(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20240409BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E03C1/12 D
E03C1/122 Z
(21)【出願番号】P 2020089500
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 悦孝
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-304539(JP,A)
【文献】特開2016-030256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水と酸性の液体とを含む流体を下水道に流すための配管と、
前記配管内にアルカリ性の薬剤を供給するアルカリ供給部と、
前記配管内のうち当該配管に前記酸性の液体が流入する部位及び前記アルカリ性の薬剤が流入する部位の下流側の部位に設置されており、前記配管内を流れる流体を撹拌する撹拌部材と、
前記撹拌部材の下流側において前記流体のpHを測定するpH測定器と、を備え、
前記撹拌部材は、
前記流体を撹拌可能な複数の撹拌体と、
前記複数の撹拌体が前記流体の流れ方向に沿って並ぶように前記複数の撹拌体を連結する連結部材と、を有し、
前記撹拌体は、球体又は回転楕円体からなり、前記配管に対して相対変位可能である、排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撹拌部材及び排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道等に適用される排水処理システムが知られている。例えば、特開2017-202455号公報には、配管と、配管内に設置されたスタティックミキサー等の撹拌部と、を備える排水処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2017-202455号公報に記載される排水処理システムでは、配管にトイレの汚水が流入する場合、スタティックミキサーにトイレットペーパー等が引っかかる懸念がある。
【0005】
本発明の目的は、トイレットペーパー等が撹拌体へ引っかかることを抑制しながら配管内を流れる流体を撹拌することが可能な撹拌部材及び排水処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一局面に従った撹拌部材は、配管内に設置された状態において前記配管内を流れる流体を撹拌する撹拌部材であって、流体を撹拌可能な複数の撹拌体と、前記複数の撹拌体が一方向に沿って並ぶように前記複数の撹拌体を連結する連結部材と、を備え、前記撹拌体は、球体又は回転楕円体からなり、前記配管に対して相対変位可能である。
【0007】
この撹拌部材では、各撹拌体が球体又は回転楕円体からなり、配管に対して相対変位可能であるため、当該撹拌部材が配管内に設置されることにより、トイレットペーパー等が撹拌体へ引っかかることを抑制しながら配管内を流れる流体を撹拌することが可能となる。
【0008】
また、前記撹拌部材において、前記配管内に固定可能な固定部材をさらに備え、前記連結部材の一端部は、前記固定部材に固定されていることが好ましい。
【0009】
また、前記複数の撹拌体は、複数の大撹拌体と、それぞれが前記大撹拌体の外形よりも小さな外形を有する複数の小撹拌体と、を含み、前記大撹拌体及び前記小撹拌体は、前記一方向に沿って交互に並ぶように配置されていてもよい。
【0010】
この態様では、配管内の流体がより確実に撹拌される。
【0011】
あるいは、前記撹拌部材は、前記複数の撹拌体のうち互いに隣接する前記撹拌体間に配置されるスペーサをさらに備えていてもよい。
【0012】
また、前記撹拌体の比重は、1以下であることが好ましい。前記撹拌体には、開口が設けられていてもよい。
【0013】
また、この発明の一局面に従った排水処理システムは、汚水と酸性の液体とを含む流体を下水道に流すための配管と、前記配管内にアルカリ性の薬剤を供給するアルカリ供給部と、前記配管内のうち当該配管に前記酸性の液体が流入する部位及び前記アルカリ性の薬剤が流入する部位の下流側の部位に設置されており、前記配管内を流れる流体を撹拌する撹拌部材と、前記撹拌部材の下流側において前記流体のpHを測定するpH測定器と、を備え、前記撹拌部材は、前記流体を撹拌可能な複数の撹拌体と、前記複数の撹拌体が前記流体の流れ方向に沿って並ぶように前記複数の撹拌体を連結する連結部材と、を有し、前記撹拌体は、球体又は回転楕円体からなり、前記配管に対して相対変位可能である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、トイレットペーパー等が撹拌体へ引っかかることを抑制しながら配管内を流れる流体を撹拌することが可能な撹拌部材及び排水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の排水処理システムを概略的に示す図である。
【
図5】撹拌体及び連結部材の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の排水処理システムを概略的に示す図である。この排水処理システム1は、病院等の施設に適用可能である。
図1に示されるように、排水処理システム1は、配管10と、アルカリ供給部20と、pH測定器30と、撹拌部材100と、を備えている。
【0018】
配管10は、排水等の流体を流すことが可能である。本実施形態では、配管10には、トイレの汚水と酸性の液体とを含む流体が流入する。具体的に、酸性の液体は、汚水が配管10に流入する部位よりも下流側において配管10に流入する。ただし、酸性の液体は、汚水が配管10に流入する部位よりも上流側において配管10に流入してもよい。
【0019】
アルカリ供給部20は、配管10内にアルカリ性の薬剤(重曹等)を供給する。アルカリ供給部20は、配管10のうち当該配管10内に汚水が流入する部位や酸性の液体が流入する部位よりも上流側の部位にアルカリ性の薬剤を供給してもよい。
【0020】
pH測定器30は、配管10のうち当該配管10内にアルカリ性の薬剤が流入する部位及び酸性の液体が流入する部位よりも下流側の部位を流れる流体のpHを測定する。
【0021】
撹拌部材100は、配管10内を流れる流体を撹拌する。撹拌部材100は、配管10内のうち当該配管10にアルカリ性の薬剤が流入する部位、酸性の液体が流入する部位、及び、汚水が流入する部位の下流側で、かつ、pH測定器30の上流側の部位に設置されている。なお、本実施形態では、配管10内のうちアルカリ性の薬剤が流入する部位と酸性の薬剤が流入する部位との間の部位にも撹拌部材100が設置されている。
【0022】
図2は、配管及び撹拌部材の正面図である。
図3は、配管及び撹拌部材の平面図である。
図4は、配管及び撹拌部材の側面図である。
【0023】
撹拌部材100は、複数の(本実施形態では12個の)撹拌体110と、連結部材120と、固定部材130と、緩衝部材140と、を有している。
【0024】
各撹拌体110は、流体を撹拌可能である。各撹拌体110は、球体又は回転楕円体からなる。本実施形態では、撹拌体110は、中空状の球体からなる。各撹拌体110は、配管10に対して相対変位可能である。各撹拌体110は、耐薬品性を有する材料(ポリプロピレン等)からなる。各撹拌体110の径は、配管10の径の半分以下に設定されることが好ましい。各撹拌体110の径は、例えば、39mmである。
【0025】
図5に示されるように、撹拌体110には、連結部材120と挿通させる挿通孔h1と、開口h2と、が設けられている。開口h2は、撹拌体110の任意の部位に複数個設けられることが好ましい。なお、開口h2は、省略されてもよい。
【0026】
連結部材120は、複数の撹拌体110が一方向(配管10の長手方向)に沿って並ぶように複数の撹拌体110を連結している。連結部材120は、各撹拌体110の挿通孔h1に挿通されている。連結部材120は、耐薬品性を有する材料(ポリテトラフルオロエチレン等)からなる。連結部材120の径は、例えば、1.5mmである。
【0027】
固定部材130は、配管10内に固定可能である。固定部材130は、伸縮可能に構成されている。本実施形態では、固定部材130は、ボルト及びナットからなる。この固定部材130に、連結部材120の一端部が固定されている。連結部材120の他端部は、例えば、連結部材120から撹拌体110が抜けないように結ばれている。
【0028】
緩衝部材140は、固定部材130と配管10との間に設けられている。緩衝部材140は、配管10に対する固定部材130の変位を抑制する。緩衝部材140は、ゲル状の部材からなる。
【0029】
以上に説明した排水処理システム1では、配管10にトイレの汚水と酸性の液体とが流入する。アルカリ供給部20は、下水道に流入する流体のpHが所定の範囲になるように配管10内にアルカリ性の薬剤を供給する。
【0030】
配管10内のうち当該配管10にアルカリ性の薬剤が流入する部位、酸性の液体が流入する部位、及び、汚水が流入する部位の下流側で、かつ、pH測定器30の上流側の部位に撹拌部材100を設置することにより、撹拌部材100が配管10内を流れる流体を撹拌する。本実施形態の撹拌部材100では、各撹拌体110が球体からなり、配管10に対して相対変位可能であるため、汚水に含まれるトイレットペーパー等が撹拌体110へ引っかかることを抑制しながら配管10内を流れる流体を撹拌することが可能となる。このため、pH測定器30での測定値が変動することが抑制される。
【0031】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0032】
例えば、
図6に示されるように、複数の撹拌体110は、複数の大撹拌体111と、複数の小撹拌体112と、を含んでいてもよい。各小撹拌体112は、大撹拌体111の外形よりも小さな外形を有している。大撹拌体111及び小撹拌体112は、流体の流れ方向(配管10の長手方向)に沿って交互に並ぶように配置されている、この態様では、配管10内の流体がより確実に撹拌される。
【0033】
あるいは、
図7に示されるように、撹拌部材100は、複数の撹拌体110のうち互いに隣接する撹拌体110間に配置されるスペーサ150をさらに有していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 排水処理システム、10 配管、20 アルカリ供給部、30 pH測定器、100 撹拌部材、110 撹拌体、111 大撹拌体、112 小撹拌体、120 連結部材、130 固定部材、140 緩衝部材、150 スペーサ。