(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】流路切替装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20240409BHJP
F16K 11/02 20060101ALI20240409BHJP
F15B 11/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
F16K27/00 B
F16K11/02 Z
F15B11/00 D
(21)【出願番号】P 2020125898
(22)【出願日】2020-07-23
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 友宏
(72)【発明者】
【氏名】梯 伸治
(72)【発明者】
【氏名】國方 裕平
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/024771(WO,A1)
【文献】実開平2-146262(JP,U)
【文献】特開2020-139568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が循環する流体回路(50)の流路構成を切り替える流路切替装置であって、
前記流体回路に接続されると共に、一面が開放された溝状の第1層側流路(11)が形成された第1層側流路形成部(10)と、前記第1層側流路と複数の箇所で連通すると同時に、前記流体回路に接続され、他の一面が開放された溝状の第2層側流路(16)が形成された第2層側流路形成部(15)を有する本体部材(5)と、
前記第1層側流路と前記第2層側流路とを連通する連通路(75a、75b)を通過する流体の流量を調整する複数の弁体部(73)を少なくとも連動して駆動させる駆動部(30)と、
前記第1層側流路形成部の表面に対して取り付けられる第1層側蓋部材(20)と、
前記第2層側流路形成部の表面に対して取り付けられる第2層側蓋部材(25)と、を備え、
前記第1層側流路形成部、前記第2層側流路形成部、及び前記駆動部がこの順番で積層配置されており、
前記第1層側蓋部材は、前記第1層側流路形成部の表面に取り付けた場合に、前記第1層側流路の開放部分を閉塞するように配置される複数の閉塞部(21)と、前記第1層側流路における開放部分の外縁に沿って配置され、前記本体部材の側と外部側とを連通するように形成された開口部(23)と、を有している流路切替装置。
【請求項2】
前記閉塞部(21)は、前記第1層側流路(11)の開放部分を部分ごとに閉塞しており、
前記第1層側蓋部材(20)は、複数の前記閉塞部によって、前記第1層側流路の開放部分の全てを閉塞するように配置され、
複数の前記閉塞部は、前記開口部(23)によって分割されている請求項1に記載の流路切替装置。
【請求項3】
前記第1層側流路の内部には、溝状に形成された前記第1層側流路を幅方向に横断すると共に、前記第1層側流路形成部の一面に沿って伸びる接合面(12b)を備える補強部(12)が形成されており、
前記接合面には、前記第1層側蓋部材(20)における少なくとも2つの前記閉塞部(21)の外縁が接合されている請求項2に記載の流路切替装置。
【請求項4】
前記補強部(12)には、前記第1層側流路(11)を流れる流体が流通可能な流路穴(12a)が形成され、
前記第1層側流路における前記補強部と隣接する位置には、流体の流れによって移動して前記流路穴を閉塞可能な弁体(62)を収容する弁体収容部(61)が形成されており、
前記弁体収容部の内部には、前記流路穴から離れる方向への前記弁体の移動を規制する規制片(63、64)が配置されている請求項3に記載の流路切替装置。
【請求項5】
前記第2層側蓋部材(25)は、前記第2層側流路形成部(15)の表面に取り付けた場合に、前記第2層側流路(16)の開放部分を閉塞するように配置される複数の閉塞部(26)と、前記第2層側流路における開放部分の外縁に沿って配置され、前記本体部材(5)の側と外部側とを連通するように形成された開口部(27)と、を有している請求項1ないし4の何れか一つに記載の流路切替装置。
【請求項6】
前記駆動部(30)は、駆動源であるモータ(32)を有しており、
前記第2層側流路形成部(15)の表面において、前記第2層側蓋部材(25)を取り付けた際に前記開口部(23)の内側となる位置に、前記本体部材(5)に対して前記モータを保持する為のモータ保持部(17)が形成されている請求項5に記載の流路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体回路における流路構成を切り替える流路切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体回路においては、用途に応じて流路構成を実現する為に、複数の切替弁を配置している。例えば、特許文献1に記載された給水ポンプ装置では、第1切替バルブ~第5切替バルブが、流路構成を切り替える為に採用されている。特許文献1においては、第1切替バルブ~第5切替バルブの作動を制御することによって、5つのパターンの流路構成に切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ここで、特許文献1において、第1切替バルブ~第5切替バルブは、それぞれ多数の配管、継手を介して接続されている。この為、流路を切り替える構成が大型化してしまい、装置全体としてのスペース及び重量に影響を及ぼしてしまう。
【0005】
又、特許文献1では、第1切替バルブ~第5切替バルブのそれぞれに対して、切替動作に係る駆動部が必要になる。この為、各切替バルブの駆動部も考慮すると、特許文献1では、更に、流路を切り替える構成のスペースや重量に関して改善する余地があると考えられる。
【0006】
そして、流路を切り替える構成をコンパクトに配置して流路切替装置を製造する場合、各構成の配置に精度が要求される為、製造時における作業性を低下させてしまうことが想定される。例えば、流路切替装置を製造する際における部材同士の接合精度によっては、流路内からの流体の漏れが生じることが考えられる。この流体の漏れに対処する為に、製造時における作業性が低下してしまうことが想定される。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、コンパクトな構成で流体回路における流路構成を切り替えることができる流路切替装置に関し、製造時における作業効率を向上させることができる流体回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本開示の一態様に係る流路切替装置は、流体が循環する流体回路(50)の流路構成を切り替える流路切替装置であって、本体部材(5)と、駆動部(30)と、第1層側蓋部材(20)と、第2層側蓋部材(25)と、を備える。
【0009】
本体部材は、第1層側流路形成部(10)と、第2層側流路形成部(15)を有する。第1層側流路形成部は、流体回路に接続されると共に、一面が開放された溝状の第1層側流路(11)が形成されている。第2層側流路形成部は、第1層側流路と複数の箇所で連通すると同時に、流体回路に接続され、他の一面が開放された溝状の第2層側流路(16)が形成されている。
【0010】
駆動部は、第1層側流路と第2層側流路とを連通する連通路(75a、75b)を通過する流体の流量を調整する複数の弁体部(73)を少なくとも連動して駆動させる。第1層側蓋部材は、第1層側流路形成部の表面に対して配設される。第2層側蓋部材は、第2層側流路形成部の表面に対して配設される。そして、第1層側流路形成部、第2層側流路形成部、及び駆動部がこの順番で積層配置されている。
【0011】
第1層側蓋部材は、複数の閉塞部(21)と、開口部(23)と、を有している。閉塞部は、第1層側流路形成部の表面に取り付けた場合に、第1層側流路の開放部分を閉塞するように配置される。開口部は、第1層側流路における開放部分の外縁に沿って配置され、本体部材の側と外部側とを連通するように形成されている。
【0012】
流路切替装置によれば、第1層側流路形成部、第2層側流路形成部、及び駆動部がこの順番で積層配置されている為、コンパクトな構成で流体回路における流路構成を切り替えることができる。
【0013】
又、第1層側蓋部材は、複数の閉塞部と、開口部とを有している為、第1層側蓋部材の閉塞部と第1層側流路形成部との間から第1層側流路を流れる流体が漏れる位置を容易に特定することができる。この為、流路切替装置によれば、漏れ検査における流体の漏れ検出及び閉塞部の再接合に関する作業性を向上させることができ、流路切替装置の製造時における作業性を向上させることができる。
【0014】
尚、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る流路切替装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る流路切替装置の側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る熱媒体回路の全体構成図である。
【
図4】流路切替装置の第1層側流路形成部に関する平面図である。
【
図5】流路切替装置の第1層側流路の構成に関する平面図である。
【
図6】流路切替装置の第2層側流路形成部に関する平面図である。
【
図7】流路切替装置の第2層側流路の構成に関する平面図である。
【
図8】
図4、
図6におけるVIII-VIII断面の断面図である。
【
図9】流路切替装置における熱媒体逆止弁の構成を示す説明図である。
【
図10】第1実施形態に係る流路切替装置における熱媒体三方弁の概略構成を示す説明図である。
【
図11】第2実施形態に係る流路切替装置における熱媒体開閉弁の概略構成を示す説明図である。
【
図12】第2実施形態に係る流路切替装置における内部構成の一例を示す断面図である。
【
図13】第3実施形態に係る流路切替装置における熱媒体切替弁の概略構成を示す説明図である。
【
図14】第3実施形態に係る流路切替装置における内部構成の一例を示す断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る流路切替装置の第1層側流路形成部に関する平面図である。
【
図16】第4実施形態に係る流路切替装置の第2総側流路形成部に関する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る流路切替装置1の概略構成について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る流路切替装置1は、流体回路としての熱媒体回路50の一部を構成しており、後述するように、熱媒体回路50における流路構成を切り替える。
【0018】
第1実施形態に係る熱媒体回路50は、走行用の駆動力をモータジェネレータから得る電気自動車に搭載されている。熱媒体回路50は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うと共に、温度調整対象である車載機器(例えば、発熱機器54及びバッテリ57)の温度調整を行う際に利用される。つまり、第1実施形態に係る熱媒体回路50は、電気自動車において、車載機器の温度調整機能付きの車両用空調装置の一部を構成している。
【0019】
第1実施形態における熱媒体回路50では、作動時に発熱する発熱機器54や、充放電時に発熱するバッテリ57を温度調整の対象としている。発熱機器54には、複数の構成機器が含まれている。発熱機器54の構成機器としては、具体的に、モータジェネレータ、電力制御ユニット(所謂、PCU)、先進運転支援システム(所謂、ADAS)用の制御装置等を挙げることができる。
【0020】
モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力し、車両の減速時等には回生電力を発生させる。PCUは、各車載機器へ供給される電力を適切に制御するために変圧器、周波数変換器等を一体化させたものである。
【0021】
そして、バッテリ57は、モータジェネレータ等へ供給される電力を蓄える二次電池(例えば、リチウムイオン電池)である。バッテリ57は、複数の電池セルを直列或いは並列に接続することによって形成された組電池である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態に係る流路切替装置1には、熱媒体回路50の構成機器が接続されている。具体的には、流路切替装置1には、熱媒体配管を介して、ヒータコア51、熱媒体冷媒熱交換器52、加熱装置53、発熱機器54、ラジエータ55、チラー56、バッテリ57、第1熱媒体ポンプ58a、第2熱媒体ポンプ58bが接続されている。
【0023】
そして、流路切替装置1は、
図2に示すように、第1層側蓋部材20と、本体部材5と、第2層側蓋部材25と、駆動部30を有している。流路切替装置1において、第1層側蓋部材20、本体部材5、第2層側蓋部材25、駆動部30の順番で、積層方向Lに従って積層配置されている。
【0024】
図1、
図2に示すように、第1実施形態に係る流路切替装置1において、本体部材5は、合成樹脂によって直方体を為すブロック状に形成されている。そして、本体部材5の一面(
図2中の下面)側には、一面側が開放された溝状の第1層側流路11が形成されている。
【0025】
図2、
図4、
図8等に示すように、第1層側流路11は、本体部材5の一面に対して第1層側蓋部材20を接合することで、熱媒体回路50の熱媒体が流通する管路として機能する。従って、本体部材5における一面側を構成する部分は、第1層側流路形成部10を構成する。
【0026】
そして、本体部材5の一面の裏側に位置する他面(
図2中の上面)側には、他面側が開放された溝状の第2層側流路16が形成されている。第2層側流路16は、
図2、
図8に示すように、本体部材5の他面に対して第2層側蓋部材25等を接合することで、熱媒体回路50の熱媒体が流通する熱媒体通路として機能する。従って、本体部材5における他面側を構成する部分は、第2層側流路形成部15を構成する。
【0027】
又、第2層側流路16の内部には、複数の弁体部73が配置されている。第1実施形態においては、後述する第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70c、第1熱媒体開閉弁80a、第2熱媒体開閉弁80bの弁体部73が第2層側流路16の内部に配置されている。各弁体部73は、第1層側流路11及び第2層側流路16における熱媒体の流れを切り替え、熱媒体回路50の流路構成を変更する。
【0028】
尚、本体部材5には、一面側と他面側を貫通するように形成された連通部13が予め定められた複数の箇所に形成されている。この連通部は、第1層側流路11と第2層側流路16の間を熱媒体の流通可能に接続しており、後述する第1連通部13a、第2連通部13b、第3連通部13cを含んでいる。
【0029】
図2に示すように、本体部材5の側面には、熱媒体回路50の熱媒体配管が接続される複数の接続口が形成されている。第1実施形態に係る流路切替装置1は、第1接続口35a~第10接続口35jを有しており、熱媒体配管を介して、熱媒体回路50の構成機器が接続される。
【0030】
図2、
図4に示すように、第1層側蓋部材20は、本体部材5における第1層側流路形成部10の表面に取り付けられ、合成樹脂にて板状に形成された複数の閉塞部21と、開口部23とを有している。第1実施形態に係る第1層側蓋部材20は、第1閉塞部21a~第5閉塞部21eを有している。第1層側蓋部材20の各閉塞部21は、本体部材5の一面(
図2における本体部材5の下面)に対して、振動溶着やレーザー溶着等によって接合される。
【0031】
これにより、溝状の第1層側流路11における開放部分が第1層側蓋部材20の閉塞部21によって閉塞される為、第1層側流路11は熱媒体が流通する管路として機能する。そして、各閉塞部21の外縁は、第1層側流路形成部10の表面において、第1層側流路11の開放部分の外縁に沿って、第1層側流路11の外側に位置している。
【0032】
第1層側蓋部材20の開口部23は、第1層側蓋部材20を厚み方向に貫通し、本体部材5側と、流路切替装置1の外部とを連通するように形成された開口部である。開口部23は、第1層側蓋部材20における各閉塞部21の外縁に沿って配置されている為、第1層側流路11における開放部分の外縁に沿う位置に配置されている。
【0033】
図2、
図6に示すように、第2層側蓋部材25は、本体部材5における第2層側流路形成部15の表面に取り付けられ、合成樹脂にて板状に形成された複数の閉塞部26と、開口部27とを有している。第1実施形態に係る第2層側蓋部材25は、第1閉塞部26a~第4閉塞部26dを有している。第2層側蓋部材25の各閉塞部26は、本体部材5の他面(
図2における本体部材5の下面)に対して、振動溶着やレーザー溶着等によって接合される。
【0034】
これにより、溝状の第2層側流路16における開放部分が第2層側蓋部材25の閉塞部26によって閉塞される為、第2層側流路16は熱媒体が流通する管路として機能する。そして、各閉塞部26の外縁は、第2層側流路形成部15の表面において、第2層側流路形成部15の開放部分の外縁に沿って、第2層側流路形成部15の外側に位置している。
【0035】
第2層側蓋部材25の開口部27は、第2層側蓋部材25を厚み方向に貫通し、本体部材5側と、流路切替装置1の外部とを連通するように形成された開口部である。開口部27は、第2層側蓋部材25における各閉塞部26の外縁に沿って配置されている為、第2層側流路16における開放部分の外縁に沿う位置に配置されている。
【0036】
又、
図2等に示すように、駆動部30は、ブロック状の本体部材5の他面側(即ち、第2層側流路形成部15の表面側)に配置されている。駆動部30は、電磁モータ32と、リンク円板33と、リンクレバー34と、図示しない駆動制御部と、をケーシング31の内部に収容して構成されている。ケーシング31は、電磁モータ32、リンク円板33、リンクレバー34、駆動制御部を、塵や水から保護している。
【0037】
電磁モータ32は、電力供給によって駆動する駆動軸32aを有しており、後述する第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70c、第1熱媒体開閉弁80a、第2熱媒体開閉弁80bの弁体部73の駆動源として機能する。駆動部30におけるケーシング31の内部において、電磁モータ32は、予め定められた位置となるように、第2層側流路形成部15の表面に形成されたモータ保持部17に対して取り付けられている。
【0038】
そして、リンク円板33及びリンクレバー34は、電磁モータ32で生じた駆動力を各弁体部73に伝達する為の伝達機構を構成している。
【0039】
リンク円板33は、電磁モータ32の駆動軸32aに対して取り付けられており、ケーシング31の内部に配置された円板状の部材である。リンクレバー34は、複数の弁体部73に対応するように、リンク円板33に対して回転可能に取り付けられている。各リンクレバー34の一端は、それぞれ、弁体部73の回転軸74aに取り付けられている。
【0040】
従って、リンク円板33に電磁モータ32の駆動力が伝達されて回転することで、各リンクレバー34を回転させることができ、弁体部73を回転軸74a周りに回転させることができる。これにより、駆動部30は、流路切替装置1に配設されている複数の弁体部73を連動して動作させることができる。
【0041】
尚、駆動制御部は、流路切替装置1の動作を制御する為の電子制御ユニットである。具体的には、駆動制御部は、マイクロコントローラを有しており、図示しない制御装置からの制御信号に従って、電磁モータ32及び伝達機構の作動を制御する。
【0042】
次に、第1実施形態における第1層側流路11及び第2層側流路16の構成について、
図3~
図7を参照して説明する。上述したように、熱媒体回路50は、熱媒体としての冷却水を循環させる熱媒体循環回路である。第1実施形態では、車室内の空調及び車載機器(発熱機器54及びバッテリ57)の温度調整を行う為に、後述するように熱媒体回路50の流路構成を切り替えている。熱媒体回路50を循環する熱媒体として、非圧縮性流体であるエチレングリコール水溶液が採用されている。
【0043】
図1等に示すように、第1接続口35aには、熱媒体配管を介して、熱媒体冷媒熱交換器52における熱媒体通路52bの流入口が接続されている。ここで、熱媒体冷媒熱交換器52は、熱媒体回路50の構成機器であると同時に、冷凍サイクル100の構成機器の1つである。熱媒体冷媒熱交換器52は、冷凍サイクル100の冷媒を流通させる冷媒通路52aと、熱媒体回路50の熱媒体を流通させる熱媒体通路52bを有している。
【0044】
熱媒体冷媒熱交換器52は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。これにより、冷媒通路52aを流通する冷媒と熱媒体通路52bを流通する熱媒体は、互いに熱交換することができる。
【0045】
第1実施形態においては、冷凍サイクル100の高圧冷媒が熱媒体冷媒熱交換器52の冷媒通路52aを流通する為、熱媒体冷媒熱交換器52は、高圧冷媒の熱を熱媒体通路52bの熱媒体へ放熱させる放熱器として機能する。この結果、熱媒体冷媒熱交換器52は高圧冷媒の熱で熱媒体を加熱することができる。
【0046】
そして、熱媒体冷媒熱交換器52における熱媒体通路52bの流出口には、熱媒体配管を介して、加熱装置53が接続されている。加熱装置53は、加熱用通路及び発熱部を有しており、図示しない制御装置から供給される電力によって、ヒータコア51へ流入する熱媒体を加熱する。加熱装置53の発熱量は、制御装置からの電力を制御することで任意に調整することができる。
【0047】
加熱装置53の加熱用通路は、熱媒体を流通させる通路である。発熱部は、電力を供給
されることによって、加熱用通路を流通する熱媒体を加熱する。発熱部としては、具体的に、PTC素子やニクロム線を採用することができる。
【0048】
加熱装置53における加熱用通路の出口側には、熱媒体配管を介して、ヒータコア51の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア51は、図示しない室内送風機から送風された送風空気と熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。従って、ヒータコア51は、熱媒体冷媒熱交換器52や加熱装置53等によって加熱された熱媒体の有する熱を熱源として送風空気を加熱することができる。
【0049】
そして、ヒータコア51は、電気自動車に搭載された室内空調ユニットのケーシング内において、冷凍サイクル100を構成する室内蒸発器の下流側に配置されている。ヒータコア51で送風空気を加熱することで、電気自動車の車室内に対する暖房や除湿暖房を実現することができる。ヒータコア51の熱媒体出口側には、熱媒体配管を介して、第3接続口35cが接続されている。
図7に示すように、第3接続口35cは、第2層側流路16の一端部を構成する。
【0050】
第1層側流路11の一端部を構成する第3接続口35cには、熱媒体配管を介して、発熱機器54の熱媒体通路54aが接続されている。発熱機器54の熱媒体通路54aは、発熱機器54の外殻を形成するハウジング部或いはケースの内部等に形成されている。
【0051】
発熱機器54の熱媒体通路54aは、熱媒体を流通させることで発熱機器54の温度を調整する為の熱媒体通路である。換言すると、発熱機器54の熱媒体通路54aは、熱媒体回路50を循環する熱媒体との熱交換によって、発熱機器54の温度調整を行う温度調整部として機能する。
【0052】
発熱機器54における熱媒体通路54aの他端側には、熱媒体配管を介して、第4接続口35dが接続されている。第4接続口35dは、
図7に示すように、第2層側流路16の一端部を構成している。
【0053】
そして、第2層側流路16の一端部を構成する第5接続口35eには、熱媒体配管を介して、バッテリ57における熱媒体通路57aの流出口が接続されている。バッテリ57は、モータジェネレータ等へ供給される電力を蓄える二次電池(例えば、リチウムイオン電池)である。バッテリ57は、複数の電池セルを直列或いは並列に接続することによって形成された組電池である。
【0054】
バッテリ57の熱媒体通路57aは、熱媒体を流通させることによって、バッテリ57の温度調整を行う為の熱媒体通路であり、機器用熱交換部を構成している。即ち、バッテリ57の熱媒体通路57aは、熱媒体回路50の熱媒体が流出入可能に接続されている。バッテリ57における熱媒体通路57aの流入口には、熱媒体配管を介して、チラー56における熱媒体通路56bの流出口が接続されている。
【0055】
チラー56は、熱媒体冷媒熱交換器によって構成されており、冷凍サイクル100の低圧冷媒が通過する冷媒通路56aと、熱媒体回路50を循環する熱媒体が通過する熱媒体通路56bを有している。チラー56は、熱媒体通路52bを流通する熱媒体の熱を低圧冷媒に吸熱させる吸熱器として機能し、熱媒体通路56bを通過する熱媒体を冷却することができる。
【0056】
チラー56における熱媒体通路56bの流入口には、熱媒体配管を介して、第6接続口35fが接続されている。
図5に示すように、第6接続口35fは、第1層側流路11の一端部を構成している。
【0057】
そして、第2層側流路16の一端部を構成している第7接続口35gには、熱媒体配管を介して、第2熱媒体ポンプ58bの吐出口が接続されている。第2熱媒体ポンプ58bは、図示しない制御装置から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。従って、第2熱媒体ポンプ58bは、熱媒体を第7接続口35gへ向けて圧送する。第2熱媒体ポンプ58bの吸込口は、熱媒体配管を介して、第2リザーブタンク59bの流出口に接続されている。
【0058】
第2リザーブタンク59bは、熱媒体回路50で余剰となっている熱媒体を貯留する熱媒体用の貯留部の一つである。第2リザーブタンク59bは、第2熱媒体ポンプ58bを経由する流路構成の場合において、熱媒体回路50を循環する熱媒体の液量低下を抑制している。第2リザーブタンク59bは、熱媒体回路50内の熱媒体量が不足した場合に、熱媒体を補給する為の熱媒体供給口を有している。
【0059】
第2リザーブタンク59bの流入口には、柔軟性を有する第2ホース部材36bを介して、第1層側蓋部材20に形成された第2取付口22bが接続されている。第2取付口22bは、第1層側蓋部材20に形成されており、第1層側流路11と連通している。従って、第2リザーブタンク59bには、第2ホース部材36bを介して、第1層側流路11を流れる熱媒体が供給される。
【0060】
又、第1層側流路11の一端部を構成している第8接続部90hには、熱媒体配管を介して、第1熱媒体ポンプ58aの吐出口が接続されている。第1熱媒体ポンプ58aは、上述した第2熱媒体ポンプ58bと同様の電動ポンプである。従って、第1熱媒体ポンプ58aは、熱媒体を第8接続口35hへ向けて圧送する。第1熱媒体ポンプ58aの吸込口は、熱媒体配管を介して、第1リザーブタンク59aの流出口に接続されている。
【0061】
第1リザーブタンク59aは、熱媒体回路50で余剰となっている熱媒体を貯留する熱媒体用の貯留部の一つである。第1リザーブタンク59aは、第1熱媒体ポンプ58aを経由する流路構成の場合において、熱媒体回路50を循環する熱媒体の液量低下を抑制している。第1リザーブタンク59a、第2リザーブタンク59bは、熱媒体回路50の流路構成によって使い分けられる。第1リザーブタンク59aは、熱媒体回路50内の熱媒体量が不足した場合に、熱媒体を補給する為の熱媒体供給口を有している。
【0062】
第1リザーブタンク59aの流入口には、柔軟性を有する第1ホース部材36aを介して、第1層側蓋部材20に形成された第1取付口22aが接続されている。第1取付口22aは、第1層側蓋部材20に形成されており、第1層側流路11と連通している。従って、第1リザーブタンク59aには、第1ホース部材36aを介して、第1層側流路11を流れる熱媒体が供給される。
【0063】
そして、第1層側流路11の一端部を構成している第9接続口35iには、熱媒体配管を介して、ラジエータ55の流出口が接続されている。ラジエータ55は、内部を流通する熱媒体と外気とを熱交換させる熱交換器である。従って、ラジエータ55は、内部を通過する熱媒体の熱を外気に放熱する。
【0064】
ラジエータ55は、電気自動車における駆動装置室内の前方側に配置されている。この為、ラジエータ55を、室外熱交換器と一体的に構成することも可能である。ラジエータ55の流入口には、熱媒体配管を介して、第10接続口35jが接続されている。
図5に示すように、第10接続口35jは、第1層側流路11の一端部を構成する。
【0065】
図3、
図4に示すように、第1接続口35aから伸びる第1層側流路11は、第1熱媒体三方弁70aの流出口の一方から伸びる第1層側流路11及び第1熱媒体逆止弁60aの流出口から伸びる第1層側流路11と接続され、第1接続部90aを構成している。第1熱媒体逆止弁60aは、熱媒体が後述する第11接続部90k側から第1接続部90a側へ流れることを許容し、第1接続部90a側から第11接続部90k側へ流れることを禁止する。
【0066】
又、第6接続口35fから伸びる第1層側流路11は、第1熱媒体三方弁70aの流出口の他方から伸びる第1層側流路11と、第4熱媒体逆止弁60dの流出口から伸びる第1層側流路11と接続され、第8接続部90hを構成している。第4熱媒体逆止弁60dは、熱媒体が後述する第10接続部90j側から第8接続部90h側へ流れることを許容し、第8接続部90h側から第10接続部90j側へ流れることを禁止する。
【0067】
そして、
図3、
図7に示すように、第7接続口35gから伸びる第2層側流路16は、第1熱媒体三方弁70aの流入口に接続されている。従って、第1熱媒体三方弁70aは、第1熱媒体ポンプ58aから吐出された熱媒体のうち、流出口の一方側から流出させる熱媒体流量と、流出口の他方側から流出させる熱媒体流量との流量比を調整可能な三方式の流量調整弁である。第1熱媒体三方弁70aは、図示しない制御装置によって駆動部30を制御することでその作動が制御される。
【0068】
更に、第1熱媒体三方弁70aは、第1熱媒体ポンプ58aから吐出された熱媒体の全流量を、二つの流出口の何れか一方へ流出させることができる。これにより、第1熱媒体三方弁70aは、熱媒体回路50の流路構成を切り替えることができる。
【0069】
第1熱媒体三方弁70aの流入口から流入した熱媒体は、第1熱媒体三方弁70a内部を流出口へ向かう過程で、連通路を通過して、第2層側流路16から第1層側流路11へ流出する。第1熱媒体三方弁70aを含む熱媒体三方弁70の具体的な構成については、後に図面を参照して説明する。
【0070】
そして、
図3、
図7に示すように、第3接続口35cから伸びる第2層側流路16は、第2熱媒体三方弁70bの流入口に接続されている。従って、第2熱媒体三方弁70bは、ヒータコア51から流出した熱媒体のうち、流出口の一方側から流出させる熱媒体流量と、流出口の他方側から流出させる熱媒体流量との流量比を調整できる。
【0071】
更に、第2熱媒体三方弁70bは、ヒータコア51から流出した熱媒体の全流量を、二つの流出口の何れか一方へ流出させることができる。これにより、第2熱媒体三方弁70bは、熱媒体回路50の流路構成を切り替えることができる。
【0072】
第2熱媒体三方弁70bの流入口から流入した熱媒体は、第2熱媒体三方弁70b内部を流出口へ向かう過程で、連通路を通過して、第2層側流路16から第1層側流路11へ流出する。
【0073】
図3、
図5に示すように、第2接続口35bから伸びる第1層側流路11は、第2熱媒体逆止弁60bの流出口から伸びる第1層側流路11と、第2熱媒体三方弁70bの流出口の一方から伸びる第1層側流路11に接続されており、第5接続部90eを構成する。第2熱媒体逆止弁60bは、熱媒体が後述する第11接続部90k側から第5接続部90e側へ流れることを許容し、第5接続部90e側から第11接続部90k側へ流れることを禁止する。
【0074】
ここで、第2熱媒体三方弁70bの他方の流出口から伸びる第1層側流路11は、第3熱媒体逆止弁60cの流出口から伸びる第1層側流路11と、第5熱媒体逆止弁60eの流出口から伸びる第1層側流路11に接続され、第2接続部90bを構成している。第3熱媒体逆止弁60cは、熱媒体が第7接続部90g側から第6接続部90f側へ流れることを許容し、第6接続部90f側から第7接続部90g側へ流れることを禁止する。
【0075】
又、
図4に示すように、第2接続部90bを含む第1層側流路11の開放部分は、第1層側蓋部材20の第2閉塞部21bによって閉塞されている。第2閉塞部21bには、板状の第2閉塞部21bを厚み方向に貫通する第1取付口22aが形成されている。
【0076】
第1取付口22aには、可撓性を有するホース等で構成された第1ホース部材36aの一端部が接続される。そして、第1ホース部材36aの他端部は、上述したように、第1リザーブタンク59aの流入口に接続される。これにより、第1層側流路11を流れる熱媒体が、第1ホース部材36aを介して、第1リザーブタンク59aへ供給される。
【0077】
図3に示すように、第2熱媒体三方弁70bの他方の流出口から伸びる第1層側流路11と、第3熱媒体逆止弁60cの流出口から伸びる第1層側流路11に対して、第1ホース部材36aが第1取付口22aにて接続されている。従って、第1取付口22aは、第6接続部90fを構成している。
【0078】
そして、
図7に示すように、第4接続口35dから伸びる第2層側流路16は、第1熱媒体開閉弁80aの流入出口の一方から伸びる第2層側流路16と接続されると共に、第1連通部13aを有している。ここで、第1連通部13aを含む連通部13は、第1層側流路11と第2層側流路16との間において、熱媒体の流出入が可能なように連通する開口部である。
図5に示すように、第1連通部13aが形成された第1層側流路11は、第5熱媒体逆止弁60eの流入口から伸びている。
【0079】
つまり、第4接続口35dから伸びる第2層側流路16は、第1熱媒体開閉弁80aの流入出口の一方から伸びる第2層側流路16と、第1連通部13aから伸びる第2層側流路16と接続され、第4接続部90dを構成している。第5熱媒体逆止弁60eは、熱媒体が第4接続部90d側から後述する第2接続部90b側へ流れることを許容し、第2接続部90b側から第4接続部90d側へ流れることを禁止する。
【0080】
第1熱媒体開閉弁80aは、第1層側流路11と第2層側流路16を連通する連通路を有しており、弁体部73の動作によって連通路を開閉して、流入出口の一方から他方への熱媒体の流れを制御している。従って、第1熱媒体開閉弁80aの一方の流入出口から流入した熱媒体は、第1熱媒体開閉弁80aの内部を他方の流入出口へ向かう過程で、連通路を通過して、第2層側流路16から第1層側流路11へ流出する。
【0081】
図5に示すように、第1熱媒体開閉弁80aの流入出口の他方から伸びる第1層側流路11は、第2熱媒体開閉弁80bの流入出口の他方から伸びる第1層側流路11に接続されると共に、第3連通部13cを有している。
【0082】
図3、
図7に示すように、第5接続口35eから伸びる第2層側流路16は、第2熱媒体開閉弁80bの流入出口の一方から伸びる第2層側流路16と接続されると共に、第2連通部13bを有している。第2連通部13bが形成された第1層側流路11は、
図5に示すように、第3熱媒体逆止弁60cの流入口から伸びている。
【0083】
つまり、第5接続口35eから伸びる第2層側流路16は、第2熱媒体開閉弁80bの流入出口の一方から伸びる第2層側流路16と、第2連通部13bから伸びる第2層側流路16と接続され、第7接続部90gを構成する。
【0084】
そして、第8接続口35hから伸びる第1層側流路11は、第2熱媒体逆止弁60bの流入口から伸びる第1層側流路11と、他の第1層側流路11と接続されることで、第10接続部90j及び第11接続部90kを構成している。
【0085】
具体的には、第10接続部90jは、第8接続口35hから伸びる第1層側流路11と、第2熱媒体逆止弁60bの流入口から伸びる第1層側流路11と、第4熱媒体逆止弁60dの流入口から伸びる第1層側流路11によって構成される。
【0086】
又、第11接続部90kは、第8接続口35hから伸びる第1層側流路11と、第2熱媒体逆止弁60bの流入口から伸びる第1層側流路11と、第1熱媒体逆止弁60aの流入口から伸びる第1層側流路11によって構成される。
【0087】
図3、
図5に示すように、第9接続口35iから伸びる第1層側流路11は、第3熱媒体三方弁70cの流出口の一方から伸びる第1層側流路11に接続されている。又、第10接続口35jから伸びる第1層側流路11は、第3熱媒体三方弁70cの流出口の他方から伸びる第1層側流路11に接続されている。
【0088】
又、
図4に示すように、第9接続口35iから伸びる第1層側流路11及び第10接続口35jから伸びる第1層側流路11の開放部分は、第1層側蓋部材20の第4閉塞部21dによって閉塞されている。第4閉塞部21dのうち、第9接続口35iから伸びる第1層側流路11に対応する部分には、板状の第4閉塞部21dを厚み方向に貫通する第2取付口22bが形成されている。
【0089】
第2取付口22bには、可撓性を有するホース等で構成された第2ホース部材36bの一端部が接続される。そして、第2ホース部材36bの他端部は、上述したように、第2リザーブタンク59bの流入口に接続される。
【0090】
つまり、
図3に示すように、第9接続口35iから伸びる第1層側流路11と、第3熱媒体三方弁70cの流出口の一方から伸びる第1層側流路11に対して、第2ホース部材36bが第2取付口22bにて接続されている。従って、第2取付口22bは、第3接続部90cを構成している。
【0091】
ここで、
図3、
図7に示すように、第3熱媒体三方弁70cの流入口から伸びる第2層側流路16には、第3連通部13cが形成されている。第3連通部13cは、上述した第1連通部13a等と同様に、第1層側流路11と第2層側流路16を連通している。この為、第1層側流路形成部10側において、第3連通部13cから伸びる第1層側流路11が伸びている。第3連通部13cから伸びる第1層側流路11は、第1熱媒体開閉弁80aの流入出口の他方から伸びる第1層側流路11と、第2熱媒体開閉弁80bの流入出口の他方から伸びる第1層側流路11に接続され、第9接続部90iを構成している。
【0092】
尚、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eを含む熱媒体逆止弁60、第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70cを含む熱媒体三方弁70の具体的な構成については、後に図面を参照して説明する。又、第1熱媒体開閉弁80a~第2熱媒体開閉弁80bを含む熱媒体開閉弁80についても同様である。
【0093】
第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、複数の熱媒体三方弁70及び熱媒体開閉弁80の動作を制御することで、熱媒体回路50の流路構成を様々な態様に切り替えることができる。
【0094】
例えば、流路切替装置1は、熱媒体回路50にて、第1熱媒体ポンプ58a、第1熱媒体三方弁70a、熱媒体冷媒熱交換器52、加熱装置53、ヒータコア51の順で熱媒体を流通させる。そして、ヒータコア51から流出した熱媒体を、第2熱媒体三方弁70b、発熱機器54、第5熱媒体逆止弁60e、第1リザーブタンク59a、第1熱媒体ポンプ58aへ流して循環させる。
【0095】
この流路構成の熱媒体回路50によれば、発熱機器54の廃熱で加熱された熱媒体をヒータコア51に流入させることができるので、発熱機器54の廃熱を利用した車室内の暖房を実現することができる。
【0096】
又、流路切替装置1は、熱媒体回路50において、第2熱媒体ポンプ58b、第1熱媒体逆止弁60a、熱媒体冷媒熱交換器52、加熱装置53、ヒータコア51、第2熱媒体三方弁70b、発熱機器54の順に、熱媒体を流す。そして、発熱機器54から流出した熱媒体を、第1熱媒体開閉弁80a、第3熱媒体三方弁70c、ラジエータ55、第2リザーブタンク59b、第2熱媒体ポンプ58bの順に流して、熱媒体を循環させる。
【0097】
これにより、発熱機器54、熱媒体冷媒熱交換器52、ヒータコア51、ラジエータ55を経由する熱媒体の循環径路が構成される。冷凍サイクル100における高圧冷媒の有する熱や、発熱機器54の排熱を利用した車室内暖房を実現することができる。又、ラジエータ55にて熱媒体から余剰の熱を外気に放熱することができるので、暖房における温度調整を行うことも可能となる。
【0098】
この時、流路切替装置1は、熱媒体回路50において、第1熱媒体ポンプ58a、第1熱媒体三方弁70a、チラー56、バッテリ57、第3熱媒体逆止弁60c、第1リザーブタンク59a、第1熱媒体ポンプ58aの順に熱媒体を流して循環させる。
【0099】
これにより、チラー56で冷却された熱媒体を利用して、バッテリ57を冷却することができる。そして、発熱機器54、熱媒体冷媒熱交換器52、ヒータコア51を経由する熱媒体の循環径路と、チラー56、バッテリ57を経由する熱媒体の循環径路を並行して構成することができる。従って、この流路構成の熱媒体回路50によれば、発熱機器54の廃熱等を利用した車室内暖房を行うと同時に、冷凍サイクル100を利用したバッテリ57の冷却を行うことができる。
【0100】
更に、流路切替装置1は、第2熱媒体ポンプ58b、第4熱媒体逆止弁60d、チラー56、バッテリ57、第2熱媒体開閉弁80b、第3熱媒体三方弁70c、ラジエータ55、第2リザーブタンク59b、第2熱媒体ポンプ58bの順で熱媒体を循環させる。同時に、第2熱媒体ポンプ58b、発熱機器54、第1熱媒体開閉弁80a、第3熱媒体三方弁70c、ラジエータ55、第2リザーブタンク59b、第2熱媒体ポンプ58bの順で熱媒体を循環させる。
【0101】
この構成の熱媒体回路50によれば、チラー56及びバッテリ57を経由する熱媒体の循環経路と、発熱機器54及びラジエータ55を循環する熱媒体の循環経路を並行して構成することができる。この結果、熱媒体回路50は、冷凍サイクル100によるバッテリ57の冷却を行うと同時に、外気放熱による発熱機器54の冷却を実現できる。
【0102】
続いて、第1実施形態に係る流路切替装置1における第1層側蓋部材20の具体的構成について、
図4、
図5、
図8を参照して説明する。上述したように、第1層側蓋部材20は、本体部材5における第1層側流路形成部10の表面に対して、振動溶着やレーザー溶着等によって取り付けられる。第1層側蓋部材20は、溝状に形成された第1層側流路11の開放部分を閉塞する為の閉塞部21と、開口部23を有している。
【0103】
図4に示すように、第1層側蓋部材20は、閉塞部21として、第1閉塞部21a~第5閉塞部21eを有している。各閉塞部21は、第1層側流路形成部10の表面にて、第1層側流路11の開放部分を閉塞するように取り付けられる。
【0104】
具体的に、
図4、
図5を参照して説明すると、第1層側蓋部材20の第1閉塞部21aは、第1接続口35aから伸びる第1層側流路11及び第6接続口35fから伸びる第1層側流路11の開放部分を閉塞するように取り付けられている。第1閉塞部21aの外縁は、第1接続口35aから伸びる第1層側流路11及び第6接続口35fから伸びる第1層側流路11の開放部分の外側に沿うように配置されている。
【0105】
又、第1閉塞部21aの外縁の一部は、第1熱媒体逆止弁60a及び第4熱媒体逆止弁60dの補強部12に形成された接合面12bに配置される。第1熱媒体逆止弁60a等の構成については後述する。
【0106】
そして、第1層側蓋部材20の第2閉塞部21bは、第2接続口35bから伸びる第1層側流路11及び第2熱媒体三方弁70bの流出口の他方から伸びる第1層側流路11の開放部分を閉塞するように取り付けられている。第2閉塞部21bの外縁は、第2接続口35bから伸びる第1層側流路11及び第2熱媒体三方弁70bの流出口の他方から伸びる第1層側流路11の開放部分の外側に沿うように配置される。又、第2閉塞部21bの外縁の一部は、第2熱媒体逆止弁60bの補強部12に形成された接合面12bに配置される。
【0107】
図4、
図5に示すように、第1層側蓋部材20の第3閉塞部21cは、第8接続口35hから伸びる第1層側流路11の開放部分を閉塞するように取り付けられている。第3閉塞部21cの外縁は、第8接続口35hから伸びる第1層側流路11の開放部分の外側に沿うように配置される。又、第3閉塞部21cの外縁の一部は、第1熱媒体逆止弁60a、第2熱媒体逆止弁60b及び第4熱媒体逆止弁60dの補強部12に形成された接合面に配置される。
【0108】
又、第1層側蓋部材20の第4閉塞部21dは、第9接続口35iから伸びる第1層側流路11及び第10接続口35jから伸びる第1層側流路11の開放部分を閉塞するように取り付けられている。第4閉塞部21dの外縁は、第9接続口35iから伸びる第1層側流路11及び第10接続口35jから伸びる第1層側流路11の開放部分の外側に沿うように配置される。
【0109】
そして、第1層側蓋部材20の第5閉塞部21eは、第3連通部13cから伸びる第1層側流路11の開放部分を閉塞するように取り付けられている。第5閉塞部21eの外縁は、第3連通部13cから伸びる第1層側流路11の開放部分の外側に沿うように配置される。
【0110】
これにより、第1実施形態に係る流路切替装置1において、第1層側流路形成部10に形成された全ての第1層側流路11の開放部分が、第1層側蓋部材20の閉塞部21によって閉塞される。つまり、流路切替装置1は、第1層側流路形成部10に形成された第1層側流路11を、熱媒体が流通する管状の流路として構成することができる。
【0111】
そして、
図8に示すように、第1層側蓋部材20において、開口部23は、第1層側蓋部材20の厚み方向に貫通しており、本体部材5側と流路切替装置1の外部側とを連通するように開口されている。
【0112】
又、
図4に示すように、開口部23は、各第1層側流路11における開放部分の外縁に沿うように配置される。従って、第1層側蓋部材20では、第1閉塞部21a~第5閉塞部21eが開口部23によって分割される。
【0113】
ここで、流路切替装置1を製造する際に、第1層側流路11からの熱媒体の漏れを検出する為の漏れ検査が行われる。漏れ検査において、第1層側流路11からの熱媒体の漏れが検出された場合、第1層側流路11における気密性を担保する為に、第1層側流路形成部10から第1層側蓋部材20を取り外し、再度、気密性を担保できるように取り付ける必要がある。
【0114】
例えば、第1層側流路形成部10の表面と同じサイズの板状の第1層側蓋部材20を採用していた場合には、漏れ検査の際に、第1層側流路11と第1層側蓋部材20との間からの熱媒体の漏れを検出したとしても、漏れの位置を特定することが困難であった。漏れの位置が特定できない為、板状の第1層側蓋部材20全体を取りはずして、再度、第1層側流路形成部10の表面に取り付け直さなければならなかった。
【0115】
この点、第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、第1層側蓋部材20が複数の閉塞部21と開口部23を有している為、漏れ検査の際に、第1層側流路11の内部からの熱媒体の漏れの位置を、開口部23を利用して特定することができる。これにより、第1層側流路11の気密性を担保する為に、第1層側蓋部材20を取り付けなおす作業を、必要最小限に抑えて、製造完了までの作業性を向上させることができる。
【0116】
又、流路切替装置1の第1層側蓋部材20において、複数の閉塞部21が開口部23によって分割されている為、漏れ検査によって検出された漏れの位置を、少なくとも閉塞部21を単位として特定することができる。これにより、漏れの検出に伴う第1層側蓋部材20の取り付けなおしの作業を、閉塞部21単位で行うことが可能となり、取り付けなおしに関する作業の無駄を抑えることができる。
【0117】
次に、第1実施形態に係る流路切替装置1における第2層側蓋部材25の具体的構成について、
図6~
図8を参照して説明する。上述したように、第2層側蓋部材25は、本体部材5における第2層側流路形成部15の表面に対して、振動溶着やレーザー溶着等によって取り付けられる。第2層側蓋部材25は、溝状に形成された第2層側流路16の開放部分を閉塞する為の閉塞部26と、開口部27を有している。
【0118】
図6に示すように、第2層側蓋部材25は、閉塞部26として、第1閉塞部26a~第4閉塞部26dを有している。各閉塞部26は、第2層側流路形成部15の表面にて、第2層側流路形成部15の開放部分を閉塞するように取り付けられる。
【0119】
具体的に、
図6、
図7を参照して説明すると、第2層側蓋部材25の第1閉塞部26aは、第3接続口35cから伸びる第2層側流路16の開放部分を閉塞するように取り付けられている。従って、第1閉塞部26aは、第2熱媒体三方弁70bの流入口側を閉塞するように配置されている。そして、第1閉塞部26aの外縁は、第3接続口35cから伸びる第2層側流路16の開放部分の外側に沿うように配置されている。
【0120】
又、第2層側蓋部材25の第2閉塞部26bは、第7接続口35gから伸びる第2層側流路16の開放部分を閉塞するように取り付けられている。従って、第2閉塞部26bは、第1熱媒体三方弁70aの流入口側を閉塞するように配置されている。そして、第2閉塞部26bの外縁は、第7接続口35gから伸びる第2層側流路16の開放部分の外側に沿うように配置されている。
【0121】
そして、第2層側蓋部材25の第3閉塞部26cは、第4接続口35dから伸びる第2層側流路16及び第3連通部13cから伸びる第2層側流路16の開放部分を閉塞するように取り付けられている。従って、第3閉塞部26cは、第1熱媒体開閉弁80aの流入出口の一方側と、第3熱媒体三方弁70cの流入口側を閉塞するように配置されている。第3閉塞部26cの外縁は、第4接続口35dから伸びる第2層側流路16及び第3連通部13cから伸びる第2層側流路16の開放部分の外側に沿うように配置されている。
【0122】
更に、第2層側蓋部材25の第4閉塞部26dは、第5接続口35eから伸びる第2層側流路16の開放部分を閉塞するように取り付けられている。従って、第4閉塞部26dは、第2熱媒体開閉弁80bの流入出口の一方側を閉塞するように配置されている。そして、第4閉塞部26dの外縁は、第5接続口35eから伸びる第2層側流路16の開放部分の外側に沿うように配置されている。
【0123】
これにより、第1実施形態に係る流路切替装置1において、第2層側流路形成部15に形成された全ての第2層側流路16の開放部分が、第2層側蓋部材25の閉塞部26によって閉塞される。つまり、流路切替装置1は、第2層側流路形成部15に形成された第2層側流路16を、熱媒体が流通する管状の流路として構成することができる。
【0124】
又、
図7、
図8に示すように、第2層側蓋部材25において、開口部27は、第2層側蓋部材25の厚み方向に貫通しており、本体部材5側と流路切替装置1の外部側とを連通するように開口されている。そして、第2層側蓋部材25の開口部27は、各第2層側流路16における開放部分の外縁に沿うように配置される。従って、第2層側蓋部材25では、第1閉塞部26a~第4閉塞部26dが開口部27によって分割される。
【0125】
ここで、流路切替装置1を製造する際には、第2層側流路16の熱媒体の漏れを検出する為の漏れ検査が第1層側流路11と同様に行われる。第2層側流路16から漏れ検査においても、第2層側流路16からの熱媒体の漏れが検出されると、第2層側流路16における気密性を担保する為に、本体部材5から第2層側蓋部材25を取り外し、気密性を担保できるように取り付けなおす必要がある。
【0126】
例えば、第2層側流路形成部15の表面と同じサイズの板状の第2層側蓋部材25を採用していた場合、漏れ検査の際に、第2層側流路16と第2層側蓋部材25との間からの熱媒体の漏れを検出したとしても、漏れの位置を特定することが困難であった。漏れの位置が特定できない為、板状の第2層側蓋部材25全体を取りはずして、再度、第2層側流路形成部15の表面に取り付け直さなければならなかった。
【0127】
この点、第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、第2層側蓋部材25が複数の閉塞部26と開口部27を有している為、漏れ検査の際に、第2層側流路16の内部からの熱媒体の漏れの位置を、開口部27を利用して特定することができる。これにより、第2層側流路16の気密性を担保する為に、第2層側蓋部材25を取り付けなおす作業を、必要最小限に抑えて、製造完了までの作業性を向上させることができる。
【0128】
又、流路切替装置1の第2層側蓋部材25において、複数の閉塞部26が開口部27によって分割されている為、漏れ検査によって検出された漏れの位置を、少なくとも閉塞部26を単位として特定することができる。これにより、漏れの検出に伴う第2層側蓋部材25の取り付けなおしの作業を、閉塞部26単位で行うことが可能となり、取り付けなおしに関する作業の無駄を抑えることができる。
【0129】
図6、
図7に示すように、第2層側流路形成部15の表面には、モータ保持部17が形成されている。モータ保持部17は、第2層側流路形成部15に対して、駆動部30を構成する電磁モータ32を保持する為の構成であり、複数の位置決めピン17aを有している。
【0130】
複数の位置決めピン17aは、それぞれ、第2層側流路形成部15において、第2層側蓋部材25を取り付けた場合に開口部27となる位置に配置されている。各位置決めピン17aは、電磁モータ32のボディに形成された保持穴(図示せず)に対して挿入され、本体部材5に対する電磁モータ32の相対的な位置関係を定める。
【0131】
これにより、電磁モータ32は、第2層側流路形成部15の表面において、第2層側蓋部材25における開口部27の内側に配置される。そして、モータ保持部17によって、本体部材5に対する電磁モータ32の相対的な位置関係が定められることで、本体部材5に対する電磁モータ32の駆動軸32aの相対的な位置を精度よく定めることができる。
【0132】
図2、
図8に示すように、流路切替装置1において、電磁モータ32の駆動力は、駆動軸32aからリンク円板33及び複数のリンクレバー34を介して、熱媒体三方弁70及び熱媒体開閉弁80の夫々の弁体部73に伝達される。
【0133】
上述したように、第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70c、第1熱媒体開閉弁80a、第2熱媒体開閉弁80bの第2層側流路16は、第2層側蓋部材25の各閉塞部26によって閉塞されている。従って、弁体部73に連結されたリンクレバー34は、各閉塞部26を介して、駆動部30のケーシング31内部に配置されたリンク円板33と連結される。
【0134】
この点、第1実施形態に係る流路切替装置1では、第2層側蓋部材25の各閉塞部26は、開口部27によって分割されている為、本体部材5に対する各リンクレバー34の相対的な位置関係を適切な位置に調整することができる。
【0135】
つまり、本体部材5に対する電磁モータ32及び複数のリンクレバー34の相対的な位置関係を適切な位置に定めることが可能となる為、リンク円板33を介した各弁体部73の円滑な動作を実現することができる。この結果、第1実施形態に係る流路切替装置1は、複数の弁体部73の円滑な動作を担保する為の作業負担を軽減して、製造完了時までの作業性を向上させることができる。
【0136】
続いて、流路切替装置1における第1熱媒体逆止弁60a等の構成について、
図8、
図9を参照して説明する。上述したように、第1実施形態に係る流路切替装置1では、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eが第1層側流路形成部10に配置されている。
図5に示すように、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eは、第1層側流路11及び第1層側流路11に形成された補強部12を、それぞれ利用して構成されている。
【0137】
尚、以下の説明では、特に必要のない場合には、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eの総称として、熱媒体逆止弁60と呼ぶ場合がある。
【0138】
先ず、補強部12の構成について、
図7、
図8を参照して説明する。補強部12は、溝状に形成された第1層側流路11を横断するように壁状に形成されている。これにより、補強部12は、溝状の第1層側流路11の幅方向への荷重に対する剛性を高めている。
【0139】
そして、補強部12には、それぞれ、流路穴12aが形成されている。流路穴12aは、壁状の補強部12を厚み方向に貫通しており、第1層側流路11の熱媒体が流通するように構成されている。流路穴12aの内径は、後述する球状弁体62の外径よりも小径に形成されている。流路穴12aは、熱媒体が熱媒体逆止弁60の流出口側から流入した場合に、球状弁体62が着座する弁座を構成する。
【0140】
又、
図9に示すように、補強部12には、接合面12bが形成されている。補強部12の接合面12bは、第1層側流路11を横断するように、第1層側流路形成部10側の表面を接続して構成される。そして、
図8に示すように、第1層側流路形成部10の表面に第1層側蓋部材20の閉塞部21を取り付けた場合に、接合面12bは各閉塞部21の表面に当接する。
【0141】
ここで、第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、補強部12の接合面12bには、第1層側蓋部材20のうち、2つの閉塞部21の外縁部分がレーザー溶着等で接合される。これにより、流路切替装置1では、本体部材5に対する第1層側蓋部材20の接合強度を向上させることができ、第1層側流路11からの流体の漏れの発生を抑制できる。
【0142】
図8、
図9に示すように、接合面12bは第1層側流路形成部10の表面を接続して形成されている為、レーザー溶着等を採用した場合に、焦点距離等の設定変更を最小限にとどめることができ、連続的な接合作業を行うことができる。
【0143】
尚、補強部12に流路穴12aを形成することによって、補強部12は、第1層側流路11の流路断面積を縮小するように変化させている。従って、補強部12は、第1層側流路11を流れる熱媒体の流路抵抗を増大させる流路抵抗部としての側面を有する。
【0144】
図5、
図8等に示すように、各熱媒体逆止弁60は、第1層側流路11の一部を利用して形成された弁体収容部61を有している。弁体収容部61は、第1層側流路11内の補強部12に隣接するように配置されており、熱媒体逆止弁60における流出口側の構成を担っている。
【0145】
弁体収容部61は、補強部12に隣接する第1層側流路11の一部であって、その内部に球状弁体62を収容している。球状弁体62は、弁体収容部61を含む第1層側流路11における熱媒体の流れに従って、弁体収容部61の内部を移動するように構成されている。
【0146】
又、弁体収容部61の底面は、幅方向中央部分が窪んだ曲面状を為している。これにより、球状弁体62の上方における熱媒体の流れと、球状弁体62の下方における熱媒体の流れに差をつけることができるので、球状弁体62の逆流を抑制することができる。
【0147】
そして、
図8、
図9に示すように、弁体収容部61の底面には、流路側規制片63が配置されている。流路側規制片63は、弁体収容部61を含む第1層側流路11が伸びる方向に沿って、弁体収容部61の底面から突出するように形成された突出片であり、規制片の一例に相当する。流路側規制片63は、球状弁体62と当接することで、弁体収容部61内部における球状弁体62の移動範囲を規制して、熱媒体逆止弁60の流出口からの熱媒体の流出を担保する。
【0148】
又、
図8に示すように、弁体収容部61を含む第1層側流路11の開放部分を閉塞する第1層側蓋部材20の閉塞部21には、蓋側規制片64が形成されている。蓋側規制片64は、閉塞部21から弁体収容部61の内部に向かって突出する突出片であり、規制片の一例に相当する。これにより、流路側規制片63及び蓋側規制片64が協働することで、弁体収容部61における球状弁体62の移動範囲を確実に規制することができる。
【0149】
第1実施形態に係る流路切替装置1では、第1層側流路11に形成された5つの補強部12等を利用することで、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eを構成している。熱媒体逆止弁60の動作について、第2熱媒体逆止弁60bを具体例に挙げ、
図8を参照して説明する。
【0150】
図8に示す例において、第11接続部90k側から第5接続部90e側へ向かって熱媒体が流れる場合、第2熱媒体逆止弁60bの弁体収容部61内部において、球状弁体62が熱媒体の流れに従って、熱媒体出口側へ移動する。
【0151】
これにより、第2熱媒体逆止弁60bにおける流路穴12aが開放され、第11接続部90k側から第5接続部90e側へ向かう熱媒体の流れが許容される。この時、球状弁体62は、弁体収容部61の内部にて、流路側規制片63及び蓋側規制片64と当接して熱媒体出口側への移動が制限される為、弁体収容部61から外部へ流出することはない。そして、弁体収容部61内部から、球状弁体62によって熱媒体流出口を塞いでしまうこともない。
【0152】
一方、第5接続部90e側から第11接続部90k側へ向かって熱媒体が流れる場合、第2熱媒体逆止弁60bにおける弁体収容部61の内部において、球状弁体62は、熱媒体の流れに従って、熱媒体入口側へ移動して流路穴12aに着座する。これにより、第2熱媒体逆止弁60bの流路穴12aが球状弁体62によって閉塞され、第5接続部90e側から第11接続部90k側へ向かう熱媒体の流れが禁止される。
【0153】
このように、第1実施形態に係る流路切替装置1においては、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eがそれぞれ熱媒体の流れの向きに従って開閉動作を行う。これにより、流路切替装置1は、熱媒体回路50における流路構成を適宜切り替えることができる。
【0154】
又、
図5に示すように、第1熱媒体逆止弁60a~第5熱媒体逆止弁60eの何れにおいても、弁体収容部61は、補強部12に対して一方側(
図5における上側)に配置されている。このように配置することで、第1層側流路形成部10にて、第1層側流路11内に補強部12及び弁体収容部61を型によって形成する際に、同一方向に型を抜くことができる。これにより、第1層側流路11内に複数の熱媒体逆止弁60を形成する際の作業効率を向上させることができる。
【0155】
次に、流路切替装置1における第1熱媒体三方弁70a等の構成について、図面を参照して説明する。上述したように、第1実施形態に係る流路切替装置1には、第1熱媒体三方弁70aと、第2熱媒体三方弁70bと、第3熱媒体三方弁70cが配置されている。
【0156】
以下の説明では、特に必要のない場合には、第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70cの総称として、熱媒体三方弁70と呼ぶ場合がある。又、
図10に示す図は、熱媒体三方弁70の基本的な構成を示す為の説明図である。
【0157】
図10に示すように、熱媒体三方弁70は、熱媒体流入口72から流入する熱媒体の内、第1熱媒体流出口76から流出させる熱媒体流量と、第2熱媒体流出口77から流出させる熱媒体流量との流量比を調整可能な三方式の流量調整弁である。
【0158】
第1熱媒体三方弁70aにおいては、第7接続口35gから伸びる第2層側流路16が熱媒体流入口72に相当している。そして、第1接続部90aへ伸びる第1層側流路11及び第8接続部90hへ伸びる第1層側流路11は、第1熱媒体流出口76及び第2熱媒体流出口77に相当している。
【0159】
そして、第2熱媒体三方弁70bの場合、第3接続口35cから伸びる第2層側流路16が熱媒体流入口72に相当している。そして、第2接続部90bへ伸びる第1層側流路11及び第5接続部90eへ伸びる第1層側流路11は、第1熱媒体流出口76及び第2熱媒体流出口77に相当している。
【0160】
又、第3熱媒体三方弁70cの場合、第3連通部13cから伸びる第2層側流路16が熱媒体流入口72に相当している。そして、第9接続口35iへ伸びる第1層側流路11及び第10接続口35jへ伸びる第1層側流路11は、第1熱媒体流出口76及び第2熱媒体流出口77に相当している。
【0161】
図10に示すように、熱媒体三方弁70は、積層方向Lへ伸びる管状に形成されている。従って、第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70cにおいては、第2層側流路16と第1層側流路11とを積層方向Lに連通する連通路がハウジング71に相当する。
【0162】
そして、ハウジング71の内部には、弁体部73が配置されている。弁体部73は、駆動ディスク74と、固定ディスク75によって構成されている。固定ディスク75は、ハウジング71を積層方向Lに分断するように配置されており、第1連通路75a及び第2連通路75bを有している。
【0163】
第1連通路75aは、固定ディスク75をその厚み方向に貫通しており、熱媒体流入口72側の空間と第1熱媒体流出口76側の空間とを連通している。第2連通路75bは、第1連通路75aに隣接する位置で、固定ディスク75をその厚み方向に貫通している。第2連通路75bは、熱媒体流入口72側の空間と第2熱媒体流出口77側の空間と連通している。
【0164】
尚、ハウジング71の内部において、第1熱媒体流出口76側の空間と第2熱媒体流出口77側の空間は区画されている。従って、第1連通路75a及び第2連通路75bを介することなく、第1熱媒体流出口76側の空間と第2熱媒体流出口77側の空間の間で熱媒体の流出入が起こることはない。
【0165】
駆動ディスク74は、固定ディスク75における熱媒体流入口72側の表面に沿って配置されており、略扇形状の板状に形成されている。駆動ディスク74は、少なくとも第1連通路75a及び第2連通路75bの何れか一方を閉塞可能なサイズに形成されている。そして、駆動ディスク74は、弁体部73を構成する回転軸74aに固定されている。
【0166】
従って、駆動ディスク74は、回転軸74aの回転に伴って、固定ディスク75の表面をスライド移動する。上述したように、回転軸74aは、第2層側蓋部材25の貫通孔を介して、駆動部30内に到達している。
図2、
図8に示すように、駆動部30内における回転軸74aは、リンクレバー34に連結されている。従って、駆動ディスク74は、電磁モータ32の作動に伴って、固定ディスク75の表面をスライド移動する。
【0167】
即ち、熱媒体三方弁70は、駆動部30の作動制御によって、固定ディスク75に対する駆動ディスク74の位置を変更することができる。これにより、熱媒体三方弁70は、第1熱媒体流出口76から流出させる熱媒体流量と、第2熱媒体流出口77から流出させる熱媒体流量との流量比を調整できる。又、熱媒体三方弁70は、二つの流出口の内、何れか一方側から熱媒体を流出させることができる。
【0168】
従って、第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、第1熱媒体三方弁70a~第3熱媒体三方弁70cの弁体部73の動作を制御することによって、熱媒体回路50の流路構成を適宜切り替えることができる。
【0169】
又、上述したように、第1実施形態に係る流路切替装置1には、第1熱媒体開閉弁80a、第2熱媒体開閉弁80bが配置されている。以下の説明では、第1熱媒体開閉弁80a及び第2熱媒体開閉弁80bの総称として、熱媒体開閉弁80を用いる。
【0170】
第1実施形態に係る熱媒体開閉弁80は、熱媒体流出口及び固定ディスク75における連通路が一つである点を除いて、熱媒体三方弁70と同様の基本的構成を為している。従って、熱媒体開閉弁80は、弁体部73を有している。熱媒体開閉弁80の弁体部73において、固定ディスク75には、第1連通路75aと同様に構成された一つの連通路が形成されている。駆動ディスク74によって連通路を開閉することで、熱媒体開閉弁80における開閉動作が実現され、熱媒体逆止弁60における熱媒体流出口からの熱媒体の流出の有無が切り替えられる。
【0171】
従って、第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、第1熱媒体開閉弁80a、第2熱媒体開閉弁80bの弁体部73の動作を制御することによって、熱媒体回路50の流路構成を適宜切り替えることができる。
【0172】
以上説明したように、第1実施形態に係る流路切替装置1によれば、第1層側流路形成部10、第2層側流路形成部15、及び駆動部30がこの順番で積層配置されている為、コンパクトな構成で熱媒体回路50における流路構成を切り替えることができる。
【0173】
又、
図4に示すように、流路切替装置1の第1層側蓋部材20は、複数の閉塞部21と開口部23を有している為、第1層側蓋部材20の閉塞部21と第1層側流路形成部10の間から第1層側流路11を流れる流体が漏れる位置を容易に特定することができる。この為、流路切替装置1は、漏れ検査における流体の漏れ検出及び閉塞部21の再接合に関する作業効率を向上させることができ、流路切替装置1の製造時における作業性を向上させることができる。
【0174】
又、
図4、
図5に示すように、第1層側蓋部材20の閉塞部21は、第1層側流路11の開放部分を部分ごとに閉塞しており、開口部23によって分割されている。そして、第1層側蓋部材20は、複数の閉塞部21によって、溝状の第1層側流路11における開放部分の全てを閉塞している。
【0175】
この為、流路切替装置1によれば、第1層側流路11に対する漏れ検査に関して、少なくとも第1層側流路11の部分ごとに、第1層側流路11からの流体の漏れの有無を検出することができ、容易に漏れの位置を特定することできる。更に、漏れの発生していない閉塞部21に対する作業から独立して、漏れの発生している閉塞部21の再接合を行うことができるので、第1層側蓋部材20の再接合に関する作業負担を必要最小限にとどめることができる。
【0176】
図5、
図9に示すように、第1層側流路11の内部には、補強部12が形成されている。補強部12は、溝状に形成された第1層側流路11を幅方向に横断すると共に、第1層側流路形成部10表面に沿って伸びる接合面12bを有している。又、
図4、
図8に示すように、補強部12の接合面12bには、第1層側蓋部材20における少なくとも2つの閉塞部21の外縁が接合されている。
【0177】
上述したように、補強部12は、第1層側流路11を幅方向に横断するように形成されている為、流路切替装置1は、第1層側流路11の幅方向への荷重に対する剛性を、補強部12によって高めることができる。又、接合面12bには、少なくとも2つの閉塞部21の外縁が接合されている為、第1層側流路形成部10の表面に対する第1層側蓋部材20の接合強度を向上させることができる。そして、接合面12bが第1層側流路形成部10の表面に沿って伸びており、設定変更等を少なくすることができる為、各閉塞部21の接合作業に関する作業性を向上させることができる。
【0178】
図8、
図9に示すように、補強部12には、流路穴12aが形成されており、補強部12と隣接する位置には、球状弁体62を収容する弁体収容部61が形成されている。又、弁体収容部61の内部には、流路側規制片63及び蓋側規制片64が配置されている。
【0179】
これにより、流路切替装置1は、第1層側流路11及び補強部12を利用して、第1層側流路11上に熱媒体逆止弁60を配置することができる。つまり、流路切替装置1は、熱媒体逆止弁60を利用して流路構成を切り替えることができるコンパクトな構成を実現することができる。
【0180】
そして、
図6に示すように、流路切替装置1の第2層側蓋部材25は、複数の閉塞部26と開口部27を有している為、第2層側蓋部材25の閉塞部26と第2層側流路形成部15の間から第2層側流路16を流れる流体が漏れる位置を容易に特定することができる。この為、流路切替装置1は、漏れ検査における流体の漏れ検出及び閉塞部26の再接合に関する作業効率を向上させることができ、流路切替装置1の製造時における作業性を向上させることができる。
【0181】
図2、
図8に示すように、駆動部30は電磁モータ32を有しており、第2層側流路形成部15の表面には、モータ保持部17が形成されている。
図6に示すように、モータ保持部17は、第2層側流路形成部15に対して第2層側蓋部材25を取り付けた際に、開口部27となる位置に形成されている。
【0182】
このように構成することで、弁体部73等と、電磁モータ32の駆動軸32aが本体部材5を基準として配置されることになり、それぞれの部材の相対的な位置関係を精度よく定めることができる。この結果、電磁モータ32及び弁体部73の相対的な位置関係の精度を高めることで、電磁モータ32の駆動力を弁体部73へ伝達する為の構成の取付作業等の作業性を向上させることができる。
【0183】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態と異なる第2実施形態について、
図11、
図12を参照して説明する。第2実施形態では、流路切替装置1に配置された熱媒体開閉弁80の構成が第1実施形態と相違している。流路切替装置1及び熱媒体回路50の基本構成等の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0184】
上述した第1実施形態において、熱媒体開閉弁80は、第2層側流路16から第1層側流路11へ流れる連通路を開閉するように構成されている。この点、第2実施形態の熱媒体開閉弁80は、第1層側流路11、第2層側流路16の何れかにおいて、流路を開閉するように構成されている。
【0185】
図11に示すように、第2実施形態に係る熱媒体開閉弁80は、円柱状に形成された本体部81の内部に弁体部82を収容して構成されている。本体部81は、第1層側流路11又は第2層側流路16の内部に収容され、第1流入出口84a及び第2流入出口84bを有している。
【0186】
弁体部82は、円柱状に形成されており、その内部には、内部流路83が形成されている。内部流路83は、本体部81における第1流入出口84a及び第2流入出口84bを連通可能に形成されている。流路切替装置1によれば、駆動部30の作動を制御することにより、本体部81における第1流入出口84a及び第2流入出口84bに対する弁体部82の内部流路83の位置を調整することができる。
【0187】
つまり、熱媒体開閉弁80は、円柱状の弁体部82を回転させる、いわゆるロータリーバルブを構成している。これにより、熱媒体開閉弁80は、第1流入出口84a、第2流入出口84bの何れか一方から他方へ向かう熱媒体の流れの有無を切り替えることができる。
【0188】
又、
図12に示すように、第1層側流路11と第2層側流路16を連通する連通部13に接続されるように、第2実施形態の熱媒体開閉弁80を配置すれば、第1実施形態の熱媒体開閉弁80と同様の効果を発揮させることができる。
【0189】
例えば、
図12における第1層側流路11側及び第2層側流路16側の熱媒体開閉弁80を開状態にすれば、連通部13を介して、第1層側流路11と第2層側流路16の間の熱媒体の流れが許容される。
【0190】
又、第1層側流路11側及び第2層側流路16側の熱媒体開閉弁80の何れか一方を閉状態にすれば、連通部13を介して、第1層側流路11と第2層側流路16の間の熱媒体の流れが禁止される。
【0191】
尚、第2実施形態に係る熱媒体開閉弁80の構成を、熱媒体三方弁70に採用することも可能である。この場合の熱媒体三方弁70は、第1層側流路11、第2層側流路16の何れかにおいて、流体の流出先を切り替えられるように構成されている。具体的には、この場合の熱媒体三方弁70の本体部には、3つの流入出口が形成されており、弁体部の内部流路は、3つの流入出口のうち、少なくとも2つを連通可能に形成されている。
【0192】
このように、ロータリーバルブ式の三方弁を採用した場合、流路切替装置1は、第1層側流路11、第2層側流路16の何れかにおいて、流体の流出先を切り替えることができる。
【0193】
以上説明したように、第2実施形態に係る流路切替装置1によれば、熱媒体開閉弁80の構成を変更した場合であっても、上述した第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
【0194】
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、
図13、
図14を参照して説明する。第3実施形態に係る流路切替装置1では、上述した実施形態における熱媒体三方弁70に代えて、熱媒体切替弁85が配置されている。流路切替装置1及び熱媒体回路50の基本構成等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0195】
図13に示すように、第3実施形態に係る熱媒体切替弁85は、第1層側流路11における熱媒体の流れを切り替える三方弁構造と、第2層側流路16における熱媒体の流れを切り替える三方弁構造を有している。又、熱媒体切替弁85は、第1層側流路11における切替動作と、第2層側流路16における切替動作を同時に実行することができる。
【0196】
具体的に、第3実施形態に係る熱媒体切替弁85の構成について説明する。
図13に示すように、熱媒体切替弁85は、円柱状に形成された本体部81の内部に弁体部82を収容して構成されている。本体部81は、積層方向Lに伸びる円柱状に形成されており、少なくとも一部が第1層側流路11内部に収容され、他の一部が第2層側流路16の内部に収容されている。
【0197】
本体部81のうち、第2層側流路16の内部に配置される部分には、第1流入出口84a、第2流入出口84b及び第3流入出口84cが形成されている。第1流入出口84a~第3流入出口84cは、それぞれ異なる部分の第2層側流路16に接続されている。
【0198】
又、本体部81のうち、第1層側流路11の内部に配置される部分には、第4流入出口84d、第5流入出口84e、第6流入出口84fが形成されている。第4流入出口84d~第6流入出口84fは、それぞれ異なる部分の第1層側流路11に接続されている。
【0199】
そして、第3実施形態における弁体部82は円柱状に形成されており、その内部には、第1層側内部流路83aと、第2層側内部流路83bが形成されている。第1層側内部流路83a及び第2層側内部流路83bは、弁体部82において、積層方向Lに並ぶように形成されている。
【0200】
第1層側内部流路83aは、3本の直線状の流路が一箇所で接続される構成を為し、第4流入出口84d~第6流入出口84fのうち、少なくとも2つを連通可能に形成されている。同様に、第2層側内部流路83bは、3本の直線状の流路が一箇所で接続される構成を為し、第1流入出口84a~第3流入出口84cのうち、少なくとも2つを連通可能に構成されている。
【0201】
流路切替装置1は、駆動部30の作動を制御することにより、本体部81の内部にて弁体部82を回転させる。上述したように、弁体部82は、第1層側内部流路83a及び第2層側内部流路83bを有している。この為、
図14に示すように、第4流入出口84d~第6流入出口84fに対する第1層側内部流路83aの位置と、第1流入出口84a~第3流入出口84cに対する第2層側内部流路83bの位置を同時に調整することができる。
【0202】
即ち、第3実施形態に係る流路切替装置1では、熱媒体切替弁85の弁体部82を回転させることで、第1層側流路11における熱媒体の流路構成と、第2層側流路16における熱媒体の流路構成を同時に切り替えることができる。
【0203】
以上説明したように、第3実施形態に係る流路切替装置1によれば、熱媒体切替弁85を採用した場合であっても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0204】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、
図15、
図16を参照して説明する。第4実施形態に係る流路切替装置1では、第1層側蓋部材20、第2層側蓋部材25の構成が、上述した実施形態と相違している。従って、流路切替装置1及び熱媒体回路50の基本構成等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0205】
図15に示すように、第4実施形態の第1層側蓋部材20は、複数の閉塞部21と、開口部23に加えて、枠状部24を有している。枠状部24は、第1層側流路形成部10の表面における外縁に沿って配置される枠状の部材であり、複数の閉塞部21の間を接続している。
【0206】
このように構成した場合であっても、第1層側蓋部材20には、複数の閉塞部21及び開口部23が形成されている為、流路切替装置1を製造する際の漏れ検査において、第1層側流路11に生じた熱媒体の漏れ位置を容易に特定することができる。
【0207】
そして、
図16に示すように、第4実施形態の第2層側蓋部材25は、複数の閉塞部26と、開口部27に加えて、枠状部28を有している。枠状部28は、第2層側流路形成部15の表面における外縁に沿って配置される枠状の部材であり、複数の閉塞部26の間を接続している。
【0208】
このように構成した場合であっても、第2層側蓋部材25には、複数の閉塞部26及び開口部27が形成されている為、流路切替装置1を製造する際の漏れ検査において、第2層側流路16に生じた熱媒体の漏れ位置を容易に特定することができる。
【0209】
以上説明したように、第4実施形態に係る流路切替装置1によれば、第1層側蓋部材20及び第2層側蓋部材25に枠状部を設けた場合であっても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0210】
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
【0211】
(1)上述した実施形態において、第1層側蓋部材20の第2閉塞部21bは、第3熱媒体逆止弁60cの弁体収容部61と第2連通部13b、第5熱媒体逆止弁60eの弁体収容部61と第1連通部13aの開放部分を一部材として閉塞していた。しかしながら、第2閉塞部21bの構成は、この態様に限定されるものではない。
【0212】
即ち、第2閉塞部21bを、第3熱媒体逆止弁60c、第5熱媒体逆止弁60eに係る補強部12の位置で分割して、それぞれの補強部12の接合面12bにおいて、複数の閉塞部21の外縁を接合しても良い。
【0213】
具体的に、例えば、第3熱媒体逆止弁60cの開放部分に関しては、第3熱媒体逆止弁60cの弁体収容部61に係る開放部分を第2閉塞部21bで閉塞する。そして、第3熱媒体逆止弁60cの補強部12から第2連通部13bに係る開放部分を別部材としての閉塞部21で閉塞するように構成する。このように構成することで、第3熱媒体逆止弁60cの補強部12における接合面12bにおいても、複数の閉塞部21の外縁を接合して、接合強度を向上させることができる。尚、第5熱媒体逆止弁60eの具体例については説明を省略する。
【0214】
(2)又、上述した実施形態の駆動部30では、リンク円板33及びリンクレバー34を介して、電磁モータ32の駆動力を弁体部73等に伝達していたが、この態様に限定されるものではない。電磁モータ32の駆動力を弁体部73に伝達することができれば、種々の態様を採用することができる。例えば、駆動部30の構成として、電磁モータ32の駆動力を、ギヤ列やベルト機構を介して、弁体部73に伝達させても良い。
【0215】
(3)上述した実施形態においては、電磁モータ32の駆動軸32aに対して、リンク円板33を取り付けていた為、駆動軸32aの位置と、リンク円板33の回転中心が一致しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、ギヤ列やベルト等を採用した伝達機構によって、駆動軸32aに生じた駆動力をリンク円板33に伝達することができれば、リンク円板33の回転中心と、電磁モータ32の駆動軸32aの位置がずれていても良い。
【0216】
(4)上述した実施形態では、
図9に示すように、弁体収容部61の底面を曲面状に構成して、球状弁体62の逆流を抑制していたが、この態様に限定されるものではない。球状弁体62に対して弁体収容部61の底面側を流通する熱媒体の流れと、球状弁体62に対して閉塞部21側を流通する熱媒体の流れに差をつけることができれば、種々の態様を採用することができる。例えば、閉塞部21の表面のうち、弁体収容部61の内側となる部分に、閉塞部21の厚み方向に窪んだ凹部を形成しても良い。
【0217】
(5)又、上述した実施形態では、本開示に係る流路切替装置1を、車載機器冷却機能付きの車両用空調装置における熱媒体回路50に適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0218】
本開示に係る流路切替装置1は、車両用の熱媒体回路に限定されることなく、定置型の空調装置等の熱媒体回路に適用してもよい。例えば、サーバ(コンピュータ)の温度を適切に調整すると同時に、サーバが収容される室内の空調を行うサーバ冷却機能付きの空調装置等の熱媒体回路に適用してもよい。
【0219】
(6)そして、上述した実施形態では、熱媒体回路50の熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、熱媒体はこれに限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、或いはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を、熱媒体として採用することができる。
【符号の説明】
【0220】
1 流路切替装置
5 本体部材
10 第1層側流路形成部
11 第1層側流路
15 第2層側流路形成部
20 第1層側蓋部材
21 閉塞部
23 開口部
30 駆動部
50 熱媒体回路