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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光ファイバの製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/027 20060101AFI20240409BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C03B37/027 A
G02B6/02 356A
G02B6/44 301B
G02B6/44 321
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020117944
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015238
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179095(JP,A)
【文献】特開平02-026913(JP,A)
【文献】特開平06-255885(JP,A)
【文献】特開平01-192739(JP,A)
【文献】特開昭57-100936(JP,A)
【文献】米国特許第06494700(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 - 37/16
G02B 6/00 - 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ母材を加熱する加熱炉と、
前記光ファイバ母材から線引きされたガラスファイバに樹脂を塗布する被覆装置と、
前記ガラスファイバの周囲に樹脂が被覆された光ファイバを引き取る引取り装置と、
前記光ファイバを巻き取る巻取り装置と、
前記ガラスファイバまたは前記光ファイバが断線した場合、前記加熱炉から前記被覆装置までの第一区間、前記被覆装置から前記引取り装置までの第二区間、および前記引取り装置から前記巻取り装置までの第三区間において、最初に断線を検知した区間を前記ガラスファイバまたは前記光ファイバの断線が発生している区間特定する断線判断装置と、
を備えている、光ファイバの製造装置。
【請求項2】
前記引取り装置と前記巻取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの張力を調整する張力調整ローラを備えており、
前記断線判断装置は、前記張力調整ローラの位置に基づいて記光ファイバが断線していると判断する、請求項1に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項3】
前記引取り装置と前記巻取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの張力を測定する第一張力測定装置を備えており、
前記断線判断装置は、前記張力調整ローラの位置および前記光ファイバの張力の測定値に基づいて、記光ファイバが断線していると判断する、請求項2に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項4】
前記加熱炉と前記被覆装置の間に配置されており、前記ガラスファイバの外径を測定する第一外径測定装置と、
前記被覆装置と前記引取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの外径を測定する第二外径測定装置と、
を備えており、
前記断線判断装置は、
前記ガラスファイバが前記第一の外径測定装置の測定可能な領域から外れている場合、記ガラスファイバが断線していると判断し、
前記光ファイバが前記第二の外径測定装置の測定可能な領域から外れている場合、記光ファイバが断線していると判断する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項5】
前記加熱炉と前記被覆装置の間に配置されており、前記ガラスファイバの張力を測定する第二張力測定装置と、
前記被覆装置と前記引取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの張力を測定する第三張力測定装置と、
を備えており、
前記断線判断装置は、
前記ガラスファイバが前記第一外径測定装置の測定可能な領域から外れておりかつ前記第二張力測定装置による前記ガラスファイバの張力の測定値がゼロである場合、記ガラスファイバが断線していると判断し、
前記光ファイバが前記第二外径測定装置の測定可能な領域から外れておりかつ前記第三張力測定装置による前記光ファイバの張力の測定値がゼロである場合、記光ファイバが断線していると判断する、請求項4に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項6】
前記被覆装置と前記引取り装置の間に配置されており、前記第一区間において前記ガラスファイバが断線していると判断された場合に前記被覆装置の樹脂を受け入れる樹脂受け部を備えている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項7】
前記加熱炉と前記被覆装置の間に配置されており、前記第二区間において前記光ファイバが断線していると判断された場合に前記ガラスファイバを繰り出すピンチローラを備えている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、線引きにより光ファイバを製造する製造装置において、引取り装置の上流側で発生した光ファイバの断線を検知することを開示している。光ファイバの断線が検知された場合、光ファイバ母材が加熱炉の加熱領域の外に移動させられる。
【0003】
特許文献2は、光ファイバの断線が検知された場合、樹脂受け部を樹脂被覆部の下方に移動させることを開示している。
【0004】
特許文献3は、スクリーニング工程において光ファイバの断線が検知された場合、光ファイバ母材の送り速度および光ファイバの引取り速度を制御することによりガラスファイバの線引き速度を低下させることを開示している。ガラスファイバの線引き速度は、光ファイバの端末をスクリーニング装置およびさらに下流側の装置に再度セットすることが可能な速度に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-179095号公報
【文献】特開平08-002945号公報
【文献】特開昭63-117925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、線引きにより光ファイバを製造している際にガラスファイバまたは光ファイバが断線した場合、線引きを再開するまでの時間を短くすることが可能となり、歩留まりの低下を防ぐことができる光ファイバの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光ファイバの製造装置は、
光ファイバ母材を加熱する加熱炉と、
前記光ファイバ母材から線引きされたガラスファイバに樹脂を塗布する被覆装置と、
前記ガラスファイバの周囲に樹脂が被覆された光ファイバを引き取る引取り装置と、
前記光ファイバを巻き取る巻取り装置と、
前記ガラスファイバまたは前記光ファイバが断線した場合、前記加熱炉から前記被覆装置までの第一区間、前記被覆装置から前記引取り装置までの第二区間、および前記引取り装置から前記巻取り装置までの第三区間において、前記ガラスファイバまたは前記光ファイバの断線が発生している区間を特定する断線判断装置と、
を備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、線引きにより光ファイバを製造している際にガラスファイバまたは光ファイバが断線した場合、線引きを再開するまでの時間を短くすることが可能となり、歩留まりの低下を防ぐことができる光ファイバの製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る光ファイバの製造装置の概略構成図である。
図2図2は、制御装置による制御フローを示すフローチャートである。
図3図3は、制御装置による制御フローを示すフローチャートである。
図4図4は、制御装置による制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の光ファイバの製造装置は、
(1)光ファイバ母材を加熱する加熱炉と、
前記光ファイバ母材から線引きされたガラスファイバに樹脂を塗布する被覆装置と、
前記ガラスファイバの周囲に樹脂が被覆された光ファイバを引き取る引取り装置と、
前記光ファイバを巻き取る巻取り装置と、
前記ガラスファイバまたは前記光ファイバが断線した場合、前記加熱炉から前記被覆装置までの第一区間、前記被覆装置から前記引取り装置までの第二区間、および前記引取り装置から前記巻取り装置までの第三区間において、前記ガラスファイバまたは前記光ファイバの断線が発生している区間を特定する断線判断装置と、
を備えている。
【0011】
上記構成によれば、線引きにより光ファイバを製造している際にガラスファイバまたは光ファイバが断線した場合、当該断線が発生している区間が特定される。したがって、断線が発生している区間に応じて適切な処置を行うことが可能となる。これにより、線引きを再開するまでの時間を短くすることが可能となり、歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0012】
(2)前記光ファイバの製造装置は、
前記引取り装置と前記巻取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの張力を調整する張力調整ローラを備えており、
前記断線判断装置は、前記張力調整ローラの位置に基づいて前記第三区間において前記光ファイバが断線していると判断してもよい。
【0013】
上記構成によれば、張力調整ローラを利用して第三区間において光ファイバの断線が発生していると判断することができる。光ファイバの断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。
【0014】
(3)前記光ファイバの製造装置は、
前記引取り装置と前記巻取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの張力を測定する第一張力測定装置を備えており、
前記断線判断装置は、前記張力調整ローラの位置および前記光ファイバの張力の測定値に基づいて、前記第三区間において前記光ファイバが断線していると判断してもよい。
【0015】
上記構成によれば、張力調整ローラおよび第一張力測定装置を利用して、第三区間において光ファイバの断線が発生していると判断することができる。光ファイバの断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。また、より確実に第三区間における光ファイバの断線を検知することができる。
【0016】
(4)前記光ファイバの製造装置は、
前記加熱炉と前記被覆装置の間に配置されており、前記ガラスファイバの外径を測定する第一外径測定装置と、
前記被覆装置と前記引取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの外径を測定する第二外径測定装置と、
を備えており、
前記断線判断装置は、
前記ガラスファイバが前記第一の外径測定装置の測定可能な領域から外れている場合、前記第一区間において前記ガラスファイバが断線していると判断し、
前記光ファイバが前記第二の外径測定装置の測定可能な領域から外れている場合、前記第二区間において前記光ファイバが断線していると判断してもよい。
【0017】
上記構成によれば、第一外径測定装置を利用して第一区間においてガラスファイバの断線が発生していると判断することができる。第二外径測定装置を利用して第二区間において光ファイバの断線が発生していると判断することができる。したがって、ガラスファイバまたは光ファイバの断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。
【0018】
(5)前記光ファイバの製造装置は、
前記加熱炉と前記被覆装置の間に配置されており、前記ガラスファイバの張力を測定する第二張力測定装置と、
前記被覆装置と前記引取り装置の間に配置されており、前記光ファイバの張力を測定する第三張力測定装置と、
を備えており、
前記断線判断装置は、
前記ガラスファイバが前記第一外径測定装置の測定可能な領域から外れておりかつ前記第二張力測定装置による前記ガラスファイバの張力の測定値がゼロである場合、前記第一区間において前記ガラスファイバが断線していると判断し、
前記光ファイバが前記第二外径測定装置の測定可能な領域から外れておりかつ前記第三張力測定装置による前記光ファイバの張力の測定値がゼロである場合、前記第二区間において前記光ファイバが断線していると判断してもよい。
【0019】
上記構成によれば、第一外径測定装置および第二張力測定装置を利用して第一区間においてガラスファイバの断線が発生していると判断することができる。第二外径測定装置および第三張力測定装置を利用して第二区間において光ファイバの断線が発生していると判断することができる。ガラスファイバまたは光ファイバの断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。また、より確実にガラスファイバまたは光ファイバの断線の発生を検知することができる。
【0020】
(6)前記光ファイバの製造装置は、
前記被覆装置と前記引取り装置の間に配置されており、前記第一区間において前記ガラスファイバが断線していると判断された場合に前記被覆装置の樹脂を受け入れる樹脂受け部を備えてもよい。
【0021】
上記構成によれば、ガラスファイバが断線した場合、被覆装置の樹脂が被覆装置の下方に位置する装置に垂れ落ちることを防止することができる。
【0022】
(7)前記光ファイバの製造装置は、
前記加熱炉と前記被覆装置の間に配置されており、前記第二区間において前記光ファイバが断線していると判断された場合に前記ガラスファイバを繰り出すピンチローラを備えてもよい。
【0023】
第二区間において光ファイバが断線した場合、ガラスファイバおよび光ファイバは引取り装置による支持を失うため、ガラスファイバおよび光ファイバはパスラインから外れるおそれがある。また、引取り装置によってガラスファイバおよび光ファイバに付加されていた張力も失われる。上記構成によれば、第二区間において光ファイバが断線した場合、ガラスファイバを繰り出すことにより、ガラスファイバおよび光ファイバに所定の張力を付加させることができる。また、ガラスファイバおよび光ファイバがパスラインから外れることを防ぐことができる。これにより、線引きの再開に向けての作業時間を短くすることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバの製造装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
図1は、一実施形態に係る光ファイバの製造装置1の概略構成を示す概略構成図である。図1に例示されるように、光ファイバの製造装置1は、加熱炉2と、ダイス3と、キャプスタン4と、巻取りボビン5と、制御装置6とを備えている。ダイス3は、被覆装置の一例である。キャプスタン4は、引取り装置の一例である。巻取りボビン5は、巻取り装置の一例である。制御装置6は、断線判断装置の一例である。
【0026】
光ファイバG2は、加熱炉2により加熱された光ファイバ母材Gから線引きされたガラスファイバG1の周囲にダイス3により樹脂を塗布することにより形成される。光ファイバG2はキャプスタン4により下流側へ引き取られて巻取りボビン5に巻き取られる。本開示の実施形態の説明では、「上流」および「下流」は、パスラインに沿ってガラスファイバG1または光ファイバG2が走行する方向における上流および下流を意味する。パスラインは、通常の線引き時にガラスファイバG1または光ファイバG2が走行する経路である。
【0027】
加熱炉2は、光ファイバの製造装置1の最も上流側に配置されている。加熱炉2は、例えば、円筒状の炉心管201と、炉心管201を囲むヒータ202を備えている。光ファイバ母材Gは、炉心管201の内部に供給されて加熱される。光ファイバ母材Gは、フィーダ7によってその上部が把持されている。光ファイバ母材Gは、炉心管201の内部にその下端部分が位置するように、フィーダ7によって加熱炉2内に送られる。加熱炉2内に供給された光ファイバ母材Gは、その下端側が加熱されて軟化し、下方に引き伸ばされて細径化される。これにより、ガラス体の光ファイバであるガラスファイバG1が形成される。
【0028】
加熱炉2の下流側には、冷却装置8が設けられている。加熱炉2を出たガラスファイバG1は、冷却装置8により冷却ガスを用いて冷却される。冷却ガスは、例えばヘリウムガス等である。ガラスファイバG1は、冷却装置8により数百℃から室温近くまで急速に冷却される。
【0029】
ダイス3は、冷却装置8の下流側に設けられている。ダイス3は、ガラスファイバG1の周囲に樹脂を塗布する。樹脂は、例えば紫外線硬化型樹脂である。ダイス3の下流側には、樹脂硬化装置9が設けられている。ガラスファイバG1の周囲に塗布された樹脂は、樹脂硬化装置9により硬化される。例えば、樹脂硬化装置9は紫外線を照射することにより紫外線硬化型樹脂を硬化させる。ダイス3と樹脂硬化装置9によりガラスファイバG1の周囲に樹脂の被覆層が形成された光ファイバG2が形成される。
【0030】
冷却装置8とダイス3の間には、張力測定装置10と外径測定装置11が設けられている。張力測定装置10は、ガラスファイバG1の張力を測定する。張力測定装置10は、例えば接触式張力計や光学式張力計である。張力測定装置10は、第二張力測定装置の一例である。外径測定装置11は、ガラスファイバG1の外径を測定する。外径測定装置11は、例えばレーザ光式の外径測定装置である。ガラスファイバG1の外径は、ガラスファイバG1の軸に直交する方向の平面上の所定方向において測定される。
【0031】
キャプスタン4は、樹脂硬化装置9の下流側に設けられている。キャプスタン4は、例えば、キャプスタンベルト41とキャプスタンローラ42を有している。キャプスタンベルト41は、複数のローラ43に巻回されている。光ファイバG2は、キャプスタンベルト41とキャプスタンローラ42との間に挟持されて引き込まれる。光ファイバG2は、キャプスタン4により所定の張力が加えられ、さらに下流側に引き取られる。
【0032】
樹脂硬化装置9とキャプスタン4の間には、外径測定装置12と張力測定装置13が設けられている。外径測定装置12は、光ファイバG2の外径を測定する。外径測定装置12は、例えばレーザ光式の外径測定装置12である。光ファイバG2の外径は、光ファイバG2の軸に直交する方向の平面上の所定方向において測定される。張力測定装置13は、光ファイバG2の張力を測定する。張力測定装置13は、第三張力測定装置の一例である。張力測定装置13は、例えば、張力測定ローラ131と、測定器132を有している。測定器132は、張力測定ローラ131の中心軸に取り付けられている。測定器132は、光ファイバG2の張力によって張力測定ローラ131に加えられる力を測定する。
【0033】
巻取りボビン5は、キャプスタン4の下流側に設けられている。キャプスタン4に引き取られた光ファイバG2は、巻取りボビン5に巻き取られる。
【0034】
キャプスタン4と巻取りボビン5の間には、スクリーニング装置14が設けられている。スクリーニング装置14は、光ファイバG2に所定の張力を付加して、一定の強度条件を満たしているか否かを試験する。スクリーニング装置14は、例えば、スクリーニングローラ141と、張力測定装置142を有している。張力測定装置142は、第一張力測定装置の一例である。スクリーニング装置14は、キャプスタン4とスクリーニングローラ141との回転数の差により光ファイバG2に所定の張力を付加する。張力測定装置142は、スクリーニングローラ141に取り付けられており、スクリーニング装置14により光ファイバG2に付加された張力を測定する。
【0035】
また、スクリーニング装置14の下流側には、ダンサローラ装置15が設けられている。ダンサローラ装置15は、例えば、固定ローラ151とダンサローラ152を有している。ダンサローラ152は、張力調整ローラの一例である。固定ローラ151に対してダンサローラ152を昇降させて固定ローラ151とダンサローラ152の間の距離を変更することにより光ファイバG2の張力が調整される。
【0036】
制御装置6は、通常の線引き時における加熱炉2、ダイス3、キャプスタン4などの各装置の運転状態を制御するように構成されている。制御装置6は、例えば、外径測定装置11の測定値が予め定められた値になるようにキャプスタン4の回転速度を制御する。制御装置6は、例えば、外径測定装置12の測定値が予め定められた値になるようにダイス3により塗布される樹脂の量を制御する。制御装置6は、例えば、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含む少なくとも一つのマイクロコントローラと、トランジスタ等のアクティブ素子およびパッシブ素子を含むその他電子回路から構成されている。また、制御装置6は、集積回路(ハードウェア資源)によって構成されてもよく、少なくとも一つのマイクロコントローラと集積回路との組み合わせによって構成されてもよい。
【0037】
また、制御装置6は、ガラスファイバG1または光ファイバG2が断線した場合、断線が発生している区間を特定するように構成されている。
【0038】
例えば、加熱炉2からダイス3までの第一区間においてガラスファイバG1の断線が発生した場合、断線した上流側のガラスファイバG1はキャプスタン4による支持を失うため、ガラスファイバG1がパスラインから外れる。また、キャプスタン4によってガラスファイバG1に付加されていた張力も失われる。
【0039】
この場合、ガラスファイバG1は、外径測定装置11の測定可能な領域から外れてしまう。したがって、外径測定装置11は、ガラスファイバG1の外径を測定することが不可能となり、エラー信号を出力する。また、張力測定装置10の測定値は急激に低下し、ゼロとなり、張力測定装置10は、測定値がゼロを示す信号を出力する。
【0040】
制御装置6は、外径測定装置11からエラー信号および張力測定装置10から測定値がゼロを示す信号を受け取ると、第一区間においてガラスファイバG1の断線が発生したと判断する。制御装置6は、外径測定装置11からエラー信号または張力測定装置10から測定値がゼロを示す信号を受け取った場合に、第一区間においてガラスファイバG1の断線が発生したと判断してもよい。
【0041】
ダイス3からキャプスタン4までの第二区間において光ファイバG2の断線が発生した場合、断線した上流側の光ファイバG2はキャプスタン4による支持を失うため、光ファイバG2がパスラインから外れる。また、キャプスタン4によって光ファイバG2に付加されていた張力も失われる。
【0042】
この場合、光ファイバG2は、外径測定装置12の測定可能な領域から外れる。外径測定装置12は、光ファイバG2の外径を測定することが不可能となり、エラー信号を出力する。また、張力測定装置13の測定値が急激に低下し、ゼロとなり、張力測定装置13は、測定値がゼロを示す信号を出力する。
【0043】
制御装置6は、外径測定装置12からエラー信号および張力測定装置13から測定値がゼロを示す信号を受け取ると、第二区間において光ファイバG2の断線が発生したと判断する。制御装置6は、外径測定装置12からエラー信号または張力測定装置13から測定値がゼロを示す信号を受け取った場合に、第二区間において光ファイバG2の断線が発生したと判断してもよい。
【0044】
キャプスタン4から巻取りボビン5までの第三区間において光ファイバG2の断線が発生した場合、スクリーニング装置14やダンサローラ装置15によって光ファイバG2に付加されていた張力が失われる。
【0045】
この場合、ダンサローラ152は、急激に下降し、下限の遠接点に達する。すなわち、固定ローラ151に対するダンサローラ152の距離が最大となる。ダンサローラ装置15は、例えば、位置センサ153を備えており、ダンサローラ152が下限の遠接点に達した場合、最大距離を示す位置信号を出力する。なお、ダンサローラ装置15は、位置センサ153の代わりに、下限の遠接点に達したダンサローラ152に接触されると接触信号を出力する接触式センサを備えてもよい。また、張力測定装置142の測定値が急激に低下し、ゼロとなる。張力測定装置142は、測定値がゼロを示す信号を出力する。
【0046】
制御装置6は、位置センサ153から最大距離を示す位置信号および張力測定装置142から測定値がゼロを示す信号を受け取ると、第三区間において光ファイバG2の断線が発生したと判断する。
【0047】
上記のように、制御装置6は、加熱炉2からダイス3までの第一区間、ダイス3からキャプスタン4までの第二区間、およびキャプスタン4から巻取りボビン5までの第三区間において、ガラスファイバG1または光ファイバG2の断線が発生している区間を特定する。したがって、断線が発生している区間に応じて適切な処置を行うことが可能となる。これにより、線引きを再開するまでの時間を短くすることが可能となり、歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0048】
また、制御装置6は、ダンサローラ152の位置に基づいて第三区間において光ファイバG2が断線していると判断する。したがって、第三区間における光ファイバG2の断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。
【0049】
また、制御装置6は、ダンサローラ152の位置および張力測定装置142の測定値に基づいて、第三区間において光ファイバG2が断線していると判断している。したがって、光ファイバG2の断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。また、より確実に第三区間における光ファイバG2の断線の発生を検知することができる。
【0050】
また、制御装置6は、ガラスファイバG1が外径測定装置11の測定可能な領域から外れている場合、第一区間においてガラスファイバG1が断線していると判断している。制御装置6は、光ファイバG2が外径測定装置12の測定可能な領域から外れている場合、第二区間において光ファイバG2が断線していると判断している。したがって、ガラスファイバG1または光ファイバG2の断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。
【0051】
また、制御装置6は、外径測定装置11のエラー信号および張力測定装置10の測定値に基づいて第一区間においてガラスファイバG1が断線していると判断している。制御装置6は、外径測定装置12のエラー信号および張力測定装置13の測定値に基づいて第二区間において光ファイバG2が断線していると判断している。したがって、ガラスファイバG1または光ファイバG2の断線を判断する追加の装置を設けることによりコストが増加することを防ぐことができる。また、より確実にガラスファイバG1または光ファイバG2の断線の発生を検知することができる。
【0052】
光ファイバの製造装置1は、さらに、ガラスファイバG1または光ファイバG2の断線が発生した場合、ガラスファイバG1または光ファイバG2が断線した区間に応じて適切な処置を行うために制御装置6により制御される複数の装置を備えている。
【0053】
例えば、外径測定装置11の下流側には、ピンチローラ16が設けられている。ピンチローラ16は、通常の線引き時は、ガラスファイバG1のパスラインから外れた箇所に配置されている。ピンチローラ16は、ガラスファイバG1が断線した場合、移動機構(図示なし)によりガラスファイバG1のパスライン上に配置されて、二つのローラによりガラスファイバG1を挟んで下流側へ繰り出すように構成されている。
【0054】
ピンチローラ16の下流側には、吸引ノズル17が設けられている。吸引ノズル17は、ガラスファイバG1が断線した場合、ガラスファイバG1を吸引する。吸引ノズル17は、例えばガラスファイバG1を一定の吸引力で吸引保持する。これにより、ガラスファイバG1の張力は一定に維持される。
【0055】
ダイス3の上流側には、開閉可能なシャッター18が設けられている。シャッター18は、ガラスファイバG1が断線した場合に閉じるように制御されている。シャッター18は、その中央にガラスファイバG1が通過する貫通孔を有している。シャッター18が閉じられた状態における貫通孔の直径は、ガラスファイバG1が挿通されるダイス3の挿通孔の直径よりも小さくかつガラスファイバG1の外径よりも大きい。
【0056】
ダイス3の下流側には、樹脂受け部19が設けられている。樹脂受け部19は、通常の線引き時は、光ファイバG2のパスラインから外れた箇所に配置されている。樹脂受け部19は、ガラスファイバG1が断線した場合、移動機構(図示せず)により光ファイバG2のパスライン上に配置されて、ダイス3から流れ出る樹脂を収容するように構成されている。
【0057】
樹脂受け部19の下流側には、吸引ノズル20が設けられている。吸引ノズル20は、第二区間において光ファイバG2が断線した場合、光ファイバG2を吸引する。吸引ノズル20は、例えば光ファイバG2を一定の吸引力で吸引保持する。これにより、光ファイバG2の張力は一定に維持される。吸引ノズル20は、樹脂硬化装置9とキャプスタン4の間に配置されてもよい。
【0058】
キャプスタン4とスクリーニング装置14の間には、吸引ノズル21が設けられている。吸引ノズル21は、第三区間において光ファイバG2が断線した場合、光ファイバG2を吸引する。吸引ノズル21は、例えば光ファイバG2を一定の吸引力で吸引保持する。これにより、光ファイバG2の張力は一定に維持される。吸引ノズル21は、スクリーニング装置14と巻取りボビン5の間に配置されてもよい。
【0059】
制御装置6は、ガラスファイバG1または光ファイバG2の断線が発生した場合、発生した区間に応じて、フィーダ7、ピンチローラ16、吸引ノズル17、シャッター18、樹脂受け部19、吸引ノズル20、および吸引ノズル21のいずれかの装置に対して制御信号を出力する。
【0060】
図2は、第一区間においてガラスファイバG1が断線した場合の制御装置6の制御フローを示すフローチャートである。
【0061】
まず、制御装置6は、外径測定装置11および張力測定装置10からの信号に基づいて、ガラスファイバG1の外径が測定不可能であり、かつ、ガラスファイバG1の張力がゼロであるか否かを判断する(STEP1)。ガラスファイバG1の外径が測定可能であるまたはガラスファイバG1の張力がゼロより大きいと判断されると(STEP1においてNO)、処理は終了する。
【0062】
ガラスファイバG1の外径の外径が測定不可能であり、かつ、ガラスファイバG1の張力がゼロである場合(STEP1においてYES)、制御装置6は、第一区間においてガラスファイバG1が断線したと判断する。そして、制御装置6は、吸引ノズル17によりガラスファイバG1の吸引を行わせる(STEP2)。第一区間においてガラスファイバG1が断線した場合、ガラスファイバG1はキャプスタン4による支持を失うため、ガラスファイバG1はパスラインから外れるおそれがある。また、キャプスタン4によってガラスファイバG1に付加されていた張力も失われる。これにより、ガラスファイバG1の外径が大きくなり、ガラスファイバG1が冷却装置8内に付着したりダイス3で詰まるおそれがある。吸引ノズル17は、例えばガラスファイバG1を一定の吸引力で吸引保持することにより、ガラスファイバG1に一定の張力を付加させることができる。したがって、外径が増大したガラスファイバG1が冷却装置8内に付着したりダイス3で詰まることを防止することができる。
【0063】
続いて、制御装置6は、樹脂受け部19をダイス3の下方に移動させてパスライン上に配置させる(STEP3)。樹脂受け部19によりダイス3から流れ出る樹脂を受けることができるので、ダイス3の下方に位置する樹脂硬化装置9の上部や内部にダイス3から流れ出た樹脂が付着することを防ぐことができる。これにより樹脂硬化装置9の上部や内部に付着した樹脂を掃除する手間を省くことができる。
【0064】
また、制御装置6は、ピンチローラ16を移動させてパスライン上に配置させる。そして、ピンチローラ16により、ガラスファイバG1を挟み込んで繰り出しさせる(STEP4)。ピンチローラ16は、例えばガラスファイバG1が一定の速度で繰り出されるように、回転速度が制御される。これにより、ガラスファイバG1に一定の張力を付加させることができ、外径が増大したガラスファイバG1が冷却装置8内に付着したりダイス3で詰まることを防止することができる。
【0065】
また、制御装置6は、フィーダ7を急激に上昇させる(STEP5)。フィーダ7を急激に上昇させることにより、把持した光ファイバ母材Gを加熱領域から外れるように移動させる。光ファイバ母材Gは、例えば200mm程度上方に移動させられる。これにより、光ファイバ母材Gが加熱されて軟化することを防ぐことができ、軟化したガラスが加熱炉2内に溜まってしまうことを防止することができる。
【0066】
続いて、制御装置6は、シャッター18を閉じさせる(STEP6)。これにより、断線したガラスファイバGの破片がダイス3の内部に混入することを防ぐことができる。
【0067】
さらに、制御装置6は、吸引ノズル21により光ファイバG2を吸引させる(STEP7)。吸引ノズル21により光ファイバG2をキャプスタン4の下流側で吸引することにより、断線した下流側の光ファイバG2の端部がキャプスタン4の下流側に位置する巻取りボビン5などに接触することを防ぐことができる。
【0068】
なお、上記の実施形態においては、制御装置6は、第一区間においてガラスファイバG1が断線した場合、フィーダ7、ピンチローラ16、吸引ノズル17、シャッター18、樹脂受け部19および吸引ノズル21の駆動を制御するように構成されている。しかしながら、制御装置6は、いずれか一つの装置の駆動を制御するように構成されてもよい。
【0069】
上記の実施形態では、樹脂受け部19によりダイス3から流れる樹脂を受けている。しかしながら、例えば、ダイス3の樹脂の供給を停止することにより、ダイス3から樹脂が流れることを防止してもよい。
【0070】
図3は、第二区間において光ファイバG2が断線した場合の制御装置6の制御フローを示すフローチャートである。
【0071】
まず、制御装置6は、外径測定装置12および張力測定装置13からの信号に基づいて、光ファイバG2の外径が測定不可能であり、かつ、光ファイバG2の張力がゼロであるか否かを判断する(STEP11)。光ファイバG2の外径が測定可能であるまたは光ファイバG2の張力がゼロより大きいと判断されると(STEP11においてNO)、処理は終了する。
【0072】
光ファイバG2の外径が測定不可能であり、かつ、光ファイバG2の張力がゼロである場合(STEP11においてYES)、制御装置6は、第二区間において光ファイバG2が断線したと判断する。そして、制御装置6は、吸引ノズル20により光ファイバG2の吸引を行わせる(STEP12)。第二区間において光ファイバG2が断線した場合、ガラスファイバG1および光ファイバG2はキャプスタン4による支持を失うため、ガラスファイバG1および光ファイバG2はパスラインから外れるおそれがある。また、キャプスタン4によってガラスファイバG1および光ファイバG2に付加されていた張力も失われる。これにより、ガラスファイバG1の外径が大きくなり、ガラスファイバG1が冷却装置8内に付着したりダイス3で詰まるおそれがある。吸引ノズル20は、例えば光ファイバG2を一定の吸引力で吸引保持することにより、ガラスファイバG1および光ファイバG2に一定の張力を付加させることができる。したがって、外径が増大したガラスファイバG1が冷却装置8内に付着したりダイス3で詰まることを防止することができる。
【0073】
続いて、制御装置6は、ピンチローラ16を移動させてパスライン上に配置させる。そして、ピンチローラ16により、ガラスファイバG1を挟み込んで繰り出しさせる(STEP13)。ピンチローラ16は、例えばガラスファイバG1が一定の速度で繰り出されるように、回転速度が制御される。これにより、ガラスファイバG1に一定の張力を付加させることができ、外径が増大したガラスファイバG1が冷却装置8内に付着したりダイス3で詰まることを防止することができる。また、ピンチローラ16は、パスライン上に配置されてガラスファイバG1を繰り出すことから、ガラスファイバG1および光ファイバG2がパスラインから外れて走行することを防止することができる。
【0074】
また、制御装置6は、フィーダ7を急激に上昇させる(STEP14)。フィーダ7を急激に上昇させることにより、把持した光ファイバ母材Gを加熱領域から外れるように移動させる。光ファイバ母材Gは、例えば200mm程度上方に移動させられる。これにより、光ファイバ母材Gが加熱されて軟化することを防ぐことができ、軟化したガラスが加熱炉2内に溜まってしまうことを防止することができる。
【0075】
続いて、制御装置6は、シャッター18を閉じさせる(STEP15)。これにより、外径が増大したガラスファイバG1がダイス3内で詰まることを防ぐことができる。
【0076】
さらに、制御装置6は、吸引ノズル21により光ファイバG2を吸引させる(STEP16)。吸引ノズル21により光ファイバG2をキャプスタン4の下流側で吸引することにより、断線した下流側の光ファイバG2の端部がキャプスタン4の下流側に位置する巻取りボビン5などに接触することを防ぐことができる。
【0077】
なお、上記の実施形態においては、制御装置6は、第二区間において光ファイバG2が断線した場合、フィーダ7、ピンチローラ16、シャッター18、吸引ノズル20および吸引ノズル21の駆動を制御するように構成されている。しかしながら、制御装置6は、いずれか一つの装置の駆動を制御するように構成されてもよい。
【0078】
上記の実施形態において、制御装置6は、STEP1においてガラスファイバG1の外径が測定可能であるまたはガラスファイバG1の張力がゼロより大きいと判断された場合(STEP1においてNO)、STEP11の判断を行ってもよい。
【0079】
図4は、第三区間において光ファイバG2が断線した場合の制御装置6の制御フローを示すフローチャートである。
【0080】
まず、制御装置6は、位置センサ153および張力測定装置142からの信号に基づいて、固定ローラ151に対するダンサローラ152の距離が最大であり、かつ、スクリーニング装置14により光ファイバG2に付加された張力がゼロであるか否かを判断する(STEP21)。固定ローラ151に対するダンサローラ152の距離は最大ではなくまたは光ファイバG2の張力がゼロより大きいと判断されると(STEP21においてNO)、処理は終了する。
【0081】
固定ローラ151に対するダンサローラ152の距離が最大であり、かつ、スクリーニング装置14により光ファイバG2に付加された張力がゼロである場合、制御装置6は、第三区間において光ファイバG2が断線したと判断する。そして、制御装置6は、フィーダ7を上昇させる(STEP22)。光ファイバ母材Gは、例えば30mm程度上方に移動させられる。光ファイバ母材Gの供給量が減少することにより、キャプスタン4によるガラスファイバG1の引取り速度はガラスファイバG1の外径を維持するために低下する。これにより、線引きを中断させることなく、キャプスタン4により引き取られた光ファイバG2を下流側のパスラインに復帰させることができる。
【0082】
続いて、制御装置6は、シャッター18を閉じさせる(STEP23)。これにより、キャプスタン4によるガラスファイバG1の引取り速度の低下により、ガラスファイバG1の外径が増大した場合に、ガラスファイバG1がダイス3内で詰まることを防ぐことができる。
【0083】
さらに、制御装置6は、吸引ノズル21により断線した上流側の光ファイバG2を吸引させる(STEP24)。これにより、キャプスタン4の下流側のパスライン上への光ファイバG2の再配置を容易に行うことができる。また、さらに吸引ノズル21の下流側に、断線した下流側の光ファイバG2の端部を吸引する吸引ノズルを設けてもよい。これにより、断線した下流側の光ファイバG2の端部がキャプスタン4の下流側に位置する巻取りボビン5などに接触することを防ぐことができる。
【0084】
なお、上記の実施形態においては、制御装置6は、第三区間において光ファイバG2が断線した場合、フィーダ7、シャッター18および吸引ノズル21の駆動を制御するように構成されている。しかしながら、制御装置6は、いずれか一つの装置の駆動を制御するように構成されてもよい。
【0085】
上記の実施形態において、制御装置6は、STEP11において光ファイバG2の外径が測定可能であるまたは光ファイバG2の張力がゼロより大きいと判断された場合(STEP11においてNO)、STEP21の判断を行ってもよい。
【0086】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0087】
上記の実施形態では、フィーダ7を上昇させることにより、光ファイバ母材Gの加熱および軟化を防いでいる。しかしながら、フィーダ7の上昇に加えてあるいは代えて、ヒータ202の発熱温度を低下させて炉心管201内の温度を低下させてもよい。また、室温程度の冷却ガス(例えば窒素ガス)を炉心管201内に供給することで、炉心管201内の温度を低下させてもよい。
【0088】
上記の実施形態では、ダンサローラ152が下限の遠接点に達した場合に、第三区間において光ファイバG2の断線が発生したと判断する。しかしながら、ダンサローラ152の昇降方向の加速度を測定し、ある一定の測定値を超えた場合に光ファイバG2の断線が発生したと判断しても良い。
【0089】
上記の実施形態では、制御装置6は、外径測定装置11と張力測定装置10、外径測定装置12と張力測定装置13、および位置センサ153と張力測定装置142からの信号に基づいて、第一区間のガラスファイバG1の断線および第二区間および第三区間の光ファイバG2の断線を判断している。そして、制御装置6は、断線が発生している区間に応じて適切な処置を行うために制御信号を出力している。しかしながら、制御装置6は、第一区間、第二区間または第三区間における断線を判断して各装置を制御する3つの独立した制御装置から構成されてもよい。例えば、第一制御装置は、外径測定装置11と張力測定装置10からの信号に基づいて第一区間におけるガラスファイバG1の断線を判断し、ガラスファイバG1の断線に対する処置を行わせる制御信号を各装置へ出力してもよい。第二制御装置は、外径測定装置12と張力測定装置13からの信号に基づいて第二区間の光ファイバG2の断線を判断し、光ファイバG2の断線に対する処置を行わせる制御信号を各装置へ出力してもよい。第三制御装置は、張力測定装置142および位置センサ153からの信号に基づいて第三区間の光ファイバG2の断線を判断し、光ファイバG2の断線に対する処置を行わせる制御信号を各装置へ出力してもよい。これにより、断線が検出されて処置がなされるまでの時間を短縮することができる。
【0090】
上記の実施形態では、制御装置6は、外径測定装置11および張力測定装置10から受ける信号に基づいてガラスファイバG1の断線が発生したと判断している。しかしながら、制御装置6は、外径測定装置11から受ける信号に基づいてガラスファイバG1の断線が発生したと判断してもよい。
【0091】
上記の実施形態では、制御装置6は、外径測定装置12および張力測定装置13から受ける信号に基づいて光ファイバG2の断線が発生したと判断している。しかしながら、制御装置6は、外径測定装置12から受ける信号に基づいて光ファイバG2の断線が発生したと判断してもよい。
【0092】
上記の実施形態では、制御装置6は、張力測定装置142および位置センサ153から受ける信号に基づいて光ファイバG2の断線が発生したと判断している。しかしながら、制御装置6は、位置センサ153から受ける信号に基づいて光ファイバG2の断線が発生したと判断してもよい。
【0093】
上記の実施形態では、ガラスファイバG1または光ファイバG2の張力がゼロである場合に、ガラスファイバG1または光ファイバG2が断線していると判断している。しかしながら、ガラスファイバG1または光ファイバG2の断線時は、張力測定装置により測定されるガラスファイバG1または光ファイバG2の張力の測定値が急激に低下する。したがって、制御装置6は、例えば、張力測定装置10の測定値が30g/秒以上減少した場合に、制御装置6はガラスファイバG1の断線が発生したと判断してもよい。制御装置6は、例えば、張力測定装置13または張力測定装置142の測定値が50g/秒以上減少した場合に、制御装置6は光ファイバG2の断線が発生したと判断してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:光ファイバの製造装置
2:加熱炉
3:ダイス
4:キャプスタン
5:巻取りボビン
6:制御装置
7:フィーダ
8:冷却装置
9:樹脂硬化装置
10:張力測定装置
11:外径測定装置
12:外径測定装置
13:張力測定装置
14:スクリーニング装置
15:ダンサローラ装置
16:ピンチローラ
17:吸引ノズル
18:シャッター
19:樹脂受け部
20:吸引ノズル
21:吸引ノズル
41:キャプスタンベルト
42:キャプスタンローラ
43:ローラ
131:張力測定ローラ
132:測定器
141:スクリーニングローラ
142:張力測定装置
151:固定ローラ
152:ダンサローラ
153:位置センサ
201:炉心管
202:ヒータ
G:光ファイバ母材
G1:ガラスファイバ
G2:光ファイファイバ
図1
図2
図3
図4