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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20240409BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240409BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20240409BHJP
   F24F 11/83 20180101ALI20240409BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F24F11/65
F25B1/00 321L
F25B5/02 530L
F24F11/83
B60H1/32 623G
B60H1/32 623H
B60H1/32 624E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020133010
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029629
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加見 祐一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輝
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088060(JP,A)
【文献】特開2014-223891(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/65
F25B 1/00
F25B 5/02
F24F 11/83
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された吐出冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される空気を加熱する加熱部(12、40、42)と、
前記加熱部から流出した冷媒を減圧させる暖房用膨張弁(14a)と、
前記暖房用膨張弁から流出した冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(16)と、
前記室外熱交換器から流出した冷媒を減圧させる冷房用膨張弁(14b)と、
前記冷房用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、前記加熱部にて加熱される前の前記空気を冷却する室内蒸発器(18)と、
前記室外熱交換器から流出した冷媒を減圧させる吸熱用膨張弁(14c)と、
前記吸熱用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、吸熱対象物(80)から吸熱する吸熱部(19、50)と、
前記室外熱交換器で外気から吸熱せず前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱する廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記室外熱交換器で外気から吸熱するとともに前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱する外気廃熱暖房モードの冷媒回路とに切り替える冷媒回路切替部(15a、15b)と、
前記外気廃熱暖房モードにおいて、外気温度(Tam)から、前記圧縮機に吸入される冷媒の温度(Ts)を減じた温度差である外気冷媒温度差が下限温度差(α2)以下であり、且つ前記吸熱対象物の温度(TWL2)が吸熱可能温度(TW1)以上である場合、前記廃熱暖房モードに切り替えるように前記冷媒回路切替部を制御する制御部(60)とを備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷媒回路切替部は、前記廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記外気廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記室外熱交換器で外気から吸熱して前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱しない外気暖房モードの冷媒回路に切り替え、
前記制御部は、前記外気暖房モードにおいて、前記外気冷媒温度差が吸熱可能温度差(α1)以上であり、且つ前記吸熱対象物の温度が前記吸熱可能温度以上である場合、前記外気廃熱暖房モードに切り替えるように前記冷媒回路切替部を制御する請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記廃熱暖房モードにおいて、前記外気冷媒温度差が吸熱可能温度差(α1)以上である場合、前記外気廃熱暖房モードに切り替えるように前記冷媒回路切替部を制御する請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記冷媒回路切替部は、前記廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記外気廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記室外熱交換器で外気から吸熱して前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱しない外気暖房モードの冷媒回路に切り替え、
前記制御部は、前記廃熱暖房モードにおいて、前記吸熱対象物の温度が吸熱下限温度(TWmin)以下である場合、前記外気暖房モードに切り替えるように前記冷媒回路切替部を制御する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒回路切替部は、前記廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記外気廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記室外熱交換器で外気から吸熱して前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱しない外気暖房モードの冷媒回路に切り替え、
前記制御部は、前記外気廃熱暖房モードにおいて、前記外気冷媒温度差が下限温度差以下であり且つ前記吸熱対象物の温度が吸熱可能温度未満である場合、または前記吸熱対象物の温度が吸熱下限温度(TWmin)以下である場合、前記外気暖房モードに切り替えるように前記冷媒回路切替部を制御する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒回路切替部は、前記室外熱交換器に着霜が生じた場合、前記廃熱暖房モードの冷媒回路に切り替え、
前記制御部は、前記室外熱交換器に着霜が生じて前記廃熱暖房モードの冷媒回路に切り替えられた場合、前記吸熱対象物の温度が吸熱下限温度(TWmin)を下回ることを抑制するように前記圧縮機の冷媒吐出能力を制御する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記圧縮機に吸入される冷媒の気液を分離して液相の媒を貯える気液分離部(21)を備え、
前記冷媒回路切替部は、前記廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記外気廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記室外熱交換器で外気から吸熱して前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱しない外気暖房モードの冷媒回路に切り替え、
前記制御部は、
前記外気暖房モードでは、前記加熱部から流出した冷媒の過冷却度(SC2)に基づいて前記暖房用膨張弁の開度を制御し、
前記廃熱暖房モードでは、前記加熱部から流出した冷媒の過冷却度(SC2)に基づいて前記吸熱用膨張弁の開度を制御し、
前記外気廃熱暖房モードでは、前記加熱部から流出した冷媒の過冷却度(SC2)に基づいて前記暖房用膨張弁および前記吸熱用膨張弁のうち一方の膨張弁の開度を制御し、前記暖房用膨張弁および前記吸熱用膨張弁のうち他方の膨張弁で減圧された冷媒の蒸発後の過熱度(SHC)に基づいて前記他方の膨張弁の開度を制御する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記加熱部から流出した冷媒の気液を分離して液相の媒を貯える気液分離部(25)を備え、
前記冷媒回路切替部は、前記廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記外気廃熱暖房モードの冷媒回路と、前記室外熱交換器で外気から吸熱して前記吸熱部で前記吸熱対象物から吸熱しない外気暖房モードの冷媒回路に切り替え、
前記制御部は、
前記外気暖房モードでは、前記室外熱交換器から流出した冷媒の過熱度(SH1)に基づいて前記暖房用膨張弁の開度を制御し、
前記廃熱暖房モードでは、前記吸熱部から流出した冷媒の過熱度(SHC)に基づいて前記吸熱用膨張弁の開度を制御し、
前記外気廃熱暖房モードでは、前記室外熱交換器から流出した冷媒の過熱度(SH1)に基づいて前記暖房用膨張弁の開度を制御し、前記吸熱部から流出した冷媒の過熱度(SHC)に基づいて前記吸熱用膨張弁の開度を制御する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記外気廃熱暖房モードでは、前記圧縮機に吸入される冷媒の温度が前記外気温度を超えないように前記吸熱用膨張弁の開度を制御する請求項1ないし8のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記外気廃熱暖房モードでは、前記吸熱対象物の温度が吸熱下限温度(TWmin)以下になることを抑制するように前記吸熱用膨張弁の開度を制御する請求項1ないし9のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱源から吸熱して暖房を行う冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されている車両用空気調和装置は、室外熱交換器と非温調対象から吸熱して車室内を暖房する。この従来技術では、外気からの吸熱のみならず、非温調対象の廃熱を利用して暖房を行うことによって、暖房の効率や性能が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-26196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、廃熱吸熱によって冷凍サイクルの低圧が上昇するので、廃熱量が多い場合には室外熱交換器での冷媒温度が外気温度よりも高くなることが起こり得る。室外熱交換器での冷媒温度が外気温度よりも高くなると室外熱交換器で冷媒から外気に放熱してしまうので暖房の効率や性能が悪化してしまう。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、複数の熱源から吸熱して暖房を行う冷凍サイクル装置において、暖房の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置は、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された吐出冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される空気を加熱する加熱部(12、40、42)と、
加熱部から流出した冷媒を減圧させる暖房用膨張弁(14a)と、
暖房用膨張弁から流出した冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(16)と、
室外熱交換器から流出した冷媒を減圧させる冷房用膨張弁(14b)と、
冷房用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、加熱部にて加熱される前の空気を冷却する室内蒸発器(18)と、
室外熱交換器から流出した冷媒を減圧させる吸熱用膨張弁(14c)と、
吸熱用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、吸熱対象物(80)から吸熱する吸熱部(19、50)と、
室外熱交換器で外気から吸熱せず吸熱部で吸熱対象物から吸熱する廃熱暖房モードの冷媒回路と、室外熱交換器で外気から吸熱するとともに吸熱部で吸熱対象物から吸熱する外気廃熱暖房モードの冷媒回路とに切り替える冷媒回路切替部(15a、15b)と、
外気廃熱暖房モードにおいて、外気温度Tamから、圧縮機に吸入される冷媒の温度(Ts)を減じた温度差である外気冷媒温度差が下限温度差(α2)以下であり、且つ吸熱対象物の温度(TWL2)が吸熱可能温度(TW1)以上である場合、廃熱暖房モードに切り替えるように冷媒回路切替部を制御する制御部(60)とを備える。
【0007】
これによると、廃熱吸熱によって冷凍サイクルの低圧が上昇しても、廃熱暖房モードに切り替えることで室外熱交換器で冷媒から外気に放熱することを抑制できるので、暖房の効率や性能の悪化を抑制できる。
【0008】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の制御プログラムにおける運転モードの切替条件を示す説明図である。
図4】第1実施形態の外気廃熱暖房モードにおける冷媒の状態の変化を示すモリエル線図である。
図5】比較例の外気廃熱暖房モードにおける冷媒の状態の変化を示すモリエル線図である。
図6】第実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1図5を用いて、第1実施形態を説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置10は、電気自動車に搭載された車両用空調装置1に適用されている。電気自動車は、電動モータから走行用の駆動力を得る車両である。車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内の空調を行う。
【0011】
車両用空調装置1は、図1の全体構成図に示すように、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、高温側熱媒体回路40、低温側熱媒体回路50等を備えている。
【0012】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される空気を冷却し、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を加熱する。冷凍サイクル装置10は、廃熱機器80から吸熱するために、低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を冷却する。
【0013】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、様々な運転モード用の冷媒回路を切替可能である。例えば、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等を切替可能である。
【0014】
冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
【0015】
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、図2に示す制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0016】
図1に示すように、圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。水冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。
【0017】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0018】
冷凍サイクル装置10は、第2~第4継手13b~13dを備えている。第3継手13cは、第1継手13aと同様の三方継手である。第2継手13bおよび第4継手13dは、互いに連通する4つの流入出口を有する四方継手である。
【0019】
第1継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。第1継手13aの他方の流出口には、バイパス通路22aを介して、第2継手13bの一方の流入口側が接続されている。バイパス通路22aには、除湿用開閉弁15aが配置されている。
【0020】
除湿用開閉弁15aは、バイパス通路22aを開閉する電磁弁である。冷凍サイクル装置10は、暖房用開閉弁15bを備えている。暖房用開閉弁15bの基本的構成は、除湿用開閉弁15aと同様である。
【0021】
除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部である。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、制御装置60から出力される制御電圧によって制御される。
【0022】
暖房用膨張弁14aは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータ(換言すれば電気的機構)とを有して構成される電気式の可変絞り機構(換言すれば、電気式膨張弁)である。
【0023】
冷凍サイクル装置10は、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cを備えている。冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cの基本的構成は、暖房用膨張弁14aと同様である。
【0024】
暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
【0025】
この全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cは、冷媒回路切替部として機能する。暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cは、制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって制御される。
【0026】
暖房用膨張弁14aの出口には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器16は、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と図示しない冷却ファンにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器16に走行風を当てることができる。
【0027】
室外熱交換器16の冷媒出口には、第3継手13cの流入口側が接続されている。第3継手13cの一方の流出口には、暖房用通路22bを介して、第4継手13dの第1の流入口側が接続されている。暖房用通路22bには、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁15bが配置されている。暖房用通路22bには、第1逆止弁17aが配置されている。第1逆止弁17aは、第3継手13c側から第4継手13d側へ冷媒が流れることを許容し、第4継手13d側から第3継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0028】
第3継手13cの他方の流出口には、第2継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3継手13cの他方の流出口側と第2継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、第2逆止弁17bが配置されている。第2逆止弁17bは、第3継手13c側から第2継手13b側へ冷媒が流れることを許容し、第2継手13b側から第3継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0029】
第2継手13bの一方の流出口には、冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。第2継手13bの他方の流出口には、吸熱用膨張弁14cの入口側が接続されている。
【0030】
冷房用膨張弁14bは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する空調用減圧部である。
【0031】
冷房用膨張弁14bの出口には、室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器18は、冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって空気を冷却する空調用蒸発部である。室内蒸発器18は第1蒸発部である。室内蒸発器18の冷媒出口には、第4継手13dの第2の流入口側が接続されている。
【0032】
室内蒸発器18の冷媒出口側と第4継手13dの第2の流入口側とを接続する冷媒通路には、第3逆止弁17cが配置されている。第3逆止弁17cは、室内蒸発器18側から第4継手13d側へ冷媒が流れることを許容し、第4継手13d側から室内蒸発器18側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0033】
吸熱用膨張弁14cは、廃熱機器80から吸熱を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する吸熱用減圧部である。
【0034】
吸熱用膨張弁14cの出口には、チラー19の冷媒通路の入口側が接続されている。チラー19は、吸熱用膨張弁14cにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。チラー19は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と、水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発部である。チラー19の冷媒通路の出口には、第4継手13dの第3の流入口側が接続されている。室内蒸発器18およびチラー19は、冷媒流れに対して互いに並列的に接続されている。
【0035】
第4継手13dの流出口には、アキュムレータ21の入口側が接続されている。アキュムレータ21は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を貯える気液分離部である。アキュムレータ21の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0036】
アキュムレータ21には、分離された液相冷媒中に混在する冷凍機油を圧縮機11に戻すオイル戻し穴が形成されている。アキュムレータ21内の冷凍機油は、少量の液相冷媒とともに圧縮機11へ戻される。
【0037】
高温側熱媒体回路40は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路40には、水冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ41、ヒータコア42、電気ヒータ43等が配置されている。
【0038】
高温側熱媒体ポンプ41は、高温側熱媒体を水冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0039】
水冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア42の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア42は、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器18を通過した空気とを熱交換させて、空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。ヒータコア42の熱媒体出口には、高温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されている。
【0040】
従って、高温側熱媒体回路40では、高温側熱媒体ポンプ41が、ヒータコア42へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア42における高温側熱媒体の空気への放熱量(すなわち、ヒータコア42における空気の加熱量)を調整することができる。
【0041】
水冷媒熱交換器12、高温側熱媒体回路40およびヒータコア42は、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、空気を加熱する加熱部である。
【0042】
電気ヒータ43は、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータである。電気ヒータ43は、制御装置60から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱するための熱量を任意に調整することができる。
【0043】
低温側熱媒体回路50は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。低温側熱媒体回路50には、チラー19の水通路、低温側熱媒体ポンプ51、廃熱機器80等が配置されている。
【0044】
低温側熱媒体ポンプ51は、低温側熱媒体をチラー19の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側熱媒体ポンプ51の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ41と同様である。
【0045】
低温側熱媒体ポンプ51の吐出口には、廃熱機器80の入口側が接続されている。廃熱機器80には、低温側熱媒体が流れる熱媒体流路が設けられている。廃熱機器80は、作動に伴って廃熱が生じる車載機器である。廃熱機器80は、例えば、インバータ、モータージェネレータ、パワーコントロールユニット等の、車両の走行に伴って廃熱が生じる機器である。廃熱機器80は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池であってもよい。廃熱機器80の熱媒体出口には、チラー19の水通路の入口側が接続されている。チラー19の水通路の出口には、低温側熱媒体ポンプ51の吸入口側が接続されている。
【0046】
低温側熱媒体回路50には、低温側熱媒体の有する熱を外気に放熱させる低温側ラジエータが配置されていてもよい。
【0047】
低温側熱媒体回路50では、低温側熱媒体ポンプ51が、廃熱機器80へ流入する低温側熱媒体の流量を調整することによって、低温側熱媒体が廃熱機器80から奪う吸熱量を調整することができる。
【0048】
チラー19および低温側熱媒体回路50は、吸熱用膨張弁14cから流出した冷媒を蒸発させて、廃熱機器80から吸熱する吸熱部である。廃熱機器80および低温側熱媒体は、チラー19を流れる冷媒によって吸熱される吸熱対象物である。
【0049】
室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0050】
室内空調ユニット30は、図1に示すように、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア42等を収容したものである。
【0051】
空調ケース31は、車室内に送風される空気の空気通路を形成している。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0052】
空調ケース31の空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気(すなわち車室内空気)と外気(すなわち車室外空気)とを切替導入するものである。
【0053】
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。内外気切替ドア用の電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0054】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0055】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器18、ヒータコア42が、空気流れに対して、この順に配置されている。室内蒸発器18は、ヒータコア42よりも、空気流れ上流側に配置されている。
【0056】
空調ケース31内には、室内蒸発器18通過後の空気を、ヒータコア42を迂回して流す冷風バイパス通路35が設けられている。空調ケース31内の室内蒸発器18の空気流れ下流側、かつヒータコア42の空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
【0057】
エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の空気のうち、ヒータコア42側を通過する空気の風量と冷風バイパス通路35を通過させる空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0058】
空調ケース31内のヒータコア42および冷風バイパス通路35の空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア42にて加熱された空気と冷風バイパス通路35を通過して加熱されていない空気とを混合させる空間である。
【0059】
空調ケース31の空気流れ下流部には、混合空間にて混合された空気(すなわち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
【0060】
この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0061】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0062】
エアミックスドア34が、ヒータコア42を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される空気(空調風)の温度が調整される。
【0063】
フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整するものである。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整するものである。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するものである。
【0064】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成するものである。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0065】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0066】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0067】
乗員が、図2に示す操作パネル70に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0068】
次に、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a~14c、15a~15b、32、41、51等の作動を制御する。
【0069】
制御装置60の入力側には、図2のブロック図に示すように、内気温センサ61、外気温センサ62、日射センサ63、第1~第5冷媒温度センサ64a~64e、蒸発器温度センサ64f、第1冷媒圧力センサ65a、第2冷媒圧力センサ65b、高温側熱媒体温度センサ66a、第1低温側熱媒体温度センサ67a、第2低温側熱媒体温度センサ67b等が接続されている。そして、制御装置60には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
【0070】
内気温センサ61は、内気温Tr(すなわち車室内温度)を検出する内気温検出部である。外気温センサ62は、外気温Tam(すなわち車室外温度)を検出する外気温検出部である。日射センサ63は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
【0071】
第1冷媒温度センサ64aは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度T1を検出する吐出冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ64bは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の温度T2を検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ64cは、室外熱交換器16から流出した冷媒の温度T3を検出する第3冷媒温度検出部である。
【0072】
第4冷媒温度センサ64dは、室内蒸発器18から流出した冷媒の温度T4を検出する第4冷媒温度検出部である。第5冷媒温度センサ64eは、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の温度T5を検出する第5冷媒温度検出部である。
【0073】
蒸発器温度センサ64fは、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度である蒸発器温度Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。本実施形態の蒸発器温度センサ64fは、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。
【0074】
第1冷媒圧力センサ65aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P1を検出する第1冷媒圧力検出部である。第2冷媒圧力センサ65bは、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P2を検出する第2冷媒圧力検出部である。
【0075】
高温側熱媒体温度センサ66aは、水冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の温度である高温側熱媒体温度TWHを検出する高温側熱媒体温度検出部である。
【0076】
第1低温側熱媒体温度センサ67aは、チラー19の水通路から流出した低温側熱媒体の温度である第1低温側熱媒体温度TWL1を検出する第1低温側熱媒体温度検出部である。第2低温側熱媒体温度センサ67bは、廃熱機器80から流出した低温側熱媒体の温度である第2低温側熱媒体温度TWL2を検出する第2低温側熱媒体温度検出部である。
【0077】
図2に示すように、制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0078】
操作パネル70に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、室内蒸発器18で空気の冷却を行うことを要求するエアコンスイッチ、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
【0079】
なお、本実施形態の制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。制御装置60のうちそれぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)は、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0080】
例えば、制御装置60のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を制御する構成は、圧縮機制御部60aである。また、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cの作動を制御する構成は、膨張弁制御部60bである。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの作動を制御する構成は、冷媒回路切替制御部60cである。
【0081】
高温側熱媒体ポンプ41の高温側熱媒体の圧送能力を制御する構成は、高温側熱媒体ポンプ制御部60dである。低温側熱媒体ポンプ51の低温側熱媒体の圧送能力を制御する構成は、低温側熱媒体ポンプ制御部60eである。
【0082】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切り替えて、以下の5種類の運転モードでの空調運転を行うことができる。
【0083】
(1)冷房モード:冷房モードは、空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
【0084】
(2)外気暖房モード:外気暖房モードは、外気から吸熱した熱を利用して空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0085】
(3)外気廃熱暖房モード:外気廃熱暖房モードは、外気から吸熱した熱と廃熱機器80から吸熱した廃熱とを利用して空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0086】
(4)廃熱暖房モード:廃熱暖房モードは、廃熱機器80から吸熱した廃熱を利用して空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0087】
(5)着霜時廃熱暖房モード:着霜時廃熱暖房モードは、室外熱交換器16が着霜して使えないときに廃熱機器80から吸熱した廃熱を利用して空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0088】
これらの運転モードの切り替えは、制御プログラムが実行されることによって行われる。制御プログラムは、車両のイグニッションスイッチが投入(ON)された際に実行される。
【0089】
操作パネル70に設けられたエアコンスイッチが投入(ON)されており、且つ目標吹出温度TAOが冷房基準温度Tcl以下である場合、冷房モードが選択される。目標吹出温度TAOは、以下数式F1を用いて算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である。Trは内気センサ61によって検出された車室内温度である。Tamは外気センサ62によって検出された車室外温度である。Asは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0090】
外気温度Tamが暖房基準温度Tht未満である場合、またはエアコンスイッチが投入されていない(OFF)場合、外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モードのいずれか1つの運転モードが選択される。
【0091】
外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モードのいずれか1つの運転モードが選択されると、図3に示すように、吸入冷媒温度Ts、外気温Tam、廃熱機器80から流出した低温側熱媒体の温度である第2低温側熱媒体温度TWL2に基づいて、外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モードが切り替えられる。図に示すように、外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モードにおいて室外熱交換器16に着霜が生じた場合、着霜時廃熱暖房モードに切り替える。
【0092】
吸入冷媒温度Tsは、圧縮機11に吸入される冷媒の温度である。本実施形態では、吸入冷媒温度Tsとして、第2冷媒圧力センサ65bが検出した冷媒の圧力P2(すなわち、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の圧力)から算出した冷媒飽和温度が用いられている。吸入冷媒温度Tsとして、第3冷媒温度センサ64cが検出した冷媒の温度T3(すなわち、室外熱交換器16から流出した冷媒の温度)、および第5冷媒温度センサ64eが検出した冷媒の温度T5(すなわち、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の温度)のうち、低い方の温度が用いられてもよい。
【0093】
以下、外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モード、着霜時廃熱暖房モードの切替条件を図3に基づいて説明する。
【0094】
外気暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差(外気冷媒温度差)が吸熱可能温度差α1以上になっている状態が第1継続時間t1以上継続しており、且つ第2低温側熱媒体温度TWL2が、吸熱可能温度TW1に第1所定温度差β1を加えた値以上である場合、外気廃熱暖房モードに移行する。
【0095】
吸熱可能温度差α1は0~10℃程度(例えば5℃)である。第1継続時間t1は0~60秒程度(例えば30秒)である。吸熱可能温度差α1および第1継続時間t1の値は、室外熱交換器16で外気から確実に吸熱可能な温度差および時間として実験的に得られた値である。
【0096】
第1所定温度差β1は0~5℃程度である。第1所定温度差β1の値は、チラー19で低温側熱媒体から確実に吸熱可能な温度差として実験的に得られた値である。
【0097】
吸熱可能温度TW1は、外気温Tamに第2所定温度差β2を加えた値、および吸熱下限温度TWminに第3所定温度差β3を加えた値のうち大きい方の値である。すなわち、吸熱可能温度TW1は、以下数式F2を用いて決定される。
TW1=MAX[Tam+β2,TWmin+β3]…(F2)
第2所定温度差β2は0~10℃程度(例えば5℃)である。第3所定温度差β3は0~10℃程度(例えば5℃)である。第2所定温度差β2および第3所定温度差β3の値は、低温側熱媒体を暖房の熱源として利用可能な温度差として実験的に得られた値である。
【0098】
吸熱下限温度TWminは、廃熱機器80の結露を防止する観点、および機器特性から設定される温度であり、基本的に外気温度以上の温度が設定される。
【0099】
外気廃熱暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が下限温度差α2以下になっている状態が第2継続時間t2以上継続しており、且つ第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱可能温度TW1以上である場合、廃熱暖房モードに移行する。
【0100】
下限温度差α2は0~4℃程度(例えば2℃)である。第2継続時間t2は0~60秒程度(例えば30秒)である。下限温度差α2および第2継続時間t2は、室外熱交換器16で外気からの吸熱が困難となる温度差および時間として実験的に得られた値である。
【0101】
下限温度差α2は、吸熱可能温度差α1よりも小さい値に設定されている。これにより、外気廃熱暖房モードから廃熱暖房モードへの移行を極力抑制して、暖房の効率や性能を極力向上できる。
【0102】
廃熱暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が吸熱可能温度差α1以上になっている状態が第1継続時間t1以上継続している場合、外気廃熱暖房モードに移行する。
【0103】
廃熱暖房モードにおいて、第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱下限温度TWmin以下である場合、外気暖房モードに移行する。
【0104】
外気廃熱暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が下限温度差α2以下になっている状態が第2継続時間t2以上継続しており、且つ第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱可能温度TW1未満である場合、外気暖房モードに移行する。 外気廃熱暖房モードにおいて、第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱下限温度TWmin以下である場合も外気暖房モードに移行する。
【0105】
外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モードのいずれかにおいて、室外熱交換器16に着霜が生じた場合、着霜時廃熱暖房モードに移行する。例えば、吸入冷媒温度Tsが外気温Tamよりも所定値以上低い状態が所定時間以上継続した場合、室外熱交換器16に着霜が生じたと判定される。
【0106】
着霜時廃熱暖房モードにおいて、室外熱交換器16に着霜が生じていない場合、外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モードのいずれかに移行する。例えば、着霜時廃熱暖房モードに移行する直前に実行されていた運転モードに移行する。例えば、吸入冷媒温度Tsが着霜温度(例えば0℃)以上の状態が所定時間以上継続した場合、室外熱交換器16に着霜が生じていないと判定される。
【0107】
以下に、各運転モードにおける車両用空調装置1の作動について説明する。各運転モードでは、制御装置60が、各運転モードの制御フローを実行する。
【0108】
(1)冷房モード
冷房モードの制御フローでは、圧縮機11の回転数が、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度センサ64fによって検出された蒸発器温度Tefinとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに近づくように決定される。
【0109】
目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標蒸発器温度TEOが上昇するように決定される。
【0110】
冷房モードの制御フローでは、冷房用膨張弁14bの絞り開度が、目標過冷却度SCO1と室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように決定される。
【0111】
目標過冷却度SCO1は、例えば、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。
【0112】
室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1は、第3冷媒温度センサ64cによって検出された温度T3および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0113】
冷房モードの制御フローでは、以下数式F3を用いてエアミックスドア34の開度SWが算定される。
SW={TAO-(Tefin+C2)}/{TWH-(Tefin+C2)}…(F3)
なお、TWHは、高温側熱媒体温度センサ66aによって検出された高温側熱媒体温度である。C2は制御用の定数である。
【0114】
冷房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を冷房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、吸熱用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。
【0115】
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、第2逆止弁17b、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0116】
つまり、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、冷房用膨張弁14bが冷媒を減圧させる減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0117】
これによれば、室内蒸発器18にて、空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。
【0118】
従って、冷房モードの車両用空調装置1では、エアミックスドア34の開度調整によって、室内蒸発器18にて冷却された空気の一部をヒータコア42にて再加熱し、目標吹出温度TAOに近づくように温度調整された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
【0119】
(2)外気暖房モード
外気暖房モードの制御フローでは、圧縮機11の回転数が、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
【0120】
目標高温側熱媒体温度TWHOは、目標吹出温度TAOおよびヒータコア42の効率に基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標高温側熱媒体温度TWHOが上昇するように決定される。
【0121】
外気暖房モードの制御フローでは、暖房用膨張弁14aの絞り開度が、目標過冷却度SCO2と水冷媒熱交換器12の出口側冷媒の過冷却度SC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように決定される。
【0122】
目標過冷却度SCO2は、例えば、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。水冷媒熱交換器12の出口側冷媒の過冷却度SC2は、第2冷媒温度センサ64bによって検出された温度T2および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0123】
外気暖房モードの制御フローでは、吸熱用膨張弁14cを全閉状態とし、エアミックスドア34の開度SWを冷房モードと同様に算定する。外気暖房モードでは目標吹出温度TAOが高くなるので、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、外気暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
【0124】
外気暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を外気暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、吸熱用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを開く。
【0125】
従って、外気暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0126】
つまり、外気暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0127】
これによれば、室外熱交換器16にて外気から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱することができる。従って、外気暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0128】
(3)外気廃熱暖房モード
外気廃熱暖房モードの制御フローでは、外気暖房モードと同様に、圧縮機11の回転数と暖房用膨張弁14aの絞り開度とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。
【0129】
外気廃熱暖房モードの制御フローでは、吸熱用膨張弁14cの絞り開度が、目標過熱度SHCOとチラー19の出口側冷媒の過熱度SHCとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHCが目標過熱度SHCOに近づくように決定される。目標過熱度SHCOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。
【0130】
チラー19の出口側冷媒の過熱度SHCは、第5冷媒温度センサ64eによって検出された温度T5および第2冷媒圧力センサ65bによって検出された圧力P2に基づいて算出される。
【0131】
さらに、外気廃熱暖房モードでは、吸熱用膨張弁14cの絞り開度が、目標低温側熱媒体温度TWLOと第2低温側熱媒体温度TWL2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、第2低温側熱媒体温度TWL2が目標低温側熱媒体温度TWLOを下回らないように決定される。具体的には、第2低温側熱媒体温度TWL2が目標低温側熱媒体温度TWLOを下回りそうになると、吸熱用膨張弁14cの絞り開度を小さくしてチラー19での冷媒流量を減少させることによって、チラー19での低温側熱媒体からの吸熱量を減少させて第2低温側熱媒体温度TWL2の低下を抑制する。
【0132】
さらに、外気廃熱暖房モードの制御フローでは、吸熱用膨張弁14cの絞り開度が、外気温Tamと吸入冷媒温度Tsとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、吸入冷媒温度Tsが外気温Tamを超えないように決定される。具体的には、吸入冷媒温度Tsが外気温Tamを超えそうになると、吸熱用膨張弁14cの絞り開度を小さくしてチラー19での冷媒流量を減少させることによって、チラー19での低温側熱媒体からの吸熱量を減少させて吸入冷媒温度Tsの上昇を抑制する。
【0133】
外気廃熱暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を外気廃熱暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、吸熱用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを開く。
【0134】
従って、外気廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、吸熱用膨張弁14c、チラー19、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0135】
つまり、外気廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aおよび吸熱用膨張弁14cが減圧部として機能し、室外熱交換器16およびチラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0136】
これによれば、室外熱交換器16にて外気から吸熱するとともにチラー19にて低温側熱媒体を介して廃熱機器80から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱することができる。従って、外気廃熱暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0137】
(4)廃熱暖房モード
廃熱暖房モードの制御フローでは、外気暖房モードと同様に、圧縮機11の回転数とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。廃熱暖房モードの制御フローでは、暖房用膨張弁14aを全閉状態とする。
【0138】
廃熱暖房モードの制御フローでは、吸熱用膨張弁14cの絞り開度が、目標過冷却度SCO2と水冷媒熱交換器12の出口側冷媒の過冷却度SC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように決定される。
【0139】
目標過冷却度SCO2は、例えば、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。水冷媒熱交換器12の出口側冷媒の過冷却度SC2は、第2冷媒温度センサ64bによって検出された温度T2および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0140】
廃熱暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を廃熱暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、吸熱用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを閉じる。
【0141】
従って、廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、吸熱用膨張弁14c、チラー19、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0142】
つまり、廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、吸熱用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0143】
これによれば、チラー19にて低温側熱媒体を介して廃熱機器80から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱することができる。従って、廃熱暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0144】
(5)霜時廃熱暖房モード
着霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、廃熱暖房モードと同様に吸熱用膨張弁14cの絞り開度とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。着霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、廃熱暖房モードと同様に暖房用膨張弁14aを全閉状態とする。
【0145】
着霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、圧縮機11の回転数が、基本的には廃熱暖房モードと同様に決定される。ただし、着霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱下限温度TWminを下回らないように、圧縮機11の回転数が決定される。具体的には、第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱下限温度TWminを下回りそうな場合、圧縮機11の回転数を低下させる。第2低温側熱媒体温度TWL2が吸熱下限温度TWminを下回ってしまうと、チラー19で吸熱ができなくなって圧縮機11が停止して暖房ができなくなってしまうからである。
【0146】
霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を、廃熱暖房モードと同様の冷媒回路に切り替える。
【0147】
これによれば、室外熱交換器16に着霜が生じて外気から吸熱できない場合に、チラー19にて低温側熱媒体から吸熱できる状態を極力維持しながら車室内の暖房を行うことができる。
【0148】
(2)~(5)の各暖房モードにおいて、冷房用膨張弁14bを絞り状態とすることで除湿暖房を行うこともできる。
【0149】
以上の如く、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、各種運転モードを切り替えることができる。これにより、車両用空調装置1では、車室内の快適な空調を実現することができる。
【0150】
図4は、本実施形態の外気廃熱暖房モードにおける冷媒の状態の変化を示すモリエル線図である。図4に示すように、外気廃熱暖房モードにおいて、室外熱交換器16での冷媒温度が外気温度よりも低く、チラー19での冷媒温度が廃熱温度(すなわち低温側熱媒体の温度)よりも低い場合、外気から吸熱するとともに廃熱機器80の廃熱も吸熱して暖房を行うことができるので、暖房の効率や性能を向上できる。
【0151】
図5は、比較例の外気廃熱暖房モードにおける冷媒の状態の変化を示すモリエル線図である。この比較例は、外気廃熱暖房モードにおいて廃熱機器80の廃熱を吸熱することによって冷凍サイクルの低圧が上昇し、室外熱交換器16での冷媒温度が外気温度よりも高くなった状態を示している。このように室外熱交換器16での冷媒温度が外気温度よりも高くなると室外熱交換器16で冷媒から外気に放熱してしまうので暖房の効率や性能が悪化してしまう。
【0152】
この点に鑑みて、本実施形態では、外気廃熱暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が下限温度差α2以下であり、且つ低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱可能温度TW1以上である場合、廃熱暖房モードに切り替える。
【0153】
これによると、廃熱吸熱によって冷凍サイクルの低圧が上昇しても、廃熱暖房モードに切り替えることで室外熱交換器16で冷媒から外気に放熱することを抑制できるので、暖房の効率や性能の悪化を抑制できる。
【0154】
本実施形態では、外気暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が吸熱可能温度差α1以上であり、且つ低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱可能温度TW1に第1所定温度差β1を加えた値以上である場合、外気廃熱暖房モードに切り替える。
【0155】
これにより、外気暖房モードにおいて廃熱機器80から吸熱可能である場合、外気廃熱暖房モードに切り替えて暖房の効率や性能を向上できる。
【0156】
本実施形態では、廃熱暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が吸熱可能温度差α1以上である場合、外気廃熱暖房モードに切り替える。これにより、廃熱暖房モードにおいて外気から吸熱可能である場合、外気廃熱暖房モードに切り替えて暖房の効率や性能を向上できる。
【0157】
本実施形態では、廃熱暖房モードにおいて、低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱下限温度TWmin以下である場合、外気暖房モードに切り替える。これにより、廃熱機器80が過冷却されることを抑制しながら暖房運転を継続できる。
【0158】
本実施形態では、外気廃熱暖房モードにおいて、外気温Tamから吸入冷媒温度Tsを減じた温度差が下限温度差α2以下であり且つ低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱可能温度差α1未満である場合、または低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱下限温度TWmin以下である場合、外気暖房モードに切り替える。
【0159】
これによると、外気廃熱暖房モードにおいて外気から吸熱できず且つ廃熱機器80から吸熱できない場合、外気暖房モードに切り替えることで極力早期に外気から吸熱可能な状態にすることができる。外気廃熱暖房モードにおいて外気から吸熱できない場合や廃熱機器80から吸熱できない場合、外気暖房モードに切り替えて廃熱機器80が過冷却を抑制しながら暖房運転を継続できる。
【0160】
本実施形態では、霜時廃熱暖房モードにおいて、低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱下限温度TWminを下回ることを抑制するように圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する。
【0161】
これにより、霜時廃熱暖房モードで廃熱吸熱できなくなって圧縮機11が停止してしまうことを抑制できるので、車室内へ吹き出される空気の温度の変動が大きくなることを抑制できる。
【0162】
本実施形態では、外気暖房モードでは、水冷媒熱交換器12から流出した冷媒の過冷却度SC2に基づいて暖房用膨張弁14aの開度を制御する。廃熱暖房モードでは、水冷媒熱交換器12から流出した冷媒の過冷却度SC2に基づいて吸熱用膨張弁14cの開度を制御する。外気廃熱暖房モードでは、水冷媒熱交換器12から流出した冷媒の過冷却度SC2に基づいて暖房用膨張弁14aの開度を制御し、チラー19から流出した冷媒の過熱度SHCに基づいて吸熱用膨張弁14cの開度を制御する。
【0163】
これにより、外気暖房モード、廃熱暖房モードおよび外気廃熱暖房モードにおいて、暖房用膨張弁14aの開度および吸熱用膨張弁14cの開度を適切に制御して、室外熱交換器16およびチラー19での冷媒圧力(換言すれば冷媒温度)を適切に制御できる。
【0164】
外気廃熱暖房モードでは、水冷媒熱交換器12から流出した冷媒の過冷却度SC2に基づいて吸熱用膨張弁14cの開度を制御し、室外熱交換器16から流出した冷媒の過熱度SHCに基づいて暖房用膨張弁14aの開度を制御してもよい。
【0165】
本実施形態では、外気廃熱暖房モードでは、圧縮機11に吸入される冷媒の温度Tsが外気温度Tamを超えないように吸熱用膨張弁14cの開度を制御する。これにより、外気廃熱暖房モードと廃熱暖房モードとの間の切替の頻度を低減できるので、モード切替に伴う吹出温度の変動を低減できる。
【0166】
本実施形態では、外気廃熱暖房モードでは、低温側熱媒体の温度TWL2が吸熱下限温度TWmin以下になることを抑制するように吸熱用膨張弁14cの開度を制御する。これにより、外気廃熱暖房モードと外気暖房モードとの間の切り替えの頻度を低減できるので、モード切替に伴う吹出温度の変動を低減できる。
【0167】
(第2実施形態)
上記第1実施形態の冷凍サイクル装置10は、アキュムレータ21を備えるアキュムレータサイクルであるが、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、図6に示すように、アキュムレータ21の代わりにレシーバ25を備えるレシーバサイクルである。
【0168】
圧縮機11の吐出口には、三方弁15eの流入口側が配置されている。三方弁15eは、1つの流入口と、2つの流出口とを有し、2つの流出口の通路面積比を連続的に調整可能な電気式の三方流量調整弁である。三方弁15eは、制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0169】
三方弁15eの一方の流出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。三方弁15eの他方の流出口には、第1冷房用通路22cを介して、第7継手13gの第1接続口側が接続されている。
【0170】
第7継手13gの第2接続口には、室外熱交換器16の一方の接続口側が接続されている。第7継手13gの第3接続口には、暖房用通路22bを介して、第4継手13dの第1の流入口側が接続されている。暖房用通路22bのうち第7継手13gと第4継手13dとの間の部位には、暖房用開閉弁15bが配置されている。
【0171】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、第8継手13hの一方の流入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口側と第8継手13hの一方の流入口側とを接続する冷媒通路には、第4逆止弁17dが配置されている。第4逆止弁17dは、水冷媒熱交換器12側から第8継手13h側へ冷媒が流れることを許容し、第8継手13h側から水冷媒熱交換器12側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0172】
第8継手13hの流出口には、レシーバ25の冷媒入口側が接続されている。レシーバ25は、気液分離機能を有する貯液部である。すなわち、レシーバ25は、冷凍サイクル装置10において冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する熱交換部から流出した冷媒の気液を分離する。そして、レシーバ25は、分離された液相冷媒の一部を下流側に流出させ、残余の液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯える。
【0173】
レシーバ25の冷媒出口には、第1継手13aの流入口側が接続されている。第1継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。暖房用膨張弁14aの出口には、第9継手13iの第1接続口側が接続されている。第9継手13iの第2接続口には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。第9継手13iの第3接続口には、第2冷房用通路22dを介して、第8継手13hの他方の流入口側が接続されている。
【0174】
第2冷房用通路22dには、第5逆止弁17eが配置されている。第5逆止弁17eは、第9継手13i側から第8継手13h側へ冷媒が流れることを許容し、第8継手13h側から第9継手13i側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0175】
第1継手13aの他方の流出口には、バイパス通路22aを介して、第5継手13eの流入口側が接続されている。第5継手13eは、第1継手13aと同様の三方継手である。第5継手13eの一方の流出口には、冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。第5継手13eの他方の流出口には、吸熱用膨張弁14cの入口側が接続されている。
【0176】
本実施形態では、バイパス通路22aには、上記第1実施形態の除湿用開閉弁15aが配置されていない。
【0177】
冷凍サイクル装置10には、第1、第3~第5冷媒温度センサ64a、64c~64e、第2~第5冷媒圧力センサ65eが配置されている。これらのセンサ群の検出信号は制御装置60に入力される。
【0178】
第3冷媒圧力センサ65cは、圧縮機11から吐出された冷媒の圧力P3を検出する第3冷媒圧力検出部である。第4冷媒圧力センサ65dは、室外熱交換器16から流出した冷媒の圧力P4を検出する第4冷媒圧力検出部である。第5冷媒圧力センサ65eは、室内蒸発器18から流出した冷媒の圧力P5を検出する第5冷媒圧力検出部である。
【0179】
次に、上記構成の本実施形態の車両用空調装置の作動について説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、上記第1実施形態と同様に、冷房モード、外気暖房モード、外気廃熱暖房モード、廃熱暖房モード、霜時廃熱暖房モードの5種類の運転モードでの空調運転を行うことができる。これらの運転モードの切り替え条件は、上記第1実施形態と同様である。
【0180】
以下に、各運転モードにおける車両用空調装置1の作動について説明する。各運転モードでは、制御装置60が、各運転モードの制御フローを実行する。
【0181】
(1)冷房モード
冷房モードの制御フローでは、上記第1実施形態の冷房モードと同様に、圧縮機11の回転数とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。冷房モードの制御フローでは、吸熱用膨張弁14cを全閉状態とする。
【0182】
冷房モードの制御フローでは、冷房用膨張弁14bの絞り開度が、目標過熱度SHEOと室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEが目標過熱度SHEOに近づくように決定される。
【0183】
目標過熱度SHEOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEは、第4冷媒温度センサ64dによって検出された温度T4および第5冷媒圧力センサ65eによって検出された圧力P5に基づいて算出される。
【0184】
冷房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を冷房モードの冷媒回路に切り替えるために、制御装置60が、暖房用開閉弁15bを閉じ、三方弁15eが水冷媒熱交換器12側の流出口を閉じて第1冷房用通路22c側の流出口を開く。さらに、制御装置60は、暖房用膨張弁14aを全閉状態とし、冷房用膨張弁14bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、吸熱用膨張弁14cを全閉状態とする。
【0185】
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、第1冷房用通路22c、室外熱交換器16、第2冷房用通路22d、レシーバ25、バイパス通路22a、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0186】
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、上記第1実施形態の冷房モードと同様に車室内の冷房を行うことができる。
【0187】
(2)外気暖房モード
外気暖房モードの制御フローでは、上記第1実施形態の外気暖房モードと同様に、圧縮機11の回転数とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。
【0188】
外気暖房モードの制御フローでは、暖房用膨張弁14aの絞り開度が、目標過熱度SHO1と室外熱交換器16の出口側冷媒の過熱度SH1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SH1が目標過熱度SHO1に近づくように決定される。
【0189】
目標過熱度SHO1としては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。室外熱交換器16の出口側冷媒の過熱度SH1は、第3冷媒温度センサ64cによって検出された温度T3および第4冷媒圧力センサ65dによって検出された圧力P4に基づいて算出される。
【0190】
外気暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を外気暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、制御装置60が、暖房用開閉弁15bを開き、三方弁15eが水冷媒熱交換器12側の流出口を開いて第1冷房用通路22c側の流出口を閉じる。さらに、制御装置60は、暖房用膨張弁14aを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態として、冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cを全閉状態とする。
【0191】
これにより、外気暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、レシーバ25、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0192】
従って、外気暖房モードの冷凍サイクル装置10では、上記第1実施形態の外気暖房モードと同様に、室外熱交換器16にて外気から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱して車室内の暖房を行うことができる。
【0193】
(3)外気廃熱暖房モード
外気廃熱暖房モードの制御フローでは、本実施形態の外気暖房モードと同様に、圧縮機11の回転数と暖房用膨張弁14aの絞り開度とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。
【0194】
外気廃熱暖房モードの制御フローでは、上記第1実施形態の外気廃熱暖房モードと同様に吸熱用膨張弁14cの絞り開度が決定される。
【0195】
外気廃熱暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を外気廃熱暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、制御装置60が、暖房用開閉弁15bを開き、三方弁15eが水冷媒熱交換器12側の流出口を開いて第1冷房用通路22c側の流出口を閉じる。さらに、制御装置60は、暖房用膨張弁14aを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態として、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、吸熱用膨張弁14cを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とする。
【0196】
これにより、外気廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、レシーバ25、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、圧縮機11の吸入口の順に循環するとともに、レシーバ25、吸熱用膨張弁14c、チラー19、圧縮機11の吸入口の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0197】
従って、外気廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、上記第1実施形態の外気廃熱暖房モードと同様に、室外熱交換器16にて外気から吸熱するとともにチラー19にて低温側熱媒体を介して廃熱機器80から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱して車室内の暖房を行うことができる。
【0198】
(4)廃熱暖房モード
廃熱暖房モードの制御フローでは、上記第1実施形態の廃熱暖房モードと同様に、圧縮機11の回転数とエアミックスドア34の開度SWとが決定される。
【0199】
廃熱暖房モードの制御フローでは、吸熱用膨張弁14cの絞り開度が、目標過熱度SHCOとチラー19の出口側冷媒の過熱度SHCとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHCが目標過熱度SHCOに近づくように決定される。目標過熱度SHCOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。
【0200】
廃熱暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を廃熱暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、制御装置60が、暖房用開閉弁15bを閉じ、三方弁15eが水冷媒熱交換器12側の流出口を開いて第1冷房用通路22c側の流出口を閉じる。さらに、制御装置60は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、吸熱用膨張弁14cを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とする。
【0201】
これにより廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、レシーバ25、吸熱用膨張弁14c、チラー19、圧縮機11の吸入口の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0202】
従って、廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、上記第1実施形態の廃熱暖房モードと同様に、チラー19にて低温側熱媒体を介して廃熱機器80から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて空気を加熱して車室内の暖房を行うことができる。
【0203】
(5)霜時廃熱暖房モード
着霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、本実施形態の廃熱暖房モードと同様に吸熱用膨張弁14cの絞り開度とエアミックスドア34の開度SWとが決定され、暖房用膨張弁14aを全閉状態とする。
【0204】
着霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、上記第1実施形態の着霜時廃熱暖房モードと同様に圧縮機11の回転数が決定される。
【0205】
霜時廃熱暖房モードの制御フローでは、冷凍サイクル装置10を、本実施形態の廃熱暖房モードと同様の冷媒回路に切り替える。
【0206】
これによれば、上記第1実施形態の着霜時廃熱暖房モードと同様に、室外熱交換器16に着霜が生じて外気から吸熱できない場合に、チラー19にて低温側熱媒体から吸熱できる状態を極力維持しながら車室内の暖房を行うことができる。
【0207】
本実施形態のようなレシーバを使ったヒートポンプサイクルに対しても、上記第1実施形態と同様に適切な暖房モードに切り替えることができる。
【0208】
本実施形態では、外気暖房モードでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の過熱度SH1に基づいて暖房用膨張弁14aの開度を制御する。廃熱暖房モードでは、チラー19から流出した冷媒の過熱度SHCに基づいて吸熱用膨張弁14cの開度を制御する。外気廃熱暖房モードでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の過熱度SH1に基づいて暖房用膨張弁14aの開度を制御し、チラー19から流出した冷媒の過熱度SHCに基づいて吸熱用膨張弁14cの開度を制御する。
【0209】
これにより、外気暖房モード、廃熱暖房モードおよび外気廃熱暖房モードにおいて、暖房用膨張弁14aの開度および吸熱用膨張弁14cの開度を適切に制御して、室外熱交換器16およびチラー19での冷媒圧力(換言すれば冷媒温度)を適切に制御できる。
【0210】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0211】
(a)上述の実施形態では、複数の運転モードに切り替え可能な冷凍サイクル装置10について説明したが、冷凍サイクル装置10の運転モードの切り替えはこれに限定されない。少なくともオイル戻し制御の対象となる運転モードを実行可能であればよい。
【0212】
(b)冷凍サイクル装置の構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。上述した効果を発揮できるように、複数のサイクル構成機器を一体化等を行ってもよい。冷房用膨張弁14bおよび吸熱用膨張弁14cとして、全閉機能を有しない電気式膨張弁と開閉弁とを直接的に接続したものを採用してもよい。
【0213】
上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
【0214】
(c)加熱部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、第1実施形態で説明した高温側熱媒体回路40および低温側熱媒体回路50にラジエータを追加し、余剰の熱を外気に放熱させるようにしてもよい。ハイブリッド車両のように内燃機関(エンジン)を備える車両では、高温側熱媒体回路40にエンジン冷却水を循環させるようにしてもよい。
【0215】
(d)吸熱部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、吸熱部として、第1実施形態で説明した低温側熱媒体回路50のチラー19を凝縮部とし、廃熱機器80を蒸発部として機能させるサーモサイフォンを採用してもよい。これによれば、低温側熱媒体ポンプ51を廃止することができる。
【0216】
サーモサイフォンは、冷媒を蒸発させる蒸発部と冷媒を凝縮させる凝縮部とを有し、蒸発部と凝縮部とを閉ループ状に(すなわち、環状に)接続することによって構成されている。そして、蒸発部における冷媒の温度と凝縮部における冷媒の温度との温度差によって回路内の冷媒に比重差を生じさせ、重力の作用によって冷媒を自然循環させて、冷媒とともに熱を輸送する熱輸送回路である。
【0217】
上述の実施形態では、廃熱機器80から冷媒へ低温側熱媒体を介して吸熱されるが、廃熱機器80から冷媒へ空気を介して吸熱されるようになっていてもよいし、廃熱機器80から冷媒へ直接吸熱されるようになっていてもよい。
【0218】
(e)上述の各実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を車両用空調装置1に適用したが、冷凍サイクル装置10の適用はこれに限定されない。例えば、室内の空調を行う空調装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0219】
11 圧縮機
12 水冷媒熱交換器(加熱部)
14a 暖房用膨張弁
14b 冷房用膨張弁
14c 吸熱用膨張弁
15a 除湿用開閉弁(冷媒回路切替部)
15b 暖房用開閉弁(冷媒回路切替部)
16 室外熱交換器
18 室内蒸発器
60 制御装置(制御部)
80 廃熱機器(吸熱対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6