(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
G09F 19/12 20060101AFI20240409BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20240409BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20240409BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20240409BHJP
【FI】
G09F19/12 L
G09F3/02 W
G03H1/02
B42D25/328 100
(21)【出願番号】P 2020087521
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】柴田 城
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 高志
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521159(JP,A)
【文献】特開2010-020005(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021320(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054216(WO,A1)
【文献】特表2015-526311(JP,A)
【文献】特開2007-212529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/12
G09F 3/02
G03H 1/02
B42D 25/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、
前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、
前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、
前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され
、
前記三次元画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記三次元画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される表示体。
【請求項2】
前記第1立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が0.5mm以上である請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記三次元画像は、第3対象物の像を更に含み、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第3対象物に対応した第3立体物は、前記表示面内に全体が復元される請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第1対象物の像と前記第2対象物の像とはホログラムによって表示され、前記第3対象物の像は回折格子によって表示される請求項3に記載の表示体。
【請求項5】
前記第2対象物の像の明るさは、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第2対象物の像の明るさの1/10以下であり、前記第3対象物の像の明るさは、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第3対象物の像の明るさの1/10以下である請求項3又は4に記載の表示体。
【請求項6】
前記第1立体物は、前記表示面内に全体が復元される請求項1に記載の表示体。
【請求項7】
前記第1対象物の像は回折格子によって表示され、前記第2対象物の像はホログラムによって表示される請求項6に記載の表示体。
【請求項8】
前記第2立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が30mm以下である請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記三次元画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、
前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層と
を備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている請求項9に記載の表示体。
【請求項11】
前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある請求項10に記載の表示体。
【請求項12】
前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ請求項10又は11に記載の表示体。
【請求項13】
前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している請求項12に記載の表示体。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、
前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と
を備えた転写箔。
【請求項15】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体上に設けられた粘着層と
を備えた粘着ラベル。
【請求項16】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を備えた表示体付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品等の物品が真正品であることを証明する目的で、ホログラムによって三次元画像を表示可能な表示体を、上記物品において使用することがある(特許文献1及び2を参照のこと)。また、ホログラムの代わりに、回折格子を利用して、三次元画像を表示可能とすることもある(特許文献3及び4を参照のこと)。ホログラム又は回折格子によって三次元画像を表示する表示体は、偽造や複製が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-109362号公報
【文献】特開2010-139673号公報
【文献】特開平6-281804号公報
【文献】特開平7-104211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホログラム又は回折格子によって表示される三次元画像は、偽造防止などに広く利用された結果、その特殊性が低くなりつつある。
【0005】
本発明は、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示可能な表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され、前記三次元画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記三次元画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される表示体が提供される。
【0007】
ここで、用語「三次元画像」は、両眼視差又は運動視差によって観察者に立体感を感じさせる画像を意味する。また、用語「回折画像」は、ホログラム又は回折格子によって表示される画像を意味する。
【0008】
両眼視差を利用して回折画像としての三次元画像を表示する表示体は、平行光で照明した場合に、観察者の右目及び左目に対して、撮像角度が僅かに異なる視差画像を表示するように設計されている。他方、運動視差を利用して回折画像としての三次元画像を表示する表示体は、平行光で照明し、照明方向を一定としたまま、観察角度を変化させた場合に、観察者の右目及び左目の各々に対して、撮像角度が僅かに異なる視差画像を順次表示するように設計されている。このように、三次元画像を回折画像として表示する表示体は、平行光で照明した場合に、観察者の右目及び左目の各々に対して、例えば、単一の視差画像を表示するように設計されている。
【0009】
しかしながら、一般に、屋内環境下で表示体に入射する光は、屋内照明などの光源からの光を含む拡散光である。それ故、表示体には、照明光が様々な角度で入射する。そして、屋内照明などの光源から表示体に直接照射される直接光が最も高い強度を有しているものの、壁や天井などによって反射された後に表示体に入射する間接光も、強度が低い訳ではない。従って、そのような環境下では、上記の設計を採用した表示体は、観察者の右目及び左目の各々に対して、複数の視差画像を表示する。
【0010】
上記の通り、本発明の一側面に係る表示体によると、第1立体物は、第2立体物と比較して、表示面から近い位置に復元される。このような設計を採用しているので、第1対象物の像は、照明角度や観察角度を僅かに変化させても、形状及び位置を大きくは変化させない。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、直接光によって生じる視差画像と、これと第1対象物の像の形状及び位置がほぼ等しい1以上の視差画像とを含み得る。
【0011】
これら視差画像において、第1対象物の像は形状及び位置がほぼ等しいので、直接光によって生じさせるべき視差画像における第1対象物の像の表示には、他の1以上の視差画像も寄与し得る。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像が、直接光によって生じる視差画像とは第1対象物の像の形状及び位置が大きく異なる1以上の視差画像を含んでいたとしても、それら視差画像と比較して、直接光によって生じさせるべき視差画像は遥かに明るい。従って、この表示体は、拡散光による照明条件下であっても、第1対象物の像を明るく且つ鮮明に表示する。
【0012】
また、本発明の一側面に係る表示体によると、第2立体物は、第1立体物と比較して、表示面から遠い位置に復元される。このような設計を採用しているので、第2対象物の像は、照明角度や観察角度を僅かに変化させただけで、形状及び位置を大きく変化させる。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、直接光によって生じる視差画像と第2対象物の像の形状及び位置がほぼ等しい視差画像を殆ど含まない。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、互いに対してノイズとして振舞う。従って、この表示体は、拡散光による照明条件下では、第2対象物の像を表示しないか、又は、表示したとしても、暗く且つ不鮮明に表示する。
【0013】
また、この表示体を高強度の平行光又はそれに近い発散若しくは収束光で照明した場合、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、例えば、1つのみとなるか、又は、第1及び第2対象物の各々の像の形状及び位置がほぼ等しい複数の視差画像のみとなる。発光ダイオードなどの点光源からの光は、表示体へ向けて伝播するもののみに着目すれば、通常、平行光に近い発散光である。そして、この表示体を、上記の光源と比較して表示体に対してより近い位置に点光源を設置し、表示体に対して点光源を近づけると、点光源からの光が表示へ及ぼす影響は、屋内照明などの光源からの拡散光が表示へ及ぼす影響に対して相対的に大きくなる。従って、この表示体は、屋内環境下であっても、これに十分に近い位置から点光源で照明すると、第1対象物の像だけでなく、第2対象物の像も明るく且つ鮮明に表示する。
【0014】
以上の通り、この表示体は、屋内照明などからの拡散光によって照明した場合には、第2対象物の像を表示しないか、又は、表示したとしても、暗く且つ不鮮明に表示する。そして、この表示体は、十分に近い位置で点光源によって照明した場合には、第2対象物の像を表示する。それ故、この表示体では、第2対象物の像は、潜像として記録され得る。
【0015】
また、上記の現象を知らない人が、表示体が表示する像を観察するために、後者の照明条件を採用する可能性は低い。そして、第1対象物の像は、後者の照明条件下だけでなく、前者の照明条件下でも表示される。それ故、第1対象物の像は、この表示体が第2対象物の像を表示し得るものであることを悟られ難くする。
【0016】
このように、上記表示体は、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示することが可能である。
【0017】
本発明の他の側面によると、前記第1立体物は、前記表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元される上記側面の何れかに係る表示体が提供される。このような表示体は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときに、第1対象物の像をより明るく且つより鮮明に表示する。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記第1立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が0.5mm以上である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この距離は、2mm以上であることが好ましい。この距離が大きいほど、観察者は運動視差による立体感を強く感じる。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記三次元画像は、第3対象物の像を更に含み、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第3対象物に対応した第3立体物は、前記表示面内に全体が復元される上記側面に係る表示体が提供される。この構成によると、より複雑な表示が可能である。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記第1対象物の像と前記第2対象物の像とはホログラムによって表示され、前記第3対象物の像は回折格子によって表示される上記側面に係る表示体が提供される。この場合、第3対象物の像は、視差画像によって観察者に立体感を感じさせる三次元画像ではなく、二次元画像であってもよい。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、前記第2対象物の像の明るさは、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第2対象物の像の明るさの1/10以下であり、前記第3対象物の像の明るさは、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第3対象物の像の明るさの1/10以下である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この構成を採用すると、観察角度を変化させることに伴う表示画像の切り替えを生じさせることができる。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、前記第1立体物は、前記表示面内に全体が復元される上記側面の何れかに係る表示体が提供される。このように、第1立体物が復元される位置は、表示面内であってもよい。或いは、第1立体物が復元される位置は、表示面の手前であってもよく、表示面の奥であってもよい。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、前記第1対象物の像は回折格子によって表示され、前記第2対象物の像はホログラムによって表示される上記側面に係る表示体が提供される。この場合、第1対象物の像は、視差画像によって観察者に立体感を感じさせる三次元画像ではなく、二次元画像であってもよい。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この表示体によると、第2対象物の像は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときにより認識され難い。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、前記第2立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が30mm以下である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この距離は、10mm以下であることが好ましい。
【0026】
この距離を大きくすると、第2対象物の像の表示に、平行光を射出する特殊な光源が必要になる。また、第2立体物が表示面から過剰に遠い部分を含んでいる場合、第2対象物の像における対応部分の位置は、観察方向を僅かに変化させただけで大きく変化する。それ故、第2対象物の像を観察するために必要な条件の設定が難しくなる。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、前記三次元画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層とを備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
レリーフ構造によって三次元構造を表示する構成を採用した表示体は、高い生産性で製造することができる。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
この構成を採用した表示体は、三次元画像を表示可能であるのに加え、印刷層が表示体の表面に生じさせる凸部によって、観察者に特殊な触感を感じさせることができる。
【0029】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある上記側面に係る表示体が提供される。
凸部の高さが小さいと、観察者が表示体の表面に触れたときに、これら凸部の存在を触覚で知覚することが困難になる。凸部の高さが過剰に大きいと、ブロッキングを生じ易くなる。
【0030】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0031】
この構成を採用した表示体は、観察者がその表面に触れたときに、凸部の存在を触覚で知覚することが容易である。また、この構成は、三次元画像のうち、ラインパターンに隠れて見えなかった部分を、ラインパターンの長さ方向に略平行な軸の周りで表示体を僅かに回転させることにより見えるようするのに適している。例えば、表示面から第1立体物までの距離が1mmである表示体を正面から観察した場合(0°の観察角度で観察した場合)と、10°の観察角度で観察した場合とでは、第1対象物の像の位置は約0.17mm変化する。従って、ラインパターンの幅が十分に小さければ、三次元画像のうち、ラインパターンに隠れて見えなかった部分が見えるようになる。
【0032】
本発明の更に他の側面によると、前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している上記側面に係る表示体が提供される。
【0033】
この構成によると、隣り合ったラインパターンが繋がり難い。また、この構成を採用した表示体は、観察者がその表面に触れたときに、凸部の存在を触覚で知覚することが容易である。更に、この構成は、三次元画像のうち、ラインパターンに隠れて見えなかった部分を、ラインパターンの長さ方向に略平行な軸の周りで表示体を僅かに回転させることによって見えるようにするのに適している。
【0034】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備えた転写箔が提供される。
【0035】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体と、前記表示体上に設けられた粘着層とを備えた粘着ラベルが提供される。
【0036】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体と、前記表示体を支持した物品とを備えた表示体付き物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図。
【
図2】
図1に示す表示体のII-II線に沿った断面図。
【
図3】
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図。
【
図5】
図1乃至
図3に示す表示体が、第1照明条件下で略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図6】
図1乃至
図3に示す表示体が、第1照明条件下で斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図7】
図1乃至
図3に示す表示体が、第1照明条件下で斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図9】
図1乃至
図3に示す表示体が、第2照明条件下で略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図10】
図1乃至
図3に示す表示体が、第2照明条件下で斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図11】
図1乃至
図3に示す表示体が、第2照明条件下で斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図12】
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物との、仮想空間における位置関係の一例を示す図。
【
図14】
図13の表示体が、或る条件下で表示する画像を示す図。
【
図15】
図13の表示体が、他の条件下で表示する画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
<表示体>
図1は、本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図である。
図2は、
図1に示す表示体のII-II線に沿った断面図である。
【0040】
なお、図中、X方向及びY方向は、表示体10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。即ち、Z方向は、表示体10の厚さ方向である。
【0041】
図1及び
図2に示す表示体10は、レリーフ層11と反射層12と保護層13とを含んでいる。
レリーフ層11は、光透過性を有している材料、例えば、無色透明な材料からなる。レリーフ層11の反射層12側の主面には、三次元画像を回折画像として表示するレリーフ構造RSが設けられている。ここでは、レリーフ構造RSは、上記主面の一部の領域にのみ設けられている。レリーフ層11の上記主面のうち、レリーフ構造RSが設けられた領域は第1領域R1であり、レリーフ構造RSが設けられていない領域の一部は第2領域R2であり、残りの領域は第3領域である。
【0042】
ここでは、第1領域R1は、X方向に伸びた長円形状を有している。第2領域R2は、第1領域R1を取り囲んでいる。第3領域は、レリーフ層11のY方向に平行な縁に沿って伸びている。レリーフ層11の上記主面は、第2領域R2及び第3領域の少なくとも一方を含んでいなくてもよい。
【0043】
レリーフ構造RSは、表面レリーフ型のホログラムを構成するものであってもよく、回折格子であってもよい。前者の場合、レリーフ構造RSには、例えば、国際公開第2017/209113号に記載された構成を採用することができる。後者の場合、レリーフ構造RSには、例えば、特開平6-281804号公報や特開平7-104211号公報に記載された構成を採用することができる。
【0044】
レリーフ構造RSは、上記の通り、三次元画像を回折画像として表示する。レリーフ構造RSは、単色の画像を表示するように設計されたものであってもよく、多色の画像を表示するように設計されたものであってもよい。レリーフ構造RSが表示する三次元画像については、後で詳述する。
【0045】
反射層12は、第1領域R1と第2領域R2とを被覆している。反射層12は、パターニングされた金属層である。反射層12のうちレリーフ構造RSを被覆している部分は、レリーフ構造に対してコンフォーマルな形状を有している。
【0046】
保護層13は、反射層12を被覆しており、反射層12と同じ形状を有している。保護層13は、金属層を反射層12へとパターニングする際に、エッチングマスクとして利用した層である。保護層13は省略することができる。
【0047】
この表示体10は、以下に説明するように、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示することが可能である。
【0048】
図3は、
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図である。
【0049】
図1及び
図2に示す表示体10のレリーフ構造RSは、
図3に示すように、それが表示する三次元画像から立体物を三次元復元した場合に、第1立体物TOD1と第2立体物TOD2とが復元されるように設計されている。具体的には、レリーフ構造RSは、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に第1立体物TOD1の全体が復元され、表示面からの距離が5mm以上の範囲内に第2立体物TOD2の全体が復元されるように設計されている。
【0050】
ここでは、第1立体物TOD1は円盤形状を有しており、その厚さ方向はZ方向に平行である。また、ここでは、第2立体物TOD2は、中心部が周縁部よりも厚い星形状を有しており、その厚さ方向はZ方向に平行である。
【0051】
第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2の各々は、表示体10を観察する観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の表示面よりも手前の位置に、表示面から離間するように復元される。ここで、表示体10の表示面は、表示体10の厚さ方向に対して垂直であり且つレリーフ層11と反射層12との界面が位置した平面である。
【0052】
第1立体物TOD1は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元される。第2立体物TOD2は、表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される。
【0053】
なお、第1立体物TOD1のうち観察者OB1乃至OB3の何れとも向き合っていない部分は、三次元復元されない。また、第2立体物TOD2のうち観察者OB1乃至OB3の何れとも向き合っていない部分も、三次元復元されない。
【0054】
三次元画像からの立体物の三次元復元は、以下の方法により行う。
即ち、先ず、照明光としての白色の平行光で照明しながら、異なる観察角度で表示体10が表示する複数の画像を撮像し、それら画像間で特徴点のマッチングを行う。画像間での特徴点のマッチングには、ORB、SIFT又はFLANNを使用することができる。
【0055】
仮想空間における各特徴点の位置は、三角測量の原理を利用して求めることができる。従って、これを利用して、仮想空間内に立体物を復元する。
【0056】
三角測量の原理を利用して3つ以上の画像から立体物の復元を行う場合には、仮想空間において、同一の特徴点が複数の位置に現れることがある。この場合は、これら位置の重心を、その特徴点の仮想空間における位置とする。この場合、仮想空間において、同一の特徴点が複数の位置に現れ、その1つの位置が他の2以上の位置から大きくずれているときには、前者を除外して重心を算出することができる。
【0057】
次に、立体物を復元した仮想空間に、表示体10を再現する。具体的には、仮想空間に再現した観察者が立体物を見たときに知覚する像と、この観察者に向けて表示体10が表示する画像とが重なるように、仮想空間に表示体10を再現する。
上記のようにして、仮想空間に、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2を復元し、表示体10及び観察者OB1を再現すると、以下の通り、それらを用いて、表示体10が表示する画像を説明することができる。
【0058】
図4は、第1照明条件の一例を示す図である。
図5は、
図1乃至
図3に示す表示体が、第1照明条件下で略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図6は、
図1乃至
図3に示す表示体が、第1照明条件下で斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図7は、
図1乃至
図3に示す表示体が、第1照明条件下で斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0059】
図4に示す第1照明条件は、屋内において、屋内照明などの第1光源LS1から表示体10に直接照射される直接光と、壁や天井などによって反射された後に表示体10に入射する間接光とを含む拡散光によって、表示体10を照明する条件である。第1照明条件では、表示体10は、第1光源LS1から十分に遠く位置させる。
【0060】
第1照明条件において、第1光源LS1と表示体10とを結ぶ線分が、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向に平行になるように、及び、第1光源LS1が表示体10のレリーフ層11側の面を照明するように、表示体10を第1光源LS1に対して配置する。この状態で、表示体10のレリーフ層11側の面を、観察者OBが略正面から観察した場合、即ち、
図3に示す観察者OB1の位置から観察した場合、表示体10は、
図5に示すように、第1立体物TOD1に対応した第1対象物の像I1を表示する。上記の通り、第1立体物TOD1は、中心部が周縁部よりも厚い星形状を有している。この観察条件下では、表示体10は、像I1を、第1対象物が略正面を向くように表示する。
【0061】
同様の照明条件下で、表示体10のレリーフ層11側の面を観察者OBが斜め右から観察した場合、即ち、
図3に示す観察者OB2の位置から観察した場合、表示体10は、第1対象物の像I1を
図6に示すように表示する。即ち、表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者OBから見て、斜め左を向き、
図5の状態から僅かに左へ移動したが如く表示する。
【0062】
また、同様の照明条件下で、表示体10のレリーフ層11側の面を観察者OBが斜め左から観察した場合、即ち、
図3に示す観察者OB3の位置から観察した場合、表示体10は、第1対象物の像I1を
図7に示すように表示する。即ち、表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者OBから見て、斜め右を向き、
図5の状態から僅かに右へ移動したが如く表示する。
【0063】
このように、表示体10は、それが表示する画像における第1対象物の向き及び位置が、観察角度の変化に応じて連続的に変化するように構成されている。それ故、表示体10が表示する画像は、両眼視差及び/又は運動視差により立体的に見える。
【0064】
図8は、第2照明条件の一例を示す図である。
図9は、
図1乃至
図3に示す表示体が、第2照明条件下で略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図10は、
図1乃至
図3に示す表示体が、第2照明条件下で斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図11は、
図1乃至
図3に示す表示体が、第2照明条件下で斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0065】
図8に示す第2照明条件は、第2光源LS2による照明を更に行うこと以外は、第1照明条件と同様である。第2光源LS2は、平行光に近い発散光を射出する点光源である。第2照明条件では、表示体10は、第2光源LS2から十分に近く位置させる。
【0066】
第2照明条件において、第2光源LS2と表示体10とを結ぶ線分が、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向に平行になるように、及び、第2光源LS2が表示体10のレリーフ層11側の面を照明するように、第2光源LS2を表示体10に対して配置する。この状態で、表示体10のレリーフ層11側の面を、観察者OBが略正面から観察した場合、即ち、
図3に示す観察者OB1の位置から観察した場合、表示体10は、
図9に示すように、第1立体物TOD1に対応した第1対象物の像I1と、第2立体物TOD2に対応した第2対象物の像I2とを表示する。上記の通り、第1立体物TOD1は、中心部が周縁部よりも厚い星形状を有している。また、第2立体物TOD2は、円盤形状を有している。この観察条件下では、表示体10は、像I1及び像I2を、第1及び第2対象物が略正面を向くように表示する。
【0067】
同様の照明条件下で、表示体10のレリーフ層11側の面を観察者OBが斜め右から観察した場合、即ち、
図3に示す観察者OB2の位置から観察した場合、表示体10は、第1対象物の像I1及び第2対象物の像I2を
図10に示すように表示する。即ち、表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者OBから見て、斜め左を向き、
図9の状態から僅かに左へ移動したが如く表示する。そして、表示体10は、像I2を、第2対象物が、観察者OBから見て、斜め左を向き、
図9の状態から大きく左へ移動したが如く表示する。
【0068】
また、同様の照明条件下で、表示体10のレリーフ層11側の面を観察者OBが斜め左から観察した場合、即ち、
図3に示す観察者OB3の位置から観察した場合、表示体10は、第1対象物の像I1及び第2対象物の像I2を
図11に示すように表示する。即ち、表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者OBから見て、斜め右を向き、
図9の状態から僅かに右へ移動したが如く表示する。そして、表示体10は、像I2を、第2対象物が、観察者OBから見て、斜め右を向き、
図9の状態から大きく右へ移動したが如く表示する。
【0069】
このように、表示体10は、それが表示する画像における第1及び第2対象物の各々の向き及び位置が、観察角度の変化に応じて連続的に変化するように構成されている。それ故、表示体10が表示する画像は、両眼視差及び/又は運動視差により立体的に見える。
【0070】
また、表示体10は、第2対象物の像I2を、第1照明条件下では表示せずに、第2照明条件下でのみ表示する。即ち、表示体10には、第2対象物の三次元画像が潜像として記録されている。
【0071】
上記の現象を知らない人が、表示体10が表示する像を観察するために、第2照明条件を採用する可能性は低い。そして、第1対象物の像I1は、第2照明条件下だけでなく、第1照明条件下でも表示される。それ故、第1対象物の像I1は、表示体10が第2対象物の像I2を表示し得るものであることを悟られ難くする。
【0072】
このように、表示体10は、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示することが可能である。
【0073】
表示体10には、以下の設計を採用することが好ましい。
図12は、
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物との、仮想空間における位置関係の一例を示す図である。
【0074】
図12において、距離D1
minは、第1立体物TOD1のうち表示面に最も近い部分から表示面までの距離である。距離D1
maxは、第1立体物TOD1のうち表示面から最も遠い部分から表示面までの距離である。距離D2
minは、第2立体物TOD2のうち表示面に最も近い部分から表示面までの距離である。距離D2
maxは、第2立体物TOD2のうち表示面から最も遠い部分から表示面までの距離である。
【0075】
上記の通り、
図1及び
図2に示す表示体10のレリーフ構造RSは、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に第1立体物TOD1の全体が復元され、表示面からの距離が5mm以上の範囲内に第2立体物TOD2の全体が復元されるように設計されている。即ち、レリーフ構造RSは、距離D1
maxが4mm以下となり、距離D2
minが5mm以上となるように設計されている。距離D1
maxを短くすると、表示体10は、第1照明条件下で、第1対象物の像I1をより明るく且つより鮮明に表示するようになる。距離D2
minを長くすると、第2対象物の像I2は、第1照明条件下で、より認識され難くなる。
【0076】
距離D1minは、ゼロであってもよく、ゼロよりも大きくてもよい。距離D1maxは0.5mm以上であることが好ましい。距離D1maxが大きいほど、観察者は運動視差による立体感を強く感じる。
【0077】
第2立体物TOD2は、表示面からの距離が30mm以下の範囲内に全体が復元されることが好ましい。即ち、距離D2maxは、この上限値以下であることが好ましい。第2立体物TOD2が表示面から過剰に遠い部分を含んでいる場合、第2対象物の像I2における対応部分の位置は、観察方向を僅かに変化させただけで大きく変化する。それ故、第2対象物の像I2を観察するために必要な条件の設定が難しくなる。
【0078】
<表示体の第1変形例>
図1乃至
図12を参照しながら説明した表示体10には、様々な変形が可能である。
図13は、第1変形例に係る表示体の断面図である。
図13に示す表示体10は、印刷層14を更に含んでいること以外は、
図1乃至
図12を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0079】
印刷層14は、レリーフ層11上に設けられている。印刷層14は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターン141を含んでいる。ここでは、ラインパターン141は、各々がY方向に伸び、X方向に配列している。
【0080】
印刷層14は、表示体10の表面に複数の凸部を生じさせている。それ故、この表示体10は、
図1乃至
図12を参照しながら説明した表示体10と同様に、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示することが可能であるのに加え。観察者に特殊な触感を感じさせることができる。
【0081】
印刷層14を構成しているパターン、ここではラインパターン141は、光透過性であってもよく、遮光性であってもよい。後者の場合であっても、表示体10は、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示可能である。
【0082】
図14は、
図13の表示体が、或る条件下で表示する画像を示す図である。
図15は、
図13の表示体が、他の条件下で表示する画像を示す図である。
【0083】
ラインパターン141が遮光性である場合、
図14及び
図15に示すように、レリーフ構造RSが表示する像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えない。但し、
図14及び
図15に示すように、観察角度を変化させると、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分が、見えるようになる。
【0084】
印刷層14が表示体10の表面に生じさせる凸部の高さは、好ましくは5乃至40μmの範囲内にある。凸部の高さが小さいと、観察者が表示体10の表面に触れたときに、これら凸部の存在を触覚で知覚することが困難になる。凸部の高さが過剰に大きいと、ブロッキングを生じ易くなる。なお、凸部の高さが大きな印刷層14は、例えば、凹版印刷によって形成することができる。
【0085】
ラインパターン141の各々の幅は、0.02乃至0.1mmの範囲内にあることが好ましい。また、ラインパターン141は、0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列していることが好ましい。
【0086】
この構成によると、隣り合ったラインパターン141が繋がり難い。また、この構成を採用した表示体10は、観察者がその表面に触れたときに、凸部の存在を触覚で知覚することが容易である。更に、この構成は、三次元画像のうち、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分を、ラインパターン141の長さ方向に略平行な軸ARの周りで表示体10を僅かに回転させることによって見えるようにするのに適している。
【0087】
<表示体の第2変形例>
上記の表示体10では、像I1及びI2を、ホログラム及び回折格子の何れか一方によって表示する。
【0088】
表示体10は、像I1をホログラム及び回折格子の一方によって表示し、像I2をホログラム及び回折格子の他方によって表示するものであってもよい。この場合、例えば、レリーフ層11の主面のうちレリーフ構造RSが設けられる領域を、X方向とY方向とに配列した複数の単位領域へ区分する。そして、各単位領域を、第1及び第2サブ領域へ区分する。そして、第1サブ領域は、ホログラム及び回折格子の一方による表示に利用する。また、第2サブ領域は、ホログラム及び回折格子の他方による表示に利用する。
【0089】
或いは、表示体10は、像I1及びI2をホログラム及び回折格子の一方によって表示し、他の1以上の像をホログラム及び回折格子の他方によって表示するものであってもよい。この場合も、例えば、レリーフ層11の主面のうちレリーフ構造RSが設けられる領域を、X方向とY方向とに配列した複数の単位領域へ区分する。そして、各単位領域を、第1及び第2サブ領域へ区分する。そして、第1サブ領域はホログラム及び回折格子の一方による表示に利用し、第2サブ領域はホログラム及び回折格子の他方による表示に利用する。或いは、各単位領域を3以上のサブ領域へ区分する。そして、各単位領域において、サブ領域の1つ(第1サブ領域)は像I1の表示に利用し、サブ領域の他の1つ(第2サブ領域)は像I2の表示に利用し、残りの1以上のサブ領域(1以上の第3サブ領域)はそれぞれ上記1以上の像の表示に利用する。
【0090】
<表示体の第3変形例>
上記の表示体10では、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2の各々が表示面の手前に復元されるように設計されている。レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面の手前に復元されるように設計されていてもよく、第1立体物TOD1が表示面の奥に復元されるように設計されていてもよく、第1立体物TOD1が表示面上に復元されるように設計されていてもよい。また、レリーフ構造RSは、第2立体物TOD2が表示面の手前に復元されるように設計されていてもよく、第2立体物TOD2が表示面の奥に復元されるように設計されていてもよい。
【0091】
例えば、レリーフ構造RSは、上記の通り、第1立体物TOD1が表示面の手前に復元され、第2立体物TOD2も表示面の手前に復元されるように設計されていてもよい。或いは、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面の手前に復元され、第2立体物TOD2が表示面の奥に復元されるように設計されていてもよい。或いは、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面の奥に復元され、第2立体物TOD2が表示面の手前に復元されるように設計されていてもよい。或いは、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面の奥に復元され、第2立体物TOD2も表示面の奥に復元されるように設計されていてもよい。或いは、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面上に復元され、第2立体物TOD2が表示面の手前に復元されるように設計されていてもよい。或いは、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面上に復元され、第2立体物TOD2が表示面の奥に復元されるように設計されていてもよい。
【0092】
また、上記の表示体10では、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2の各々は、Z方向の寸法がゼロより大きい。第1立体物TOD1は、Z方向の寸法がゼロであってもよい。また、第2立体物TOD2も、Z方向の寸法がゼロであってもよい。
【0093】
<表示体の第4変形例>
上記の通り、表示体10は、像I1及びI2を表示する。また、表示体10には、像I1及びI2に加え、他の1以上の像を更に表示する構成を採用することができる。
【0094】
表示体10が表示する個々の像は、他の像と組み合わせずに単独で観察した場合においても、両眼視差及び/又は運動視差によって観察者に立体感を感じさせるものであってもよい。また、表示体10が表示する像の1以上が、他の像と組み合わせずに単独で観察した場合においても、両眼視差及び/又は運動視差によって観察者に立体感を感じさせるものであれば、表示体10が表示する像の残りは、他の像と組み合わせずに、単独で観察した場合には、観察者に立体感を感じさせないものであってもよい。即ち、表示体10が表示する像の残りは、視差画像によって観察者に立体感を感じさせる三次元画像ではなく、二次元画像であってもよい。
【0095】
例えば、レリーフ層11の主面のうちレリーフ構造RSが設けられる領域を、X方向とY方向とに配列した複数の単位領域へ区分し、各単位領域を複数のサブ領域へ区分し、各単位領域において、複数のサブ領域の1以上を三次元画像の表示に利用し、他のサブ領域の1以上を二次元画像の表示に利用することができる。この場合、三次元画像の明るさと二次元画像の明るさとをほぼ一致させるうえでは、各単位領域において、三次元画像の各々の表示に利用するサブ領域の面積を、二次元画像の各々の表示に利用するサブ領域の面積よりも大きくすることが好ましい。
【0096】
<表示体の第5変形例>
上記の表示体10は、
図8を参照しながら説明した第2照明条件下では、像I1及びI2を同時に表示する。像I1の明るさが最大となる観察角度と、像I2の明るさが最大となる観察角度とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。後者の場合、例えば、像I2の明るさは、像I1の明るさが最大となる観察角度では、像I2の明るさが最大となる観察角度における像I2の明るさの1/10以下となり、像I1の明るさは、像I2の明るさが最大となる観察角度では、像I1の明るさが最大となる観察角度における像I1の明るさの1/10以下となるようにレリーフ構造RSを設計してもよい。或いは、表示体10は、第2照明条件下において、或る観察角度では像I1及びI2のうち一方のみを表示し、他の観察角度では像I1及びI2のうち他方のみを表示するものであってもよい。この構成を採用すると、第2照明条件下において、観察角度を変化させることに伴う表示画像の切り替えを生じさせることができる。
【0097】
<表示体の第6変形例>
上述した変形例の2以上は、互いに組み合わせることができる。例えば、第5及び第6変形例を互いに組み合わせてもよい。
【0098】
<転写箔>
図16は、転写箔の一例を示す断面図である。
【0099】
図16に示す転写箔2は、支持体21と転写材層22と接着層23とを含んでいる。
支持体21は、転写材層22を剥離可能に支持している。支持体21は、例えば、帯形状を有している。
【0100】
転写材層22は、レリーフ層221と、反射層222と、保護層223と、剥離保護層224とを含んでいる。剥離保護層224、レリーフ層221、反射層222、及び保護層223は、この順に、支持体21上に積層されている。レリーフ層221と反射層222と保護層223との積層順は、逆であってもよい。
【0101】
転写材層22は、熱圧の印加によって物品へ転写される転写部と、物品へ転写されない非転写部とを含んでいる。転写部は、上述した表示体10として利用される部分である。従って、レリーフ層221のうち転写部に位置した部分と、反射層222のうち転写部に位置した部分と、保護層223のうち転写部に位置した部分とは、それぞれ、レリーフ層11と反射層12と保護層13とに相当する。
【0102】
剥離保護層224は、支持体21と隣接するように設けられている。剥離保護層224は、光透過性を有している材料、例えば、無色透明な材料からなる。剥離保護層224は、省略することができる。
【0103】
接着層23は、転写材層22を間に挟んで支持体21と向き合っている。接着層の母材は、熱可塑性樹脂とすることができる。その樹脂成分は、アクリル樹脂とすることができる。アクリル樹脂は、ポリメチルメタクリレート等とすることができる。転写箔2は、接着層23を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0104】
<粘着ラベル>
図17は、粘着ラベルの一例を示す断面図である。
【0105】
図17に示す粘着ラベル3は、表示体31と粘着層32とを含んでいる。なお、
図17において、符号33は剥離シートを表している。
【0106】
表示体31は、基材311と反射層312と保護層313とを含んでいる。表示体31は、上述した表示体10に相当している。従って、基材311と反射層312と保護層313とは、それぞれ、レリーフ層11と反射層12と保護層13とに相当している。
【0107】
粘着層32は、表示体31の一方の主面に設けられている。粘着層32は、粘着ラベル3の使用直前まで、剥離シート33によって保護される。
【0108】
粘着層32は、感圧接着剤などの粘着剤からなる。粘着剤としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、又は、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコーン系若しくはポリイソブチル系粘着剤を使用する。
【0109】
粘着剤は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン及びビニルモノマーなどの凝集成分;不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー及びアクリルニトリルなどの改質成分;重合開始剤;可塑剤;硬化剤;硬化促進剤;酸化防止;又はそれらの2つ以上を含んだ混合物を使用する。
【0110】
<表示体付き物品>
図18は、表示体付き物品の一例を示す平面図である。
【0111】
図18に示す表示体付き物品4は、印刷物である。表示体付き物品4は、例えば、紙幣、有価証券、証明書類、クレジットカード、パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体、又は、内容物を包装する包装体である。
【0112】
この表示体付き物品4は、表示体41と、これを支持した物品42とを含んでいる。
【0113】
表示体41は、上述した表示体10である。表示体41は、例えば、物品42の表面に貼り付けるか又は物品42内に埋め込まれることにより、物品42によって支持されている。
【0114】
物品42は、印刷基材などの物品本体421と、これに設けられた印刷層422を含んでいる。物品本体421の材質は、例えば、プラスチック、金属、紙、又はそれらの複合体である。
【実施例】
【0115】
以下に、本発明の例を記載する。
(例1)
図16を参照しながら説明した転写箔2を製造した。なお、保護層223は省略した。また、転写材層22には、
図1乃至
図12を参照しながら表示体10について説明した構造を採用した。
【0116】
ここでは、レリーフ構造RSは、第1立体物TOD1が表示面の手前に復元され、第2立体物TOD2が表示面の奥に復元されるように設計した。第1立体物TOD1は、厚さを有していない星形状とし、距離D1min及びD1maxの各々は2mmとした。また、第2立体物TOD2は、厚さを有していない月形状とし、距離D2min及びD2maxの各々は10mmとした。
【0117】
更に、レリーフ構造RSには、国際公開第2017/209113号に記載された構造を採用した。具体的には、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2の各々を、一辺の長さが100μmの正方形領域へ区分し、X方向及びY方向の各々の視野角を20°とした。また、レリーフ構造RSが含むパターンの最小サイズは400nmとし、深さは4段階とした。
【0118】
転写箔2の製造においては、先ず、ニッケル製の版を製造した。具体的には、レジスト層の表面に、電子線描画装置を用いて、レリーフ構造RSに対応したパターンを描画した。次いで、この表面にニッケルをスパッタリングし、更にニッケルをめっきした。その後、ニッケル層からレジスト層を除去した。以上のようにして、ニッケル製の版を得た。
【0119】
次に、支持体21としてポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを準備し、その上に、ポリメチルメタクリル酸とポリエチレンワックスとを含んだ液を塗工して、剥離保護層224を形成した。次いで、剥離保護層224上に、アクリルポリオールとイソシアネートとフッ素樹脂とを含んだ層を形成した。この層に、上記のニッケル製の版が取り付けられ、150℃に温度を設定した加熱ロールを押し当てるとともに、紫外線を照射して、版のパターンを転写した。これにより、レリーフ層221を得た。
【0120】
レリーフ層221と剥離保護層224と支持体21とを含む積層体を版から剥離した後、レリーフ層221上にアルミニウムを蒸着して、反射層222を形成した。更に、反射層222上に、エチレン-酢酸ビニル共重合体を塗工して、接着層23を形成した。
以上のようにして、
図19に示す転写箔2を得た。
【0121】
次に、この転写箔2を用いて、表示体付き物品を製造した。ここでは、表示体を支持させるべき物品として、上質紙を使用した。表示体付き物品を製造においては、転写箔2を上質紙に重ね、この状態で、それらの積層体の一部に熱圧を印加した。次いで、支持体21を、転写材層22のうち熱圧を印加していない部分とともに上質紙から剥離した。このようにして、転写材層22のうち熱圧を印加した部分を、表示体10として、支持体21から上質紙へ転写した。以上のようにして、表示体付き物品を得た。
【0122】
この表示体付き物品の表示体10が屋内環境において表示する三次元画像を、肉眼で観察した。ここで、屋内環境は、天井に複数の蛍光灯が設置され、それら蛍光灯によって屋内を照明する環境である。その結果、この表示体10は、像I2は表示せずに、像I1のみを表示した。
【0123】
次に、表示体10に近い位置からこれをペンライトで照明して、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。なお、ここで使用したペンライトは、白色光を射出する発光ダイオードを光源として含んだものである。その結果、この表示体は、像I1及びI2の双方を表示した。
【0124】
(例2)
転写材層22の一部を支持体21から上質紙へ転写した後に、
図13乃至
図15を参照しながら説明した印刷層14を形成したこと以外は、例1と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。ここでは、印刷層14は、凹版印刷によって形成した。また、印刷層14の厚さは30μmとし、ラインパターン141の幅は0.05mmとし、ラインパターン141のピッチは0.5mmとした。
【0125】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する三次元画像を、肉眼で観察した。その結果、或る条件下では、像I1のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。但し、観察条件を変えても、表示体10は像I2を表示しなかった。
【0126】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペンライトで照明して、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体は、像I1及びI2の双方を表示した。そして、或る条件下では、像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。
【0127】
このように、この表示体10は、例1の表示体10と同様の光学効果を奏した。また、この表示体10は、肉眼で観察した場合に、印刷層14の存在を観察者に強く印象付けるものであった。更に、この表示体10は、印刷層14に触れることにより、ラインパターン141により生じる凹凸を、他の部分との触感の違いとして認識することができた。
【0128】
(例3)
ラインパターン141の幅を0.1mmとしたこと以外は、例2と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。
【0129】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する三次元画像を、肉眼で観察した。その結果、或る条件下では、像I1のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。但し、観察条件を変えても、表示体10は像I2を表示しなかった。
【0130】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペンライトで照明して、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体は、像I1及びI2の双方を表示した。そして、或る条件下では、像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。
【0131】
このように、この表示体10は、例1の表示体10と同様の光学効果を奏した。なお、本例では、ラインパターン141の幅が例2とは異なっているが、像I1及びI2の見易さは例2と同等であった。また、この表示体10は、肉眼で観察した場合に、印刷層14の存在を観察者に強く印象付けるものであった。更に、この表示体10は、印刷層14に触れることにより、ラインパターン141により生じる凹凸を、他の部分との触感の違いとして認識することができた。
【0132】
(例4)
ラインパターン141の幅を0.15mmとしたこと以外は、例2と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。
【0133】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する三次元画像を、肉眼で観察した。その結果、或る条件下では、像I1のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。但し、観察条件を変えても、表示体10は像I2を表示しなかった。
【0134】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペンライトで照明して、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体は、像I1及びI2の双方を表示した。そして、或る条件下では、像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。
【0135】
このように、この表示体10は、例1の表示体10と同様の光学効果を奏した。また、この表示体10は、肉眼で観察した場合に、印刷層14の存在を観察者に強く印象付けるものであった。更に、この表示体10は、印刷層14に触れることにより、ラインパターン141により生じる凹凸を、他の部分との触感の違いとして認識することができた。但し、本例では、ラインパターン141の幅が例2及び例3よりも大きく、例2及び例3と比較すると、像I1及びI2は見難かった。
【0136】
(例5)
ラインパターン141のピッチを0.2mmとしたこと以外は、例2と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。
【0137】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する三次元画像を、肉眼で観察した。その結果、或る条件下では、像I1のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。但し、観察条件を変えても、表示体10は像I2を表示しなかった。
【0138】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペンライトで照明して、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体は、像I1及びI2の双方を表示した。そして、或る条件下では、像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。
【0139】
このように、この表示体10は、例1の表示体10と同様の光学効果を奏した。なお、本例では、ラインパターン141のピッチが例2とは異なっているが、像I1及びI2の見易さは例2と同等であった。また、この表示体10は、肉眼で観察した場合に、印刷層14の存在を観察者に強く印象付けるものであった。更に、この表示体10は、印刷層14に触れることにより、ラインパターン141により生じる凹凸を、他の部分との触感の違いとして認識することができた。
【0140】
(例6)
ラインパターン141のピッチを1.0mmとしたこと以外は、例2と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。
【0141】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する三次元画像を、肉眼で観察した。その結果、或る条件下では、像I1のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。但し、観察条件を変えても、表示体10は像I2を表示しなかった。
【0142】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペンライトで照明して、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体は、像I1及びI2の双方を表示した。そして、或る条件下では、像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。
【0143】
このように、この表示体10は、例1の表示体10と同様の光学効果を奏した。なお、本例では、ラインパターン141のピッチが例2とは異なっているが、像I1及びI2の見易さは例2と同等であった。また、この表示体10は、印刷層14に触れることにより、ラインパターン141により生じる凹凸を、他の部分との触感の違いとして認識することができた。但し、この表示体10は、例2及び例5の表示体10と比較すると、肉眼で観察した場合に印刷層14の存在を観察者に強く印象付けるものではなかった。
【0144】
(例7)
レリーフ構造RSが、像I1及びI2に加えて、二次元画像を更に表示する構成を採用したこと以外は、例1と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。ここでは、二次元画像として、回折格子によって土星の画像を表示するようにした。回折格子は、格子線(溝)の長さ方向がY方向に平行になるように設けた。また、格子線の空間周波数は700乃至1200本/mmの範囲内とした。
【0145】
また、本例では、レリーフ層11の主面のうちレリーフ構造RSが設けられる領域を、像I1の表示に利用し且つ像I2の表示に利用しない第1部分領域と、像I2の表示に利用し且つ像I1の表示に利用しない第2部分領域と、像I1及びI2の何れの表示にも利用しない第3部分領域とに区分した。そして、第1乃至第3部分領域の各々を、X方向とY方向とに配列した複数の単位領域へ区分した。なお、第1乃至第3部分領域は、単位領域の寸法及び形状が等しい。
【0146】
第1部分領域では、各単位領域の全体を像I1の表示に利用可能とした。第2及び第3部分領域の各々では、各単位領域を第1及び第2サブ領域へ区分し、第1サブ領域の面積と第2サブ領域の面積との比は1:1とした。そして、第2部分領域では、第1サブ領域の全体を像I2の表示に利用可能とし、第2及び第3部分領域では、第2サブ領域の全体を二次元画像の表示に利用可能とした。
【0147】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する画像を、表示体10の略正面から肉眼で観察した。その結果、この表示体10は、像I2及び上記の二次元画像は表示せずに、像I1を表示した。
【0148】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペン型ライトで照明して、表示体10が表示する画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体10は、X方向における観察角度(表示面の法線を0°とする)が-30°乃至30°の範囲内では、上記の二次元画像は表示せずに、像I1及びI2を表示した。但し、像I2は、像I1と比較して暗く見えた。また、この表示体10は、他の観察角度範囲では、像I1及びI2は表示せずに、上記の二次元画像を表示した。
【0149】
(例8)
第1サブ領域の面積と第2サブ領域の面積との比を5:1としたこと以外は、例7と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。
【0150】
この表示体付き物品の表示体10が例1と同様の屋内環境において表示する画像を、表示体10の略正面から肉眼で観察した。その結果、この表示体10は、像I2及び上記の二次元画像は表示せずに、像I1を表示した。
【0151】
次に、表示体10に近い位置からこれを例1と同様のペン型ライトで照明して、表示体10が表示する画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体10は、X方向における観察角度が-30°乃至30°の範囲内では、上記の二次元画像は表示せずに、像I1及びI2を表示した。本例では、像I2は、像I1とほぼ同じ明るさに見えた。また、この表示体10は、他の観察角度範囲では、像I1及びI2は表示せずに、上記の二次元画像を表示した。この二次元画像は像I2とほぼ同じ明るさに見えた。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、
前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、
前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、
前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される表示体。
[2]
前記第1立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が0.5mm以上である項1に記載の表示体。
[3]
前記三次元画像は、第3対象物の像を更に含み、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第3対象物に対応した第3立体物は、前記表示面内に全体が復元される項2に記載の表示体。
[4]
前記第1対象物の像と前記第2対象物の像とはホログラムによって表示され、前記第3対象物の像は回折格子によって表示される項3に記載の表示体。
[5]
前記第2対象物の像の明るさは、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第2対象物の像の明るさの1/10以下であり、前記第3対象物の像の明るさは、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第3対象物の像の明るさの1/10以下である項3又は4に記載の表示体。
[6]
前記第1立体物は、前記表示面内に全体が復元される項1に記載の表示体。
[7]
前記第1対象物の像は回折格子によって表示され、前記第2対象物の像はホログラムによって表示される項6に記載の表示体。
[8]
前記第2立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が30mm以下である項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
[9]
前記三次元画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、
前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層と
を備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。
[10]
前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている項9に記載の表示体。
[11]
前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある項10に記載の表示体。
[12]
前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ項10又は11に記載の表示体。
[13]
前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している項12に記載の表示体。
[14]
項1乃至13の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、
前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と
を備えた転写箔。
[15]
項1乃至13の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体上に設けられた粘着層と
を備えた粘着ラベル。
[16]
項1乃至13の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を備えた表示体付き物品。
【符号の説明】
【0152】
2…転写箔、3…粘着ラベル、4…表示体付き物品、10…表示体、11…レリーフ層、12…反射層、13…保護層、14…印刷層、21…支持体、22…転写材層、23…接着層、31…表示体、32…粘着層、33…剥離シート、41…表示体、42…物品、141…ラインパターン、221…レリーフ層、222…反射層、223…保護層、224…剥離保護層、421…物品本体、422…印刷層、AR…軸、I1…像、I2…像、LS1…第1光源、LS2…第2光源、OB…観察者、OB1…観察者、OB2…観察者、OB3…観察者、R1…第1領域、R2…第2領域、RS…レリーフ構造、TOD1…第1立体物、TOD2…第2立体物。