(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240409BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240409BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240409BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240409BHJP
B29C 49/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/013
C08K3/34
C08K7/14
B29C49/02
(21)【出願番号】P 2020110296
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】廣木 鉄郎
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-041132(JP,A)
【文献】特開2015-196784(JP,A)
【文献】特開平05-220826(JP,A)
【文献】特開昭60-170664(JP,A)
【文献】特表2006-523763(JP,A)
【文献】特開2007-126591(JP,A)
【文献】特開平03-024155(JP,A)
【文献】特開平02-252759(JP,A)
【文献】特開平04-288341(JP,A)
【文献】特開2010-031199(JP,A)
【文献】特開2002-220531(JP,A)
【文献】特開2019-048475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B29C 49/00-49/46、49/58-49/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)を40~65質量%、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を2~20質量%、芳香族ポリアミド樹脂(A-3)を0~5質量%、オレフィン系アイオノマー(B)を5~25質量%、耐衝撃材(C)を0~15質量%、無機充填材(D)を
3~50質量%含み、
JIS K-6920に準拠し、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度が3.5以上であり、
オレフィン系アイオノマー(B)のJIS K7210に準拠して190℃、2.16kgの荷重で測定したMFRが5.5g/10分未満である、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)が、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填材(D)が、タルク及びガラスミルドファイバーからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、射出速度80mm/secで射出成形して得た40×200×5mmプレートを、ISO11359-2に準拠して測定した、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との加算平均値が8.5×10
-5cm/cm/℃以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物のブロー成形品。
【請求項6】
タンク、チューブ、ホース及びフィルムからなる群から選択される形状の高圧ガスと接触する成形品である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有することから、エンジニアリングプラスチックスとして様々な用途で展開され、様々な成形方法によって使用されている。そのなかで、ブロー成形によるブロー成形品としての利用も進んでいる。今後急速に拡大が見込まれるFCV(燃料電池自動車)においては、燃料を入れるための大型のブロー成形品が求められている。また、ブロー成形品が様々な環境下で使用できることが求められている。
【0003】
ブロー成形品に用いられるポリアミド樹脂組成物としては、芳香族ポリアミド樹脂と衝撃改質剤と安定剤と無機充填材とを含むポリアミド樹脂組成物が提案され、ブロー成形性に優れるとともに、平滑な表面外観を有するとともに、高温下でも耐衝撃性が劣化しないブロー成形体が得られるとされている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリアミド樹脂にポリフェニレンスルフィド樹脂、エチレン系アイオノマー樹脂及びオレフィン系エラストマー樹脂を加えたポリアミド樹脂組成物が、ブロー成形性と低温靱性及びバリア性に優れることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2006-523763号公報
【文献】特開2007-204675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来のポリアミド樹脂組成物では、ブロー成形性及び低温から高温までの機械特性は、優れることが確認されているものの、低温から高温にさらされることも多いブロー成形品が、元の寸法を維持するための手段は開示されていなかった。
本発明は、ブロー成形性に優れるとともに、低温下でも機械特性が維持可能であり、さらに高温下で寸法安定性に優れるブロー成形体となるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
[1]ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)を40~65質量%、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を2~20質量%、芳香族ポリアミド樹脂(A-3)を0~5質量%、オレフィン系アイオノマー(B)を5~25質量%、耐衝撃材(C)を0~15質量%、無機充填材(D)を1~50質量%含み、
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度が3.5以上であり、
オレフィン系アイオノマー(B)のJIS K7210に準拠して190℃、2.16kgの荷重で測定したMFRが5.5g/10分未満である、ポリアミド樹脂組成物。
[2]脂肪族共重合ポリアミド(A-2)が、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種である[1]のポリアミド樹脂組成物。
[3]無機充填材(D)が、タルク及びガラスミルドファイバーからなる群から選択される少なくとも1種である[1]又は[2]のポリアミド樹脂組成物。
[4]ISO11359-2に準拠して測定した、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との加算平均値が8.5×10-5cm/cm/℃以下である[1]~[3]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかのポリアミド樹脂組成物のブロー成形品。
[6]タンク、チューブ、ホース及びフィルムからなる群から選択される形状の高圧ガスと接触する成形品である、[1]~[4]のいずれかのポリアミド樹脂組成物の成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ブロー成形性に優れるとともに、本発明のポリアミド樹脂組成物から得られるブロー成形体は、低温下でも機械特性が維持可能であり、高温下での寸法安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)を40~65質量%、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を2~20質量%、芳香族ポリアミド樹脂(A-3)を0~5質量%、オレフィン系アイオノマー(B)を5~25質量%、耐衝撃材(C)を0~15質量%、無機充填材(D)を1~50質量%含み、
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度が3.5以上であり、
オレフィン系アイオノマー(B)のJIS K7210に準拠して190℃、2.16kgの荷重で測定したMFRが5.5未満である、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【0009】
(脂肪族ホモポリアミド(A-1))
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)を含む。
脂肪族ホモポリアミド(A-1)は、脂肪族モノマー由来の1種類の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族ホモポリアミド(A-1)は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
【0010】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0011】
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンジアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0012】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0013】
脂肪族ホモポリアミド(A-1)として具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリアミド122等が挙げられる。これらの脂肪族ホモポリアミド(A-1)は、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
これらの脂肪族ホモポリアミド(A-1)の中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12が好ましく、特にポリアミド6、ポリアミド66が好ましい。
【0014】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、成形性の観点から、40~65質量%、好ましくは45~60質量%、より好ましくは45~55質量%含まれる。
【0015】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が、ポリアミド樹脂組成物の流動性と成形性の観点から、3.5以上であり、3.5~5.0であることが好ましく、3.5~4.5であることがより好ましい。
【0016】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂含む場合、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)における相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度としてもよい。
【0017】
(脂肪族共重合ポリアミド(A-2))
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)を含む。
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、脂肪族モノマー由来の2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、ジアミンとジカルボン酸の組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上の共重合体である。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
【0018】
ジアミンとしては、脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。挙げられる。
【0019】
ジカルボン酸としては、脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0020】
ラクタムとしては、脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
これらのジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)として具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)等の脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。これらの脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
これらの脂肪族共重合ポリアミド(A-2)の中でも、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)が好ましい。
【0022】
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、低温下における機械特性の観点から、2~20質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは7~15質量%含まれる。
【0023】
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が、ポリアミド樹脂組成物の流動性の観点から、1.8~5.0あることが好ましく、2.9~5.0であることがより好ましく、3.0~4.5であることがさらに好ましい。
【0024】
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂含む場合は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の項で説明したのと同様の方法で相対粘度が求められる。
【0025】
(A-3)芳香族ポリアミド
ポリアミド樹脂組成物は、芳香族ポリアミド(A-3)を含んでいてもよい。
芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族系モノマー成分を少なくとも1成分含む芳香族ポリアミド樹脂であり、例えば、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を原料とし、これらの重縮合によって得られるポリアミド樹脂である。
【0026】
原料の脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸としては、前記の脂肪族共重合ポリアミド樹脂の説明で例示したものと同様のものが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0027】
具体的な例としては、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T) 、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6I/6)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)などが挙げられる。これらの芳香族ポリアミド(A-3)は、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
これらの中でも、モノマー成分を少なくとも2成分含む芳香族共重合ポリアミドが好ましく、芳香族モノマー成分を1種以上と脂肪族モノマー成分1種以上とが共重合した半芳香族ポリアミドがより好ましく、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)がさらに好ましい。
【0028】
本発明で使用する芳香族ポリアミド(A-3)として、特に有用なものとしては、芳香族系モノマー成分を少なくとも2成分含む非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂としては、動的粘弾性の測定によって得られた絶乾時の損失弾性率のピーク温度によって求められたガラス転移温度が100℃ 以上の非晶性ポリアミドが好ましい。
ここで、非晶性とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融解熱量が1cal/g以下であることをいう。
【0029】
本発明における芳香族ポリアミド樹脂(A-3)の重合度には特に制限はないが、ISO307に従って0.5%メタクレゾール溶液、20℃で測定した相対粘度が、0.5~4.0であることが好ましく、より好ましくは1.0~2.0である。
芳香族ポリアミド(A-3)がポリアミド樹脂(A)に含まれる場合、芳香族ポリアミド(A-3)は、ポリアミド樹脂(A)100質量%中、成形性の観点から好ましくは0~5質量%含まれる。
【0030】
(ポリアミド樹脂の製造)
ポリアミド樹脂の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0031】
ポリアミド樹脂の中でも、ポリアミド樹脂の機械特性および成形性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66及びポリアミド6T/6Iからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド6/66及びポリアミド6T/6Iからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド6/66及びポリアミド6T/6Iの混合物、またはポリアミド6とポリアミド6/66との混合物がより好ましい。
【0032】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定で求められる末端アミノ基濃度として、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上110μmol/g以下の範囲がより好ましく、30μmol/g以上70μmol/g以下の範囲がさらに好ましい。前記範囲であると、ポリアミド樹脂組成物を用いた成形物の成形加工性が良好である。
【0033】
ポリアミド樹脂が、末端アミノ基濃度の異なる2種以上のポリアミド樹脂を含む場合、ポリアミド樹脂における末端アミノ基濃度は、上記中和摘定で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれの末端アミノ基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度としてもよい。
【0034】
(B)オレフィン系アイオノマー
ポリアミド樹脂組成物は、オレフィン系アイオノマー(B)を含む。オレフィン系アイオノマーとは、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を金属又は金属イオンによって中和したものをいう。オレフィン系アイオノマー(B)を配合すると、ブロー成形時のパリソン特性が大幅に向上する反面、溶融粘度は大きな上昇を伴わないので生産性が向上する。
【0035】
オレフィン系アイオノマー(B)の樹脂としては、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体とを共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。アイオノマーに用いられる金属及び金属イオンとしてはNa、K、Cu、Mg、Ca、Ba、Zn、Cd、Al、Fe、Co及びNi並びにそれらのイオンなどが挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよいが、少なくともZn(本明細書では「亜鉛」ともいう)を含むことが好ましい。これらの中でも、エチレンーメタクリル酸共重合体のアイオノマーが好ましい。オレフィン系アイオノマーの市販品としては、三井・ダウ・ポリケミカル株式会社製のハイミラン(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0036】
オレフィン系アイオノマー(B)のJIS K7210(1999年)に準拠して190℃、2.16kgの荷重で測定したMFRは、5.5g/10分未満であり、0.1~5.0g/10分であることが好ましく、0.5~2.0g/10分であることがより好ましい。オレフィン系アイオノマー(B)のMFRが前記範囲にあると、ブロー成形性及び寸法安定性の点から好ましい。
【0037】
オレフィン系アイオノマー(B)は、示差走査熱量計(DSC)でISO11357-3に準じて、窒素雰囲気下で、20℃/分で昇温して測定した融点が、75~100℃であることが好ましく、80~95℃であることがより好ましい。
また、オレフィン系アイオノマー(B)は、JIS K7112で測定した密度が、940~980kg/m3であることが好ましく、950~970kg/m3であることがより好ましい。
【0038】
さらに、オレフィン系アイオノマー(B)に含まれる金属イオンは少なくとも亜鉛が含まれることが好ましい。
融点および密度が上記範囲にあると、ポリアミドとの相溶性やブロー成形時のスウェル拡大抑止による肉厚安定性の観点から好ましい。
【0039】
オレフィン系アイオノマー(B)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、5~25質量%、好ましくは7~25質量%、より好ましくは10~25質量%含まれる。オレフィン系アイオノマー(B)の含有割合が上記範囲にあると、ブロー成形性及び寸法安定性が良好になる。
【0040】
(C)耐衝撃材
ポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃材(C)を含むことが好ましい。耐衝撃材としてはゴム状重合体が挙げられる。耐衝撃材は、ASTM D2240に準拠して測定した表面硬度(ショアA)が80以下であることが好ましい。
【0041】
耐衝撃材(C)として具体的には、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。耐衝撃材(C)として好ましくは、エチレン/α-オレフィン系共重合体が挙げられる。
【0042】
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上又は4以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0043】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0044】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体とを共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0045】
また、耐衝撃材(C)として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、その少なくとも一部がポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基と反応する官能基を有することが好ましい。(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、既に前記官能基を有するが、更に異なる前記官能基を有していても良い。
【0046】
前記官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0047】
これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中では無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸が好ましい。
【0048】
耐衝撃材(C)として用いられる重合体に、これらの官能基を導入する方法としては、(i)重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合体の分子鎖または分子末端に官能基を導入する方法、(iii)官能基とグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0049】
耐衝撃材(C)に酸無水物基やカルボン酸エステル基といった官能基が含まれる場合、耐衝撃材(C)における官能基の含有量は、25μmol/g超過100μmol/g未満が好ましく、35μmol/g以上95μmol未満がより好ましく、40μmol/g以上90μmol/g以下がさらに好ましい。含有量が25μmol/g超過では高い溶融粘度の組成物を得ることができ、ブロー成形において目標の肉厚寸法を得ることができる。また含有量が100μmol/g未満であると溶融粘度が高すぎず、押出機に負荷を抑えて良好に成形加工できる。耐衝撃材(C)が有する官能基の含有量は、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基を有する場合には、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定される。
【0050】
耐衝撃材(C)は、ASTM D1238に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定したMFRが2g/10分以下であることが好ましく、前記範囲であるとブロー成形時にパリソンの形状が不安定になることが抑制され、成形体の厚みがより均一になる傾向がある。また、パリソンの垂下がり量が大きくなりすぎず、良好なブロー成形性が得られる傾向がある。
【0051】
耐衝撃材(C)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、0~15質量%、好ましくは0~13質量%、より好ましくは0~12質量%含まれる。耐衝撃材(C)の含有割合が上記範囲にあるとブロー成形性及び寸法安定性が良好である。
【0052】
(D)無機充填材
ポリアミド樹脂組成物は、無機充填材を含む。
無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維など、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスフレーク、ガラス・ビーズ、セラミックビ-ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、リン酸カルシウムおよびシリカが挙げられるが、タルク及びガラスミルドファイバーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらは1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
タルクの平均粒子径は、2~18μmが好ましく、4~16μmがより好ましい。タルクの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法による平均粒子径である。測定装置としては、株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD-7000が挙げられる。タルクとして市販品を使用する場合は、タルクの平均粒子径は、市販品のカタログ値を採用する。
【0054】
ガラスミルドファイバーの平均繊維長は、各繊維を粉砕後に測定され、10~200μmが好ましく、30~150μmがより好ましい。平均繊維長は、例えば、ガラス繊維長測定機により求めることができるが、ガラスミルドファイバーとして市販品を使用する場合は、市販品のカタログ値とする。ガラスミルドファイバーの繊維径は2~30μmが好ましく、5~15μmがより好ましい。ガラスミルドファイバーの繊維径は、例えば、光学顕微鏡観察などを用いて画像解析装置により求めることができるが、ガラスミルドファイバーとして市販品を使用する場合は、市販品のカタログ値とする。
【0055】
無機充填材(D)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、1~50質量%、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%含まれる。無機充填材(D)の含有割合が上記範囲にあると低温機械特性が良好である。また、1質量%未満であると本発明の効果を奏せず、50質量%を超えるとブリードアウトの恐れがある。
【0056】
(E)耐熱剤
ポリアミド樹脂組成物は、耐熱剤(E)を含むことが好ましい。耐熱剤は、ポリアミド樹脂の耐熱性を向上できるものが使用でき、有機系、無機系の耐熱剤をその目的に応じて使用できる。
【0057】
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着特性と耐熱特性の観点から、耐熱剤として有機系酸化防止剤の少なくとも1種を含むことがより好ましい。有機系酸化防止剤を含むことで、ブロー成形時においてインターバルタイムが長くなった場合でも通常の熱老化性、物性、溶融粘度等を維持しながら、熱溶着性をより向上させることができる。これは例えば、有機系酸化防止剤の添加によって、耐衝撃剤の熱劣化によるゲル化が抑制され、それにより造核作用が抑制されるためと考えられる。
【0058】
(有機系耐熱剤)
有機系酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等を挙げることができる。
【0059】
フェノール系酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。本明細書において、ヒンダードフェノールとは、フェノールの水酸基のオルト位(以下「o位」ともいう。)に置換基を有する化合物をいう。o位の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基が好ましく、嵩高いi-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基がより好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。また、o位は、フェノールの水酸基に対する2つのo位がいずれも置換基を有することが好ましい。
【0060】
o位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールは、具体的には、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(tert-ブチル)ベンゼンプロパンアミド、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの耐熱剤の市販品としては、「Irganox1010」、「Irganox1098」(BASF社)、「Sumilizer GA-80」(住友化学社)が挙げられる。
【0061】
リン系酸化防止剤としてはヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物が好ましく、o位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、o位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物がより好ましく、o位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物がさらに好ましい。o位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物は、具体的には、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト等を挙げることができる。o位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物は、具体的には、p,p,p’,p’-テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-4,4-ビフェニルジホスフィンを主成分とするビフェニル、三塩化リン及び2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの反応生成物、を挙げることができる。これらの耐熱剤の市販品としては、「Irgafos168」(BASF社)、「hostanoxP-EPQ」(クラリアントケミカルズ社)が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
イオウ系酸化防止剤としては、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジドデシル(3,3’-チオジプロピオネート)等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これら有機系酸化防止剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0062】
(無機系耐熱剤)
耐熱剤の無機系耐熱剤の種類としては、銅化合物やハロゲン化カリウムであり、銅化合物としては、ヨウ化第一銅、臭化第一銅、臭化第二銅、酢酸銅等が挙げられる。耐熱性と金属腐食の抑制の観点からヨウ化第一銅が好ましい。ハロゲン化カリウムは、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。耐熱性と金属腐食の抑制の観点からヨウ化カリウム及び/又は臭化カリウムが好ましい。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
有機系耐熱剤と無機系耐熱剤とは、組み合わせて用いてもよい。
【0063】
更に、メラミン、ベングアナミン、ジメチロール尿素又はシアヌール酸などの含窒素化合物を併用するとより効果的である。
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着性の観点から、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤を含有することが好ましく、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤と少なくとも1種のリン系酸化防止剤とを含有することがより好ましく、o位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールと、o位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物又はo位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物とを含むことがさらに好ましく、o位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノール及びo位にtert-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物を含むことが特に好ましい。
【0064】
耐熱剤(E)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、 好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~2質量%含まれる。耐熱剤(E)の含有割合が上記範囲にあると、成形品外観の焼け、内表面の肉厚不均一性、成形品全体の黄変を抑制でき、外観を良好にすることができる。
【0065】
<その他の樹脂>
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂及び耐衝撃材(C)以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、2質量%以下が好ましく、0~1.5質量%がより好ましい。
【0066】
<その他の成分>
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記成分以外の染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、酸化防止剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の機能性付与剤等を適宜含有していてもよい。
任意の成分の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0067】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。
各成分の原材料の混合には、単軸、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。
【0068】
例えば、二軸押出機を使用する場合は、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよいが、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法が好ましい。
【0069】
(ポリアミド樹脂組成物のMFR)
ポリアミド樹脂組成物のISO 1133に準拠して、温度280℃、荷重10kgで測定したMFRは、20g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下がさらに好ましい。MFRがこの範囲にあると、成形体の製造、特にブロー成形の成形体の製造に好適に使用することができる。
【0070】
(ポリアミド樹脂組成物の寸法安定性)
ポリアミド樹脂組成物の成形品を、ISO11359-2に準拠して測定した、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との加算平均値は、8.5×10-5cm/cm/℃以下であることが好ましい。MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との加算平均値がこの範囲にあると、低温から高温までの環境下において、寸法が安定である。
【0071】
[ポリアミド樹脂組成物の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、ブロー成形によるブロー成形品、押出成形による押出成形品、射出成形による射出成形品、回転成形による回転成形品の製造に好適に用いることができる。ポリアミド樹脂組成物は、ブロー成形性が良好であるので、ブロー成形によるブロー成形品により好適に用いることができる。
ポリアミド樹脂組成物からブロー成形によりブロー成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。一般的には、通常のブロー成形機を用いパリソンを形成した後、ブロー成形を実施すればよい。パリソン形成時の好ましい樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点より10℃から70℃高い温度範囲で行うことが好ましい。
【0072】
ポリアミド樹脂組成物から押出成形により押出成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。
また、ポリエチレンなどのポリオレフィンや他の熱可塑性樹脂と共押出した後、ブロー成形を行い、多層構造体を得ることも可能である。その場合ポリアミド樹脂組成物層とポリオレフィンなどの他の熱可塑性樹脂層の間に接着層を設けることも可能である。多層構造体の場合、本発明のポリアミド樹脂組成物は外層、内層のいずれにも使用し得る。
【0073】
ポリアミド樹脂組成物から射出成形による射出成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。例えば特開2019-155624号公報に記載の方法が参酌される。
【0074】
ポリアミド樹脂組成物から回転成形による回転成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。例えば国際公開公報2019/054109に記載の方法が参酌される。
【0075】
ブロー成形によるブロー成形品、押出成形による押出成形品、射出成形による射出成形品及び回転成形による回転成形品としては、特に限定されないが、スポイラー、エアインテークダクト、インテークマニホールド、レゾネーター、燃料タンク、ガスタンク、作動油タンク、燃料フィラーチューブ、燃料デリバリーパイプ、その他各種ホース・チューブ・タンク類などの自動車部品、電動工具ハウジング、パイプ類などの機械部品を始め、タンク、チューブ、ホース、フィルム等の電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品など各種用途が好適に挙げられる。
【0076】
また、ポリアミド樹脂組成物は、ガスバリア性に優れるため、高圧ガスと接触する成形品、たとえば、高圧ガスに接するタンク、チューブ、ホース、フィルム等に好適に用いられる。前記ガスの種類としては、特に制限されず、水素、窒素、酸素、ヘリウム、メタン、ブタン、プロパン等が挙げられ、極性の小さいガスが好ましく、水素、窒素、メタンが特に好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0078】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
脂肪族ホモポリアミド
ポリアミド6の(1):宇部興産株式会社製、相対粘度:4.08
ポリアミド6の(2):宇部興産株式会社製、相対粘度:3.37
脂肪族共重合ポリアミド
ポリアミド6/66:宇部興産株式会社製、製品名:5034、相対粘度:4.05
なお、上記ポリアミド樹脂の相対粘度は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定した値である。
芳香族ポリアミド
ポリアミド6T/6I:EMS-CHEMIE(Japan)株式会社製、製品名「Grivory(登録商標) G21」)
【0079】
アイオノマー
アイオノマーの(1):Zn-EM Ionomer:密度960kg/m3、融点88℃、MFR0.9g/10分、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)1706」三井・ダウ・ポリケミカル株式会社製
アイオノマーの(2):Zn-EMIonomer:密度950kg/m3、融点95℃、MFR5.5g/10分、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)1557」三井・ダウ・ポリケミカル株式会社製
アイオノマーの(3):Zn-EMIonomer:密度950kg/m3、融点90℃、MFR16g/10分、エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)1702」三井・ダウ・ポリケミカル株式会社製
アイオノマーのMFRは、JIS K7210(1999年)に準拠して190℃、2.16kgの荷重で測定した。
【0080】
耐衝撃材
タフマーMH5020:無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体、製品名「タフマー(登録商標)MH5020」三井化学株式会社製、酸無水物濃度:100μeq/g、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kgの荷重で測定したMFR:0.6g/10分
【0081】
無機充填材
タルク:製品名「KHP-400」林化成株式会社製、平均粒子径11μm
ガラスミルドファイバー:製品名「80M-10A」日本電気硝子株式会社製、繊維径10.5μm、平均繊維長80μm
タルクの平均粒子径,ガラスミルドファイバーの繊維径、平均繊維長、カタログ値である。
【0082】
耐熱剤
Irganox1098:ヒンダードフェノール系耐熱剤(N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(tert-ブチル)ベンゼンプロパンアミド]、製品名「Irganox1098」BASF社製
Irganox1010:ヒンダードフェノール系耐熱剤(ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、製品名「Irganox1010」BASF社製)
Irgafos168:リン系耐熱剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)、製品名「Irgafos168」BASF社製)
【0083】
[実施例1~7、比較例1~6]
表1に記載した各成分を二軸混練機TEX44HCT、シリンダー径44mm L/D35で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転160rpm、吐出量50kg/hrsにて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
【0084】
実施例および比較例における物性評価方法を以下に示す。
(1)ブロー成形性
株式会社プラコー製のブロー成形機DA-50型アキュームヘッド付きを用い、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数40rpm、ダイ口径50mm、円筒状3リットルボトル金型、金型温度60℃にて、厚み一定でパリソンを1m射出し、3秒後の垂下がり量を測定し、ブロー成形性を評価した。垂下がり量が少ないほど、ブロー成形性に優れる。具体的には、垂下がり量が50mm未満であると、ブロー成形性に優れるため、以下の基準で評価した。
〇:垂下がり量が50mm未満であって、ブロー成形性が良好である。
×:垂下がり量が50mm以上であって、ブロー成形性が悪い。
【0085】
(2)寸法安定性
ファナック株式会社のFAS-T100Dを用い、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、射出速度80mm/secで射出成形し、40×200×5mmプレートを成形した。
40×200×5mmプレートの中心から左右に10mm離れた箇所より、5×10×5mm(MD方向)、10×5×5(TD方向)の試験片を機械加工により作成する。
ISO11359-2に準拠して、150℃で5分間保持し、アニール処理を行なった後、昇温速度=5℃/分で、-100~100℃においてMD方向とTD方向の線膨張係数(-70~50℃の範囲における傾きより算出)を測定し、以下の基準で評価した。
〇:MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との加算平均値が8.5×10-5cm/cm/℃以下。
×:MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との加算平均値が8.5×10-5cm/cm/℃超。
【0086】
(3)低温機械特性
住友重機械工業株式会社のSE100D-C160Sを用い、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、射出速度32mm/secで射出成形し、ISO Type-A試験片を成形した。 ISO 527-1,2に従い、-60℃で厚み4.0mmのISO Type-A試験片を用いて試験を行った。
以下に従って、低温(-60℃)での引張破壊呼びひずみを評価した。
◎:引張破壊呼びひずみが15%を超え、低温機械特性が優れる。
〇:引張破壊呼びひずみが10~15%であって、低温機械特性が良好である。
×:引張破壊呼びひずみが10%未満であって、低温機械特性が悪い。
【0087】
【表1】
実施例1及び7と比較例1とを比較すると、無機充填材を含まない場合は、ブロー成形性及び寸法安定性が劣ることがわかる。
また、実施例1と比較例2とを比較すると、脂肪族ホモポリアミド樹脂として、相対粘度が3.5未満のものを使用した場合は、ブロー成形性が実施例1より劣ることがわかる。
実施例1と比較例3とを比較すると、アイオノマーを使用しないと、ブロー成形性および寸法安定性が実施例1よりも劣ることがわかる。
実施例1と比較例4とを比較すると、脂肪族共重合ポリアミド樹脂を含まないと、ブロー成形性及び低温機械特性が実施例1よりも劣ることがわかる。
実施例1と比較例5及び6とを比較すると、オレフィン系アイオノマーのMFRが、5.5g/10分以上であると、ブロー成形性が劣り、よりMFRの値が高くなると、低温機械特性も劣ることがわかる。