IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許7468234マイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法
<>
  • 特許-マイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法 図1
  • 特許-マイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法 図2
  • 特許-マイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】マイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240409BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20240409BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20240409BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20240409BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20240409BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20240409BHJP
   C08J 9/16 20060101ALI20240409BHJP
   C08G 65/18 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01J19/12 H
B01F23/41
B01F25/40
B81B1/00
C08F2/01
C08J9/26 CER
C08J9/16 CEZ
C08G65/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020131752
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028384
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 涼
(72)【発明者】
【氏名】禮場 強
(72)【発明者】
【氏名】畠添 拓実
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104610(WO,A1)
【文献】特開2008-007613(JP,A)
【文献】特開2010-149062(JP,A)
【文献】特開2005-279523(JP,A)
【文献】特表2020-525269(JP,A)
【文献】特開2013-163149(JP,A)
【文献】特開2010-190680(JP,A)
【文献】特開2008-031488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0002956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B01F 21/00-25/90
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
C08F 2/00-2/60
C08J 9/00-9/42
C08G 65/00-67/04
C08G 69/00-69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給するための複数の給液流路と、
前記給液流路と接続し、前記給液流路から供給された液体が交わる合流部と、
前記合流部と接続し、前記合流部の液体が排出される排液流路と、
を有し、
前記排液流路は液体の流れ方向に対して流路幅が大きくなる逆テーパ形状部を有し、
前記複数の給液流路は、第1流路および第2流路のみからなり、
前記第1流路は、液体の流れ方向に対して流路幅が小さくなるテーパ形状を有し、該第1流路は前記第2流路よりも液体の流れ方向に対して後方で合流部と接続
前記第2流路は、前記合流部よりも液体の流れ方向に対して前方から液体を供給する流路である、
マイクロ流路を有するデバイス。
【請求項2】
前記排液流路が、
前記合流部から流路幅が狭くなり、流路幅が一定な部分と、
該流路幅が一定な部分よりも液体の流れ方向に対して後方にある逆テーパ形状部と、
を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記排液流路が有する逆テーパ形状部のテーパ角度が120°以下である、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記排液流路が有する逆テーパ形状部のテーパ角度が、10°以上50°以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記テーパ形状を有する給液流路の外壁が前記合流部の一部の内壁を構成し、該給液流路の外壁の、前記合流部に供給される液体の少なくとも1種以上との接触角(25℃)が70°以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流路を有するデバイス。
【請求項6】
前記テーパ形状を有する給液流路の外壁が前記合流部の一部の内壁を構成し、該給液流路の外壁の、水との接触角(25℃)が70°以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記テーパ形状を有する給液流路が、ガラス、金属および金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記テーパ形状を有する給液流路の前記合流部と接続する箇所の流路幅が100μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記逆テーパ形状部を有する排液流路の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より前方の流路幅(W1)と、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より後方の流路幅(W2)との比(W2/W1)が、1.1以上10以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記逆テーパ形状部を有する排液流路の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より前方の流路幅(W1)と、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より後方の流路幅(W2)との比(W2/W1)が、2以上6以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
多孔質粒子製造用である、請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記排液流路と接続し、前記排液流路から排出された液体を加熱または該液体にエネルギー線を照射する制御部を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイスと、
前記排液流路から排出された液体を加熱または該液体にエネルギー線を照射する制御装置と、
を備える液体搬送システム。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のデバイスを用い、
前記テーパ形状を有する給液流路の少なくとも1つから、重合性化合物および重合開始剤を含む有機系媒体を供給し、その他の給液流路から水系媒体を供給し、
前記デバイスの合流部にてエマルジョンを形成させ、
前記排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させる工程を含む、
粒子の製造方法。
【請求項15】
前記有機系媒体がポロジェンを含む、請求項14に記載の粒子の製造方法。
【請求項16】
前記排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させた後、得られた粒子からポロジェンを除去する工程を含む、請求項15に記載の粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ流路を有するマイクロ化学装置、所謂マイクロデバイスを利用した微細流路内での流体の混合、化学物質(粒子)の製造方法等に関する研究が、バイオ、医療、医薬品、化成品などのファインケミカル分野等、様々な分野において盛んに行なわれている。
【0003】
マイクロデバイスは、1mm以下の流路幅を有する流路を有する微小反応器の総称であり、(1)加熱、冷却速度が速い、(2)流れが層流である、(3)単位体積当りの表面積が大きい、(4)物質の拡散長が短いので反応が迅速に進行するなどの特徴があり、これらを活かして、従来にない高速、高選択性の反応系の構築や、反応時間の短縮や収率の向上による製造効率の向上が可能となっている。
【0004】
このようなマイクロデバイスとして、特許文献1には、メイン流路と複数のサブ流路を備えたマイクロリアクターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-020004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、前記マイクロリアクターを用いて、サイズのばらつきが小さい粒子を形成することができることが記載されている。しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載されているような従来のマイクロリアクターを用いて得られた粒子は、サイズのばらつきが十分に小さいとはいえず、この点で改良の余地があることが分かった。
【0007】
本発明は、以上のことに鑑みなされたものであり、粒径変動係数の小さい粒子を形成可能なマイクロ流路を有するデバイス、液体搬送システムおよび粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は、以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
【0009】
[1] 液体を供給するための複数の給液流路と、
前記給液流路と接続し、前記給液流路から供給された液体が交わる合流部と、
前記合流部と接続し、前記合流部の液体が排出される排液流路と、
を有し、
前記排液流路は液体の流れ方向に対して流路幅が大きくなる逆テーパ形状部を有し、
前記複数の給液流路の少なくとも1つは、液体の流れ方向に対して流路幅が小さくなるテーパ形状を有し、該給液流路はその他の給液流路よりも液体の流れ方向に対して後方で合流部と接続する、
マイクロ流路を有するデバイス。
【0010】
[2] 前記排液流路が有する逆テーパ形状部のテーパ角度が120°以下である、[1]に記載のデバイス。
[3] 前記排液流路が有する逆テーパ形状部のテーパ角度が、10°以上50°以下である、[1]または[2]に記載のデバイス。
【0011】
[4] 前記テーパ形状を有する給液流路の外壁が前記合流部の一部の内壁を構成し、該給液流路の外壁の、前記合流部に供給される液体の少なくとも1種以上との接触角(25℃)が70°以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のマイクロ流路を有するデバイス。
[5] 前記テーパ形状を有する給液流路の外壁が前記合流部の一部の内壁を構成し、該給液流路の外壁の、水との接触角(25℃)が70°以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のデバイス。
【0012】
[6] 前記テーパ形状を有する給液流路が、ガラス、金属および金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のデバイス。
【0013】
[7] 前記テーパ形状を有する給液流路の前記合流部と接続する箇所の流路幅が100μm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のデバイス。
【0014】
[8] 前記逆テーパ形状部を有する排液流路の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より前方の流路幅(W1)と、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より後方の流路幅(W2)との比(W2/W1)が、1.1以上10以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のデバイス。
[9] 前記逆テーパ形状部を有する排液流路の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より前方の流路幅(W1)と、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より後方の流路幅(W2)との比(W2/W1)が、2以上6以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のデバイス。
【0015】
[10] 多孔質粒子製造用である、[1]~[9]のいずれかに記載のデバイス。
【0016】
[11] 前記排液流路と接続し、前記排液流路から排出された液体を加熱または該液体にエネルギー線を照射する制御部を有する、[1]~[10]のいずれかに記載のデバイス。
【0017】
[12] [1]~[10]のいずれかに記載のデバイスと、
前記排液流路から排出された液体を加熱または該液体にエネルギー線を照射する制御装置と、
を備える液体搬送システム。
【0018】
[13] [1]~[11]のいずれかに記載のデバイスを用い、
前記テーパ形状を有する給液流路の少なくとも1つから、重合性化合物および重合開始剤を含む有機系媒体を供給し、その他の給液流路から水系媒体を供給し、
前記デバイスの合流部にてエマルジョンを形成させ、
前記排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させる工程を含む、
粒子の製造方法。
【0019】
[14] 前記有機系媒体がポロジェンを含む、[13]に記載の粒子の製造方法。
【0020】
[15] 前記排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させた後、得られた粒子からポロジェンを除去する工程を含む、[14]に記載の粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粒径変動係数の小さい粒子を形成することができる。このように粒径変動係数の小さい粒子は、粒径のばらつきが小さく、該粒子の有する機能を均一に、十分に、高効率で発揮することができる。従って、該粒子は、バイオ、医療、医薬品、化成品などのファインケミカル分野等、様々な分野において好適に用いることができる。
また、本発明によれば、平均粒径が所望の範囲にある、特に平均粒径が小さい粒子を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ流路を有するデバイスの一例を示す概略模式平面図である。
図2】実施例で用いたノズルの形状を示す断面概略模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係るマイクロ流路を有するデバイスまたは液体搬送システムの一例を示す概略模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪マイクロ流路を有するデバイス≫
本発明に係るマイクロ流路を有するデバイス(以下「本デバイス」ともいう。)は、液体を供給するための複数の給液流路と、前記給液流路と接続し、前記給液流路から供給された液体が交わる合流部と、前記合流部と接続し、前記合流部の液体が排出される排液流路とを有し、
前記排液流路は液体の流れ方向に対して流路幅が大きくなる逆テーパ形状部を有し、
前記複数の給液流路の少なくとも1つは液体の流れ方向に対して流路幅が小さくなるテーパ形状を有し、該給液流路はその他の給液流路よりも液体の流れ方向に対して後方で合流部と接続する。
【0024】
なお、本発明において、「マイクロ流路」とは、1mm以下の流路幅を有する流路のことをいう。
このような本デバイスは、比表面積が大きく、管内は流路径が極めて小さく、レイノルズ数が小さいため、安定した層流状態で粒子を製造することができ、粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を製造することができるため、高機能・高付加価値粒子の製造に好適に用いられる。
【0025】
本デバイスは、マイクロ流路を有するデバイスが用いられてきた用途に制限なく使用することができるが、本発明の効果がより発揮される等の点から、粒子を製造するために用いることが好ましく、中でも、多孔質粒子を製造するために用いることがより好ましい。
【0026】
本デバイスを前記用途に用いる場合、本デバイスを複数個用いる、いわゆるナンバリングアップすることにより、同様の生成物(粒子)を大量に生産することもできる。
【0027】
<給液流路>
本デバイスは、液体を供給するための複数の給液流路を有する。
ここで、該給液流路の数は2本以上であれば特に制限されないが、3本以上であることが好ましい。該給液流路の上限は特に制限されないが、例えば、本デバイスを用いて、粒子を製造する場合に供給する粒子の原料に必要な給液流路をx本とした場合、x+2本であることが好ましい。この場合、本デバイスは、排液流路の内側を、該x本の給液流路からの液体が流れ、排液流路の壁側を、残り2本の給液流路からの液体が流れるような形状とすることが好ましい。このような形状であれば、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。このような形状としては、例えば、xが1の場合、図1に示すような形状が挙げられる。
【0028】
以上のように、給液流路の数は、所望の用途に応じ、原料に必要な給液流路の本数によって変化するが、本デバイスの製造容易性等を考慮すると、図1に示すような3本(xが1の場合)であることが好ましい。
この場合であって、本デバイスを用いて粒子を製造する場合、粒子の原料である液体が、残り2本の給液流路からの液体から加わるせん断力を受けることにより、該粒子の原料成分が球状となって、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。
【0029】
本デバイスは、前記複数の給液流路の少なくとも1つとして、液体の流れ方向に対して流路幅が小さくなるテーパ形状を有し、該給液流路はその他の給液流路よりも液体の流れ方向に対して後方(図1の右側)で合流部と接続する給液流路(以下「第1流路」ともいう。)を有することを特徴とする。該第1流路は、前記x本の給液流路、特に、本デバイスを用いて、粒子を製造する場合に供給する粒子の原料に必要な給液流路であることが好ましい。
なお、以下、本デバイスが有する給液流路のうち、前記第1流路以外の給液流路を「第2流路」ともいう。
【0030】
[第1流路]
前記第1流路は、液体の流れ方向に対して流路幅が小さくなるテーパ形状を有する。
該テーパ形状としては特に制限されない。ここで、該テーパ形状のテーパ角度が大きいと、該流路を流れる液体(以下、第1流路に供給される液体を「第1液体」ともいう。)の流れが乱れやすくなり、圧力損出が大きくなる可能性がある。よって、該テーパ角度は小さい方が好ましく、具体的には、好ましくは1~20°、より好ましくは2~10°である。
【0031】
前記第1流路の前記合流部と接続する箇所(合流部箇所)の流路幅(第1流路の出口の内径)は特に制限されないが、前記のように第1流路に粒子の原料を供給する場合、形成したい粒子の粒径に応じて適宜設定することが好ましい。
より高い機能性の粒子を得ることができる等の点から、形成する粒子の平均粒径は下記範囲にあることが好ましいが、このような平均粒径の粒子を容易に形成することができる等の点から、前記流路幅は、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下である。
前記流路幅の下限は特に制限されないが、前記粒子の原料による第1流路の閉塞が起り難い等の点から、好ましくは10μm以上である。
【0032】
本デバイスを用いて多孔質粒子を製造する場合、前記第1流路には、該多孔質粒子の原料となる液体を供給することが好ましいが、この場合、前記第1流路の前記合流部と接続する箇所の流路幅(第1流路の出口の内径)は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下であり、好ましくは10μm以上である。
本デバイスを用いて多孔質粒子を製造する場合に該流路幅が前記範囲にあると、容易に所定の多孔質粒子を製造することができる。
【0033】
前記第1流路の前記合流部と接続する箇所の流路の形状(液体の流れ方向から見た断面形状)は特に制限されないが、円形または楕円形であることが好ましく、円形であることが好ましい。本デバイスを用いて粒子を製造する場合、このような形状であることで、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。
なお、本明細書において、流路幅とは、液体の流れ方向から見た断面形状が実質的に円形の場合には、その断面の内側の直径のことをいい、液体の流れ方向から見た断面形状が楕円形の場合には、その断面の内側の長径のことをいう。
【0034】
前記第1流路の長さは特に制限されないが、通常3~30mmである。
なお、第1流路の長さとは、下記図1の場合、第1流路10の左側先端から右側先端(合流部12に接する部分)までの長さのことをいう。
【0035】
前記第1流路は、その外壁(図1の塗りつぶしている部分と斜線部分とが接する部分)が前記合流部の一部の内壁を構成していることが好ましい。この場合、該第1流路の外壁の、前記合流部に供給される液体の少なくとも1種以上との、好ましくは水との接触角(25℃)が、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、さらに好ましくは1~30°となるような流路である。本デバイスを用いて粒子を製造する場合、該接触角が前記範囲にあることで、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。
【0036】
前記第1流路は、例えば、下記本デバイスの製造方法により、光硬化性樹脂の硬化体で形成されていてもよく、下記本デバイスの製造方法により、ノズル等の流路調節具を挿入できる形状を作成しておき、そこに、ノズル等の流路調節具を挿入することで形成してもよい。
このようにノズル等の流路調節具を挿入する場合、該流路調節具の内側が第1流路となるため、該流路調節具の内側の形状は、前記テーパ形状を有していることが要求され、テーパ角や流路幅は前記範囲となる形状であることが好ましい。
【0037】
接触角が前記範囲となるような第1流路としては、例えば、光硬化性樹脂として、その硬化体の接触角が前記範囲となるような樹脂を用いた流路、ガラスを用いた流路(例:ガラス製のノズル)、下記本デバイスの製造方法により形成された光硬化性樹脂の硬化体からなる流路の外表面(合流部の一部の内表面を構成している表面)を従来公知の親水化処理した流路、金属および/または金属酸化物等からなる流路(例:金属または金属酸化物製のノズル)の外表面(合流部の一部の内表面を構成している表面)を従来公知の親水化処理した流路が挙げられる。
【0038】
前記第1流路は、ガラス、金属および金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ガラス、金属または金属酸化物からなるノズルを用いた流路であることがより好ましく、前記外表面を従来公知の親水化処理した、ガラス、金属または金属酸化物からなるノズルを用いた流路であることが特に好ましい。
【0039】
前記金属としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウムが挙げられ、前記金属酸化物としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、ジルコニア添加アルミナが挙げられる。
なお、ジルコニア添加アルミナとしては、日立化成(株)製のハロックス-Z、アダマンド並木精密宝石(株)製の強化アルミナ等の市販品を用いることができる。
【0040】
本デバイスを用いて粒子を製造する場合、前記第1流路の材質としては、より平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる等の点から、以上の中でも、ガラス、親水化処理したジルコニア添加アルミナが好ましい。
【0041】
前記第1流路は、第1液体の流量を可変するための流量制御部材を備えていてもよい。該流量制御部材は、第1流路の出口側よりも供給口側に近いところ(上流側)に備えることが好ましい。なお、流路制御部材と第1流路との接続は、気泡等の混入を避け得る構成とすることが好ましい。
該流量制御部材としては、例えば、シリンジポンプ、プランジャーポンプ、ギアポンプが挙げられ、シリンジポンプが好ましい。
流量制御部材を備えることにより、第1液体の流量を調整することができる。また、第1液体を粒子の原料とする場合、該第1液体の流量を調整することで、得られる粒子の平均粒径および形状(ばらつき)を容易に制御することができる。
【0042】
前記第1液体の流速は特に制限されず、第1液体を粒子の原料とする場合には、形成したい所望の平均粒径等に応じて、適宜設定すればよいが、好ましくは1~400μl/分、より好ましくは5~30μl/分である。
【0043】
[第2流路]
前記第2流路は、第1流路の出口よりも液体の流れ方向に対して前方(図1の左側)で合流部と接続する給液流路であれば特に制限されず、その形状等は特に制限されない。つまり、液体の流れ方向に対して流路幅が小さくなるテーパ形状を有していても、有していなくてもよい。
【0044】
前記第2流路の前記合流部と接続する箇所の流路幅(第2流路の出口の内径)は特に制限されないが、例えば、100~800μmである。
前記第2流路の前記合流部と接続する箇所の流路の形状(液体の流れ方向から見た断面形状)は特に制限されないが、円形または楕円形であることが好ましく、円形であることが好ましい。
【0045】
前記第2流路の長さは特に制限されないが、通常3~30mmである。
なお、第2流路の長さとは、下記図1の場合、第2流路11の左側先端から合流部12に接する部分までの長さのことをいう。
【0046】
前記第2流路は、例えば、下記本デバイスの製造方法により、光硬化性樹脂の硬化体で形成されていることが好ましい。また、前記第1流路と同様に、下記本デバイスの製造方法により、ノズル等の流路調節具を挿入できる形状を作成しておき、そこに、ノズル等の流路調節具を挿入することで形成してもよい。
【0047】
前記第2流路の内壁は、該第2流路に供給される液体(以下「第2液体」ともいう。)の種類に応じて、表面処理をしていてもよい。
第2液体としては特に制限されないが、前記第1液体と互いに相容しない液体であることが好ましく、例えば、前記第1液体として有機系媒体を用いる場合、第2液体としては、水系媒体を用いることが好ましい。
例えば、該第2液体として、下記水系媒体を用いる場合、第2流路の内壁は、従来公知の撥水処理をしたものであることが好ましい。
【0048】
前記第2流路には、第2液体の流量を可変するための流量制御部材を備えていてもよい。該流量制御部材は、第2流路の出口側よりも供給口側に近いところ(上流側)に備えることが好ましい。なお、流路制御部材と第2流路との接続は、気泡等の混入を避け得る構成とすることが好ましい。
該流量制御部材としては、例えば、シリンジポンプ、プランジャーポンプ、ギアポンプが挙げられ、シリンジポンプが好ましい。
本デバイスを用いて粒子を製造する場合、流量制御部材を備えることにより、第2液体の流量を調整することができ、その結果、得られる粒子の平均粒径および形状(ばらつき)を容易に制御することができる。
【0049】
前記第2液体の流速は特に制限されないが、前記第1液体の流速より速いことが好ましい。
本デバイスを用いて粒子を製造する場合、前記第2液体の流速は、第1流体の流路壁への接触を抑制し、流路壁による摩擦や粒子形状の変形、凝集や、流路の閉塞などを抑制できる等の点から、好ましくは300~10000μl/分、より好ましくは500~5000μl/分である。
【0050】
また、本デバイスを用いて粒子を製造する場合、せん断力により、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる等の点から、前記第2液体の流量を1とした時の前記第1液体の流量は、好ましくは0.001~0.05、より好ましくは0.001~0.02である。
【0051】
<合流部>
前記合流部は、前記給液流路から供給された液体が交わる部分であり、第1流路のテーパ形状の先端、および、第2流路の流路幅が急激に変化するまでの部分から、第1流路のテーパ形状の先端より液体の流れ方向に対して後方であって、流路幅が狭くなるまでの部分のことをいう。具体的には、前記合流部は、図1における斜線部分12のことをいう。
【0052】
前記合流部の長さは特に制限されないが、通常0.1~5mmである。
なお、ここで規定する合流部の長さとは、第1流路のテーパ形状の先端から第1流路のテーパ形状の先端より液体の流れ方向に対して後方であって、流路幅が狭くなるまでの部分の長さのことをいい、下記図1の場合、第1流路10の右側先端から斜線部分12の右端までの長さのことをいう。
【0053】
前記合流部は、例えば、下記本デバイスの製造方法により、光硬化性樹脂の硬化体で形成されていることが好ましい。
また、前記合流部の内壁は、必要により、表面処理をしていてもよく、特に、第2液体の種類に応じて表面処理をしたものであることが好ましい。
【0054】
<排液流路>
本デバイスは、前記給液流路から供給された液体が交わる合流部の液体を排出する排液流路を有し、該排液流路は液体の流れ方向に対して流路幅が大きくなる逆テーパ形状部を有することを特徴とする。
本デバイスを用いて粒子を製造する場合、このような逆テーパ形状部を有することにより、粒径変動係数の小さい粒子を容易に形成することができる。これは、排液流路の流路径が広がることにより、本デバイスを流れる液体の圧力損出が低減し、合流部における各給液流路から供給された液体の流速低下が抑制され、その結果として、合流部に安定したせん断力を供給できるようになったためであると推測される。
なお、本明細書における推測部分の記載は、あくまで推測であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0055】
前記排液流路は液体の流れ方向に対して流路幅が大きくなる逆テーパ形状部を有することを特徴とし、前記合流部から流路幅が狭くなる部分(流路幅が狭く一定な部分。この部分の流路幅が下記W1である。)と、液体の流れ方向に対して該流路幅がW1である部分より後方の逆テーパ形状部と、該逆テーパ形状部の先端の流路幅を維持する部分(流路幅がW1と比較した際に広くなり一定となる部分。この部分の流路幅が下記W2である。)とを有することが好ましい。
【0056】
本デバイスを用いて粒子を製造する場合、前記排液流路が有する逆テーパ形状部のテーパ角度は、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる等の点から、好ましくは120°以下であり、さらに、流線の複雑化を抑制し、圧損増加を抑制できる等の点から、より好ましくは60°以下、さらに好ましくは50°以下である。
該テーパ角度の下限は特に制限されないが、前記と同様の理由から、好ましくは10°以上である。
【0057】
前記排液流路の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より前方の流路幅(W1)と、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より後方の流路幅(W2)との比(W2/W1)は、好ましくは1.1以上10以下、より好ましくは2以上6以下である。
本デバイスを用いて粒子を製造する場合、W2/W1が前記範囲にあると、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。
【0058】
前記流路幅(W1)は、前記と同様の理由から、好ましくは100~800μm、より好ましくは200~500μmである。
前記流路幅(W2)は、前記と同様の理由から、好ましくは110~8000μm、より好ましくは220~3000μmである。
【0059】
前記排液流路の形状(液体の流れ方向から見た断面形状)は特に制限されないが、円形または楕円形であることが好ましく、円形であることが好ましい。本デバイスを用いて粒子を製造する場合、このような形状であることで、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。
また、本デバイスを用いて粒子を製造する場合、前記排液流路は、気泡等の混入、滞留等を避け、粒径変動係数の小さい粒子を容易に形成することができる等の点から、液体の流れ方向に沿って障害となる突起部や角部などを有さない形状であることが好ましい。
【0060】
前記排液流路の長さは特に制限されないが、通常10~100mmである。
なお、排液流路は、前記合流部の流路幅が狭くなる部分から本デバイスの排液流路出口までのことをいい、具体的には、図1における合流部(斜線部分)12の右端から、図1の右端までの流路のことをいう。
【0061】
前記排液流路は、例えば、下記本デバイスの製造方法により、光硬化性樹脂の硬化体で形成されていることが好ましい。
また、前記排液流路の内壁は、必要により、表面処理をしていてもよく、特に、第2液体の種類に応じて表面処理をしたものであることが好ましい。
【0062】
なお、本デバイスを用いて粒子を製造する際に、以下のように、エネルギー線を照射する場合、排液流路の少なくとも一部を、エネルギー線を透過し得る材料で構成し、排液流路中を流れている液体にエネルギー線を照射してもよい。
【0063】
<本デバイスの製造方法>
前記給液流路、合流部および排液流路を有する本デバイスの製造方法は特に制限されず、従来公知の方法で製造することができるが、容易かつ正確に所望形状のデバイスを製造できる等の点から、光造形法により製造することが好ましい。
【0064】
光造形法としては、3次元CADデータで設計された立体像(本デバイス形状)を2次元のスライスデータに変換し、このスライスデータに基づいて、レーザーで一層ずつ光硬化性樹脂を硬化させていき、3次元に積層造形していく方法等が挙げられる。より具体的には、以下の方法等が挙げられる。
3次元CADデータで設計された立体像(本デバイス形状)を、幾層もの薄い断面体にスライスして2次元のスライスデータに変換し、この2次元のスライスデータに基づいて、レーザーがタンク内に収容した光硬化性樹脂の表面を走査して断面形状を描いていく。レーザーが当たった部分は硬化し、エレベーター上に一層分の断面体が形成される。その後、断面体を一層分形成する毎にエレベーターが一層分ずつ下降して、連続的に幾層もの薄い断面体を積層し、3次元に積層造形していく。最後にエレベーターを引き上げることで、3次元に積層造形された立体像を取り出し、後処理を施して完成させる。
【0065】
前記光造形法に用いることができる光造形装置としては、例えば、(株)ディーメック製の光造形装置(例:SCS-1000HD)が挙げられる。
前記光造形法に用いることができる光硬化性樹脂としては、例えば、(株)ディーメック製の光硬化性樹脂(例:オキセタン系樹脂であるSCR950)が挙げられる。
前記レーザーとしては、例えば、He-Cdレーザー(ピーク波長=325nm)が挙げられる。前記レーザーのスポットサイズは、例えば、φ10~100μmが好ましく、φ30~70μmがより好ましい。硬化させて得られる樹脂一層分の厚みは、例えば、10~50μmが好ましく、20~40μmがより好ましい。
【0066】
<制御部(制御装置)>
本デバイスは、前記排液流路と接続し、前記排液流路から排出された液体を加熱または該液体にエネルギー線を照射する制御部(制御装置)を有していてもよい。
該制御部としては特に制限されず、前記排液流路から排出された液体が通過する流路を加熱する手段を備えた部材(装置)、前記排液流路から排出された液体が通過する流路にエネルギー線を照射する手段を備えた部材(装置)が挙げられる。
【0067】
ここで、加熱温度や時間、エネルギー線照射量(露光量)は用いる液体中の成分に応じて適宜選択すればよいが、通常、用いる液体中の硬化成分が硬化する程度に加熱やエネルギー線を照射すればよい。
本発明におけるエネルギー線とは、紫外線、電子線、赤外線等の、ラジカル、カチオン、アニオン等の硬化のきっかけとなる物質を生成し得るエネルギー線のことをいう。これらの中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0068】
≪液体搬送システム≫
本発明に係る液体搬送システムは、前記本デバイスと、前記排液流路から排出された液体を加熱または該液体にエネルギー線を照射する制御装置とを備える。
このような液体搬送システムを用いて粒子を製造することで、粒径変動係数および平均粒径の小さい硬化粒子を容易に製造することができる。
前記液体搬送システムは、本デバイスと制御装置とが接続していてもよいし、本デバイスと制御装置とは別体であってもよい。
【0069】
該液体搬送システムは、前述の本デバイスと同様の用途に好適に用いることができ、このような用途に用いる場合、該液体搬送システムを複数個用いる、いわゆるナンバリングアップすることにより、同様の生成物(硬化粒子)を大量に生産することもできる。
【0070】
≪粒子の製造方法≫
本発明に係る粒子(以下「本粒子」ともいう。)の製造方法(以下「本製法」ともいう。)は、前記本デバイスを用い、
前記テーパ形状を有する給液流路(第1流路)の少なくとも1つから、重合性化合物および重合開始剤を含む有機系媒体(第1液体)を供給し、その他の給液流路(第2流路)から水系媒体を供給し、
前記デバイスの合流部にてエマルジョンを形成させ、
前記排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させる工程を含む。
【0071】
本粒子の平均粒径は、より機能性の高い粒子となる等の点から、好ましくは100μm未満、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。該平均粒径の下限は特に制限されないが、取り扱い容易性等の点から、例えば、1μm以上である。
平均粒径が前記範囲にある粒子は、平均粒径の小さい粒子であるといえる。
該平均粒径は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0072】
本粒子の粒径変動係数は、より機能性の高い粒子となる等の点から、好ましくは20%未満、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。該粒径変動係数の下限は小さければ小さい方がよい。
粒径変動係数が前記範囲にある粒子は、粒径変動係数の小さい粒子であるといえる。
該変動係数は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0073】
本製法では、形成するエマルジョンを、その形状を維持して硬化させることが好ましいため、本製法で形成するエマルジョンの平均粒径および粒径変動係数も、それぞれ前記と同様の範囲にあることが好ましい。
【0074】
前記排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させる工程は、前記制御部(制御装置)を用い、本デバイスと制御部(制御装置)とを接続して行ってもよいし、前記排液流路から排出されたエマルジョンを取り出して、そこに加熱またはエネルギー線を照射してもよい。
【0075】
本製法における前記加熱の際の加熱温度や加熱時間、エネルギー線照射の際の照射量(露光量)は、重合性化合物が硬化するように、用いる重合性化合物や重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0076】
前記本製法は、前記工程以外の工程を含んでいてもよく、例えば、前記有機系媒体にポロジェンを用いる場合、排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させた後、得られた粒子からポロジェンを除去する除去工程が挙げられる。
この除去工程は、具体的には、排液流路から排出されたエマルジョンを加熱または該エマルジョンにエネルギー線を照射して硬化させた後、得られた粒子を洗浄する工程が挙げられる。
【0077】
<有機系媒体>
前記有機系媒体は、重合性化合物および重合開始剤を含めば特に制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で、粒子を製造する際に用いる従来公知のその他の成分を含んでいてもよい。
なお、有機系媒体は、水の含有量が0.1質量%以下である媒体が挙げられ、25℃の水100gへの溶解度が1g以下である媒体であることが好ましい。
【0078】
[重合性化合物]
前記重合性化合物としては、分子中にエポキシ基を含有するビニル単量体を用いることが好ましい。
該分子中にエポキシ基を含有するビニル単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α-(メタ)アクリル-ω-グリシジルポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルベンジルグリシジルエーテル等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
前記分子中にエポキシ基を含有するビニル単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0079】
前記分子中にエポキシ基を含有するビニル単量体の使用量は、重合性化合物100質量%に対し、好ましくは50~95質量%である。
【0080】
また、前記重合性化合物としては、さらに、架橋性ビニル単量体を用いることが好ましい。
該架橋性ビニル単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ポリビニル単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
前記架橋性ビニル単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0081】
前記架橋性ビニル単量体の使用量は、重合性化合物100質量%に対し、好ましくは5~50質量%である。
【0082】
<重合開始剤>
前記重合開始剤は、重合性化合物の種類に応じて適宜選択すればよく、従来公知の熱重合開始剤または光重合開始剤を用いることができる。
前記重合開始剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記重合開始剤の使用量は、重合性化合物の総量100質量部に対して、通常、1~10質量部程度である。
【0083】
<ポロジェン>
前記第1液体は、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる等の点から、ポロジェン(多孔化剤)を含むことが好ましく、特に多孔質粒子を製造する場合には、ポロジェンを含むことが好ましい。
ポロジェンを用いることで平均粒径の小さい粒子を容易に製造できる理由は明らかではないが、1つの理由として、ポロジェンを含む第1液体が低表面張力化することにより、第2液体によるせん断力と釣り合う力が低減されたことによると推測される。
前記ポロジェンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0084】
前記ポロジェンとは、加熱やエネルギー線照射により、分解または揮発することで孔を形成する添加剤のことをいう。
前記ポロジェンとしては、脂肪族または芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類等の有機溶剤が挙げられる。
【0085】
前記ポロジェンの使用量は、重合性化合物の総量100質量部に対して、通常、70~350質量部程度である。
【0086】
<水系媒体>
前記水系媒体は、水を含めば特に制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で粒子を製造するに用いる従来公知のその他の成分、例えば、界面活性剤や乳化剤等を含んでいてもよい。
なお、水系媒体は、水の含有量が99質量%以上である媒体が挙げられる。
【0087】
本製法では、互いに相容しない有機系媒体と水系媒体とを用い、例えば、図1に示すような本デバイスを用い、その第1流路から有機系媒体を供給し、2つの第2流路から水系媒体を供給することで、粒子の原料である有機系媒体が、水系媒体から加わるせん断力を受けることにより球状となって、より粒径変動係数および平均粒径の小さいエマルジョンを形成することができ、より粒径変動係数および平均粒径の小さい粒子を容易に形成することができる。
【実施例
【0088】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
[実施例1]マイクロデバイスの作製
光造形装置((株)ディーメック製、商品名:SCS-1000HD)を用い、3次元CADデータで設計された立体像(図1に示すマイクロデバイス)を、幾層もの薄い断面体にスライスして2次元のスライスデータ(断面の輪郭データ)に変換した。
【0090】
タンク内に光硬化性樹脂(JSR(株)製、商品名:SCR950、オキセタン系樹脂)とエレベーターとを入れ、得られた2次元のスライスデータに基づいて、レーザー(He-Cdレーザー、ピーク波長=325nm)をタンク内の光硬化性樹脂の表面に走査させ、断面形状を描いた。この際、レーザーのスポットサイズはφ50μm、レーザースキャンピッチはφ30μmとした。
【0091】
レーザーが当たった部分は硬化し、エレベーター上に一層分の断面体(断面体一層分の厚み=30μm)を形成した。その後、断面体を一層分形成する毎にエレベーターを下降させ、連続的に幾層もの薄い断面体を積層し、3次元に積層造形していった。最後にエレベーターを引き上げることで、3次元に積層造形された立体像を取り出し、後処理を施して、図1に示すマイクロデバイスを完成させた。
【0092】
なお、以上の工程で得られたマイクロデバイスは、図1に示す形状のマイクロデバイスであるが、ノズル挿入部15は空隙となっており、ノズル挿入部15に以下のノズルを挿入して、給液流路(第1流路)10と合流部の一部の内壁が形成されるため、以上の工程では、ノズル挿入部15は形成されているが、テーパ形状を有する給液流路(第1流路)10は形成されていない。
【0093】
テーパ形状を有する給液流路(第1流路)10の流路調節具として、親水性コート剤(大阪有機化学工業(株)製、商品名:LAMBIC-1000w)で外壁面を親水化処理した、図2に記載の形状のジルコニア含有アルミナ製ノズルを、図1のノズル挿入部15に挿入した。
なお、前記ノズル外壁面の、水との接触角は53.1°であった。本明細書における接触角は、接触角計DM-701(協和界面科学(株)製)を用いて液滴法により、25℃で測定した。
【0094】
なお、ノズルを挿入したマイクロデバイスのテーパ形状を有する給液流路(第1流路)10の出口の内径は30μm、逆テーパ形状部21を有する排液流路20の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より前方の流路幅(W1)は375μm、前記逆テーパ形状部を有する排液流路の、液体の流れ方向に対して該逆テーパ形状部より後方の流路幅(W2)は1500μm、逆テーパ形状部21におけるテーパ角度は20°である。
【0095】
[試験例1]
(第1液体:有機系媒体の調製)
グリシジルメタクリレート80質量部、ジビニルベンゼン20質量部、ポロジェンとして、2-オクタノン157.6質量部およびアセトフェノン2.5質量部、更にジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)7.4質量部を混合することで、有機系媒体(第1液体)を調製した。
【0096】
(第2液体:水系媒体の調製)
イオン交換水2405質量部に、ポリビニルアルコール14.4質量部を少量ずつ加えた後、90℃まで加熱して完全に溶解するまで撹拌を続けた。その後、25℃まで冷却し、ドデシル硫酸ナトリウム0.2質量部を加えて撹拌することで、水系媒体(第2液体)を調製した(ポリビニルアルコール含量:0.6質量%、ドデシル硫酸ナトリウム含量:0.01質量%)。
【0097】
(多孔質粒子の合成)
実施例1で作製したマイクロデバイスを用い、第1流路10に、前記で調製した第1液体を供給し、第2流路11それぞれに、前記で調製した第2液体を流した。なお、第1および第2液体は、図3に示すように、第1および第2流路にそれぞれシリンジポンプ30を接続し、該シリンジポンプ30を用いて連続的に流した。このとき、第1液体の流量を10μL/分として、第2液体の流量を2000μL/分として、第2液体の流量を1とした時の第1液体の流量を0.0025とした。
【0098】
マイクロデバイスの合流部12(具体的には、該合流部12の第1流路10の先の部分)で、第1液体と第2液体を接触させることで、エマルジョンを形成させた。
このエマルジョンを、マイクロデバイスの排液流路出口(図1の右端)で、前記第2液体を入れた別容器に回収し、該容器を85℃で60分間加熱して、エマルジョンを硬化させた。その後イオン交換水およびエタノール水で洗浄してポロジェンを除去し、多孔質粒子を得た。
【0099】
[試験例2~11]
実施例1において、表1を満たす形状となるようにマイクロデバイスを作製し、また、表1に示すノズルを挿入した。このように作製したマイクロデバイスを用いた以外は、試験例1と同様にして多孔質粒子を合成した。
なお、表1におけるノズルの材質は、以下の通りである。なお、下記ノズル1~3の形状は、第1流路10の合流部12部分の流路幅(ノズル出口の内径)が表1となるような形状である以外は、図2と同様である。
・ノズル1:LAMBIC-1000wで外壁面を親水化処理したジルコニア含有アルミナ製ノズル((株)KRI製)、外壁面の水との接触角:53.1°
・ノズル2:LAMBIC-1000wで外壁面を親水化処理したアルミナ製ノズル((株)KRI製)、外壁面の水との接触角:65.2°
・ノズル3:ガラス製ノズル((株)KRI製)、外壁面の水との接触角:8.5°
【0100】
[試験例12]
試験例1と同様にしてエマルジョンを形成させた。
このエマルジョンを、マイクロデバイスの排液流路出口から別容器に回収せず、排液流路出口から、直接、図3に記載のように、加温装置40に流れるようにした。そして、同装置内を60分間流れる間、85℃で加熱することでエマルジョンを硬化させた。その後イオン交換水およびエタノール水で洗浄してポロジェンを除去し、多孔質粒子を得た。
【0101】
[試験例13]
試験例1において、ポロジェン(2-オクタノンおよびアセトフェノン)を用いなかった以外は、試験例1と同様にして、第1液体を調製した。得られた第1液体を用いた以外は、試験例1と同様にして粒子を合成した。
【0102】
[比較試験例]
実施例1において、排液流路20の流路幅が一定(375μm)となるように、つまり、図1において逆テーパ形状を形成しなかった(流路幅(W2):375μm)以外は、実施例1と同様にして、マイクロデバイスを作製した。このように作製したマイクロデバイスを用いた以外は、試験例1と同様にして多孔質粒子を合成した。
【0103】
<平均粒径および粒径変動係数(CV)の測定>
得られた粒子をマイクロスコープで観察して、平均粒径および粒径変動係数(CV)を算出した。ここで、平均粒径とは観察した50個の粒子の数平均粒径であり、粒径変動係数(CV)は、その50個の粒子径を統計計算し、次式によって求めた値である。
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100
[なお、「標準偏差」とは、前記50個の粒子の粒径の標準偏差である。]
【0104】
・平均粒径の評価
前記平均粒径を、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。平均粒径が100μm未満であれば、より機能性の高い粒子を合成することができたといえるため望ましい。
A:50μm未満
B+:50μm以上75μm未満
B:75μm以上100μm未満
C:100μm以上
【0105】
・粒径変動係数(CV)の評価
前記粒径変動係数(CV)を、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。CVが20%未満であれば、より機能性の高い粒子を合成することができたといえるため望ましい。
A:10%未満
B+:10%以上15%未満
B:15%以上20%未満
C:20%以上
【0106】
【表1】
【符号の説明】
【0107】
1:マイクロ流路を有するデバイス
10:テーパ形状を有する給液流路(第1流路)
11:給液流路(第2流路)
12:合流部
15:ノズル挿入部
16:ノズル
18:第1流路の合流部箇所の流路幅
20:排液流路
21:逆テーパ形状部
30:シリンジポンプ
40:制御部または制御装置(例:加熱装置)
50:マイクロ流路を有するデバイスまたは液体搬送システム
図1
図2
図3