IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-遮断装置 図1
  • 特許-遮断装置 図2
  • 特許-遮断装置 図3
  • 特許-遮断装置 図4
  • 特許-遮断装置 図5
  • 特許-遮断装置 図6
  • 特許-遮断装置 図7
  • 特許-遮断装置 図8
  • 特許-遮断装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/574 20210101AFI20240409BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M50/574
H01M50/50 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020105529
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197343
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】安達 紀和
(72)【発明者】
【氏名】新開 竜一郎
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098055(JP,A)
【文献】特開2018-026367(JP,A)
【文献】特開2018-006080(JP,A)
【文献】特開2009-301931(JP,A)
【文献】特開2015-153676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気機器(110,130)と第2電気機器(100)とを接続する第1配線(210,220)に接続されて、電解液に溶解する金属によって形成される第1金属電極(71)と、
前記第1電気機器と前記第2電気機器とを接続する第2配線(240)に接続されるとともに、前記第1金属電極よりも低い電圧が印加され、前記第1金属電極と離間して対向配置される第2金属電極(72)と、を有し、
前記第1金属電極は、導電部(76)と、電解液によって、前記導電部より早く破断する破断部(77)を有し、
前記第1金属電極の延長方向に直交する方向の厚さは、前記第1金属電極と前記第2金属電極との間の対向間隔よりも短くなっている遮断装置。
【請求項2】
前記第1金属電極は前記第2金属電極と比べて表面粗さが荒くなっている請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
前記第1金属電極と前記第2金属電極それぞれの延長方向の横断断面積は同等である請求項2に記載の遮断装置。
【請求項4】
前記第1金属電極は、一体的に連結された導電部(76)と破断部(77)とを有し、
前記導電部と前記破断部それぞれの延長方向の横断断面積は互いに同等であり、
前記破断部は前記導電部よりも表面積が広い請求項1~3いずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項5】
前記第1金属電極の少なくとも一部は、Cu、Al、Zn、Fe、および、Niの少なくとも1つを含む請求項1~4いずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項6】
前記第1金属電極と前記第2金属電極の他に、前記第1金属電極と前記第2金属電極との間の電圧を検出する電圧センサ(80)と、前記第1電気機器と前記第2電気機器との間の通電と遮断とを制御するスイッチ(31~34)と、前記電圧センサの検出結果に基づいて前記スイッチを通電状態と遮断状態とに制御する制御部(22)と、を有する請求項1~5いずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項7】
前記第1電気機器は電源(110)であり、
前記第2電気機器は電池(10)がケース(90)に収納された電池パック(100)であり、
前記第1配線は前記電源の正極に接続され、前記第2配線は前記電源の負極に接続される請求項1~6いずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項8】
前記第1金属電極と前記第2金属電極それぞれの少なくとも一部が前記電池パックの中に設けられる請求項7に記載の遮断装置。
【請求項9】
前記第1金属電極は前記電池の正電極に電気的に接続される第1取り出し電極から前記ケースの外側に向かって延長し、
前記第2金属電極は前記電池の負電極に電気的に接続される第2取り出し電極から前記ケースの外側に向かって延長している請求項8に記載の遮断装置。
【請求項10】
前記第1金属電極と前記第2金属電極それぞれは前記電池パックの外に設けられる請求項7に記載の遮断装置。
【請求項11】
前記第1配線は第1電源側配線(211)と第1電池側配線(212)とを有し、
前記第2配線は第2電源側配線(241)と第2電池側配線(242)とを有し、
前記第1金属電極は前記第1電源側配線と前記第1電池側配線とを電気的および機械的に連結し、
前記第2金属電極は前記第2電源側配線と前記第2電池側配線とを電気的および機械的に連結する請求項10に記載の遮断装置。
【請求項12】
前記電源と前記電池パックは車両(300)に搭載されており、
前記第1金属電極と前記第2金属電極それぞれは前記ケースの中と外とを連通する連通窓(96)よりも前記車両の車底側に設けられる請求項7~11いずれか1項に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、電気的な通電を遮断する遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、コネクタと、温度素子と、電流センス抵抗と、電池コントローラと、ヒューズFUSE用スイッチと、ヒューズと、を有する電池パックが知られている。電池コントローラは温度素子と電流センス抵抗の検出結果から、水の付着によってコネクタに発熱異常が生じているか否かを検出する。電池コントローラはこの発熱異常を検出するとヒューズFUSE用スイッチをオンして、ヒューズを溶断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-54342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように特許文献1に記載の電池パックは、水の付着による発熱異常を検出するセンサ要素や通電を遮断するための制御要素などを備えている。水の付着に対応するための構成要素(部品点数)が多い、という問題がある。
【0005】
本開示の目的は、電気的な通電を遮断するための部品点数の削減された遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による遮断装置は、第1電気機器(110,130)と第2電気機器(100)とを接続する第1配線(210,220)に接続されて、電解液に溶解する金属によって形成される第1金属電極(71)と、
第1電気機器と第2電気機器とを接続する第2配線(240)に接続されるとともに、第1金属電極よりも低い電圧が印加され、第1金属電極と離間して対向配置される第2金属電極(72)と、を有し、
第1金属電極は、導電部(76)と、電解液によって、導電部より早く破断する破断部(77)を有し、
第1金属電極の延長方向に直交する方向の厚さは、第1金属電極と第2金属電極との間の対向間隔よりも短くなっている。
【0007】
これによれば、第1金属電極(71)と第2金属電極(72)とがともに塩などの電解質を含む水などの電解液に浸漬されると、第1金属電極(71)を構成する金属材料が金属イオンとなって電解液に電離する。これにより第1金属電極(71)の厚さが薄くなる。そしてついには第1金属電極(71)が複数に分離する。この結果、第1配線(210,220)を介した第1電気機器(110,130)と第2電気機器(100)との電気的な接続が遮断される。
【0008】
このように本開示によれば、第1金属電極(71)と第2金属電極(72)とが塩などの電解質を含む水などに浸漬されると、自動的に、第1配線(210,220)を介した第1電気機器(110,130)と第2電気機器(100)との電気的な接続が遮断される。そのため、電気的な通電を遮断するための部品点数が削減される。
【0009】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電源システムを示すブロック図である。
図2】蓄電池と電池パックの車載状態を示す模式図である。
図3】筐体の上面図である。
図4】筐体に組電池、バスバモジュール、および、回路基板が設けられた状態を示す上面図である。
図5】第1接続端部と第2接続端部の上面図である。
図6】第1接続端部の側面図である。
図7】蓄電池と電池パックとの接続状態を示す上面図である。
図8】第2実施形態における蓄電池と電池パックとの接続状態を示す上面図である。
図9】第3実施形態における蓄電池と電池パックとの接続状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0012】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
図1図7に基づいて遮断装置70を含む電池パック100、および、それの適用される電源システム200を説明する。
【0014】
<電源システムの概要>
電源システム200は車両300に搭載される。電源システム200は車両300に搭載された複数の車載機器と電池パック100とによって構成されている。車載機器の1つとして蓄電池110がある。電池パック100は組電池10を有している。電源システム200はこれら蓄電池110と組電池10とによって2電源システムを構築している。
【0015】
他の車載機器としてエンジン140がある。電源システム200を搭載する車両300は、所定の停止条件が満たされるとエンジン140を停止し、所定の始動条件が満たされるとエンジン140を再始動するアイドルストップ機能を有する。
【0016】
図1に示すように電源システム200は、上記した蓄電池110とエンジン140の他に、スタータモータ120、回転電機130、電気負荷150、上位ECU160、および、MGECU170を有する。電気負荷150は第1負荷151と第2負荷152を有する。なお図面では上位ECU160をTECUと表記している。
【0017】
蓄電池110、スタータモータ120、および、第1負荷151それぞれは、第1ワイヤハーネス210を介して電池パック100と電気的に接続されている。回転電機130は第2ワイヤハーネス220を介して電池パック100と電気的に接続されている。第2負荷152は第3ワイヤハーネス230を介して電池パック100と電気的に接続されている。
【0018】
また蓄電池110には第4ワイヤハーネス240も電気的に接続されている。蓄電池110の正極に第1ワイヤハーネス210が接続されている。蓄電池110の負極に第4ワイヤハーネス240が接続されている。係る電気的な接続構成のため、第1ワイヤハーネス210と第4ワイヤハーネス240の電位差は、蓄電池110の出力電圧(電源電圧)と同等になっている。
【0019】
上位ECU160とMGECU170は図示しない配線を介して蓄電池110と組電池10それぞれと電気的に接続されている。同様にして、車両300に搭載された他の各種ECUも図示しない配線を介して蓄電池110と組電池10それぞれと電気的に接続されている。
【0020】
以上に示したように電源システム200は、蓄電池110と組電池10の2つを電源とする2電源システムを構築している。
【0021】
蓄電池110が第1電気機器と電源に相当する。電池パック100が第2電気機器に相当する。組電池10が電池に相当する。
【0022】
<電源システムの構成要素>
蓄電池110は化学反応によって起電圧を生成する。蓄電池110は組電池10よりも蓄電容量が多い。蓄電池110は具体的には鉛蓄電池である。なお蓄電池110としては例えばリチウムイオン蓄電池などの二次電池を採用することもできる。
【0023】
スタータモータ120はエンジン140を始動する。スタータモータ120はエンジン140の始動時にエンジン140と機械的に連結される。スタータモータ120の回転によってエンジン140のクランクシャフトが回転される。
【0024】
クランクシャフトの回転数が所定回転数を超えると、燃料噴射弁から燃焼室に霧状の燃料が噴射される。この際に点火プラグで火花が生成される。これにより燃料が爆発し、エンジン140が自律回転し始める。このエンジン140の動力によって車両300の推進力が得られる。エンジン140が自律回転し始めると、スタータモータ120とエンジン140との機械的な連結が解除される。
【0025】
回転電機130は力行と発電を行う。回転電機130には図示しない電力変換器が接続されている。この電力変換器が第2ワイヤハーネス220に電気的に接続されている。
【0026】
電力変換器は蓄電池110と組電池10のうちの少なくとも一方から供給された直流電力を交流電力に変換する。この交流電力が回転電機130に供給される。これにより回転電機130は力行する。
【0027】
回転電機130はエンジン140と連結されている。回転電機130とエンジン140とは、ベルトなどを介して相互に回転エネルギーを伝達可能になっている。回転電機130の力行によって生じた回転エネルギーがエンジン140に伝達される。これによりエンジン140の回転が促進される。この結果、車両走行がアシストされる。
【0028】
上記したように電源システム200を搭載する車両300はアイドルストップ機能を有する。回転電機130は車両走行のアシストだけではなく、エンジン140の再始動時においてクランクシャフトを回転させる機能も果たす。
【0029】
回転電機130はエンジン140の回転エネルギー、および、車輪の回転エネルギーの少なくとも一方によって発電する機能も有する。回転電機130は発電によって交流電力を生成する。この交流電力が電力変換器によって直流電力に変換される。この直流電力が、電池パック100、蓄電池110、および、電気負荷150それぞれに供給される。
【0030】
エンジン140は燃料を燃焼駆動することで車両300の推進力を生成する。上記したようにエンジン140の始動時においては、スタータモータ120によってクランクシャフトが回転される。しかしながらアイドルストップによってエンジン140が一度停止した後に再び始動する際には、上記の所定の始動条件が満たされる場合、回転電機130によってクランクシャフトが回転される。
【0031】
上記したように電気負荷150は第1負荷151と第2負荷152を有する。第1負荷151には、シートヒータ、送風ファン、電動コンプレッサ、ルームライト、および、ヘッドライトなどの供給電力が一定でなくともよい車載機器が含まれる。第2負荷152には、電動シフトポジション、電動パワーステアリング(EPS)、ブレーキ(ABS)、ドアロック、ナビゲーションシステム、および、オーディオなどの供給電力が一定であることが求められる車載機器が含まれる。
【0032】
ここに例示した第2負荷152は供給電圧がリセット閾値を下回るとオン状態からオフ状態へと切り換わる性質を有する。第2負荷152には第1負荷151よりも車両走行に関連性の高い車載機器が含まれる。
【0033】
なお、上記した各種車載機器が第1負荷151と第2負荷152に含まれる構成は一例に過ぎない。車載システムの変更などに応じて、各種車載機器を第1負荷151と第2負荷152に適宜振り分けることができる。例えば第1負荷151にEPSやABSが含まれる構成を採用することができる。
【0034】
上位ECU160とMGECU170は車両300に搭載された各種ECUのうちの1つである。これら各種ECUはバス配線161を介して互いに電気的に接続され、車載ネットワークを構築している。各種ECUが協調制御することで、エンジン140の燃焼および回転電機130の力行や発電などが制御される。上位ECU160は電池パック100を制御する。MGECU170は回転電機130を制御する。
【0035】
また図示しないが、電源システム200は、上記した各車載機器の他に、各種電圧や電流などの物理量、および、アクセルペダルの踏み込み量やスロットルバルブ開度などの車両情報を測定するためのセンサを有している。これら各種センサの検出した検出信号は、各種ECUに入力される。なお、ECUはelectronic control unitの略である。
【0036】
<電池パックの概要>
電池パック100は図1および図2に示す組電池10、回路基板20、スイッチ30、センサ部40、給電バスバ50、バスバケース60、および、パックケース90を有する。
【0037】
バスバケース60は絶縁性の樹脂材料から成る。バスバケース60には給電バスバ50を収納するための複数の溝が形成されている。給電バスバ50とバスバケース60とによってバスバモジュールが構成されている。
【0038】
パックケース90は筐体91とカバー92を有する。筐体91によって収納空間が構成されている。この収納空間の開口がカバー92によって閉塞されている。収納空間には、組電池10、回路基板20、スイッチ30、センサ部40、および、バスバモジュールそれぞれが収納されている。パックケース90がケースに相当する。
【0039】
組電池10は蓄電池110よりも体格が小さく、重量も軽くなっている。組電池10は蓄電池110よりもエネルギー密度が高い性質を有する。
【0040】
回路基板20は配線基板21とBMU22を有する。配線基板21にはスイッチ30の一部とBMU22が搭載されている。そして配線基板21にはスイッチ30の残りと組電池10とが給電バスバ50を介して電気的に接続されている。また図示しない信号線などを介してセンサ部40が配線基板21に電気的に接続されている。これにより電池パック100の電気回路が構成されている。
【0041】
当然ながらにして、電気回路には銅などの導電性を備える各種金属成分が含まれている。電位の異なる複数の金属配線や、それらと電気的に接続された各種電子素子が電気回路に含まれている。
【0042】
電池パック100の電気回路は図1において二重丸で示す外部接続端子と電気的に接続されている。この外部接続端子としては、第1外部接続端子100a、第2外部接続端子100b、第3外部接続端子100c、第4外部接続端子100d、および、第5外部接続端子100eがある。
【0043】
第1外部接続端子100aは第1ワイヤハーネス210を介して蓄電池110、スタータモータ120、および、第1負荷151それぞれと電気的に接続されている。第2外部接続端子100bは第2ワイヤハーネス220を介して回転電機130と電気的に接続されている。
【0044】
第3外部接続端子100cは筐体91に形成されたボルト孔である。第3外部接続端子100cはボルト、若しくは、ワイヤハーネスを介して車両300のフロアパネルと接続される。これにより筐体91はグランド電位になっている。電池パック100はボディアースされている。
【0045】
第4外部接続端子100dは第3ワイヤハーネス230を介して第2負荷152と電気的に接続されている。第5外部接続端子100eは第4ワイヤハーネス240を介して蓄電池110と電気的に接続されている。
【0046】
蓄電池110に対するワイヤハーネスの接続場所を詳しく説明すると、蓄電池110の正極に第1ワイヤハーネス210が接続されている。蓄電池110の負極に第4ワイヤハーネス240が接続されている。
【0047】
<電池パックの構成要素>
次に、電池パック100の構成を説明する。それにあたって、以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、および、z方向と示す。z方向は車両300の天地方向に沿っている。車両300が水平面に停車している場合、z方向は鉛直方向に沿う。x方向とy方向は水平方向に沿う。図面ではこれら3方向の「方向」の記載を省略して、単にx、y、zと表記している。
【0048】
図2に示すように電池パック100はz方向において蓄電池110よりも車両300の車底(フロアパネル)側に設けられる。換言すれば、蓄電池110はz方向において電池パック100よりも車両300の天板側に設けられる。
【0049】
組電池10は複数の直列接続された電池セルを有する。電池セルは具体的にはリチウムイオン蓄電池である。リチウムイオン蓄電池は化学反応によって起電圧を生成する。なお電池セルとしては、ニッケル水素二次電池、有機ラジカル電池などの二次電池を採用することができる。
【0050】
電池セルは直方体形状を成している。そのために電池セルは6面を有する。これら6面のうちの2つの主面は他の4面と比べて面積が広くなっている。これら2つの主面は並んでおり、両者の間の長さ(厚さ)が薄くなっている。
【0051】
複数の電池セルは主面同士が互いに対向する態様で、x方向、y方向、および、z方向のいずれかの方向で並んでいる。これによって電池スタックが構成されている。これら複数の電池セルの配置が電池ケースによって保持されている。
【0052】
電池ケースは樹脂から成る拘束部と、拘束部に設けられる接続端子と、を有する。接続端子としては、複数の電池セルを直列接続する直列接続端子がある。これら直列接続端子と対応する電池セルの電極端子とを接触させ、その接触状態で両者を溶接接合する。これにより複数の電池セルが直列接続される。
【0053】
また接続端子としては、上記の直列接続端子の他に、複数の直列接続された電池セルのうちの最高電位に位置する電池セルの正極端子と溶接接合される出力端子と、最低電位に位置する電池セルの負極端子と溶接接合される接地端子と、がある。
【0054】
電池ケースは筐体91にボルト止めされる。電池ケースはz方向において筐体91とカバー92との間に設けられる。換言すれば、組電池10はz方向において筐体91とカバー92との間に設けられる。
【0055】
上記したように回路基板20は配線基板21とBMU22を有する。配線基板21は絶縁基板に導電材料からなる配線パターン23の形成されたプリント基板である。配線基板21はボルトなどを介して筐体91に固定されている。配線基板21(回路基板20)はz方向において組電池10とカバー92との間に設けられる。
【0056】
絶縁基板の表面および内部の少なくとも一方に配線パターン23が形成されている。そして配線基板21には配線パターン23と電気的に接続される端子が形成されている。この端子としては、第1内部端子28a、第2内部端子28b、および、第3内部端子28cがある。これら複数の内部端子と配線パターン23との電気的な接続の説明は、後の電池パック100の回路構成の説明の際に行う。
【0057】
スイッチ30は第1スイッチ31~第4スイッチ34を有する。第1スイッチ31と第2スイッチ32は筐体91に搭載される。第3スイッチ33と第4スイッチ34は配線基板21に搭載される。
【0058】
第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれは半導体スイッチを備えている。この半導体スイッチは具体的にはNチャネル型MOSFETである。したがって第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれはハイレベルの制御信号の入力によって閉状態になる。第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれはローレベルの制御信号の入力によって開状態になる。
【0059】
なお、第1スイッチ31~第4スイッチ34の備える半導体スイッチとしてはIGBTなどを採用することもできる。この場合、IGBTには別体のダイオードが並列接続される。半導体スイッチの構成材料としてはSiなどの半導体、SiCなどのワイドギャップ半導体などを適用することができる。
【0060】
第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれは、直列接続された2つのMOSFETを備える開閉部を少なくとも1つ有する。これら2つのMOSFETはソース電極同士が連結されている。2つのMOSFETのゲート電極は電気的に独立している。ゲート電極は回路基板20と電気的に接続される。MOSFETは寄生ダイオードを有する。2つのMOSFETの寄生ダイオードは互いにアノード電極同士が連結されている。
【0061】
第1スイッチ31~第4スイッチ34はそれぞれ複数の開閉部を有する。複数の開閉部は並列接続されている。そして第3スイッチ33と第4スイッチ34では複数の開閉部の有する直列接続された2つのMOSFETのソース電極同士が互いに接続されている。
【0062】
本実施形態では第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれは開閉部を2つ有する。これら開閉部の数や並列接続および直列接続などの接続形態は電流量や冗長性などに応じて適宜定められる。
【0063】
開閉部の備える2つのMOSFETは樹脂部によって被覆されている。樹脂部は直方体形状を成している。
【0064】
上記したように電気回路にセンサ部40が電気的に接続されている。センサ部40は組電池10とスイッチ30それぞれの状態を検出するセンサ素子を有する。センサ部40はセンサ素子として、温度センサ、電流センサ、および、電圧センサを有する。
【0065】
センサ部40は組電池10の温度、電流、および、電圧を検出する。センサ部40はそれを組電池10の状態信号としてBMU22に出力する。またセンサ部40はスイッチ30の温度、電流、および、電圧を検出する。センサ部40はそれをスイッチ30の状態信号としてBMU22に出力する。
【0066】
なおスイッチ30の温度を検出する温度センサは、直列接続された2つのMOSFETとともに上記の樹脂部によって被覆保護される検温ダイオードである。スイッチ30の電流を検出する電流センサは、直列接続された2つのMOSFETの間に設けられたシャント抵抗である。これら温度センサと電流センサそれぞれの入出力端子の端部が上記の樹脂部から露出されている。これら複数の入出力端子の端部が回路基板20に接続されている。
【0067】
BMU22はセンサ部40の状態信号、および、上位ECU160からの指令信号の少なくとも一方に基づいてスイッチ30を制御する。BMUはbattery management unitの略である。
【0068】
上記したように第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれは複数の半導体スイッチを有する。例えば第1スイッチ31の開閉を制御する場合、BMU22は第1スイッチ31の有する全ての半導体スイッチを同時に閉状態、若しくは、同時に開状態に制御する。例えばBMU22は、第1スイッチ31の有する全ての半導体スイッチの制御電極(ゲート電極)にハイレベルの制御信号、若しくは、ローレベルの制御信号を同時に出力する。
【0069】
なおBMU22は、半導体スイッチを閉状態にする期間において、ハイレベルの制御信号を間断的に出力することで半導体スイッチの閉時間を調整してもよい。簡単に言えば、BMU22は半導体スイッチをパルス幅制御してもよい。
【0070】
BMU22はセンサ部40の状態信号に基づいて組電池10の充電状態(SOC)やスイッチ30の異常を判定する。SOCはstate of chargeの略である。BMU22はこれらSOCや異常を判定した信号(判定情報)を上位ECU160に出力する。
【0071】
上位ECU160はBMU22から入力された判定情報、および、他の各種ECUから入力された車両情報に基づいてスイッチ30の制御を決定する。そして上位ECU160はその決定したスイッチ30の制御を含む指令信号をBMU22に出力する。
【0072】
BMU22は、上記の検温ダイオードで検出された温度がスイッチ30の動作保証温度程度まで上昇したと判断すると、スイッチ30の駆動を制限する。同様にしてBMU22は、シャント抵抗で検出された電流がスイッチ30の動作保証電流程度まで上昇したと判断すると、スイッチ30の駆動を制限する。例えばスイッチ30の半導体スイッチをパルス幅制御していた場合、BMU22はそのオンデューティ比を低める。これにより半導体スイッチの通電時間が短くなる。この結果、半導体スイッチの発熱が抑制される。
【0073】
給電バスバ50は銅などの金属材料を含有する導電材料から成る。給電バスバ50は第1給電バスバ51、第2給電バスバ52、第3給電バスバ53、第4給電バスバ54、および、第5給電バスバ55を有する。これら複数の給電バスバによって組電池10、回路基板20、第1スイッチ31、第2スイッチ32、および、外部接続端子それぞれが電気的に接続されている。図1ではこれら5つの給電バスバそれぞれを配線基板21の給電線よりも太くして図示している。
【0074】
上記したようにパックケース90は筐体91とカバー92を有する。筐体91はアルミダイカストで製造することができる。また筐体91は鉄やステンレスをプレス加工することによっても製造することができる。カバー92は筐体91と同等の金属材料で製造される。若しくは、カバー92は絶縁性の樹脂材料で製造される。
【0075】
<電池パックの回路構成>
次に、電池パック100の回路構成を説明する。
【0076】
以下に示す各給電バスバと各スイッチとの接続はTIG溶接によって行われる。各給電バスバと回路基板20との接続はろう接によって行われる。なお、各給電バスバと各スイッチとはレーザ溶接によって接続してもよい。
【0077】
図1に示すように第1外部接続端子100aと第1スイッチ31の一端とが第1給電バスバ51を介して電気的に接続されている。第1給電バスバ51から一部が分岐している。この第1給電バスバ51の分岐部位51aが配線基板21の第1内部端子28aと電気的に接続されている。
【0078】
第1スイッチ31の他端と第2外部接続端子100bとが第2給電バスバ52を介して電気的に接続されている。第2給電バスバ52から一部が分岐している。この第2給電バスバ52の分岐部位52aが第2スイッチ32の一端と電気的に接続されている。
【0079】
第2スイッチ32の他端と組電池10の正極とが第3給電バスバ53を介して電気的に接続されている。第3給電バスバ53から一部が分岐している。この第3給電バスバ53の分岐部位53aが配線基板21の第2内部端子28bと電気的に接続されている。
【0080】
組電池10の負極は第5給電バスバ55を介して第5外部接続端子100eと電気的に接続されている。それとともに組電池10の負極はヒューズを介して第3外部接続端子100cに電気的に接続されている。
【0081】
配線基板21の第2内部端子28bと第1内部端子28aとが配線パターン23を介して電気的に接続されている。この配線パターン23に、第2内部端子28bから第1内部端子28aに向かって順に第3スイッチ33と第4スイッチ34が直列接続されている。
【0082】
配線基板21の第3内部端子28cは、配線パターン23における第3スイッチ33と第4スイッチ34との間の中点と電気的に接続されている。そして第3内部端子28cは第4給電バスバ54を介して第4外部接続端子100dと電気的に接続されている。
【0083】
以上に示したように、第1スイッチ31~第4スイッチ34が順に環状に接続されている。そして、第1スイッチ31と第2スイッチ32との間の中点が第2外部接続端子100bに接続されている。第2スイッチ32と第3スイッチ33との間の中点が組電池10の正極に接続されている。第3スイッチ33と第4スイッチ34との間の中点が第4外部接続端子100dに接続されている。第4スイッチ34と第1スイッチ31との間の中点が第1外部接続端子100aに接続されている。
【0084】
以上に示した電気的な接続構成により、第1スイッチ31を開閉制御することで第1外部接続端子100aと第2外部接続端子100bとの電気的な接続が制御される。換言すれば、第1スイッチ31を開閉制御することで蓄電池110と回転電機130との電気的な接続が制御される。
【0085】
第2スイッチ32を開閉制御することで第2外部接続端子100bと組電池10との電気的な接続が制御される。換言すれば、第2スイッチ32を開閉制御することで回転電機130と組電池10との電気的な接続が制御される。
【0086】
第3スイッチ33を開閉制御することで第2内部端子28bと第3内部端子28cとの電気的な接続が制御される。換言すれば、第3スイッチ33を開閉制御することで組電池10と第2負荷152との電気的な接続が制御される。
【0087】
第4スイッチ34を開閉制御することで第1内部端子28aと第3内部端子28cとの電気的な接続が制御される。換言すれば、第4スイッチ34を開閉制御することで蓄電池110と第2負荷152との電気的な接続が制御される。
【0088】
<筐体>
図3に示すように筐体91は底壁93と側壁94を有する。底壁93はz方向で並ぶ内底面93aとその裏面とを有している。底壁93はこれら2つの面の間の厚さの薄い扁平形状を成している。なお、底壁93は設置される車底の形状や収納物の大きさと配置に応じて、局所的にz方向に凸となったり凹となったりしている。
【0089】
側壁94は底壁93の内底面93aからz方向に起立している。側壁94は内底面93a上で環状に延びている。側壁94の内底面93a側の内側面94aと内底面93aとによって収納空間が構成されている。この収納空間の開口が側壁94の先端側で区画されている。この開口がカバー92によって閉塞される。
【0090】
底壁93には車両300のフロアパネルと連結するためのフランジ95が一体的に連結されている。フランジ95と車両300のフロアパネルとはボルトを介して機械的に連結される。
【0091】
側壁94のz方向の長さは一定でなく、局所的にz方向に長かったり短かったりする。例えば図2図3に示すように、側壁94には、内底面93aから離間した先端面の一部が底壁93側に向かって局所的に凹んだ凹部96が形成されている。側壁94における凹部96の形成部位の先端面は、z方向において他の先端面よりも底壁93側に位置している。そして凹部96は収納空間に収納された回路基板20よりもz方向において底壁93側に位置している。
【0092】
上記したように、筐体91にカバー92が設けられることで、筐体91の開口が閉塞される。しかしながら側壁94における凹部96を区画する壁面とカバー92の壁面とはz方向で離間している。そのために凹部96を介して収納空間とその外側の空間とが連通可能になっている。凹部96が連通窓に相当する。
【0093】
側壁94の外側面94bには、収納空間から離れるように延びた舌部97が形成されている。舌部97は側壁94における凹部96と底壁93との間の部位に一体的に連結されている。舌部97はy方向に延びている。
【0094】
凹部96と舌部97とはz方向で離間するとともにx方向で並んでいる。凹部96と舌部97とによって筐体91に段差が形成されている。この段差にバスバケース60の一部が設けられる。
【0095】
<バスバケース>
図4に示すようにバスバケース60は本体部61、端子台62、および、接続ボルト63を有する。本体部61は収納空間に収納されている。この本体部61に第1給電バスバ51~第5給電バスバ55それぞれの大部分が収納されている。本体部61は組電池10の電池ケースとともに筐体91にボルト止めされる。そしてその上方に回路基板20が設けられる。
【0096】
第1給電バスバ51における本体部61内に収納された部位が第1取り出し電極に相当する。第5給電バスバ55における本体部61内に収納された部位が第2取り出し電極に相当する。
【0097】
端子台62は本体部61に一体的に連結されている。端子台62は本体部61から凹部96を介して収納空間の外側の空間へ延びている。端子台62は外側の空間で舌部97に向かってz方向に延びた後、舌部97上でy方向に延びている。端子台62は筐体91の段差に設けられている。
【0098】
接続ボルト63は頭部と軸部とを有する。接続ボルト63の頭部が端子台62に埋設されている。接続ボルト63の軸部は端子台62から収納空間の開口側に向かってz方向に延びている。
【0099】
<外部接続端子>
上記した第3外部接続端子100cを除く他の4つの外部接続端子それぞれはバスバケース60の端子台62と接続ボルト63とを共有している。図4ではこれら4つの外部接続端子の代表として第1外部接続端子100aと第5外部接続端子100eを図示している。
【0100】
<給電バスバ>
第1給電バスバ51~第5給電バスバ55それぞれの大部分は本体部61に収納される。しかしながらこれら複数の給電バスバそれぞれの一部が本体部61から露出されている。そしてこの露出された部位の一部が端子台62に設けられる。
【0101】
図4図5では5つの給電バスバの代表として、第1外部接続端子100aに接続される第1給電バスバ51と、第5外部接続端子100eに接続される第5給電バスバ55と、を図示している。
【0102】
以下においては表記を簡便とするため、第1給電バスバ51における本体部61から露出され、なおかつ端子台62に設けられる部位を第1接続端部71と示す。第5給電バスバ55における本体部61から露出され、なおかつ端子台62に設けられる部位を第2接続端部72と示す。
【0103】
<接続端部>
これら第1接続端部71と第2接続端部72は、共通構成要素として、延設部73、中継部74、および、接続部75を有する。図5図6に示すように延設部73と接続部75それぞれはz方向の厚さの薄い平板形状を成すとともに、y方向に延びている。中継部74はy方向の厚さの薄い平板形状を成すとともに、z方向に延びている。
【0104】
延設部73と接続部75とは中継部74のy方向の厚さ分だけy方向で離間している。それとともに延設部73と接続部75とは中継部74のz方向の長さ分だけz方向で離間している。中継部74はy方向とz方向それぞれにおいて延設部73と接続部75との間に位置している。中継部74はz方向において延設部73から接続部75へと向かって延びて、両者を一体的に連結している。
【0105】
延設部73は本体部61から離間するようにy方向に延びている。中継部74は延設部73の収納空間の外側の端部から舌部97に向かって延びている。接続部75は中継部74の舌部97側の端部から舌部97上を延びている。係る延長のため、接続部75は凹部96よりもz方向において底壁93側に位置している。すなわち、接続部75は回路基板20よりもz方向において底壁93側に位置している。
【0106】
接続部75はz方向で並ぶ上面70aと下面70b、および、x方向で並ぶ第1側面70cと第2側面70dを有する。y方向に延びる接続部75の横断断面積の厚さはこれら上面70aと下面70bとの間の長さ、および、第1側面70cと第2側面70dとの間の長さに相当する。
【0107】
図5に示すように第1接続端部71の接続部75の第2側面70dと第2接続端部72の接続部75の第1側面70cとはx方向で対向している。そしてこれら2つの接続部75はx方向で離間距離Dだけ離れている。
【0108】
接続部75には上面70aと下面70bとを貫通する貫通孔70eが形成されている。この貫通孔70eの下面70b側の開口から上面70a側の開口へと向かって、接続ボルト63の軸部が通される。
【0109】
そして、図示しないナットが接続ボルトの軸部に締結される。これにより接続部75がナットと端子台62との間で挟持される。この結果、給電バスバ50がバスバケース60に固定される。バスバモジュールが構成される。
【0110】
<ワイヤハーネス>
第1ワイヤハーネス210~第4ワイヤハーネス240それぞれは共通要素として金属端子251と絶縁電線252を有する。金属端子251はz方向に貫通する孔を備えている。絶縁電線252は導電線253とそれを被覆する絶縁被膜254とを有する。導電線253の端部は絶縁被膜254から露出されている。この導電線253の端部に金属端子251が熱カシメなどによって機械的および電気的に接続されている。
【0111】
図7では4つのワイヤハーネスの代表として第1ワイヤハーネス210と第4ワイヤハーネス240を図示している。第1ワイヤハーネス210の金属端子251の孔が第1外部接続端子100aの接続ボルト63の軸部の先端側に通される。同様にして、第4ワイヤハーネス240の金属端子251の孔が第5外部接続端子100eの接続ボルト63の軸部の先端側に通される。
【0112】
この接続ボルト63の軸部の先端側に図示しないナットが締結される。これにより金属端子251が2つのナットの間で挟持される。この結果、金属端子251が接続ボルト63の軸部に機械的に接続される。それとともに、第1ワイヤハーネス210の金属端子251と第1給電バスバ51の第1接続端部71とが電気的に接続される。第4ワイヤハーネス240の金属端子251と第5給電バスバ55の第2接続端部72とが電気的に接続される。
【0113】
<浸漬と短絡>
ところで、河川の氾濫や大雨などによって車両300が水に浸漬される虞がある。その河川や土壌に塩などのミネラル成分が多く含まれている場合、車両300は電解質を含む水(電解液)に浸漬される。
【0114】
電池パック100は蓄電池110よりも車両300の車底(フロアパネル)側に設けられる。そのために電池パック100は蓄電池110よりも電解液に浸漬されやすくなっている。筐体91の凹部96を介して、その内部へと電解液が浸漬し、電気回路を構成する回路基板20が電解液に浸漬される虞がある。
【0115】
回路基板20の電気回路には、銅などの導電性を備える各種金属成分が含まれている。それとともに電気回路には、電位の異なる複数の金属配線や、それらと電気的に接続された各種電子素子が含まれている。電位の異なる金属配線が並走している。
【0116】
そのため、電池パック100の回路基板20が電解液に浸漬された状態で、蓄電池110から電池パック100に電源電圧が供給されると、電気回路を構成する金属材料が金属イオンとなって電解液に電離する。この金属イオンは電解液を遊泳するとともに、電位の低い金属配線などに析出する。金属材料の析出によって、電位の異なる金属配線が短絡する虞がある。意図しない通電経路に電流が流れた結果、異常発熱が発生する虞がある。
【0117】
<遮断装置>
係る異常発熱の発生を抑制するため、図5に示すように第1接続端部71と第2接続端部72とをx方向で対向配置させている。そして図6に示すように第1接続端部71の接続部75のz方向の厚さを局所的に薄くしている。
【0118】
細分化して説明すると、第1接続端部71の接続部75はy方向で一体的に連結された導電部76と破断部77とを有する。導電部76に貫通孔70eが形成されている。破断部77のy方向に直交する方向の長さが第1接続端部71と第2接続端部72のx方向の離間距離Dよりも短くなっている。
【0119】
本実施形態では、y方向に延びる導電部76と破断部77それぞれのx方向の長さが等しくなっている。しかしながら導電部76のz方向の長さよりも破断部77のz方向の長さが短くなっている。そのためにy方向に延びる導電部76の横断断面積よりも破断部77の横断断面積が小さくなっている。以下においては破断部77のz方向の長さを厚さTと示す。この厚さTが離間距離Dよりも短くなっている。なお、破断部77のx方向の長さは離間距離Dよりも短くとも長くともよい。
【0120】
第1接続端部71に蓄電池110の正極が接続され、第2接続端部72に蓄電池110の負極が接続される。そのために第1接続端部71と第2接続端部72とには蓄電池110の電源電圧が印加される。これら第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬すると、第1接続端部71を構成する金属材料が金属イオンとなって電解液に電離する。これにより第1接続端部71の厚さが薄くなる。
【0121】
上記したように第1接続端部71は厚さの薄い破断部77を備えている。電解液へ金属材料が電離すると破断部77の厚さがさらに薄くなる。そしてついには破断部77が複数に分離する。第1接続端部71が蓄電池110側と電池パック100側とに2つに分断される。この結果、第1ワイヤハーネス210を介した蓄電池110と電池パック100との電気的な接続が遮断される。
【0122】
第1接続端部71の少なくとも一部は、導電性が高く、電位で電離しやすいCu、Al、Zn、Fe、および、Niの少なくとも1つを含んでいる。場所を限定していえば、破断部77はCu、Al、Zn、Fe、および、Niの少なくとも1つを含んでいる。
【0123】
以上に示したように、第1接続端部71と第2接続端部72とは電解液に浸漬された際に蓄電池110と電池パック100との電気的な接続を遮断する遮断装置70としての機能を果たしている。第1接続端部71が第1金属電極に相当する。第2接続端部72が第2金属電極に相当する。第1ワイヤハーネス210が第1配線に相当する。第4ワイヤハーネス240が第2配線に相当する。
【0124】
<作用効果>
これまでに説明したように、第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬されると、自動的に、第1ワイヤハーネス210を介した蓄電池110と電池パック100との電気的な接続が遮断される。そのため、電気的な通電を遮断するための部品点数が削減される。
【0125】
なお、第1接続端部71から電解液に電離した金属イオンは第2接続端部72で析出される。この金属材料の析出が進むと、この金属材料を介して第1接続端部71と第2接続端部72とが通電状態になる虞がある。
【0126】
しかしながら、第1接続端部71と第2接続端部72との間の離間距離Dは、破断部77の厚さTよりも長くなっている。そのために金属材料を介して第1接続端部71と第2接続端部72とが通電状態になることが抑制される。
【0127】
また、そもそも、第2接続端部72に析出される金属材料の厚さが厚くなった場合、第1接続端部71の厚さが薄くなる。第1接続端部71のz方向の厚さだけではなくx方向の厚さも薄くなる。そのために金属材料を介して第1接続端部71と第2接続端部72とが通電状態になることが抑制される。
【0128】
第1接続端部71と第2接続端部72それぞれはパックケース90の収納空間の外に設けられる。これによれば、収納空間に電解液が浸入する前に、第1接続端部71と第2接続端部72それぞれが電解液に浸漬されやすくなる。収納空間に電解液が浸入する前に、蓄電池110と電池パック100との電気的な接続が遮断されやすくなる。
【0129】
第1接続端部71と第2接続端部72それぞれはパックケース90の収納空間とその外側とを連通する凹部96よりも車底側に設けられている。このため、収納空間に電解液が浸入する前に、第1接続端部71と第2接続端部72それぞれが電解液に浸漬されやすくなる。
【0130】
第1接続端部71と第2接続端部72それぞれは回路基板20よりもz方向において底壁93側に位置している。これによれば回路基板20が電解液に浸漬される前に第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬されやすくなる。回路基板20が電解的に浸漬される前に、蓄電池110から回路基板20への電源電力の供給が遮断されやすくなる。
【0131】
(第2の実施形態)
次に図8に基づいて遮断装置70を説明する。
【0132】
第1実施形態では、車両300が電解液に浸漬した際に蓄電池110と電池パック100との通電を遮断する構成要素として、遮断装置70が電池パック100の第1接続端部71と第2接続端部72を有する例を示した。
【0133】
これに対して本実施形態の遮断装置70は、第1接続端部71と第2接続端部72の他に、第1接続端部71と第2接続端部72との間の電位差(電圧)を検出する電圧センサ80を備えている。
【0134】
第1実施形態で説明したように、第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬されると、第1接続端部71を構成する金属材料の電離によって、その厚さが薄くなる。そしてついには第1接続端部71が複数に分離する。しかしながら、環境温度や電解液の成分などによっては、第1接続端部71が複数に分離するのに時間がかかる虞がある。また、第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬される時間が短いために、第1接続端部71が複数に分離されない可能性がある。
【0135】
以上に説明したように、第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬されたにも関わらずに、第1接続端部71が複数に分離されない可能性があるものの、金属材料の電解液への電離のために第1接続端部71の厚さが細くなる。それによって第1接続端部71の抵抗が高まり、第1接続端部71と第2接続端部72との間の電圧が変動する。
【0136】
係る電圧変動が電圧センサ80で検出される。BMU22はこの電圧変動を検出すると、第1スイッチ31~第4スイッチ34それぞれを遮断状態にする。こうすることで蓄電池110と電池パック100との電気的な接続が遮断される。また、回転電機130と電池パック100との電気的な接続が遮断される。
【0137】
本実施形態では、第1接続端部71、第2接続端部72、電圧センサ80、BMU22、および、第1スイッチ31~第4スイッチ34が遮断装置70に含まれる。BMU22が制御部に相当する。
【0138】
なお本実施形態に記載の遮断装置70には、第1実施形態に記載の遮断装置70と同等の構成要素が含まれている。そのために本実施形態の遮断装置70が第1実施形態に記載の遮断装置70と同等の作用効果を奏することは言うまでもない。そのためにその記載を省略する。以下に示す他の実施形態でも重複する作用効果の記載を省略する。
【0139】
(第3の実施形態)
次に図9に基づいて遮断装置70を説明する。
【0140】
各実施形態では、電解液に浸漬された際に通電を自動的に遮断する機能を、電池パック100の給電バスバ50に含まれる第1接続端部71と第2接続端部72とが果たす例を示した。
【0141】
これに対して本実施形態では、第1ワイヤハーネス210と第4ワイヤハーネス240とが、電解液に浸漬された際に通電を自動的に遮断する機能を果たす構成要素を備えている。その構成要素の特徴はこれまでに記載した第1接続端部71および第2接続端部72と同等である。そのため、以下においては表記を統一するために、第1ワイヤハーネス210と第4ワイヤハーネス240とが備える、電解液に浸漬された際に通電を自動的に遮断する機能を果たす構成要素を第1接続端部71および第2接続端部72と記載する。
【0142】
例えば図9に示すように、第1ワイヤハーネス210は絶縁電線252として第1電源側配線211と第1電池側配線212を有する。第4ワイヤハーネス240は絶縁電線252として第2電源側配線241と第2電池側配線242を有する。
【0143】
これら4つの配線それぞれは導電線253とそれを被覆する絶縁被膜254とを有する。各配線の備える導電線253の端側が絶縁被膜254から露出されている。
【0144】
第1電源側配線211と第1電池側配線212それぞれの備える導電線253の2つの端部の一方側が第1接続端部71を介して連結されている。第1電源側配線211の備える導電線253の他方側が蓄電池110に接続されている。第1電池側配線212の備える導電線253の他方側に金属端子251が接続されている。
【0145】
同様にして、第2電源側配線241と第2電池側配線242それぞれの備える導電線253の2つの端部の一方側が第2接続端部72を介して連結されている。第2電源側配線241の備える導電線253の他方側が蓄電池110に接続されている。第2電池側配線242の備える導電線253の他方側に金属端子251が接続されている。
【0146】
以上に示したように、第1接続端部71は第1電源側配線211と第1電池側配線212とを電気的および機械的に連結している。第2接続端部72は第2電源側配線241と第2電池側配線242とを電気的および機械的に連結している。
【0147】
これら第1接続端部71と第2接続端部72はx方向若しくはy方向で対向配置される。そしてこれら2つの接続端部は車両に搭載された電気機器同士の電気的な接続を担うワイヤハーネスの端部よりも車底側に設けられる。これによりこれら2つの接続端部それぞれが電解液に浸漬されやすくなる。電解液への浸漬による第1接続端部71の破断によって、電気機器同士の通電が遮断される。
【0148】
(第1の変形例)
各実施形態で特に第1接続端部71と第2接続端部72それぞれの表面粗さについて記載していなかった。両者の表面粗さは等しくてもよいし、異なってもよい。
【0149】
例えば、第1接続端部71が第2接続端部72よりも表面粗さが荒い構成を採用した場合、第1接続端部71の電解液との接触面積が大きくなる。このために第1接続端部71を構成する金属材料が電解液に電離しやすくなる。第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬してから蓄電池110と電池パック100との電気的な接続が遮断されるまでの時間が短くなる。
【0150】
(第2の変形例)
各実施形態では第1接続端部71の備える導電部76と破断部77の横断断面積が異なる例を示した。しかしながら両者の横断断面積が同等の構成を採用することもできる。これにより導電部76と破断部77それぞれの電気抵抗に差が生じることが抑制される。導電部76と破断部77とで電力損失とジュール熱に差の生じることが抑制される。
【0151】
なお、導電部76と破断部77の横断断面積が同等との構成には、導電部76と破断部77の横断断面積に製造誤差程度の差があるものも含まれる。製造誤差はおよそ10%程度である。本開示に記載の「同等」と「等しい」は、およそ10%程度の差があるもの同士に適用され得る。
【0152】
なお、導電部76と破断部77の横断断面積が同等の構成において、導電部76と破断部77とに電解液への電離しやすさに差を設ける場合、例えば、導電部76よりも破断部77の表面積を広くする。
【0153】
これにより、第1接続端部71と第2接続端部72とが電解液に浸漬された際に、破断部77が導電部76と比べて早く複数に分離しやすくなる。それとともに、破断部77が導電部76に比べて電気抵抗が高まることが抑制される。
【0154】
(第3の変形例)
各実施形態では第1接続端部71と第2接続端部72の横断断面積について記載していなかった。両者の横断断面積は等しくてもよいし、異なってもよい。
【0155】
例えば、第1接続端部71と第2接続端部72の横断断面積が等しい構成を採用した場合、両者の電気抵抗に差が生じることが抑制される。第1接続端部71と第2接続端部72とで電力損失とジュール熱に差の生じることが抑制される。
【0156】
(第4の変形例)
各実施形態では第1接続端部71と第2接続端部72の横断面形状について記載していなかった。両者の横断面形状は等しくても、異なってよい。
【0157】
例えば、第1接続端部71と第2接続端部72の横断面形状が異なる構成を採用した場合、第1接続端部71の横断面のy方向に直交する一方向の長さを、第2接続端部72の横断面のy方向に直交する方向の長さと比べて短くしてもよい。
【0158】
(第5の変形例)
第1実施形態と第2実施形態では第1接続端部71と第2接続端部72それぞれがパックケース90の収納空間の外に設けられる例を示した。しかしながら、第1接続端部71と第2接続端部72それぞれの少なくとも一部がパックケース90の収納空間に設けられる構成を採用することもできる。
【0159】
(第6の変形例)
各実施形態では第5外部接続端子100eが第4ワイヤハーネス240を介して蓄電池110の負極に接続される例を示した。しかしながら第5外部接続端子100eが第4ワイヤハーネス240を介して回転電機130と電気的に接続された構成を採用することもできる。
【0160】
この構成においては、第2外部接続端子100bが第2ワイヤハーネス220を介して回転電機130に設けられた電力変換器の高電圧側に接続される。第4ワイヤハーネス240が電力変換器の低電圧側に接続される。
【0161】
そして、第2外部接続端子100bに接続される第2給電バスバ52と第5外部接続端子100eに接続される第5給電バスバ55それぞれの接続端部がx方向若しくはy方向で対向配置される。
【0162】
これまでに記載したように、第5給電バスバ55は車載機器の低電圧側に接続されるとともに、その車載機器の高電圧側に接続された給電バスバと対向配置される。これら2つの給電バスバの接続端部が、電解液に浸漬された際に通電を自動的に遮断する機能を果たす。
【0163】
(その他の変形例)
各実施形態では電源システム200を搭載する車両300がアイドルストップ機能を有する例を示した。しかしながら電源システム200を搭載する車両300としては上記例に限定されない。例えばハイブリッド自動車や電気自動車を採用することができる。この場合、本実施形態で示したスタータモータ120や回転電機130は、モータジェネレータに代わる。
【0164】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0165】
10…組電池、22…BMU、31…第1スイッチ、32…第2スイッチ、33…第3スイッチ、34…第4スイッチ、71…第1接続端部、72…第2接続端部、76…導電部、77…破断部、80…電圧センサ、90…パックケース、96…凹部、100…電池パック、110…蓄電池、130…回転電機、200…電源システム、210…第1ワイヤハーネス、211…第1電源側配線、212…第1電池側配線、220…第2ワイヤハーネス、240…第4ワイヤハーネス、241…第2電源側配線、242…第2電池側配線、300…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9