(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】磁気センサアレイ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240409BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01R33/02 U
G01R33/02 V
G01R33/09
(21)【出願番号】P 2020104819
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 朝彦
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025829(WO,A1)
【文献】特表2012-508402(JP,A)
【文献】特開2012-095939(JP,A)
【文献】特開2019-211405(JP,A)
【文献】特許第6664568(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁気センサを備える磁気センサアレイであって、
前記複数の磁気センサのそれぞれは、センサチップと、前記センサチップを収容するセンサ収容体と、前記センサ収容体に設けられた第1の連結部及び一対の第2の連結部とを含み、
前記センサ収容体は、前記磁気センサの感度軸方向に対して垂直なセンサヘッドと、前記感度軸方向と平行であり、互いに反対側に位置する第1及び第2の側面とを有し、
前記第1の連結部は、前記第1の側面の前記センサヘッド近傍に設けられ、
前記一対の第2の連結部は、前記第2の側面の前記センサヘッド近傍に設けられ、
前記複数の磁気センサは、隣接する一方の磁気センサに設けられた前記第1の連結部が他方の磁気センサに設けられた前記一対の第2の連結部間に挿入されて互いに軸支されることにより連結されていることを特徴とする磁気センサアレイ。
【請求項2】
前記複数の磁気センサは、第1及び第2のグループ含む複数のグループを構成し、
前記第1のグループに属する前記磁気センサの少なくとも一つは、前記センサ収容体に設けられた第3の連結部をさらに含み、
前記第2のグループに属する前記磁気センサの少なくとも一つは、前記センサ収容体に設けられた第4の連結部をさらに含み、
前記第1及び第2のグループは、前記第3の連結部と前記第4の連結部が互いに軸支されることにより連結されていることを特徴とする請求項
1に記載の磁気センサアレイ。
【請求項3】
前記センサ収容体は、前記感度軸方向と平行、且つ、前記第1及び第2の側面と直交し、互いに反対側に位置する第3及び第4の側面をさらに有し、
前記第3の連結部は、前記第3の側面の前記センサヘッド近傍に設けられ、
前記第4の連結部は、前記第4の側面の前記センサヘッド近傍に設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の磁気センサアレイ。
【請求項4】
前記第1の連結部と前記一対の第2の連結部を軸支する回転軸が非磁性材料からな
り、ナットによって固定可能なネジであることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の磁気センサアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の磁気センサからなる磁気センサアレイに関し、特に、複数の磁気センサ間の角度が可変である磁気センサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図2には、複数の磁気センサの位置を一方向にスライド可能な磁気センサアレイが開示されている。また、特許文献1の
図14には、複数の磁気センサを可撓性材料からなる保持部によって保持した磁気センサアレイが開示されている。これらの磁気センサアレイによれば、測定対象物の表面が曲面であっても、複数の磁気センサを測定対象物の表面に近接させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の
図2に記載された磁気センサアレイは、磁気センサの位置を一方向にスライドできるのみであることから、測定対象物の表面が曲面である場合、磁気センサを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てることができなかった。一方、特許文献1の
図14に記載された磁気センサアレイは、測定対象物の表面が曲面であっても磁気センサを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てることが可能であるが、保持部が可撓性材料からなることから、磁気センサを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てた状態を保持することが困難であった。
【0005】
したがって、本発明は、測定対象物の表面が曲面であっても磁気センサを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てることが可能であり、且つ、その状態を容易に維持することが可能な磁気センサアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気センサアレイは、複数の磁気センサを備える磁気センサアレイであって、複数の磁気センサのそれぞれは、センサチップと、センサチップを収容するセンサ収容体と、センサ収容体に設けられた第1及び第2の連結部とを含み、複数の磁気センサは、隣接する一方の磁気センサに設けられた第1の連結部と他方の磁気センサに設けられた第2の連結部が互いに軸支されることにより連結されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1及び第2の連結部を軸として隣接する2つの磁気センサの相対的な角度を変化させることができる。このため、測定対象物の表面が曲面であっても複数の磁気センサを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てることが可能であり、且つ、その状態を容易に維持することが可能となる。
【0008】
本発明において、センサ収容体は、磁気センサの感度軸方向に対して垂直なセンサヘッドと、感度軸方向と平行であり、互いに反対側に位置する第1及び第2の側面とを有し、第1の連結部は第1の側面のセンサヘッド近傍に設けられ、第2の連結部は第2の側面のセンサヘッド近傍に設けられても構わない。これによれば、一方向に連結した複数の磁気センサを扇形に変形させることが可能となる。
【0009】
本発明において、複数の磁気センサは第1及び第2のグループ含む複数のグループを構成し、第1のグループに属する磁気センサの少なくとも一つはセンサ収容体に設けられた第3の連結部をさらに含み、第2のグループに属する磁気センサの少なくとも一つはセンサ収容体に設けられた第4の連結部をさらに含み、第1及び第2のグループは第3の連結部と第4の連結部が互いに軸支されることにより連結されていても構わない。これによれば、第1及び第2の連結部を軸として同一のグループに属する複数の磁気センサの相対的な角度を変化させることができるとともに、第3及び第4の連結部を軸として異なるグループに属する複数の磁気センサの相対的な角度を変化させることができる。
【0010】
本発明において、センサ収容体は、感度軸方向と平行、且つ、第1及び第2の側面と直交し、互いに反対側に位置する第3及び第4の側面をさらに有し、第3の連結部は第3の側面のセンサヘッド近傍に設けられ、第4の連結部は第4の側面のセンサヘッド近傍に設けられていても構わない。これによれば、複数のセンサヘッドからなる測定面を球面状に変形させることが可能となる。
【0011】
本発明において、第1の連結部と第2の連結部を軸支する回転軸が非磁性材料からなるものであっても構わない。回転軸が磁気ノイズの原因となることがなくなる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、測定対象物の表面が曲面であっても磁気センサを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てることが可能であり、且つ、その状態を容易に維持することが可能な磁気センサアレイを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサアレイ1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、磁気センサ10の内部構造の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、センサチップ22の略平面図である。
【
図6】
図6は、磁気センサアレイ1を変形させた状態を示す略斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態による磁気センサアレイ2の外観を示す略斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施形態による磁気センサアレイ3の外観を示す略斜視図である。
【
図9】
図9は、磁気センサアレイ3を変形させた状態を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサアレイ1の外観を示す略斜視図である。
【0016】
図1に示すように、第1の実施形態による磁気センサアレイ1は、z方向を長手方向とする複数の磁気センサ10がx方向に配列された構成を有している。各磁気センサ10の感度軸方向はz方向である。
図1に示す例では、7個の磁気センサ10によって磁気センサアレイ1が構成されているが、磁気センサアレイを構成する磁気センサ10の数については特に限定されない。
【0017】
個々の磁気センサ10は、センサ収容体20と、センサ収容体20の側面S1に設けられた連結部11と、センサ収容体20の側面S2に設けられた連結部12とを有している。側面S1,S2はいずれもyz面を構成し、互いに反対側に位置する。
図1に示すように、一つのセンサ収容体20には一対の連結部12が設けられている。一対の連結部12のy方向における間隔は、連結部11のy方向における厚みとほぼ同じかやや小さく設計されており、x方向に隣接する一方の磁気センサ10に設けられた連結部11が他方の磁気センサ10に設けられた一対の連結部12間に挿入される。そして、連結部11,12に設けられた貫通孔に回転軸15が挿入されることにより、連結部11,12が回転軸15によって互いに軸支される。回転軸15の軸方向はy方向であり、回転軸15の軸方向と磁気センサ10が重ならないようレイアウトされている。回転軸15は、連結部11,12を回転可能に軸支する部材であれば特に限定されず、ネジや弾性体を用いることができる。回転軸15は、非磁性材料からなることが好ましい。
【0018】
図2は、磁気センサ10の内部構造の一例を示す模式図である。
【0019】
図2に示すように、磁気センサ10は、非磁性材料からなるセンサ収容体20と、センサ収容体20に収容された基板21と、基板21に搭載されたセンサチップ22及び集磁体23を備えている。集磁体23はz方向に延在する棒状体であり、フェライトなどの高透磁率材料からなる。センサ収容体20のうち、集磁体23のz方向における一端が位置するxy面はセンサヘッドHを構成する。集磁体23のz方向における他端にはセンサチップ22が配置される。これにより、センサヘッドHの近傍に位置する測定対象物から発せられるz方向の信号磁場成分が集磁体23によって集磁され、センサチップ22に印加される。
【0020】
上述の通り、センサ収容体20には連結部11,12が設けられている。ここで、連結部11は側面S1のセンサヘッドH近傍に設けられ、連結部12は側面S2のセンサヘッドH近傍に設けられている。
【0021】
図3はセンサチップ22の略平面図であり、
図4は
図3に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0022】
図3及び
図4に示すように、センサチップ22の素子形成面には、4つの磁気抵抗効果素子M1~M4と、キャンセルコイルC1が集積されている。キャンセルコイルC1は絶縁膜24で覆われ、絶縁膜24上に磁気抵抗効果素子M1~M4が形成されている。磁気抵抗効果素子M1~M4は、絶縁膜25で覆われる。そして、集磁体23はz方向から見て、磁気抵抗効果素子M1,M2と磁気抵抗効果素子M3,M4の間に配置される。これにより、集磁体23によって集磁されたz方向の磁界は、センサチップ22の素子形成面上で+x方向及び-x方向に分配される。その結果、磁気抵抗効果素子M1,M2と磁気抵抗効果素子M3,M4には、互いに逆方向の磁界成分が印加される。ここで、磁気抵抗効果素子M1~M4の固定磁化方向はいずれも+x方向又は-x方向に揃えられている。
【0023】
また、キャンセルコイルC1は、磁気抵抗効果素子M1~M4と重なるように配置されており、キャンセルコイルC1にキャンセル電流を流すと、磁気抵抗効果素子M1,M2と磁気抵抗効果素子M3,M4には、互いに逆方向のキャンセル磁界が印加される。
【0024】
【0025】
図5に示すように、磁気センサ10に含まれる磁気抵抗効果素子M1~M4はブリッジ接続され、これにより生成される差動信号が差動アンプ31に供給される。差動アンプ31は、差動信号に基づいてフィードバック電流Fを生成する。フィードバック電流Fは、キャンセルコイルC1に流れる。これにより、キャンセルコイルC1は、磁気センサ10の出力信号である差動信号成分がゼロとなるよう、キャンセル磁界を発生させる。フィードバック電流Fは、抵抗Rによって電流電圧変換される。そして、抵抗Rの両端間電圧を測定する電圧測定回路32によって、フィードバック電流Fに比例した検出信号Voutが生成される。
【0026】
図6は、本実施形態による磁気センサアレイ1を変形させた状態を示す略斜視図である。
【0027】
図6に示すように、本実施形態による磁気センサアレイ1は、回転軸15を中心として磁気センサアレイ1を変形させることにより、隣接する2つの磁気センサ10が成す角度θを変えることができる。
図6に示す破線Z1,Z2は、隣接する2つの磁気センサ10の感度軸方向である。このように、複数の磁気センサ10を扇形に変形させれば、複数の磁気センサ10のセンサヘッドHからなる測定面を円弧状とすることができる。これにより、測定対象物の表面が曲面であっても複数のセンサヘッドHを測定対象物の表面に対して垂直に押し当てることが可能となる。また、磁気センサアレイ1を変形させた状態は、回転軸15の摩擦力によって維持することが可能である。磁気センサアレイ1の姿勢をより確実に維持するためには、回転軸15としてネジを用い、ナットによってネジを固定すればよい。この場合であっても、ネジ及びナットの材料としては非磁性材料を用いることが好ましい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態による磁気センサアレイ1は、複数の磁気センサ10が回転軸15を介して連結されていることから、測定対象物の表面形状に合わせて複数のセンサヘッドHからなる測定面の形状を変化させることができる。
【0029】
図7は、本発明の第2の実施形態による磁気センサアレイ2の外観を示す略斜視図である。
【0030】
図7に示すように、第2の実施形態による磁気センサアレイ2は、x方向における両端部に位置する磁気センサ10のセンサ収容体20に連結部13,14が設けられている点において、第1の実施形態による磁気センサアレイ1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による磁気センサアレイ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
連結部13,14は、それぞれセンサ収容体20の側面S3,S4に設けられており、そのz方向位置は連結部11,12と同じである。連結部13の形状は連結部11と同じであり、連結部14の形状は連結部12と同じである。側面S3,S4はいずれもxz面を構成し、互いに反対側に位置する。これにより、第2の実施形態による磁気センサアレイ2をy方向に複数個連結することが可能となる。
【0032】
図8は、本発明の第3の実施形態による磁気センサアレイ3の外観を示す略斜視図である。
【0033】
図8に示すように、第3の実施形態による磁気センサアレイ3は、第2の実施形態による磁気センサアレイ2をy方向に複数個連結した構成を有している。
図8に示す例では、第2の実施形態による磁気センサアレイ2と同じ構成を有するグループG1~G4を備えており、y方向に隣接する一方のグループ(例えばグループG1)に設けられた連結部13と他方のグループ(例えばグループG2)に設けられた連結部14が回転軸16によって互いに軸支されることにより、複数のグループG1~G4がy方向に連結されている。回転軸16の軸方向はx方向であり、回転軸16の軸方向と磁気センサ10が重ならないようレイアウトされている。回転軸16は、回転軸15と同じ材料を用いることができる。
【0034】
図9は、本実施形態による磁気センサアレイ3を変形させた状態を示す略斜視図である。
図9に示すように、本実施形態による磁気センサアレイ3は、回転軸15,16を中心として複数の磁気センサ10の角度を変化させることにより、複数のセンサヘッドHからなる測定面を球面状に変形させることが可能となる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1~3 磁気センサアレイ
10 磁気センサ
11~14 連結部
15,16 回転軸
20 センサ収容体
21 基板
22 センサチップ
23 集磁体
24,25 絶縁膜
31 差動アンプ
32 電圧測定回路
C1 キャンセルコイル
F フィードバック電流
G1~G4 グループ
H センサヘッド
M1~M4 磁気抵抗効果素子
R 抵抗
S1~S4 側面