(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】カラーシフトデバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20240409BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B5/18
B42D25/328
(21)【出願番号】P 2020122960
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】澤村 力
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-078447(JP,A)
【文献】特開2013-205640(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129202(WO,A1)
【文献】特開平08-211215(JP,A)
【文献】特開2019-164333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319395(US,A1)
【文献】国際公開第2020/126072(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105319628(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
B42D 25/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともレリーフ構造形成層と、該レリーフ構造形成層の波状構造の表面に形成された反射層と、からなるカラーシフトデバイスであって、
前記カラーシフトデバイスは、カラーシフトデバイスの表示面に対して平行な第1方向へ延び、且つ前記第1方向に対して垂直な第2方向へ配列した凹凸構造を有し、
前記凹凸構造は、向かい合う傾斜面の一方のA傾斜面と他方のB傾斜面からなる波状の反射面を有し、
前記A傾斜面およびB傾斜面は、前記第2方向へ交互に配列し、
前記A傾斜面の配列が周期性を有し、前記B傾斜面の配列が非周期性を有する回折格子から構成
され、前記配列の周期は、ある波の傾斜面における天辺と下底との間の中間位置と、次の波の同じ傾斜面における前記中間位置との距離であることを特徴とするカラーシフトデバイス。
【請求項2】
前記A傾斜面およびB傾斜面の、前記第1方向に対して垂直な断面は、いずれも湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のカラーシフトデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学可変デバイスの一種であるカラーシフトデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
物品等の意匠性を高めて優れた装飾効果を与えるだけでなく、偽造防止にも効果のある光学可変デバイス(OVD:optical variable Device)が、近年、多くの物品などに利用されてきている。OVDとは、見る角度によって、色が変化したり画像が変化したりする特殊な光学効果を呈するデバイスの総称である。
【0003】
OVDには、微細な凹凸パターンを有するレリーフ型の回折格子、屈折率の異なる縞状パターンなどの回折構造、光学特性の異なる薄膜を重ねた多層膜などが用いられ、これによる光の回折と干渉によって、見る角度に応じて固有の画像や色の変化(カラーシフト)を生じる。
【0004】
レリーフ型の回折格子には、溝の長さ方向に垂直な断面が、矩形状のもの(特許文献1参照)や、正弦波状のもの、鋸歯状のものがある。
【0005】
矩形状の断面を有している一般的な回折格子は、法線方向から白色光で照明し、この回折格子を法線の周りで180°回転させて、これを斜め方向から同じ角度で観察すると、当然ながら回転前後で画像は反転するものの、同じ色の画像を表示する。
【0006】
また正弦波状の断面を有している一般的な回折格子も、上記の条件のもとで観察した場合、矩形状の断面を有している回折格子と同様に、回転前後で画像は反転するものの、同じ色の画像を表示する。
【0007】
これに対し、
図1に示す波状の断面を有している回折格子10において、法線方向から白色光で照明し、この回折格子を法線の周りで180°回転させて、これを斜め方向から同じ角度θで観察すると、上記と同様に回転前後で画像は反転し、色が変化(カラーシフト)する技術がある。
【0008】
前述のように、矩形状または正弦波状の断面を有している一般的な回折格子は、法線方向から白色光で照明し、これらの回折格子を反転させて、斜め方向から同じ角度で観察する(すなわち、正方向視と逆方向視を同じ角度θで行う)と、回転前後で画像は反転するものの、正方向と逆方向で回折光の法線方向に対する角度(回折角)θが同じであるため、同じ色の画像を表示する。
【0009】
一方、
図3(a)に示すように、前述の波状の断面を有している回折格子10において、波状構造の向かい合う傾斜面の片方をA傾斜面、他方をB傾斜面とし、A傾斜面の周期T1とB傾斜面の周期T2に差をつけると(本例ではT1<T2)、正方向視する場合のほうが、より短い周期T1に依存する分だけ回折角(A傾斜面の回折角)が大きくなる。それ故、正方向視と逆方向視を同じ角度θから行うと、画像は反転し、色が変化(カラーシフト)する(
図3(b)参照)。例えば、正方向視が緑色であれば、逆方向視は赤色に変化する。
【0010】
上記のような従来技術によるカラーシフトデバイス20は、画像を反転させた時に、正方向視と逆方向視で色が変化する特殊な光学効果を呈するデバイスと言える。しかしながら、カラーシフトデバイス20は、定まった観察条件では違いがわかるものの、正方向視
と逆方向視で例えば目の位置が少しずれて見る角度が微妙に変化すると、正方向視と逆方向視で、各々、色々な色を感じることができ、正方向視と逆方向視の色の変化を瞬時に判別することが難しい。場合によっては、正方向視と逆方向視で明確に色の変化を視認できないこともあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題に応えるものであり、正方向視と逆方向視で色が変化する特殊な光学効果を呈するカラーシフトデバイスにおいて、見る角度など観察条件が多少変わっても、瞬時に正方向視と逆方向視の色の変化を視認できるカラーシフトデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、少なくともレリーフ構造形成層と、該レリーフ構造形成層の波状構造の表面に形成された反射層と、からなるカラーシフトデバイスであって、
前記カラーシフトデバイスは、カラーシフトデバイスの表示面に対して平行な第1方向へ延び、且つ前記第1方向に対して垂直な第2方向へ配列した凹凸構造を有し、
前記凹凸構造は、向かい合う傾斜面の一方のA傾斜面と他方のB傾斜面からなる波状の反射面を有し、
前記A傾斜面およびB傾斜面は、前記第2方向へ交互に配列し、
前記A傾斜面の配列が周期性を有し、前記B傾斜面の配列が非周期性を有する回折格子から構成され、前記配列の周期は、ある波の傾斜面における天辺と下底との間の中間位置と、次の波の同じ傾斜面における前記中間位置との距離であることを特徴とするカラーシフトデバイスである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記A傾斜面およびB傾斜面の、前記第1方向に対して垂直な断面は、いずれも湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のカラーシフトデバイスである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正方向視と逆方向視で色が変化する特殊な光学効果を呈するカラーシフトデバイスにおいて、見る角度など観察条件が多少変わっても、瞬時に正方向視と逆方向視の色の変化を視認できるカラーシフトデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来技術によるカラーシフトデバイスの積層構造に含まれる反射面の形状を説明する模式断面図である。
【
図2】本発明によるカラーシフトデバイスの積層構造に含まれる反射面の形状を説明する模式断面図である。
【
図3】(a)従来技術によるカラーシフトデバイスの波状構造面を、その法線方向から白色光で照明し、正方向視と逆方向視から視認する態様を示す模式断面図および(b)同じ角度θで行った正方向視と逆方向視の視認画像である。
【
図4】(a)本発明によるカラーシフトデバイスの波状構造面を、その法線方向から白色光で照明し、正方向視と逆方向視から視認する態様を示す模式断面図および(b)同じ角度θで行った正方向視と逆方向視の視認画像である。
【
図5】観察条件が変化した場合の、本発明と従来技術によるカラーシフトデバイスの正方向視と逆方向視の視認画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来技術と本発明のカラーシフトデバイスにおいて、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
<積層構造>
図2は、本発明によるカラーシフトデバイス20の積層構造の一例と、その積層構造に含まれる反射面の形状を説明する模式断面図である。
【0019】
図2において、第1方向(X方向)は、カラーシフトデバイス20の表示面2に対して平行な方向である。ここで、「表示面」とは、カラーシフトデバイス20の厚さ方向(Z方向)に垂直な面であり、観察者と向き合う前面である。第2方向(Y方向)は、カラーシフトデバイス20の表示面2に対して平行であり且つ第1方向(X方向)に対して垂直な方向である。Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。
【0020】
カラーシフトデバイス20は、フィルム又はシート状である。カラーシフトデバイス20は、レリーフ構造形成層11と、レリーフ構造形成層11の表面に形成された波状構造の面に反射層12と、を有している。反射層12としては、例えば、アルミニウムなどからなる金属層を使用することができる。反射層12の上には、図示しないが、さらに保護層、中間層、あるいは接着層などが設けられていてもよい。
【0021】
図2に示すカラーシフトデバイス20は、反射層12側が表示面2であり、レリーフ構造形成層11が背面であってもよい。また、その逆でもよい。
【0022】
レリーフ構造形成層11は、可視光透過性を有している。一例によれば、レリーフ構造形成層11は、無色透明なフィルム又はシートである。レリーフ構造形成層11は、図示しない基材上に設けられていてもよいが、基材は必ずしも設けられている必要はなく、レリーフ構造形成層11と反射層12のみから構成されていても良い。
【0023】
<反射面形状>
レリーフ構造形成層11と反射層12の界面および反射層12の表面は、
図2に示すように波状の反射面12aになっていて、波状の反射面12aは、波状構造の向かい合っている片方の傾斜面(A傾斜面)と、もう一方の傾斜面(B傾斜面)と、を含んでいる。そして、複数のA傾斜面とB傾斜面の各々は、表示面2に対して平行な第1方向(X方向)へ延伸した形状を有している。
【0024】
A傾斜面は、表示面2に対して垂直であり、且つX方向に対して平行な基準面に対して正の角度(時計回り方向の角度)に傾いている。また、B傾斜面は、前記基準面に対して負の角度(反時計回り方向の角度)に傾いている。A傾斜面およびB傾斜面は、表示面2に対して平行であり、且つX方向に対して垂直なY方向へ交互に配列している。
【0025】
A傾斜面は、
図2に示すように、周期T1で規則的に配列している。A傾斜面の配列は、その周期に相当する第1格子定数を有する第1回折格子を構成している。周期T1の配列が射出する回折光の波長が可視光領域から外れないように、周期T1は可視光の波長レベルに設定する。ここでいう周期とは、一例としてある波の天辺から下底までの中間から、次の波の天辺から下底までの中間の距離(=波の高さの中間位置の距離)を指す。
【0026】
他方、B傾斜面は、
図2に示すように、不規則的な間隔に配列され、周期性を有さない。なお、B傾斜面が周期T2で規則的に配列していて、周期T1と周期T2が異なる場合が従来技術のカラーシフトデバイスに相当する。
【0027】
A傾斜面およびB傾斜面の各々の第1方向(X方向)に対して垂直な断面は湾曲している。湾曲させない場合、断面形状が矩形状(側面の傾斜がなく上底と下底が水平で角があるような断面)では、A傾斜面およびB傾斜面の周期成分が、A傾斜面側、B傾斜面側どちらにも作用し、A傾斜面側から見たときとB傾斜面側から見たときの差がなくなるため、側面に傾斜を設け、コーナーを丸くぼかすことが重要である。
【0028】
側面に傾斜をつけコーナーを丸くぼかすと、波状構造はA傾斜面およびB傾斜面だけの構成に近づき、A傾斜面とB傾斜面の傾斜方向が逆向きであることから、反射作用を複合的に利用することで、A周期成分はA傾斜面側に、B周期成分はB傾斜面側に寄せることが可能になり、A傾斜面側とB傾斜面側の違いを明確にすることができるようになる。断面形状の適正化は描画データや材料や現像プロセスなど、どの工程で実施しても構わない。
【0029】
図4(a)は、本発明のカラーシフトデバイス20の波状構造面を、その法線方向から白色光で照明し、第1観察位置OP1(正方向)、および第2観察位置OP2(逆方向)から視認する態様を示す模式断面図であり、
図4(b)は、同じ角度θで行った正方向視と逆方向視の視認画像である。第1観察位置OP1と第2観察位置OP2とは、カラーシフトデバイス20の中心を通り且つY方向に垂直な面に対して対称である。本願では、第1観察位置OP1から見る場合を正方向視、第2観察位置OP2から見る場合を逆方向視とする。なお、当然ながら、逆方向視時は、正方向視時と図柄の上下左右がともに反転する。
【0030】
既述のように、矩形状または正弦波状の断面を有している一般的な回折格子は、法線方向から白色光で照明し、これらの回折格子を反転させて、斜め方向から同じ角度で観察する(すなわち、正方向視と逆方向視を同じ角度θで行う)と、回転前後で画像は反転するものの、正方向と逆方向で回折光の法線方向に対する角度(回折角)θが同じであるため、同じ色の画像を表示する。
【0031】
一方、
図3(a)に示すように、従来のカラーシフトデバイス10は、波状構造の向かい合う傾斜面の片方はA傾斜面であり、もう一方はB傾斜面である。且つ、A傾斜面の周期T1とB傾斜面の周期T2は異なっている(本例ではT1<T2)。正方向視する場合のほうが、より短い周期T1に依存する分だけ回折角(A面側の回折角)が大きくなる。それ故、正方向視と逆方向視を同じ角度θから行うと、画像は反転し、色が変化(カラーシフト)する(
図3(b)参照)。例えば、正方向視が緑色であれば、逆方向視は赤色に変化する。
【0032】
これに対し、本発明のカラーシフトデバイス20では、
図4(a)に示すように、A傾斜面は、周期T1で規則的に配列しており、B傾斜面は、不規則的な間隔に配列され、周期性を有さない。ここで周期T1は可視光の波長レベルに設定すると、A傾斜面の配列は、その周期に相当する第1格子定数を有する第1回折格子を構成しているので、法線方向から白色光で照明すると、規則正しく微細に刻まれた波状構造面による光の回折と干渉によって、角度によって異なる有彩色の光を目視確認できる。
【0033】
他方、B傾斜面は、不規則的な間隔に配列され、周期性を有さないので、B傾斜面の配列は、法線方向から白色光で照明すると波状構造面で光が散乱し無彩色の光が観察される。したがって、
図4(b)の正方向視と逆方向視の視認図が示すように、本発明のカラーシフトデバイス20は、正方向視では有彩色、逆方向視では無彩色、乃至正方向視では無彩色、逆方向視では有彩色の光を視認できることを意味する。
【0034】
ところで、従来のカラーシフトデバイス10は、画像を反転させた時に、正方向視と逆方向視で色が変化する特殊な光学効果を呈するが、観察条件のズレによって例えば目の位置が少しずれて見る角度が微妙に変化すると、正方向視と逆方向視で、各々、色々な色が見えてくることは前述したとおりである。
図5に、本発明と従来技術によるカラーシフトデバイスの正方向視と逆方向視の視認画像の一例を示す。
【0035】
図5を見てわかるように、従来技術のカラーシフトデバイス10では、正方向視と逆方向視で有彩色同士の色変化になるので、目の位置が少しずれたりして反転後の角度が反転前と同じにならないと、視認されるはずの色が色ズレを起こし、角度によっては同じ色が見えることもあり、特殊な光学効果を呈することができなくなる。
【0036】
しかしながら、本発明のカラーシフトデバイス20では、正方向視では有彩色、逆方向視では無彩色(逆も可)が視認されるので、特徴点が色のあるなしになり、有彩色の色ズレは気にならなくなり、反転の角度に関係なく色の違いを視認できる。このカラーシフトデバイス20の構造体を、単独で表示デバイスに組み込むことも可能で、これによって色々な画像を形成することができる。
【0037】
<表示デバイスの作製方法>
波状構造面12aは、波状の向かい合っているA傾斜面と、もう一方のB傾斜面と、を含んでいる。A傾斜面の周期は等間隔で配置し周期性を持たせ、B傾斜面は間隔をランダムにし非周期とする。このような波状構造をフォトリソグラフィーの技術にて作成する。
【0038】
次に、カラーシフトデバイスからなる表示デバイスを作製するための作製方法の一例を説明する。まず、波状構造を形成するための型版として、フォトリソグラフィを用いて以下のように金属製のスタンパを作製する。
【0039】
最初に、平滑な基板(ガラス基板が一般的に用いられる)に感光性レジスト材料を塗布し、均一な膜厚のレジスト材料層を形成する。感光性レジスト材料としては、公知のポジ型材料またはネガ型材料を用いることができる。次いで、荷電粒子ビームにより、表示デバイス用波状構造データに基づく所望のパターンをレジスト材料層に描画する。その後、このレジスト材料層を現像処理することにより、所望の波状構造を有する構造体を得る。
【0040】
次に、この構造体を原版として用いて、この原版から、電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。なお、電鋳とは、電鋳の対象物を所定の水溶液中に浸し、通電することで電子の還元力により、この対象物上に金属膜を形成する表面処理技術の一種である。このような方法を用いることで、原版の表面に設けられた微細な波状構造を精度良く複製することができる。なお、電鋳の対象物の表面は、通電可能である必要があるが、一般に感光性レジストは電気を通さないので、電鋳を行なう前に、上記構造体の表面にスパッタリング、真空蒸着等の気相堆積法などにより、金属薄膜が予め設けられている。
【0041】
次いで、このスタンパを用いて、レリーフ構造形成層の表面に、波状構造を複製する。まず、例えばポリカーボネートまたはポリエステルなどからなる光透過性の基材上に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または放射線硬化性樹脂などを塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で熱圧の付与や、光や電子線などの照射を実施した後に、金属製のスタンパを樹脂層から剥がすことで、波状構造を備えるレリーフ構造形成層を得る。
【0042】
上記において、原版の作製方法として、フォトリソグラフィを用いたが、その他の方法として、切削加工やエッチング加工等により金属等の表面を加工する手法などを採用することができる。このような方法を用いると、直接金属板の表面を加工することが可能であ
り、この場合、電鋳等の方法により金属製スタンパを作製することなく、直接金属製スタンパを作製することができる。
【0043】
次に、レリーフ構造形成層上に、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法等によりアルミニウム等の金属または誘電体などを単層あるいは多層に堆積させ、反射層を形成する。なお、レリーフ構造形成層の一部のみを反射層で被覆する場合には、例えば、気相堆積法などにより連続膜として反射層を形成した後、薬品などによりその一部を除去するなどの方法によって得ることができる。このような方法により、表示デバイスを製造することができる。
【0044】
上述のようにして得られた表示デバイスには、適宜、中間層、印刷層、保護層、接着層あるいは粘着層などの各種公知機能層が設けられてあっても良く、表示デバイスは単独で用いられても良いし、何らかの物品に貼着されて用いられても良い。物品に表示デバイスを貼着する方法としては、粘着剤などを介してラベルとして貼着しても良いし、転写箔の構成として表示デバイスを作製し、物品に貼着される方法が取れられても良い。
【0045】
本発明のカラーシフトデバイスでは、正方向視では有彩色、逆方向視では無彩色(逆も可)が視認されるので、有彩色の色ズレは気にならなくなり、反転の角度などの観察条件に関係なく色の違いを視認できる。
【符号の説明】
【0046】
2・・・・・・・表示面
10・・・・・・従来のカラーシフトデバイス
11・・・・・・レリーフ構造形成層
12・・・・・・反射層
12a・・・・・波状構造面
20・・・・・・本発明のカラーシフトデバイス
OP1・・・・・第1観察位置
OP2・・・・・第2観察位置