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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20240409BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240409BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20240409BHJP
   B41J 13/10 20060101ALI20240409BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B41J29/38 202
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B65H5/00 P
B41J13/10
H04N1/00 567M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103563
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021194866
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】玉井 健介
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132203(JP,A)
【文献】特開平06-191115(JP,A)
【文献】特開2004-042372(JP,A)
【文献】特開平06-135077(JP,A)
【文献】特開2008-265024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0061733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01
B65H 5/00
B41J 13/10
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録を行う記録手段と、
前記記録手段により記録が行われる記録材より少なくとも搬送方向のサイズが大きい搬
送材を搬送する搬送手段と、
前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報を取得した
上で、
前記記録材を前記搬送材に位置決めする為の位置決めパターンを前記搬送材に記録する
第1記録モードと、
前記搬送材が搬送された際に、前記搬送材に位置決めされた前記記録材に記録を行う第
2記録モードと、を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記記録材と対向可能な検出部を備え、
前記制御手段は、前記第1記録モードにおいて、前記位置決めパターンの内側領域に識
別パターンを記録し、
前記第2記録モードの実行前に前記検出部によって前記識別パターンの有無を判断し、
前記識別パターンを検出した場合、前記第2記録モードの実行をキャンセルしてエラー
処理を行う、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置において、前記記録材と対向可能な検出部を備え、
前記制御手段は、前記第1記録モードにおいて、搬送方向と交差する方向に延びる識別
線を、前記搬送材の搬送方向先端から前記識別線までの距離D1と搬送方向後端から前記
識別線までの距離D2とが異なる様に、且つ、前記位置決めパターンよりも搬送方向先端
側となる位置に記録し、
前記第2記録モードの実行前に前記検出部によって前記搬送材の搬送方向先端から前記
識別線までの距離D3を検出し、前記距離D1と前記距離D3との差が許容値を超えてい
る場合、前記第2記録モードの実行を保留して所定の処理を行う、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録装置において、前記制御手段は、前
記記録材及び前記搬送材の種類に係わる情報を取得し、前記記録材及び前記搬送材の種類
に基づき、前記搬送手段による搬送方法、前記記録手段による記録方法、前記記録手段と
前記記録材との間隔、のこれらのうち少なくとも一つを設定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録装置において、前記搬送材を給送す
る給送経路を複数備え、
前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の種類に係わる情報を取得し、前記記録材
及び前記搬送材の種類に基づき、複数の前記給送経路のうち適する給送経路を案内するユ
ーザーインターフェースを生成する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録装置において、前記記録材は、光デ
ィスク、カード、シール、のいずれかである、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録媒体をアダプタに保持し、そのアダプタをトレイにセットした上で、トレイを搬送してアダプタに保持された記録媒体に記録を行う記録装置が開示されている。また特許文献1において、記録媒体の一例として、ネイルシール、カード、円形状のディスクが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-019228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の記録装置の場合、専用のアダプタやトレイが必要となる。専用のアダプタやトレイは、製品コストを上昇させてしまうとともに、ユーザーにとっても管理が煩雑であり、また紛失や破損が生じた際に記録を行うことができなくなるというデメリットがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の記録装置は、記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録が行われる記録材より少なくとも搬送方向のサイズが大きい搬送材を搬送する搬送手段と、前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報を取得した上で、前記記録材を前記搬送材に位置決めする為の位置決めパターンを前記搬送材に記録する第1記録モードと、前記搬送材が搬送された際に、前記搬送材に位置決めされた前記記録材に記録を行う第2記録モードと、を実行可能であることを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明の記録装置は、記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録が行われる記録材より少なくとも搬送方向のサイズが大きい搬送材を搬送する搬送手段と、前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録材が位置決めされた状態の前記搬送材を読み取る読み取り手段による読み取り情報をもとに、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報、並びに前記搬送材における前記記録材の位置に係わる情報を取得し、前記搬送材が搬送された際に、前記取得した情報をもとにして前記記録材に対し記録を行う記録モードを実行可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】プリンターにおける搬送経路を模式的に示す図。
図2】プリンターにおける搬送経路を模式的に示す図。
図3】プリンターの制御系統を示すブロック図。
図4】搬送材に記録する位置決めパターン及び記録材の一例を示す平面図。
図5】搬送材、記録材、貼り付け材の側面図。
図6】制御部が行う制御とユーザーが行う操作の関連を示すシーケンス図。
図7】制御部が行う制御の流れを示すフローチャート。
図8】制御部が行う制御とユーザーが行う操作の関連を示すシーケンス図。
図9】搬送材と記録材の一例を示す平面図。
図10】制御部が行う制御とユーザーが行う操作の関連を示すシーケンス図。
図11】制御部が行う制御の流れを示すフローチャート。
図12】記録材の種類と搬送材の種類の組み合わせに応じた、搬送方法、記録方法、PGのこれらを決定する為のテーブルを示す表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る記録装置は、記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録が行われる記録材より少なくとも搬送方向のサイズが大きい搬送材を搬送する搬送手段と、前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報を取得した上で、前記記録材を前記搬送材に位置決めする為の位置決めパターンを前記搬送材に記録する第1記録モードと、前記搬送材が搬送された際に、前記搬送材に位置決めされた前記記録材に記録を行う第2記録モードと、を実行可能であることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、記録装置の制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報を取得した上で、前記記録材を前記搬送材に位置決めする為の位置決めパターンを前記搬送材に記録する第1記録モードと、前記搬送材が搬送された際に、前記搬送材に位置決めされた前記記録材に記録を行う第2記録モードと、を実行可能であるので、前記搬送材として専用のトレイやアダプタではなく汎用品、例えば普通紙等のシート材を用いることができ、製品コストを抑制できるとともにユーザーの利便性も向上させることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記記録材と対向可能な検出部を備え、前記制御手段は、前記第1記録モードにおいて、前記位置決めパターンの内側領域に識別パターンを記録し、前記第2記録モードの実行前に前記検出部によって前記識別パターンの有無を判断し、前記識別パターンを検出した場合、前記第2記録モードの実行をキャンセルしてエラー処理を行うことを特徴とする。
【0010】
前記第1記録モードによって前記搬送材に記録された前記位置決めパターンに前記記録材が存在しない状態で前記第2記録モードを実行すると、前記搬送材を汚損してしまうこととなる。しかしながら本態様によれば、前記制御手段は、前記第1記録モードにおいて、前記記録材の輪郭の内側領域に識別パターンを記録し、前記第2記録モードの実行前に前記検出部によって前記識別パターンの有無を判断し、前記識別パターンを検出した場合、前記第2記録モードの実行をキャンセルしてエラー処理を行うので、上述した前記搬送材の汚損を回避できる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様において、前記記録材と対向可能な検出部を備え、前記制御手段は、前記第1記録モードにおいて、搬送方向と交差する方向に延びる識別線を、前記搬送材の搬送方向先端から前記識別線までの距離D1と搬送方向後端から前記識別線までの距離D2とが異なる様に、且つ、前記位置決めパターンよりも搬送方向先端側となる位置に記録し、前記第2記録モードの実行前に前記検出部によって前記搬送材の搬送方向先端から前記識別線までの距離D3を検出し、前記距離D1と前記距離D3との差が許容値を超えている場合、前記第2記録モードの実行を保留して所定の処理を行うことを特徴とする。
【0012】
前記搬送材が前記制御部からして意図しない向きで搬送されていると、ユーザーとして意図しない記録結果となり、前記搬送材を汚損してしまったり、前記記録材を無駄にしてしまう虞がある。しかしながら本態様によれば、前記制御手段は、前記第1記録モードにおいて、搬送方向と交差する方向に延びる識別線を、前記搬送材の搬送方向先端から前記識別線までの距離D1と搬送方向後端から前記識別線までの距離D2とが異なる様に、且つ、前記位置決めパターンよりも搬送方向先端側となる位置に記録し、前記第2記録モードの実行前に前記検出部によって前記搬送材の搬送方向先端から前記識別線までの距離D3を検出し、前記距離D1と前記距離D3との差が許容値を超えている場合、前記第2記録モードの実行を保留して所定の処理を行うので、上述した不具合を回避できる。
【0013】
第4の態様は、記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録が行われる記録材より少なくとも搬送方向のサイズが大きい搬送材を搬送する搬送手段と、前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録材が位置決めされた状態の前記搬送材を読み取る読み取り手段による読み取り情報をもとに、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報、並びに前記搬送材における前記記録材の位置に係わる情報を取得し、前記搬送材が搬送された際に、前記取得した情報をもとにして前記記録材に対し記録を行う記録モードを実行可能であることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、記録装置の制御手段は、前記記録材が位置決めされた状態の前記搬送材を読み取る読み取り手段による読み取り情報をもとに、前記記録材及び前記搬送材の形状及び大きさに係わる情報、並びに前記搬送材における前記記録材の位置に係わる情報を取得し、前記搬送材が搬送された際に、前記取得した情報をもとにして前記記録材に対し記録を行う記録モードを実行可能であるので、前記搬送材として専用のトレイやアダプタではなく汎用品、例えば普通紙等のシート材を用いることができ、製品コストを抑制できるとともにユーザーの利便性も向上させることができる。
【0015】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の種類に係わる情報を取得し、前記記録材及び前記搬送材の種類に基づき、前記搬送手段による搬送方法、前記記録手段による記録方法、前記記録手段と前記記録材との間隔、のこれらのうち少なくとも一つを設定することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の種類に係わる情報を取得し、前記記録材及び前記搬送材の種類に基づき、前記搬送手段による搬送方法、前記記録手段による記録方法、前記記録手段と前記記録材との間隔の少なくともいずれかを設定するので、適切な記録品質を得ることができる。
【0017】
第6の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記搬送材を給送する給送経路を複数備え、前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の種類に係わる情報を取得し、前記記録材及び前記搬送材の種類に基づき、複数の前記給送経路のうち適する給送経路を案内するユーザーインターフェースを生成することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記制御手段は、前記搬送材を給送する給送経路を複数備え、前記制御手段は、前記記録材及び前記搬送材の種類に係わる情報を取得し、前記記録材及び前記搬送材の種類に基づき、複数の前記給送経路のうち適する給送経路を案内するユーザーインターフェースを生成するので、適切な給送結果が得られ、ひいては適切な記録結果が得られる。
【0019】
第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記記録材は、光ディスク、カード、シール、のいずれかであることを特徴とする。
本態様によれば、前記記録材は、光ディスク、カード、シール、のいずれかである場合において、上述した第1から第6の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0020】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録装置の一例としてインクジェットプリンター1について説明する。以下、インクジェットプリンター1を単にプリンター1という。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向が記録ヘッド17の移動方向であり、記録が行われる媒体の幅方向となる。またX軸方向は、装置幅方向となる。
Y軸方向は装置奥行方向であり、記録時の媒体搬送方向に沿う方向である。+Y方向は装置背面から前面に向かう方向であり、-Y方向は装置前面から背面に向かう方向である。本実施形態ではプリンター1の周囲を構成する側面のうち、操作パネル6が設けられた側面が装置前面となる。
Z軸方向は鉛直方向に沿う方向であり、装置高さ方向である。+Z方向が鉛直上方向であり、-Z方向が鉛直下方向である。
【0021】
尚、以下では媒体が送られていく方向を「下流」と称し、その逆方向を「上流」と称する場合がある。また、以下ではプリンター1の構成について説明する際、単に「媒体」と称する場合は、後に説明する「記録材」、及び「記録材」が貼り付けられる「搬送材」のいずれか一方を特に意味するものではなく、主にA4サイズ用紙等の定形紙を意味するものとする。A4サイズ用紙等の定形紙は、後述する媒体カセット10や傾斜支持部12Aにセットすることが可能な媒体であり、プリンター1において記録と搬送の双方が可能な媒体である。
【0022】
図1図2においてプリンター1は、媒体にインクジェット記録を行う装置本体2の上部に画像読取装置の一例であるスキャナー部3を備えており、即ちインクジェット記録機能に加えて原稿読み取り機能を備える複合機として構成されている。
スキャナー部3は、装置本体2に対して回動可能に設けられており、回動することにより、図1に示す閉じた状態と不図示の開いた状態とをとり得る。
スキャナー部3は、原稿台3bを開閉する原稿カバー3aを備えている。原稿台3bの下には、Y軸方向に延設されるとともに、センサーモーター3d(図3参照)によってX軸方向に移動する読取センサー3cが設けられている。即ちスキャナー部3は、フラットベッドタイプの画像読取装置である。
【0023】
装置本体2は、装置前面に、各種操作設定を行い、また記録設定内容や記録画像のプレビュー表示などを行う為の操作パネル6を備えている。操作パネル6は、本実施形態ではタッチパネルとして構成され、各種情報を表示するとともに、ユーザーによる各種設定操作を受け付けるユーザーインターフェース(以下、「UI」と称する)が実現される。つまり操作パネル6は、プリンター1において各種情報を表示する表示部として機能する。ユーザーは、操作パネル6に表示されたUIに従って各種設定操作や実行操作を行う。
【0024】
装置前面には前面カバー4が設けられており、この前面カバー4を開くことで、媒体カセット10、媒体排出口9、媒体受けトレイ21などが露呈する。
装置後方上面には上面カバー8が開閉可能に設けられており、この上面カバー8を開くことで、傾斜支持部12Aが露呈し、また延長支持部12Bが上方に引き出し可能となる。延長支持部12Bは、収納状態(不図示)と、図1及び図2に示す様に上方に引き出し且つ傾斜した使用状態とを切り換え可能である。
【0025】
プリンター1は、装置底部の媒体カセット10からの媒体送り経路T1、装置後方上部からの媒体送り経路T2、装置背面からの媒体送り経路T3(図2参照)、のこれら3つの媒体送り経路を有している。各媒体送り経路は、経路形成部材によって形成されているが、その詳細についての説明は省略する。
【0026】
媒体送り経路T1では、媒体は媒体カセット10から、ピックローラー11によって送り出され、反転ローラー20によって反転させられ、送りローラー対15に向けて送られる。ピックローラー11及び反転ローラー20は、搬送モーター53(図3参照)を動力源とする。尚、反転ローラー20の外周に沿って、従動ローラー22a、22b、22cが設けられている。
【0027】
媒体送り経路T2では、傾斜支持部12A及び延長支持部12Bによって傾斜姿勢に支持された媒体が、給送ローラー13及び補助ローラー14によって送りローラー対15に向けて送られる。即ち媒体送り経路T2は、装置後方上部にセットされた媒体を給送する経路である。給送ローラー13及び補助ローラー14は、搬送モーター53(図3参照)を動力源とする。
【0028】
媒体送り経路T3は、装置背面から前面に向けて手差しで媒体を送り込む為の経路である。媒体送り経路T3は、ほぼ直線状の経路であり、本実施形態では水平方向に沿って延びる経路である。媒体送り経路T3は、装置本体2の背面から反転ユニット24を取り外し、反転ユニット24に設けられたアダプター23を取り外して図2に示す様に装置本体2に装着することで形成される。尚、反転ユニット24は反転ローラー20を備えるユニット体である。
【0029】
媒体を記録ヘッド17と対向する位置へ送る送りローラー対15は、図3に示す様に送りローラー15aと、ニップローラー15bとを備えて成る。送りローラー15aは、搬送モーター53(図3参照)を動力源とする。ニップローラー15bは、送りローラー15aに対して進退可能に設けられるとともに、不図示のばねによって送りローラー15aに向けて押圧されており、送りローラー15aとの間で媒体をニップして従動回転する。
【0030】
送りローラー対15の下流には、記録ヘッド17と、媒体支持部18とが対向配置されている。媒体支持部18は、媒体を支持することにより、記録ヘッド17と媒体との間のギャップを規定する。
記録ヘッド17が設けられたキャリッジ16は、媒体幅方向に往復動可能に設けられているとともに、制御部50(図3参照)により制御されるキャリッジモーター51(図3参照)から動力を得て、X軸方向に移動する。
尚、キャリッジ16は、制御部50(図3参照)のもとで制御される調整機構49(図3参照)によりZ軸方向に変位可能となっており、この調整機構49により、記録ヘッド17と媒体支持部18の間隔が調整可能となっている。記録ヘッド17と媒体支持部18の間隔を、以下では「PG」と称する場合がある。調整機構49は、例えば不図示のモーターとカム機構によって構成される。
【0031】
記録ヘッド17及び媒体支持部18の下流には、排出ローラー対19が設けられている。排出ローラー対19は、図3に示す様に送りローラー19aと、ニップローラー19bとを備えて成る。送りローラー19aは、搬送モーター53(図3参照)を動力源とする。ニップローラー19bは、送りローラー19aに対して進退可能に設けられるとともに、不図示のばねによって送りローラー19aに向けて押圧されており、送りローラー19aとの間で媒体をニップして従動回転する。記録の行われた媒体は、排出ローラー対19によって装置外に向けて排出され、媒体受けトレイ21によって支持される。
【0032】
続いて図3を参照しつつプリンター1における制御系統について説明する。
制御部50は、装置本体2での媒体の給送、搬送、記録及び排出や、スキャナー部3での原稿読み取り動作等、プリンター1の各種制御を行う。制御部50には操作パネル6からの信号が入力され、また、操作パネル6でのUIを実現する為の信号が制御部50から操作パネル6に送信される。
【0033】
制御部50は、キャリッジモーター51、搬送モーター53、センサーモーター3d、のこれらモーターを制御する。本実施形態では各モーターはDCモーターである。
制御部50には、位置検出部57、回転検出部58、第1媒体検出部59、第2媒体検出部60、ユニット検出部61、のこれら検出部からの検出信号も入力される。
位置検出部57はリニアエンコーダーであり、キャリッジ16のX軸方向における位置を検出する為の検出部である。回転検出部58はロータリーエンコーダーであり、搬送モーター53の回転量及び回転速度を検出する為の検出部である。
ユニット検出部61は、反転ユニット24(図1参照)が装着されているか否かを検出する為の検出部である。
【0034】
第1媒体検出部59は送りローラー対15の上流近傍に設けられ、媒体の先端及び後端の通過を検出する為の検出部である。第2媒体検出部60はキャリッジ16において媒体と対向する位置に設けられた検出部であり、媒体のY軸方向エッジ位置やX軸方向エッジ位置の検出等に利用される。第2媒体検出部60は、検出光を発する発光部と媒体からの反射光を受光する受光部とを備える光学センサーで構成することができる。また、第1媒体検出部59は、接触式或いは非接触式のセンサーで構成することができる。
尚、スキャナー部3が備えるセンサーモーター3dには回転検出手段であるエンコーダー(不図示)が設けられており、制御部50は、読取センサー3cのX軸方向における位置を把握できる。
【0035】
制御部50は、CPU54、フラッシュROM55、及びRAM56を備えている。CPU54はフラッシュROM55に格納されたプログラムに従って各種演算処理を行い、装置本体2やスキャナー部3における各種動作を制御する。記憶手段の一例であるフラッシュROM55は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリであり、装置本体2やスキャナー部3の各種制御を行う為のプログラムや各種パラメーター等が記憶されている。また操作パネル6を介してユーザーが入力した各種設定情報も、フラッシュROM55に記憶される。記憶手段の一例であるRAM56には、一時的に各種情報が格納される。
また制御部50はインターフェース62を備えており、このインターフェース62を介して外部コンピューターとの通信が可能となっている。
【0036】
続いて図4以降を参照し、サイズが小さく、単体では搬送不可能な記録材に記録を行う方法について説明する。
図4において符号200は、記録を行う記録材の一例を示している。本明細書において「記録材」は特に、搬送方向の長さが短く、より具体的には搬送方向の長さが送りローラー対15と排出ローラー対19とで同時にニップすることができない長さの媒体、または、輪郭形状が単純な矩形ではなくそのまま搬送すると斜行や搬送精度の低下を招く虞の高い媒体とする。但し「記録材」はこの様な媒体に限定されず、搬送方向の長さが送りローラー対15と排出ローラー対19とで同時にニップすることができる長さであっても良いし、輪郭形状が単純な矩形であっても良い。
この様な記録材には、光ディスク、カード、シールが含まれる。シールには、ネイルシールが含まれる。「記録材」がシールである場合、記録材はシール本体と、シール本体が貼り付けられる台紙とで構成される。
また「光ディスク」の一例としては、CD及びDVDが挙げられる。また「カード」の一例としては、国際規格ISO/IEC 7810で規定される各種サイズのカードが挙げられる。
【0037】
媒体送り経路T2、T3を利用した媒体の搬送では、送りローラー対15と排出ローラー対19との間の経路長が最も長い為、搬送方向の長さが送りローラー対15と排出ローラー対19との間の経路長未満である記録材200は、そのままでは排出することができない。
【0038】
図4において符号100は、記録材200より少なくとも搬送方向の長さが長い搬送材であり、搬送方向の長さが送りローラー対15と排出ローラー対19とで同時にニップすることができる長さの搬送材である。この搬送材100は、例えばユーザーが所有している定形サイズ用紙が好適であり、例えばA4サイズの普通紙、写真用紙等を用いることができるが、少なくとも専用のトレイやアダプタのようにプリンター1専用に構成されたものではなく、汎用性のあるものを用いることができる。
記録材200は、それ単体では搬送不可能な小サイズ媒体であるため、搬送材100に貼り付けた上で搬送材100を給送し、搬送材100を搬送しながら記録材200に対して記録を行う。
【0039】
図5において、符号205は記録材200を搬送材100に貼り付ける為の貼り付け材である。貼り付け材としては、例えば、繰り返し用いることができる両面テープが好適であるが、記録材200を貼り付けた搬送材100を搬送し、記録材200に記録を行い、搬送材100を排出する過程で記録材200が搬送材100から剥離することなく保持できるものであればどのようなものでも良い。また、貼り付け材205を用いずに、例えば記録材200及び搬送材100の少なくともいずれかを磁性体とし、磁力によって記録材200を搬送材100に保持する様にしても良い。
【0040】
以下、記録材200に対し記録を行う具体的な方法について更に説明する。
[実施例1]
図6及び図7を参照して、記録材へ記録する方法の一例である実施例1について説明する。実施例1は、記録材200が、例えば光ディスク、カードなどのように規格化されているサイズであるか、或いは形状が矩形であってユーザーが比較的容易にサイズ入力可能な場合の実施例である。規格化されている記録材200のサイズは、制御部50が、予めデータとして保持している。
図6において、ユーザーSuは操作パネル6のUIを介して「小サイズ印刷」を選択する(ステップS10)。その結果制御部50は、操作パネル6にサイズ入力方法選択画面を表示させる(ステップS11)。尚、本実施例及び後に説明する他の実施例においても、ユーザーSuに対して提供されるUIは操作パネル6に実現されるものとするが、例えばプリンター1に接続される外部コンピューターの表示部に実現されても構わない。
【0041】
ユーザーSuは、サイズ入力方法選択画面において「手動入力」、「記録材のみ読み取り」、「記録材と搬送材の読み取り」、のこれら3つのうちいずれかを選択できる。実施例1では、ユーザーSuは「手動入力」を選択する(ステップS12)。
これに対し制御部50は、操作パネル6に各種情報を入力する為のサイズ入力画面を表示する(ステップS13)。サイズ入力画面では、記録材200と搬送材100のサイズを設定する為のUIが提供される。
またサイズ入力画面では、記録材200及び搬送材100の種類と、記録品質を設定する為のUIも提供される。記録材200及び搬送材100の種類には、例えば普通紙、光沢紙、などが含まれ、記録品質には、例えば「普通」、「きれい」などが含まれる。尚、ここで設定された記録品質は、後述するステップS22において反映される。また制御部50は、記録材200及び搬送材100の厚みを、それぞれの種類から把握する。
またサイズ入力画面では、記録材200の貼り付け枚数を設定する為のUIも提供される。
ユーザーSuは、サイズ入力画面において必要な設定を行った後、”OK”ボタンを押下する(ステップS14)。
【0042】
これに対し制御部50は、操作パネル6に記録確認画面を表示する(ステップS15)。記録確認画面には、記録材200を貼り付けていない状態の搬送材100のセット推奨位置の案内と、搬送材100のセットが完了したか否かの確認メッセージが含まれる。
搬送材100のセット推奨位置とは、本実施形態に係るプリンター1においては装置後方上部、及び装置背面のいずれかである。装置後方上部へのセットが促された場合、搬送材100は媒体送り経路T2を利用して給送され、装置背面へのセットが促された場合、搬送材100は媒体送り経路T3を利用して給送される。
【0043】
尚、本実施例及び後述する他の実施例では少なくとも記録材200を貼り付けた搬送材100の搬送経路として、媒体送り経路T1は利用しない。媒体送り経路T1は、プリンター1において最も曲率が大きい経路部分、具体的に反転ローラー20を経由する経路部分が含まれており、記録材200が搬送材100から剥離し易くジャムとなる虞が高いからである。
【0044】
ここで制御部50は、入力された記録材200と搬送材100の種類に基づいて、搬送材100のセット推奨位置をユーザーSuに案内する。例えば、記録材200と搬送材100の双方が撓み易く、媒体送り経路T2及び媒体送り経路T3のいずれを利用しても搬送可能な場合には、搬送材100のセット推奨位置として装置後方上部と装置背面を案内する。また、記録材200と搬送材100の少なくともいずれかの剛性が高く、或いは記録材200と搬送材100を重ねた場合の剛性が高く、湾曲した経路部分を含む媒体送り経路T2を利用するのが不適切な場合には、搬送材100のセット推奨位置として装置背面を案内する。制御部50のフラッシュROM55には、この様な判断を行う為の情報が予め格納されている。
この様に制御部50は、記録材200及び搬送材100の種類に係わる情報を取得し、記録材200及び搬送材100の種類に基づき、複数の給送経路のうち適する給送経路を案内するUIを生成する。
【0045】
尚、実施例1では、ステップS15の段階では搬送材100に記録材200が貼り付けられていないので、搬送材100のセット推奨位置の判断材料として記録材200は考慮せず、搬送材100のみを考慮して決定しても良い。但し、記録材200が貼り付けられていない搬送材100をセットする場合と、記録材200が貼り付けられている搬送材100をセットする場合とで同じセット位置となることがユーザーの利便性向上に繋がる為、ステップS15の段階において、搬送材100のみならず記録材200の種類を考慮することが好ましい。
【0046】
次にユーザーSuが搬送材100をセットして”OK”ボタンを押下した場合(ステップS16)、制御部50は、搬送材100に対して位置決めパターン記録を行う(ステップS17)。この位置決めパターン記録は、第1記録モードの一例である。
図4の符号110は、位置決めパターンの一例である。本実施例において位置決めパターン110は、記録材200の輪郭を示す破線で構成される。尚これは一例であり、位置決めパターンは記録材200を搬送材100において位置決めする目印となるものであればどのようなものでも良い。
位置決めパターン110は、設定された記録材200の貼り付け枚数に応じた数、記録される。
【0047】
尚、位置決めパターン110は、搬送材100が送りローラー対15と排出ローラー対19の双方にニップされた状態で記録材200に記録が行われる様な位置に記録されることが好ましい。搬送材100が送りローラー対15にのみニップされている状態、或いは排出ローラー対19にのみニップされている状態では、記録材200と記録ヘッド17との間隔が不安定になり易いからである。
【0048】
また本実施例において位置決めパターン110の内側領域には、識別パターン111が記録される。識別パターン111は、本実施例ではハッチング線で構成されるが、これは一例であり、後述する様に位置決めパターン110に記録材200が貼り付けられているか否かを識別できるものであればどのようなものでも良い。
【0049】
また本実施例において搬送材100には、搬送方向と交差する方向に延びる識別線L1が記録される。搬送材100の搬送方向先端100aから識別線L1までの距離D1と、搬送方向後端100bから識別線L1までの距離D2とは異なり、また識別線L1は位置決めパターン110よりも搬送方向先端100a側に記録される。
【0050】
また本実施例において搬送材100には、セット方向を示す矢印マーク112と、矢印マーク112が搬送材100のセット方向であることを示す識別文字113が記録される。本実施例では、識別文字113は一例として”セット方向”の文字とされる。
【0051】
尚、矢印マーク112や識別文字113のほか、記録材200の貼り付けに対しての注意事項、例えば「枠線からはみ出ない様に記録材を貼り付けてください」などのメッセージを記録しても良い。また、搬送材100の推奨セット位置に関するメッセージ、例えば「記録材を貼り付けた後、装置背面にセットしてください。」などのメッセージを記録しても良い。これらのメッセージは、操作パネル6に表示するメッセージと同じにすることもできる。
【0052】
次に制御部50は、搬送材100への記録材200の貼り付けと、記録材200を貼り付けた搬送材100のプリンター1へのセット案内画面を表示する(ステップS18)。ここで制御部50は、入力された記録材200と搬送材100の種類とに基づき、搬送材100のセット推奨位置をユーザーSuに案内するが、これについては上述した通りである。
【0053】
これに対しユーザーSuは、記録材200を搬送材100に貼り付け(ステップS19)、搬送材100を推奨された位置にセットして(ステップS20)、”OK”ボタンを押下する(ステップS21)。
これに応じて制御部50は、搬送材100を給送し、記録材200へ記録し、搬送材100を排出する(ステップS22)。このステップS22は、搬送材100が搬送された際に、搬送材100に位置決めされた記録材200に記録を行う第2記録モードの一例である。
【0054】
図7を参照して、記録材200へ記録を行う際の制御について説明する。制御部50は、図6のステップS21によって記録実行指令を受けると、搬送材100を給送する(ステップS102)。次いで制御部50は、第2媒体検出部60を利用して搬送材100の搬送方向先端から識別線L1までの距離、即ち上端距離D3を検出する(ステップS102)。制御部50は、例えば第2媒体検出部60がX軸方向において図4の位置X10に位置する様にキャリッジ16を制御し、X軸方向における位置X10での上端距離D3を検出する。
尚、ここでの「搬送方向先端」とは、検出した搬送方向先端であり、必ずしも図4に示した搬送方向先端100aとは限らない。つまり、ユーザーが搬送材100のセットの向きを間違った場合、図4に示した搬送方向後端100bが、検出した搬送方向先端となる。
【0055】
次いで制御部50は、検出した上端距離D3が許容範囲内であるか否か、換言すれば図4の距離D1と検出した上端距離D3との差が予め定められた許容値内であるか否かを判断する(ステップS103)。即ち搬送材100のセット方向が正しければ、予めデータとして保持している距離D1と、検出した上端距離D3との差は殆どなく、搬送材100が正しい向きにセットされたと判断できる(ステップS103においてYes)。従ってこの場合は、ステップS104に進む。
【0056】
これに対し、図4の距離D1と、検出した上端距離D3との差が予め定められた許容値を超えている場合(ステップS103においてNo)、搬送材100のセット方向が誤っていると判断できる。従ってこの場合は、記録材200への記録を保留して所定の処理を行う。
この所定の処理として、本実施例ではアラートを操作パネル6に表示する処理(ステップS108)と、搬送材100を排出する処理(ステップS109)とを行う。ここでのアラートは、搬送材100のセット方向が誤っている旨の警告表示とすることができる。この様に本実施例では、記録材200への記録は一旦保留されるが、最終的に記録材200への記録はキャンセルされる。
【0057】
尚、上記所定の処理として、記録材200への記録のキャンセルに代えて、搬送方向において向きが反転している記録材200に合う様に記録データを処理し、記録材200へ記録を行う様にしても良い。
【0058】
次にステップS104では、制御部50は第2媒体検出部60を利用して図4に示した識別パターン111を検出する。識別パターン111は予めプリンター1が記録したものであるから、制御部50は識別パターン111の位置を把握できる。
ここで、記録材200が適切に貼り付けられている場合、識別パターン111は検出されず、記録材200が適切に貼り付けられていない場合、識別パターン111は検出されることとなる。
【0059】
識別パターン111が検出された場合(ステップS105においてYes)、その領域に対して記録を行うと搬送材100を汚損してしまう為、アラートを操作パネル6に表示する処理(ステップS108)と、搬送材100を排出する処理(ステップS109)とを行う。ここでのアラートは、記録材200が正しく貼り付けられていない旨の警告表示とすることができる。
識別パターン111が検出されない場合(ステップS105においてNo)、記録材200への記録を行い(ステップS106)、搬送材100を排出する(ステップS107)。
【0060】
尚、記録材200への記録に際し、制御部50は搬送材100における位置決めパターン110の位置を把握しているので、搬送材100の搬送方向先端を第1媒体検出部59或いは第2媒体検出部60により検出した上で、位置決めパターン110の想定位置に対して記録動作を行うことができる。またその際、第2媒体検出部60により搬送材100の幅方向端部を更に検出した上で、位置決めパターン110の想定位置に対して記録動作を行うことができる。
また或いは、第2媒体検出部60により記録材200を直接検出し、その検出位置に基づいて記録動作を行うこともできる。
【0061】
尚、図4に示した識別パターン111、識別線L1、矢印マーク112、識別文字113、のこれらは、適宜省略しても良い。識別線L1を省略した場合、制御部50は、第2媒体検出部60を利用して記録材200を直接検出し、これにより搬送材100の向きを判定することもできる。その為に搬送方向先端100aから位置決めパターン110までの距離と、搬送方向後端100bから位置決めパターン110までの距離とが異なる様に、位置決めパターン110を記録することが好ましい。
【0062】
[実施例2]
続いて図8を参照して、記録材へ記録する方法の一例である実施例2について説明する。実施例2が上述した実施例1と異なるのは、記録材200が規格化されているサイズ及び形状の場合に好適となる点である。特に、記録材200の形状が単純な矩形でない場合に本実施例2が好適となる。但し、実施例2を規格化されているサイズ及び形状の記録材に対して適用することを排除するものではない。
図8において、ユーザーSuは操作パネル6のUIを介して「小サイズ印刷」を選択する(ステップS40)。その結果制御部50は、操作パネル6にサイズ入力方法選択画面を表示させる(ステップS41)。
【0063】
ユーザーSuは、サイズ入力方法選択画面において「手動入力」、「記録材のみ読み取り」、「記録材と搬送材の読み取り」、のこれら3つのうちいずれかを選択できる。実施例2では、ユーザーSuは「記録材のみ読み取り」を選択する(ステップS42)。
これに対し制御部50は、操作パネル6に各種情報を入力する為のサイズ入力画面を表示する(ステップS43)。ここでのサイズ入力画面では、搬送材100のサイズを設定する為のUIが提供される。尚、ここでは記録材200のサイズ設定は不要となる。
またサイズ入力画面では、記録材200及び搬送材100の種類と、記録品質を設定する為のUIも提供される。記録材200及び搬送材100の種類には、例えば普通紙、光沢紙、などが含まれ、記録品質には、例えば「普通」、「きれい」などが含まれる。尚、ここで設定された記録品質は、後述するステップS56において反映される。制御部50は、記録材200及び搬送材100の厚みを、それぞれの種類から把握する。
ユーザーSuは、サイズ入力画面において必要な設定を行った後、”OK”ボタンを押下する(ステップS44)。
【0064】
これに対し制御部50は、操作パネル6に、スキャナー部3の原稿台3b(図1参照)への記録材200のセットを案内する画面を表示させる(ステップS45)。この案内画面には、例えば、「記録材を原稿台にセットしてOKボタンを押下してください」等のメッセージを含めることができる。
【0065】
これに対しユーザーSuは、記録材200を原稿台3bの任意の位置に任意の姿勢で載置し(ステップS46)、”OK”ボタンを押下する(ステップS47)。
これに対し制御部50は、スキャナー部3を制御して記録材200を読み取る(ステップS48)。これにより制御部50は、記録材200の形状及び大きさと、記録材200の数を把握する。
以降のステップS49~S56は、図6のステップS15~S22と同様であるので、その説明は省略する。
【0066】
以上の様にプリンター1は、記録を行う記録手段である記録ヘッド17と、記録ヘッド17により記録が行われる記録材200より少なくとも搬送方向のサイズが大きい搬送材100を搬送する搬送手段である送りローラー対15及び排出ローラー対19と、上記記録手段及び搬送手段を制御する制御手段である制御部50と、を備えている。尚、給送ローラー13、補助ローラー14、ピックローラー11、反転ローラー20、のこれらローラーも、搬送材100を搬送する搬送手段である。
そして制御部50は、記録材200及び搬送材100の形状及び大きさに係わる情報を取得した上で、記録材200を搬送材100に位置決めする為の位置決めパターン110を搬送材100に記録する第1記録モードと、搬送材100が搬送された際に、搬送材100に位置決めされた記録材200に記録を行う第2記録モードと、を実行可能である。
【0067】
これにより搬送材100として専用のトレイやアダプタではなく汎用品、例えばユーザーが所有している普通紙等のシート材を用いることができ、製品コストを抑制できるとともにユーザーの利便性も向上させることができる。
【0068】
またプリンター1は、記録材200と対向可能な検出部である第2媒体検出部60を備え、制御部50は、第1記録モードにおいて、位置決めパターン110の内側領域に識別パターン111を記録し、第2記録モードの実行前に第2媒体検出部60によって識別パターン111の有無を判断し、識別パターン111を検出した場合、第2記録モードの実行をキャンセルしてエラー処理を行う。これにより、記録材200が貼り付けられていない場合の搬送材100の汚損を回避できる。
【0069】
また制御部50は、第1記録モードにおいて、搬送方向と交差する方向に延びる識別線L1を、搬送材100の搬送方向先端100aから識別線L1までの距離D1と搬送方向後端100bから識別線L1までの距離D2とが異なる様に、且つ、位置決めパターン110よりも搬送方向先端100a側となる位置に記録する。そして第2記録モードの実行前に搬送材100の搬送方向先端100aから識別線L1までの距離、即ち先端D3を検出し、距離D1と先端距離D3との差が許容値を超えている場合、第2記録モードの実行を保留して所定の処理を行う。従ってこれにより、ユーザーとして意図しない記録結果を招くことが防止される。その結果、搬送材100を汚損してしまったり、記録材200を無駄にしてしまうことを回避できる。
【0070】
またプリンター1は、搬送材100を搬送する給送経路を複数備え、制御部50は、記録材200及び搬送材100の種類に係わる情報を取得し、記録材200及び搬送材100の種類に基づき、複数の給送経路のうち適する給送経路を案内するUIを生成する。従って適切な給送結果が得られ、ひいては適切な記録結果が得られる。
【0071】
[実施例3]
続いて図9図11を参照して、記録材へ記録する方法の一例である実施例3について説明する。図9において符号101は搬送材の一例であり、符号201は記録材の一例である。実施例3が上述した実施例1、2と異なるのは、記録材201を搬送材101に貼り付けた状態で記録材を読み取り、記録材の形状、サイズ、位置、数を把握し、また搬送材の形状、サイズを把握する点である。従って本実施例も、上述した実施例2と同様に記録材201が規格化されているサイズ及び形状ではなく、特に形状が単純な矩形でない場合に好適となる。
【0072】
図10において、ユーザーSuは操作パネル6のUIを介して「小サイズ印刷」を選択する(ステップS60)。その結果制御部50は、操作パネル6にサイズ入力方法選択画面を表示させる(ステップS61)。
【0073】
ユーザーSuは、サイズ入力方法選択画面において「手動入力」、「記録材のみ読み取り」、「記録材と搬送材の読み取り」、のこれら3つのうちいずれかを選択できる。実施例3では、ユーザーSuは「記録材と搬送材の読み取り」を選択する(ステップS62)。
これに対し制御部50は、操作パネル6に媒体情報を入力する為の媒体情報入力画面を表示する(ステップS63)。媒体情報入力画面では、記録材200及び搬送材100の種類と、記録品質を設定する為のUIも提供される。記録材200及び搬送材100の種類には、例えば普通紙、光沢紙、などが含まれ、記録品質には、例えば「普通」、「きれい」などが含まれる。制御部50は、記録材200及び搬送材100の厚みを、それぞれの種類から把握する。
ユーザーSuは、媒体情報入力画面において必要な設定を行った後、”OK”ボタンを押下する(ステップS64)。
【0074】
これに対し制御部50は、操作パネル6に、スキャナー部3の原稿台3b(図1参照)への搬送材101のセットを案内する画面を表示させる(ステップS65)。この案内画面には、例えば、「記録材を貼り付けた搬送材を原稿台にセットしてOKボタンを押下してください」等のメッセージを含めることができる。
【0075】
これに対しユーザーSuは、搬送材101を原稿台3bにセットし(ステップS66)、”OK”ボタンを押下する(ステップS67)。
これに対し制御部50は、スキャナー部3を制御して搬送材101及び記録材201を読み取る(ステップS68)。これにより制御部50は、搬送材101のサイズを把握する。また制御部50は、記録材201の形状、大きさ、数、搬送材101における位置、のこれらを把握する。つまりステップS67は、記録材201の形状及び大きさに係わる情報、並びに搬送材101における記録材201の位置に係わる情報を取得する読み取りモードの一例となる。
【0076】
次に制御部50は、搬送材101のプリンター1へのセット案内画面を表示する(ステップS69)。ここで制御部50は、入力された記録材201と搬送材101の種類とに基づき、搬送材101のセット推奨位置をユーザーSuに案内する。即ち本実施例においても、制御部50は、記録材201及び搬送材101の種類に係わる情報を取得し、記録材201及び搬送材101の種類に基づき、複数の給送経路のうち適する給送経路を案内するUIを生成する。
これに対しユーザーSuは、搬送材101を推奨された位置にセットして(ステップS70)、”OK”ボタンを押下する(ステップS71)。
これに応じて制御部50は、搬送材101を給送し、記録材201へ記録し、搬送材101を排出する(ステップS72)。このステップS72は、ステップS68の読み取りモードによって取得した情報をもとにして記録材201に対し記録を行う記録モードの一例である。
【0077】
次に、図11を参照して、記録材201へ記録を行う際の制御について説明する。制御部50は、図10のステップS71において記録実行指令を受けると、搬送材101を給送する(ステップS101)。次いで制御部50は、第2媒体検出部60を利用して記録材201を検出する(ステップS202)。この記録材201の検出は、搬送材101において記録材201が存在すると想定する領域に対し、図9の符号N1~N5で示す様な走査ラインで走査することで行う。これにより制御部50は、記録材201の形状、大きさ、位置や、搬送材101の搬送方向先端から記録材201までの距離について、予め取得していた情報と一致するかを判断する(ステップS203)。尚、記録材201が予め想定する領域に存在しない場合、搬送材101が想定する向きとは逆向きにセットされている場合もある為、それを想定して別の領域で上記と同様な検出動作を行う。
【0078】
ステップS202の結果、検出された記録材201の形状、大きさ、位置、数について、予め取得していた情報と一致しない場合(ステップS203においてNo)、別の搬送材及び記録材がセットされていると判断し、所定の処理を行う。
この所定の処理として、本実施例ではアラートを操作パネル6に表示する処理(ステップS206)と、搬送材101を排出する処理(ステップS207)とを行う。ここでのアラートは、記録材及び搬送材が予め読み取ったものとは異なる旨の警告表示とすることができる。この様に本実施例では、記録材201への記録は一旦保留されるが、最終的に記録材201への記録はキャンセルされる。
【0079】
ステップS202の結果、検出された記録材201の形状、大きさ、位置、数について、予め取得していた情報と一致する場合(ステップS203においてYes)、記録材201への記録を行い(ステップS204)、搬送材101を排出する(ステップS205)。
【0080】
尚、記録材201への記録に際し、制御部50は搬送材101における記録材201の位置を把握しているので、搬送材101の搬送方向先端を第1媒体検出部59或いは第2媒体検出部60により検出した上で、記録材201の想定位置に対して記録動作を行うことができる。またその際、第2媒体検出部60により搬送材101の幅方向端部を更に検出した上で、記録材201の想定位置に対して記録動作を行うことができる。
また或いは、第2媒体検出部60により記録材201を直接検出し、その検出位置に基づいて記録動作を行うこともできる。
【0081】
以上の様に制御部50は、読み取り手段であるスキャナー部3の読み取りセンサー3cによって記録材201及び搬送材101の形状及び大きさに係わる情報、並びに搬送材101における記録材201の位置に係わる情報を取得し、搬送材101が搬送された際に、前記取得した情報をもとにして記録材201に対し記録を行う記録モードを実行可能である。
従って搬送材101として専用のトレイやアダプタではなく汎用品、例えばユーザーが所有している普通紙等のシート材を用いることができ、製品コストを抑制できるとともにユーザーの利便性も向上させることができる。
【0082】
尚、上述した例では、読み取り手段としてプリンター1に一体に設けられるスキャナー部3を用いたが、プリンター1に接続されている外部の画像読取装置を読み取り手段としても良いし、デジタルカメラ等を読み取り手段としても良い。勿論、デジタルカメラには、携帯情報端末に付属しているものが含まれる。尚、デジタルカメラを用いる場合、搬送材101のサイズはユーザーが設定することとなる。デジタルカメラを読み取り手段として利用した場合、制御部50は、ユーザーにより設定された搬送材のサイズと、撮影した画像情報とから、記録材の形状、大きさ、数と、搬送材における記録材の位置を算出することができる。
【0083】
また上述した実施例では、ユーザーによる各種設定操作を受け付けるUIは操作パネル6に実現されたが、プリンター1と通信が可能な携帯情報端末(不図示)があり、前記携帯情報端末からプリンター1の操作が可能である場合には、前記UIは前記携帯情報端末が備える表示部(不図示)に実現されても良い。
【0084】
[搬送方法、記録方法、PGの設定について]
続いて図12を参照して、搬送方法、記録方法、PGの設定について説明する。図12は、記録材の種類と搬送材の種類の組み合わせに応じて、搬送方法、記録方法、PGのこれらを決定する為のテーブルを示している。記録材の種類と搬送材の種類について、制御部50では固有の識別子により区別される。尚、以下において単に「記録材」と称する場合は、上述した記録材200、201のいずれかを意味するものとする。また同様に、単に「搬送材」と称する場合は、上述した搬送材100、101のいずれかを意味するものとする。
【0085】
図12に示す様に、搬送方法は、搬送材の種類に応じて決定される。ここで、搬送方法の違いを生じさせる要素としては、例えば各ローラーによる搬送材の送り速度、搬送を行う際の補正値、スキュー矯正の実行の有無、等が挙げられる。例えば記録材の種類がa1で、搬送材の種類がb1の場合、搬送方法は種類b1に対応する方法が選択される。
制御部50は、小サイズ印刷ではなく通常の印刷を行う場合において、例えば普通紙、光沢紙などの種類に応じて搬送方法を切り換えるが、これと同様に小サイズ印刷においても、搬送方法を搬送材の種類に応じて切り換える。一例として光沢紙の場合、普通紙と比べてスリップが生じやすい為、普通紙との対比において搬送速度は低速に設定され、また搬送を行う際の補正値は高めに設定され、またスキュー矯正は行われないこととなる。
【0086】
また、記録方法は、記録材の種類に応じて決定される。ここで、記録方法の違いを生じさせる要素としては、例えばキャリッジ16(図1参照)が往方向に移動する場合のみ記録を行う単方向記録、及び往復で記録を行う双方向記録のいずれを用いるかや、インク吐出を行う際のインク吐出ノズルの用い方、インク乾燥の為の乾燥待ち時間、等が挙げられる。例えば記録材の種類がa1で、搬送材の種類がb1の場合、記録方法は種類a1に対応する方法が選択される。
【0087】
また、PGは、記録材と搬送材の双方に応じて決定される。例えば記録材の種類がa1で、搬送材の種類がb1の場合、種類a1の厚みと種類b1の厚みを加算した値に対応するPGが選択される。
【0088】
尚、図12の例では搬送方法、記録方法、及びPGの全てについて、記録材及び搬送材の種類に基づいて設定するが、搬送方法、記録方法、及びPGのうちいずれか一つ或いは二つについて、記録材及び搬送材の種類に基づいて設定しても良い。
この様に制御部50は、記録材及び搬送材の種類に係わる情報を取得し、記録材及び搬送材の種類に基づき、搬送方法、記録方法、及びPGのこれらのうち少なくとも一つを設定するので、適切な記録品質を得ることができる。
【0089】
本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…スキャナー部、3a…原稿カバー、3b…原稿台、3c…読取センサー、3d…センサーモーター、4…前面カバー、6…操作パネル、8…上面カバー、9…媒体排出口、10…媒体カセット、11…ピックローラー、12A…傾斜支持部、12B…延長支持部、13…給送ローラー、14…補助ローラー、15…送りローラー対、15a…送りローラー、15b…ニップローラー、16…キャリッジ、17…記録ヘッド、18…媒体支持部、19…排出ローラー対、19a…送りローラー、19b…ニップローラー、20…反転ローラー、21…媒体受けトレイ、22a、22b、22c…従動ローラー、23…アダプター、24…反転ユニット、49…調整機構、50…制御部、51…キャリッジモーター、53…搬送モーター、54…CPU、55…フラッシュROM、56…RAM、57…位置検出部、58…回転検出部、59…第1媒体検出部、60…第2媒体検出部、61…ユニット検出部、62…インターフェース、100…搬送材、100a…搬送方向先端、100b…搬送方向後端、101…搬送材、101a…搬送方向先端、101b…搬送方向後端、110…位置決めパターン、111…識別パターン、112…矢印マーク、113…識別文字、200、201…記録材、205…貼り付け材、L1…識別線
図1
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図12