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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/10 20060101AFI20240409BHJP
   C08L 1/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08L1/10
C08L1/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020090024
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183684
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英昭
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-154278(JP,A)
【文献】特開2007-262223(JP,A)
【文献】特開2018-024803(JP,A)
【文献】特開平01-152101(JP,A)
【文献】特開2009-030031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08B 1/00-37/18
C08J 3/00-3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肪族アシル基をし、芳香族アシル基を有さないセルロースアシレート(A)と、
芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含み、
前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上0.5以下である樹脂粒子。
【請求項2】
前記セルロースアシレート(A)がセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記セルロースアシレート(A)がセルロースアセテートである、請求項2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記芳香族アシル基が、一つのベンゼン環を有するアシル基である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記芳香族アシル基として、前記一つのベンゼン環を有するアシル基を有する前記セルロースアシレート(B)が、セルロースベンゾエートである、請求項4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.2以上0.3以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
肪族アシル基をし、芳香族アシル基を有さないセルロースアシレート(A)と、
芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含み、
下記の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下である樹脂粒子。
(方法)
樹脂粒子10gを60℃、90%RH条件下で加熱した後、24時間室温下で静置する。前記加熱及び静置を行った樹脂粒子上にJIS P 3801(1995)で規定される1種の直径110mm、重量3.4gのろ紙を置く。樹脂粒子上に乗せたろ紙の上から、前記ろ紙と同じ直径で重さ70gのステンレス板を置いた後、10分間室温下で静置する。ろ紙からステンレス板及び樹脂粒子を取り除き、ろ紙の重量を測定し、ろ紙の重量増加率を測定する。
【請求項8】
体積平均粒径が3μm以上100μm以下である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項9】
大径側粒度分布指標GSDvが1.50以下である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「セルロース系樹脂に、エステル化合物を配合したことを特徴とするセルロース系樹脂組成物。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4610816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)と、芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含む樹脂粒子において、前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.1未満若しくは0.5超過、又は、下記の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が10%超過である場合と比較して、高温下での成分が析出する現象(以下、ブリードと称することがある)が抑制される樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)と、
芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含み、
前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上0.5以下である樹脂粒子。
<2> 前記セルロースアシレート(A)がセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される少なくとも1種である、前記<1>に記載の樹脂粒子。
<3> 前記セルロースアシレート(A)がセルロースアセテートである、前記<2>に記載の樹脂粒子。
<4> 前記芳香族アシル基が、一つのベンゼン環を有するアシル基である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<5> 前記芳香族アシル基として、前記一つのベンゼン環を有するアシル基を有する前記セルロースアシレート(B)が、セルロースベンゾエートである、前記<4>に記載の樹脂粒子。
<6> 前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.2以上0.3以下である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<7> アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)と、
芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含み、
下記の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下である樹脂粒子。
(方法)
樹脂粒子10gを60℃、90%RH条件下で加熱した後、24時間室温下で静置する。前記加熱及び静置を行った樹脂粒子上にJIS P 3801(1995)で規定される1種の直径110mm、重量3.4gのろ紙を置く。樹脂粒子上に乗せたろ紙の上から、前記ろ紙と同じ直径で重さ70gのステンレス板を置いた後、10分間室温下で静置する。ろ紙からステンレス板及び樹脂粒子を取り除き、ろ紙の重量を測定し、ろ紙の重量増加率を測定する。
<8> 体積平均粒径が3μm以上100μm以下である、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<9> 大径側粒度分布指標GSDvが1.50以下である、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)と、芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含む樹脂粒子において、前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.1未満又は0.5超過である場合と比較して、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【0007】
<2>又は<3>に係る発明によれば、前記セルロースアシレート(A)がセルロースプロピオネートである場合と比較して、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【0008】
<4>又は<5>に係る発明によれば、前記芳香族アシル基が、2つのベンゼン環を有するアシル基である場合と比較して、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【0009】
<6>に係る発明によれば、前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.2未満又は0.3超過である、場合と比較して、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【0010】
<7>に係る発明によれば、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)と、芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、を含む樹脂粒子において、上記の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が10%超過である場合と比較して、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【0011】
<8>に係る発明によれば、体積平均粒径が3μm以上100μm以下の粒径を有しつつ、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【0012】
<9>に係る発明によれば、大径側粒度分布指標GSDvが1.50以下という粒度分布を有しつつ、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
<樹脂粒子>
第一実施形態に係る樹脂粒子は、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)(以下、成分(A)とも称することがある)と、芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)(以下、成分(B)とも称することがある)と、を含み、前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上0.5以下である。
【0016】
第一実施形態に係る樹脂粒子は、上記構成により、高温下でのブリードが抑制される。その理由は、次の通り推測される。
【0017】
アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレートは溶媒に対する溶解性が低い。そのためアルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレートを樹脂粒子の構成成分として使用する例は少ない。アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレートを粒子の構成成分として使用するためには、可塑剤を添加するのが一般的である。しかしながら、可塑効果が高い可塑剤と、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレートと、を含む樹脂粒子は、高温下で可塑剤のブリードを起こしやすい。
また、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレートは、合成時に使用される溶媒が残留していることがある。そのため、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレートを含む樹脂粒子は、前記セルロースアシレート中に残存した溶媒も含有し、高温下で前記残留溶媒がブリードすることがあった。
【0018】
第一実施形態に係る樹脂粒子は、成分(A)と、成分(B)と、を含有する。成分(A)と成分(B)は、ともにセルロースを主骨格として有するため、相溶性が高く、両者は混合しやすい。すると、成分(A)と成分(B)を混合した場合、成分(B)由来の芳香環が混合物中に均一に近い状態で存在することとなる。前記芳香環は、混合物中において自由回転し、成分(A)同士の分子間力を弱める。それにより、成分(A)と成分(B)との混合物の溶媒への溶解性を高めることができる。そして、前記混合物の溶媒への溶解性は、成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上0.5以下である場合に特に向上する。
そのため、成分(A)及び成分(B)を用いることで、成分(B)を可塑剤とする、セルロースアシレートを構成成分とする樹脂粒子が得られる。成分(B)の、分子間力を弱める効果は通常の可塑剤と同じだが、基本骨格が成分(A)と同じであるため、両者が強固に親和している。よって、成分(B)は、高温下でもブリードしにくい。
また、前述の通り、成分(B)由来の芳香環により、樹脂粒子に含有される成分(A)同士の分子間力が弱まる。成分(A)中に残存した溶媒が樹脂粒子に含まれる場合でも、成分(A)同士の分子間力の低下によって前記溶媒分子が存在する空間が生じ、前記溶媒が留まりやすくなる。そのため、第一実施形態に係る樹脂粒子は前記溶媒のブリードが抑制される。
【0019】
よって、第一実施形態に係る樹脂粒子は、高温下でのブリードが抑制される。
【0020】
第二実施形態に係る樹脂粒子は、成分(A)と、成分(B)と、を含み、後述の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下である
【0021】
第二実施形態に係る樹脂粒子は、上記構成により、高温下でのブリードが抑制される。その理由は、次の通り推測される。
【0022】
前述の通り、セルロースアシレートを粒子の構成成分として使用するためには、可塑剤を添加して、溶媒に対するセルロースアシレートの溶解性を向上することが一般的である。しかし、可塑効果が高い可塑剤と、セルロースアシレートと、を含む樹脂粒子は、高温下で可塑剤のブリードを起こしやすい。また、セルロースアシレートを含む樹脂粒子は、セルロースアシレート中に残存した溶媒がブリードすることがあった。
【0023】
第二実施形態に係る樹脂粒子は、成分(A)と、成分(B)と、を含む。前述の通り、両者は均一に近い混合物となりやすい。また、前記混合物は、成分(B)由来の芳香環が自由回転することで、溶媒への溶解性が向上する。そのため、可塑剤を使用せずに、セルロースアシレートを構成成分とする樹脂粒子が得られる。
また、第二実施形態に係る樹脂粒子は、後述の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下である。これは、第二実施形態に係る樹脂粒子は、高温下でのブリードが抑制されていることを示す。なお、例えば、成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))を0.1以上0.5以下とすることで、前記ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下となりやすい。
【0024】
よって、第二実施形態に係る樹脂粒子は、高温下でのブリードが抑制される。
【0025】
以下、第一及び第二実施形態に係る樹脂粒子のいずれにも該当する樹脂粒子(以下「本実施形態に係る樹脂粒子」とも称する)について詳細に説明する。ただし、本発明の樹脂粒子の一例は、第一及び第二実施形態に係る樹脂粒子のいずれか一方に該当する樹脂粒子であればよい。
【0026】
以下、本実施形態に係る樹脂粒子について詳細に説明する。
【0027】
(アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A):成分(A))
成分(A)は、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一つがアルデヒド基又は脂肪族アシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。具体的には、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一つが、-CO-RAC(RACは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。)により置換されたセルロース誘導体である。
【0028】
成分(A)は、例えば、下記の一般式(CA)で表されるセルロース誘導体である。
【0029】
【化1】
【0030】
一般式(CA)中、A、A及びAはそれぞれ独立に、水素原子、アルデヒド基又は脂肪族アシル基を表し、nは2以上の整数を表す。ただし、n個のA、n個のA及びn個のAのうちの少なくとも一つはアルデヒド基又は脂肪族アシル基を表す。分子中にn個あるAは、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にn個あるA及びn個あるAもそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0031】
一般式(CA)中、A、A及びAは、脂肪族アシル基であることが好ましい。
【0032】
、A及びAが表す脂肪族アシル基は、-CO-RAC(RACは、脂肪族炭化水素基を表す。)で表される基である。
当該脂肪族アシル基中の脂肪族炭化水素基が、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0033】
、A及びAが表す脂肪族アシル基は、当該脂肪族アシル基中の脂肪族炭化水素基が、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0034】
、A及びAが表す脂肪族アシル基は、炭素数2以上6以下の脂肪族アシル基が好ましい。すなわち、成分(A)としては、脂肪族アシル基の炭素数が2以上6以下であることが好ましい。脂肪族アシル基の炭素数が2以上6以下である成分(A)は、炭素数7以上のアシル基を有する成分(A)に比べ、高温下でのブリードが抑制される樹脂粒子が得られやすい。
【0035】
、A及びAが表す脂肪族アシル基は、当該脂肪族アシル基中の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、酸素原子、窒素原子などで置換された基でもよいが、無置換であることが好ましい。
【0036】
、A及びAが表す脂肪族アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でも脂肪族アシル基としては、高温下でのブリード抑制の観点から、炭素数2以上4以下の脂肪族アシル基がより好ましく、炭素数2又は3の脂肪族アシル基が更に好ましい。
【0037】
成分(A)としては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0038】
成分(A)としては、高温下でのブリード抑制の観点から、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、及び、セルロースアセテートブチレート(CAB)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、セルロースアセテートがより好ましい。
【0039】
成分(A)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
成分(A)の重量平均重合度は、高温下でのブリード抑制の観点から、200以上1000以下が好ましく、500以上1000以下がより好ましく、600以上1000以下が更に好ましい。
【0041】
成分(A)の重量平均重合度は、以下の手順で重量平均分子量(Mw)から求める。
まず、成分(A)の重量平均分子量(Mw)を、テトラヒドロフランを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、カラム:TSKgelα-M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、成分(A)の構成単位分子量で除算することで、成分(A)の重合度を求める。例えば、セルロースアシレートの置換基がアセチル基の場合、構成単位分子量は、置換度が2.4のとき263、置換度が2.9のとき284である。
【0042】
成分(A)の置換度は、高温下でのブリード抑制の観点から、2.1以上2.9以下が好ましく、置換度2.2以上2.9以下がより好ましく、2.3以上2.9以下が更に好ましく、2.3以上2.6以下が特に好ましい。
【0043】
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)において、アセチル基とプロピオニル基との置換度の比(アセチル基/プロピオニル基)は、高温下でのブリード抑制の観点から、0.01以上1以下が好ましく、0.05以上0.1以下がより好ましい。
【0044】
セルロースアセテートブチレート(CAB)において、アセチル基とブチリル基との置換度の比(アセチル基/ブチリル基)は、高温下でのブリード抑制の観点から、0.05以上3.5以下が好ましく、0.5以上3.0以下がより好ましい。
【0045】
成分(A)の置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基がアルデヒド基又は脂肪族アシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、成分(A)の置換度は、成分(A)のアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、成分(A)の置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がアルデヒド基又は脂肪族アシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。成分(A)の置換度は、H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアルデヒド基及び脂肪族アシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0046】
(芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B):成分(B))
芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)は、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一部が芳香族アシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。芳香族アシル基とは、-CO-RBC(RBCは、芳香族環を含有する官能基を表す。)の構造を有する基である。
【0047】
芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)は、例えば、下記の一般式(CB)で表されるセルロース誘導体である。
【0048】
【化2】
【0049】
一般式(CB)中、B、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は芳香族アシル基を表し、mは2以上の整数を表す。ただし、m個のB、m個のB及びm個のBのうちの少なくとも一部は芳香族アシル基を表す。分子中にm個あるBは、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にm個あるB及びm個あるBもそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0050】
、B及びBが表す芳香族アシル基は、-CO-RBC(RBCは、芳香族環を含有する官能基を表す。)で表される基である。芳香族アシル基において、-CO基に直接芳香族環が結合していてもよいし、-CO基と芳香族環との間に連結基(例えば炭素数1~20の2価の連結基)を有していてもよい。また、前記連結基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート結合、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を含んでいてもよい。
【0051】
、B及びBが表す芳香族アシル基中の芳香族環としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が挙げられる。
【0052】
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、及びフェナンスロリン環等が挙げられる。
【0053】
高温下でのブリード抑制の観点から、芳香族アシル基は、一つのベンゼン環を有するアシル基であることが好ましい。
【0054】
、B及びBが表す芳香族アシル基中の芳香族環は、アシル基又は-CO基と芳香族環との間の連結基以外の置換基を有していてもよい。
前記アシル基又は前記-CO基と芳香族環との間の連結基以外の置換基としては、炭素数1以上6以下の炭化水素基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0055】
高温下でのブリード抑制の観点から、B、B及びBが表す芳香族アシル基としては、具体的には、ベンゾイル基、2-メチルベンゾイル基、3-メチルベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、2,6-ジメチルベンゾイル基、2,3-ジメチルベンゾイル基、2,4-ジメチルベンゾイル基、2,4,5-トリメチルベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイルであることが好ましい。
【0056】
中でも、高温下でのブリード抑制の観点から、B、B及びBが表す芳香族アシル基としては、ベンゾイル基であることがより好ましい。
つまり、高温下でのブリード抑制の観点から、成分(B)としてはセルロースベンゾエートであることがより好ましい。
【0057】
成分(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
成分(B)の重量平均重合度は、高温下でのブリード抑制の観点から、10以上200以下が好ましく、20以上150以下がより好ましく、20以上100以下が更に好ましい。
【0059】
成分(B)の重量平均重合度は、以下の手順で重量平均分子量(Mw)から求める。
まず、成分(B)の重量平均分子量(Mw)を、テトラヒドロフランを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、カラム:TSKgelα-M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、成分(B)の構成単位分子量で除算することで、成分(B)の重合度を求める。例えば、セルロースアシレートの置換基がベンゾイル基の場合、構成単位分子量は、置換度が2.4のとき448、置換度が2.9のとき496である。
【0060】
成分(B)の置換度は、高温下でのブリード抑制の観点から、1.0以上3.0以下が好ましく、置換度1.2以上3.0以下がより好ましく、1.3以上3.0以下が更に好ましく、1.4以上3.0以下が特に好ましい。
【0061】
成分(B)の置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基が芳香族アシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、成分(B)の置換度は、セルロースアシレート(A)のアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、成分(B)の置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基が芳香族アシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。成分(B)置換度は、H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素と芳香族アシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0062】
(成分(A)と成分(B)との質量比)
本実施形態に係る樹脂粒子は、アルデヒド基及び脂肪族アシル基の少なくとも1種を有するセルロースアシレート(A)と、芳香族アシル基を有するセルロースアシレート(B)と、の質量比((B)/(A))が0.1以上0.5以下である。
【0063】
高温下でのブリードを抑制する効果は、前記質量比((B)/(A))が0.1以上とすることで得られる。
前記質量比((B)/(A))が0.5超過となると、樹脂粒子中の成分(B)の含有量が多くなり、成分(B)がブリードを起こすことがある。
そのため、高温下でのブリードを抑制する観点から、前記質量比((B)/(A))は0.1以上0.5以下とする。
【0064】
高温下でのブリードを抑制する観点から、前記質量比((B)/(A))は0.1以上0.4以下であることがより好ましく、0.2以上0.3以下であることが更に好ましい。
【0065】
ここで、高温下でのブリードを抑制する観点から、成分(A)と成分(B)とは、主成分として含むことがよい。
ここで、成分(A)及び成分(B)が主成分とは、樹脂粒子全体に対して占める成分(A)及び成分(B)の質量比が最も多いことを意味する、
具体的には、成分(A)と成分(B)との合計量は、樹脂粒子全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%、又は100質量%が挙げられる。
【0066】
(ろ紙の重量増加率)
本実施形態に係る樹脂粒子は、下記の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下である。
(方法)
樹脂粒子10gを60℃、90%RH条件下で加熱した後、24時間室温下で静置する。前記加熱及び静置を行った樹脂粒子上にJIS P 3801(1995)で規定される1種の直径110mm、重量3.4gのろ紙を置く。樹脂粒子上に乗せたろ紙の上から、前記ろ紙と同じ直径で重さ70gのステンレス板を置いた後、10分間室温下で静置する。ろ紙からステンレス板及び樹脂粒子を取り除き、ろ紙の重量を測定し、ろ紙の重量増加率を測定する。
【0067】
上記の方法により算出される、ろ紙の重量増加率が0%以上10%以下であることは、高温下でのブリードが抑制されていることを示す。
【0068】
ろ紙の重量増加率を0%以上10%以下とする方法としては、例えば、成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))を0.1以上0.5以下とする方法が挙げられる。
【0069】
高温下でのブリードを抑制する観点から、ろ紙の重量増加率は0%以上10%以下であることが好ましく、0%以上7%以下であることが更に好ましい。
【0070】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂粒子は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、酢酸放出を防ぐための受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、樹脂粒子全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0071】
本実施形態に係る樹脂粒子は、成分(A)及び成分(B)以外の他の樹脂を含有していてもよい。ただし、他の樹脂を含む場合、樹脂粒子の全量に対する他の樹脂の含有量は、5質量%以下がよく、1質量%未満であることが好ましい。他の樹脂は、含有しないこと(つまり0質量%)がより好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体;ジエン-芳香族アルケニル化合物共重合体;シアン化ビニル-ジエン-芳香族アルケニル化合物共重合体;芳香族アルケニル化合物-ジエン-シアン化ビニル-N-フェニルマレイミド共重合体;シアン化ビニル-(エチレン-ジエン-プロピレン(EPDM))-芳香族アルケニル化合物共重合体;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
(樹脂粒子の形状)
本実施形態に係る樹脂粒子は、高温下でのブリード抑制の観点から、例えば、体積平均粒径が3μm以上100μm以下であることが好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、5μm以上70μm以下がより好ましく、8μm以上60μm以下がさらに好ましい。
【0073】
樹脂粒子の大径側粒度分布指標GSDvは、高温下でのブリード抑制の観点から、例えば、1.50以下が好ましく、1.30以下がより好ましく、1.20以下がさらに好ましい。
【0074】
樹脂粒子の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDvは、次の通り測定される。
LS粒度分布測定装置「Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。
一方、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を個数平均粒子径D50v、累積84%となる粒子径を個数粒子径D84vと定義する。そして、大径側個数粒度分布指標GSDvは、式GSDv=(D84v/D50v)1/2で算出する。
【0075】
樹脂粒子の製造方法は、例えば、次の方法が挙げられる。
1)各成分を混練し、得られた混練物を粉砕、分級して、樹脂粒子を得る混練粉砕法、
2)混練粉砕法にて得られた粒状物を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させ、樹脂粒子を得る乾式製法
3)各成分の粒子分散液を混合し、分散液中の粒子を凝集、加熱融着させ、樹脂粒子を得る凝集合一法
4)各成分を溶解した有機溶媒を水系溶媒に懸濁させて、各成分を含む樹脂粒子を造粒する溶解懸濁法
【0076】
これらの中でも、上記範囲の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDvを有する樹脂粒子を得る観点から、凝集合一法、溶解懸濁法等の湿式法がよい。
【0077】
本実施形態に係る樹脂粒子の用途としては、化粧品基材、ローリング剤、研磨剤、スクラブ剤、ディスプレイスペーサー、ビーズ成形用材料、光拡散粒子、樹脂強化剤、屈折率制御剤、生分解促進剤、肥料、吸水性粒子、トナー粒子の粒状体が挙げられる。
【実施例
【0078】
以下に実施例を挙げて、本実施形態に係る樹脂粒子をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本実施形態に係る樹脂粒子は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
<各材料の準備>
次の材料を準備した。
【0080】
(成分(A))
・CA1:イーストマンケミカル「CAP482-20」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均重合度716、アセチル基置換度0.18、プロピオニル基置換度2.49。
・CA2:イーストマンケミカル「CAP381-20」、セルロースアセテートブチレート、重量平均重合度700、アセチル基置換度0.15、ブチリル基置換度1.74。
・CA3:ダイセル「L-20」、セルロースアセテート、重量平均重合度500、アセチル基置換度2.40。
・CA4:下記手順にて作製したセルロースプロピオネート、重量平均重合度750、プロピオニル基置換度3.0。
-CA4の作製手順-
【0081】
(セルロースプロピオネート(CA4)の作製)
セルロース(日本製紙社製KCフロックW50)1.5kgに酢酸7.5kgを散布して、前処理活性化した。その後、氷酢酸3.8kg、無水プロピオン酸2.4kg、硫酸35gの混合物を添加し、40℃以下の温度で攪拌混合しながら、エステル化を行った。繊維片がなくなったときをエステル化終了とし、セルロースプロピオネートを得た。
次いで、セルロースプロピオネートを20Lの蒸留水に敵下し、室温で1時間攪拌した後にろ過し、60℃で72時間乾燥した。
乾燥後、酢酸2kg、蒸留水1kg、塩酸80gを加え、40℃で5時間反応させたものを0.5kg取り出し、酢酸カルシウム300gを加えて10Lの蒸留水中、室温で2時間攪拌後ろ過し、60℃で72時間乾燥し、セルロースプロピオネート(CA4)を得た。
【0082】
(成分(B))
・BAC1:第一工業製薬「モノペットSB」、セルロースベンゾエート、重量平均重合度15、ベンゾイル基置換度3.00。
・BAC2:第一工業製薬「M3911」、セルロースベンゾエート、重量平均重合度20、ベンゾイル基置換度1.50。
【0083】
・BAC3:下記手順にて作製した、セルロースビフェニルカルボン酸エステル、重量平均重合度20、ビフェニルカルボン酸基置換度1.5。
【0084】
(セルロースビフェニルカルボン酸エステル(BAC3)の合成)
セルロース(日本製紙社製KCフロックW50)1.5kgに酢酸7.5kgを散布して、前処理活性化した。その後、氷酢酸3.8kg、無水ビフェニルカルボン酸5kg、硫酸35gの混合物を添加し、40℃以下の温度で攪拌混合しながら、エステル化を行った。繊維片がなくなったときをエステル化終了とし、セルロースビフェニルカルボン酸エステルを得た。
次いで、セルロースビフェニルカルボン酸エステルを20Lの蒸留水に敵下し、室温で1時間攪拌した後にろ過し、60℃で72時間乾燥した。
乾燥後、酢酸2kg、蒸留水1kg、塩酸80gを加え、40℃で5時間反応させたものを0.5kg取り出し、酢酸カルシウム300gを加えて10Lの蒸留水中、室温で2時間攪拌後ろ過し、60℃で72時間乾燥し、セルロースビフェニルカルボン酸エステル(BAC3)を得た。
【0085】
・BAC4:下記手順にて作製したセルロースナフチレート(セルロースナフタレンカルボン酸エステルとも称する)、重量平均重合度30、ナフチル基置換度3.0。
【0086】
(セルロースナフタレンカルボン酸エステル(BAC4)の合成)
セルロース(日本製紙社製KCフロックW50)1.5kgに酢酸7.5kgを散布して、前処理活性化した。その後、氷酢酸3.8kg、無水ナフタレンカルボン酸4.2kg、硫酸35gの混合物を添加し、40℃以下の温度で攪拌混合しながら、エステル化を行った。繊維片がなくなったときをエステル化終了とし、セルロースナフタレンカルボン酸エステルを得た。
次いで、セルロースナフタレンカルボン酸エステルを20Lの蒸留水に敵下し、室温で1時間攪拌した後にろ過し、60℃で72時間乾燥した。
乾燥後、酢酸2kg、蒸留水1kg、塩酸80gを加え、40℃で5時間反応させたものを0.5kg取り出し、酢酸カルシウム300gを加えて10Lの蒸留水中、室温で2時間攪拌後ろ過し、60℃で72時間乾燥し、セルロースナフタレンカルボン酸エステル(BAC4)を得た。
【0087】
(可塑剤)
・PR1:大八化学工業「Daifatty101」、アジピン酸エステル含有化合物可塑剤
・PR2:大八化学工業「DOA」、ジオクチルアジペート
【0088】
<樹脂ペレットRE1~17の作製>
表1に示す仕込み組成比で、シリンダ温度を調製し、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、ペレット形状の樹脂RE1~RE17(以下、樹脂ペレットRE1~RE17と称する。)を作製した。
なお、表1中の「-」は該当する成分を含有しないことを示す。
【0089】
<実施例1>
(樹脂粒子RPC1の作製)
樹脂ペレット(RE3)300質量部をメチルエチルケトン700質量部中に完全に溶解する。これを、炭酸カルシウム100質量部、カルボキシメチルセルロース4質量部、メチルエチルケトン200質量部を純水1100質量部に分散させた水系液体中に加え、3時間攪拌した。これに10質量部の水酸化ナトリウムを加え、80℃に加熱して3時間攪拌してメチルエチルケトンを除去する。残渣をろ過した後、固形分を凍結乾燥し、樹脂粒子RPC1を得た。
【0090】
<実施例2~18、比較例1~7>
(樹脂粒子RPC2~20、RPC23~25の作製)
表2及び表3に準じて、樹脂ペレット、水系液体中への各成分量(炭酸カルシウム量、カルボキシメチルセルロース量、メチルエチルケトン量)、水系液体攪拌時間、水酸化ナトリウム添加量に変えた以外は、樹脂粒子RPC1と同様にして樹脂粒子RPC2~20、RPC23~25を得た。
【0091】
-樹脂粒子RPC21、22の準備-
市販のセルロース系粒子、CELLULOBEADS D10(大東化成製)を樹脂粒子RPC21、BELLOCEA(ダイセル製)を樹脂粒子RPC22として準備した。
【0092】
<粒径、粒度分布>
既述の方法に従って、LS粒度分布測定装置 Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)を用いて、樹脂粒子の体積平均粒径と大径側粒度分布指標GSDvを測定した。
【0093】
<耐熱ブリード性評価>
得られた樹脂粒子について、下記手順で耐熱ブリード性評価を行った。
-樹脂粒子の耐熱ブリード性評価-
得られた樹脂粒子10gを15×15cmのアルミバットに均等に敷き詰め、樹脂粒子を乗せたアルミバットを60℃、90%rh環境に設定した恒温恒湿槽(エスペック社製、プラチナスJ-PR-1)内に500時間静置した。樹脂粒子を乗せたアルミバットを取り出した後、24時間室温で放置し、ろ紙(アドバンテック社製、円形ろ紙No.1)を樹脂粒子上に置き、ろ紙と同じ大きさで質量70gのSUS板を載せて、10分間静置した。その後、ろ紙からステンレス板及び樹脂粒子を取り除き、ろ紙の重量増加量を測定することで、ブリード物の量を評価した。得られた結果を表2及び表3に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
上記結果から、本実施例の樹脂粒子は、高温下でのブリードが抑制されることがわかる。