(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20240409BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20240409BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
H02K21/16 M
H02K15/03 G
(21)【出願番号】P 2020124313
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐里子
(72)【発明者】
【氏名】八十島 宏
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146437(JP,A)
【文献】特開平09-121515(JP,A)
【文献】特開2008-187755(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033239(WO,A1)
【文献】特開2003-134737(JP,A)
【文献】特開2011-160636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 21/16
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機(30)のロータ(34)であって、
中央突出部(63)または中央嵌合穴(64)が形成される回転軸心(AX1)と同軸の中心部(61)、および、前記中心部から径方向外側に放射状に突き出す複数の突極部(62)を有し、前記回転軸心まわりに回転可能に設けられるロータコア(38)と、
前記ロータコアと同軸に配置された環状部材であり、回転軸(37)と離間した状態で前記中央突出部または前記中央嵌合穴と嵌合することで前記ロータコアの軸方向の端部に組み付けられ、前記ロータの回転角度検出に用いられるマグネット(81)と、
を備え、
前記ロータコアとともに回転する相対座標系において、前記回転軸心に垂直な所定の方向を第1方向と定義し、前記回転軸心および前記第1方向に垂直な方向を第2方向と定義し、前記回転軸心まわりの方向を周方向と定義すると、
前記ロータコアは、前記回転軸心を中心とする点対称な一対のみの位置決め部(71、712、713、714、715、716、717、718)を有し、
前記マグネットは、前記回転軸心を中心とする点対称な形状であって、前記位置決め部に係合することにより前記マグネットを前記ロータコアに対して前記第1方向、前記第2方向および前記周方向に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用される一対のみの被位置決め部(91、912、913、914、915、916、917、918)を有し、前記被位置決め部を基準として着磁されており、
前記位置決め部および前記被位置決め部は、互いに係合する平面を有し、
前記平面は、前記回転軸心を挟んで両側に設けられる前記突極部の径方向内側に設けられて
おり、
前記被位置決め部(91)の前記平面(92)は、前記マグネットの径方向内側の内壁に形成され、前記第1方向に平行である回転電機のロータ。
【請求項2】
回転電機(30)のロータ(34)であって、
中央突出部(63)または中央嵌合穴(64)が形成される回転軸心(AX1)と同軸の中心部(61)、および、前記中心部から径方向外側に放射状に突き出す複数の突極部(62)を有し、前記回転軸心まわりに回転可能に設けられるロータコア(38)と、
前記ロータコアと同軸に配置された環状部材であり、回転軸(37)と離間した状態で前記中央突出部または前記中央嵌合穴と嵌合することで前記ロータコアの軸方向の端部に組み付けられ、前記ロータの回転角度検出に用いられるマグネット(81)と、
を備え、
前記ロータコアとともに回転する相対座標系において、前記回転軸心に垂直な所定の方向を第1方向と定義し、前記回転軸心および前記第1方向に垂直な方向を第2方向と定義し、前記回転軸心まわりの方向を周方向と定義すると、
前記ロータコアは、前記回転軸心を中心とする点対称な一対のみの位置決め部(71、712、713、714、715、716、717、718)を有し、
前記マグネットは、前記回転軸心を中心とする点対称な形状であって、前記位置決め部に係合することにより前記マグネットを前記ロータコアに対して前記第1方向、前記第2方向および前記周方向に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用される一対のみの被位置決め部(91、912、913、914、915、916、917、918)を有し、前記被位置決め部を基準として着磁されており、
前記位置決め部および前記被位置決め部は、互いに係合する平面を有し、
前記平面は、前記回転軸心を挟んで両側に設けられる前記突極部の径方向内側に設けられて
おり、
前記マグネットは、環状に形成された本体部(833、834)と、前記本体部から前記ロータコアに向けて軸方向に突出するように形成された凸部(843、844)と、を有し、
前記被位置決め部(913、914)の前記平面(923、924)は、前記本体部から前記凸部まで連続して形成され、前記第1方向に平行である回転電機のロータ。
【請求項3】
前記位置決め部および前記被位置決め部は、互いに係合する前記平面(923)および部分円筒面(933)を有し、
前記凸部(843)は、前記平面が径方向内側に設けられており、前記部分円筒面が前記本体部の外縁に沿って径方向外側に形成されており、前記ロータコアに形成される嵌合穴(653)に嵌合している請求項
2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記位置決め部および前記被位置決め部は、互いに係合する前記平面(924)および部分円筒面(934)を有し、
前記凸部(844)は、前記平面が径方向外側に設けられており、前記部分円筒面が前記本体部の内縁に沿って径方向内側に形成されており、前記ロータコアに形成される嵌合穴(654)に嵌合している請求項
2に記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のロータにマグネットを固定するとともに、マグネットの近くに磁気センサを設け、磁気センサの出力値に基づきロータの回転角度を把握することが知られている。特許文献1に開示された回転角検出装置では、環状のマグネットの径方向内側に設けられた凸部を基準にしてマグネットの着磁が行われる。また、マグネットから軸方向へ突き出す4つの円柱状のピンをロータの嵌合穴に嵌合させることで、マグネットのロータへの組み付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータの回転角度の検出精度は回転電機の制御に影響を及ぼす。そのため、ロータの回転角度検出精度を向上するための改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転角度検出精度が向上する回転電機のロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転電機(30)のロータ(34)であって、中央突出部(63)または中央嵌合穴(64)が形成される回転軸心(AX1)と同軸の中心部(61)、および、中心部から径方向外側に放射状に突き出す複数の突極部(62)を有し、回転軸心(AX1)まわりに回転可能に設けられるロータコア(38)と、ロータコアと同軸に配置された環状部材であり、回転軸(37)と離間した状態で中央突出部または中央嵌合部と嵌合することでロータコアの軸方向の端部に組み付けられ、ロータの回転角度検出に用いられるマグネット(81)と、を備える。
【0007】
ロータコアとともに回転する相対座標系において、回転軸心に垂直な所定の方向を第1方向と定義し、回転軸心および第1方向に垂直な方向を第2方向と定義し、回転軸心まわりの方向を周方向と定義する。ロータコアは、回転軸心を中心とする点対称な一対のみの位置決め部(71、712、713、714、715、716、717、718)を有する。マグネットは、回転軸心を中心とする点対称な形状であって、位置決め部に係合することによりマグネットをロータコアに対して第1方向、第2方向および周方向に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用される一対のみの被位置決め部(91、912、913、914、915、916、917、918)を有し、被位置決め部を基準として着磁されている。位置決め部および被位置決め部は、互いに係合する平面を有し、平面は、回転軸心を挟んで両側に設けられる突極部の径方向内側に設けられている。
第1の態様では、被位置決め部(91)の平面(92)は、マグネットの径方向内側の内壁に形成され、第1方向に平行である。
第2の態様では、マグネットは、環状に形成された本体部(833、834)と、本体部からロータコアに向けて軸方向に突出するように形成された凸部(843、844)と、を有する。被位置決め部(913、914)の平面(923、924)は、本体部から凸部まで連続して形成され、第1方向に平行である。
【0008】
このように組付け基準としてだけでなく着磁基準としても用いる一対のみの被位置決め部を設けることで、組付け基準が着磁基準とは別である従来形態と比べて、ロータコアに対するマグネットの磁極位置の理想的な位置からのずれ量が小さくなる。つまり、本発明では、組付け基準と着磁基準とのずれが無い分だけ従来形態よりも上記ずれ量が小さくなる。したがって、マグネットを用いた回転角度検出の精度が上がり、回転電機の性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のモータを備える回転式アクチュエータが適用されたシフトバイワイヤシステムを説明する模式図。
【
図4】
図2のロータおよびモータ側軸受を矢印IV方向から見た図。
【
図5】
図4のロータおよびモータ側軸受のV-V線断面図。
【
図6】
図4のロータコア、回転軸およびモータ側軸受を示す図。
【
図7】
図6のロータコア、回転軸およびモータ側軸受のVII-VII線断面図。
【
図10】第2実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【
図11】
図10のロータおよびモータ側軸受のXI-XI線断面図。
【
図12】
図10のロータコア、回転軸およびモータ側軸受を示す図。
【
図13】
図12のロータコア、回転軸およびモータ側軸受のXIII-XIII線断面図。
【
図16】第3実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【
図17】
図16のロータおよびモータ側軸受のXVII-XVII線断面図。
【
図18】
図16のロータコア、回転軸およびモータ側軸受を示す図。
【
図19】
図18のロータコア、回転軸およびモータ側軸受のXIX-XIX線断面図。
【
図22】第4実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【
図23】
図22のロータおよびモータ側軸受のXXIII-XXIII線断面図。
【
図24】第5実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【
図25】
図24のロータおよびモータ側軸受のXXV-XXV線断面図。
【
図26】第1の他の実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【
図27】第2の他の実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【
図28】第3の他の実施形態のロータおよびモータ側軸受を軸方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、回転電機としてのモータの複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態のモータ30は、回転式アクチュエータ(以下、アクチュエータ)10に設けられる。アクチュエータ10は、車両用変速機11のケース12の外壁に固定され、シフトバイワイヤシステム13の動力源として用いられる。シフトバイワイヤシステム13は、制御装置15がシフト操作装置14からの指令信号に応じてアクチュエータ10を制御することにより、変速機11のシフトレンジ切替機構16を作動させてシフトレンジを切り替える。
【0012】
(アクチュエータ)
先ず、アクチュエータ10の全体構成について
図2を参照して説明する。アクチュエータ10は、ハウジング20、モータ30および減速機40を備える。
【0013】
ハウジング20は、カップ状のフロントハウジング21およびリアハウジング22を有する。フロントハウジング21およびリアハウジング22は、開口部同士が組み合わされてボルト23により互いに締結されている。フロントハウジング21には、有底筒状の金属プレート24がインサートされている。リアハウジング22は、フロントハウジング21とは反対側に突き出す筒状突出部28を有する。リアハウジング22の外壁にはブラケット29が固定されている。アクチュエータ10は、ブラケット29を用いて変速機11のケース12(
図1参照)に固定される。
【0014】
モータ30は、ハウジング20に収容されたステータ31およびロータ34を有する。ステータ31は、金属プレート24に例えば圧入等により固定されたステータコア32と、ステータコア32に設けられた巻線33とを有する。ロータ34は、モータ側軸受35および減速機側軸受36により回転軸心AX1まわりに回転可能に支持された回転軸37と、回転軸37の外側に嵌合して固定されたロータコア38とを有する。モータ側軸受35は、金属プレート24に設けられている。減速機側軸受36は、後述の出力部材44に設けられている。
【0015】
減速機40は、偏心軸41、リングギア42、偏心ギア43、出力部材44および伝達機構45を備える。偏心軸41は、回転軸心AX1に対して偏心する偏心軸心AX2上に設けられ、回転軸37と一体に形成されている。リングギア42は、回転軸心AX1と同軸に配置され、リアハウジング22に固定されている。偏心ギア43は、リングギア42の内歯部46と噛み合う外歯部47を有し、偏心軸41に設けられた軸受48により遊星運動可能に支持されている。遊星運動とは、偏心軸心AX2まわりに自転しつつ回転軸心AX1まわりに公転する運動のことである。遊星運動時の偏心ギア43の自転速度は、回転軸37の回転速度に対して変速させられる。
【0016】
出力部材44は、回転軸心AX1と同軸に配置され、リアハウジング22に設けられた軸受49により回転可能に支持されている。伝達機構45は、偏心ギア43に形成された係合突起51と、出力部材44に形成され、係合突起51が挿入された係合孔52とから構成され、偏心ギア43の偏心軸心AX2まわりの回転を出力部材44に伝達する。
【0017】
アクチュエータ10では、巻線33の通電相が切り替えられることにより回転磁界が発生し、この回転磁界により生じる磁気的吸引力または反発力を受けてロータ34が回転する。ロータ34と共に偏心軸41が回転軸心AX1まわりに回転すると偏心ギア43が遊星運動し、ロータ34の回転に対して減速させられた偏心ギア43の回転が出力部材44から出力される。
【0018】
(ロータ)
次に、ロータ34とその回転角度検出について
図2~
図9を参照して説明する。以降、回転軸心AX1と平行な方向を「軸方向」と記載する。また、回転軸心AX1まわりの方向を「周方向」と記載する。
【0019】
ロータ34は、回転軸心AX1まわりに回転可能に設けられたロータコア38と、ロータコア38と同軸に配置された環状部材であって、ロータコア38の軸方向の端部に組み付けられたマグネット81とを備える。マグネット81は、ロータ34の回転角度検出に用いられる。
【0020】
アクチュエータ10は、磁気センサ55を実装した基板56を備える。磁気センサ55は、マグネット81に軸方向に対向して設けられている。基板56はフロントハウジング21に固定されている。磁気センサ55は、ロータ34の回転角度に応じて変化する磁場の状態を検出して電気信号に変換する。磁気センサ55およびマグネット81は、ロータ34の回転角度を検出する回転検出部を構成している。
【0021】
ロータコア38は、複数枚の金属板からなる積層体である。
図5、
図7では、煩雑になることを避けるために、ロータコア38が1つの部材からなるかのように示しているが、実際には複数枚の金属板からなる。ロータコア38は、回転軸心AX1と同軸の中心部61と、中心部61から径方向外側に放射状に突き出す複数の突極部62とを有する。中心部61には、軸方向の一方、すなわち基板56側に向けて突き出す環状の中央突出部63が形成されている。
【0022】
また、ロータコア38は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの位置決め部71を有する。位置決め部71は、中央突出部63の径方向外側の外壁に形成されている。ここで、ロータコア38とともに回転する相対座標系において、回転軸心AX1に垂直な所定の方向を第1方向D1と定義し、回転軸心AX1および第1方向D1に垂直な方向を第2方向D2と定義し、回転軸心AX1まわりの方向を周方向D3と定義する。位置決め部71は、第1方向D1に平行な平面72と、回転軸心AX1を曲率中心とする部分円筒面73とから構成されている。一方の平面72と他方の平面72は、互いに平行な平面からなる二面幅を構成している。一対の位置決め部71は、中央突出部63の外壁において全周にわたり連続して形成されている。
【0023】
マグネット81は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの被位置決め部91を有する。被位置決め部91は、マグネット81の径方向内側の内壁に形成されている。被位置決め部91は、第1方向D1に平行な平面92と、回転軸心AX1を曲率中心とする部分円筒面93とから構成されている。一方の平面92と他方の平面92は、互いに平行である。一対の被位置決め部91は、マグネット81の内壁において全周にわたり連続して形成されており、中央突出部63の外壁に嵌合可能な中央嵌合穴82を構成している。
【0024】
ロータコア38への組付けに先立ちマグネット81の着磁が行われる。この際、被位置決め部91を基準にしてマグネット81の着磁が行われる。すなわち、被位置決め部91が着磁基準として用いられる。以降、着磁基準に対するマグネット81の磁極位置の理想的な位置からのずれのことを「着磁ずれ」と記載する。
【0025】
マグネット81は、中央嵌合穴82が中央突出部63に嵌合し、磁気的吸着力によりロータコア38に吸着することにより、ロータコア38の端部に組み付けられる。被位置決め部91は、位置決め部71に係合することによりマグネット81をロータコア38に対して第1方向D1、第2方向D2および周方向D3に位置決めする。具体的には、平面92が平面72と係合することでマグネット81の第2方向D2および周方向D3の相対位置ずれを抑制し、また、部分円筒面93が部分円筒面73と係合することでマグネット81の第1方向D1の相対位置ずれを抑制する。被位置決め部91は、着磁基準および組付け基準として共用される。以降、中央嵌合穴82と中央突出部63との嵌合遊びのことを「組付け遊び」と記載する。
【0026】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態では、回転電機30のロータ34は、ロータコア38と同軸に配置された環状部材であり、ロータコア38の軸方向の端部に組み付けられるマグネット81を備える。マグネット81は、ロータ34の回転角度検出に用いられる。ロータコア38は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの位置決め部71を有する。マグネット81は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの被位置決め部91を有する。被位置決め部91は、位置決め部71に係合することによりマグネット81をロータコア38に対して第1方向D1、第2方向D2および周方向D3に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用される。
【0027】
このように組付け基準としてだけでなく着磁基準としても用いる一対のみの被位置決め部91を設けることで、組付け基準が着磁基準とは別である従来形態と比べて、ロータコア38に対するマグネット81の磁極位置の理想的な位置からのずれ量が小さくなる。つまり、本実施形態では、着磁ずれおよび組付け遊びは従来形態と同様に存在するが、組付け基準と着磁基準とのずれが無い分だけ従来形態よりも上記ずれ量が小さくなる。したがって、マグネット81を用いた回転角度検出の精度が上がり、モータ30の性能が向上する。
【0028】
また、第1実施形態では、被位置決め部91は、マグネット81の径方向内側の内壁に形成され、第1方向D1に平行な平面72を含む。これにより、回転軸心AX1と同心の中央突出部63に中央嵌合穴82を嵌合させてマグネット81を位置決めすることで、特開2009-97924号公報に記載されたように周方向に並ぶ4つのピンをロータコアの穴に嵌合させて位置決めする形態と比べて、マグネット81の中心とロータコア38との中心とがずれにくくなる。
【0029】
[第2実施形態]
第2実施形態では、
図10~
図15に示すように、中心部61には、第1実施形態における中央突出部63に代えて、中央嵌合穴642が設けられている。中央嵌合穴642は、基板56とは反対側に向けて凹むように形成されている。
【0030】
一対の位置決め部712は、中央嵌合穴642の内壁において全周にわたり連続して形成されている。位置決め部712は、第1方向D1に平行な平面722と、回転軸心AX1を曲率中心とする部分円筒面732とから構成されている。一方の平面722と他方の平面722は互いに平行である。
【0031】
一対の被位置決め部912は、マグネット81の外壁において全周にわたり連続して形成されており、中央嵌合穴642に嵌合可能である。被位置決め部912は、第1方向D1に平行な平面922と、回転軸心AX1を曲率中心とする部分円筒面932とから構成されている。一方の平面922と他方の平面922は、互いに平行な二面幅を構成している。
【0032】
第2実施形態では、ロータコア38は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの位置決め部71を有する。マグネット81は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの被位置決め部912を有する。被位置決め部912が着磁基準および組付け基準として共用されるため、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、回転軸心AX1と同心の中央嵌合穴642にマグネット81を嵌合させてマグネット81を位置決めすることで、マグネット81の中心とロータコア38との中心とがずれにくくなる。
【0033】
[第3実施形態]
第3実施形態では、
図16~
図21に示すように、中心部61には、第2実施形態における中央嵌合穴642に代えて、回転軸心AX1を挟んで第2方向D2に互いに離れて配置された一対の嵌合穴653が設けられている。
【0034】
位置決め部713は、第1方向D1に平行な平面723と、回転軸心AX1を曲率中心とする部分円筒面733とから構成されている。平面723は、嵌合穴653の内壁のうち径方向内側に形成されている。一方の平面723と他方の平面723は互いに平行な二面幅を構成している。部分円筒面733は、嵌合穴653の内壁のうち径方向外側に形成されている。
【0035】
マグネット81は、環状に形成された本体部833と、本体部833からロータコアに向けて軸方向に突出するように形成された一対の凸部843とを有する。一対の凸部843は、回転軸心AX1を挟んで第2方向D2に互いに離れて配置されている。
【0036】
被位置決め部913は、第1方向D1に平行な平面923と、回転軸心AX1を曲率中心とする部分円筒面933とから構成されている。平面923は、本体部833の径方向内側の内壁から凸部843の側面までにわたり連続して形成されている。一方の平面923と他方の平面923は、互いに平行である。部分円筒面933は、本体部833の径方向外側の外壁から凸部843の側面までにわたり連続して形成されている。凸部843は、嵌合穴653に嵌合可能である。
【0037】
第3実施形態では、ロータコア38は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの位置決め部713を有する。マグネット81は、回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの被位置決め部913を有する。被位置決め部913が着磁基準および組付け基準として共用されるため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
[第4実施形態]
第4実施形態では、
図22~
図23に示すように、位置決め部714を構成する平面724と部分円筒面734との径方向の配置が第3実施形態とは逆であり、また、被位置決め部914を構成する平面924と部分円筒面934との径方向の配置が第3実施形態とは逆である。それ以外の構成、例えば、平面724と部分円筒面734が嵌合穴654に形成されること、平面924と部分円筒面934が本体部834から凸部844まで連続して形成されていること等は、第3実施形態と同様である。
【0039】
第4実施形態では、マグネット81が回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの被位置決め部914を有し、被位置決め部914が着磁基準および組付け基準として共用されるため、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
[第5実施形態]
第5実施形態では、
図24~
図25に示すように、位置決め部715は、第1方向D1に平行な平面725と、第2方向D2に平行な一対の平面745とを有する。平面725は、嵌合穴655の内壁のうち径方向内側に形成されている。一対の平面745は、嵌合穴655の内壁のうち第1方向D1両側にそれぞれ形成されている。
【0041】
被位置決め部915は、第1方向D1に平行な平面925と、第2方向D2に平行な一対の平面945とを有する。平面925は、本体部835に形成されることなく凸部845のみに形成されている。平面945は、本体部835に形成されることなく凸部845のみに形成されている。一対の平面945は、凸部845の側面のうち第1方向D1両側にそれぞれ形成されている。
【0042】
第5実施形態では、マグネット81が回転軸心AX1を中心とする点対称な一対のみの被位置決め部915を有し、被位置決め部915が着磁基準および組付け基準として共用されるため、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
[他の実施形態]
他の実施形態では、
図26に示すように被位置決め部916は、第1実施形態における一対の平面72および部分円筒面73に代えて、二対の平面756、766を有していてもよい。一対の平面756は、第1方向D1および第2方向D2と交差する方向に平行である。一対の平面766は、第1方向D1、第2方向D2および平面756と交差する方向に平行である。それでも、被位置決め部916が、位置決め部716の二対の平面956、966に係合することによりマグネットをロータコアに対して第1方向、第2方向および周方向に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用されることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
図26では、被位置決め部916の二対の平面756、766は、径方向内側に突き出す突起部の側面に形成されている。これに対して、他の実施形態では、被位置決め部の二対の平面は、径方向外側に凹む凹部の側面に形成されてもよい。また、他の実施形態では、被位置決め部は、二対の平面に代えて、一対の凸曲面、または一対の凹曲面から構成されてもよい。
【0044】
他の実施形態では、
図27に示すように被位置決め部917は、第3実施形態における一対の平面723および部分円筒面733に代えて、
図26の二対の平面756、766と同様の二対の平面757、767を有していてもよい。二対の平面757、767は、凸部847の側面に形成されている。それでも、被位置決め部917が、嵌合穴657の内壁に形成された位置決め部717の二対の平面957、967に係合することによりマグネットをロータコアに対して第1方向、第2方向および周方向に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用されることで、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
図27では、被位置決め部917の二対の平面757、767は、凸部847のうち径方向外側の側面に形成されている。これに対して、他の実施形態では、被位置決め部の二対の平面は、凸部のうち径方向内側の側面に形成されてもよい。また、他の実施形態では、被位置決め部は、二対の平面に代えて、一対の凸曲面から構成されてもよい。
【0045】
他の実施形態では、
図28に示すように被位置決め部918は、第5実施形態における一対の平面725および二対の平面745に代えて、
図26の二対の平面756、766と同様の二対の平面758、768を有していてもよい。二対の平面758、768は、凸部848の側面に形成されている。それでも、被位置決め部918が、嵌合穴658の内壁に形成された位置決め部718の二対の平面958、968に係合することによりマグネットをロータコアに対して第1方向、第2方向および周方向に位置決め可能であり、着磁基準および組付け基準として共用されることで、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
図28では、被位置決め部918の二対の平面758、768は、凸部848のうち径方向外側の側面に形成されている。これに対して、他の実施形態では、被位置決め部の二対の平面は、凸部のうち径方向内側の側面に形成されてもよい。また、他の実施形態では、被位置決め部は、二対の平面に代えて、一対の凸曲面から構成されてもよい。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0047】
30 モータ(回転電機)、34 ロータ、38 ロータコア、
71、712、713、714、715、716、717、718 位置決め部、
81 マグネット、
91、912、913、914、915、916、917、918 被位置決め部、
AX1 回転軸心。