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特許7468198コーヒーメーカー用浄水カートリッジ、およびそれを装着したコーヒーメーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】コーヒーメーカー用浄水カートリッジ、およびそれを装着したコーヒーメーカー
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/60 20060101AFI20240409BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240409BHJP
   A47J 31/057 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A47J31/60 105
C02F1/28 G
A47J31/057 106
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113844
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012193
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯部 卓
(72)【発明者】
【氏名】山内 敬大
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500240(JP,A)
【文献】特開2007-313002(JP,A)
【文献】特開平04-341390(JP,A)
【文献】実開昭48-044256(JP,U)
【文献】特開平09-103371(JP,A)
【文献】特開2000-140832(JP,A)
【文献】米国特許第06158328(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水流入口および底部に浄水流出口を有するケースと、
前記ケースの内側に収納されたろ材と、
前記ケースの底部の外側の面に固定され、前記浄水流出口の周りを囲むシール部材と、
前記ケースの外側の面に固定され、吸着面がケースの底部から外側に向かう方向に向けられた吸盤と、
を備え、前記シール部材がリング状であり、前記ケースの底部から外側に向かうにつれて拡径しているコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記吸盤を複数備え、
前記複数の吸盤の吸着力の合計が500gf以上2000gf以下である、請求項1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記吸盤が、JIS K 6253に規定されたタイプAに基づく硬度が30度以上70度以下のゴムで構成された、請求項1または2のコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項4】
請求項1~のいずれかのコーヒーメーカー用浄水カートリッジが、水タンクの底面に取り付けられたコーヒーメーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーメーカー用浄水カートリッジと、その浄水カートリッジを交換可能に水タンクに取り付け、水を浄化した後に加熱してコーヒーを抽出するコーヒーメーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
水道水を水タンクに注ぎ込んで、コーヒーを抽出して飲用するコーヒーメーカーにおいて、水道水が細菌の繁殖を防ぐための遊離残留塩素を含ませているため、カルキ臭があり、コーヒーを抽出するときに味を損なう原因になっている。蛇口直結形浄水器やポット形浄水器を用いて水道水を浄化してからコーヒーの抽出に使えば、味が損なわれることなく美味しく飲用できる。しかし、コーヒーメーカーの使用者が、必ずしも浄水器を保有しているとは限らない。そこで、コーヒーメーカーの使用者がわざわざ浄水器を購入する必要が無いように、浄水器付きのコーヒーメーカーが提案されている。
【0003】
特許文献1には、コーヒーメーカーの水タンクの底部に装着する浄水カートリッジが提案されている。水タンク底部の内周面形状に対応する輪郭を有するケースと、ケースに収納された浄水化材料と、ケース本体の周縁から側方に突出する弾性シール条片とから成り、水タンクを変更することなく、手持ちのコーヒーメーカーに使用できるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、コーヒーメーカーの脱着可能な水タンクの流出口に連結ケースを連結し、連結ケースに活性炭を含有する多孔質体フイルタ(浄水カートリッジ)を配設する構造が提案されている。水タンクから供給される水の全てが通過して浄化される。水タンクの形状が変化しても、連結ケースと多孔質体フイルタが共通にできて、コストの低減を図ることができるとされている。
【0005】
一方で、特許文献3には、コーヒーメーカーの脱着可能な水タンクの中に水容器を設け、その水容器の下部に活性炭フイルタ(浄水カートリッジ)を設けたものが提案されている。内容器に注がれた水が活性炭フイルタを通り、水タンクに導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60―30731号公報
【文献】特開平3-168108号公報
【文献】特開平4-129511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コーヒーメーカー全体のデザインを良くするために、水タンクの底近傍の横断面は略台形であったり半円形であったり様々である。特許文献1の技術では、たとえ弾性シール条片があったとしても、1種類の浄水カートリッジで複数のコーヒーメーカーに対応することはできないという問題点がある。
【0008】
これに対し、特許文献2の技術では、水タンクの流出口に連結ケースを連結し、連結ケースに多孔質体フイルタを配設するので、水タンクの形状が異なる複数のコーヒーメーカーでも対応できる。
【0009】
しかしながら、水タンクの底部の流出口に浄水カートリッジを連結すると、鉛直方向に大きくなり、コーヒーメーカー自体が大型化するという問題点がある。また、水タンクの底部の流出口の下にある浄水カートリッジを交換するのには手間がかかるという問題点もある。さらに、水タンク外側での連結部が増えるので水漏れ懸念が増すという問題点もある。
【0010】
これに対し、特許文献3の技術では、水タンクの中に水容器を設け、その水容器の下部に浄水カートリッジを設けるので、コーヒーメーカー自体が大型化したり、水タンク外側での水漏れ懸念が増したりすることは無い。
【0011】
しかしながら、水タンクの底近傍の横断面が異なる複数のコーヒーメーカーに対応できないという問題点は、特許文献1の技術と同様である。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑み、水タンクの底近傍の横断面の異なる複数のコーヒーメーカーに対応でき、水道水が浄水に混入することが無く、コーヒーメーカー自体が大型化したり、水タンク外側での水漏れ懸念が増したりすることが無いコーヒーメーカー用浄水カートリッジと、その浄水カートリッジを装着したコーヒーメーカーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、
原水流入口および底部に浄水流出口を有するケースと、
上記ケースの内側に収納されたろ材と、
上記ケースの底部の外側の面に固定され、上記浄水流出口の周りを囲むシール部材と、
上記ケースの外側の面に固定され、吸着面がケースの底部から外側に向かう方向に向けられた吸盤と、を備えている。
【0014】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記吸盤を複数備え、上記複数の吸盤の吸着力の合計が500gf以上2000gf以下である。
【0015】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記吸盤が、JIS K 6253に規定されたタイプAに基づく硬度が30度以上70度以下のゴムで構成されている。
【0016】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記シール部材がリング状であり、上記ケースの底部から外側に向かうにつれて拡径している。
【0017】
本発明のコーヒーメーカーは、水タンクの底面に上記のコーヒーメーカー用浄水カートリッジが取り付けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、ケースの浄水流出口の周りを囲むシール部材と、ケースに固定された吸盤を備えているので、浄水流出口とコーヒーメーカーの水タンクの流出口とが対向するように、カートリッジを水タンクの底に押しつけると、カートリッジは吸盤の吸着力によって水タンクの底面にしっかりと密着し、浄水流出口から水タンクの流出口に至る空間の周囲がシール部材で密閉された状態になるので、カートリッジから流出した浄水に原水(水道水)が混入することを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、吸盤によって水タンクの底に密着して装着されるので、水タンクの底近傍の横断面が略台形であっても半円形であっても装着でき、カートリッジのケースの形状を水タンクの内周面形状にぴったりと対応させる必要は無い。すなわち、本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、水タンクの底近傍の横断面が異なる複数のコーヒーメーカーに対応できる。
【0020】
さらに、本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、水タンクの中に装着するので、コーヒーメーカー自体が大型化したり、水タンク外側での水漏れ懸念が増したりすることは無い。浄水カートリッジ交換において、水タンクの底部の流出口の下を分解する必要が無く、手間がかからない。
【0021】
また、本発明の好ましい態様の浄水器用カートリッジは、吸盤を複数備え、複数の吸盤の吸着力の合計が500gf以上2000gf以下であるので、水タンクの底面にしっかりと固定することができる一方で、引っ張って容易に取り外すこともできる。
【0022】
また、本発明の好ましい態様の浄水器用カートリッジは、吸盤が、硬度が30度以上70度以下のゴムで構成されているので、吸盤が変形しやすく、水タンクの底面に容易に脱着できる。
【0023】
また、本発明の好ましい態様の浄水器用カートリッジは、シール部材がリング状であり、下方が拡径しているので、シール部材が水タンクの底面に密着しやすく、浄水に原水(水道水)が混入することを確実に防ぐことができる。
【0024】
本発明のコーヒーメーカーは、本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジが水タンクの底面に着脱可能に取り付けられているので、蛇口直結形浄水器やポット形浄水器を購入しなくても、浄水をコーヒーの抽出に使うことができ、カルキ臭で味が損なわれることなく、美味しいコーヒーを飲用できるとともに、浄水カートリッジの交換も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態例のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。
図2図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを、コーヒーメーカーの水タンクに装着した状態の縦断面図である。
図3図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの斜視図である。
図4図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの吸盤の斜視図である。
図5図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを装着したコーヒーメーカーの斜視図である。
図6】本発明の別の実施形態例のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの正面面図ある。
図7図6のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態例のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。図2は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを、コーヒーメーカーの水タンクに装着した状態の縦断面図である。図3は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの下方から見た斜視図である。
【0027】
浄水カートリッジ1を構成する各部材について説明する。浄水カートリッジ1は、上端が開口した有底筒状のろ材収容ケース2と、ろ材収容ケース2の上端開口に固定される蓋3と、ろ材収容ケース2と蓋3で形成される内部空間に収納した粒状ろ材10を有している。
【0028】
ろ材収容ケース2は、略台形や半円形である水タンクの底近傍の横断面に合うように、水平断面が長丸形になっている。底面中央に浄水流出口12を有し、水タンク51の底面に突出する給水口52に被せることができるようになっている。浄水流出口12には流出口メッシュ13が設けられていて、粒状ろ材10が給水口52に流出しないように保持している。流出口メッシュ13は、ろ材収容ケース2を射出成形する際に、インサート成形によりメッシュクロスを一体化して固定している。射出成形後にメッシュクロスや不織布を超音波溶着によって固定して、流出口メッシュにしても良い。また、金型にメッシュ形状を形成し、射出成形によってメッシュを形成し、流出口メッシュにしても良い。
【0029】
ろ材収容ケース2の底面の長軸方向・両端付近には、一対の半円形の原水流入口11A、11Bが配設されている。原水流入口11A、11Bには、それぞれ流入口メッシュ14A、14Bが設けられていて、粒状ろ材10が水タンク51に漏れ出ないように保持している。流入口メッシュ14A、14Bは、流出口メッシュ13と同様、ろ材収容ケース2を射出成形する際に、インサート成形によりメッシュクロスを一体化して固定している。射出成形後にメッシュクロスや不織布を超音波溶着によって固定して、流入口メッシュにしても良く、金型にメッシュ形状を形成し、射出成形によってメッシュを形成して流入口メッシュにしても良い。
【0030】
ろ材収容ケース2の浄水流出口12と原水流入口11Aの間には仕切り部15Aが立設していて、浄水流出口12と原水流入口11Bの間には仕切り部15Bが立設している。仕切り部15Aの上端と仕切り部15Bの上端は、ろ材収容ケース2の開口端よりも低くなっている。仕切り部15Aの外側は原水流入口11Aから流入した水が上向きに流れる流路、仕切り部15Bの外側も原水流入口11Bから流入した水が上向きに流れる流路、仕切り部15Aと仕切り部15Bの間は浄水流出口12に向かう下向きの流路が形成される。
【0031】
ろ材収容ケース2の底部の外側の面には、浄水流出口12の周りを囲むようにシール部材21が固定されていて、水タンク51に投入した原水(水道水)と浄水カートリッジから流出した浄水が混ざらないようにシールしている。シール部材21はリング状であり、ろ材収容ケースの底部から外側に向かうにつれて拡径している。シール部材21を水タンク51の底面に押しつけると、シール部材21の外径が大きくなりながら内面が水タンクに密着し、しっかりとシールされて原水と浄水が混ざることが無い。シール部材21の材質はシリコーンゴム、NBRゴム、EPDMゴム、塩ビゴムなどのゴム素材が好ましく使用できる。ゴム素材の硬度は、厚さを調整して、JIS K 6253に規定されたタイプAに基づく硬度30度~70度の範囲で適宜選択できる。硬度が30度以上であると、柔らか過ぎることなく適度な剛性を有して形状が安定しており、ろ材収容ケース2にしっかりと固定できる。硬度が70度以下であると、固過ぎることなく変形が容易であり、水タンク51の底面に隙間なくぴったりと密着できる。本実施形態では、シール部材21の材質としては安全性が高いシリコーンゴムを選択し、ゴムの硬度は50度とした。
【0032】
ろ材収容ケース2の底部近傍の外側の面には一対の吸盤固定軸22A、22Bが設けられていて、後述の吸盤23、24の固定に用いられる。吸盤固定軸は一対としたが、二対あれば固定の安定性は増す。もちろん三対でも良い。
【0033】
ろ材収容ケース2の開口を塞ぐ蓋3は、水平断面が長丸形状の筒部3Aと、平板部3Bと、直立円筒部3Cが一体になった構成である。筒部3Aを、ろ材収容ケース2の外側面に被せた状態で超音波溶着により一体化することで、ろ材収容ケース2と蓋3の内部空間を形成しながら、ろ材収容ケース2と蓋3の隙間から原水(水道水)が流入することを防いでいる。
【0034】
平板部3Bの中央には空気抜き穴31が設けられ、空気抜き穴31を囲むように直立円筒部3Cが平板部3Bに連結している。直立円筒部3Cは中空で、その上端が水タンク51の水面よりも高く位置するようになっている。すなわち空気抜き穴31は、水タンク51の水面の上の空間と連通可能になっている。
【0035】
空気抜き穴31には、空気抜き穴メッシュ32が設けられていて、粒状ろ材10がろ材収容ケース2と蓋3で形成される内部空間から漏れ出ないように保持している。空気抜きメッシュ32は、蓋3を射出成形する際に、インサート成形によりメッシュクロスを一体化して固定している。射出成形後にメッシュクロスや不織布を超音波溶着によって固定して、空気抜き穴メッシュにしても良い。また、金型にメッシュ形状を形成し、射出成形によってメッシュを形成して空気抜き穴メッシュにしても良い。
【0036】
直立円筒部3Cの内側には、円柱形のシャフト栓33が配設され、その下端近傍はOリング34を介して空気抜き穴31に嵌入するようになっている。上端近傍には鍔33Aが設けられ、鍔33Aを直立円筒部3Cの上端面に当てることで、シャフト栓33を所定の固定位置に停止できるようになっている。
【0037】
図4は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの吸盤の斜視図である。吸盤23は、お椀状の吸盤部23Aと、横穴23Cを有する軸部23Bとから成る。ろ材収容ケース2の外側面の吸盤固定軸22Aを横穴23Cに挿入することで固定される。吸着面、すなわちお椀状の吸盤部の内面がケースの底部から外側に向かう方向に向けられている。吸盤24についても同様に、ろ材収容ケース2の外側面の吸盤固定軸22Bを横穴24Cに挿入することで固定される。
【0038】
吸盤の吸着力は、吸盤の外径、円弧径、材質、硬度、表面粗さなどで調整できる。吸盤の外径を7mm以上20mm以下、材質をシリコーンゴム、ゴム硬度を比較的柔らかめの30度以上70度以下の範囲にするなどして、吸盤23の吸着力と吸盤24の吸着力の合計を500gf以上2000gf以下に調整している。これによって浄水カートリッジ1の取り付けも取り外しも容易になっている。吸着力の合計が500gf以上であると、浄水カートリッジ1を水タンクの底に安定して固定でき、シール部材21によるシール性が保てる。吸着力が2000gf以下であると、浄水カートリッジ1を手で引っ張れば、水タンクの底から簡単に取り外せる。そのため、水タンクから浄水カートリッジ1を取り外せなくなったり、吸盤固定軸22Aや22Bを破損させてしまったりすることもない。
【0039】
ろ材収納ケース2には、粒状ろ材10として粒状・銀添着活性炭とイオン交換体の混合物を使用している。粒状・銀添着活性炭により、水道水中の遊離残留塩素を分解するとともに、カビ臭の原因物質である2メチルイソボルネオールなどの有機物を吸着除去している。イオン交換体により、マグネシウムやカルシウムなどを適度に除去し、硬度を調整している。この浄水をコーヒーの抽出に使うことで、カルキ臭で味を損なうことなく、美味しいコーヒーを飲用できる。粒状・銀添着活性炭から少量の銀イオンが溶出することにより、粒状ろ材10に滞留した水で細菌が増殖することを抑制している。
【0040】
ろ材収納ケース2と蓋3で形成される内部空間において、粒状ろ材10の上部に弾性部材8が設けられている。ろ材収納ケース2に粒状ろ材10を充填する生産工程において、ろ材収納ケース2の開口端から溢れないように充填すると、粒状ろ材10の充填上面が開口端から少し下になり空間ができる。しかし、充填完了後、粒状ろ材10の上から弾性部材8を載せ、さらに上から蓋3を嵌着させると、弾性部材8が粒状ろ材10と蓋3に密着することで空間を埋めることができ、粒状ろ材10が空間を動いて偏ることは無い。生産工程において、粒状ろ材10の充填量が若干ばらついても、弾性部材8の弾力で空間をしっかりと埋めることができる。弾性部材8としては、ポリオレフィンフォームやシリコーンゴムを使用できる。
【0041】
以上のように構成された浄水カートリッジ1のコーヒーメーカーの水タンクへの装着について説明する。図5は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを装着したコーヒーメーカーの斜視図である。
【0042】
コーヒーメーカーの水タンク51の底近傍の横断面は略台形や半円形であり、その長尺方向に、水平断面が長丸形である浄水カートリッジ1の長尺方向を合わせるように、底面を下にして挿入する。次に、浄水カートリッジ1の底面中央に設けた浄水流出口12の中心を、水タンク51の底面にある給水口52の中心に合わせ、浄水流出口12を給水口52に被せる。浄水カートリッジ1の底面を水タンク51の底面に近付けるように押すと、浄水カートリッジ1の一対の吸盤23、24が水タンク51の底面に密着して、しっかりと固定される。浄水カートリッジ1の底部の外面に、浄水流出口12の周りを囲むように固定したシール部材21が、外径が大きくなりながら内面が水タンク51に密着してシール機能を発揮し、水タンク51に投入した原水(水道水)と浄水カートリッジ1から流出した浄水は混ざらない。
【0043】
浄水カートリッジ1を、一対の吸盤23、24によって水タンク51の底に装着するので、水タンク51の底近傍の横断面が略台形であっても半円形であっても装着できる。浄水カートリッジ1の形状を水タンク51の内周面形状にぴったりと対応させる必要は無い。すなわち、浄水カートリッジ1は、水タンク51の底近傍の横断面が異なる複数のコーヒーメーカーに対応できる。
【0044】
浄水カートリッジ1を水タンク51の中に装着するので、コーヒーメーカー自体が大型化したり、水タンク51の外側での水漏れ懸念が増したりすることは無い。浄水カートリッジ1の交換において、水タンク51の底部の流出口の下を分解する必要が無く、手間がかからない。
【0045】
次に、浄水カートリッジ1を使用する前の空気抜き操作について説明する。乾燥した粒状活性炭の通水初期には、活性炭の細孔内部の空気と水が入れ替わることによって気泡が大量に発生するが、これが通水の妨げになったり、コーヒーメーカーの吸引ポンプに大きな負荷がかかって故障の原因になったりする。そこで、コーヒーメーカーの水タンク51に浄水カートリッジ1を装着した状態で、浄水カートリッジ1のシャフト栓33を抜き取り、水タンク51に原水(水道水)を注ぎ入れる。原水は、原水流入口11A、11Bから浄水カートリッジ1内に流入し、同時に浄水カートリッジ1内の空気が空気抜き穴31から抜け出る。乾燥した粒状活性炭が水に浸ることで気泡が発生するが、それも空気抜き穴31から抜け出る。浄水カートリッジ1内の空気が全て抜け切り、空気抜き穴31から水が溢れ出そうなことを確認した瞬間に、シャフト栓33を蓋3の直立円筒部3Cに差し込んで空気抜き穴31を閉塞する。気密に閉塞することで、空気抜き穴31から不必要に空気が流入することや、空気抜き穴31から水が漏れ出ることを防いでいる。
【0046】
空気抜き操作が完了したら、所定量の原水(水道水)を水タンク51に注ぎ込んで、コーヒーの抽出を行う。原水が浄水カートリッジ1に流入し、粒状ろ材10により、水道水中の遊離残留塩素を分解するとともに、カビ臭の原因物質である2メチルイソボルネオールなどの有機物を吸着除去する。マグネシウムやカルシウムなどを適度に除去し、硬度を調整する。水タンク51の給水口から供給された浄水をコーヒーの抽出に使うことで、味を損なうことなく、美味しいコーヒーを飲用できる。
【0047】
図6は、本発明の別の実施形態例に係るコーヒーメーカー用浄水カートリッジの正面図である。図7は、図6のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図ある。
【0048】
ろ材収容ケース102は、底面中央に浄水流出口112を有し、長軸方向・両端付近の側面に、原水流入口111A、111Bが配設されている。底部の外側の面には、浄水流出口112の周りを囲むようにシール部材121が固定され、底部近傍の外側の面には一対の吸盤123、124が固定されている。蓋103は、水平断面が長丸形状の筒部103Aと、平板部103Bが一体となった構成であり、筒部103Aを、ろ材収容ケース102の外側の面に被せた状態で超音波溶着により一体化する。超音波溶着部の一部に空気抜き穴131が設けられている。
【0049】
コーヒーメーカーの水タンクの長尺方向に、水平断面・長丸形である浄水カートリッジ101の長尺方向を合わせるように、底面を下にして挿入する。次に、浄水カートリッジ101の底面中央に設けた浄水流出口112の中心を、水タンクの底面にある給水口の中心に合わせ、浄水流出口12を給水口に被せる。浄水カートリッジ101の底面を水タンクの底面に近付けるように押すと、浄水カートリッジ101の一対の吸盤123、124が水タンクの底面に密着して、しっかりと固定される。
【実施例
【0050】
<実施例1>
有底筒状のろ材収容ケースは、水平断面・長丸形の長軸は55mm、短軸は28mm、高さは34mm。シール部材は、リング状で内径21mm、外径32mm、材質はシリコーンゴムで、硬度50度とした。吸盤は、外径12mm、材質はシリコーンゴムで、硬度50度として一対設けた。吸着力の合計は1000gfであり、脱着は極めて容易だった。
【0051】
UCC上島珈琲製のコーヒーメーカーDP2の水タンクに装着し、初期操作を実施後、水タンクに遊離残留塩素濃度2ppmの試験水を650cc注入した。昇温を行わず、コーヒーも抽出しない設定で、浄水を吐出させたところ、遊離残留塩素濃度は0ppmであり、シール部材において原水が浄水に漏れていないことが確認できた。
【0052】
同じ浄水カートリッジを、UCC上島珈琲製の別のコーヒーメーカーDP3の水タンクに装着しても、同様に良好な結果が得られた。
【0053】
<比較例1>
上記と同じ浄水器用カートリッジを製作した。ただし、一対の吸盤は設けず、浄水流出口の内径を、UCC上島珈琲製のコーヒーメーカーDP2の水タンクの給水口の外径に合わせ、嵌合によって固定した。
【0054】
上記と同様に、遊離残留塩素濃度2ppmの試験水を650cc注入し、昇温を行わず、コーヒーも抽出しない設定で、浄水を吐出させたところ、遊離残留塩素濃度は0ppmであり、シール部材において原水が浄水に漏れていないことが確認できた。
【0055】
しかし、同じ浄水カートリッジを、UCC上島珈琲製の別のコーヒーメーカーDP3の水タンクへの装着を試みたが、給水口の寸法が若干異なるとこから、固定することができなかった。
【符号の説明】
【0056】
1 浄水カートリッジ
2 ろ材収容ケース
3 蓋
3A 筒部
3B 平板部
3C 直立円筒部
8 弾性部材
10 粒状ろ材
11A 原水流入口
11B 原水流入口
12 浄水流出口
13 流出口メッシュ
14A 流入口メッシュ
14B 流入口メッシュ
15A 仕切り部
15B 仕切り部
21 シール部材
22A 吸盤固定軸
22B 吸盤固定軸
23 吸盤
23A 吸盤部
23B 軸部
23C 横穴
24 吸盤
24C 横穴
31 空気抜き穴
32 空気抜き穴メッシュ
33 シャフト栓
33A 鍔
51 水タンク
52 給水口
101 浄水カートリッジ
102 ろ材収容ケース
103 蓋
103A 筒部
103B 平板部
111A 原水流入口
111B 原水流入口
112 浄水流出口
121 シール部材
123 吸盤
124 吸盤
131 空気抜き穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7