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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ツール置台システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/04 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B25J15/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020124936
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021404
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】森 英樹
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-150544(JP,A)
【文献】特開2017-222013(JP,A)
【文献】特開2013-006244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B23Q 1/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールが載置されるツール置台と、
前記ツールを把持して前記ツール置台に載置するロボットハンド装置と、
前記ロボットハンド装置の動作を制御する制御装置と、を含み構成され、
前記ツールは、突出した脚部を有し、
前記ツール置台は、
前記ツールが載置される際に前記脚部と係合し、前記ツールが正規状態で載置される際には移動せず、前記ツールが非正規状態で載置される際に移動する柱部及び前記柱部との距離を測定するセンサを有するフィンガー部を備え、
前記制御装置は、前記センサの測定結果に基づいて前記柱部の変位を求め、前記ロボットハンド装置による前記ツールの前記ツール置台への次の載置動作において、前記変位を打ち消すように前記ロボットハンド装置の動作を制御するツール置台システム。
【請求項2】
前記ツールは、前記脚部として、棒状であって中心軸線が互いに平行な第1脚部及び第2脚部を有し、
前記ツール置台は、前記フィンガー部として、前記第1脚部と係合する第1フィンガー部及び前記第2脚部と係合する第2フィンガー部とを備え、
前記制御装置は、前記第1フィンガー部及び前記第2フィンガー部それぞれの前記センサの測定結果に基づいて、前記ツールの前記第1脚部の軸線まわりの傾きを求め、前記ロボットハンド装置による前記ツールの前記ツール置台への次の載置動作において、前記傾きを打ち消すように前記ロボットハンド装置の動作を制御する請求項1記載のツール置台システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツール置台システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ツールチェンジャに備えられ、ロボットハンドによって運ばれたツールが載置されるツール置台が知られている。
特許文献1には、ロボットがツールを載置するツール置台に、イコライジング機構を介し前後左右及び上下に微動可能な可動枠体を備えたものが記載されている。
特許文献1に記載されたツール置台は、ロボットが保持したツールに多少の位置ズレ及び傾きが生じていても、イコライジング機構を介して良好にそれらを吸収し、ツールの可動枠体への載置不良を無くすことができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-76132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたツール置台は、ロボットがツールをツール置台へ載置する際に、ツールが正規の位置及び姿勢に対して位置ずれ及び傾きを生じている場合にこれらを吸収することができる。
しかしながら、特許文献1に記載されたツール置台は、ロボットで行う次のツールの載置動作において、今回の載置動作で生じたツールの位置ずれ及び姿勢の傾きは考慮しない。
【0005】
そのため、何らかの理由で位置ずれ及び傾きが生じ、それらが徐々に大きくなると、ずれの吸収可能範囲を超えてツールとツール置台とが干渉し、いずれかが破損するなどの不具合が生じる虞がある。そのため、ツールは、ツール置台への載置が、できるだけ正規の位置及び姿勢で実行されることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ツール及びツール置台が破損しにくいツール置台システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1)の構成を有する。
1) ツールが載置されるツール置台と、
前記ツールを把持して前記ツール置台に載置するロボットハンド装置と、
前記ロボットハンド装置の動作を制御する制御装置と、を含み構成され、
前記ツールは、突出した脚部を有し、
前記ツール置台は、
前記ツールが載置される際に前記脚部と係合し、前記ツールが正規状態で載置される際には移動せず、前記ツールが非正規状態で載置される際に移動する柱部及び前記柱部との距離を測定するセンサを有するフィンガー部を備え、
前記制御装置は、前記センサの測定結果に基づいて前記柱部の変位を求め、前記ロボットハンド装置による前記ツールの前記ツール置台への次の載置動作において、前記変位を打ち消すように前記ロボットハンド装置の動作を制御するツール置台システムである
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ツール及びツール置台が破損しにくい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るツール置台システムの実施例であるツール置台システム91STを示す構成図である。
図2図2は、ツール置台システム91STが含むツール置台91と、ツール置台91に載置するツール81とを示す斜視図である。
図3図3は、ツール置台91に設けられた第1フィンガー部2Lの上面図である。
図4図4は、第1フィンガー部2Lの一部を示す部分斜視図である。
図5図5は、柱部542が基準位置にあるフィンガーユニット2L2を示す上面図である。
図6図6は、柱部542が移動した位置にあるフィンガーユニット2L2を示す上面図である。
図7図7は、ツール置台システム91STのブロック図である。
図8図8は、ツール81が基準状態にある場合の柱部541~544,545~548の位置を示す模式的水平断面図である。
図9図9は、ツール81が基準状態にない場合の柱部541~544,545~548の位置を示す模式的水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
本発明の実施の形態に係るツール置台及びツール置台システムを、実施例のツール置台91及びツール置台システム91STにより説明する。
【0011】
図1は、ツール置台システム91STを示す構成図である。
図2は、ツール置台システム91STを構成するツール置台91の一部と、ツール81とを示す斜視図である。
説明の便宜上、上下左右前後の各方向を図1及び図2の矢印の方向に規定する。上下方向は鉛直方向である。左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
図1に示されるように、ツール置台システム91STは、ツール置台91,ロボットハンド装置92,及び制御装置93を含んで構成されている。
ツール置台91は、設置面FLに設置された台座部3と、台座部3の上に取り付けられたベース1とを有する。
ベース1には、第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rが設けられている。
【0013】
ロボットハンド装置92は、先端にクランパ922を有する6自由度の多関節アーム群と駆動部921とを備えている。アーム群の姿勢及びクランパ922の把持動作は、駆動部921によって実行される。駆動部921の動作は、制御装置93によって閉ループ制御される。
【0014】
ツール81は、平板状のツールベース821と、ツールベース821の下面821aに、左右方向に離隔し下方に突出した棒状の第1脚部822及び第2脚部823を有する。この例において、第1脚部822及び第2脚部823は円柱状である。第1脚部822及び第2脚部823それぞれの中心軸線CL8L及び中心軸線CL8Rは、互いに平行でピッチLpだけ離隔している。
【0015】
ロボットハンド装置92は、把持したツール81を、ツール置台91の第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rに対し上方から載置する。
詳しくは、ロボットハンド装置92は、クランパ922によってツール81を把持し、ツールベース821を、上方から矢印D1(図1参照)に示されるように下降させる。
ロボットハンド装置92は、ツール81を、第1脚部822及び第2脚部823がそれぞれ第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rに係合するように載置する。第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rに載置されたツールベース821は、図1に2点鎖線で示されている。
【0016】
図3は、ベース1における第1フィンガー部2Lの上面図である。
図2及び図3に示されるように第1フィンガー部2Lは、4つのフィンガーユニット2L1~2L4を有し、第2フィンガー部2Rは、4つのフィンガーユニット2R1~2R4を有する。
【0017】
ベース1には、X軸方向にピッチLpで離隔してZ軸方向に平行に延びる仮想軸線CL1L,CL1Rが設定されている。
フィンガーユニット2L1~2L4は、ベース1の上面1aにおいて、仮想軸線CL1Lのまわりに、90°間隔で対向配置されている。
詳しくは、フィンガーユニット2L1とフィンガーユニット2L2とが左右方向に対向し、フィンガーユニット2L3とフィンガーユニット2L4とが上下方向に対向している。
フィンガーユニット2R1~2R4は、ベース1の上面1aにおいて、仮想軸線CL1Rのまわりに90°間隔で配置されている。
詳しくは、フィンガーユニット2R1とフィンガーユニット2R2とが左右方向に対向し、フィンガーユニット2R3とフィンガーユニット2R4とが上下方向に対向している。
【0018】
図2及び図3に示されるように、フィンガーユニット2L1~2L4は、それぞれ、リニア移動体51~54,付勢部551~554,及びセンサ61~64を有する。また、フィンガーユニット2R1~2R4は、それぞれ、リニア移動体55~58,付勢部555~558,及びセンサ65~68を有する。
リニア移動体51~54は、それぞれレール521~528及びスライダ531~538を有する。スライダ531~538にはそれぞれ柱部541~548が取り付けられている。
【0019】
ベース1の上面1aには、仮想軸線CL1L,CL1Rそれぞれと同芯に、所定外径の円柱状の基準柱11L,11Rが取り付けられている。
図2において、ツール81のツールベース821から下方に突出している円柱状の第1脚部822及び第2脚部823は、外径が基準柱11L,11Rとほぼ同じとされている。第1脚部822及び第2脚部823の先端部は、先端に向かうに従って外径が小さくなるガイド部822a,823aとされている。
【0020】
8個のフィンガーユニット2L1~2L4,2R1~2R4の構造は共通である。そこで、フィンガーユニット2L2を代表として、図4も参照して詳述する。図4は、センサ62を除くフィンガーユニット2L2,ベース1,及び基準柱11Lのみを示した斜視図である。
【0021】
図2図4に示されるように、リニア移動体52は、ベース1の上面1aに固定されたレール522と、レール522に係合しX軸方向に移動可能なスライダ532を有する。
スライダ532の右端には、仮想軸線CL1Lと平行に上方に延びる細板状の柱部542が取り付けられている。
また、スライダ532には、後方に延びる腕部532aが取り付けられている。
ベース1の上面1aにおいて、付勢部552は、リニア移動体52の後方側に隣接して設置されている。
【0022】
付勢部552は、右方向に出入りするプッシュバー552aと、プッシュバー552aを右方に付勢する圧縮ばねなどの付勢部材とを有する。プッシュバー552aは、付勢部材によって右方向に付勢され、スライダ532の腕部532aを右方に押している。
スライダ532は、付勢部552の付勢力によって常に基準柱11Lに向けて付勢されており、柱部542が基準柱11Lに当接してそれ以上の右方への移動が規制されている。
【0023】
各フィンガーユニット2L1~2L4,2R1~2R4において、柱部541~544,545~548が基準柱11L,11Rに当接した状態を、それぞれのフィンガーユニットにおける基準状態と称する。
また、4つのフィンガーユニット2L1~2L4において、すべての柱部541~544が基準柱11Lに当接した状態を、第1フィンガー部2Lにおける全基準状態と称する。同様に、4つのフィンガーユニット2R1~2R4において、すべての柱部545~548が基準柱11Rに当接した状態と、第2フィンガー部2Rにおける全基準状態と称する。
【0024】
この構成により、図2に示されるように、第1フィンガー部2Lにおける4つの柱部541~544と基準柱11Lとで囲まれた概ね角柱状の空間を、空間VLと称する。また、第2フィンガー部2Rにおける4つの柱部545~548と基準柱11Rとで囲まれた概ね角柱状の空間を、空間VRと称する。
空間VL,VRは、ロボットハンド装置92によってツール81が第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rに載せられる際に、第1脚部822,第2脚部823が進入する空間である。
【0025】
上述の構成に加え、図3に示されるように、センサ62がブラケットを介してベース1の上面1aに取り付けられている。
センサ62は、光測距センサであって、太実線で示される光ビームLs2を柱部542に照射して柱部542とセンサ62との間のX軸方向の距離を測定し、測定した距離を、測定信号S2(図7参照)として制御装置93に向け出力する。
【0026】
これにより、センサ62から出力される測定信号S2に基づいて、柱部542及びスライダ532のX軸方向の移動有無と、移動距離を把握できるようになっている。
【0027】
上述の構成及び機能を有するフィンガーユニット2L1~2L4のセンサ61~64は、センサ61~64それぞれと柱部541~544との距離を測定信号S1~S4として出力する。測定信号S1~S4は、基準柱11Lに対するそれぞれ右方,左方,上方,下方のセンサ61~64と柱部541~544との間の距離を示す。
同様に、フィンガーユニット2R1~2R4のセンサ65~68は、センサ65~68それぞれと柱部545~548との距離を測定信号S5~S8として出力する。測定信号S5~S8は、基準柱11Rに対するそれぞれ右方,左方,上方,下方のセンサ65~68と柱部545~548との間の距離を示す。
【0028】
柱部541~548が移動した場合の移動距離の取得について、フィンガーユニット2L2を例に、図5及び図6を参照して詳述する。
図5は、柱部542が基準位置にある状態を示す上面図である。基準位置は、柱部542が基準柱11Lに当接した位置である。
図6は、柱部542がX軸方向の左方に移動した状態を示す上面図である。
【0029】
図5に示されるように、柱部542が基準位置にあるときのセンサ62と柱部542との距離を距離Laとする。
また、図6に示されるように、柱部542が矢印D2のように左方に移動した状態でのセンサ62と柱部542との距離を距離Lbとする。すなわち、距離Lb<距離Laであり、柱部542の変位としての差分ΔL2は、X軸方向の左方を(-)、右方を(+)とすると、距離Lb-距離Laである。
【0030】
図7は、ツール置台システム91STのブロック図である。
制御装置93は、変位取得部931,補正情報生成部932,載置動作制御部933,及び記憶部934を有する。
ツール置台91のセンサ61~68それぞれから出力された測定信号S1~S8は、変位取得部931に入力される。
【0031】
変位取得部931は、センサ61~68から入来する測定信号S1~S8それぞれから、ツール81がツール置台91に載置される前と載置途中とにおける、各センサ61~68と柱部541~548との距離をそれぞれ取得する。
例えば、変位取得部931は、ツール81がツール置台91に載置される前の時刻t1に、フィンガーユニット2L2のセンサ62からの測定信号S2から、センサ62と柱部542との間の距離La21を把握する。
また、ロボットハンド装置92がツール81をツール置台91に載置する動作中の時刻t2において、変位取得部931は、フィンガーユニット2L2のセンサ62からの測定信号S2から、センサ62と柱部542との間の距離La22を把握する。
時刻t2は、第1脚部822及び第2脚部823が、それぞれ第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rの空間VL及び空間VRに進入して下降中の時刻である。
【0032】
次いで、変位取得部931は、時刻t1と時刻t2とにおける距離La21と距離La22との差分ΔL2を、(距離La22-距離La21)により求める。
差分ΔL2は、ツール81をツール置台91に載置する動作中の柱部542のX軸方向の左方への変位を示す。
【0033】
同様に、変位取得部931は、センサ62以外のセンサ61,63~68から入来する測定信号S1,S3~S8に基づいて、柱部541,543~548それぞれの変位である差分ΔL1,ΔL3~ΔL8を取得する。
【0034】
上述の差分ΔL1~ΔL8について、ツール81の第1脚部822及び第2脚部823の水平方向の位置に対応した図8及び図9を参照して詳述する。
図8は、ツール81が、その中心軸線CL8L,CL8Rが、それぞれツール置台の仮想軸線CL1L,CL1Rとほぼ合致して、第1脚部822及び第2脚部823がそれぞれ空間VL及び空間VRを下降している状態を示した水平断面図である。中心軸線CL8Lと交わるY軸をY1軸、中心軸線CL8Rと交わるY軸を便宜的にY2軸としてある。
【0035】
図8に示されるように、ツール81の中心軸線CL8L,CL8Rと仮想軸線CL1L,CL1Rとがほぼ合致している状態を、ツール81の正規状態と称する。ツール81が正規状態で上方からツール置台91に載置されるとき、第1フィンガー部2L及び第2フィンガー部2Rは、全基準状態となっている。
【0036】
図9は、図8に示されるツール81の正規状態に対し、ツール81が上面視で右後方にずれた状態で第1脚部822及び第2脚部823がそれぞれ空間VL及び空間VRを下降している状態を示した水平断面図である。
【0037】
図9に示されるように、変位取得部931は、柱部541~548の変位である差分ΔL1~差分ΔL8を、それぞれ次のように取得する。すなわち、
差分ΔL1=a1,差分ΔL2=b1,差分ΔL3=c1,差分ΔL4=d1
差分ΔL5=a2,差分ΔL6=b2,差分ΔL7=c2,差分ΔL8=d2
である。
【0038】
図9では、ツール81が正規状態に対し右後方にずれていることから、第1脚部822は、柱部541,543を付勢部551,553(図2参照)の付勢力に抗して押して移動させる。一方、第1脚部822は、柱部542,544に接触せず、柱部542,544を移動させない。そのため、b1及びd1は0(ゼロ)となる。
一方、第2脚部823は、柱部545,547を、付勢部555,557(図2参照)の付勢力に抗して押して移動させる。一方、第2脚部823は、柱部546,548に接触せず、柱部546,548を移動させない。そのため、b2及びd2は0(ゼロ)となる。
【0039】
ツール81において、X軸方向の変位量は第1脚部822の変位量Xa及び第2脚部823の変位量Xbで示され、Y軸方向の変位量は、第1脚部822の変位量Ya及び第2脚部823の変位量Ybで示される。
Xa=ΔL1+ΔL2、Xb=ΔL5+ΔL6
Ya=ΔL3+ΔL4、Yb=ΔL7+ΔL8
【0040】
図9に示されるように、ツール81において中心軸線CL8Lと中心軸線CL8Rとを直交して繋ぐ線分を線分LN8とすると、「Xa=Xb,かつYa=Yb」の場合、ツール81は、X軸に対し線分LN8は平行な状態で水平方向に変位している。
また、「Xa=Xb,かつYa=Yb」ではない場合、ツール81は、X軸に対し線分LN8が傾いて水平方向に変位している。
【0041】
図7に示される変位取得部931は、X軸に対する線分LN8の傾きθyを、次式から求める。
θy=arctan〔(Yb-Ya)/Lp〕
変位取得部931は、取得した差分ΔL1~差分ΔL8及び変位量Xa,Xb,Ya,Yb、並びに、傾きθyを含む変位情報J1を出力する。
【0042】
制御装置93の補正情報生成部932は、変位取得部931から出力された変位情報J1から、差分ΔL1~差分ΔL8で示される変位を打ち消す補正情報J2を生成する。
具体的には、X軸方向の第1脚部822の変位量Xaを打ち消す補正変位量Xhと、線分LN8のX軸に対する傾き角度θyを打ち消してX軸と平行にする傾きの補正角度θhとを、次の(式1)(式2)によって生成し、補正情報J2として出力する。
Xh=-Xa ・・・ (式1)
θh=-θy ・・・ (式2)
【0043】
制御装置93の載置動作制御部933は、ロボットハンド装置92の駆動部921の動作を制御する。
この制御は、記憶部934に予め記憶された、ツール81をツール置台91へ載置する載置プログラムによって実行される。
載置プログラムにおいて、ツール81の正規状態における中心軸線CL8L,CL8Rの位置はXY座標で示される。また、ツール81を正規状態で把持するクランパ922の鉛直線まわりの回動角度は、中心軸線CL8LまわりのX軸に対する回動角度で示される。
【0044】
例えば、ツール81の正規状態における第1フィンガー部2Lの中心軸線CL8Lの位置のXY座標は(Xk,Yk)で設定され、クランパ922の(Xk,Yk)位置でのX軸に対する回動角度は角度θkと設定される。
この場合、載置動作制御部933は、クランパ922が把持したツール81を正規状態に位置させる際の座標を、補正情報生成部932から出力された補正情報J2に基づいて補正する。
詳しくは、補正前の正規状態のXY座標(Xk,Yk)を、X座標に補正変位量Xhを加算して〔(Xk+Xh),Yk〕とする。すなわち、上記例において、正規状態の中心軸線CL8Lの位置のXY座標(Xk,Yk)は、補正によって(式1)から、座標〔(Xk-Xa),Yk〕となる。
【0045】
また、載置動作制御部933は、クランパ922が把持したツール81を正規状態の傾きとする角度θkを、補正情報生成部932から出力された補正情報J2に基づいて補正する。
詳しくは、補正前の正規状態の角度θkを、補正角度θhを加算して角度(θk+θh)とする。すなわち、上記のθh=-θyとなる例において、正規状態の回動角度である角度θkは、補正によって(式2)から、角度(θk-θy)となる。
【0046】
これにより、載置動作制御部933の制御によってロボットハンド装置92が実行するツール81のツール置台91への載置動作において、今回の動作で生じたツール81の水平方向のずれ(変位)及びX軸方向に対する傾きが、次回の載置動作で補正される。すなわち、ツール置台システム91STは、制御装置93が、ツール81が載置される際のセンサ61~68の測定結果に基づき、ツール81の次の載置動作において、測定結果で得られた変位或いは傾きを打ち消すようにロボットハンド装置92の動作を制御する。同様に、次回の載置動作で生じたずれ(変位)或いはX軸方向に対する傾きは、次々回の載置動作で補正される。
そのため、ツール置台システム91STにおいて、ツール81は、常に正規状態でツール置台91に載置される可能性が高く、ツール81及びツール置台91は破損しにくい。
【0047】
以上詳述した実施例は、上述の構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0048】
柱部541~548との距離を測定するセンサ61~68は、非接触型について説明したが接触型であってもよい。
付勢部551~558のスライダ531~538を付勢する付勢力は、ツール81がロボットハンド装置92で把持されている場合の、正規状態ではない非正規状態のツール81には抗することなく柱部541~548が押される程度に設定される。
また、付勢部551~558のスライダ531~538を付勢する付勢力は、ロボットハンド装置92の把持が解除した状態で、非正規状態のツール81を正規状態に移動させる力を有するように設定されていてもよい。
【0049】
ツール81として第1脚部822及び第2脚部823を有するものを説明したが、ツール81が一方の第1脚部822のみを有し、ツール置台91及びツール置台システム91STが、第1脚部822と係合する第1フィンガー部2Lのみを備えたものであってもよい。
この場合、制御装置93は、ツール81がツール置台91に載置される際の傾きを求めるものではなく、変位量のみを求め、その変位量を打ち消すようにロボットハンド装置92の次の載置動作を制御する。
この構成は、ツール81の形状が傾きによらず一定の場合、或いはツール81の傾きが載置に影響を与えない場合、などに用いることができる。
【0050】
ツール置台91として、第1フィンガー部2Lが、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ対向配置された合計4つの柱部541~548を備えるものを説明したが、ツール置台91はこの構成に限定されない。
例えば、第1脚部822を第1フィンガー部2Lへ係合させる構成において、第1脚部822のX軸方向の左方(-側)への移動のみを許容し、X軸方向の右方及びY軸方向の移動を例えば機械的に拘束させるようにする場合がある。この構成においては、第1フィンガー部2Lは、一つの柱部542及び柱部542の変位を測定するセンサ62を有する一つのフィンガーユニット2L2のみを備えていればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ベース
1a 上面
11L,11R 基準柱
2L 第1フィンガー部
2L1~2L4 フィンガーユニット
2R 第2フィンガー部
2R1~2R4 フィンガーユニット
3 台座部
51~58 リニア移動体
521~528 レール
531~538 スライダ
531a~538a 腕部
541~548 柱部
551~558 付勢部
551a~558a プッシュバー
61~68 センサ
81 ツール
821 ツールベース
821a 下面
822 第1脚部
822a ガイド部
823 第2脚部
823a ガイド部
91 ツール置台
91ST ツール置台システム
92 ロボットハンド装置
921 駆動部
922 クランパ
93 制御装置
931 変位取得部
932 補正情報生成部
933 載置動作制御部
934 記憶部
CL1L,CL1R 仮想軸線
CL8L,CL8R 中心軸線
FL 設置面
J1 変位情報
J2 補正情報
La,Lb,La21,La22 距離
LN8 線分
Lp ピッチ
Ls2 光ビーム
S1~S8 測定信号
Xa,Xb,Ya,Yb 変位量
Xh 補正変位量
Xk,Yk 座標
VL,VR 空間
ΔL1~ΔL8 差分(変位)
θh 補正角度
θk 角度
θy 傾き角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9