(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
A47K 17/02 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A47K17/02 A
(21)【出願番号】P 2020090268
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019101682
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊木 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】大島 功治
(72)【発明者】
【氏名】甲山 泰章
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-045147(JP,A)
【文献】特開2003-126210(JP,A)
【文献】特表2010-528701(JP,A)
【文献】特開2018-102536(JP,A)
【文献】特開2001-161602(JP,A)
【文献】特開2001-000366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛式の大便器の近傍に設置されて前記大便器の使用者の介助に用いられる介助装置であって、
使用者がつかまる手摺本体部と、
前記手摺本体部を支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記大便器を設置した部屋の壁面に沿うように配置され、
前記支持部の前記大便器側には、上面視で前記壁面に垂直な方向に対して傾斜状の直線または湾曲線に沿う面取部が設けられて
おり、
前記手摺本体部は、前記支持部に対して水平方向に回動可能に設けられた支持アーム部を有する
ことを特徴とする介助装置。
【請求項2】
前記面取部は、上面視で前記壁面に垂直な方向に対して傾斜状の直線に沿う傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
前記面取部は、上下方向について前記支持部の下端から前記手摺本体部の近傍の部位まで連続して形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の介助装置。
【請求項4】
前記面取部は、前記支持部の前記大便器側と反対側にも設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の介助装置。
【請求項5】
前記支持部は、
前記壁面に沿うように配置された支持フレームと、
前記支持フレームを覆うカバーと、を有し、
前記傾斜面は、前記カバーに形成されている
ことを特徴とする請求項
2に記載の介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰掛式の大便器の近傍に設置されて大便器の使用者の介助に用いられる介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化や高齢者施設での人手不足に対応していくため、トイレ内における高齢者等の被介助者に対する介助機器の拡充が求められている。このような介助機器に関し、従来、腰掛式の大便器である洋風便器の近傍に設置される手摺装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この手摺装置は、例えば、車椅子と便器との間の移乗の補助や、便座着座時の座位保持の補助等のために使用される。
【0003】
特許文献1には、水平回動可能に設けられた手摺本体部を有する水平回動型の手摺装置が開示されており、この手摺装置は、手摺本体部の回動範囲を制限する手段や手摺本体部の回動をロックする手段等を有する。そして、特許文献1に開示されているような従来の手摺装置は、トイレ内において洋風便器の側方に位置する壁に支持された状態で設けられている。
【0004】
壁に支持される手摺装置においては、被介助者(使用者)の体重等の比較的大きな荷重が手摺本体部に作用することから、手摺装置を支持する壁において相当程度の支持強度を確保する必要がある。このため、手摺装置の設置に際しては、既存の壁に対して壁の強度を確保するための補強構造を組み込む必要があり、また、既存の壁の構造によっては例えば壁等の建築物側の構造を一旦壊す必要がある。このようなことから、従来の手摺装置の設置においては、施工が大変であり、設置に時間がかかるという問題がある。
【0005】
このような問題に対しては、手摺本体部を所定の支持部をなす支持構造物である躯体に支持させるとともに、その躯体を床面に固定し、手摺本体部に作用する荷重を床面で受ける構成が有効であると考えられる。このことは、床は、壁に比して、一般的に例えばコンクリート等の比較的堅固な構造であることが多いことに基づく。このように床面で荷重を受ける構成に関しては、特許文献1に、床面に立設された支柱に手摺本体部を回動可能に支持した構成が開示されている。
【0006】
また、トイレ内に設置される介助機器に関し、床面で荷重を受ける構成が、特許文献2に開示されている。特許文献2には、介助機器の一種である介護台が開示されており、この介護台は、床に固定されたベースおよびベース上に立設された支柱を躯体とし、この躯体を構成する支柱に、介護台の台本体部である移乗部を支持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-102536号公報
【文献】特開2001-366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように床面で荷重を受ける構成の手摺装置は、車椅子と便器との間の移乗や便座着座時の座位保持を行うために、便器に対してある程度近い位置に設置される必要がある一方で、手摺本体部を支持する躯体が被介助者の移乗等の妨げにならないように、躯体と便器との間に被介助者の移乗等のためのスペースを確保する必要がある。このように便器との位置関係が考慮されて設置される手摺装置においては、例えば特許文献2に開示されているように、荷重が作用する部分を支持する躯体をトイレの壁面に沿わせるように配置することが考えられる。
【0009】
しかしながら、手摺装置において、荷重が作用する部分である手摺本体部を支持する躯体をトイレの壁面に沿わせるように配置する場合、次のような問題がある。手摺本体部につかまった被介助者は、車椅子と便器との間の移乗の際などにおいて、体を壁面に沿わせながら移動する場合がある。つまり、被介助者は、車椅子と便器との間を移動する際など、手摺本体部につかまりながら、躯体が沿う壁面に体をあずけた状態で移動する場合がある。このような場合、壁面に沿うように設置された躯体に被介助者の体が引っかかり、躯体によって被介助者の移動が妨げられるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、設置のための施工を容易とすることができるとともに、使用者が手摺本体部につかまった状態で支持部に引っかかることなくスムーズに移動することができる介助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る介助装置は、腰掛式の大便器の近傍に設置されて前記大便器の使用者の介助に用いられる介助装置であって、使用者がつかまる手摺本体部と、前記手摺本体部を支持する支持部と、を備え、前記支持部は、前記大便器を設置した部屋の壁面に沿うように配置され、前記支持部の前記大便器側には、上面視で前記壁面に垂直な方向に対して傾斜状の直線または湾曲線に沿う面取部が設けられているものである。
【0012】
このような構成の介助装置によれば、設置のための施工を容易とすることができるとともに、使用者が手摺本体部につかまった状態で支持部に引っかかることなくスムーズに移動することができる。
【0013】
本発明に係る介助装置の他の態様は、前記介助装置において、前記面取部は、上面視で前記壁面に垂直な方向に対して傾斜状の直線に沿う傾斜面を有するものである。
【0014】
このような構成の介助装置によれば、支持部をコンパクトに構成することができるので、部屋内のスペースをより有効に活用することができるとともに、使用者は、大便器の周りにおいて、支持部に妨げられることなくよりスムーズに移動することが可能となる。
【0015】
本発明に係る介助装置の他の態様は、前記介助装置において、前記面取部は、上下方向について前記支持部の下端から前記手摺本体部の近傍の部位まで連続して形成されているものである。
【0016】
このような構成の介助装置によれば、手摺本体部によって視認しにくくなる使用者の下肢を、面取部に沿ってスムーズに移動させることができる。また、支持部付近の清掃性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る介助装置の他の態様は、前記介助装置において、前記面取部は、前記支持部の前記大便器側と反対側にも設けられているものである。
【0018】
このような構成の介助装置によれば、部屋における介助装置の取付け態様について、大便器に対する左右の側壁のいずれに対する取付け態様の場合にも対応することができる。
【0019】
本発明に係る介助装置の他の態様は、前記介助装置において、前記支持部は、前記壁面に沿うように配置された支持フレームと、前記支持フレームを覆うカバーと、を有し、前記傾斜面は、前記カバーに形成されているものである。
【0020】
このような構成の介助装置によれば、面取部の傾斜面を支持面として利用した使用者の移動をより快適でスムーズなものとすることが可能となる。
【0021】
本発明に係る介助装置の他の態様は、前記介助装置において、前記手摺本体部は、前記支持部に対して水平方向に回動可能に設けられた支持アーム部を有するものである。
【0022】
このような構成の介助装置によれば、使用者は、面取部の傾斜面に体を沿わせつつ、支持アーム部につかまってこれを回動させながら移動することができるため、使用者の移動をよりスムーズなものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設置のための施工を容易とすることができるとともに、手摺本体部につかまった状態で、支持部に引っかかることなくスムーズに移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る手摺装置が設置されたトイレ内を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る手摺装置が設置されたトイレ内を模式的に示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る手摺装置が設置されたトイレ内を模式的に示す側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の前方斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の後方斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の正面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の右側面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の平面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の背面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の支持部側の底面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の手摺本体部および支持フレームとカバーとの分解斜視図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る手摺本体部の前方斜視図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る手摺本体部の一部分解前方斜視図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る支持フレームの前方斜視図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係る支持フレームの正面図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係る支持フレームの右側面図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に係る支持フレームの平面図である。
【
図21】本発明の第1実施形態に係るカバーの前方斜視図である。
【
図22】本発明の第1実施形態に係るカバーの後方斜視図である。
【
図23】本発明の第1実施形態に係る手摺装置の使用態様の一例についての説明図である。
【
図24】本発明に係る隙間発生防止手段に係る係合フレーム部材の横フレーム部の構成を示す側面断面図である。
【
図25】本発明に係る隙間発生防止手段に係る係合フレーム部材の横フレーム部の構成を示す側面断面斜視図である。
【
図26】本発明に係る隙間発生防止手段に係る係合フレーム部材の縦フレーム部の構成を示す平面断面図である。
【
図27】本発明に係る隙間発生防止手段に係る係合フレーム部材の縦フレーム部の構成を示す平面断面斜視図である。
【
図28】本発明に係る隙間発生防止手段に係る係合フレーム部材の動作説明図である。
【
図29】本発明の第1実施形態に係る面取部の説明図である。
【
図30】本発明の第1実施形態に係る面取部の使用態様の一例を示す図である。
【
図31】本発明の第1実施形態に係る面取部の変形例1を示す図である。
【
図32】本発明の第1実施形態に係る面取部の変形例2を示す図である。
【
図33】本発明の第1実施形態に係る面取部の変形例3を示す図である。
【
図34】本発明の第2実施形態に係る手摺装置を示す前方斜視図である。
【
図35】本発明の第3実施形態に係る手摺装置の前方斜視図である。
【
図36】本発明の第3実施形態に係る手摺装置の正面図である。
【
図37】本発明の第3実施形態に係る手摺装置の右側面図である。
【
図38】本発明の第3実施形態に係る手摺装置の平面図である。
【
図39】本発明の第3実施形態に係る手摺装置のカバーを取り外した状態を示す前方斜視図である。
【
図40】本発明の第3実施形態に係る手摺装置のカバーを取り外した状態を示す後方斜視図である。
【
図41】本発明の第3実施形態に係る支持フレームの平面断面図である。
【
図42】本発明の第3実施形態に係るカバーの前方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、腰掛式の大便器の近傍に設置される介助装置において、使用者(被介助者)がつかまる手摺本体部を支持する支持部を壁面に沿うように配置するとともに、支持部について外形的(外観的)な面で工夫を施したものである。これにより、本発明は、設置のための施工を容易とするとともに、手摺本体部につかまった状態の被介助者の移動をスムーズなものとし、例えば車椅子と便器との間における良好な移乗性を実現しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
[手摺装置の第1実施形態]
手摺装置の第1実施形態について説明する。
図1から
図3に示すように、本実施形態に係る介助装置としての手摺装置1は、腰掛式の大便器である洋風便器2の近傍に設置されて洋風便器2の使用者(被介助者)の介助に用いられるトイレ用の手摺装置である。手摺装置1は、例えば、車椅子と洋風便器2との間における被介助者の移乗の補助や、被介助者の洋風便器2の便座着座時における座位保持の補助等のために使用される。
【0027】
図1から
図3に示すように、洋風便器2は、トイレ(トイレットルーム)3内において、水平状の床面4aをなす床4上に設置されている。トイレ3は、床4上においてトイレ空間を形成する鉛直状の後壁5および側壁6を有する。洋風便器2は、トイレ3内において、後壁5の近傍の(直前方の)位置に、前後方向をトイレ空間の前後方向(
図2において左右方向)に沿わせるように設置されている。洋風便器2は、ボウル部を有する便器本体2aと、所定の部位に回動可能に支持された便座2bおよび便蓋2cとを有する水洗大便器である。
【0028】
手摺装置1は、洋風便器2の前方の位置にて、側壁6の鉛直状の壁面6aに沿うように設置されている。本実施形態では、手摺装置1は、洋風便器2の左方(
図2において上方)に位置する側壁6に対して設けられている。なお、トイレ3内における左右方向は、洋風便器2に着座した状態の使用者の左右方向に対応する。
【0029】
以下、手摺装置1について説明する。なお、手摺装置1においては、トイレ3内における上下方向(鉛直方向)を上下方向とし、洋風便器2の前後方向に対応する方向(
図2における左右方向)を左右方向とし、平面視で左右方向に直交する方向(
図2における上下方向)を前後方向とする。
【0030】
手摺装置1は、使用者がつかまる手摺本体部11と、手摺本体部11を支持する支持部12とを備える。手摺本体部11は、水平状に延びたアーム状の部分をなし、使用者を支持したり使用者によって把持されたりする部分となる。支持部12は、床4上に立設されたポスト状の部分であり、洋風便器2の前方の位置において、手摺本体部11を所定の高さ位置に支持する。本実施形態では、支持部12は、洋風便器2の上面よりも高い位置に手摺本体部11を支持している。
【0031】
手摺装置1において、支持部12は、洋風便器2を設置した部屋であるトイレ3の壁面に沿うように配置されている。本実施形態では、支持部12は、その背面側(後面側)をトイレ3の側壁6の壁面6aに近接させた状態で設けられている。
【0032】
支持部12は、トイレ3の床4に固定される支持フレーム13と、支持フレーム13を覆うカバー14とを有する(
図11参照)。支持フレーム13は、手摺装置1において手摺本体部11を支持する躯体をなす支持構造部であり、トイレ3の壁面6aに沿うように配置されている。カバー14は、支持フレーム13に支持された手摺本体部11を突出させるとともに、支持フレーム13の背面側および底面側(下面側)を除いた部分の略全体を覆っている。
【0033】
以下、手摺装置1の各部について詳細に説明する。なお、以下の説明では、
図1から
図9に示すように、手摺装置1が平面視で手摺本体部11を壁面6aに対して垂直方向に沿わせた状態を基準状態として説明する。
【0034】
[手摺本体部の構成例]
手摺本体部11について説明する。手摺本体部11は、水平状に延びたアーム状の部分である支持アーム部21と、支持アーム部21を回動可能に支持する回動支持部22とを有する。支持アーム部21は、支持部12に対して水平方向に回動可能に設けられた部分である。回動支持部22は、上下方向に沿う所定の回動軸30を中心に所定の回動範囲で支持アーム部21を水平方向に回動可能に支持する(
図2参照)。
【0035】
支持アーム部21は、アーム本体部23と、ボード部24とを有する。アーム本体部23は、略四角柱状に沿う外形を有する部分であって水平方向に延伸したアーム部25と、アーム部25の一端側に設けられ略円筒状の外形を有する部分である基端支持部26とを有する。アーム部25は、略四角柱状に沿う外形における4つの側面を上下左右に向けている。基端支持部26は、アーム部25と一体的に構成された部分であり、回動支持部22により支持される部分となる。アーム本体部23は、アーム部25および基端支持部26の各部の外形をなすカバー部としてアームカバー部27および基部カバー部28を有する。
【0036】
ボード部24は、平面視で細長い略半月状の形状を有する板状の部分であり、アーム部25の上側に設けられている。ボード部24は、その平面視形状において、略半月形状の外側の湾曲側を、トイレ3における前側となる右側に向けている。ボード部24は、アーム部25よりも幅広の部分であり、アーム部25に対して左右両側および前側に張り出すように設けられている。ボード部24は、後側については、基端支持部26よりも前側の位置までの範囲で設けられており、アーム部25は、その基端側の部分の上面部25aを露出させている。基準状態の手摺装置1において、ボード部24は、トイレ3内で洋風便器2に対して略左右対称となるように設けられている(
図2参照)。
【0037】
ボード部24は、その表面をなす大部分を樹脂製の部材により構成している。ボード部24は、使用者を支持する支持面をなす部分であって、使用者によって把持される部分となる。このため、ボード部24の周縁部は丸め形状となっている。また、洋風便器2に着座した使用者にとって手前側となるボード部24の左側の縁部は、平面視でなだらかに湾曲した凹形状をなしている。手摺本体部11は、ボード部24を除き、全体として略左右対称に構成されている。
【0038】
回動支持部22は、上下方向に所定の間隔を隔てた水平状の板状の部分である一対の支持面部29(29A,29B)を有する(
図13参照)。支持面部29は、平面視で前側を湾曲側とした略半円形状ないし略半楕円形状を有する。回動支持部22は、上下の支持面部29間に基端支持部26を介装した状態で、回動軸30により、支持アーム部21を水平方向に回動可能に支持する。回動軸30は、上下方向を軸方向とし、回動支持部22の中央部の位置にて、上下の支持面部29を貫通するように設けられている。
【0039】
支持アーム部21は、上下の支持面部29間に架設支持された回動軸30により、回動支持部22に対して回動可能に支持されている。手摺本体部11は、支持アーム部21の回動動作について、回動のロックおよびその解除を行うためのロック機構を有する。
【0040】
ロック機構は、アーム本体部23のアーム部25においてボード部24の後側の部分の上側に設けられた操作部40の操作により動作する。ロック機構は、回動支持部22に対する回動部分となる支持アーム部21側に設けられた係合移動体と、回動支持部22側に設けられ係合移動体の係合を受ける被係合部とを有する。係合移動体は、コイルバネ等の弾性部材の付勢力により、被係合部側である後方に向けて付勢されている。被係合部は、係合移動体の係合を受ける被係合部分を、支持アーム部21の回動方向について所定の間隔をあけて複数箇所に配設している。
【0041】
操作部40は、ロック機構を構成する係合移動体を前後方向に移動させるための部分であり、係合移動体と一体的に前後方向に移動するように構成されている。操作部40は、係合移動体から上方に向けて垂直状に延設されその大部分をアーム部25の上面部25aから上方に突出させた操作軸と、操作軸を覆う操作移動体52とを有する。
【0042】
操作移動体52は、操作軸の上面部25aからの突出部分を覆う軸被覆部52aと、平面視で矩形状に形成された板状のスライド板部52bとを有する。操作移動体52は、軸被覆部52aに対して下方から操作軸を挿入させた状態で、操作軸に固定されている。
【0043】
軸被覆部52aは、略四角柱状の外形を有し、操作軸を内挿させてスライド板部52bから上方に向けて突出し、操作部40の把持部40aを構成している。スライド板部52bは、アーム部25の上面部25aの左右幅の範囲内で上面部25aを上側から覆うように設けられており、操作部40の操作にともない、上面部25a上をスライドする態様で前後方向に移動する。スライド板部52bにおける軸被覆部52aの前側には、操作部40の操作方向を示す矢印表示52cが表されている。
【0044】
以上のような構成においては、操作移動体52および操作軸、ならびにロック機構を構成する係合移動体を含む構成が、把持部40aの前後方向の移動操作によって一体的に前後方向に移動する部分となる。この一体的な移動部分は、係合移動体を付勢する弾性部材により後向きの付勢力を受けている。
【0045】
以上のように構成された操作部40による手摺本体部11の操作について説明する。操作部40を操作していない状態においては、ロック機構の弾性部材の付勢力によって係合移動体が被係合部に係合し、支持アーム部21の回動がロックされた状態となる。一方、弾性部材の付勢力に抗して操作部40の把持部40aを前方に移動操作することで(
図7、矢印A1参照)、係合移動体と被係合部の係合が解除され、支持アーム部21の回動のロックが解除された状態となる。これにより、支持アーム部21が回動可能な状態となる。
【0046】
支持アーム部21を適宜回動させた後、把持部40aを操作状態から解放することで、弾性部材の付勢力によって把持部40aとともに係合移動体が後方に移動し(
図7、矢印A2参照)、係合移動体が被係合部に係合し、自動的にロック状態となる。このように、手摺本体部11は、係合移動体を係合させる被係合部における複数の被係合部分の配設態様に応じて、段階的に複数箇所で支持アーム部21の回動をロックするように構成されている。
【0047】
また、支持アーム部21の回動動作については、回動支持部22に設けられた係止部分等のストッパによって回動範囲が制限されている。支持アーム部21の回動範囲は、例えば、基準状態での位置から右側に所定の角度θ1(<90°)回動した位置までの範囲に制限される(
図2参照)。角度θ1は、例えば70~80°程度の大きさである。
【0048】
以上のような支持アーム部21の回動範囲は、
図1等に示すように手摺装置1が洋風便器2の左方の側壁6に対して設けられる場合の仕様である。手摺装置1が洋風便器2の右方の側壁に対して設けられる場合、支持アーム部21の回動範囲は、左方の側壁6に対して設けられる場合と左右対称的に設定される。
【0049】
また、回動支持部22は、上下の支持面部29を前方に突出させた背面板部57を有する。背面板部57は、前後方向を板厚方向とする鉛直状の略矩形板状の部分であり、上下の支持面部29を支持している。背面板部57は、左右方向については支持面部29の左右方向の寸法と略同じ寸法を有する。背面板部57は、上下方向については、上側の支持面部29Aよりも上側に延出した上側延出部57aと、下側の支持面部29Bよりも下側に延出した下側延出部57bとを有する。
【0050】
このような背面板部57に対し、上下の支持面部29は、それぞれ支持面部29に対して上下外側に屈曲形成された固定面部29Xを介して固定支持されている。支持面部29および固定面部29Xは、側面視で略「L」字状をなす屈曲板状の部材により形成されており、固定面部29Xが背面板部57の前面57cに溶接等によって固定されることで、支持面部29が設けられている。
【0051】
背面板部57の上側延出部57aおよび下側延出部57bにおいては、左右両側に2箇所ずつ、手摺本体部11を支持フレーム13に固定するための固定部を構成する被螺挿部58が設けられている。被螺挿部58は、背面板部57の後方から螺挿されるボルト等の締結具の螺挿を受けるナット状の部分である。
【0052】
また、回動支持部22においては、上下の化粧カバー59(59A,59B)が設けられている。化粧カバー59は、主に支持面部29を被覆する横カバー部59aと、主に背面板部57の上側延出部57aまたは下側延出部57bを被覆する縦カバー部59bとを有する。化粧カバー59は、平面視で支持面部29の外形に沿って略半楕円形状を有するとともに、側面視で略「L」字状をなすように構成されている。
【0053】
上側の化粧カバー59Aは、横カバー部59aによって上側の支持面部29Aを上側かつ側方側から覆うとともに、縦カバー部59bによって背面板部57の上側延出部57aを前側、上側および左右の側方側から覆っている。下側の化粧カバー59Bは、横カバー部59aによって下側の支持面部29Bを下側かつ側方側から覆うとともに、縦カバー部59bによって背面板部57の下側延出部57bを前側、下側および左右の側方側から覆っている。化粧カバー59は、樹脂製の部材であり、内周面に形成された係合部59c(
図13参照)等によって回動支持部22の本体側に固定されている。
【0054】
[支持部の構成例]
支持部12について説明する。支持部12は、手摺本体部11を支持する支持フレーム13と、これを被覆するカバー14とを有する(
図11参照)。支持部12は、全体として、平面視で左右対称な略五角形状を有する角柱状(五角柱状)の外形をなすように構成されている。支持部12の平面視形状である略五角形状は、平面視において、主に、左右方向に沿う背面側の辺部、前後方向に沿う左右両側の辺部、および前後方向に対して略45°傾斜した辺部であって前側の角部をなす左右の傾斜辺部によって形成されている。支持部12の五角柱状の外形は、カバー14が沿う形状となっている。
【0055】
(支持フレームの構成例)
支持フレーム13の構成について説明する。支持フレーム13は、支持部12の平面視形状に沿う略五角形状の平板状の部分であるベース板部60を有する。ベース板部60は、略五角形状をなす辺部として、左右方向に沿う背面側の後辺部60aと、前後方向に沿う左右両側の左側辺部60bおよび右側辺部60cと、前後方向に対して略45°傾斜した辺部であって前側の鋭角状の角部(頂部)をなす左傾斜辺部60dおよび右傾斜辺部60eとを有する(
図10参照)。ベース板部60の前側の角部は、平面視で湾曲線に沿う丸め形状を有する。ベース板部60の後側において、左側辺部60bと後辺部60a、右側辺部60cと後辺部60a、それぞれの辺部同士により直角状の角部が形成されている。ベース板部60は、支持部12の底面部を形成している。
【0056】
図14から
図16に示すように、ベース板部60上には、前側支柱61、および左右の後側支柱62,63の3本の支柱が立設されている。これらの支柱は、いずれも正方形状の横断面形状をなす四角柱形状を有し、角形鋼管が溶接等によってベース板部60に固定されること等によって設けられている。
【0057】
前側支柱61は、ベース板部60上において、左傾斜辺部60dと右傾斜辺部60eとによる前側の角部に位置しており、同角部の形状に対応して、横断面(平面断面)形状である正方形状における対角線を前後方向および左右方向に沿わせるように設けられている。左側の後側支柱62は、ベース板部60上において、後辺部60aと左側辺部60bとによる角部に位置しており、同角部の形状に対応して、横断面形状である正方形状における各辺部を前後方向および左右方向に沿わせるように設けられている。右側の後側支柱63は、ベース板部60上において、後辺部60aと右側辺部60cとによる角部に位置しており、左側の後側支柱62と左右対称に設けられている。
【0058】
左右の後側支柱62,63は、支持フレーム13の高さ方向の略全体にわたる高さを有する。これに対し、前側支柱61は、左右の後側支柱62,63よりも低い高さを有する。本実施形態では、前側支柱61の高さは、後側支柱62,63の高さの略2/3となっている。
【0059】
支持フレーム13において、前側支柱61よりも上側には、平面視で重なるように互いに略同じ形状・寸法を有する中間面部65および天面部66が互いに平行に設けられている。中間面部65および天面部66は、それぞれ二等辺三角形状を有する板状の部分であり、頂点側を前側、底辺側を後側として水平状に設けられている。また、中間面部65および天面部66は、ベース板部60の前側の部分と略同じ形状・寸法を有し、平面視でベース板部60に重なるように設けられている。
【0060】
中間面部65は、前側支柱61の上端面(上側の開口端面)およびこれと面一状をなす左右の横支持フレーム部67,67の上面に下側から支持された状態で設けられている。横支持フレーム部67は、矩形状の横断面形状をなす角形鋼管等の四角柱形状の部材により構成されている。左右の横支持フレーム部67,67は、前側支柱61の上端部の高さ位置において、前側支柱61と左右の後側支柱62,63それぞれとの間に、水平状かつ中間面部65の傾斜辺部に沿って傾斜状に、中間面部65の外形の範囲内に設けられている。
【0061】
左側の横支持フレーム部67は、前側支柱61の左後側の傾斜面部61aと、左側の後側支柱62の前面部62aとの間に架設されており、右側の横支持フレーム部67は、前側支柱61の右後側の傾斜面部61bと、右側の後側支柱63の前面部63aとの間に架設されている。横支持フレーム部67,67は、前側支柱61、左右の後側支柱62,63、および中間面部65それぞれに対して溶接等によって固定されている。
【0062】
中間面部65および天面部66は、後側の辺部の左右端部を、左右の後側支柱62,63の前面に沿わせるとともに、左右の後側支柱62,63の左右外側の側面部間の範囲内に位置させるように設けられている。天面部66は、中間面部65の上方において前方に庇状に突出している。
【0063】
中間面部65および天面部66の後縁部間には、前後方向を板厚方向とする鉛直板状の支持背面部68が設けられている。支持背面部68は、左右方向については中間面部65および天面部66と略同じ範囲で設けられている。また、支持背面部68の左右両端の前側には、鉛直板状の傾斜側面部69が設けられている。傾斜側面部69は、支持背面部68と同様の高さ範囲で中間面部65と天面部66との間に設けられている。傾斜側面部69は、支持背面部68の左右両端の位置から、中間面部65および天面部66の斜辺部に沿って、同斜辺部の略中央部までの範囲で設けられている。
【0064】
以上のような構成によれば、中間面部65と、天面部66と、左右の傾斜側面部69とにより、正面視で縦長の長方形状の開口をなす空間部が形成されている。この空間部は、手摺本体部11の回動支持部22の後部が収納される部分となる。なお、傾斜側面部69の前側の下端部には、傾斜側面部69の前側の端面から中間面部65の上面にかけて前下がりの傾斜面をなす三角形状の突出部69aが設けられている。
【0065】
本実施形態では、中間面部65、天面部66、支持背面部68、および左右の傾斜側面部69は、1枚の鋼板を屈曲成形することによって形成されている。すなわち、支持背面部68と中間面部65および天面部66のそれぞれとは、側面断面視で直角状の角部(屈曲部)を形成している(
図18、
図24参照)。また、支持背面部68と左右の傾斜側面部69のそれぞれとは、平面断面視で鋭角状の(略45°の)角部(屈曲部)を形成している(
図19参照)。ただし、中間面部65、天面部66、支持背面部68、および左右の傾斜側面部69は、各部をなす別体の板状部材同士を溶接やボルト固定等によって固定した構造であってもよい。
【0066】
中間面部65、天面部66、支持背面部68、および左右の傾斜側面部69をなす一体の屈曲板状部材は、左右の後側支柱62,63に対して、ボルト71によって4箇所で固定されている。ボルト71は、左右の後側支柱62,63を後側から貫通して支持背面部68に螺挿されている。ボルト71による固定部は、支持背面部68の四隅に対応する部分に設けられている。
【0067】
また、支持背面部68の後側には、上下2本の横フレーム部72,72が設けられている。横フレーム部72は、矩形状の横断面形状をなす角形鋼管等の四角柱形状の部材により構成されている。上下の横フレーム部72,72は、それぞれ支持背面部68の上下端部に対応する高さ位置において、左右の後側支柱62,63間に架設されている。横フレーム部72は、左右の後側支柱62,63に対して溶接等によって固定されている。
【0068】
また、左右の横支持フレーム部67,67の下方には、傾斜フレーム部73,73が設けられている。傾斜フレーム部73は、矩形状の横断面形状をなす角形鋼管等の四角柱形状の部材により構成されている。左右の傾斜フレーム部73,73は、前側支柱61と左右の後側支柱62,63それぞれとの間に、前側支柱61の上下中央部から左右の後側支柱62,63の上端部にかけて正面視、側面視、および平面視で傾斜状をなすように設けられている。
【0069】
左側の傾斜フレーム部73は、前側支柱61の左後側の傾斜面部61aと、左側の後側支柱62の前面部62aとの間に架設されており、右側の傾斜フレーム部73は、前側支柱61の右後側の傾斜面部61bと、右側の後側支柱63の前面部63aとの間に架設されている。傾斜フレーム部73,73は、前側支柱61および左右の後側支柱62,63それぞれに対して溶接等によって固定されている。
【0070】
以上のような構成を備えた支持フレーム13は、ベース板部60を貫通するアンカーボルト75によって床4に固定されている。つまり、支持部12は、支持フレーム13がアンカーボルト75によって床4に固定されることで、床面4a上に設置されている。床4は、例えばコンクリート等の比較的堅固な構造を有し、支持部12の支持強度が確保される。アンカーボルト75は、ベース板部60との間に矩形状の座金76を介在させている。座金76は、ベース板部60に形成された矩形状の孔部60fを上側から塞ぐようにベース板部60上に載っている。
【0071】
本実施形態では、アンカーボルト75による固定部は、前側支柱61の左右の斜め後方の位置と、左右の後側支柱62,63の左右内側の位置との計4箇所に設けられている。なお、アンカーボルト75の本数や配置等、床4に対する支持フレーム13の固定構造は、本実施形態に限定されるものではなく、支持フレーム13を床4に対して必要な支持強度で固定することができるものであればよい。
【0072】
以上のような構成を備えた支持フレーム13に対し、手摺本体部11が支持されている。手摺本体部11は、回動支持部22の背面板部57を、支持フレーム13の支持背面部68に前側から合わせた状態で、固定ボルト77によって支持フレーム13に固定されている。固定ボルト77は、後側から横フレーム部72、支持背面部68、および背面板部57を貫通し、背面板部57の前側に設けられた被螺挿部58に螺挿されている。
【0073】
本実施形態では、固定ボルト77による固定部は、上下の横フレーム部72の左右両側に2箇所ずつ、計4箇所に設けられている。なお、固定ボルト77の本数や配置等、支持フレーム13に対する手摺本体部11の固定構造は、本実施形態に限定されるものではなく、手摺本体部11を支持フレーム13に対して必要な支持強度で固定することができるものであればよい。
【0074】
(カバーの構成例)
カバー14の構成について説明する。カバー14は、支持部12の五角柱状の外形に沿った形状をなす複数の面部を有するとともに、背面側および底面側を開放させている。カバー14は、その外形をなす複数の面部として、上面部81、左側面部82、右側面部83、左傾斜面部84、および右傾斜面部85を有する。
【0075】
上面部81は、支持フレーム13のベース板部60と略同じ形状・寸法の外形を有する略五角形状の水平状の面部であり、平面視でベース板部60に重なるように設けられている。左側面部82および右側面部83は、それぞれ左右方向を板厚方向とする鉛直状の面部であり、平面視でベース板部60の左側辺部60bおよび右側辺部60cに沿うように設けられている。
【0076】
左傾斜面部84および右傾斜面部85は、それぞれ平面視で前後方向に対して略45°傾斜した方向を板厚方向とする鉛直状の面部であり、平面視でベース板部60の左傾斜辺部60dおよび右傾斜辺部60eに沿うように設けられている。左傾斜面部84および右傾斜面部85は、ベース板部60の前側の角部の形状に沿うように、カバー14の前側において、平面断面視で前側を凸側とした半円状をなす湾曲面部87(
図20参照)により、上下方向に沿う稜線部86を形成している。
【0077】
カバー14においては、左右方向に沿う上面部81の後縁部と、上下方向に沿う左側面部82および右側面部83それぞれの後縁部とにより、縦長矩形状に沿う背面側の開口が形成されている。また、カバー14においては、前後方向に沿う左側面部82および右側面部83それぞれの下縁部と、傾斜状の左傾斜面部84および右傾斜面部85それぞれの下縁部とにより、五角形状に沿う底面側の開口が形成されている。
【0078】
カバー14の下端縁部は、支持フレーム13のベース板部60の外形に沿って後辺部60a以外の辺部を囲むように、ベース板部60の外側に位置している。つまり、カバー14は、その下端縁を、床面4aに接触ないし略接触させるように構成されている。
【0079】
カバー14の床面4aに対する接地部となる下端縁部には、床面4aに対する不陸調整およびカバー14内に対する防水のため、ゴム等の弾性材料により形成されたパッキン88が設けられている。パッキン88は、細長い略「U」字状の横断面形状をなす凹溝状の部材であり、例えばU型ゴムパッキンである。パッキン88は、その溝内に、カバー14の略全体をなす本体部材の下端縁部を嵌入させた態様で、カバー14の本体部材に取り付けられている。カバー14の本体部材は、金属製あるいは樹脂製で、数ミリメートル程度の厚さを有する屈曲板状の部材である。
【0080】
パッキン88は、カバー14の左側面部82、左傾斜面部84、右側面部83、および右傾斜面部85の各面部に対応した部分を有する連続した一体の部材である。ただし、パッキン88は、例えばカバー14の各面部の下端縁部に対して別体の部材で設けられてもよい。また、パッキン88は、カバー14の左傾斜面部84および右傾斜面部85の下端部において、カバー14の本体部材と、ベース板部60の左傾斜辺部60dおよび右傾斜辺部60eとの間を密閉している(
図10参照)。なお、パッキン88とカバー14は、側壁6の下端に幅木が設けられている場合に幅木の寸法に応じて寸法が調整可能となるように構成されてもよい。
【0081】
カバー14においては、左傾斜面部84および右傾斜面部85からなる前側の面部の上部に、手摺本体部11を貫通させる開口窓89が形成されている。開口窓89は、支持フレーム13に対する手摺本体部11の支持位置に対応した部位に形成されており、正面視で横長矩形状の開口を形成している。開口窓89は、上下方向については、上下の化粧カバー59の横カバー部59aが入る程度の寸法を有し、左右方向については、回動支持部22の左右方向の寸法と略同じ寸法を有する。
【0082】
手摺本体部11は、回動支持部22の一部および支持アーム部21の略全体を、開口窓89からカバー14の外側に露出させている。回動支持部22については、上下の化粧カバー59の横カバー部59aの周縁部、および基部カバー部28の外周面部の大部分が、開口窓89からカバー14の外側に露出しており、これらの部分よりも後側かつ左右内側の部分は、カバー14内に位置している。
【0083】
以上のような構成を備えたカバー14は、支持フレーム13に固定されている。支持フレーム13に対するカバー14の固定構造について説明する。カバー14は、上面部81ならびに左側面部82および右側面部83において、支持フレーム13に固定されている。
【0084】
上面部81は、カバー固定ボルト91により、支持フレーム13の天面部66に固定されている。カバー固定ボルト91は、上面部81に形成された孔部81aを貫通するとともに、天面部66に形成されたネジ孔66a(
図17参照)に螺挿されている。本実施形態では、カバー固定ボルト91による固定部は、上面部81の前側の頂部近傍の位置と、後側の左右両側の位置との計3箇所に設けられている。
【0085】
左側面部82および右側面部83は、固定用金具であるアングル部材92を介して、それぞれ対応する後側支柱62,63に固定されている。左側の後側支柱62に対する左側面部82の固定構造と、右側の後側支柱63に対する右側面部83の固定構造とは左右対称であるため、主に右側の固定構造について説明し、対応する構成については同一の符号を付す。
【0086】
アングル部材92は、所定の屈曲形状を有する幅狭の矩形板状の部材であり、上下方向を幅方向として設けられ、平面視で概略的に略「L」字状の形状をなす。アングル部材92は、
図19に示すように、略「L」字状の平面視形状をなす部分として、長辺部92aおよび短辺部92
bを有し、長辺部92aを後側支柱63の後面部63b(後側支柱62の後面部62b)の後側に位置させ、短辺部92bを後側支柱63の左右外側の側面部63c(後側支柱62の側面部62c)の左右外側に位置させている。詳細には次のとおりである。
【0087】
図26および
図27に示すように、長辺部92aは、平面視で略「Z」状をなす変形クランク状の屈曲形状を有する。長辺部92aは、略「Z」状の平面視形状をなす部分として、左右方向内側から順に、左右方向に沿う後側平面部92c、後側平面部92cの左右外側の端部から前側に傾斜状に形成された傾斜面部92d、および傾斜面部92dの前側の端部から左右方向に沿って左右方向外側に向かう前側平面部92eを有する。
【0088】
短辺部92bは、平面視でクランク状の屈曲形状を有する。短辺部92bは、平面視でクランク状をなす部分として、後側から順に、前後方向に沿う後側縦面部92f、後側縦面部92fの前側の端部から左右外側に直角状に屈曲形成された横面部92g、および横面部92gの左右外側の端部から前側に直角状に屈曲形成された前側縦面部92hを有する。
【0089】
長辺部92aの前側平面部92eと、短辺部92bの後側縦面部92fとにより、アングル部材92における略「L」字状における直角状の角部が形成されている。アングル部材92は、この直角状の角部を後側支柱63の後側かつ左右外側の角部の外側に沿わせ、ボルト93によって後側支柱63に固定されている。ボルト93は、前側平面部92eを貫通するとともに後側支柱63の後面部63bに形成されたネジ孔63dに螺挿されている。本実施形態では、後側支柱63に対するボルト93によるアングル部材92の固定部は、左右2箇所に設けられている。
【0090】
そして、アングル部材92の前側縦面部92hに、カバー固定ボルト94により、カバー14の右側面部83が固定されている。カバー固定ボルト94は、カバー14の右側面部83に形成された孔部83aを貫通するとともに、前側縦面部92hに形成されたネジ孔92jに螺挿されている。なお、支持部12の左側においても同様に、左側の後側支柱62に対し、ボルト93によってアングル部材92が固定され、前側縦面部92hに対し、カバー固定ボルト94によってカバー14の左側面部82が固定されている。
【0091】
以上のようにアングル部材92を介した支持フレーム13に対するカバー14の固定部は、左右の後側支柱62,63の上端部、上下中間部、および下部の3箇所ずつ、計6箇所に設けられている。ただし、アングル部材92を用いた固定部の配設位置や数は特に限定されるものではない。
【0092】
また、アングル部材92は、トイレ3の側壁6に対する支持フレーム13の支持に用いられてもよい。具体的には、
図26に示すように、アングル部材92の後側平面部92cが、壁固定ボルト95等により、側壁6に固定されている。壁固定ボルト95は、後側平面部92cに形成された孔部92kを貫通し、側壁6にねじ込まれている。壁固定ボルト95は、例えば、側壁6をなすボードに対するボードアンカーである。このように、支持フレーム13は、アングル部材92を介して壁固定ボルト95によって側壁6に対して6箇所で固定支持されている。また、アングル部材92は、緩衝材としても機能する。例えば、左右の後側支柱62,63が撓んだ場合において、アングル部材92は、平面視で略「Z」状をなす長辺部92aをバネとして機能させ、後側支柱62,63の撓みを吸収する。
【0093】
また、支持フレーム13とカバー14との間において、前側支柱61とカバー14の稜線部86との間には、金具である当て部材96が設けられている。当て部材96は、平面視で所定の形状をなす矩形板状の部材であり、左右の中間部を前側に凸の湾曲面部96aとし、左右両側の端部を平面状の固定面部96bとしている。湾曲面部96aは、平面視で略90°の角度範囲の円弧状をなす曲面部であり、左右の固定面部96bに対してこれと直角状をなす段差面部96cを介して前側に膨出状に突出形成されている。
【0094】
当て部材96は、
図20に示すように、左右の固定面部96bを、それぞれ前側支柱61の左右の前側の傾斜面部61c,61dに前側から沿わせ、ボルト97によって固定されている。ボルト97は、固定面部96bに形成された孔部を貫通するとともに、傾斜面部61c,61dに形成されたネジ孔61eに螺挿されている。当て部材96は、平面視において、湾曲面部96aにより、左右の前側の傾斜面部61c,61dそれぞれの前側の略半分の範囲で前側支柱61を覆っている。
【0095】
このように前側支柱61の前側に固定された当て部材96は、湾曲面部96aの前側面96dを、カバー14の稜線部86をなす湾曲面部87の内周面87aに接触させている。当て部材96は、前側支柱61の上端部、上下中間部、および下部の3箇所に設けられている。ただし、当て部材96の配設位置や数は特に限定されるものではない。
【0096】
以上のような構成を備えた手摺装置1の使用態様の例について、
図23を用いて説明する。
図23Aおよび
図23Bに示すように、手摺装置1は、車椅子100を使用する被介助者である使用者101が、車椅子100から洋風便器2に移乗するときに用いられる。
【0097】
図23Aに示すように、使用者101が車椅子100から洋風便器2に移乗する際は、洋風便器2と手摺本体部11との間に車椅子100が進入するためのスペースを確保するため、手摺本体部11の支持アーム部21は、前側(側壁6側)寄りの回動位置に位置している。車椅子100に乗っている使用者101は、洋風便器2の前に車椅子100を寄せ、支持アーム部21のボード部24につかまる。使用者101は、ボード部24につかまりながら前傾姿勢となり、車椅子100から立ち上がる。
【0098】
図23Bに示すように、車椅子100から立ち上がった使用者101、または介助者は、操作部40の把持部40aの操作によってロック機構のロックを解除することで、支持アーム部21を回動可能な状態とし、支持アーム部21の回動動作をともなって(矢印C1参照)、ボード部24を持ちながら後方に移動し、洋風便器2の便座2bに着座する。使用者101、または介助者が把持部40aから手を離すことで、支持アーム部21の回動動作はロック機構によって自動的にロックされる。車椅子100から洋風便器2への移乗において、使用者101は、介助者のサポートを適宜受けながら、立上り動作や座り動作、脱衣の動作等を行う。なお、洋風便器2から車椅子100への移乗は、車椅子100から洋風便器2への移乗と概ね逆の手順により、手摺装置1が用いられて行われる。
【0099】
また、
図23Cに示すように、手摺装置1は、便座着座時の座位保持の補助のために使用される。使用者101が洋風便器2に着座している状態において、手摺装置1は、支持アーム部21を壁面6aに対して垂直方向に沿わせた基準状態となり、使用者101の座位を保持する。すなわち、洋風便器2に着座している使用者101がボード部24を持つことで、使用者101の座位位置が保持される。ここで、使用者101は、ボード部24を持つことで前傾姿勢をとることができ、これによって使用者101の排便が促される。なお、手摺装置1は、車椅子の使用者に限らず、例えば歩行器の使用者や杖の使用者の場合にも適宜利用される。
【0100】
以上のように、本実施形態の手摺装置1において、手摺本体部11は、使用者101の荷重が作用する部分となり、かかる部分を支持する支持部12を構成する支持フレーム13が、アンカーボルト75によって床4に固定されて床面4a上に設置されている。これにより、手摺装置1は、床4で荷重を受ける構成を備えている。また、手摺装置1は、車椅子100と洋風便器2との間の移乗や使用者101の便座着座時の座位保持を行うために、洋風便器2に対してある程度近い位置に設置される必要がある一方で、手摺本体部11を支持する支持部12が使用者101の移乗等の妨げにならないように、支持部12と洋風便器2との間に使用者101の移乗等のためのスペースを確保する必要がある。このため、手摺装置1は、支持部12をトイレ3の壁面6aに沿わせるように配置されている。
【0101】
このように支持部12を壁面6aに沿わせるように配置した構成においては、手摺本体部11に使用者101の体重等の荷重が作用することで、支持フレーム13に撓みが生じる。支持フレーム13が撓むことにより、支持部12と壁面6aとの間に隙間が生じることになる。この隙間は、使用者101や介助者の衣服等を挟んだり、カバー14内に水や埃を入り込ませたりする原因となり得る。
【0102】
そこで、本実施形態の手摺装置1において、支持部12には、手摺本体部11に作用する荷重によって支持フレーム13が撓むことで壁面6aとカバー14との間に隙間が生じることを防止する隙間発生防止手段が設けられている。すなわち、手摺装置1において、例えば、使用者101がボード部24につかまることで、手摺本体部11に下向きの荷重が作用する(
図7、矢印D1参照)。これにより、手摺本体部11を支持するとともに床4に固定された支持フレーム13は、壁面6aから離れる向きに撓むことになり、これにともない、支持フレーム13に固定されたカバー14も、壁面6aから離れる方向に移動する(傾く)ことになる(
図7、矢印D2参照)。本実施形態に係る隙間発生防止手段は、カバー14が壁面6aから離れた場合に、カバー14と壁面6aとの間に隙間が発生することを防止するための構成である。
【0103】
本実施形態に係る隙間発生防止手段は、カバー14に取り付けられるとともに側壁6の壁面6aに固定される係合部材としての係合フレーム部材110を有する。係合フレーム部材110は、トイレ3の壁である側壁6に設けられ、カバー14の壁側の縁部である後縁部に係合するとともに、支持フレーム13の撓みにともなうカバー14の移動を許容する。
【0104】
係合フレーム部材110は、カバー14の後側の開放部をなす上面部81、左側面部82および右側面部83の後縁部に沿うように設けられている。すなわち、係合フレーム部材110は、上面部81の後縁部に沿う横フレーム部111と、左側面部82の後縁部に沿う左側の縦フレーム部112と、右側面部83の後縁部に沿う右側の縦フレーム部113とを有し、全体として下側を開放側とした略「コ」字状の枠形状を有する。
【0105】
横フレーム部111について、
図24および
図25を用いて説明する。横フレーム部111は、略「L」状の横断面形状をなす直線状の部材により構成されており、カバー14の上面部81の後縁部81bの左右方向の寸法と略同じ長さを有する。横フレーム部111は、略「L」状の横断面形状をなす部分として、カバー14の上面部81の後縁部81bを受け入れる水平面状の横係合面部121と、横係合面部121の後端部から下方に向けて形成された鉛直面状の横固定面部122とを有する。
【0106】
横係合面部121は、互いに平行な上下一対の水平面部121a,121bを有する。横係合面部121は、上下の水平面部121a,121bと、横固定面部122の上部とにより、前側を開放側として正面視で左右方向に延びたスリット状の開口をなす横方向溝部124を形成している。
【0107】
横係合面部121は、横方向溝部124内に、カバー14の上面部81の後縁部81bを差し込ませている。横方向溝部124の上下方向の寸法、つまり上下の水平面部121a,121b間の間隔は、上面部81の板厚と略同一あるいは同板厚よりも大きく、上面部81と横フレーム部111との前後方向の相対的なスライド移動が可能となっている。なお、横方向溝部124を形成する下側の水平面部121bは、横係合面部121において左右両端部を除いた中間部分に設けられている(
図22参照)。
【0108】
このように、横フレーム部111は、横係合面部121の横方向溝部124内にカバー14の上面部81の後縁部81bを差し込ませた状態で、上面部81に対して前後方向にスライド状に相対移動可能に設けられている。
【0109】
本実施形態では、横係合面部121は、上面部81のうち、前後方向に沿う左右縁部をなす後部の矩形状の領域部分の後側の略1/4の部分を、後縁部81bとして横方向溝部124内に位置させている。手摺本体部11に作用する荷重等によって支持フレーム13が撓んでいない状態(以下「通常状態」という。)の手摺装置1において、上面部81の後端面81cは、前後方向について横方向溝部124の中間部に位置し、上面部81の後端面81cとこれに対向する横方向溝部124の底面124aとの間に間隔126が存在している。
【0110】
横固定面部122は、前後方向を板厚方向とする幅狭の板状部分であり、その幅寸法(上下方向の寸法)を、横係合面部121の幅寸法(前後方向の寸法)の1/3~1/2程度としている。横固定面部122は、鉛直状の平面である後面122aを有する。また、横フレーム部111は、横方向溝部124の左右両端側を塞ぐとともに横フレーム部111の左右両側において矩形状の端面をなす左右の側面部127,127を有する。
【0111】
縦フレーム部112,113について、
図26および
図27を用いて説明する。左右の縦フレーム部112,113は、それぞれ対応するカバー14の面部の後縁部を受け入れる構成や横断面形状等の概略的な構成については、横フレーム部111と共通の構成を備える。一方、カバー14に対する縦フレーム部112,113の係合部分は、縦フレーム部112,113とカバー14との係止構造を有する点で、カバー14に対する横フレーム部111の係合部分と異なる。左右の縦フレーム部112,113は、カバー14の構成とともに左右対称に構成されているため、主に右側の縦フレーム部113のカバー14に対する係合部分について説明し、対応する構成については同一の符号を付す。
【0112】
縦フレーム部113は、略「L」状の横断面形状をなす直線状の部材により構成されており、カバー14の右側面部83の上下方向の寸法と略同じ長さを有する。縦フレーム部113の下端は、パッキン88の直上に位置している。縦フレーム部113は、略「L」状の横断面形状をなす部分として、カバー14の右側面部83の後縁部83b(左側の縦フレーム部112においては左側面部82の後縁部)を受け入れる鉛直面状の縦係合面部131と、縦係合面部131の後端部から左右内方に向けて形成された鉛直面状の縦固定面部132とを有する。
【0113】
縦係合面部131は、互いに平行な左右一対の鉛直面部131a,131bと、鉛直状の前面部131cとを有する。前面部131cは、左右内側の鉛直面部131bと直角状の角部をなし、左右外側の鉛直面部131aの前端部とともに、正面視で上下方向に延びたスリット状の開口部133を形成している。
【0114】
開口部133は、縦係合面部131において左右の鉛直面部131a,131bと、縦固定面部132の左右外側の縁部とにより形成された縦方向溝部134の前側の開口部となる。前面部131cの左右外側の端面と、左右外側の鉛直面部131aの前縁部の左右内側面との間に、開口部133をなす隙間が形成されている。開口部133の隙間寸法は、縦方向溝部134の左右方向の寸法、つまり左右の鉛直面部131a,131b間の間隔よりも小さくなっている。
【0115】
縦係合面部131は、縦方向溝部134内に、カバー14の右側面部83の後縁部83bを差し込ませている。右側面部83の後縁部83bには、右側面部83の厚さを部分的に厚くした係止部135が形成されている。係止部135は、右側面部83の他の部分の約2倍程度の厚さで左右内側に突出する態様で、右側面部83の後端部において矩形状の横断面形状をなすように形成されている。なお、左側面部82においても、右側面部83と左右対称に係止部135が形成されている。
【0116】
開口部133の隙間寸法は、カバー14の右側面部83の板厚と略同一あるいは同板厚よりも大きい。また、縦方向溝部134の左右方向の寸法は、係止部135の板厚(左右方向の寸法)と略同一あるいは同板厚よりも大きい。これにより、右側面部83と縦フレーム部113との前後方向の相対的なスライド移動が可能となっている。また、係止部135の板厚は、開口部133の隙間寸法よりも大きくなっている。これにより、縦フレーム部113のカバー14に対する相対的な後方移動については、前面部131cの後面に係止部135が接触することで、縦フレーム部113がカバー14に係止され、縦フレーム部113に対する右側面部83の抜けが規制される。
【0117】
このように、縦フレーム部113は、縦係合面部131の縦方向溝部134内にカバー14の右側面部83の後縁部83bを差し込ませた状態で、右側面部83に対して前後方向にスライド状に相対移動可能に設けられている。そして、縦フレーム部113は、開口部133を介して縦方向溝部134内に右側面部83の係止部135を位置させた構成により、カバー14に対する係止構造をなしている。なお、縦フレーム部113を右側面部83に係合させる際は、例えば、縦フレーム部113の弾性変形を利用して一時的に広げられた開口部133を介して、係止部135が縦方向溝部134内に入れられる。
【0118】
本実施形態では、縦係合面部131は、右側面部83の後側の略1/4の部分を、後縁部83bとして縦方向溝部134内に位置させている。通常状態の手摺装置1において、右側面部83の後端面83cは、前後方向について縦方向溝部134の中間部に位置し、右側面部83の後端面83cとこれに対向する縦方向溝部134の底面134aとの間に間隔136が存在している。
【0119】
縦固定面部132は、前後方向を板厚方向とする幅狭の板状部分であり、その幅寸法(左右方向の寸法)を、縦係合面部131の幅寸法(前後方向の寸法)の略1/2としている。縦固定面部132は、鉛直状の平面である後面132aを有する。また、縦フレーム部112,113を構成する直線状の部材は、一定の横断面形状を有し、両端側において縦方向溝部134を開口させている。
【0120】
以上のように、係合フレーム部材110は、カバー14の後縁部に沿って伸延した凹状の溝部を有し、この溝部内に、カバー14の後縁部を収容するように構成されている。すなわち、係合フレーム部材110は、横フレーム部111において、カバー14の上面部81の後縁部81bに沿って左右方向に伸延した凹状の横方向溝部124を有し、横方向溝部124内に、上面部81の後縁部81bを収容し、縦フレーム部112,113において、カバー14の左側面部82、右側面部83の後縁部82b,83bに沿って上下方向に伸延した凹状の縦方向溝部134を有し、縦方向溝部134内に、左側面部82、右側面部83の後縁部82b,83bを収容している。
【0121】
このように、係合フレーム部材110は、カバー14の後縁部を収容した状態で、カバー14に対して前後方向にスライド状に相対移動可能に取り付けられる。係合フレーム部材110は、カバー14に取り付けられた状態で、横フレーム部111の上側の水平面部121aを、カバー14の外側となる上面部81の後縁部81bの上側に位置させており、左右の縦フレーム部112,113の左右外側の鉛直面部131aを、カバー14の外側となる左側面部82、右側面部83の後縁部82b,83bの左右外側に位置させている。
【0122】
係合フレーム部材110において、横フレーム部111の左右両端部と、左右の縦フレーム部112,113それぞれの上端部とは、面一状の後面110aをなすように繋がっている。つまり、係合フレーム部材110の後面110aは、横フレーム部111の横固定面部122の後面122aと、左右の縦フレーム部112,113の縦固定面部132の後面132aとにより、係合フレーム部材110の略「コ」字状のフレーム形状に沿って連続した鉛直状の平面として形成されている。係合フレーム部材110の後面110aが、側壁6に対する係合フレーム部材110の固定面となる。
【0123】
係合フレーム部材110は、後面110aを全面的に壁面6aに接触させた状態で、側壁6に固定されている。本実施形態では、
図24および
図26に示すように、係合フレーム部材110は、シート状の接着部材である両面テープ140により側壁6に固定されている。両面テープ140は、係合フレーム部材110の後面110aと、壁面6aとの間に介在し、係合フレーム部材110を側壁6に接着固定している。両面テープ140は、係合フレーム部材110の後面110aに対して全体的にあるいは部分的に設けられる。
【0124】
なお、係合フレーム部材110を側壁6に固定する方法は、両面テープ140を用いた方法に限定されず、例えば接着剤やネジ等の固定具を用いた方法等であってもよい。ただし、本実施形態のように両面テープ140のようなシート状の接着部材を用いた方法によれば、簡易な作業によって確実に係合フレーム部材110を側壁6に固定することができる。
【0125】
本実施形態に係る手摺装置1の設置手順の一例について説明する。まず、手摺本体部11から、ボード部24を含む支持アーム部21の前部と上下の化粧カバー59とが外された状態のものが、固定ボルト77によって支持フレーム13に固定され、上下の化粧カバー59が取り付けられる。次に、手摺本体部11の一部を支持した状態の支持フレーム13が、トイレ3内における所定の設置位置において、アンカーボルト75によって床4に固定される。また、支持フレーム13は、アングル部材92において壁固定ボルト95により側壁6に固定される。
【0126】
次に、手摺本体部11の一部を支持した状態の支持フレーム13にカバー14が固定される。ここで、カバー14の開口窓89を介して、手摺本体部11の一部(支持アーム部21の後部)が前方に突出する。また、カバー14には、あらかじめ係合フレーム部材110が係合した状態となっており、さらに、両面テープ140も係合フレーム部材110の後面110aにあらかじめ貼着されている。これにより、支持フレーム13に対するカバー14の取付けとともに、カバー14に係合した状態の係合フレーム部材110が、両面テープ140によって壁面6aに固定される。そして、手摺本体部11の開口窓89から前方に突出した部分に対して、ボード部24を含む支持アーム部21の前部が取り付けられる。
【0127】
以上のように洋風便器2に対して設置される手摺装置1は、トイレ3内において、洋風便器2の先端と手摺本体部11の左右方向の中心位置との間の前後方向の寸法が例えば150mm程度となるように設けられる。また、手摺装置1は、ボード部24の上面を、洋風便器2の便座2bの上面から例えば250mm程度の高さに位置させるように設けられる。
【0128】
本実施形態に係る手摺装置1における係合フレーム部材110の動作について、
図28を用いて説明する。
図28は、係合フレーム部材110の右側の縦フレーム部113の平面断面図を示している。
【0129】
図28Aは、手摺装置1が通常状態である場合を示している。この場合、
図28Aに示すように、通常状態の手摺装置1において、係止部135は、前後方向について縦方向溝部134内における略中央部に位置している。
【0130】
図28Bは、使用者がボード部24に寄りかかること等によりボード部24に下向きの荷重が作用し、支持フレーム13が前傾状に撓んだ状態となった場合を示している(
図7、矢印D1,D2参照)。この場合、
図28Bに示すように、カバー14が支持フレーム13とともに前傾状となるため、係止部135は、縦方向溝部134内において略中央部から前方に移動する(矢印F1参照)。
【0131】
図28Cは、使用者がボード部24を引っ張る態様でつかまること等によりボード部24に上向きの荷重が作用し、支持フレーム13が後傾状に撓んだ状態となった場合を示している。この場合、
図28Cに示すように、カバー14が支持フレーム13とともに後傾状となるため、係止部135は、縦方向溝部134内において略中央部から後方に移動する(矢印F2参照)。
【0132】
以上のように支持フレーム13の前後方向の撓み変形にともなって係止部135が縦方向溝部134内を前後方向に移動する構成において、手摺装置1の通常使用の範囲で支持フレーム13の撓み量について想定される範囲内で、係止部135が縦方向溝部134の前面(前面部131cの後面)および後面(底面134a)のいずれにも接触しないように構成されている。これにより、支持フレーム13の撓み変形にともなってカバー14から係合フレーム部材110に対して前後方向の力が作用することが抑制される。
【0133】
また、図示は省略するが、横フレーム部111においては、支持フレーム13の前後の撓みにともない、上面部81の後縁部81bが、横方向溝部124内を前後に移動する。そして、係合フレーム部材110は、横フレーム部111において、支持フレーム13の撓み量について想定される範囲内で、横方向溝部124に対する上面部81の後縁部81bの挿入状態が保持されるように構成されている。なお、支持フレーム13が前傾状に撓む場合の支持部12の(カバー14の)壁面6aに対する最大の移動量は、例えば、支持部12の上端位置において2~3mm程度となる。
【0134】
以上説明した本実施形態に係る手摺装置1によれば、設置のための施工を容易とすることができるとともに、手摺本体部11に作用する荷重によって、手摺本体部11を支持する支持部12が撓むことによる支持部12と側壁6との間の隙間の発生を防止することができる。
【0135】
すなわち、本実施形態の手摺装置1は、手摺本体部11を支持する支持フレーム13を床面4aに固定し、手摺本体部11に作用する荷重を床面4aで受ける構成のものである。このため、手摺装置1によれば、手摺本体部を壁に支持する構成の場合と比べて、壁に補強構造を組み込んだり建築物側の構造を一旦壊したりする必要がなく、設置のための施工の負担を小さくすることができ、施工時間を短くすることができる。
【0136】
また、手摺装置1は、支持部12において隙間発生防止手段を有するため、手摺本体部11に使用者の体重等の荷重が作用することで支持部12に撓みが生じた場合において、支持部12と壁面6aとの間に隙間が生じることを防止ないし抑制することができる。特に、隙間発生防止手段によれば、支持フレーム13の撓み変形にともなう壁面6aに対するカバー14のズレが許容されながら、カバー14と壁面6aとの間の隙間の発生が防止ないし抑制される。
【0137】
これにより、例えば、使用者が壁面6aからカバー14伝いに体を寄りかからせながら移動した際に、使用者や介助者の衣服等がカバー14と壁面6aとの間の隙間に挟まってしまうことを防止ないし抑制することができる。また、カバー14と壁面6aとの間の隙間からカバー14内に水(尿なども含む)や埃が入り込むことを防止ないし抑制することができる。
【0138】
また、手摺装置1において、カバー14は、支持フレーム13に固定されており、隙間発生防止手段は、側壁6側に固定される部分であってカバー14の後縁部に係合するとともに支持フレーム13の撓みにともなうカバー14の移動を許容する係合フレーム部材110を有する。このような構成によれば、カバー14を側壁6に固定する必要をなくすことができるため、良好な施工性を得ることができる。つまり、カバー14と壁面6aとの間の隙間の発生を防止することができつつ、手摺装置1の設置作業における施工性を向上することができる。
【0139】
また、手摺装置1において、係合フレーム部材110は、カバー14の後縁部に沿って伸延した凹状の溝部として、横方向溝部124および縦方向溝部134を有し、これらの溝部内に、カバー14の各面部の後縁部を収容するように構成されている。このような構成によれば、単純な構成により、隙間発生防止手段を実現することができ、カバー14と壁面6aとの間に隙間が発生することを防止することができる。
【0140】
特に、本実施形態の係合フレーム部材110は、左右の縦フレーム部112,113において、カバー14との間の係止構造を有する。このような構成によれば、横方向溝部124および縦方向溝部134からカバー14の後縁部が抜けることを防止することができるので、カバー14に対する係合フレーム部材110の係合状態を保持することができ、カバー14と壁面6aとの間の隙間の発生を効果的に防止することができる。
【0141】
また、係合フレーム部材110の係止構造は、支持フレーム13の撓み量について想定される範囲内で、係止部135が縦係合面部131に対して係止状態とならないように、つまり、縦方向溝部134内において係止部135の前側および後側に常時空間が確保されるように構成されている。このような構成によれば、支持フレーム13が撓み変形した際、係止部135を介して係合フレーム部材110に前後方向の力が作用することを抑制することができる。これにより、係合フレーム部材110が係止部135により引っ張られることで壁面6aから外れたり、係合フレーム部材110が係止部135により押されることで係合フレーム部材110やカバー14に変形が生じたりすることを抑制することができる。
【0142】
なお、係合フレーム部材110のカバー14に対する係止構造に関し、係止部135は、カバー14の左側面部82、右側面部83それぞれの後縁部において上下方向について連続して全体的に形成されてもよいし部分的に形成されてもよい。また、係合フレーム部材110の係止構造は、横フレーム部111に設けられてもよい。この場合、上面部81の後縁部81bおよびこれに係合する横フレーム部111が、左側面部82、右側面部83の後縁部およびこれらに係合する縦フレーム部112,113と同様の横断面形状をなすように構成される。係合フレーム部材110の係止構造は、横フレーム部111および縦フレーム部112,113の少なくともいずれか一方に設けられればよい。
【0143】
以上のような構成を備えた本実施形態の手摺装置1のように支持部12を壁面6aに沿わせるように配置した構成においては、手摺本体部11につかまった使用者は、車椅子と洋風便器2との間の移乗の際などにおいて、体を壁面6aに沿わせながら移動する場合がある。つまり、使用者は、車椅子と洋風便器2との間を移動する際など、手摺本体部11につかまりながら、支持部12が沿う壁面6aに体をあずけた状態で移動する場合がある。このような場合、支持部12の形状によっては、壁面6aに沿うように設置された支持部12に使用者の体が引っかかり、支持部12によって使用者の移動が妨げられるおそれがある。
【0144】
そこで、本実施形態の手摺装置1において、支持部12の洋風便器2側には、上面視(平面視)で壁面6aに垂直な方向に対して傾斜状の直線に沿う面取部300が設けられている。
図29に示すように、手摺装置1において、支持部12の洋風便器2側は左側であり、支持部12の左側に、面取部300が設けられている。なお、手摺装置1の左側は、トイレ3においては後側となる。
【0145】
図29に示すように、面取部300は、壁面6aに垂直な方向、つまり手摺装置1の前後方向に対して傾斜状の直線L1に沿う部分となる。前後方向に対する直線L1の傾斜角度α1は、約45°である。面取部300は、略五角形状に沿う横断面での外形範囲を上下方向の略全体について略一定として五角柱状の外形に沿う支持部12において、二点鎖線で示すように平面視で直角をなす仮想角部301の角形状に対する面取状の部分として形成されている。仮想角部301は、手摺装置1の前後・左右方向に沿う直角の角部であり、支持部12の高さ方向に沿う稜線部を形成する部分となる。なお、直線L1の傾斜角度α1の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、手摺装置1と洋風便器2との間の距離等に応じて30~60°の範囲内の角度で設定される。
【0146】
面取部300は、上面視で壁面6aに垂直な方向(前後方向)に対して傾斜状の直線L1に沿う傾斜面302を有する。本実施形態では、支持部12の外形をなすカバー14の左傾斜面部84の表面84aが、面取部300の傾斜面302となる。すなわち、支持フレーム13の外形に対応して複数の面部によって五角柱状の外形に沿うように構成されたカバー14において、左前側の面部である左傾斜面部84により、支持部12の左側に、仮想角部301に対する面取部300が形成されており、左傾斜面部84の表面84aが傾斜面302となる。
【0147】
面取部300は、支持部12において、前後方向について前側(手摺本体部11側)の半分以上の範囲で設けられる。本実施形態では、支持部12の表面部を構成するカバー14の左側において、前後方向について、後側の約1/3の範囲が、平面視で前後方向に沿う左側面部82となっており、前側の約2/3の範囲が、面取部300を形成する傾斜面302をなす左傾斜面部84となっている。
【0148】
また、面取部300は、上下方向について支持部12の下端から手摺本体部11の近傍の部位まで連続して形成されている。本実施形態では、面取部300は、支持部12の高さ方向について全体的に設けられている。すなわち、略五角形状に沿う横断面での外形範囲を略全体的に略一定として五角柱状の外形に沿う支持部12において、その外形をなすカバー14の左傾斜面部84により、支持部12の高さ方向の略全体にわたって面取部300が形成されている。
【0149】
また、支持部12は、全体として略左右対称に構成されている。このため、支持部12においては、左側の面取部300と同様の観点で右側にも面取部310が設けられている。すなわち、
図29に示すように、面取部310は、壁面6aに垂直な方向に対して約45°の傾斜角度α2をなす傾斜状の直線L2に沿う部分となり、五角柱状の外形に沿う支持部12において、二点鎖線で示すように平面視で直角をなす仮想角部311の角形状に対する面取状の部分として形成されている。仮想角部311は、手摺装置1の前後・左右方向に沿う直角の角部であり、支持部12の高さ方向に沿う稜線部を形成する部分となる。
【0150】
そして、右側の面取部310は、左側の面取部300と左右対称的に、カバー14の右傾斜面部85の表面85aを、傾斜状の直線L2に沿う傾斜面312としており、また、前後方向について、カバー14の前側の約2/3の範囲を、面取部310を形成する傾斜面312をなす右傾斜面部85としている。また、面取部310は、支持部12の外形をなすカバー14の右傾斜面部85により、支持部12の高さ方向の略全体にわたって形成されている。
【0151】
このように、本実施形態の手摺装置1において、面取部は、支持部12の洋風便器2側と反対側である右側にも設けられている。そして、支持部12は、左側および右側のそれぞれに面取部300,310を設けた部分について、上面視で壁面6aに沿う方向に対称的な形状を有する。つまり、左右の面取部300,310は、支持部12において左右方向に対称な形状をなすように設けられている。これにより、支持部12は、平面視において、左右の面取部300,310を形成する前側の部分について、前側を頂点側とする二等辺三角形状に沿う形状を有する。
【0152】
また、本実施形態の手摺装置1において、支持部12は、壁面6aに沿うように配置された支持フレーム13と、支持フレーム13を覆うカバー14とを有し、面取部300,310の傾斜面302,312は、それぞれカバー14に形成されている。すなわち、左側の面取部300の傾斜面302は、カバー14の左傾斜面部84の表面84aとして形成されており、右側の面取部310の傾斜面312は、カバー14の右傾斜面部85の表面85aとして形成されている。
【0153】
以上説明した本実施形態に係る手摺装置1によれば、設置のための施工を容易とすることができるとともに、使用者が手摺本体部11につかまった状態で支持部12に引っかかることなくスムーズに移動することができる。
【0154】
手摺装置1は、手摺本体部11のボード部24が洋風便器2の使用者のサポートに用いられることから、洋風便器2に対してある程度近い位置に設置される必要がある。しかし、支持部12が、例えば洋風便器2側において
図29に示す仮想角部301をなすような張り出した外形を有する場合、使用者は、車椅子と洋風便器2の間の移乗等の際、支持部12の角部に引っかかる等して支持部12の角部が邪魔になり、使用者の移動が妨げられることが考えられる。
【0155】
そこで、本実施形態の手摺装置1のように、支持部12の洋風便器2側の部分に面取部300が設けられていることにより、使用者は、手摺本体部11につかまりながら車椅子と洋風便器2の間の移乗を行ったり洋風便器2から立ち上がったりする際、面取部300の形状に沿って移動することができるようになる。これにより、使用者は、手摺装置1によって体を支持されながら、支持部12に体を引っかけることなくスムーズに移動することが可能となる。つまり、支持部12が面取部300を有することで、洋風便器2と支持部12との間を通り抜ける移動がしやすくなる。
図30Aに、使用者101が洋風便器2側(左側)の面取部300に寄りかかった状態の一例を示している。また、
図30Bに、使用者101が洋風便器2側と反対側(右側)の面取部310に寄りかかった状態の一例を示している。
【0156】
また、使用者が洋風便器2に着座した状態においても、支持部12が足回りの邪魔になることがなくなる。また、使用者は、手摺本体部11につかまった状態で、カバー14の面取部300をなす部分に寄りかかることができるので、使用者の移動時の負担を軽減することができる。
【0157】
このようにカバー14の面取部300をなす部分を使用者が寄りかかる部分として用いる観点から、カバー14において、少なくとも面取部300,310をなす左傾斜面部84、右傾斜面部85の表面には、滑り性を良くするめの表面処理(シートの貼着けやコーティング等)を施したり、膝当て等として機能するクッション性のある部材を設けたりすることができる。
【0158】
また、支持部12が面取部300を有することにより、例えば使用者が支持部12側に倒れかかった際、支持部12が仮想角部301をなすような張り出した外形を有する場合と比べて、使用者が支持部12にぶつかって怪我をすることを防ぐことができる。このように、支持部12が面取部300を有する構成によれば、使用者に対する高い安全性を得ることができる。
【0159】
また、支持部12が面取部300を有することにより、支持部12が仮想角部301をなすような張り出した外形を有する場合と比べて、洋風便器2と支持部12との間を介した側壁6へのアプローチ性を向上することができる。これにより、一般的にトイレ3において洋風便器2の近傍の側壁6等に設けられる手摺や紙巻器の使用をしやすくすることができ、また、同じく洋風便器2の近傍の側壁6等に設けられるプラグの差込み口(コンセント)に対する抜き差し作業を容易に行うことができる。また、洋風便器2と支持部12との間を介したトイレ3の隅部のスペースの掃除をしやすくすることができる。さらに、支持部12が面取部300を有することにより、支持部12が仮想角部301をなすような張り出した外形を有する場合と比べて、トイレ3内のスペースを有効活用することができる。
【0160】
また、手摺装置1において、面取部300,310は、上面視で壁面6aに垂直な方向に対して傾斜状の直線に沿う傾斜面302,312を有する。このような構成によれば、例えば、面取部300が平面視で湾曲形状に沿う部分である場合(
図31参照)等との比較において、支持部12をコンパクトに構成することができる。これにより、トイレ3内のスペースをより有効に活用することができるとともに、使用者は、洋風便器2の周りにおいて、支持部12に妨げられることなくよりスムーズに移動することが可能となる。
【0161】
また、手摺装置1において、面取部300は、上下方向について支持部12の全体にわたって連続して形成されている。このような構成によれば、手摺本体部11によって視認しにくくなる使用者の下肢を、面取部300の傾斜面に沿ってスムーズに移動させることができる。また、支持部12の面取部300の平面視形状に応じて床面4aも露出することになるので、支持部12付近の清掃性を向上させることができる。すなわち、支持部12は床面4aに固定状態で設置されており移動させることができないため、支持部12の洋風便器2側はスペースが比較的狭く清掃がしにくいが、支持部12の高さ方向の全体にわたって面取部300を設けることにより、その分スペースを広げることができるので、良好な清掃性を得ることができる。
【0162】
支持部12における面取部300の上下方向の形成範囲については、上述のとおりスムーズな移動を可能としたり清掃性を向上したりする観点からは、面取部300は、少なくとも支持部12の下端から手摺本体部11の近傍の部位まで連続して形成されていればよい。ここで、手摺本体部11の近傍の部位は、支持部12において手摺本体部11が突出するカバー14の開口窓89の形成部位である。つまり、面取部300は、上下方向について、少なくとも支持部12の下端から手摺本体部11の突出部位の高さ位置までの範囲で形成されていればよい。
【0163】
また、手摺装置1において、支持部12の洋風便器2側と反対側にも面取部310が設けられている。このような構成によれば、トイレ3における手摺装置1の取付け態様について、洋風便器2に対する左右の側壁のいずれに対する取付け態様の場合にも対応することができる。すなわち、トイレ3内において手摺装置1を上述した実施形態とは逆に洋風便器2の右方の側壁に対して設けた構成においても、上述したような面取部300による作用効果を得ることができる。手摺装置1が洋風便器2の右方の側壁に対して設けられた場合、支持部12の右側が洋風便器2側となり、右側の面取部310が主に上述したような作用効果を奏することになる。本実施形態では、支持部12の全体的な左右対称構造により、左右両側に面取部300,310を設けた構成が実現されている。
【0164】
また、手摺装置1において、支持部12は、支持フレーム13とこれを覆うカバー14とを有し、カバー14に面取部300,310の傾斜面302,312が形成されている。このような構成によれば、使用者の体が支持フレーム13に直接触れることを防止することができるので、使用者が支持部12に体を沿わせて移動する際の使用者の不快感を抑制することができる。すなわち、支持フレーム13をカバー14で被覆した構成によれば、支持フレーム13の角張った形状を外部に露出させることなく、使用者が接触する部分をカバー14によってフラットな面形状とすることができる。これにより、面取部300,310の傾斜面302,312を支持面として利用した使用者の移動をより快適でスムーズなものとすることが可能となる。さらに、上述のとおりカバー14に表面処理を施すことで、傾斜面302,312を、使用者を接触支持する部分として好ましい部分にすることができる。
【0165】
また、手摺装置1において、手摺本体部11は、支持部12に対して水平方向に回動可能に設けられた支持アーム部21を有する。このような構成によれば、使用者は、面取部300,310の傾斜面302,312に体を沿わせつつ、支持アーム部21のボード部24につかまってこれを回動させながら移動することができるため、使用者の移動をよりスムーズなものとすることができる。すなわち、手摺本体部11が支持アーム部21を有する構成によれば、使用者がつかまる部分を、使用者の移動に連動して移動(回動)させることができるので、面取部300,310の傾斜面302,312を、使用者を支持する面として効果的に利用することができる。
【0166】
(面取部の変形例1)
支持部12が有する面取部の変形例について説明する。この変形例では、
図31に示すように、支持部12が有する面取部320が、平面視で湾曲線に沿う部分として形成されている。
図31に示す例では、面取部320は、平面視で外側を膨出側とした円弧状の湾曲面321を形成している。
【0167】
図31に示す例では、支持部12を構成するカバー14は、その前側かつ左右方向の洋風便器2側(左側)の部分を形成する面部として、平面視で表面を円弧状の湾曲面321とする曲面部322を有する。すなわち、面取部320は、二点鎖線で示すように平面視で直角をなす直角の仮想角部301の角形状に対する面取状の部分として形成されており、曲面部322により、使用者を支持する面となる湾曲面321を形成している。また、
図31に示す例では、支持部12の右側においても、面取部320と左右対称な形状部分として面取部330が設けられている。このように、湾曲面による面取部320,330であっても、上述したような作用効果を得ることができる。
【0168】
(面取部の変形例2)
また、
図32に示すように、支持部12は、面取部300を左右片側に設けた構成であってもよい。この場合、面取部300は、左右方向について、洋風便器2が位置する側に設けられる。
図32に示す例では、支持部12において、左右方向について面取部300が設けられた側と反対側である右側の角部335は、例えば
図29に示す仮想角部311をなすような張り出した角形状を有している。
【0169】
(面取部の変形例3)
また、
図33に示すように、支持部12は、面取部340がなす傾斜面341を壁面6aまで延設した構成であってもよい。すなわち、この変形例では、カバー14は、左側面部82を有することなく、左側の面部を、前後方向の全体にわたって、前後方向に対して傾斜角度α1傾斜した直線L1に沿う傾斜面341を形成する傾斜面部342としている。
【0170】
このような構成によれば、支持部12において、面取部340による傾斜面341を、壁面6aと滑らかに連続するような面とすることができるので、壁面6aに体をあずけた状態で移動する使用者が、壁面6aから滑らかに支持部12の面取部340へと移行することができる。つまり、支持部12の傾斜面341によれば、洋風便器2の周囲において、使用者を寄りかからせる支持面として、壁面6aと傾斜面341とによって連続的な一連の支持面を形成することができ、使用者のよりスムーズな移動が可能となる。また、この変形例の構成によれば、支持部12の面取部340において使用者が寄りかかる支持面について広い面積を確保しやすくなる。なお、この変形例の面取部340についても、支持部12において左右対称に設けてもよい。
【0171】
[手摺装置の第2実施形態]
手摺装置の第2実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、第1実施形態と同一のまたは対応する構成については同一の符号または同一の名称を用いる。本実施形態の手摺装置ユニット400は、
図34に示すように、上述した実施形態の手摺装置1の上側に、格子状の手摺402を設けた構成を備える。手摺402は、手摺装置1のカバー14の上面部81の上側に設置されている。
【0172】
手摺402は、手摺装置1の支持フレーム13を構成する前側支柱61および左右の後側支柱62,63それぞれに対応した位置に設けられた同じ高さの3本の支柱部411,412,413と、支柱部間に水平状に横架された棒状の部分である複数の横桟部414,415とを有し、全体として格子状に構成されている。手摺402は、前側の支柱部411と左側の支柱部412との間に3本の横桟部414を有し、前側の支柱部411と右側の支柱部413との間に3本の横桟部415を有する。
【0173】
手摺402は、全体として左右対称に構成されており、平面視で略「V」字状をなす。左右両側それぞれの3本の横桟部414,415は、上下方向について、支柱部411,412,413の上端部の位置と、支柱部を略三等分する2箇所の位置との3箇所に略等間隔で設けられている。手摺402は、3本の支柱部411,412,413の下端部を、支持部12に対して溶接やボルト締結等によって固定させることで、上面部81上に立設されている。手摺402の上下方向の寸法は、手摺装置1の高さと略同じとなっている。手摺402は、例えば、金属製あるいは樹脂製の一体の部材により構成されている。
【0174】
本実施形態の手摺装置ユニット400によれば、使用者が洋風便器2や車椅子100に対する立ち座りの際に手摺402を把持することで、使用者自身および介助者の負担を軽減することができる。そして、手摺402を設けることで、使用者は手摺402を把持するとともに手摺402に体を沿わせながら移動することができるので、面取部300による支持部12の外観形状と相俟って、洋風便器2および手摺装置1の周囲における使用者のよりスムーズな移動が可能となる。
【0175】
[手摺装置の第3実施形態]
手摺装置の第3実施形態について、
図35から
図42を用いて説明する。本実施形態に係る手摺装置501において、手摺本体部11を支持する支持部512は、トイレ3の床に固定されるとともに手摺本体部11を支持する支持フレーム513と、支持フレーム513を覆うカバー514とを有する。支持部512は、全体的に左右対称に構成されている。支持部512は、手摺本体部11より下側の部分を、平面視で前側を凸側とした略半円形状の外形を有する半円筒状基部520としている。
【0176】
本実施形態に係る支持フレーム513について、
図39から
図41を用いて説明する。なお、
図41は、
図40におけるD-D位置の水平断面図である。
【0177】
支持フレーム513は、半円筒状基部520の平面視形状に沿う略半円形状の平板状の部分であるベース板部560を有する。ベース板部560は、左右方向に沿う背面側の後辺部560aと、前後方向に沿う左右両側の左側辺部560bおよび右側辺部560cと、半円状の湾曲辺部560dとを有する。ベース板部560は、支持部512の底面部を形成している。
【0178】
支持フレーム513は、ベース板部560上に立設された支柱として、ベース板部560の後側の左右両側の直角状の角部に位置する左右の後側支柱62,63を有する。すなわち、本実施形態に係る支持フレーム513は、第1実施形態に係る支持フレーム13との比較において前側支柱61を省略した構成を有する。
【0179】
支持フレーム513において、ベース板部560を貫通するアンカーボルト75による床4に対する固定部は、左右の後側支柱62,63の左右内側の位置と、ベース板部560の前部の左右中央の位置との計3箇所に設けられている。なお、床4に対する支持フレーム513の固定構造は、本実施形態に限定されるものではない。
【0180】
支持フレーム513において、左右の後側支柱62,63間には、前後方向を板厚方向とする鉛直板状の支持背面部568が設けられている。支持背面部568は、前後方向について左右の後側支柱62,63の略中央部に位置し、左右の後側支柱62,63間に架設された態様で設けられている。支持背面部568は、上下方向について、後側支柱62,63の上端近傍の位置から中央位置よりも下側寄りの位置までの範囲にわたる長さを有する。支持背面部568の後側に、上下2本の横フレーム部72,72が設けられている。
【0181】
支持背面部568の左右両端の前側には、左右方向を板厚方向とする鉛直板状の側面部569が設けられている。側面部569は、左右の後側支柱62,63の左右内側の側面62e,63eに沿う後側面部569aと、後側面部569aから前側に向けて延出した前側面部569bとを有する。後側面部569aは、上下方向について、支持背面部568と略同じ長さを有する。前側面部569bは、上下方向について、半円筒状基部520を構成する部分の上部に位置しており、半円筒状基部520の略上半部の範囲にわたる長さを有する。
【0182】
支持フレーム513において、左右の後側支柱62,63の上端部間には、左右方向を長手方向とする略矩形板状の天面部566が設けられている。天面部566は、左右の後側支柱62,63の上端部間から前方に向けて庇状に突出している。天面部566は、前側の縁部を、後側と凸側とした弧状をなす湾曲辺部566aとしている。湾曲辺部566aは、前後方向について、上側の化粧カバー59の横カバー部59aの後部の上方に位置している。
【0183】
本実施形態では、支持背面部568、左右の側面部569、および天面部566は、1枚の鋼板を屈曲成形することによって形成されている。すなわち、支持背面部568と左右の側面部569とは、平面断面視で直角状をなす角部(屈曲部)を形成しており(
図41参照)、支持背面部568と天面部566とは、側面断面視で直角状の角部(屈曲部)を形成している。ただし、支持背面部568、左右の側面部569、および天面部566は、各部をなす別体の板状部材同士を溶接やボルト固定等によって固定した構造であってもよい。
【0184】
支持フレーム513において、半円筒状基部520を構成する部分の上部には、水平板状の部分である中間面部565が設けられている。中間面部565は、ベース板部560と同様に平面視で前側を凸側とした略半円形状を有する。中間面部565は、後方への延出部565aを有し、この延出部565aを、左右の後側支柱62,63間に位置させるとともに、下側の横フレーム部72の下面に対して溶接等によって固定させている。
【0185】
また、中間面部565は、その左右両端部を、左右の側面部569の前側面部569bの上部に対して交差させており、側面部569に対して溶接等によって固定されている。中間面部565および側面部569の交差部分において、中間面部565および側面部569のいずれか一方には、いずれか他方を差し込ませるためのスリット状の切欠部が形成されている。
【0186】
以上のような構成を備えた支持フレーム513に対し、手摺本体部11が、第1実施形態と同様の態様で支持されている。すなわち、手摺本体部11は、回動支持部22の背面板部57(
図13参照)を、支持フレーム513の支持背面部568に前側から合わせた状態で、後側から支持背面部568や背面板部57を貫通して被螺挿部58(
図13参照)に螺挿される固定ボルト77によって支持フレーム513に固定されている。
【0187】
本実施形態に係るカバー514について説明する。
図42にカバー514の前方斜視図を示す。カバー514は、半円筒状基部520のカバー部分をなす半円筒状カバー部515と、半円筒状カバー部515よりも上側の部分をなす上カバー部516とを有する。カバー514は、背面側および底面側を開放させている。
【0188】
半円筒状カバー部515は、その外形をなす複数の面部として、中段上面部581、左側面部582、右側面部583、および半円筒面部585を有する。
【0189】
中段上面部581は、ベース板部560の前部と略同じ形状・寸法の外形を有する略半円形状の水平状の面部であり、平面視でベース板部560の前部に重なるように設けられている。中段上面部581は、手摺本体部11を構成する下側の化粧カバー59Bの横カバー部59aの下側に位置している。
【0190】
左側面部582および右側面部583は、それぞれ左右方向を板厚方向とする鉛直状の面部であり、平面視でベース板部560の左側辺部560bおよび右側辺部560cに沿うように設けられている。半円筒面部585は、平面視で前側と凸側とした半円形状をなす半円筒状の面部であり、平面視でベース板部560の湾曲辺部560dに沿うように設けられている。
【0191】
カバー514の下端縁部は、ベース板部560の外形に沿って後辺部560a以外の辺部を囲むように、ベース板部560の外側に位置している。つまり、カバー514は、その下端縁を、床面4aに接触ないし略接触させるように構成されている。
【0192】
上カバー部516は、半円筒状カバー部515の上側において、中段上面部581の後側に門状に立設された態様で設けられている。上カバー部516は、その外形をなす複数の面部として、天面部591、左側面部592、右側面部593、左右両側の前面部594、および左右の前面部594間に設けられた前側突出面部595を有する。
【0193】
左側面部592および右側面部593は、それぞれ半円筒状カバー部515を構成する左側面部582および右側面部583の上側への延長部分である。左右の前面部594は、それぞれ左右の後側支柱62,63の前面部62a,63aに沿う面部である。左右の前面部594は、それぞれ、平面視において左側面部592または右側面部593とともに直角状をなすとともに、側面視において中段上面部581とともに直角状をなす面部である。
【0194】
左右の前面部594の下側には、左右の前面部594のそれぞれを下側へ延出した下側前面部594aが設けられている(
図42参照)。前面部594と下側前面部594aとにより、カバー514の上下方向の全体にわたる面一状の上下に細長い面部が形成されている。下側前面部594aは、半円筒状カバー部515とともに、半円筒状基部520のカバー部分を構成している。
【0195】
前側突出面部595は、左右の前面部594の上部間をつなぐ部分である。前側突出面部595は、平面視で前面部594とともに鈍角をなすように前面部594から前側に立ち上がった側壁面部596と、左右の側壁面部596間に設けられた湾曲面部597とを有する。湾曲面部597は、平面視で側壁6側となる後側を凸側とした弧状をなす凹状の曲面部である。左右の側壁面部596と湾曲面部597とは、それぞれ平面視で弧状をなす湾曲面部を介してつながっている。
【0196】
天面部591は、後側の辺部を左右方向に沿う直線状の辺部とするとともに、左右の左側面部592、右側面部593、左右の前面部594、および前側突出面部595がなす平面視形状に沿う辺部を有する水平状の面部である。天面部591が、カバー514の上面部となる。
【0197】
上カバー部516は、左右の前面部594および前側突出面部595により、中段上面部581の後縁部とともに、手摺本体部11を貫通させる開口窓589を形成している。開口窓589は、支持フレーム513に対する手摺本体部11の支持位置に対応した部位に形成されており、正面視で横長矩形状の開口を形成している。
【0198】
開口窓589は、上下方向については、上下の化粧カバー59の横カバー部59aが入る程度の寸法を有し、左右方向については、回動支持部22の左右方向の寸法と略同じ寸法を有する。なお、左右の前面部594の左右内側の縁部には、前面部594と側壁面部596との角部をなす湾曲面部を下方に延出させた態様の部分である湾曲突面部590が形成されている。
【0199】
手摺本体部11は、回動支持部22の大部分および支持アーム部21の全体を、開口窓589からカバー514の外側に露出させている。回動支持部22については、上下の化粧カバー59の縦カバー部59b(
図12参照)よりも前側の部分が、開口窓589からカバー514の外側に露出している。
【0200】
このような回動支持部22のカバー514からの露出態様においては、半円筒状カバー部515の中段上面部581の上方に、上下の化粧カバー59の横カバー部59aが露出しており、上側の化粧カバー59Aの上面部59dの後部の上側に、前側突出面部595の湾曲面部597が位置している。つまり、湾曲面部597は、上側の化粧カバー59Aの横カバー部59a上において後壁状の部分として設けられている。
【0201】
カバー514は、支持フレーム513に対して、ボルト等の締結具やアングル部材等の固定部材を用いた所定の固定構造によって固定されている。
【0202】
以上のような構成を備えた支持部512において、カバー514の中段上面部581が、手摺本体部11の支持面部となる。すなわち、中段上面部581の上面581aが、下側の化粧カバー59Bの横カバー部59aの下面59eの接触を受ける支持面となる。通常状態の手摺装置501において、下側の化粧カバー59Bの下面59eは、中段上面部581の上面581aに対して接触した状態あるいは略接触した状態(わずかな隙間を隔てた状態)となっている。化粧カバー59Bは、下面59eに突起等を有することで、横カバー部59aを部分的に中段上面部581の上面581aに接触させるものであってもよい。
【0203】
このような手摺本体部11の支持構成によれば、手摺本体部11の自重や、手摺本体部11に作用する使用者の体重等の下向きの荷重が、中段上面部581からカバー514により支持されることになる。このように手摺本体部11からの荷重を支持するカバー514において、手摺本体部11に対する十分な支持強度を得る観点から、カバー514の本体部材は、金属製の板状部材により構成されている。ただし、手摺本体部11に対する十分な支持強度が得られるものであれば、カバー514の本体部材は、例えば樹脂製の部材等、金属製の部材以外の部材により構成されたものであってもよい。
【0204】
また、
図38に示すように、本実施形態に係る支持部512において、半円筒状基部520は、
図31に示す面取部の変形例1の構成と同様に、左右両側に、平面視で円弧状の湾曲面を形成する面取部620,630を有する部分であるといえる。すなわち、面取部620,630は、
図38において二点鎖線で示すように平面視で直角をなす直角の仮想角部601の角形状に対する面取状の部分となっている。
【0205】
このような構成によれば、使用者は、手摺本体部11につかまりながら車椅子と洋風便器2の間の移乗を行ったり洋風便器2から立ち上がったりする際、面取部620,630の形状に沿って移動することができるようになる。これにより、使用者は、手摺装置501によって体を支持されながら、支持部512に体を引っかけることなくスムーズに移動することが可能となる。
【0206】
このように、半円筒状基部520が、使用者が寄りかかる部分として用いられることから、カバー514は、金属製の本体部材の表面を樹脂カバーで覆った構成のものであってもよい。また、カバー514の表面に、滑り性を良くするめの表面処理(シートの貼着けやコーティング等)を施したり、膝当て等として機能するクッション性のある部材を設けたりすることができる。
【0207】
以上のような構成を備えた手摺装置501において、支持部512に、トイレ3の備品等を収納するための収納部710が設けられている。手摺装置501は、上下方向に隣り合うように設けられた上段の収納部710Aおよび下段の収納部710Bの2つの収納部710を有する。2つの収納部710は、支持部512における半円筒状基部520において、上下方向の中間部に設けられている。
【0208】
本実施形態では、収納部710は、トイレ3の備品であるトイレットペーパ702の収納に適した構成を有する。収納部710は、手摺装置501の正面視で円形状をなすとともに前側に開口した収納空間711を形成している。収納空間711は、前後方向を中心軸方向とする円筒状の内周面712と、前後方向に対して垂直な円形状の背面713とにより形成されている。
【0209】
収納部710は、円筒状の外形を有するロール状のトイレットペーパ702を、中心軸方向を前後方向とした向きで収納する。収納部710は、収納空間711の円筒形状について、一般的なロール状のトイレットペーパ702の外径に対応した内径を有し、トイレットペーパ702を差し入れた態様で収納する。トイレットペーパ702は、収納部710に対して前側から出し入れされる。
【0210】
収納空間711は、前後方向について、トイレットペーパ702の長さ(中心軸方向の寸法)よりも長い寸法を有する。これにより、収納部710は、トイレットペーパ702の全体を収納空間711内に位置させることができる。このように、収納部710には、トイレ3において例えば側壁6に設置された紙巻器に保持されるトイレットペーパに対する予備のトイレットペーパ702が収納される。
【0211】
図39、
図40および
図41に示すように、収納部710は、支持フレーム513に設けられた収納筒720により構成されている。収納筒720は、略円筒状の部材であり、支持フレーム513を構成する左右の後側支柱62,63間において、中心軸方向を前後方向とする向きで設けられている。支持背面部568の下部には、上側の収納筒720を貫通させる略矩形状の開口部568aが形成されている。
【0212】
収納筒720は、左右の後側支柱62,63間において固定状態で支持されている。収納筒720は、左右の後側支柱62,63それぞれに対して、直接的にまたはステー等の支持部材を介して間接的に、溶接やボルト固定等によって固定される。
【0213】
収納筒720は、その本体部分をなす部分として、円筒状の周壁部726と、周壁部726の後側を塞ぐ円盤状の底面部727とを有する。周壁部726の内周面722が、収納部710の内周面712となり、底面部727の前面723が、収納部710の背面713となる。
【0214】
収納筒720の前側の縁端は、カバー514の半円筒面部585の湾曲形状に沿った形状を有する。つまり、収納筒720の前側の縁端は、平面視で前側を凸側とした円弧形状に沿った形状を有し、側面視で後側を凸側とした湾曲形状を有する(
図37参照)。
【0215】
収納筒720の前側の縁部には、収納筒720の本体部分に対して径方向外側に突出した板状の鍔部724が設けられている。鍔部724は、収納筒720の本体部分に対して別体の部材を溶接等によって固定することで設けられた部分であってもよく、収納筒720の本体部分をなす部材の一部として設けられた部分であってもよい。
【0216】
鍔部724は、正面視で、略一定の幅を有し、収納筒720の円形の開口形状に沿った円環状の部分となるように、収納筒720の開口端の全周にわたって設けられている。鍔部724は、前側を凸側とした半円筒状に沿った湾曲形状を有し、前面724aをカバー514の半円筒面部585の表面に対して面一状に連続させている。
【0217】
カバー514の半円筒面部585には、収納筒720の鍔部724に対応するように、正面視で円形状をなす開口585aが上下2箇所に形成されている。開口585aは、正面視形状である円形状の内径(孔径)を、鍔部724の正面視における外径と略同じとしている。開口585aが収納筒720により塞がれた状態において、鍔部724は、開口585aの開口縁部に沿い、前面724aを半円筒面部585の表面に滑らかに連続させ、半円筒面部585とともに半円筒形状に沿う湾曲面を形成している。
【0218】
以上のように、本実施形態に係る手摺装置501は、上述した実施形態と異なる点として次のような構成を備える。すなわち、支持フレーム513の内側に、トイレットペーパ702等が収納可能な収納空間711をなす収納部710が設けられている。また、支持フレーム513を覆うカバー514に、収納空間711をカバー514の外部に臨んで開口させる開口585aが形成されている。
【0219】
また、カバー514により、手摺本体部11の自重および手摺本体部11にかかる荷重が支持される。この点に関し、支持フレーム513において収納空間711を確保するため、支持フレーム513の前部に位置する前側支柱(第1実施形態に係る前側支柱61)を無くし、その代わりにカバー514で手摺本体部11を支持する構成が採用されている。
【0220】
以上説明した本実施形態に係る手摺装置501によれば、支持部12において、手摺本体部11に対する支持強度を確保しながら、カバー514の内部の空間を有効に利用することができ、トイレットペーパ702等のトイレ3の備品を収納することが可能となる。なお、収納部710は、トイレ3の備品の収納に限らず、使用者の持ち物等を一時的に置く場所としても使用することができる。
【0221】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る介助装置は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0222】
上述した実施形態では、手摺装置1は、トイレ3において洋風便器2の左方の側壁6対して設けられているが、洋風便器2の右方の側壁に対して設けられてもよい。また、洋風便器2は、床置き式の大便器に限らず、壁掛け式の大便器であってもよい。
【0223】
また、上述した実施形態では、カバー14(カバー514)は、支持フレーム13(支持フレーム513)に対してボルトにより固定されているが、支持フレーム13(支持フレーム513)に対するカバー14(カバー514)の固定構造は、特に限定されるものではない。かかる固定構造としては、例えば、マグネットや面ファスナーを用いたものや、フック状の部分を設けた引っ掛け構造であってもよい。
【0224】
また、上述した第3実施形態では、支持部512において2つの収納部710が支持部512の上下の中間部に縦並びに設けられているが、収納部710の個数や配設位置等は限定されるものではない。支持部512に収納部710を有する構成としては、例えば、1つの収納部710を支持部512の下端部に設けた構成や、同じ高さ位置に横並びに2つの収納部710を設けた構成等であってもよい。
【符号の説明】
【0225】
1 手摺装置(介助装置)
2 洋風便器(大便器)
3 トイレ(部屋)
4 床
6 側壁(壁)
6a 壁面
11 手摺本体部
12 支持部
13 支持フレーム
14 カバー
21 支持アーム部
22 回動支持部
59 化粧カバー
84 左傾斜面部
84a 表面
85 右傾斜面部
85a 表面
300,310,320,330,340 面取部
302,312 傾斜面
501 手摺装置
512 支持部
513 支持フレーム
514 カバー
520 半円筒状基部
581 中段上面部
595 前側突出面部
710 収納部
720 収納筒