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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】浴室空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240409BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20240409BHJP
   F24F 8/30 20210101ALI20240409BHJP
   F24D 15/00 20220101ALI20240409BHJP
   A61L 9/22 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F24F7/06 B
F24F11/80
F24F8/30
F24D15/00 B
A61L9/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020113340
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022022658
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚越 正人
(72)【発明者】
【氏名】中林 憲洋
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-165831(JP,A)
【文献】特開2010-210115(JP,A)
【文献】特開2014-171608(JP,A)
【文献】特開2009-250527(JP,A)
【文献】特開2009-039269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 11/80
F24F 8/30
F24D 15/00
A61L 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室の壁面の温度を、直接的または間接的な熱の印加で、カビの菌糸の成長を抑制できる菌糸成長抑制温度以上とする環境改善運転を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記壁面の温度が前記菌糸成長抑制温度以上となるように、前記浴室内の空気を加熱する加熱手段を制御すると共に、熱の印加による前記壁面の温度変化に影響を及ぼす浴室熱容量、熱負荷に基づき前記加熱手段を制御する
浴室空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記壁面の温度を前記菌糸成長抑制温度以上とすることで、前記壁面の環境が改善される環境改善時間の間、前記壁面の温度を維持する
請求項1に記載の浴室空調装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記環境改善運転を所定の間隔毎に行う
請求項1または請求項2に記載の浴室空調装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記浴室の使用頻度に応じて、前記環境改善運転を行う間隔を変える
請求項3に記載の浴室空調装置。
【請求項5】
前記制御手段は、胞子から菌糸を意図的に発芽させることができる間隔を開けて、前記環境改善運転を行う
請求項に記載の浴室空調装置。
【請求項6】
前記加熱手段を備え、
前記制御手段は、前記壁面の温度が前記菌糸成長抑制温度以上となるように前記加熱手段を制御する
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の浴室空調装置。
【請求項7】
前記浴室内に放出される正イオンと負イオンの両方あるいは少なくとも正イオンまたは負イオンのどちらか一方のイオンを発生する機能因子発生手段を備え、
前記制御手段は、前記環境改善運転中または前記環境改善運転の後に前記イオンを発生させる
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の浴室空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に設置され、送風あるいは温風を室内に吹き出す浴室空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室の天井に設置され、温風あるいは室温に応じた空気を吹き出して、室内の暖房、室内にある被乾燥物の乾燥等の機能を実現した浴室空調装置が提案されている。このような浴室空調装置は、室内の空気を屋外に排気する換気の機能を持つものも多く、浴室換気乾燥暖房機と称されている。
【0003】
浴室換気乾燥暖房機は、空気の吹出口をフロントパネルの下面に備え、吹出口が浴室内に面するように、浴室の天井に設置される。浴室換気乾燥暖房機では、イオンを発生させて浴室に供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4330335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浴室内にイオンを含む空気を吹き出すことで、浴室内の環境を改善する効果がある。しかし、環境改善の効果をより向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、浴室内の環境改善の効果を高めることが可能な浴室空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、浴室の壁面の温度を、直接的または間接的な熱の印加で、カビの菌糸の成長を抑制できる菌糸成長抑制温度以上とする環境改善運転を行う制御手段を備え、制御手段は、壁面の温度が菌糸成長抑制温度以上となるように、浴室内の空気を加熱する加熱手段を制御すると共に、熱の印加による壁面の温度変化に影響を及ぼす浴室熱容量、熱負荷に基づき加熱手段を制御する浴室空調装置である。
【0008】
温度に依存してカビの菌糸の成長を抑制し得る浴室の壁面の温度が、熱の印加で制御される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、浴室内の壁面の温度を制御することで、カビの菌糸の成長を抑制して、壁面の環境を改善する効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の一例を示す構成図である。
図2】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の一例を示す構成図である。
図3】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の一例を示す構成図である。
図4A】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の設置例を示す構成図である。
図4B】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の設置例を示す構成図である。
図5】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の制御機能の一例を示すブロック図である。
図6】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機における浴室内の空気の流れの一例を示す説明図である。
図8】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の他の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機における浴室内の空気の流れの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の浴室空調装置としての浴室換気乾燥暖房機の実施の形態について説明する。
【0012】
<本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の構成例>
図1図3は、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の一例を示す構成図で、図1は、浴室換気乾燥暖房機の内部構成を示す側面図、図2は、下面側から見た平面図である。また、図3はフロントパネルを取り付けた状態の平面図である。更に、図4A図4Bは、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の設置例を示す構成図である。
【0013】
本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機1Aは、空気を吸い込んで吹き出す循環換気ファン2Aと、循環換気ファン2Aを有した本体部3Aと、本体部3Aに取り付けられるフロントパネル4Aを備える。浴室換気乾燥暖房機1Aは、図4A図4Bに示すように、フロントパネル4Aを露出させた形態で、浴室100の天井101に取り付けられる。
【0014】
循環換気ファン2Aは送風手段の一例で、多翼の羽根車20Aと、羽根車20Aを駆動する循環換気ファンモータ21Aと、風路を形成する循環換気ファンケース22Aを備える。羽根車20Aは、循環換気ファンモータ21Aに駆動されて回転することで、内側から外周側へと遠心方向に吹き出される空気の流れを発生させる。
【0015】
循環換気ファンケース22Aは、羽根車20Aの外周に沿った円形の部位と、羽根車20Aの接線方向に沿った部位を組み合わせた形状で、羽根車20Aの遠心方向に吹き出される空気を整流して、羽根車20Aの接線方向に沿って吹き出される空気の流れを発生させる。
【0016】
循環換気ファン2Aは、浴室換気乾燥暖房機1Aが所定の設置場所である浴室の天井に設置された状態で、羽根車20Aの回転軸の向きが上下方向に沿った配置で構成される。
【0017】
これにより、循環換気ファン2Aは、羽根車20Aの回転軸に沿った下方から吸い込んだ空気を、羽根車20Aの接線方向に吹き出す吹出風路23Aが、循環換気ファンケース22Aにより形成される。
【0018】
循環換気ファン2Aは、循環換気ファンケース22Aの下面に、空気が吸い込まれる循環換気吸込口24Aを備える。また、循環換気ファン2Aは、循環換気ファンケース22Aの下面に、ヒータ5を駆動することで加熱された空気、あるいは、ヒータ5を非駆動とすることで浴室100内の温度に応じた空気が吹き出される第1の吹出口25Aを備える。
【0019】
更に、循環換気ファン2Aは、循環換気ファンケース22Aの下面に、浴室100内を攪拌する空気が吹き出される第2の吹出口26Aを備える。また、循環換気ファン2Aは、循環換気ファンケース22Aの側面に、室外へ空気が吹き出される換気吹出口27Aを備える。
【0020】
循環換気吸込口24Aは、羽根車20Aの回転軸に沿った下方に、ベルマウスと称される円形の開口を設けて構成される。第1の吹出口25Aは、循環換気ファンケース22Aによる空気の吹出方向に沿った辺を短辺とした長方形の開口を、吹出風路23Aの下面に設けて構成される。
【0021】
第2の吹出口26Aは、循環換気ファンケース22Aによる空気の吹出方向に沿った辺を短辺とした長方形の開口を、吹出風路23Aの下面において、第1の吹出口25Aに対して循環換気吸込口24Aの反対側に設けて構成される。
【0022】
循環換気ファンケース22Aで構成される吹出風路23Aは、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aが設けられる部位で広げられ、換気吹出口27Aが設けられる部位で狭められる。第1の吹出口25Aと第2の吹出口26Aは、循環換気ファンケース22Aによる空気の吹出方向に沿った辺に対して交差する長辺が、本体部3Aの幅方向の長さに合わせられる。
【0023】
第1の吹出口25Aと第2の吹出口26Aは、循環換気ファンケース22Aの下面に設けられた風路形成枠体50Aで構成される。第1の吹出口25Aと第2の吹出口26Aは、風路形成枠体50Aの内側に設けられる仕切り部材51Aにより仕切られ、第1の吹出口25Aから吹き出される空気が通る加熱空気吹出風路と、第2の吹出口26Aから吹き出される空気が通る攪拌空気吹出風路が形成される。
【0024】
ヒータ5は、熱を印加する加熱手段の一例で、本例ではPTCヒータで構成され、第1の吹出口25Aから吹き出された空気が通る加熱空気吹出風路に設けられる。ヒータ5が駆動されて通電されると、ヒータ5が加熱されることで第1の吹出口25Aを通る空気が加熱され、第1の吹出口25Aから温風が吹き出される。
【0025】
第1の吹出口25Aと第2の吹出口26Aは、仕切り部材51Aにより仕切られており、第2の吹出口26Aから吹き出される空気は、ヒータ5を通過しない。なお、本例では、加熱手段として電気により駆動されるヒータ5を例に説明したが、温水による熱交換器等のヒータでも良い。
【0026】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aと、換気吹出口27Aとの間で風路を切り替える風路切替ダンパ6Aを備える。風路切替ダンパ6Aは風路開閉手段の一例で、図示しないダンパモータの駆動力が伝達され、軸60Aを支点に回転して、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aと、換気吹出口27Aとの開閉動作を行う。
【0027】
風路切替ダンパ6Aは、仕切り部材51Aで構成される第1の吹出口21Aと第2の吹出口22Aとの分岐部52Aより、空気の流れる方向に対して上流側に、分岐部52Aから所定の距離を開けて回転による開閉動作の軸60Aが設けられる。
【0028】
風路切替ダンパ6Aは、空気の流れる方向に対して軸60Aより上流側の部位が、軸60Aを支点とした回転動作で、第1の吹出口25Aと換気吹出口27Aとを開閉する方向へ変位する。また、風路切替ダンパ6Aは、空気の流れる方向に対して軸60Aより下流側の部位が、軸60Aを支点とした回転動作で、第2の吹出口26Aを開閉する方向へ変位する。
【0029】
これにより、風路切替ダンパ6Aは、空気の流れる方向に対して軸60Aから上流側に延在する部位で、主に第1の吹出口25Aと換気吹出口27Aとの間で風路を切り替えると共に、換気吹出口27Aの開度を切り替える主風路切替部61Aが構成される。また、風路切替ダンパ6Aは、空気の流れる方向に対して軸60Aから下流側に延在する部位で、主に第2の吹出口26Aを開閉すると共に、内側の面で、風路切替ダンパ6Aの開度に応じて第1の吹出口25Aへの風路、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aへの風路が形成され、外側の面で、換気吹出口27Aへの風路が形成される副風路切替部62Aが構成される。更に、風路切替ダンパ6Aは、副風路切替部62Aの先端側に、軸60Aを支点とした回転動作の方向に沿って延在し、換気吹出口27Aに対して第2の吹出口22Aを塞ぐ逆流防止部63Aが設けられる。
【0030】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、風路切替ダンパ6Aの位置を、第1の位置である図1に実線で示す循環位置とすると、空気の流れる方向に対して軸60Aより上流側の主風路切替部61Aは、風路切替ダンパ6Aの一方の端部となる主風路切替部61Aの先端が、循環換気ファンケース27Aの上側の内面に接する。
【0031】
また、空気の流れる方向に対して軸60Aより下流側の副風路切替部62Aは、風路切替ダンパ6Aの他方の端部となる副風路切替部62Aの先端が、分岐部52Aと接する。更に、逆流防止部63Aは、換気吹出口27Aに対して第2の吹出口26Aを塞ぐ。これにより、第1の吹出口25Aが開き、第2の吹出口26Aと換気吹出口27Aが閉じられて、循環換気吸込口24Aから第1の吹出口25Aへ連通した循環風路が形成される。
【0032】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、風路切替ダンパ6Aの位置を、循環位置から軸60Aを支点に回転させて、第2の位置である図1に破線で示す循環換気位置とすると、軸60Aより上流側の主風路切替部61Aが下方向へ移動し、風路切替ダンパ6Aの一端が吹出風路23Aの中間付近に位置する。
【0033】
また、軸60Aより下流側の副風路切替部62Aが、分岐部52Aから離れる上方向に移動する。これにより、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aと、換気吹出口27Aの双方が開き、循環風路と、循環換気吸込口24Aから換気吹出口27Aへ連通した換気風路の双方が形成される。
【0034】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、風路切替ダンパ6Aの位置を、循環換気位置から軸60Aを支点に回転させて、第3の位置である図1に一点鎖線で示す換気位置とすると、軸60Aより上流側の主風路切替部61Aが下方向へ移動し、風路切替ダンパ6Aの一端が循環換気ファンケース22Aの下側の内面に接する。また、軸60Aより下流側の副風路切替部62Aが上方向へ移動し、風路切替ダンパ6Aの他端が換気吹出口27Aの下側で循環換気ファンケース22Aの内面に接する。これにより、換気吹出口27Aが開き、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aが閉じられて換気風路が形成される。
【0035】
これにより、浴室換気乾燥暖房機1Aでは、1つの循環換気ファン2Aで、浴室100内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室100内に吹き出す動作、吸い込んだ空気を室外に排気する動作、吸い込んだ空気の一部を浴室100内に吹き出し、残部を室外に排気する動作が行われる。
【0036】
また、浴室換気乾燥暖房機1Aでは、1つの風路切替ダンパ6Aで、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aと、換気吹出口27Aの開閉動作が行われる。
【0037】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、循環換気吸込口24Aに温度センサ7を備える。温度センサ7は環境検出手段の一例で、循環換気ファン2Aを駆動することで循環換気吸込口24Aから吸い込まれる浴室100内の温度を検出する。
【0038】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、吹出風路23Aにイオン発生器8を備える。イオン発生器8は機能因子発生手段の一例で、機能因子としてイオンを生成、放出する。イオン発生器8は、循環換気ファン2Aを駆動することで生成される空気の流れに対して、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aと、風路切替ダンパ6Aの上流側の吹出風路23Aに設けられ、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aから吹き出される空気の流れに対してイオンを放出する。
【0039】
イオン発生器8は、正イオンと負イオンの両方あるいは少なくとも正イオンまたは負イオンのどちらか一方を発生する。正イオンと負イオンの発生の原理は、コロナ放電により空気中の酸素ないしは水分が電離によりエネルギーを受けてイオン化し、H+(H2O)m(mは任意の自然数)と、O2 -(H2O)n(nは任意の自然数)が主体のイオンを放出するものである。
【0040】
本体部3Aは、循環換気ファンケース22Aを構成する本体シャーシ30Aと、本体シャーシ30Aを覆う金属ケース31Aを備える。本体シャーシ30Aは樹脂材料で構成され、金属ケース31Aで覆われる循環換気ファンケース22Aと、本体部3Aの下端の周縁から外側に突出するフランジ部32Aが、一体で構成される。
【0041】
本体シャーシ30Aは、金属ケース31Aから露出した下面に下カバー33Aが取り付けられる。循環換気ファン2Aは、循環換気吸込口24Aと、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aが下カバー33Aに設けられ、下カバー33Aに風路形成枠体50Aが取り付けられる。
【0042】
金属ケース31Aは、循環換気ファン2Aの換気吹出口27Aに対向して開口が設けられ、換気吹出口27Aと連通した排気ダクトジョイント34Aが側面に取り付けられる。
【0043】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、本体部3Aの下面にフロントパネル4Aが取り付けられる。フロントパネル4Aは、循環換気ファン2Aの循環換気吸込口24Aに対向した下面を開口して吸込口グリル40Aが形成される。
【0044】
また、フロントパネル4Aは、循環換気ファン2Aの第1の吹出口25Aに対向した下面を開口して第1の吹出口グリル41Aが形成されると共に、第2の吹出口26Aに対向した下面を開口して第2の吹出口グリル42Aが形成される。
【0045】
第1の吹出口グリル41Aは、本体部3Aの一の辺に沿った方向である短手方向に沿った長さを長くした長方形の開口で構成される。また、第2の吹出口グリル42Aは、第1の吹出口グリル41Aと同様に、本体部3Aの一の辺に沿った方向である短手方向に沿った長さを長くした長方形の開口で構成される。
【0046】
第1の吹出口グリル41Aは、長手方向に沿って空気が吹き出されるように、整流板が設けられる。第2の吹出口グリル42Aは、第1の吹出口グリル41Aと並列する短手方向に沿って、第1の吹出口グリル41Aと反対側である本体部3Aの外側に向けて空気が吹き出されるように、整流板43Aが設けられる。
【0047】
<本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の設置例>
次に、各図を参照して、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機1Aの設置例について説明する。
【0048】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、図4A図4Bに示すように、浴室100の天井101に設置される。浴室100の天井101には、浴室換気乾燥暖房機1Aの本体部3Aが取り付けられる開口部が形成され、浴室換気乾燥暖房機1Aは、例えば、フランジ部32Aが図示しないネジで天井裏に設けられた補強部材に固定される形態で、天井101に取り付けられる。
【0049】
そして、浴室換気乾燥暖房機1Aは、本体部3Aの下面にフロントパネル4Aが取り付けられ、フロントパネル4Aの吸込口グリル40Aと、第1の吹出口グリル41A及び第2の吹出口グリル42Aが、浴室100内に面して配置される。
【0050】
浴室100の天井101に設置された浴室換気乾燥暖房機1Aは、本体部3Aの排気ダクトジョイント34Aに排気ダクト102が取り付けられる。排気ダクト102は、浴室100が設置される図示しない建物の外壁に取り付けられる屋外グリル102aと接続され、浴室換気乾燥暖房機1Aは、排気ダクト102を介して屋外とつながっている。
【0051】
浴室100は、浴槽103と洗い場104を備える。浴槽103は一般的に長方形であり、浴槽103と洗い場104は、浴槽103の短手方向に沿って並んでいる。
【0052】
浴室100は、浴槽103の上部に物干し部材であるランドリパイプ105を備える。ランドリパイプ105は、浴槽103の長手方向に沿って延び、浴室100の対向する壁面106a,106b間に取り付けられる。
【0053】
なお、浴室100に設置されるランドリパイプ105の本数は、1本または2本程度であり、本例では、1本のランドリパイプ105が配置された例を示す。また、物干し部材は、洗濯物等の被乾燥物が乾燥できるようになっていれば、パイプ状の部材に限らず、紐状であっても良く、他のものであっても良い。
【0054】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、第1の吹出口グリル41A及び第2の吹出口グリル42Aの長手方向の向きが、ランドリパイプ105の長手方向に対して直交する向きで、浴槽103の上部に設置される。
【0055】
これにより、浴室換気乾燥暖房機1Aでは、第1の吹出口グリル41Aから吹き出される空気HAは、主にランドリパイプ105と直交する方向に広がる。これに対して、第2の吹出口グリル42Aから吹き出される空気Aは、第2の吹出口グリル42Aが設けられる側の浴室100の壁面106aに向けられる。
【0056】
<本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の制御機能例>
図5は、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の制御機能の一例を示すブロック図である。浴室換気乾燥暖房機1Aは、CPUやメモリ等で構成される制御部9Aに、図1等で説明した循環換気ファンモータ21Aと、風路切替ダンパ6Aを駆動するダンパモータ61Aと、ヒータ5と、温度センサ7と、イオン発生器8と、操作部90等が接続される。
【0057】
制御部9Aは制御手段の一例で、図示しないメモリ等に格納されたプログラムよって例えば乾燥運転モード、暖房運転モード、換気運転モード及び涼風運転モードを実行する。操作部90は操作手段の一例で、例えば浴室換気乾燥暖房機1Aの本体と独立したリモートコントロール装置で、浴室100に隣接する洗面脱衣所の壁面等に取り付けられる。
【0058】
制御部9Aは、入浴者等の利用者が操作部90を操作することにより運転モードが選択される。制御部9Aは、選択された運転モードを実行するプログラムに基づき、循環換気ファンモータ21Aを駆動して、循環換気ファン2Aの羽根車20Aの回転数を制御する。また、ヒータ5を駆動してヒータ5の出力を制御する。更に、ダンパモータ61Aを制御して風路切替ダンパ6Aの開度を制御する。また、イオン発生器8を駆動して、イオンの発生の有無、発生量を制御する。
【0059】
制御部9Aで制御される循環換気ファンモータ21A、ヒータ5及びイオン発生器8の出力例を以下に示す。制御部9Aは、循環換気ファン21Aについて、風量が所定の風量となるよう羽根車20Aの回転数が設定された「小」と、「小」より風量が多い「大」が選択可能に設定される。
【0060】
また、制御部9Aは、ヒータ5について、ヒータ5を非駆動とする「無」と、所定の出力で駆動する「小」と、「小」より高い出力で駆動する「大」が選択可能に設定される。ヒータ5は、出力がnワット(W)のヒータが例えば2本設けられた構成では、出力が「小」として、1本のヒータを駆動したnワットでの運転と、出力が「大」として、2本のヒータを駆動した2×nワットでの運転が切り替えられる。また、ヒータ5の駆動と非駆動を所定の時間で切り替える間欠駆動を行っても良い。
【0061】
更に、制御部9Aは、イオン発生器8について、イオンの発生が「無」と、所定量のイオンを発生させる「小」と、イオンの発生数が「小」より多い「大」が選択可能に設定される。
【0062】
制御部9Aは、温度センサ7で検出した浴室100内の空気の温度から、浴室100の壁面106a、106bの温度を推定する。また、浴室100の壁面106a、106bの温度が、浴室100内の環境を改善し得る目標の環境改善温度、本例では、カビの菌糸の成長を抑制できる菌糸成長抑制温度になるために必要な、ヒータ5による印加熱量が設定される。
【0063】
浴室100の壁面106a、106bの温度を推定するため、浴室換気乾燥暖房機1Aの設置時等に、浴室100からの熱漏れを計測して、熱漏れの大小によるランクが設定される。制御部9Aは、以下の判断方法の組み合わせで、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達したと判断する。なお、適切な菌糸成長抑制温度は、下限値が38℃以上である。菌糸成長抑制温度の上限値は、浴室換気乾燥暖房機1Aの性能等に依存するが、例えば60℃以下である。
【0064】
熱漏れのランクを決定するパラメータとしては、熱の印加による浴室100の壁面106a、106bの温度変化に影響を及ぼす温度変化要因として、浴室100の大きさ、浴室100の壁面106a、106bの材質や構造等による浴室熱容量、浴室100が設置される地域、季節等の環境による熱負荷が挙げられる。このような浴室熱容量、熱負荷を、ヒータ5による印加熱量の補正に用いる。
【0065】
判断方法を以下に例示する。
(1)運転開始から一定時間経過後の浴室100内の温度の上昇値は、上述した各パラメータにより変化する。そこで、制御部9Aは、運転開始から一定時間後の浴室100内の空気の温度の上昇値から、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達したか判断する。また、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達するために必要な、ヒータ5による印加熱量が設定される。
(2)運転開始から一定時間経過後の浴室100内の温度は、季節によっても変化する。そこで、制御部9Aは、図示しない記憶装置に記憶されたカレンダーである日時情報から季節を判断し、運転開始から一定時間後の浴室100内の空気の温度から、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達したか判断する。また、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達するために必要な、ヒータ5による印加熱量が設定される。
(3)浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達するまでに必要な時間が、熱漏れのランク毎に設定されたテーブルが設けられる。制御部9Aは、熱漏れのランク毎に設定されたテーブルに基づき、必要な時間の経過で、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達したか判断する。また、浴室100の壁面106a、106bの温度が、適切な菌糸成長抑制温度に到達するために必要な、ヒータ5による印加熱量が設定される。
【0066】
<本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の動作例>
図6は、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の動作の一例を示すフローチャート、図7は、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機における浴室内の空気の流れの一例を示す説明図で、次に、各図を参照して、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機で環境を改善する運転の動作例について説明する。
【0067】
浴室換気乾燥暖房機1Aで浴室100内の環境を改善する運転として、まず、主に浴室100の壁面106a、106b等に付着したカビの菌糸の成長を抑制する動作について説明する。制御部9Aは、図6のステップSA1で、風路切替ダンパ6Aを図1に実線で示す循環位置にし、循環換気ファンモータ21Aの出力を「大」で駆動して羽根車20Aを回転させると共に、ヒータ5の出力を「大」で駆動する。イオン発生器8は非駆動でイオンの発生が「無」である。
【0068】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、風路切替ダンパ6Aが循環位置にあることで、第1の吹出口25Aが開き、第2の吹出口26A及び換気吹出口27Aが閉じる。これにより、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の略全量が、第1の吹出口25Aへと流れる。第1の吹出口25Aに流れる空気は、ヒータ5によって加熱されることで、事7に示すように、フロントパネル4Aの第1の吹出口グリル41Aから温風HAが吹き出される。
【0069】
上述したように、風路切替ダンパ6Aを循環位置にし、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5を所定の出力で駆動することで、浴室100内に温風が吹き出される運転が行われ、浴室100内の温度が上昇する。また、浴室100内の温度が上昇することで、浴室100の壁面106a、106bの温度が上昇する。更に、浴室換気乾燥暖房機1Aでは、吸込口グリル40Aから吸い込まれる空気RAによって、浴室100内で空気を循環させる流れが生じる。
【0070】
このように、浴室100内の空気を循環させながら、浴室100内に温風を吹き出して、浴室100の壁面106a、106bの温度を上げる運転を、環境改善運転と称す。
【0071】
浴室換気乾燥暖房機1Aでは、循環換気吸込口24Aから吸い込まれる浴室100内の空気の温度が温度センサ7で検出される。制御部9Aは、図6のステップSA2で、浴室100内の空気の温度を温度センサ7で取得し、浴室100内の空気の温度に基づき、環境改善対象物である浴室100の壁面106a、106bの温度を推定する。
【0072】
制御部9Aは、図6のステップSA2で、浴室100の壁面106a、106bの推定温度が、浴室100内の環境を改善し得る目標の環境改善温度、本例では、カビの菌糸の成長を抑制できる菌糸成長抑制温度になったと判断すると、図6のステップSA3で、風路切替ダンパ6Aの開度の設定、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の出力の設定の変更の有無を判断する。制御部9Aは、浴室100内の温度が菌糸成長抑制温度になった後に行う運転に応じて、風路切替ダンパ6Aの開度が設定されると共に、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の出力と運転時間が設定される。
【0073】
制御部9Aは、風路切替ダンパ6Aの開度の設定、循環換気ファンモータ26A及びヒータ5の出力の設定に変更が無い/不要であると判断すると、風路切替ダンパ6Aを循環位置で保持し、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の駆動を同じ設定で継続する。
【0074】
制御部9Aは、風路切替ダンパ6Aの開度の設定、循環換気ファンモータ26A及びヒータ5の出力の設定に変更が有る/必要であると判断すると、図6のステップSA4で、設定に応じて風路切替ダンパ6Aの開度、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の出力を変更する。
【0075】
制御部9Aは、図6のステップSA5で、操作部90で運転を停止する図示しない「切」スイッチが操作されたか判断する。制御部9Aは、操作部90で「切」スイッチが操作されたと判断すると、図6のステップSA6で、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の駆動を停止する。
【0076】
制御部9Aは、操作部90で「切」スイッチが操作されていないと判断すると、図6のステップSA6で、環境改善運転開始から、浴室100内の環境を改善するために必要な時間である所定の環境改善時間が経過したか判断する。制御部9Aは、環境改善運転開始から環境改善時間が経過していないと判断すると、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の所定の出力での駆動を継続する。制御部9Aは、環境改善運転開始から環境改善時間が経過したと判断すると、図6のステップSA7で、後述するような他の環境改善運転を実行するか否かを判断する。制御部9Aは、他の環境改善運転を実行すると判断すると、図6のステップSA8で、後述するような他の環境改善運転を実行する。また、制御部9Aは、他の環境改善運転を実行しないと判断すると、図6のステップSA9で、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の駆動を停止する。
【0077】
図8は、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の他の動作の一例を示すフローチャート、図9は、本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機における浴室内の空気の流れの他の例を示す説明図である。図8図9では、図6で説明した浴室100の壁面106a、106bの温度を上げる環境改善運転の前に、浴室100内の湿度を下げる換気運転等を行うことで、浴室100内の環境を改善する効果を向上させる。
【0078】
制御部9Aは、図8のステップSB1で、風路切替ダンパ6Aを図1に破線で示す循環換気位置にし、循環換気ファンモータ21Aの出力を「大」で駆動して羽根車20Aを回転させる。ヒータ5は非駆動、イオン発生器8は非駆動でイオンの発生が「無」である。
【0079】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、風路切替ダンパ6Aが循環換気位置にあるので、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の一部は、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aへと流れる。また、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の残部は、換気吹出口27Aへと流れ、屋外へ排気される。
【0080】
更に、第1の吹出口25Aに流れる空気は、ヒータ5が非駆動であるので、フロントパネル4Aの第1の吹出口グリル41Aから、室温に応じた空気が吹き出され、また、フロントパネル4Aの第2の吹出口グリル42Aから、室温に応じた空気が吹き出される。
【0081】
上述したように、風路切替ダンパ6Aを循環換気位置にし、循環換気ファンモータ21Aを所定の出力で駆動することで、浴室100内で空気を循環させると共に、浴室100内の空気の一部が屋外に排気されて換気が行われる。このような循環換気運転により、浴室100内の湿気等が排出され、浴室100の壁面106a、106b等の乾燥を促進することができる。
【0082】
制御部9Aは、循環換気運転開始後、図8のステップSB2で、操作部90で運転を停止する図示しない「切」スイッチが操作されたか判断する。制御部9Aは、操作部90で「切」スイッチが操作されたと判断すると、図8のステップSB3で、循環換気ファンモータ21Aの駆動を停止する。
【0083】
制御部9Aは、操作部90で「切」スイッチが操作されていないと判断すると、図8のステップSB4で、循環換気運転開始から所定時間経過したか判断する。制御部9Aは、循環換気運転開始から所定時間経過していないと判断すると、循環換気ファンモータ21Aの所定の出力での駆動を継続する。制御部9Aは、循環換気運転開始から所定時間経過したと判断すると、図8のステップSB5~SB10の環境改善運転を実行する。図8のステップSB5~SB10の環境改善運転は、図6のステップSA1~SA6の環境改善運転と同じである。また、図8のステップSB11で、後述するような他の環境改善運転を実行するか否かを判断する。制御部9Aは、他の環境改善運転を実行すると判断すると、図8のステップSB12で、後述するような他の環境改善運転を実行する。また、制御部9Aは、他の環境改善運転を実行しないと判断すると、図8のステップSB3で、循環換気ファンモータ21A及びヒータ5の駆動を停止する。
【0084】
なお、上述したように、図6のステップSA1~SA6の環境改善運転、図8のステップSB5~SB10の環境改善運転の後に、継続して他の環境改善運転を行っても良い。
【0085】
例えば、制御部9Aは、環境改善運転開始から環境改善時間が経過したと判断すると、風路切替ダンパ6Aを図1に破線で示す循環換気位置にし、循環換気ファンモータ21Aの出力を「大」で駆動して羽根車20Aを回転させると共に、ヒータ5の出力を「大」で駆動する。また、イオン発生器8の出力を「大」で駆動してイオンを発生させる。
【0086】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、風路切替ダンパ6Aが循環換気位置にあるので、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の一部は、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aへと流れる。また、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の残部は、換気吹出口27Aへと流れ、屋外へ排気される。
【0087】
第1の吹出口25Aに流れる空気は、ヒータ5によって加熱されることで、フロントパネル4Aの第1の吹出口グリル41Aから温風HAが吹き出される。また、イオン発生器8が駆動されることで、フロントパネル4Aの第1の吹出口グリル41Aからイオンを含む温風が吹き出されると共に、フロントパネル4Aの第2の吹出口グリル42Aから、イオンを含む室温に応じた空気が吹き出される。
【0088】
浴室換気乾燥暖房機1Aでは、第2の吹出口グリル42Aから吹き出される空気Aは、第1の吹出口グリル41Aに対して第2の吹出口グリル42Aが設けられる側の浴室100の壁面106aに向けられる。
【0089】
これにより、図9に示すように、第2の吹出口グリル42Aから吹き出される空気Aは、浴室100の一方の壁面106aに当てられ、矢印A1に示すように壁面106aに沿って下方に流れる。壁面106aに沿って下方に流れる空気は、矢印A2に示すように、浴室100の下層付近を、主に他方の壁面106bに向かって流れる。
【0090】
浴室換気乾燥暖房機1Aでは、吸込口グリル40Aから吸い込まれる空気RAによって、浴室100内で空気を循環させる流れを生じさせているので、浴室100の下層付近を他方の壁面106bに向かって流れる空気は、矢印A3に示すように壁面106bに沿って上方に流れ、吸込口グリル40Aから吸い込まれる。
【0091】
このように、浴室換気乾燥暖房機1Aでは、第2の吹出口グリル42Aから吹き出される空気によって、浴室100の一方の壁面106aに沿って下方に向かい、浴室100の下層付近を他方の壁面106bに向かい、他方の壁面106bに沿って上方に向かう空気の流れを発生させることができる。
【0092】
これにより、イオンを含む温風を浴室100内で循環させると共に、浴室100内の空気の一部が屋外に排気されて換気が行われる。環境改善運転の後に行う他の環境改善運転として、イオン及び温風を吹き出しながらの循環換気運転により、図6のステップSA1~SA6の環境改善運転、図8のステップSB5~SB10の環境改善運転の後の、浴室100の壁面106a、106bの温度低下が抑制される。
【0093】
イオン発生器8から放出されるH+(H2O)m及びO2 -(H2O)nは、浮遊菌の表面に付着し、化学反応して活性種であるH22または・OHを生成する。H22または・OHは、極めて強力な活性を示すため、これらにより、空気中の浮遊細菌を取り囲んで不活化することができる。ここで、・OHは活性種の1種であり、ラジカルのOHを示している。これにより、H+(H2O)m及びO2 -(H2O)nが主体のイオンは、菌の不活化を行うこと等が可能な機能因子となる。よって、イオン発生器8で略同数の正イオンと負イオンを発生させ、略同数の正イオンと負イオンを含む空気を送風することで、浴室100の壁面106a、106b等に付着したカビのみならず、浴室100の空気中の浮遊細菌やウイルス、浴室換気乾燥暖房機1A内の風路を通る空気中の細菌やウイルス、更には浴室100の壁面106a、106bに付着した細菌やウイルス等を不活性化することができる。
【0094】
また、正に帯電した空気中の成分、浴室換気乾燥暖房機1A内の風路、浴室100の壁面106a、106b等が、負イオンで除電される。更に、イオン発生器8から正イオンを発生させることで、負に帯電した空気中の成分、浴室換気乾燥暖房機1A内の風路、浴室100の壁面106a、106b等が、正イオンで除電される。よって、浴室換気乾燥暖房機1A内の風路、浴室100の壁面106a、106b等に、汚れやカビの胞子が静電気で付着することを抑制できる。
【0095】
更に、浴室100の空気中の不活性化した浮遊細菌やウイルス等を、浴室100外へ排出することができる。
【0096】
なお、イオン発生器8によるイオンの発生は、正イオンのみや負イオンのみでも良く、コロナ放電ではなく、他の方法でも良い。また、循環する空気に含まれる浮遊細菌と浴室の空気中の浮遊細菌の双方を除去する機能因子として、イオンではなく、オゾン等、他の機能因子であっても良い。また、機能因子発生手段は、銀イオンや、脱臭及び除菌を行う薬剤や、保湿効果を促す薬剤等を噴霧させる噴霧手段等を用いても良く、空気中の浮遊細菌や衣類等に付着した細菌の増殖を抑制するものや、細菌、ウイルスを不活性化するもの、また、保湿効果を持った機能因子を放出するようなもの等、空気に特定の機能を付与する手段であれば、如何なる形態のものであっても良い。
【0097】
制御部9Aは、操作部90で「切」スイッチが操作されたと判断すると、循環換気ファンモータ21A、ヒータ5及びイオン発生器8の駆動を停止する。また、制御部9Aは、イオン及び温風を吹き出しながらの循環換気運転開始から、所定時間が経過したと判断すると、循環換気ファンモータ21A、ヒータ5及びイオン発生器8の駆動を停止する。
【0098】
上述した環境改善運転の後に行う他の環境改善運転として、風路切替ダンパ6Aを循環位置にし、循環換気ファンモータ21Aの出力を「大」で駆動して羽根車20Aを回転させると共に、ヒータ5の出力を「大」で駆動し、更に、イオン発生器8の出力を「大」で駆動してイオンを発生させることで、換気を行わずに、イオン及び温風を吹き出しながらの循環運転を行ってもよい。また、上述した環境改善運転中に、イオン発生器8の出力を「大」で駆動してイオンを発生させても良い。イオン及び温風を吹き出しながらの循環運転を行うことで、熱の印加による環境改善の効果に加え、イオン等の機能因子による細菌、ウイルスの不活化を図ることができる。
【0099】
なお、上述した環境改善運転は、操作部90に環境改善運転を実行する運転モードを選択する専用のボタンを設けて、操作部90で選択可能な独立した運転モードとしても良いし、他の運転モードと連動して実行される運転としても良い。また、浴室換気乾燥暖房機1Aで実行される他の運転モードとして、ウイルス抑制モードを備えても良い。ウイルス抑制モードは、例えば、上述した環境改善運転の他、操作部90にウイルスを抑制する運転モードを選択可能な専用のボタンを設ける。そのボタンが押されると、イオン発生器8の出力を「イオン大」、循環換気ファンモータ21Aの出力を「風量大」、ヒータ5の出力を「ヒータ無」として風を送る。風路切替ダンパ6Aは循環位置でも循環換気位置でも良い。また、「ヒータ大」としても良い。なお、「イオン大」のときは「ヒータ小」にして、「イオン小」のとき「ヒータ大」としても良い。ウイルス抑制モードのアプリケーションとしては、外出から帰ってきたら、マスク、衣類、鞄等を浴室100のランドリパイプ105に吊るして、所定時間(例えば1時間から2時間)イオン及びヒータ5により温度が上げられた風を当てる。
【0100】
浴室換気乾燥暖房機1Aで実行される他の運転モードとしては、暖房運転モードでは、風路切替ダンパ6Aを図1に実線で示す循環位置にし、循環換気ファンモータ21Aを駆動して羽根車20Aを回転させると共に、ヒータ5に通電する。
【0101】
暖房運転モードでは、風路切替ダンパ6Aが循環位置にあるので、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の略全量が、第1の吹出口25Aへと流れる。暖房運転モードでは、第1の吹出口25Aに流れる空気は、ヒータ5によって加熱されることで、フロントパネル4Aの第1の吹出口グリル41Aから温風が吹き出される。
【0102】
これにより、暖房運転モードでは、浴室100内の温度を入浴に適した温度に上昇させることができ、快適な入浴環境を提供できる。
【0103】
浴室換気乾燥暖房機1Aは、循環換気運転モードでは、風路切替ダンパ6Aを図1に破線で示す循環換気位置にし、ヒータ5を非駆動として、循環換気ファンモータ21Aを駆動して羽根車20Aを回転させる。
【0104】
循環換気運転モードでは、風路切替ダンパ6Aが循環換気位置にあるので、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の一部は、第1の吹出口25A及び第2の吹出口26Aへと流れる。また、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の残部は、換気吹出口27Aへと流れ、屋外へ排気される。
【0105】
循環換気運転モードでは、第1の吹出口25Aに流れる空気は、ヒータ5が非駆動であるので、フロントパネル4Aの第1の吹出口グリル41Aから、室温に応じた空気が吹き出される。また、フロントパネル4Aの第2の吹出口グリル42Aから、室温に応じた空気が吹き出される。
【0106】
これにより、循環換気運転モードでは、浴室100内で空気を循環させると共に、浴室100内の空気の一部が屋外に排気されて換気が行われるので、湿気等を排出して、浴室100の各壁面、床面等の乾燥を促進することができる。
【0107】
換気運転モードでは、風路切替ダンパ6Aを図1に一点鎖線で示す換気位置にし、ヒータ5を非駆動として、循環換気ファンモータ21Aを駆動して羽根車20Aを回転させる。
【0108】
換気運転モードでは、風路切替ダンパ6Aが換気位置にあるので、循環換気吸込口24Aから吸い込まれた浴室100の空気の略全量が換気吹出口27Aへと流れ、屋外へ排気される。従って、換気運転モードでは、浴室100内の湯気や湿気を排出して結露等を抑制し、カビの発生を抑えることができる。
【0109】
浴室換気乾燥暖房機1Aでは、24時間換気運転モードを備える。24時間換気運転モードは、浴室換気乾燥暖房機1Aが設置された建物内の空気を、所定時間で換気できる風量で上述した換気モードが常時実行される。従って、24時間換気運転モードでは、室内の空気を新鮮な空気に入れ替えることができる。
【0110】
<本実施の形態の浴室換気乾燥暖房機の作用効果例>
浴室換気乾燥暖房機1Aでは、浴室100の壁面106a、106bの温度を、40℃~60℃程度にまで上げることができる。但し、40℃~60℃程度の温度では、カビの胞子は生存し得る。これに対し、浴室100の壁面106a、106bの温度を、40℃前後に上げることで、カビの菌糸の成長を抑止し、防カビ効果を得ることができた。具体的には、浴室100の壁面106a、106bの温度を38℃に上げて、一定時間、壁面106a、106bの温度を維持することで、防カビ効果を得ることができた。
【0111】
そこで、菌糸成長抑制温度の下限を38℃以上とし、浴室100の壁面106a、106bの温度(推定温度)が、菌糸成長抑制温度になったと判断すると、所定の環境改善時間、加熱を継続する環境改善運転を行う。例えば、菌糸成長抑制温度が40℃である場合、環境改善時間は20分以上である。
【0112】
そして、浴室100の壁面106a、106bの温度が、菌糸成長抑制温度になった後、ヒータ5等の出力の設定の変更により、ヒータ5による投入熱量を低下させながら、壁面106a、106bの温度を維持する運転を行い、防カビ効果を得ると共に、エネルギー消費量の増加を抑制する。
【0113】
ヒータ5等の出力制御例としては、ヒータ5が複数本のヒータから構成される場合であれば、駆動するヒータの数を増減させる。また、ヒータ5の駆動と非駆動を所定の時間で切り替える間欠駆動において、ヒータ5を駆動する時間より非駆動とする時間を延長して、ヒータ5の運転率を下げると共に、循環換気ファンモータ21Aの回転数を低下させて風量を減らすことで、温風の温度を維持または上げる。
【0114】
なお、ヒータ5による印加熱量の増減を、イオン発生器8により発生させるイオン等の機能因子等で補っても良い。また、浴室100内の温度の上昇率に応じて、浴室100の壁面106a、106bの温度が、菌糸成長抑制温度に到達するより前に、ヒータ5等の出力を制御しても良い。
【0115】
上述した環境改善運転は、数日に一度などの一定の間隔おきに運転することが、エネルギー消費量の増加の抑制の面から優位である。また、浴室100の使用頻度に応じて、環境改善運転を行う間隔を増減させることが、防カビの面から優位である。
【0116】
例えば、一日に一度、環境改善運転を行うことに比較して、三日おきに環境改善運転を行う方が、エネルギー消費量が抑制され、電気代が安くなる。一方、浴室100の使用頻度が高い場合、低い場合と比較して環境改善運転を行う間隔を短くすれば、防カビの効果が高くなる。このような運転の設定としておけば、エネルギー消費量の増加の抑制の面で、商品価値を高めることができる。
【0117】
また、浴室100の壁面106a、106bの温度を、40℃~60℃程度にまで上げても、カビの胞子は生存し得るが、菌糸の成長は抑制できる。環境改善運転を毎日行ったとしても、カビの胞子は常に浴室100内に流入し得るため、環境改善運転を所定の間隔を開けて行うことで、胞子から菌糸を意図的に発芽させてから、菌糸の成長を抑制することができ、繁殖範囲を抑制できる。繁殖は範囲を抑制できれば、浴室掃除の間隔を開けることもでき、防カビの面でも商品価値を高めることができる。
【0118】
更に、浴室100の使用頻度に応じて、ユーザが任意の間隔、タイミングで環境改善運転を行えるようにする方が、ユーザの使い勝手が良くなり、商品価値を高めることができる。
【0119】
なお、加熱手段は、遠赤外線による輻射熱で浴室100内に熱を印加するヒータを、浴室換気乾燥暖房機1Aに備えても良いし、浴室換気乾燥暖房機1Aと独立して浴室100A内の所定の位置に備えても良い。
【0120】
また、環境検出手段として、温度センサを浴室100の壁面106a、106b等の環境改善対象物に備えても良いし、浴室100内に設置される図示しない操作装置に備えても良い。更に、環境検出手段として湿度センサを備えても良い。例えば、浴室100内の湿度を検出し、湿度、湿度の変化に応じて環境改善運転を行う間隔を切り替えても良い。
【0121】
また、第1の吹出口25A,第2の吹出口26Aに、空気の吹き出し方向を可変とするルーバを備え、環境改善対象物の浴室100内の位置に応じて、温風、イオンを含む温風等を吹き出せるようにしても良い。環境改善対象物が、ランドリパイプ105に掛けられた衣類等の被乾燥物である場合、所定の環境改善温度となるような熱の印加による確実な乾燥等を行うことができる。
【符号の説明】
【0122】
1A・・・浴室換気乾燥暖房機、2A・・・循環換気ファン、20A・・・羽根車、21A・・・循環換気ファンモータ、22A・・・循環換気ファンケース、23A・・・吹出風路、24A・・・循環換気吸込口、25A・・・第1の吹出口、26A・・・第2の吹出口、27A・・・換気吹出口、4A・・・フロントパネル、40A・・・吸込口グリル、41A・・・第1の吹出口グリル、42A・・・第2の吹出口グリル、5・・・ヒータ(加熱手段)、6A・・・風路切替ダンパ、7・・・温度センサ(環境検出手段)、8・・・イオン発生器(機能因子発生手段)、100・・・浴室、101・・・天井、103・・・浴槽、104・・・洗い場、105・・・ランドリパイプ、106a,106b・・・壁面(環境改善対象物)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9