装置によれば、このような場合にも判定部によって凝縮発生条件を満たすか否かを判定して、凝縮抑制動作として、冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも低くなるように、冷却用流量調整部における減圧量を調整する。この結果、空調用蒸発器の内部における冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも低くなる為、空調用蒸発器内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制することができる。更に、空調用蒸発器内部における冷媒の寝こみを抑制することで、冷凍サイクルを循環する冷媒量を確保することができるので、冷却用蒸発器における冷却性能を維持することができる。
【0021】
尚、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る室内空調ユニットの構成図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御系を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両用空調装置の冷却暖房モードの動作を示す説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における凝縮発生条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態におけるエアコンスイッチの操作と空調用蒸発器による送風空気の冷却との関係の一例を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態における凝縮発生条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図9】第3実施形態における凝縮発生条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図10】第4実施形態に係る車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】車両用空調装置における冷凍サイクルの低圧側の構成に関する第1変形例である。
【
図12】車両用空調装置における冷凍サイクルの低圧側の構成に関する第2変形例である。
【
図13】車両用空調装置における加熱部の変形例である。
【
図14】車両用空調装置における冷凍サイクルの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0024】
(第1実施形態)
先ず、本開示における第1実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。第1実施形態では、本開示に係る車両用空調装置1を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車の車両用空調装置に適用している。車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調や、発熱機器としてのバッテリBの温度調整を行う。
【0025】
そして、車両用空調装置1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0026】
又、車両用空調装置1は、空調運転モードの状態によらずに、バッテリBの冷却の有無を切り替えることができる。従って、車両用空調装置1の運転モードは、空調運転モードの状態及びバッテリBの冷却の有無の組み合わせによって定義することができる。この為、車両用空調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードの7つの運転モードが含まれる。
【0027】
単独冷却モードは、車室内の空調を行うことなく、バッテリBの冷却を行う運転モードである。冷却冷房モードは、車室内の冷房を行うと共に、バッテリBの冷却を行う運転モードである。冷却暖房モードは、車室内の暖房を行うと共に、バッテリBの冷却を行う運転モードである。冷却除湿暖房モードは、車室内の除湿暖房を行うと共に、バッテリBの冷却を行う運転モードである。
【0028】
尚、車両用空調装置1の冷凍サイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
【0029】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、
図1~
図3を参照して説明する。第1実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル10と、加熱部20と、低温側熱媒体回路30と、室内空調ユニット40と、制御装置50を有している。
【0030】
初めに、車両用空調装置1における冷凍サイクル10を構成する各構成機器について説明する。冷凍サイクル10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。先ず、圧縮機11は、冷凍サイクル10において、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。圧縮機11は車両ボンネット内に配置されている。
【0031】
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置50から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0032】
そして、圧縮機11の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの入口側が接続されている。熱媒体冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が有する熱を、加熱部20の高温側熱媒体回路21を循環する高温側熱媒体に放熱し、高温側熱媒体を加熱する熱交換器である。
【0033】
熱媒体冷媒熱交換器12は、冷凍サイクル10の冷媒を流通させる冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路12bを有している。熱媒体冷媒熱交換器12は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。
【0034】
これにより、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体は、互いに熱交換することができる。熱媒体冷媒熱交換器12は、高圧冷媒の有する熱を放熱させる凝縮器の一例であり、後述する加熱部20の一部を構成する。
【0035】
熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、三方継手構造の分岐部13aが接続されている。分岐部13aは、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の流れを分岐するものである。分岐部13aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。
【0036】
分岐部13aの一方の冷媒流出口には、第1膨張弁14aを介して、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部の他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bを介して、チラー16の冷媒入口側が接続されている。
【0037】
第1膨張弁14aは、少なくとも送風空気を冷却する運転モード時において、分岐部13aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁14aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第1膨張弁14aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。
【0038】
第1膨張弁14aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁14aは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0039】
又、第1膨張弁14aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁14aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
【0040】
そして、第1膨張弁14aは、冷媒通路を閉塞することで、空調用蒸発器15に対する冷媒の流入を遮断できる。即ち、第1膨張弁14aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。又、第1膨張弁14aは、冷媒通路に対する絞り開度を調整することで、空調用蒸発器15に流入する冷媒流量を調整することができる。従って、第1膨張弁14aは、空調用流量調整部の一例に相当する。
【0041】
第1膨張弁14aの出口には、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。
図2に示すように、空調用蒸発器15は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。空調用蒸発器15は、少なくとも送風空気を冷却する運転モード時に、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒と送風空気Wとを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気Wを冷却する蒸発器である。
【0042】
図1に示すように、分岐部13aにおける他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bが接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも暖房モード時において、分岐部13aの他方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。
【0043】
第2膨張弁14bは、第1膨張弁14aと同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁14bは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
【0044】
つまり、第2膨張弁14bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁14bは、冷媒通路を閉塞することで、チラー16に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁14bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。第2膨張弁14bは冷却用流量調整部の一例である。
【0045】
第2膨張弁14bの出口には、チラー16の冷媒入口側が接続されている。チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。
【0046】
チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路16aと、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路16bとを有している。従って、チラー16は、冷媒通路16aを流通する低圧冷媒と熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて低温側熱媒体から吸熱する蒸発器である。即ち、チラー16は冷却用蒸発器の一例に相当し、第2膨張弁14bは冷却用減圧部の一例に相当する。
【0047】
図1に示すように、空調用蒸発器15の冷媒出口には、合流部13bの一方の冷媒入口側が接続されている。又、チラー16の冷媒出口側には、合流部13bの他方の冷媒入口側が接続されている。ここで、合流部13bは、分岐部13aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としている。
【0048】
従って、合流部13bは、空調用蒸発器15から流出した冷媒の流れとチラー16から流出した冷媒の流れとを合流させる。そして、合流部13bの冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0049】
ここで、第1実施形態に係る冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、空調用蒸発器15、チラー16が冷媒循環流路17を介して接続されている。
図1に示すように、冷媒循環流路17は、共通流路17a、経由流路17b、迂回流路17cによって構成されている。
【0050】
共通流路17aは、冷媒循環流路17において、何れの経路でも共通して冷媒が流れる部分である。第1実施形態の共通流路17aは、合流部13bの冷媒出口と、分岐部13aの冷媒入口を接続する冷媒流路である。従って、第1実施形態の共通流路17aには、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12が配置されている。
【0051】
経由流路17bは、冷凍サイクル10における冷媒循環流路17において、空調用蒸発器15を経由するように冷媒を流通させる部分であり、空調側流路の一例に相当する。第1実施形態における経由流路17bは、分岐部13aにおける一方の冷媒流出口と、合流部13bにおける一方の冷媒入口とを接続する冷媒流路である。従って、第1実施形態の経由流路17bには、第1膨張弁14a及び空調用蒸発器15が配置されている。
【0052】
迂回流路17cは、冷凍サイクル10における冷媒循環流路17において、空調用蒸発器15を迂回するように冷媒を流通させる部分である。第1実施形態における迂回流路17cは、分岐部13aにおける他方の冷媒流出口と、合流部13bにおける他方の冷媒入口とを接続する冷媒流路である。従って、第1実施形態の迂回流路17cには、第2膨張弁14b及びチラー16の冷媒通路16aが配置されている。
【0053】
第1実施形態に係る冷凍サイクル10では、共通流路17a及び経由流路17bを介して冷媒が循環する循環径路と、共通流路17a及び迂回流路17cを介して冷媒が循環する循環径路の2つの循環径路を構成することができる。
【0054】
次に、車両用空調装置1における加熱部20について説明する。加熱部20は、冷凍サイクル10における高圧冷媒を熱源として、空調対象空間に供給される送風空気Wを加熱する為の構成である。
【0055】
第1実施形態に係る加熱部20は、高温側熱媒体回路21によって構成されている。高温側熱媒体回路21は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体回路であり、高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
【0056】
図1に示すように、高温側熱媒体回路21には、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12b、高温側ポンプ22、ヒータコア23、ラジエータ24、高温側流量調整弁25、電気ヒータ26等が配置されている。
【0057】
上述したように、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bでは、高温側熱媒体が、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒との熱交換によって加熱される。即ち、高温側熱媒体は、冷凍サイクル10で汲み上げられた熱を用いて加熱される。
【0058】
熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける入口側には、高温側ポンプ22の吐出口が接続されている。高温側ポンプ22は、高温側熱媒体回路21にて高温側熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ22は、制御装置50から出力される制御電圧により、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0059】
熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける出口側には、電気ヒータ26が接続されている。電気ヒータ26は、電力を供給されることによって発熱し、電気ヒータ26の熱媒体通路を流れる高温側熱媒体を加熱する加熱装置である。
【0060】
電気ヒータ26としては、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを用いることができる。電気ヒータ26は、制御装置50から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱する為の熱量を任意に調整することができる。
【0061】
電気ヒータ26における熱媒体通路の出口側には、高温側流量調整弁25の流入口が接続されている。高温側流量調整弁25は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
【0062】
高温側流量調整弁25の一方の流出口は、ヒータコア23の流入口に接続されている。ヒータコア23は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と空調用蒸発器15を通過した送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する熱交換器である。
図1、
図2に示すように、ヒータコア23は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。
【0063】
そして、高温側流量調整弁25における他方の流出口には、ラジエータ24の流入口が接続されている。ラジエータ24は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と図示しない外気ファンから送風された外気OAとを熱交換させて、高温側熱媒体の有する熱を外気OAに放熱させる熱交換器である。
【0064】
ラジエータ24は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。上述した外気ファンの作動に伴って、外気OAは、車両前方側から後方へ流れ、ラジエータ24の熱交換部を通過する。又、車両走行時には、車両前方側から後方に向かってラジエータ24に走行風を当てることができる。
【0065】
そして、ラジエータ24の流出口及びヒータコア23の流出口には、三方継手構造の高温側合流部が接続されている。高温側合流部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。従って、合流部は、ラジエータ24を通過した高温側熱媒体の流れと、ヒータコア23を通過した高温側熱媒体の流れとを合流させることができる。そして、高温側合流部における流出口には、高温側ポンプ22の吸込口が接続されている。
【0066】
このように、第1実施形態の高温側熱媒体回路21において、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する高温側熱媒体の流れに関して、ラジエータ24及びヒータコア23は並列に接続されている。そして、高温側流量調整弁25は、高温側熱媒体回路21において、ヒータコア23に流入する高温側熱媒体の流量と、ラジエータ24に流入する高温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整することができる。
【0067】
つまり、高温側流量調整弁25の動作を制御することで、ラジエータ24にて外気OAに放熱される高温側熱媒体の熱量と、ヒータコア23にて送風空気Wに放熱される高温側熱媒体の熱量とを調整することができる。
【0068】
続いて、車両用空調装置1における低温側熱媒体回路30について説明する。低温側熱媒体回路30は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体と同様の流体を採用できる。
【0069】
低温側熱媒体回路30には、チラー16の熱媒体通路16b、低温側ポンプ31、機器用熱交換部32、外気熱交換器33、低温側流量調整弁34等が配置されている。チラー16における熱媒体通路16bの流出口には、低温側ポンプ31の吸込口側が接続されている。
【0070】
低温側ポンプ31は、低温側熱媒体回路30において、チラー16の熱媒体通路16bを通過した低温側熱媒体を圧送する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31の基本的構成は、高温側ポンプ22と同様である。
【0071】
そして、低温側ポンプ31の吐出口側には、三方継手構造の分岐部が接続されている。分岐部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流入口とし、残りの2つを流出口としている。従って、分岐部は、低温側ポンプ31から圧送された低温側熱媒体の流れを2つの流れに分岐させることができる。
【0072】
低温側熱媒体回路30の分岐部における一方の流出口には、機器用熱交換部32における熱媒体通路32aの入口側が接続されている。ここで、車両用空調装置1では、機器用熱交換部32の熱媒体通路32aに低温側熱媒体を通過させて熱交換させることで、バッテリBで生じた熱を低温側熱媒体に吸熱させて、バッテリBの温度調整を行っている。即ち、機器用熱交換部32は、低温側熱媒体回路30にて低温側熱媒体により冷却可能に接続されており、予め定められた温度範囲内にバッテリBの温度を維持するように構成されている。
【0073】
図3に示すように、バッテリBは、車両の各種電気機器に電力を供給するもので、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。バッテリBは、充放電に際して発熱する為、発熱機器の一例に相当する。
【0074】
バッテリBは、複数の電池セルを積層配置し、これらの電池セルを電気的に直列或いは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。この種のバッテリBは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。この為、バッテリBの温度は、バッテリBの充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(例えば、10℃以上かつ40℃以下)に維持されている必要がある。この為、車両用空調装置1では、低温側熱媒体の流量等を制御することで、バッテリBの温度を適切に調整している。
【0075】
そして、低温側熱媒体回路30の分岐部における他方の流出口には、外気熱交換器33の入口側が接続されている。外気熱交換器33は、低温側ポンプ31から吐出された低温側熱媒体と、図示しない外気ファンにより送風された外気OAとを熱交換させる熱交換器である。
【0076】
外気熱交換器33は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、外気熱交換器33に走行風を当てることができる。従って、外気熱交換器33は、ラジエータ24等と一体的に形成されていてもよい。
【0077】
図1に示すように、機器用熱交換部32の熱媒体通路32aにおける出口側及び外気熱交換器33の流出口側には、低温側流量調整弁34が接続されている。低温側流量調整弁34は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
【0078】
即ち、低温側流量調整弁34における一方の流入口には、機器用熱交換部32の熱媒体通路32aの出口側が接続されており、低温側流量調整弁34の他方の流入口には、外気熱交換器33の流出口側が接続されている。そして、低温側流量調整弁34における流出口には、チラー16における熱媒体通路16bの流入口側が接続されている。
【0079】
この為、低温側流量調整弁34は、チラー16の熱媒体通路16bを通過する低温側熱媒体の流れに関して、外気熱交換器33を通過する低温側熱媒体の流量と、機器用熱交換部32を通過する低温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整できる。即ち、低温側熱媒体回路30は、低温側流量調整弁34の作動を制御することで、低温側熱媒体の流れを切り替えることができる。
【0080】
例えば、低温側熱媒体回路30では、チラー16側の流入出口と機器用熱交換部32側の流入出口を連通させ、外気熱交換器33側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁34を制御することができる。この場合、低温側熱媒体の流れは、チラー16を通過した低温側熱媒体の全量が機器用熱交換部32の熱媒体通路32aを通過するように切り替えられる。
【0081】
この態様によれば、チラー16で冷却された低温側熱媒体を、機器用熱交換部32に供給することができるので、バッテリBを冷却することができる。換言すると、バッテリBの冷却に伴って吸熱したバッテリBの廃熱を、チラー16における熱交換によって、冷凍サイクル10の低圧冷媒に吸熱させることができる。
【0082】
又、低温側熱媒体回路30では、チラー16側の流入出口と外気熱交換器33側の流入出口を連通させ、機器用熱交換部32側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁34を制御することができる。この場合、低温側熱媒体の流れは、チラー16を通過した低温側熱媒体の全量が外気熱交換器33を通過するように切り替えられる。
【0083】
この態様によれば、チラー16で冷却された低温側熱媒体を、外気熱交換器33に供給することができるので、低温側熱媒体の温度が外気温よりも低ければ、外気OAから吸熱させることができる。これにより、送風空気を加熱する為の熱源として、外気OAを利用することができる。
【0084】
即ち、車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路30を利用することで、バッテリBの冷却や温度調整を行うことができる。又、車両用空調装置1は、外気熱交換器33を利用することで、外気OAを熱源として利用することができる。
【0085】
次に、車両用空調装置1を構成する室内空調ユニット40について、
図2を参照して説明する。室内空調ユニット40は、車両用空調装置1において、冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気Wを車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット40は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0086】
室内空調ユニット40は、その外殻を形成するケーシング41の内部に形成される空気通路に、送風機42、空調用蒸発器15、ヒータコア23等を収容して構成されている。ケーシング41は、車室内に送風される送風空気Wの空気通路を形成している。ケーシング41は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0087】
図2に示すように、ケーシング41の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置43が配置されている。内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
【0088】
内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0089】
内外気切替装置43の送風空気流れ下流側には、送風機42が配置されている。送風機42は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機42は、内外気切替装置43を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機42は、制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0090】
送風機42の送風空気流れ下流側には、空調用蒸発器15及びヒータコア23が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、空調用蒸発器15は、ヒータコア23よりも送風空気流れ上流側に配置されている。従って、車両用空調装置1の室内空調ユニット40では、空調用蒸発器15を通過した送風空気の少なくとも一部を、ヒータコア23によって加熱することができる。
【0091】
又、ケーシング41内には、冷風バイパス通路45が形成されている。冷風バイパス通路45は、空調用蒸発器15を通過した送風空気Wを、ヒータコア23を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
【0092】
空調用蒸発器15の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア23の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア44が配置されている。エアミックスドア44は、空調用蒸発器15を通過後の送風空気Wのうち、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整する。
【0093】
エアミックスドア44は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号により、その作動が制御される。
【0094】
ヒータコア23の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、ヒータコア23にて加熱された送風空気Wと冷風バイパス通路45を通過してヒータコア23にて加熱されていない送風空気Wとが混合される。
【0095】
更に、ケーシング41の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
【0096】
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスにおける内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0097】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0098】
従って、エアミックスドア44が、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間46にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
【0099】
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
【0100】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0101】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の制御系について、
図3を参照して説明する。制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0102】
そして、制御装置50は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。従って、制御装置50は制御部の一例に相当する。
【0103】
制御対象機器には、圧縮機11、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、高温側ポンプ22、高温側流量調整弁25、電気ヒータ26、低温側ポンプ31、低温側流量調整弁34、送風機42等が含まれている。
【0104】
図3に示すように、制御装置50の入力側には、制御対象機器の作動を制御する為の制御用センサ群が接続されている。制御用センサ群は、内気温センサ52a、外気温センサ52b、日射センサ52c、高圧センサ52d、蒸発器温度センサ52e、合流部圧力センサ52fを含んでいる。
【0105】
内気温センサ52aは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ52bは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ52cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ52dは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14a或いは第2膨張弁14bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
【0106】
蒸発器温度センサ52eは、空調用蒸発器15における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。合流部圧力センサ52fは、冷凍サイクル10の合流部13bにおける冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出部である。合流部圧力は、冷凍サイクル10の低圧側における冷媒圧力を示す為、この圧力に基づいて算出された飽和温度は、空調用蒸発器15の内部における冷媒飽和温度を取得する際に参照される。従って、合流部圧力センサ52fは冷媒飽和温度取得部の一部を構成する。
【0107】
更に、制御用センサ群は、バッテリ温度センサ53a、送風空気温度センサ53b、吸込空気温度センサ53cを含んでいる。バッテリ温度センサ53aは、バッテリBの温度であるバッテリ温度TBAを検出するバッテリ温度検出部である。
【0108】
バッテリ温度センサ53aは、複数の温度検出部を有し、バッテリBの複数の箇所の温度を検出している。この為、制御装置50では、バッテリBの各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度TBAとしては、複数の温度検出部における検出値の平均値を採用している。
【0109】
そして、送風空気温度センサ53bは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する送風空気温度検出部である。吸込空気温度センサ53cは、空調用蒸発器15に対して流入する送風空気の温度である吸込空気温度を検出する吸込空気温度検出部である。吸込空気温度センサ53cは、室内空調ユニット40のケーシング41内部において、空調用蒸発器15に対して送風空気流れの上流側に配置されている。吸込空気温度センサ53cは、吸込空気温度取得部の一例に相当する。
【0110】
そして、制御装置50の入力側には、高温側熱媒体回路21、低温側熱媒体回路30の各熱媒体回路における熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが接続されている。複数の熱媒体温度センサには、第1熱媒体温度センサ54a~第5熱媒体温度センサ54eが含まれている。
【0111】
第1熱媒体温度センサ54aは、電気ヒータ26の熱媒体通路における出口部分に配置されており、電気ヒータ26から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。第2熱媒体温度センサ54bは、ラジエータ24の出口部分に配置されており、ラジエータ24を通過した高温側熱媒体の温度を検出する。第3熱媒体温度センサ54cは、ヒータコア23の入口部分に配置されており、ヒータコア23に流入する高温側熱媒体の温度を検出する。
【0112】
第4熱媒体温度センサ54dは、チラー16の熱媒体通路16bにおける出口部分に配置されており、チラー16から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。第4熱媒体温度センサ54dは熱媒体温度取得部の一例に相当する。第5熱媒体温度センサ54eは、機器用熱交換部32における熱媒体通路32aの出口部分に配置されており、機器用熱交換部32の熱媒体通路32aから流出する低温側熱媒体の温度を検出する。制御装置50には、これらの制御用センサ群の検出信号が入力される。
【0113】
そして、車両用空調装置1は、第1熱媒体温度センサ54a~第5熱媒体温度センサ54eの検出結果を参照して、加熱部20の高温側熱媒体回路21、低温側熱媒体回路30における熱媒体の流れを切り替える。これにより、車両用空調装置1は、高温側熱媒体、低温側熱媒体を用いて、車両における熱を管理することができる。
【0114】
更に、制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル51が接続されている。操作パネル51には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置50には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル51における各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
【0115】
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する際に操作される。エアコンスイッチは、空調用蒸発器15にて送風空気の冷却を行うことを要求する際に操作される。エアコンスイッチは、その入力操作によって、送風空気の冷却の有無を切り返るように構成されている。従って、エアコンスイッチの操作は切替操作の一例に相当する。
【0116】
風量設定スイッチは、送風機42の風量をマニュアル設定する際に操作される。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。従って、操作パネル51は操作部の一例に相当する。
【0117】
尚、制御装置50では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、制御装置50のうち、空調用蒸発器15の内部において冷媒の凝縮が発生すると想定される凝縮発生条件を満たすか否かを判定する構成は、条件判定部50aである。条件判定部50aは判定部の一例に相当する。
【0118】
そして、制御装置50のうち、凝縮発生条件を満たす場合に、空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮を抑制する為の凝縮抑制動作に関する制御を行う構成は、凝縮抑制制御部50bである。
【0119】
又、制御装置50のうち、凝縮抑制動作の後における操作パネル51に対する操作の有効、無効を判定する構成は、操作判定部50cである。更に、制御装置50のうち、凝縮抑制動作の後における車両用空調装置1の運転モードの切り替えを制御する構成は、モード切替制御部50dである。
【0120】
続いて、第1実施形態における車両用空調装置1の作動について説明する。上述したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置50に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
【0121】
より具体的には、制御プログラムでは、空調制御用のセンサ群によって検出された検出信号および操作パネル51から出力される操作信号に基づいて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。
【0122】
具体的には、目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
尚、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサ52aによって検出された内気温、Tamは外気温センサ52bによって検出された外気温、Asは日射センサ52cによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0123】
そして、制御プログラムにおいては、操作パネル51のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている際には、空調運転モードを冷房モードに切り替える。
【0124】
又、制御プラグラムでは、操作パネル51のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを除湿暖房モードに切り替える。更に、エアコンスイッチが投入されていない状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを暖房モードに切り替える。
【0125】
そして、制御プログラムでは、バッテリ温度TBAに応じて、バッテリBの冷却の有無を切り替える。具体的には、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった際には、電池冷却要求を出力して、バッテリBの冷却を実行する運転モードに切り替える。
【0126】
従って、車両用空調装置1における運転モードは、空調運転モードと、バッテリBの冷却の有無を示す運転モードの組み合わせによって定められる。例えば、車室内の空調が行われていない状態で、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった場合は、車両用空調装置1の運転モードは、車室内空調を行うことなく、バッテリBを冷却する単独冷却モードに切り替えられる。
【0127】
この為、車両用空調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードが含まれている。以下に、各運転モードについて説明する。
【0128】
(a)冷房モード
冷房モードは、冷凍サイクル10を利用したバッテリBの冷却を行うことなく、空調用蒸発器15により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを予め定められた絞り開度で開き、第2膨張弁14bを全閉する。
【0129】
従って、冷房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順で流れる冷媒の循環回路が構成される。
【0130】
そして、このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14aの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0131】
又、冷房モードの高温側熱媒体回路21では、制御装置50は、高温側ポンプ22及び高温側流量調整弁25を、冷房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ラジエータ24、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0132】
尚、冷房モードの低温側熱媒体回路30では、チラー16に低圧冷媒が流入していない為、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の循環を停止させた状態にすることも可能である。
【0133】
従って、冷房モードの車両用空調装置1では、空調用蒸発器15にて冷却された送風空気Wを車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
【0134】
(b)暖房モード
暖房モードは、冷凍サイクル10を用いたバッテリBの冷却を行うことなく、ヒータコア23により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを全閉状態にし、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開く。従って、暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0135】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第2膨張弁14bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0136】
そして、暖房モードの高温側熱媒体回路21について、制御装置50は、高温側ポンプ22、高温側流量調整弁25、電気ヒータ26を、暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0137】
又、暖房モードの低温側熱媒体回路30に関して、制御装置50は、低温側ポンプ31、外気熱交換器33、低温側流量調整弁34、チラー16、低温側ポンプ31の順で、低温側熱媒体が循環するように、低温側ポンプ31及び低温側流量調整弁34を制御する。
【0138】
即ち、暖房モードの車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路30の外気熱交換器33にて外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路21を介して、送風空気Wの加熱に利用した暖房を行うことができる。
【0139】
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、冷凍サイクル10を利用したバッテリBの冷却を行うことなく、空調用蒸発器15で冷却された送風空気Wをヒータコア23で加熱して車室内に送風する運転モードである。除湿暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0140】
従って、除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。つまり、除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、空調用蒸発器15及びチラー16が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0141】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を除湿暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0142】
そして、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路21について、制御装置50は、高温側ポンプ22、高温側流量調整弁25、電気ヒータ26を、除湿暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0143】
又、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路30に関し、制御装置50は、低温側ポンプ31、外気熱交換器33、低温側流量調整弁34、チラー16、低温側ポンプ31の順で低温側熱媒体が循環するように、低温側ポンプ31及び低温側流量調整弁34を制御する。
【0144】
これにより、除湿暖房モードの車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路30にて外気OAから吸熱した熱を冷凍サイクル10で汲み上げて、冷却された送風空気Wを、高温側熱媒体回路21を介して加熱する除湿暖房を実現することができる。
【0145】
(d)単独冷却モード
単独冷却モードは、車室内の空調運転を行うことなく、冷凍サイクル10を用いたバッテリBの冷却を行う運転モードである。この単独冷却モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを全閉状態にし、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開く。従って、単独冷却モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0146】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を単独冷却モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第2膨張弁14bの絞り開度、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0147】
又、単独冷却モードの高温側熱媒体回路21に関して、制御装置50は、高温側ポンプ22及び高温側流量調整弁25を、単独冷却モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ラジエータ24、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0148】
そして、単独冷却モードの低温側熱媒体回路30については、制御装置50は、低温側ポンプ31及び低温側流量調整弁34を制御する。これにより、低温側熱媒体回路30において、低温側熱媒体は、低温側ポンプ31、機器用熱交換部32、低温側流量調整弁34、チラー16、低温側ポンプ31の順に流れて循環する。
【0149】
この結果、単独冷却モードの車両用空調装置1は、チラー16における低圧冷媒との熱交換によって冷却された低温側熱媒体を、機器用熱交換部32の熱媒体通路32aに流通させることができるので、冷凍サイクル10を利用してバッテリBを冷却できる。
【0150】
そして、車両用空調装置1は、冷凍サイクル10にて、チラー16で吸熱した熱を汲み上げて、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体に放熱することができる。更に、車両用空調装置1は、高温側熱媒体が有する熱を、ラジエータ24にて外気OAへ放熱させることができる。
【0151】
(e)冷却冷房モード
冷却冷房モードは、冷凍サイクル10を利用したバッテリBの冷却と並行して、空調用蒸発器15により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。この冷却冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0152】
従って、冷却冷房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。つまり、冷却冷房モードの冷凍サイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、空調用蒸発器15及びチラー16が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0153】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷却冷房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0154】
又、冷却冷房モードの高温側熱媒体回路21に関して、制御装置50は、高温側ポンプ22及び高温側流量調整弁25を、冷却冷房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ラジエータ24、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0155】
そして、冷却冷房モードの低温側熱媒体回路30については、制御装置50は、低温側ポンプ31及び低温側流量調整弁34を、冷却冷房モードに適した状態になるように制御する。これにより、低温側熱媒体回路30において、低温側熱媒体は、低温側ポンプ31、機器用熱交換部32、低温側流量調整弁34、チラー16、低温側ポンプ31の順に流れて循環する。
【0156】
この結果、冷却冷房モードの車両用空調装置1は、チラー16における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、機器用熱交換部32に流通させることができるので、バッテリBを冷却することができる。
【0157】
又、冷却冷房モードでは、空調用蒸発器15における送風空気Wとの熱交換により、低圧冷媒を蒸発させて送風空気Wを冷却して車室内の冷房を実現できる。従って、冷却冷房モードの車両用空調装置1は、冷凍サイクル10を用いたバッテリBの冷却と共に、車室内の冷房によって快適性を向上させることができる。
【0158】
(f)冷却暖房モード
冷却暖房モードは、冷凍サイクル10を利用したバッテリBの冷却と並行して、ヒータコア23により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。この冷却暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを全閉状態にし、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開く。従って、冷却暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0159】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷却暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第2膨張弁14bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0160】
又、冷却暖房モードの高温側熱媒体回路21について、制御装置50は、高温側ポンプ22、高温側流量調整弁25、電気ヒータ26を、冷却暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0161】
そして、冷却暖房モードの低温側熱媒体回路30については、制御装置50は、冷却暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ31及び低温側流量調整弁34を制御する。これにより、低温側熱媒体回路30では、低温側熱媒体は、低温側ポンプ31、機器用熱交換部32、低温側流量調整弁34、チラー16、低温側ポンプ31の順に流れて循環する。
【0162】
この結果、冷却暖房モードの車両用空調装置1は、チラー16における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、機器用熱交換部32に流通させることができるので、バッテリBを冷却することができる。
【0163】
又、冷却暖房モードでは、冷凍サイクル10にてバッテリBの廃熱を汲み上げて、ヒータコア23にて送風空気Wへ放熱することで、車室内の暖房を実現することができる。従って、冷却暖房モードの車両用空調装置1は、冷凍サイクル10を用いたバッテリBの冷却と共に、バッテリBの廃熱を熱源として利用した車室内の暖房によって快適性を向上させることができる。
【0164】
(g)冷却除湿暖房モード
冷却除湿暖房モードは、冷凍サイクル10を利用したバッテリBの冷却と並行して、空調用蒸発器15で冷却された送風空気Wをヒータコア23で加熱して車室内に送風する運転モードである。この冷却除湿暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0165】
従って、冷却除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。
【0166】
つまり、冷却除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、空調用蒸発器15及びチラー16が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0167】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷却除湿暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0168】
又、冷却除湿暖房モードの高温側熱媒体回路21について、制御装置50は、高温側ポンプ22、高温側流量調整弁25、電気ヒータ26を、冷却除湿暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路21において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ22、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ22の順で流れて循環する。
【0169】
そして、冷却除湿暖房モードの低温側熱媒体回路30については、制御装置50は、冷却除湿暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ31及び低温側流量調整弁34を制御する。これにより、低温側熱媒体回路30では、低温側熱媒体は、低温側ポンプ31、機器用熱交換部32、低温側流量調整弁34、チラー16、低温側ポンプ31の順に流れて循環する。
【0170】
この結果、冷却除湿暖房モードの車両用空調装置1は、チラー16における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、機器用熱交換部32に流通させることができるので、バッテリBを冷却することができる。
【0171】
又、冷却除湿暖房モードでは、冷凍サイクル10にてバッテリBの廃熱を汲み上げて、空調用蒸発器15にて冷却された送風空気Wへ放熱することで、車室内の除湿暖房を実現することができる。従って、冷却除湿暖房モードの車両用空調装置1は、冷凍サイクル10を用いたバッテリBの冷却と共に、バッテリBの廃熱を熱源として利用した車室内の除湿暖房によって快適性を向上させることができる。
【0172】
上述したように、車両用空調装置1の運転モードの内、冷却暖房モードは、空調用蒸発器15に対する冷媒の流入を遮断した状態で、チラー16及び低温側熱媒体回路30にてバッテリBの冷却を行っている。
【0173】
冷却暖房モードにおける冷凍サイクル10においては、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、熱媒体冷媒熱交換器12にて、熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体に対して放熱して凝縮する。熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、第2膨張弁14bにて減圧膨張されてチラー16に流入する。
【0174】
チラー16に流入した低圧冷媒は、チラー16の熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体から吸熱して蒸発することで、低温側熱媒体を冷却する。ここで、チラー16の熱媒体通路16bの出口側は、合流部13bを介して、空調用蒸発器15の出口側及び圧縮機11の吸込口に接続され連通している。
【0175】
又、冷却暖房モードでは、第1膨張弁14aが閉塞状態である為、空調用蒸発器15における入口側は閉塞されている。この為、チラー16にて蒸発した気相冷媒は、
図4におけるRで示すように、合流部13bを介して、空調用蒸発器15の出口側から内部に流入することができる状態にある。
【0176】
ここで、冷却暖房モードでは、車室内の暖房を行う必要がある為、送風機42を作動させる。
図2に示すように、空調用蒸発器15は、送風空気の流れに関して、ヒータコア23よりも上流側に配置されている為、送風空気は、ヒータコア23にて加熱される前に、空調用蒸発器15を通過する。従って、車室内暖房の為に送風された送風空気は、空調用蒸発器15の内部に流入した気相冷媒と熱交換することになる。
【0177】
この場合において、空調用蒸発器15を通過する送風空気の温度(即ち、吸込空気温度)が、空調用蒸発器15内部の気相冷媒の温度よりも低ければ、気相冷媒は、送風空気に対して放熱して、空調用蒸発器15の内部で凝縮して液相冷媒になってしまう。凝縮した液相冷媒は、空調用蒸発器15内部に留まって寝こんでしまう為、冷凍サイクル10を循環する冷媒量が不足する。
【0178】
空調用蒸発器15の内部において冷媒の凝縮が生じてしまった場合、冷却暖房モードで運転したとしても、冷凍サイクル10を循環する冷媒量が不足してしまう為、チラー16及び低温側熱媒体回路30を用いたバッテリBの冷却性能が低下することが想定される。又、冷凍サイクル10によって汲み上げられる熱量も制限されることになる為、冷却暖房モードにおける冷凍サイクル10による暖房能力が低下することが考えられる。
【0179】
続いて、冷却暖房モードにおける空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮を抑制する為の制御について、
図5~
図7を参照して説明する。
図5に示すフローチャートは、車両用空調装置1の制御装置50で実行される制御処理の内容を示している。具体的には、制御装置50のROMに記憶された制御プログラムを、制御装置50のCPUが実行することで、この制御処理が実現される。
【0180】
図5に示すように、先ず、ステップS1において、車両用空調装置1の運転モードが、空調用蒸発器15にて送風空気を冷却する運転モードであるか否かと、ヒータコア23にて送風空気を加熱する運転モードであるか否かが判定される。換言すると、運転モードが暖房モード又は冷却暖房モードの何れかであるか否かが判定される。
【0181】
ステップS1の判定処理は、例えば、操作パネル51におけるエアコンスイッチが投入されていないか否かによって行われる。送風空気を加熱する運転モードであると判定された場合、ステップS2に進む。一方、そうでないと判定された場合は、ステップS12に進み、その他の運転モードに関する運転制御が行われる。ステップS12では、冷房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却除湿暖房モードに関する運転制御が行われる。ステップS12を終了した後、
図5の制御プログラムは終了される。
【0182】
ステップS2においては、電池冷却要求があるか否かが判定される。上述したように、電池冷却要求は、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった場合に出力される。電池冷却要求があると判定された場合は、ステップS3に移行して、冷却暖房モードに係る運転制御を開始する。一方、電池冷却要求があると判定されなかった場合、ステップS11に進み、暖房モードに係る運転制御を実行する。
【0183】
ステップS3にて冷却暖房運転を開始した後、ステップS4において、冷却暖房モードに際して、空調用蒸発器15内部にて冷媒の凝縮が発生すると想定される凝縮発生条件を満たすか否かが判定される。ステップS4では、凝縮発生条件の判定処理に関する制御プログラムが実行される。
【0184】
ここで、凝縮発生条件に関する判定処理について、
図6を参照して説明する。ステップS4に移行すると、先ず、ステップS20において、空調用蒸発器15内部における内部冷媒飽和温度が吸込空気温度センサ53cで検出された吸込空気温度よりも高いか否かが判定される。内部冷媒飽和温度とは、空調用蒸発器15内部における冷媒圧力における冷媒飽和温度を意味しており、合流部圧力センサ52fで検出された圧力より算出された飽和温度を用いて特定される。
【0185】
第1実施形態における凝縮発生条件は、内部冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも高いことと言い換えることができる。内部冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも高いと判定された場合、ステップS21に進み、凝縮発生条件が成立している旨がRAMに格納される。一方、内部冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも高くないと判定された場合、ステップS22に進み、凝縮発生条件が不成立である旨がRAMに格納される。判定結果をRAMに格納した後、凝縮発生条件の判定に関する制御プログラムを終了して、ステップS5に移行する。
【0186】
冷却暖房モードにおける制御処理について、再び
図5を参照して説明する。ステップS5に移行すると、ステップS4における凝縮発生条件に関する判定結果を参照して、凝縮発生条件が成立しているか否かを判定する。ステップS4の判定結果が凝縮発生条件の成立を示している場合、ステップS6に進む。一方、ステップS4の判定結果が凝縮発生条件の不成立を示している場合、ステップS7に進む。
【0187】
ステップS6では、凝縮発生条件を満たすと判定された結果に従って移行している為、このまま冷却暖房運転を継続すると、空調用蒸発器15の内部にて冷媒の凝縮が発生して、冷媒の寝こみが生じるものと考えられる。この為、ステップS6では、通常の冷却暖房モードでは閉塞状態になっている第1膨張弁14aを制御して、空調用蒸発器15の入口側からの冷媒の流入を許容する。
【0188】
つまり、ステップS6では、原則的に、冷却暖房モードで運転している状態において、凝縮発生条件が成立している場合に限って、強制的に冷却除湿暖房モードに変更されている。これにより、空調用蒸発器15の内部には、入口側から出口側へと向かう冷媒の流れが形成される為、空調用蒸発器15の出口側から気相冷媒が流入することを抑制することができ、空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制できる。
【0189】
又、空調用蒸発器15内部で凝縮していた液相冷媒についても、入口側から出口側へ向かう冷媒の流れを利用して、空調用蒸発器15の外部へ流出させることができる。これにより、冷凍サイクル10を循環する冷媒量を維持することができる為、バッテリBの冷却能力の低下等を抑制することができる。
【0190】
そして、強制的に冷却除湿暖房モードに変更することによって、空調用蒸発器15の内部冷媒飽和温度を吸込空気温度よりも低くなるように低下させることができる。これにより、内部冷媒飽和温度と吸込空気温度との関係性の観点からも、空調用蒸発器15の内部における冷媒の凝縮及び冷媒の寝こみを抑制することができる。
【0191】
又、ステップS6においては、操作パネル51におけるエアコンスイッチの操作に関する有効、無効を管理する為の冷却停止禁止フラグがオンに設定される。冷却停止禁止フラグとは、エアコンスイッチの操作によって、空調用蒸発器15に対する冷媒の流入を遮断すること(即ち、空調用蒸発器15による送風空気の冷却を停止すること)を禁止する為のフラグである。
【0192】
従って、ステップS6にて、強制的に冷却除湿暖房モードに切り替わった後に、操作パネル51におけるエアコンスイッチのオフ操作を行ったとしても、
図7に示すように、エアコンスイッチのオフ操作の入力を無効として冷却除湿暖房モードでの運転を継続する。
【0193】
一方、ステップS7では、凝縮発生条件を満たしていないと判定されている為、このまま冷却暖房運転を継続しても、空調用蒸発器15内部にて冷媒の凝縮が発生することはなく、冷媒の寝こみに起因したバッテリBの冷却性能の低下も生じることはない。この為、ステップS7では、第1膨張弁14aを閉塞状態にしたまま、冷却暖房モードでの運転を継続する。ステップS7を終了した後、
図5の制御プログラムは終了される。
【0194】
ステップS8においては、電池冷却要求が終了しているか否かが判定される。上述したように、電池冷却要求は、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった場合に出力される。従って、電池冷却要求が終了する場合とは、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBAよりも低くなった場合ということができる。電池冷却要求が終了している場合には、ステップS9に進み、そうでない場合は、ステップS6に処理を戻して、冷却除湿暖房モードでの運転を継続する。
【0195】
ステップS9に移行すると、電池冷却要求が終了したことに伴って、車両用空調装置1の運転モードを冷却除湿暖房モードから除湿暖房モードに変更する。つまり、ステップ9では、低温側熱媒体回路30は、低温側流量調整弁34の作動によって、機器用熱交換部32を経由する低温側熱媒体の循環径路から、外気熱交換器33を経由する低温側熱媒体の経路に切り替えられる。
【0196】
この低温側熱媒体回路30における循環径路の変化に際しても、冷凍サイクル10においては、第1膨張弁14a及び空調用蒸発器15を経由する循環径路と、第2膨張弁14b及びチラー16を経由する循環径路が並列的に形成されている。つまり、第1膨張弁14aの作動制御によって、空調用蒸発器15に対する冷媒の流通は継続される。その後、ステップS10に進む。
【0197】
ステップS10では、操作パネル51におけるエアコンスイッチのオン操作が行われたか否かが判定される。即ち、電池冷却要求が終了した状態で、エアコンスイッチのオン操作が行われたか否かが判定される。電池冷却要求が終了している状態におけるエアコンスイッチのオン操作は特殊操作の一例に相当する。
【0198】
エアコンスイッチのオン操作が行われた場合、ステップS11に進む。一方、エアコンスイッチのオン操作が行われていない場合には、エアコンスイッチのオン操作が行われるまで処理を待機する。従って、電池冷却要求の終了後にエアコンスイッチのオフ操作が行われた場合は、オフ操作を無効として処理を待機する為、空調用蒸発器15に対する冷媒の流通が許容される。
【0199】
ステップS11においては、電池冷却要求の終了後にエアコンスイッチのオン操作が行われたことに伴って、冷却停止禁止フラグをオフに設定する。これにより、ステップS11以後におけるエアコンスイッチのオフ操作が有効になり、空調用蒸発器15に対する入口側からの冷媒の流入を遮断することが可能となる。
【0200】
ここで、上述した電池冷却要求の終了に伴う運転モードの変更に際して、ユーザの意図を介在させずに、車室内の空調態様を除湿暖房から暖房に変更してしまうと、空調用蒸発器15による送風空気の除湿が行われなくなる為、車室内の湿度が上昇してしまう。この空調態様の変化に伴う車室内湿度の上昇は、ユーザの快適性を損ねることが想定される。ステップS9では、冷却除湿暖房モードから除湿暖房モードに変更される為、車室内の湿度上昇が生じることはなく、ユーザの快適性を担保することができる。
【0201】
そして、ステップS11では、ステップS10におけるエアコンスイッチのオン操作を契機とした、除湿暖房モードである為、ユーザの意図を反映させた状態で車室内の快適性を維持している。
【0202】
又、ステップS11以後におけるエアコンスイッチのオフ操作は有効である為、ユーザは、エアコンスイッチのオフ操作を行うことで、除湿暖房モードから暖房モードに変更することができる。この場合、エアコンスイッチのオフ操作によって、ユーザの意図が反映されている為、車室内の湿度が上昇したとしても問題はない。
【0203】
尚、凝縮抑制動作としての強制的な冷却除湿暖房モードでは、ユーザの意図が反映されていないにも関わらず、送風空気の除湿を行っている。そして、冷却除湿暖房モードでは、送風空気の除湿分だけ、冷却暖房モードよりも圧縮機11の動力が増加すると考えられ、車両用空調装置1の省エネルギ性を低下させてしまうようにも思われる。
【0204】
しかしながら、車両用空調装置1では、この場合における除湿暖房に際して、空調用蒸発器15にて送風空気から吸熱する吸熱量が加わる為、圧縮機11の動力増加は少なく、車両用空調装置1の省エネルギ性を大きく低下させることはない。
【0205】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル10、加熱部20、低温側熱媒体回路30等の作動を制御することによって、車室内の空調及びバッテリBの冷却に関して、様々な運転態様を実現することができる。
図4に示すように、車両用空調装置1の冷却暖房モードでは、空調用蒸発器15に対して冷媒を流通させることなく、チラー16に冷媒を流通させることでバッテリBを冷却し、加熱部によって送風空気を加熱している。
【0206】
冷却暖房モードでは、空調用蒸発器15の流出口側からチラー16で蒸発した気相冷媒が流入可能になっている為、空調用蒸発器15を取り巻く状況によっては、空調用蒸発器15の内部における冷媒の凝縮及び冷媒の寝こみを発生することが考えられる。
【0207】
第1実施形態に係る車両用空調装置1は、ステップS3、ステップS4にて、凝縮発生条件が成立するか否かを判定して、凝縮発生条件が成立する場合は、ステップS6において、冷却暖房モードを強制的に冷却除湿暖房モードに変更する。
【0208】
これにより、空調用蒸発器15の入口側から出口側へと向かう冷媒の流れが生じる為、空調用蒸発器15の内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制することができる。又、強制的に冷却除湿暖房モードに変更することによって、空調用蒸発器15内部における冷媒飽和温度を空調用蒸発器15における吸込空気温度よりも低くすることができるので、空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮を抑制することができる。そして、空調用蒸発器15内部における冷媒の寝こみを抑制することで、冷凍サイクル10を循環する冷媒量を維持することができるので、チラー16における冷却性能を維持することができる。
【0209】
又、車両用空調装置1は、ステップS1において、エアコンスイッチの操作内容に従って、送風空気を冷却するか否かと、加熱するか否かを判定して、送風空気の加熱が行われる場合に、凝縮発生条件に関する判定を行っている。これにより、空調用蒸発器15内部において、冷媒の凝縮が想定される運転モードの場合、凝縮発生条件に関する判定処理を行うことができるので、凝縮発生条件の判定処理に起因する処理負担を必要最低限に抑えることができる。
【0210】
そして、車両用空調装置1は、ステップS10にてエアコンスイッチのオン操作が行われたことを条件として、エアコンスイッチの操作に対応した第1膨張弁14aの動作を許容するように構成されている。
【0211】
ここで、冷却除湿暖房モードを終了した時点で、空調用蒸発器15に対する入口側からの冷媒の流入を遮断した場合、空調用蒸発器15による送風空気の除湿が停止される為、湿度の上昇により、ユーザの快適性を損ねることが懸念される。この点、車両用空調装置1では、凝縮抑制動作としての強制的な冷却除湿暖房モードが終了した場合であっても、空調用蒸発器15に対する入口側からの冷媒の流入が継続される。これにより、強制的な冷却除湿暖房モードが終了した場合でも、送風空気に関して、意図しない湿度変化が生じることはないので、ユーザの快適性を担保することができる。
【0212】
又、ステップS10にてエアコンスイッチのオン操作が行われた後については、ユーザがエアコンスイッチを操作することで、空調用蒸発器15に対する入口側からの冷媒の流入を遮断することもできる。この為、凝縮抑制動作終了後における空調態様に、ユーザの意図を反映させることも可能である。
【0213】
又、電池冷却要求の終了に伴って冷却除湿暖房モードから運転モードが変更される際には、低温側熱媒体の循環径路が、機器用熱交換部32を経由する循環径路から外気熱交換器33を経由する循環径路に、低温側流量調整弁34によって切り替えられる。この時、冷凍サイクル10の第1膨張弁14aは、空調用蒸発器15に対する冷媒の流入を許容するように制御される。
【0214】
即ち、電池冷却要求の終了に伴って、冷却除湿暖房モードから外気吸熱を前提とした除湿暖房モードに切り替えられる。送風空気の熱源として外気を利用すると共に、空調用蒸発器15による送風空気の除湿を継続することで、車両用空調装置1における省エネルギ性の維持することと、ユーザの快適性を担保することを両立させることができる。
【0215】
そして、凝縮発生条件の判定処理としては、
図6に示すように、空調用蒸発器15に対する吸込空気温度と、空調用蒸発器15の内部における内部冷媒飽和温度とを比較し、内部冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも高い場合に、凝縮発生条件が成立すると判定する。
【0216】
従って、冷却暖房モードにおいて、空調用蒸発器15の内部にて冷媒の凝縮が発生するか否かの予測、判断を高い精度で行うことができる。この結果、車両用空調装置1は、冷媒の凝縮及び寝こみに起因する冷媒量の低下を防止して、バッテリBの冷却性能を維持することができる。
【0217】
又、車両用空調装置1の加熱部20には、
図1に示すように、冷凍サイクル10の熱媒体冷媒熱交換器12が含まれており、熱媒体冷媒熱交換器12は、いわゆる凝縮器として機能している。そして、加熱部20は、冷凍サイクル10における高圧冷媒の有する熱を熱源として、送風空気を加熱する。
【0218】
従って、車両用空調装置1は、凝縮抑制動作としての冷却除湿暖房モードや、冷却要求終了後の除湿暖房モードにおいて、空調用蒸発器15やチラー16により吸熱したバッテリBの廃熱や外気の有する熱を送風空気の加熱源として利用することができる。
【0219】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態と異なる第2実施形態について、
図8を参照して説明する。第2実施形態では、ステップS4における凝縮発生条件に係る判定処理の内容が、第1実施形態と相違している。車両用空調装置1の基本構成等の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0220】
第2実施形態における凝縮発生条件に関する判定処理について、
図8を参照して説明する。ステップS4に移行すると、先ず、ステップS30において、第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度が吸込空気温度センサ53cで検出された吸込空気温度よりも高いか否かが判定される。
【0221】
ここで、第4熱媒体温度センサ54dは、チラー16の熱媒体通路16bにおける出口部分に配置されており、チラー16から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。従って、第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度は、合流部圧力センサ52fで検出される合流部の飽和温度と強い相関を有する。又、内部冷媒飽和温度は、合流部圧力センサ52fで検出された合流部圧力に基づいて算出された飽和温度を用いて特定される。従って、第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度と吸込空気温度を用いた凝縮発生条件の判定は、第1実施形態と同程度の判定精度となる。
【0222】
第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度が吸込空気温度よりも高いと判定された場合、ステップS31に進み、凝縮発生条件が成立している旨がRAMに格納される。一方、第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度が吸込空気温度より高くないと判定された場合、ステップS32に進み、凝縮発生条件が不成立である旨がRAMに格納される。
【0223】
判定結果をRAMに格納した後、第2実施形態に係る凝縮発生条件の判定に関する制御プログラムを終了して、ステップS5に移行する。ステップS5以後の制御処理については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0224】
以上説明したように、第2実施形態の車両用空調装置1によれば、低温側熱媒体温度と吸込空気温度を用いた凝縮発生条件を採用した場合も、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
【0225】
(第3実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第3実施形態について、
図9を参照して説明する。第3実施形態では、ステップS4における凝縮発生条件に係る判定処理の内容が、上述した実施形態と相違している。車両用空調装置1の基本構成等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0226】
第3実施形態における凝縮発生条件に関する判定処理について、
図9を参照して説明する。ステップS4に移行すると、先ず、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体に係る目標低温側熱媒体温度が吸込空気温度センサ53cで検出された吸込空気温度よりも高いか否かが判定される。
【0227】
ここで、目標低温側熱媒体温度は、第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度の目標値を示しており、低温側熱媒体回路30にて機器用熱交換部32を介して冷却されるバッテリBが適切に冷却されるように定められている。目標低温側熱媒体温度は目標熱媒体温度の一例に相当する。そして、第3実施形態では、第4熱媒体温度センサ54dで検出される低温側熱媒体温度が目標低温側熱媒体温度に近づくように、冷凍サイクル10及び低温側熱媒体回路30の作動が制御される。
【0228】
この為、吸込空気温度が目標低温側熱媒体温度よりも低い場合、空調用蒸発器15の内部にて冷媒の凝縮が発生して冷媒の寝こみが発生する条件に必ず収束することになる。目標低温側熱媒体温度と吸込空気温度を用いた凝縮発生条件の判定を行うことで、上述した実施形態と同程度の判定精度を実現することができる。
【0229】
目標低温側熱媒体温度が吸込空気温度よりも高いと判定された場合、ステップS41に進み、凝縮発生条件が成立している旨がRAMに格納される。一方、目標低温側熱媒体温度が吸込空気温度より高くないと判定された場合、ステップS42に進み、凝縮発生条件が不成立である旨がRAMに格納される。
【0230】
判定結果をRAMに格納した後、第3実施形態に係る凝縮発生条件の判定に関する制御プログラムを終了して、ステップS5に移行する。ステップS5以後の制御処理については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0231】
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、目標低温側熱媒体温度と吸込空気温度を用いた凝縮発生条件を採用した場合も、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
【0232】
(第4実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第3実施形態について、
図10を参照して説明する。第4実施形態では、上述した実施形態と異なる凝縮抑制動作によって、冷却暖房モードの空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮を抑制している。第4実施形態に係る車両用空調装置1の基本構成等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0233】
次に、第4実施形態に係る車両用空調装置1において、冷却暖房モードの空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮を抑制する為の制御について、
図10を参照して説明する。
【0234】
第4実施形態においては、ステップS51にて、車両用空調装置1の運転モードが空調用蒸発器15にて送風空気を冷却するモードであるか否かと、ヒータコア23にて送風空気を加熱する運転モードであるか否かが判定される。この判定内容は、第1実施形態のステップS1と同様である。
【0235】
送風空気を加熱する運転モードであると判定された場合、ステップS52に進む。一方、そうでないと判定された場合は、ステップS59に進み、その他の運転モードに関する運転制御が行われる。ステップS59の制御内容は、ステップS12と同様である。
【0236】
ステップS52では、電池冷却要求があるか否かが判定される。ステップS52は、第1実施形態のステップS2と同様の判定処理である。電池冷却要求があると判定された場合は、ステップS53に移行して、冷却暖房モードに係る運転制御を開始する。一方、電池冷却要求があると判定されなかった場合、ステップS59に進み、暖房モードに係る運転制御を実行する。
【0237】
ステップS53にて冷却暖房運転を開始した後、ステップS54において、冷却暖房モードに際して、凝縮発生条件を満たすか否かが判定される。ステップS54では、凝縮発生条件の成立、不成立を判定することができれば、種々の態様を採用できる。即ち、凝縮発生条件の判定処理として、第1実施形態~第3実施形態の判定処理のうち、何れの判定処理を採用しても良い。
【0238】
ステップS55に移行すると、ステップS54における凝縮発生条件に関する判定結果を参照して、凝縮発生条件が成立しているか否かを判定する。ステップS54の判定結果が凝縮発生条件の成立を示している場合、ステップS56に進む。一方、ステップS54の判定結果が凝縮発生条件の不成立を示している場合、ステップS57に進む。
【0239】
ステップS56では、冷却暖房モードの運転状態において、第2膨張弁14bの絞り開度を制御する。具体的には、空調用蒸発器15の内部冷媒飽和温度が、空調用蒸発器15に対する吸込空気温度よりも低くなるように、第2膨張弁14bの絞り開度を通常状態よりも小さくする。これにより、第2膨張弁14bの開度制御によって、冷却暖房モードにて空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制することができる。
【0240】
一方、凝縮発生条件が不成立であった場合に移行するステップS57では、通常の冷却暖房モードの運転制御が行われる。この場合の第2膨張弁14bの絞り開度は、例えば、チラー16で冷却される低温側熱媒体の温度を機器用熱交換部32にてバッテリBを冷却することができる温度まで下げる際に、圧縮機11の動力が少なくなるように定められる。
【0241】
その後、ステップS58においては、冷却暖房運転を終了するか否かが判定される。冷却暖房運転を終了する場合には、上述した実施形態のように、電池冷却要求が終了した場合や、操作パネル51に対するユーザ操作によって冷却暖房運転の終了が入力された場合等が含まれている。
【0242】
冷却暖房運転を終了すると判定された場合は、
図10の制御プログラムを終了する。一方、冷却暖房運転を終了すると判定されていない場合、ステップS54に処理を戻して、冷却暖房運転を継続する。
【0243】
以上説明したように、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル10、加熱部20、低温側熱媒体回路30等の作動を制御することによって、車室内の空調及びバッテリBの冷却に関して、様々な運転態様を実現することができる。
【0244】
又、車両用空調装置1の冷却暖房モードでは、空調用蒸発器15に対して冷媒を流通させることなく、チラー16に冷媒を流通させることでバッテリBを冷却し、加熱部によって送風空気を加熱している。そして、冷却暖房モードでは、空調用蒸発器15の流出口側からチラー16で蒸発した気相冷媒が流入可能になっている為、空調用蒸発器15を取り巻く状況によっては、空調用蒸発器15の内部における冷媒の凝縮及び冷媒の寝こみを発生することが考えられる。
【0245】
第4実施形態に係る車両用空調装置1は、ステップS54、ステップS55にて、凝縮発生条件が成立するか否かを判定する。そして、車両用空調装置1は、凝縮発生条件が成立する場合は、凝縮抑制動作として、空調用蒸発器15内部の冷媒飽和温度が空調用蒸発器15に対する吸込空気温度よりも低くなるように、第2膨張弁14bの開度を下げて減圧量を調整する。
【0246】
この結果、空調用蒸発器15の内部における冷媒飽和温度が吸込空気温度よりも低くなる為、空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制することができる。更に、空調用蒸発器15内部における冷媒の寝こみを抑制することで、冷凍サイクル10を循環する冷媒量を確保することができるので、チラー16における冷却性能を維持することができる。
【0247】
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
【0248】
(1)車両用空調装置1における冷凍サイクル10の構成は、上述した実施形態に限定されるものではない。冷凍サイクル10の低圧側に、空調用蒸発器、冷却用蒸発器、空調用流量調整部、空調側流路及び迂回流路を有する構成であれば、種々の構成を採用することができる。
【0249】
例えば、
図11、
図12に示すように、冷凍サイクル10の低圧側において、空調用蒸発器15及びチラー16を直列に配置した構成としても良い。
図11に示すように、第1膨張弁14a及び空調用蒸発器15をチラー16の上流に配置された経由流路17bに配置すると共に、第1膨張弁14a及び空調用蒸発器15を迂回するように迂回流路17cを配置しても良い。
【0250】
又、
図12に示すように、第1膨張弁14a及び空調用蒸発器15をチラー16の下流に配置された経由流路17bに配置すると共に、第1膨張弁14a及び空調用蒸発器15を迂回するように迂回流路17cを配置しても良い。
【0251】
(2)又、上述した実施形態では、加熱部20を熱媒体冷媒熱交換器12及び高温側熱媒体回路21によって構成していたが、この構成に限定されるものではない。冷凍サイクル10における高圧冷媒の有する熱を熱源として、送風空気を加熱できる構成であれば、種々の態様を採用することができる。
【0252】
例えば、
図13に示すように、室内凝縮器12c及び室外熱交換器18によって、加熱部20を構成しても良い。この場合における室内凝縮器12cは、上述した実施形態におけるヒータコア23の位置に配置されている。又、室外熱交換器18は、室内凝縮器12cから流出した冷媒における残余の熱を外気に放熱可能に構成されている。そして、熱媒体冷媒熱交換器12の流出口と、室外熱交換器18の流入口の間には、全開機能付きの第3膨張弁14cが配置されている。
【0253】
(3)そして、上述した実施形態においては、凝縮抑制動作として、強制的に冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードに変更したり、冷却暖房モードにおける第2膨張弁14bの開度を小さくしたりしていたが、凝縮抑制動作の内容は、これらに限定されない。
【0254】
例えば、
図14に示すように、空調用蒸発器15の出口側にシャット機構部19を配置しても良い。シャット機構部19は、空調用蒸発器15の出口側における冷媒流路を開閉できるように構成されており、例えば、開閉弁や逆止弁を用いることができる。そして、凝縮発生条件が成立した場合に、凝縮抑制動作として、シャット機構部19の作動を制御して、空調用蒸発器15の出口側の冷媒流路を閉塞する。これにより、空調用蒸発器15の出口側からの気相冷媒の流入を抑制することができ、空調用蒸発器15内部における冷媒の凝縮及び寝こみを抑制できる。
【0255】
(4)又、上述した実施形態においては、第1膨張弁14aが全閉機能を有する構成としている。この為、第1膨張弁14aが、空調用蒸発器15に対する減圧部としての側面と、空調用蒸発器15に対して流入する冷媒の流量を調整する空調用流量調整部としての側面を有しているが、この構成に限定されるものではない。即ち、空調用蒸発器15に対する減圧部としての構成と、空調用流量調整部としての構成をそれぞれ個別に配置してもよく、空調用流量調整部として、開閉弁を配置して、減圧部として機械式膨張弁を配置しても良い。
【0256】
(5)そして、上述した実施形態においては、冷媒飽和温度取得部を、合流部圧力センサ52fを用いて構成しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、合流部に限らず、冷凍サイクル10における低圧側の冷媒圧力を検出する低圧側圧力センサを配置して、検出された低圧側の冷媒圧力を用いて、空調用蒸発器15の内部における冷媒飽和温度を算出しても良い。また、冷凍サイクル10における低圧側(合流部も含む)の冷媒温度を検出する冷媒温度センサの値を用いてもよい。
【0257】
(6)又、上述した実施形態においては、発熱機器としてバッテリBを採用していたが、この態様に限定されるものではない。発熱機器としては、作動に伴って発熱する車載機器であれば良く、種々の機器を採用することができる。例えば、車両に搭載された走行用インバータ、走行用モータ、エンジン、DC-DCコンバータ、モータジェネレータ、電力制御ユニット、先進運転支援システム(いわゆる、ADAS)用の制御装置等を発熱機器とすることも可能である。
【0258】
(7)そして、上述した実施形態において、特殊操作は、電池冷却要求が終了している状態におけるエアコンスイッチのオン操作であったが、これに限定されるものではない。例えば、車両のイグニッションスイッチがOFFとなった場合でもよい。これによるとイグニッションスイッチがオフとなった場合は、ユーザが降車すると推定されるため、次回イグニッションスイッチがONとなった場合において除湿暖房モードを維持する必要性は少ない。
【符号の説明】
【0259】
1 車両用空調装置
10 冷凍サイクル
14a 第1膨張弁
15 空調用蒸発器
16 チラー
17b 経由流路
17c 迂回流路
20 加熱部
50 制御装置
50a 条件判定部