(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】駆動装置、集光型太陽光発電装置、及び、アレイの駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02S 20/32 20140101AFI20240409BHJP
H02S 40/22 20140101ALI20240409BHJP
【FI】
H02S20/32
H02S40/22
(21)【出願番号】P 2020122935
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正貴
(72)【発明者】
【氏名】小中 博之
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】平山 鍛
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-252365(JP,A)
【文献】特開2007-207801(JP,A)
【文献】特開2015-153055(JP,A)
【文献】特開2014-049312(JP,A)
【文献】特開2016-183800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S10/00-90/10
H01L31/02-31/18
H02S10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光型太陽光発電用のアレイを、太陽を追尾する姿勢となるよう駆動する駆動装置であって、方位角の追尾に関して、
方位角の回転駆動源となるモータと、
前記モータの軸回転を減速する減速ギヤ機構と、
前記減速ギヤ機構の、減速された方に設けられ、前記アレイに方位角の回転運動を生じさせる回転体と、
前記モータを間欠的に駆動する駆動回路と、
前記モータの間欠的な駆動によって前記回転体が停止したときから次に回転開始するまでの時間内で、前記回転体を拘束して受動的な回転運動を抑制する制動部と、
前記駆動回路及び前記制動部を制御する制御部と、
を備えている駆動装置。
【請求項2】
前記制動部は、
制動用モータと、
前記制動用モータを駆動源として油圧を発生させるマスターシリンダと、
前記油圧により前記回転体に圧接可能なブレーキキャリパと、を備えている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制動部は、前記回転体に対して一方向に回転トルクをかける制動用モータを含む、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制動部は、日中にのみ、前記回転体を拘束する機能を発揮する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記回転トルクは、停止した状態の前記アレイ及び前記回転体を、次に回転開始させるための回転トルクより小さい請求項3に記載の駆動装置。
【請求項6】
集光型太陽光発電用のアレイと、当該アレイを太陽追尾の姿勢となるよう駆動する請求項1に記載の駆動装置と、を備えた集光型太陽光発電装置。
【請求項7】
減速ギヤ機構を有し、太陽を追尾して発電する集光型太陽光発電装置、におけるアレイの駆動方法であって、
方位角の追尾に関して、
太陽追尾に必要な角度分だけ、前記アレイと一体的に動作する回転体を回転させて停止させる第1の動作、及び、停止中の前記回転体が受動的な回転運動をしないように前記回転体を拘束する第2の動作を、交互に実行して前記アレイを間欠的に動かす
アレイの駆動方法であり、
前記第2の動作において前記回転体を拘束する時間は、前記回転体が停止したときから次に回転開始するまでの時間内である
アレイの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置、集光型太陽光発電装置、及び、アレイの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽追尾型の太陽光発電装置は、一般に、モータを駆動源として、アレイ(太陽光発電パネル)が太陽を追尾するように動く構成を備えている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、集光型太陽光発電装置は、集光レンズにより太陽光を小さな発電素子に集光して発電する光学的基本ユニットを並べて構成したモジュールを、さらにパネル状に多数並べたアレイが、太陽を追尾して発電する装置である。太陽の追尾は、駆動装置により、アレイが間欠的に必要な角度だけ回転することを繰り返して行われる。集光型太陽光発電装置は太陽を正確に追尾しないと発電できないので、駆動は、方位角及び仰角の2軸方向にそれぞれ行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-252365号公報
【文献】特開2014-049312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動装置には、モータの回転を減速し、かつ、大きな駆動力を得るために、減速ギヤ機構が用いられる。ギヤのかみ合い部分には、微小な遊びであるバックラッシュがある。バックラッシュは、長年の使用によるギヤの摩耗により、徐々に増大する。間欠的な回転運動を行うということは、停止している時間があるということである。この停止している時間内に、例えばアレイが風圧を受けてバックラッシュの分だけ受動的に回転してしまう場合がある。
【0005】
集光型ではない結晶シリコン型のアレイであれば、太陽追尾の僅かなずれが発電に大きく影響することはない。しかし、集光型太陽光発電装置は、小さな発電素子に集光しているため、意図しない回転により追尾がずれると、発電素子に集光できなくなる場合がある。日中にこのようなことがたびたび起きれば、発電性能が低下することになる。
【0006】
仰角方向に関しては、アレイの重心が駆動装置にバイアスをかけるよう設計することにより、通常レベルの風圧による受動的な回転は抑制することができる。しかし、方位角方向には、このような設計をすることが困難であり、バックラッシュによる受動的な回転が避けがたい。なお、上記特許文献1の装置としては、特殊な歯車を2本の爪で押したり止めたりする構成が開示されているが、順方向への受動的な回転は止められない。また、そもそも、特殊な歯車では動作の1ステップが粗くなり、精密な太陽追尾には適さない。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、集光型太陽光発電装置に関して、減速ギヤ機構のバックラッシュに起因する発電性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は特許請求の範囲によって定められるものである。
【0009】
本開示の駆動装置は、集光型太陽光発電用のアレイを、太陽を追尾する姿勢となるよう駆動する駆動装置であって、方位角の追尾に関して、
方位角の回転駆動源となるモータと、
前記モータの軸回転を減速する減速ギヤ機構と、
前記減速ギヤ機構の、減速された方に設けられ、前記アレイに方位角の回転運動を生じさせる回転体と、
前記モータを間欠的に駆動する駆動回路と、
前記モータの間欠的な駆動によって前記回転体が停止したときから次に回転開始するまでの時間内で、前記回転体を拘束して受動的な回転運動を抑制する制動部と、
前記駆動回路及び前記制動部を制御する制御部と、
を備えている。
【0010】
また、本開示の集光型太陽光発電装置は、集光型太陽光発電用のアレイと、当該アレイを太陽追尾の姿勢となるよう駆動する上記の駆動装置と、を備えている。
【0011】
方法の観点からは、本開示は、減速ギヤ機構を有し、太陽を追尾して発電する集光型太陽光発電装置、におけるアレイの駆動方法であって、方位角の追尾に関して、
太陽追尾に必要な角度分だけ、前記アレイと一体的に動作する回転体を回転させて停止させる第1の動作、及び、停止中の前記回転体が受動的な回転運動をしないように前記回転体を拘束する第2の動作を、交互に実行して前記アレイを間欠的に動かすアレイの駆動方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、集光型太陽光発電装置において、減速ギヤ機構のバックラッシュに起因する発電性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、1基分の、集光型太陽光発電装置の一例を、受光面側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、1基分の、集光型太陽光発電装置の一例を、受光面側から見た斜視図であり、但し、組立途中の状態での集光型太陽光発電装置を示している。
【
図3】
図3は、支柱の中心軸に直交する、ある方向から駆動装置を見た図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す駆動装置を斜め下から見た図である。
【
図6】
図6は、制動部の構成を簡略化して示した図である。
【
図7】
図7は、駆動装置の回路構成の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、方位角に関しての追尾開始から追尾終了までの、制御部を主体とした動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、駆動装置の第2例における制動部に関する図である。
【
図10】
図10は、駆動装置の第3例における制動部に関する簡略図である。
【
図11】
図11は、駆動装置の第4例における制動部に関する図であり、制動部を含む駆動装置のみを示す平面図である。
【
図12】
図12は、駆動装置の第4例における制動部に関する図であり、制動部を含む駆動装置を、斜め下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下のものが含まれる。
【0015】
(1)これは、集光型太陽光発電用のアレイを、太陽を追尾する姿勢となるよう駆動する駆動装置であって、方位角の追尾に関して、方位角の回転駆動源となるモータと、前記モータの軸回転を減速する減速ギヤ機構と、前記減速ギヤ機構の、減速された方に設けられ、前記アレイに方位角の回転運動を生じさせる回転体と、前記モータを間欠的に駆動する駆動回路と、前記モータの間欠的な駆動によって前記回転体が停止したときから次に回転開始するまでの時間内で、前記回転体を拘束して受動的な回転運動を抑制する制動部と、前記駆動回路及び前記制動部を制御する制御部と、を備えている。
【0016】
前記(1)のように構成された駆動装置では、方位角の方向において、回転体及びアレイが停止したときから次に動き始めるまでの時間内に、回転体が制動部により拘束される。これにより、受動的な要因で方位角の方向へアレイが回転することを抑制できる。従って、減速ギヤ機構のバックラッシュに起因して、例えば風圧を受けたアレイがバックラッシュの分だけ僅かに回転する、という好ましくない事態の発生を抑制することができる。その結果、発電性能の低下を抑制することができる。
【0017】
(2)前記(1)の駆動装置は、例えば、前記制動部として、制動用モータと、前記制動用モータを駆動源として油圧を発生させるマスターシリンダと、前記油圧により前記回転体に圧接可能なブレーキキャリパと、を備えている。
この場合、制動用モータを駆動することにより油圧を発生させ、ブレーキキャリパを回転体に圧接させて、停止時間内での回転体及びアレイの受動的な回転を抑制することができる。これにより、制動用モータを駆動するだけの容易な制御と、油圧による強力な制動とを実現することができる。
【0018】
(3)前記(1)の駆動装置は、前記制動部として、前記回転体に対して一方向に回転トルクをかける制動用モータを含むものであってもよい。
この場合、減速ギヤ機構のバックラッシュがある方へ回転体が回転しないように逆の一方向へ回転トルクをかけることで、停止時間内での回転体及びアレイの受動的な回転を抑制することができる。例えば制動モータの回転を減速する動力伝達機構を用いれば、小型の制動用モータでも十分な回転抑制効果を得ることができる。
【0019】
(4)前記(1)から(3)までのいずれかの駆動装置において、前記制動部は、日中にのみ、前記回転体を拘束する機能を発揮すれば足りる。
発電しない夜間は、アレイは太陽追尾を行わず、バックラッシュの影響を考慮する必要がないので、回転体を拘束する機能は、日中にのみ発揮されればよい。
【0020】
(5)前記(3)の駆動装置において、前記回転トルクは、停止した状態の前記アレイ及び前記回転体を、次に回転開始させるための回転トルクより小さい。
この場合、受動的な回転を抑制するための回転トルクが、太陽追尾のための本来の回転トルクに達することを防止することができる。
【0021】
(6)集光型太陽光発電装置としては、集光型太陽光発電用のアレイと、当該アレイを太陽追尾の姿勢となるよう駆動する前記(1)に記載の駆動装置と、を備えている。
このような集光型太陽光発電装置における駆動装置では、方位角の方向において、回転体及びアレイが停止したときから次に動き始めるまでの時間内に、回転体が制動部により拘束される。これにより、受動的な要因で方位角の方向へアレイが回転することを抑制できる。従って、減速ギヤ機構のバックラッシュに起因して、例えば風圧を受けたアレイがバックラッシュの分だけ僅かに回転する、という好ましくない事態の発生を抑制することができる。その結果、発電性能の低下を抑制することができる。
【0022】
(7)方法の観点からは、本開示は、減速ギヤ機構を有し、太陽を追尾して発電する集光型太陽光発電装置、におけるアレイの駆動方法であって、方位角の追尾に関して、太陽追尾に必要な角度分だけ、前記アレイと一体的に動作する回転体を回転させて停止させる第1の動作、及び、停止中の前記回転体が受動的な回転運動をしないように前記回転体を拘束する第2の動作を、交互に実行して前記アレイを間欠的に動かすアレイの駆動方法である。
【0023】
前記(7)のアレイの駆動方法によれば、方位角の方向において、回転体及びアレイが停止したときから次に動き始めるまでの時間内に、回転体が拘束される。これにより、受動的な要因で方位角の方向へアレイが回転することを抑制できる。従って、減速ギヤ機構のバックラッシュに起因して、例えば風圧を受けたアレイがバックラッシュの分だけ僅かに回転する、という好ましくない事態の発生を抑制することができる。その結果、発電性能の低下を抑制することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の集光型太陽光発電モジュール(以下、単にモジュールとも言う。)及び集光型太陽光発電装置の具体例について、図面を参照して説明する。
【0025】
《集光型太陽光発電装置》
図1及び
図2はそれぞれ、1基分の、集光型太陽光発電装置100の一例を、受光面側から見た斜視図である。
図1は、完成した状態での集光型太陽光発電装置100を示し、
図2は、組立途中の状態での集光型太陽光発電装置100を示している。
図2は、追尾架台2の架台部25の骨組みが見える状態を右半分に示し、モジュール1Mが取り付けられた状態を左半分に示している。なお、実際にモジュール1Mを追尾架台2に取り付ける際は、架台部25を地面に寝かせた状態で取り付けを行う。
【0026】
図1において、この集光型太陽光発電装置100は、上部側で連続し、下部側で左右に分かれた形状のアレイ(太陽光発電パネル)1と、追尾架台2とを備えている。アレイ1は、背面側の架台部25(
図2)上にモジュール1Mを整列させて構成されている。
図1の例では、左右のウイングを構成する(96(=12×8)×2)個と、中央の渡り部分の8個との、合計200個のモジュール1Mの集合体として、アレイ1が構成されている。各モジュール1Mは、集光レンズにより太陽光を小さな発電素子に集光して発電する光学的基本ユニットがマトリックス状に多数並べられた既知の構成を有する。
【0027】
追尾架台2は、アレイ1を支持するとともに、太陽を追尾するようにアレイ1の姿勢を変化させる。追尾架台2は、支柱21と、基礎22と、駆動装置23と、駆動軸となる水平軸24(
図2)と、架台部25を備えている。支柱21は、下端が基礎22に固定され、上端に駆動装置23を備えている。
【0028】
図1において、基礎22は、上面のみが見える程度に地中に堅固に埋設される。基礎22を地中に埋設した状態で、支柱21は鉛直となり、水平軸24(
図2)は水平となる。駆動装置23は、2軸駆動すなわち、水平軸24を、方位角(支柱21の中心軸周りの角度)及び仰角(水平軸24の中心軸周りの角度)の2方向に回転させることができる。
図2において、水平軸24には、補強材25aが取り付けられている。また、補強材25aには、複数本の水平方向へのレール25bが取り付けられている。従って、水平軸24が方位角又は仰角の方向に回転すれば、アレイ1もその方向に回転する。
【0029】
《駆動装置の構造:第1例》
次に、上記の駆動装置23について詳細に説明する。
図3は、支柱21の中心軸に直交する、ある方向から駆動装置23を見た図である。
図4は、
図3に示す駆動装置23の平面図である。
図5は、
図3に示す駆動装置23を斜め下から見た図である。
【0030】
図3において、駆動装置23は、支柱21の上端に取りつけられている。仰角駆動部30は、モータ31と外側の固定輪32とが相互に固定され、モータ31の回転軸と内側の可動輪33とがそれぞれ、ウォームとホイールとの関係になり、減速ギヤ機構を構成している。モータ31の回転は減速され、可動輪33を回転させる。この回転により、水平軸24を、その中心軸周りに(すなわち仰角方向に)回転させる。
【0031】
方位角駆動部40は、モータ41と、外側の回転体43とが相互に固定されている。モータ41の回転軸と、支柱21に固定された内側のリング状のギヤ42とがそれぞれ、ウォームとホイールとの関係になり、減速ギヤ機構を構成している。モータ41の回転は減速され、回転体43を回転させる。回転体43はモータ41と共に、支柱21の中心軸周りに、水平に回転する。この回転により、水平軸24を支柱21の中心軸周りに(すなわち方位角方向に)回転させる。
【0032】
図3及び
図4において、仰角駆動部30は、方位角駆動部40の回転体43の平坦な円形上面に固定されている。方位角駆動部40が回転すれば、仰角駆動部30も一体になって回転する。
図3及び
図5において、制動部50は、支柱21に取りつけられている。制動部50は、回転体43の下部の、円環鍔状の被制動部43aに圧接して、回転体43の回転運動を抑制することができる。
【0033】
図6は、制動部50の構成を簡略化して示した図である。駆動装置23(
図3~
図5)に関しては、方位角駆動部40の回転体43のみを図示している。制動部50は、制動用モータ51と、その回転軸に接続された減速ギヤ機構52と、マスターシリンダ53と、一対のブレーキキャリパ54,55とを備えている。制動用モータ51を回転させると、減速ギヤ機構52を介してマスターシリンダ53により油圧が発生する。この油圧により、ブレーキキャリパ54,55は、回転体43の被制動部43aを挟み込んで圧迫し、回転体43が回転しないよう拘束する。制動用モータ51を逆回転させると、油圧が抜けてブレーキキャリパ54,55は被制動部43aを解放する。
【0034】
このように、制動部50は、制動用モータ51を駆動することにより油圧を発生させ、ブレーキキャリパ54,55を回転体43に圧接させて、回転体43及びアレイ1の回転を抑制することができる。これにより、制動用モータ51を駆動するだけの容易な制御と、油圧による強力な制動とを実現することができる。
【0035】
《駆動装置の制御》
図7は、駆動装置23の回路構成の概略を示す図である。図において、駆動装置23は、日射センサ61と、制御部62と、駆動回路63と、回転抑制用駆動回路64とを備えている。日射センサ61は、例えば、アレイ1(
図1)の近傍に取り付けられる。制御部62、駆動回路63、及び、回転抑制用駆動回路64は、例えば、支柱21に取り付けられた電装品ボックス(図示せず。)に収容することができる。制御部62は、例えばコンピュータを含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部62内の記憶部62mに格納される。
【0036】
日射センサ61は、日射の有無すなわち、日中(日の出から日没直前まで)か夜間かを検出し、検出信号を制御部62に送る。制御部62は、日中に、駆動装置23を制御してアレイ1(
図1)に、太陽の追尾を行わせる。制御部62は、太陽の位置情報を記憶部62mに記憶している。太陽の位置情報は、アレイ1の設置場所の緯度、経度、年月日及び時刻に基づいて太陽の位置を演算して求めた基本データに、さらに実際の場所でのデータ較正を加えて精度を高めたものである。従って、制御部62は、現時点で太陽がどの仰角及び方位角にあるかを把握している。
【0037】
制御部62内には、ソフトウェアにより実現される機能部として、追尾指令部62t及び制動指令部62bとがある。追尾指令部62tは、太陽の位置情報に基づいて、駆動回路63に、アレイ1が向くべき仰角及び方位角を指示する。これを受けて駆動回路63は、仰角のモータ31及び方位角のモータ41を必要量回転させる。
【0038】
回転は間欠的に実行され、アレイ1は間欠的に動く。太陽光を集光する位置には高効率の発電素子(太陽電池セル)があるが、発電素子にも一定の大きさがある。そのため、常にピンポイントで発電素子の受光面の同じ位置に集光しなくてもよく、太陽の動きとともに集光位置が少し動いても、発電素子の受光面に当たっていればよい。従って、受光面の一端から他端まで集光位置が移動する間の時間は、アレイ1は停止している。他端に達すると、アレイ1が動いて再び受光面の一端に太陽光を集光させる。このようにして、間欠的な動きによる太陽追尾が実行される。
【0039】
例えば、今、アレイ1に必要な仰角の回転角がΔθE、方位角の回転角がΔθAであるとする。制御部62は、これらの角度分の移動を、減速ギヤ機構34及び44を介して行うにはモータ31,41をそれぞれ何回転させる必要があるかを演算する。そして、それらの回転数を駆動回路63に指示する。モータ31,41は、自己の回転数を検出するエンコーダ機能を内蔵しており、その検出出力に基づいて駆動回路63は、必要な回転数だけ回転すれば、モータ31,41を停止させる。駆動回路63はモータ31,41を停止させた信号を制御部62に返す。
【0040】
一方、制動指令部62bは、方位角のモータ41が停止すると、回転抑制用駆動回路64に対して回転抑制指令の信号を与える。これを受けて回転抑制用駆動回路64は、制動部50に、制動を行わせる。制動部50は、前述の回転体43に圧接して回転体43が回転運動をしないよう拘束する。アレイ1が停止している間は、回転体43は拘束されている。次に追尾指令部62tがモータ41を回転させる直前には、制動指令部62bは、制動を解除する。
【0041】
図8は、方位角に関しての追尾開始から追尾終了までの、制御部62を主体とした動作の一例を示すフローチャートである。追尾を開始すると、制御部62は、方位角の所定の位置まで方位角駆動部40を駆動してアレイ1を動かし、停止させる(ステップS1)。停止後、制御部62は、制動部50を動作させ、制動を開始する(ステップS2)。これにより、回転体43及びアレイ1は、回転しないよう拘束される。従って、停止中のアレイ1に例えば風圧により方位角の方向へ減速ギヤ機構44のバックラッシュの分だけ動かそうとする力が作用しても、アレイ1の回転は抑制される。
【0042】
次に、制御部62は、現在の太陽の位置に対して所定の遅れが発生しているか否かを判定し、所定の遅れが発生する状態になるのを待つ(ステップS3の繰り返し)。所定の遅れが発生している、とは、前述のように、太陽光の集光位置が発電素子の受光面から外れそうになる直前の状態である。所定の遅れが発生すると判定した場合、制御部62は、制動を解除する(ステップS4)。そして、制御部62は、ステップS5において日没になっていなければステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。日没になると、追尾は終了となる。
【0043】
《ここまでのまとめ》
上述のように、駆動装置23は、方位角の動作に関して、モータ41を間欠的に駆動する駆動回路63と、モータ41の間欠的な駆動によって回転体43が停止したときから次に回転開始するまでの時間内で、回転体43を拘束して受動的な回転運動を抑制する制動部50と、駆動回路63及び制動部50を制御する制御部62と、を備えている。
【0044】
このような駆動装置23では、方位角の方向において、回転体43及びアレイ1が停止したときから次に動き始めるまでの時間内に、回転体43が制動部50により拘束される。これにより、受動的な要因で方位角の方向へアレイ1が回転することを抑制できる。従って、減速ギヤ機構44のバックラッシュに起因して、例えば風圧を受けたアレイ1がバックラッシュの分だけ僅かに回転する、という好ましくない事態の発生を抑制することができる。その結果、発電性能の低下を抑制することができる。
【0045】
なお、制動部50は、日中にのみ、回転体43を拘束する機能を発揮する。発電しない夜間は、アレイ1は太陽追尾を行わず、バックラッシュの影響を考慮する必要がない。従って、回転体43を拘束する機能は、日中にのみ発揮されればよい。
【0046】
《駆動装置の構造:第2例》
図9は、駆動装置23の第2例における制動部50に関する図である。第1例と異なるのは制動部50の取り付け方、及び、被制動部を回転体43のどの部分に設けるか、であり、その他は第1例と同様である。
図9は、
図6と同様の部位を見た図である。回転体43は、水平なフランジ状の被制動部43bを有している。
【0047】
図9における制動部50は、制動用モータ51と、その回転軸に接続された減速ギヤ機構52と、マスターシリンダ53と、一対のブレーキキャリパ54,55とを備えている。制動用モータ51を回転させると、減速ギヤ機構52を介してマスターシリンダ53により油圧が発生する。この油圧により、ブレーキキャリパ54,55は、回転体43の被制動部43bを挟み込んで圧迫し、回転体43が回転運動をしないよう拘束する。制動用モータ51を逆回転させると、油圧が抜けてブレーキキャリパ54,55は被制動部43bを解放する。
【0048】
図6の構成との違いは、
図6が被制動部43aを左右から挟んで圧迫するのに対して、
図9では、被制動部43bを上下から挟んで圧迫する点である。
図9の場合、被制動部43bが、
図6の被制動部43aより大径になるので、その分、制動力を確保しやすい。
【0049】
《駆動装置の構造:第3例》
図10は、駆動装置23の第3例における制動部70に関する簡略図である。第1例,第2例の制動部50との違いは、第1例,第2例の制動部50がディスクブレーキ型であるのに対して、第3例ではドラムブレーキ型の制動部70になっている点である。油圧発生の構成は第1例及び第2例と同様であるので図示を省略している。
図10は、方位角駆動部40のみを真下から見た図である。支柱21(
図1)の図示は省略する。
【0050】
図10において、回転体43の下面には、回転体43に固定されたピン71と、ピン71により回動可能に支持されたブレーキシュー72とが、2組、対称に配置されている。ブレーキシュー72の右端には、矢印で示す方向に油圧により生じた力を与えることができる。矢印で示す方向に力を与えると、ブレーキシュー72が被制動部43aに押し付けられ、回転体43を拘束する。油圧を緩めると、ブレーキシュー72は回転体43を解放する。このように、ドラムブレーキ型の制動部70も使用可能である。
【0051】
《駆動装置の構造:第4例》
図11及び
図12は、駆動装置23の第4例における制動部80に関する図である。
図11は、制動部80を含む駆動装置23のみを示す平面図である。
図12は、制動部80を含む駆動装置23を、斜め下から見た図である。
図11を参照した
図12において、回転体43の下部には被制動部43cとしてのスプロケットが形成されている。支柱21に固定された支持腕部81は、支柱21の径方向外方へ突出して形成されている。支持腕部81の先端には制動用モータ82が内蔵され、制動用モータ82の回転軸82a(
図11)に、スプロケット83が取り付けられている。大径な被制動部43cと小径なスプロケット83とには、チェーン84が掛けられている。
【0052】
方位角駆動部40が停止し、アレイ1が停止しているときは、制動部80の制動用モータ82に回転トルクが与えられる。この回転トルクは回転体43及びアレイ1を方位角方向に付勢する方向に与えられる。但し、回転トルクは、実際に回転体43を回転させるには不十分であり、制動用モータ82は回転トルクを与えるのみである。
【0053】
このような回転トルクを与えることで、方位角の減速ギヤ機構44(
図7)にバックラッシュがあっても、バックラッシュを詰める方向に回転体43が回転することは抑制される。従って、アレイ1に風圧による力が作用しても、アレイ1が受動的に回転することは抑制される。すなわち、制動用モータ82によりアレイ1の停止中にも回転トルクを与えることで、ブレーキによる制動と同様に、回転体43を拘束し、回転体43及びアレイ1の受動的な回転運動を抑制することができる。
【0054】
上述のように、第4例の制動部80は、回転体43に対して一方向に回転トルクをかける制動用モータ82を含む。この制動用モータ82により、減速ギヤ機構44(
図7)のバックラッシュがある方へ回転体43が回転しないように逆の一方向へ回転トルクをかける。これにより、停止時間内での回転体43及びアレイ1の受動的な回転を抑制することができる。
【0055】
大径な被制動部43cと小径なスプロケット83との間にチェーン84を介して減速するような動力伝達機構となることで、小型の制動用モータ82でも十分な回転抑制効果を得ることができる。但し、制動用モータ82の回転トルクは、停止した状態のアレイ1及び回転体43を、次に回転開始させるための回転トルクより小さい。すなわち、回転体43の受動的な回転を抑制しつつも、回転抑制のための回転トルクは、太陽追尾のための本来の回転トルクより小さく抑えられている。
【0056】
《補記》
なお、上述の各制動部50,70,80については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 アレイ
1M 集光型太陽光発電モジュール(モジュール)
2 追尾架台
21 支柱
22 基礎
23 駆動装置
24 水平軸
25 架台部
25a 補強材
25b レール
30 仰角駆動部
31 モータ
32 固定輪
33 可動輪
34 減速ギヤ機構
40 方位角駆動部
41 モータ
42 ギヤ
43 回転体
43a,43b,43c 被制動部
44 減速ギヤ機構
50 制動部
51 制動用モータ
52 減速ギヤ機構
53 マスターシリンダ
54,55 ブレーキキャリパ
61 日射センサ
62 制御部
62b 制動指令部
62m 記憶部
62t 追尾指令部
63 駆動回路
64 回転抑制用駆動回路
70 制動部
71 ピン
72 ブレーキシュー
80 制動部
81 支持腕部
82 制動用モータ
82a 回転軸
83 スプロケット
84 チェーン
100 集光型太陽光発電装置