(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】極端紫外光光源装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240409BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20240409BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05H1/24
H05G2/00 K
(21)【出願番号】P 2020139864
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 則孝
(72)【発明者】
【氏名】藪田 泰伸
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-214656(JP,A)
【文献】特開2007-005542(JP,A)
【文献】特表2009-518853(JP,A)
【文献】特開2014-154271(JP,A)
【文献】特開2015-149186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光を放出するプラズマを発生させる光源部と、
前記極端紫外光が利用される利用装置と前記光源部の間に配置された真空筐体と、
前記真空筐体の内部に配置され、前記プラズマから前記利用装置に向けて放散されたデブリの進行方向を前記極端紫外光の光線方向からそらすデブリトラップと、
前記真空筐体の内部に配置され、前記プラズマと前記デブリトラップの間に配置された遮熱板構造体と、
前記遮熱板構造体を冷却する冷却機構を備え、
前記遮熱板構造体は、第1の遮熱板と、前記第1の遮熱板に間隔をおいて重なる第2の遮熱板を有し、
前記第2の遮熱板は、前記第1の遮熱板と前記プラズマの間に配置され、
前記第1の遮熱板は、前記冷却機構によって冷却されて
おり、
前記冷却機構は、前記真空筐体を冷却する水冷配管と、前記真空筐体に接触させられ前記第1の遮熱板を保持する保持部材を有する
ことを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項2】
前記第2の遮熱板は、前記真空筐体および前記冷却機構とは離隔しており、前記第1の遮熱板に接続されていない
ことを特徴とする請求項
1に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項3】
前記第2の遮熱板は、タングステン製の中央部と、前記中央部を囲むモリブデン製の周辺部を有し、中央部と周辺部が交換可能に結合されている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項4】
極端紫外光を放出するプラズマを発生させる光源部と、
前記極端紫外光が利用される利用装置と前記光源部の間に配置された真空筐体と、
前記真空筐体の内部に配置され、前記プラズマから前記利用装置に向けて放散されたデブリの進行方向を前記極端紫外光の光線方向からそらすデブリトラップと、
前記真空筐体の内部に配置され、前記プラズマと前記デブリトラップの間に配置された遮熱板構造体と、
前記遮熱板構造体を冷却する冷却機構を備え、
前記遮熱板構造体は、第1の遮熱板と、前記第1の遮熱板に間隔をおいて重なる第2の遮熱板を有し、
前記第2の遮熱板は、前記第1の遮熱板と前記プラズマの間に配置され、
前記第1の遮熱板は、前記冷却機構によって冷却されており、
前記第2の遮熱板は、タングステン製の中央部と、前記中央部を囲むモリブデン製の周辺部を有し、中央部と周辺部が交換可能に結合されている
ことを特徴とする極端紫外光光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放射する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)の開発が進められている。
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに、極端紫外光放射種(以下、EUV放射種ともいう)を加熱して励起することにより高温プラズマを発生させ、その高温プラズマからEUV光を取り出す方法がある。
【0003】
このような方法を採用するEUV光源装置は、高温プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間の間隙に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。DPP方式としては、例えば、特許文献1に記載されているように、放電を発生させる電極表面に液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ))を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Discharge Plasma)方式と呼ばれることもある。
【0004】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。つまり、EUV光源装置は、EUV光を利用する他の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用される。
EUV光は大気中では減衰しやすいので、プラズマから利用装置までは、減圧雰囲気つまり真空環境におかれている。
【0005】
一方、LDP方式で生成されたプラズマからはデブリが高速で放散される。デブリは、高温プラズマ原料であるスズ粒子、およびエネルギービームの照射を受けることによって僅かに欠損した放電電極の材料粒子を含む。デブリは利用装置に到達すると利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ性能を低下させることがあるので、デブリが利用装置に侵入しないように、放散されたデブリの進行方向をそらすデブリトラップが提案されている(特許文献1)。
【0006】
デブリトラップは、複数のホイルにより、配置された空間を細かく分割し、その部分のコンダクタンスを下げて圧力を上げる働きをする。デブリは、この圧力が上がった領域で雰囲気ガスとの衝突確率が上がるために速度が低下するとともに、デブリ進行方向がEUV光の光線方向からそれる。デブリトラップとしては、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップ(foil trap)と、比較的質量が大きい低速のデブリに対して、デブリ進行方向と直交する向きにホイルを回転運動させてデブリを捕捉する回転式ホイルトラップがある。1つの装置に、回転式ホイルトラップと固定式ホイルトラップの両方を設けてもよいし、一方を設けてもよい。
デブリトラップとプラズマの間には、遮熱板が配置される。遮熱板を配置する目的の一つは、デブリトラップが、プラズマからの放射によって高温になって破損することを防ぐことにある。遮熱板を配置するもう一つの目的は、デブリトラップに向けて進行するデブリをできるだけ少なくし、デブリトラップの負荷を減少させることにある。遮熱板には、利用装置に向けて進行するEUV光が通過する開口(アパーチャ)が形成されている。
遮熱板に堆積したデブリは、やがてある程度の量に達すると液滴となり重力により遮熱板の下方に集まり、デブリ収容容器(スズ回収容器)に落下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
EUV光源の高出力化にともないプラズマから放出される熱も増加するので、デブリトラップが過熱され破損することがある。デブリトラップは、プラズマから放出され遮熱板の開口を通過してデブリトラップに到達する直接的な放射の他に、プラズマからの放射によって加熱された遮熱板が発する二次的な熱輻射を受ける。したがって、デブリトラップの熱負荷を低減するためには、遮熱板の温度を下げればよい。
しかし、遮熱板を過度に冷却すると、デブリは遮熱板上で固化し、堆積してしまう。遮熱板上に到達したデブリは、液体となって重力により遮熱板の下方に集まり、デブリ収容容器に落下するのが望ましい。デブリが固体となって堆積する場合には、デブリが、あたかも鍾乳洞の石筍のように成長する。デブリの堆積物が成長すると、遮熱板の開口を塞いだり、他の部品に干渉したりして、光源の安定稼働を妨げることがある。したがって、光源が発光中は、遮熱板の温度をデブリの大部分であるスズの融点(約232℃)以上に維持しなければならない。
【0009】
そこで、本発明は、デブリトラップの過熱を防止し、かつ遮熱板に堆積するデブリによって装置の安定稼働が妨げられない極端紫外光光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様に係る極端紫外光光源装置は、極端紫外光を放出するプラズマを発生させる光源部と、前記極端紫外光が利用される利用装置と前記光源部の間に配置された真空筐体と、前記真空筐体の内部に配置され、前記プラズマから前記利用装置に向けて放散されたデブリの進行方向を前記極端紫外光の光線方向からそらすデブリトラップと、前記真空筐体の内部に配置され、前記プラズマと前記デブリトラップの間に配置された遮熱板構造体と、前記遮熱板構造体を冷却する冷却機構を備える。前記遮熱板構造体は、第1の遮熱板と、前記第1の遮熱板に間隔をおいて重なる第2の遮熱板を有する。前記第2の遮熱板は、前記第1の遮熱板と前記プラズマの間に配置されている。前記第1の遮熱板は、前記冷却機構によって冷却されるよう構成されている。
【0011】
この態様においては、プラズマからの放射により、プラズマに近い第2の遮熱板およびそこに堆積するデブリが高温になっても、プラズマから遠い第1の遮熱板を第2の遮熱板より低温にすることによって、第1の遮熱板の背後にあるデブリトラップの過熱を防止することができる。
【0012】
好ましくは、前記冷却機構は、前記真空筐体を冷却する水冷配管と、前記真空筐体に接触させられ前記第1の遮熱板を保持する保持部材を有する。
この場合には、水冷配管で冷却された真空筐体に保持部材を介して第1の遮熱板の熱が伝導し、第1の遮熱板が冷却される。
【0013】
さらに好ましくは、前記第2の遮熱板は、前記真空筐体および前記冷却機構とは離隔しており、前記第1の遮熱板に直接接続されていない。
この場合には、第2の遮熱板は、真空筐体、第1の遮熱板および冷却機構とは直接的な熱伝導がないので、第2の遮熱板はプラズマからの放射を受けたとき、高温に維持される。
【0014】
好ましくは、前記第2の遮熱板は、タングステン製の中央部と、前記中央部を囲むモリブデン製の周辺部を有し、中央部と周辺部が交換可能に結合されている。
この場合には、プラズマからの距離が近く温度が高くなりやすい中央部を、より高い融点を有するタングステンから形成することにより、第2の遮熱板の耐久性が向上する。周辺部は、タングステンより廉価なモリブデンから形成されているので、第2の遮熱板のコストを低減することができる。周辺部は、可撓性が高いモリブデンから形成されているので、周辺部を周囲の部材の配置に順応するように曲げ加工するのが容易である。また、中央部と周辺部が交換可能に結合されているので、中央部が高温で損傷した場合には、中央部のみを交換し周辺部を再利用することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様においては、遮熱板に堆積するデブリを高温に維持し、かつデブリトラップの過熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る極端紫外光光源装置を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る極端紫外光光源装置の一部を示す側面断面図である。
【
図3】実施形態に係る極端紫外光光源装置の回転式ホイルトラップの正面図である。
【
図4】実施形態に係る遮熱板構造体の横から見た断面図である。
【
図5】実施形態に係る遮熱板構造体の上から見た断面図である。
【
図6】実施形態に係る遮熱板構造体の斜視図である。
【
図7】実施形態に係る遮熱板構造体の第1の遮熱板の斜視図である。
【
図8】実施形態に係る遮熱板構造体の第2の遮熱板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0018】
極端紫外光光源装置(EUV光源装置)1は、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置またはリソグラフィ用マスクの検査装置の光源装置として使用可能な、例えば波長13.5nmの極端紫外光(EUV光)を放出する装置である。
実施形態に係るEUV光源装置1は、LDP方式のEUV光源装置である。より具体的には、EUV光源装置は、放電を発生させる一対の電極の表面に供給された液相のプラズマ原料にレーザビーム等のエネルギービームを照射してプラズマ原料を気化し、その後、電極間の放電によって高温プラズマを発生させる。プラズマからはEUV光が放出される。
【0019】
図1に示すように、EUV光源装置1は、内部でプラズマを発生させるチャンバ11を有する。チャンバ11は、剛体、例えば金属から形成されている。チャンバ(真空筐体)11の内部は、EUV光の減衰を抑制するため真空にされる。
図1におけるチャンバ11の内部の描写は、チャンバ11の内部の平面図である。
【0020】
チャンバ11の内部には、極端紫外光を放出するプラズマを発生させる光源部12が配置されている。光源部12は、一対の放電電極21a,21bを有する。放電電極21a,21bは、同形同大の円板であり、放電電極21aがカソードとして使用され、放電電極21bがアノードとして使用される。放電電極21a,21bは、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属から形成されている。
放電電極21a,21bは、互いに離隔した位置に配置されており、放電電極21a,21bの周縁部が近接している。カソード21aの周縁部とアノード21bの周縁部が最も接近した位置で、カソード21aとアノード21bの間の間隙では、放電が発生し、これに伴い高温プラズマが発生する。以下、カソード21aの周縁部とアノード21bの周縁部が最も接近した位置にあるカソード21aとアノード21bの間の間隙を「放電領域D」と呼ぶ。
【0021】
カソード21aは、モータ22aの回転軸23aに連結されており、カソード21aの軸線周りに回転する。アノード21bは、モータ22bの回転軸23bに連結されており、アノード21bの軸線周りに回転する。モータ22a,22bはチャンバ11の外部に配置されており、回転軸23a,23bはチャンバ11の外部から内部に延びている。回転軸23aとチャンバ11の壁の間の隙間は、例えば、メカニカルシール24aのようなシール部材で封止されており、回転軸23bとチャンバ11の壁の間の隙間も、例えば、メカニカルシール24bのようなシール部材で封止されている。シール部材は、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸23a,23bの回転を許容する。
このように放電電極21a,21bは、別個のモータ22a,22bによってそれぞれ駆動される。これらのモータ22a,22bの回転は、制御部15によって制御される。
【0022】
チャンバ11の内部には、液相のプラズマ原料25aが貯留されたコンテナ26aと、液相のプラズマ原料25bが貯留されたコンテナ26bが配置されている。コンテナ26a,26bには、加熱された液相のプラズマ原料25a,25bが供給される。液相のプラズマ原料25a,25bは、例えばスズ(Sn)である。
カソード21aの下部は、コンテナ26a内のプラズマ原料25aに浸されており、アノード21bの下部は、コンテナ26b内のプラズマ原料25bに浸されている。したがって、放電電極21a,21bには、プラズマ原料が付着する。放電電極21a,21bの回転に伴って、液相のプラズマ原料25a,25bは、高温プラズマを発生させるべき放電領域Dに輸送される。
【0023】
チャンバ11の外部には、カソード21aにコートされたプラズマ原料25aにエネルギービームを照射して、プラズマ原料25aを気化させるレーザ(エネルギービーム照射装置)28が配置されている。レーザ28は、例えばNd:YVO4レーザ(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate レーザ)であり、赤外レーザビームLを発する。但し、エネルギービーム照射装置は、プラズマ原料25aを気化させることができるレーザビーム以外のビームを発する装置であってもよい。
レーザ28によるレーザビームの照射タイミングは、制御部15によって制御される。
レーザ28から放出された赤外レーザビームLは、可動ミラー31に導かれる。レーザ28と可動ミラー31の間には、典型的には、集光手段が配置される。集光手段は、例えば集光レンズ29を有する。
【0024】
赤外レーザビームLは、チャンバ11の外部に配置された可動ミラー31により反射されて、チャンバ11の壁に設けられた透明窓30を通過して、放電領域D付近のカソード21aの外周面に照射される。
カソード21aの外周面に赤外レーザビームLを照射するのを容易にするため、放電電極21a,21bの軸線は平行ではない。回転軸23a,23bの間隔は、モータ側が狭く、電極側が広くなっている。
アノード21bは、カソード21aと可動ミラー31の間に配置されている。換言すれば、可動ミラー31で反射された赤外レーザビームLは、アノード21bの外周面付近を通過した後に、カソード21aの外周面に到達する。赤外レーザビームLの進行を邪魔しないように、アノード21bはカソード21aより、
図1の左側に退避している。
放電領域D付近のカソード21aの外周面にコートされた液相のプラズマ原料25aは、赤外レーザビームLの照射により気化して、気相のプラズマ原料が放電領域Dに発生する。
【0025】
放電領域Dで高温プラズマを発生させるため(気相のプラズマ原料をプラズマ化するため)、パルス電力供給部35がカソード21aとアノード21bに電力を供給し、カソード21aとアノード21bの間で放電を生じさせる。パルス電力供給部35は、周期的にパルス電力を放電電極21a,21bに供給する。
パルス電力供給部35は、チャンバ11の外部に配置されている。パルス電力供給部35から延びる給電線は、チャンバ11の壁に埋設されてチャンバ11内の減圧雰囲気を維持するシール部材36を通過して、チャンバ11の内部に延びている。
【0026】
この実施形態では、パルス電力供給部35から延びる2つの給電線は、それぞれコンテナ26a,26bに接続されている。コンテナ26a,26bは、導電性材料から形成されており、コンテナ26a,26bの内部のプラズマ原料25a,25bも導電性材料、スズである。コンテナ26a,26bの内部のプラズマ原料25a,25bには、放電電極21a,21bが浸されている。したがって、パルス電力供給部35がコンテナ26a,26bにパルス電力を供給すると、結果的にパルス電力が放電電極21a,21bに供給される。
カソード21aとアノード21bの間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料が、大電流により加熱励起されて、高温プラズマが発生する。また、高熱により、放電領域D付近のアノード21bの外周面にコートされた液相のプラズマ原料25bもプラズマ化される。
【0027】
高温プラズマからはEUV光Eが放出される。EUV光Eは、他の光学系装置である利用装置40(リソグラフィ装置またはマスク検査装置)で利用される。チャンバ11と利用装置40の間には、接続チャンバ(真空筐体)42が配置されている。接続チャンバ42の内部空間は、チャンバ11の壁に形成された貫通孔である窓43を介してチャンバ11と連通する。また、接続チャンバ42は利用装置40に連通する。図面では、利用装置40の一部のみを示す。また
図1では、接続チャンバ42の詳細の図示は省略する。
図2の側面断面図に示すように、接続チャンバ42の壁には、貫通孔である窓44が形成されており、接続チャンバ42の内部空間は、窓44を介して利用装置40と連通する。接続チャンバ42の内部も、EUV光Eの減衰を抑制するため真空にされる。放電領域Dのプラズマから放出されたEUV光Eは、窓43,44を通じて、利用装置40に導入される。
【0028】
一方、プラズマからはEUV光とともにデブリ46が放散される。デブリ46は、高温プラズマ原料であるスズ粒子、およびエネルギービームの照射を受けることによって僅かに欠損した放電電極21a,21bの材料粒子を含む。デブリ46は利用装置に到達すると利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ性能を低下させることがあるので、デブリ46が利用装置40に侵入しないように、デブリ46の進行方向をEUV光の光線方向からそらすためにデブリトラップが接続チャンバ42内に設けられている。この実施形態では、デブリトラップは、回転運動によりデブリ46を捕捉する回転式ホイルトラップ50を有する。図示しないが、固定式ホイルトラップを接続チャンバ42内のEUV光の光路上に設けてもよい。
【0029】
回転式ホイルトラップ50は、特許文献1に開示された構成を有する。具体的には、
図2および
図3に示すように、回転式ホイルトラップ50は、中心のハブ51、ハブ51に同心の外側リング52、ハブ51と外側リング52の間に配置された多数のホイル53を有する。各ホイル53は、薄膜または薄い平板である。ホイル53は、等しい角間隔をおいて放射状に配置されている。各ホイル53は、ハブ51の中心軸線を含む平面上にある。回転式ホイルトラップ50の材料は、例えばタングステンおよび/またはモリブデンのような高融点金属である。
ハブ51は、モータ(回転駆動装置)54の回転軸55に連結されており、ハブ51の中心軸線は回転軸55の中心軸線に合致する。回転軸55は回転式ホイルトラップ50の回転軸とみなすことができる。モータ54に駆動されて、回転式ホイルトラップ50は回転し、回転するホイル53は到来するデブリ46を捕捉して、デブリ46が利用装置40に侵入するのを阻止する。
回転式ホイルトラップ50が接続チャンバ42内に配置されているのに対して、モータ54は接続チャンバ42の外に配置されている。接続チャンバ42の壁には、回転軸55が通過する貫通孔56が形成されている。回転軸55と接続チャンバ42の壁の間の隙間は、例えば、メカニカルシール57のようなシール部材で封止されている。
【0030】
回転式ホイルトラップ50は、プラズマからの放射により高温となるため、過熱を防止するために、回転軸55を中空にして冷却水を流通させ冷却を行なうことがある。また、モータ54自体の焼損を防止するために、モータ54の周囲には水冷配管59が巻き付けられている。水冷配管59には、水が流されており、熱交換によりモータ54から熱を奪う。
また、プラズマから回転式ホイルトラップ50への放射を低減し過熱を防止するため、接続チャンバ42内には、高融点金属から形成された遮熱板構造体60が配置されている。遮熱板構造体60は、プラズマと回転式ホイルトラップ50の間に介在する。遮熱板構造体60には貫通する開口60aが形成されている。開口60aは、窓44とプラズマの間に位置する。
プラズマからは様々な方向にEUV光Eが放出される。EUV光Eの一部は、チャンバ11の窓43、遮熱板構造体60の開口60a、回転式ホイルトラップ50の複数のホイル53の隙間、窓44を通過して、利用装置40に導入される。回転式ホイルトラップ50の複数のホイル53は、プラズマ(発光点)から窓44に向かって進むEUV光Eを遮らないように、窓44に向かって進むEUV光Eの光線方向に平行に配置される。すなわち、
図2のように各ホイル53がハブ51の中心軸線を含む平面上に配置された回転式ホイルトラップ50の場合、ハブ51の中心軸線の延長線上にプラズマ(発光点)が存在するように配置すれば、各ホイル53で遮蔽されずに回転式ホイルトラップ50を通過するEUV光の割合(透過率ともいう)を最大にすることができる。
【0031】
この実施形態においては、回転式ホイルトラップ50が内在する接続チャンバ42の外部に、回転式ホイルトラップ50を回転させるモータ54が配置されている。したがって、モータ54およびモータ54の配線54a,54bと水冷配管59の点検および修理が容易である。また、モータ54の配線54a,54bと水冷配管59が接続チャンバ42の外部に配置されるので、接続チャンバ42の内部に配置される場合に比べて、接続チャンバ42の封止箇所を減らすことができる。真空の封止箇所が減ると、組み立て時および保守作業時に行なう真空リークの検査箇所が減り、また経年劣化による真空リークのリスクもなくなるため、装置の信頼性を改善することができる。さらに、モータ54が接続チャンバ42の外部に配置されるので、モータ54の冷却を容易に行うことができる。
【0032】
一方、プラズマからは様々な方向にデブリ46も放出される。デブリ46の一部は、チャンバ11の窓43を通じて接続チャンバ42に侵入する。接続チャンバ42の下方には、デブリ46が落下するデブリ収容容器64が配置されている。接続チャンバ42に侵入したデブリ46の一部は、遮熱板構造体60に堆積する。それらはプラズマからの遮熱板構造体60に加わる放射により溶融し、やがてある程度の量に達すると液滴となる。そして、その液滴は重力により遮熱板構造体60の下方に集まり、デブリ収容容器64に落下する。このように遮熱板構造体60は、回転式ホイルトラップ50に向けて進行するデブリ46を減少させる。接続チャンバ42に侵入したデブリ46の一部やコンテナ26a、26bから漏出したプラズマ原料は、接続チャンバ42内に設置されヒーターで加熱された受け板65に導かれてデブリ収容容器64に落下する。接続チャンバ42に侵入し遮熱板構造体60の開口60aを通過したデブリ46は、回転式ホイルトラップ50のホイル53に捕捉された後、デブリ収容容器64に落下する。
デブリ収容容器64は、接続チャンバ42の外部に配置されている。接続チャンバ42の底壁には、デブリ収容容器64の内部空間と接続チャンバ42の内部空間を連通させる貫通孔66が形成されている。デブリ収容容器64は、上部にフランジ64Aを有している。フランジ64Aで囲まれたデブリ収容容器64の開口部が貫通孔66に重ねられ、フランジ64Aが接続チャンバ42の底壁に、例えばネジで固定されている。フランジ64Aと接続チャンバ42の底壁の間の間隙は、ここに設けられたガスケット68により封止されている。
【0033】
デブリ46の大部分はスズであるので、デブリ収容容器64はスズ回収容器と呼ぶこともできる。デブリ収容容器64の周囲には、デブリ収容容器64を加熱するヒーター配線69が巻き付けられている。EUV光源装置1の使用の間、ヒーター配線69によって、デブリ収容容器64の内部はスズの融点(約232℃)以上に加熱され、デブリ収容容器64内部に蓄積されたスズは液相にされている。デブリ収容容器64の内部のスズを液相とする理由は、固体のデブリ46が蓄積する場合には、デブリ46が落下しやすい地点で蓄積物が、あたかも鍾乳洞の石筍のように、成長してゆくからである。デブリの蓄積物が石筍状に成長すると、例えば回転式ホイルトラップ50に接触して、回転式ホイルトラップ50の回転を妨げたり回転式ホイルトラップ50を損傷したりすることがある。あるいは、窓44に向かって進むEUV光Eの光路に蓄積物が達して、EUV光Eを遮ることもある。デブリ収容容器64の内部のスズを液相にすることで、スズがデブリ収納容器64内で平坦化され、効率よくスズを貯蔵することが可能となる。
デブリ収容容器64に蓄積されたスズを回収する場合には、ヒーター配線69による加熱を停止した後、デブリ収容容器64が常温に戻ってから、接続チャンバ42内部を大気圧に戻す。その後、デブリ収容容器64を接続チャンバ42から取り外し、新しい(スズの溜まっていない)デブリ収容容器64を接続チャンバ42に取り付ける。
接続チャンバ42から取り外されたデブリ収容容器64の内部のスズは固相になっているが、再加熱することによってデブリ収容容器64から取り出すことができる。
【0034】
この実施形態においては、回転式ホイルトラップ50で捕捉されたデブリ46が接続チャンバ42の壁に形成された貫通孔66を通じて、デブリ収容容器64に落下する。デブリ収容容器64は、接続チャンバ42の外部に配置されている。したがって、デブリ収容容器64を加熱するヒーター配線69にデブリ46が付着することがなく、ヒーター配線69の点検および修理が容易である。また、デブリ収容容器64を容易に接続チャンバ42から取り外すことができるので、デブリ収容容器64を新しいデブリ収容容器64に交換するのが容易である。また、取り外したデブリ収容容器64からスズを取り出した後、デブリ収容容器64は再利用することができる。
【0035】
さらに、接続チャンバ42の外部には、EUV光Eを監視する監視装置70が配置されている。監視装置70は、EUV光Eの存在を検出する検出器またはEUV光Eの強度を測定する測定器である。
接続チャンバ42の壁には、EUV光Eが通過する貫通孔である極端紫外光案内孔71が形成されており、極端紫外光案内孔71と監視装置70の間には、EUV光Eが漏れずに通過する管72が設けられている。
【0036】
上記の遮熱板構造体60には、貫通する開口60bが形成され、プラズマと開口60bを結ぶ直線の延長線上に監視装置70、極端紫外光案内孔71および管72が配置されている。したがって、プラズマから放出されるEUV光Eの一部は、チャンバ11の窓43、遮熱板構造体60の開口60b、回転式ホイルトラップ50の複数のホイル53の隙間、接続チャンバ42の壁の極端紫外光案内孔71、管72の内腔を通過して、監視装置70に到達する。
このようにして、EUV光Eを監視装置70によって監視することができる。監視装置70は接続チャンバ42の外部に配置されるので、接続チャンバ42の内部に配置される場合に比べて、監視装置70および監視装置70の配線70a,70bの点検および修理が容易である。また、監視装置70の配線70a,70bが接続チャンバ42の外部に配置されるので、接続チャンバ42の内部に配置される場合に比べて、接続チャンバ42の封止箇所が少ない。さらに、監視装置70が接続チャンバ42の外部に配置されるので、必要に応じて容易に冷却機構を付加することができるため、監視装置70の過熱を抑制することができる。
【0037】
次に遮熱板構造体60を詳述する。
図4から
図6に示すように、遮熱板構造体60は、2枚の遮熱板を有する複合構造を有する。具体的には、遮熱板構造体60は、第1の遮熱板75と第2の遮熱板76を有する。第2の遮熱板76は、第1の遮熱板75とプラズマの間に配置され、第1の遮熱板75に間隔をおいて重ねられている。
第2の遮熱板76は、支持フレーム90に取り付けられた複数の支柱91上に複数のネジ79によって交換可能に結合されている。支柱91は、第1の遮熱板75に設けられている貫通孔78を通過する。第2の遮熱板76を支持する支持フレーム90は、図示しない箇所で接続チャンバ42上に接続されている。後述するように、貫通孔78の直径は、支柱91の直径より大きくなっており、第1の遮熱板75と支柱91とは互いに接触しないように配置されている。
一方、第1の遮熱板75は、複数の保持部77(後述、
図5~
図7参照)を介して、接続チャンバ42に接続されている。このように、第2の遮熱板76と第1の遮熱板75とを直接取り付けずに、第1の遮熱板76に接触しないように第1の遮熱板76の貫通孔78を通過する支柱91を介して、第2の遮熱板76を支持フレーム90に取り付けることで、第2の遮熱板76と第1の遮熱板75の間の熱伝導を抑制することができる。ここで、支持フレーム90と支柱91は、熱伝導率が比較的小さいチタンやステンレスなどの金属材料や、アルミナ(Al
2O
3)やジルコニア(ZrO
2)などのセラミックスで構成される。
【0038】
第1の遮熱板75の貫通孔75aおよび第2の遮熱板76の中央部80の貫通孔76aは位置決めされ、上記の開口60aを構成する。開口60aは、プラズマから利用装置40へのEUV光Eの進行を許容する。
同様にして、第1の遮熱板75の貫通孔75bおよび第2の遮熱板76の中央部80の貫通孔76bもまた位置決めされ、上記の開口60bを構成する。開口60bは、プラズマから監視装置70へのEUV光Eの進行を許容する。
プラズマ(発光点)を始点として放散されるデブリのうち、第1の遮熱板75を含む平面上に到達するデブリは、第2の遮熱板76上の貫通孔76aおよび76bによって規定される。好ましくは、貫通孔75aおよび75bは、この第1の遮熱板75上のデブリ到達範囲を完全に包含するような大きさおよび形状であった方がよい。言い換えると、プラズマ(発光点)から第2の遮熱板76上の貫通孔76aおよび76bを通して第1の遮熱板75を見込んだ際に、第1の遮熱板75が第2の遮熱板76の影に入って見えなくなるように、貫通孔75aおよび75bの大きさおよび形状を選定した方がよい。なぜなら、プラズマからEUV光Eとともにデブリ46は直進するが、第2の遮熱板76の影とならない領域に第1の遮熱板75が露出していると、第1の遮熱板75に直接デブリが堆積するからである。例えば、貫通孔75aと76a、貫通孔75bと76bがそれぞれ同心同径で光軸上に配置されている場合、貫通孔75a、75bの周囲は第2の遮熱板76の影に入らないので、デブリが堆積する。その場合、第1の遮熱板75は後述の通り冷却されているため、デブリ46は溶融することなく堆積し続ける。やがて、第1の遮熱板75と第2の遮熱板76は堆積したデブリにより連結され熱伝導が生じるため、第2の遮熱板76の温度が低下して、第2の遮熱板76上にもデブリが堆積してしまう。
【0039】
支持フレーム90は、第2の遮熱板76を支持するだけでなく、回転式ホイルトラップ50で捕捉され、遠心力により回転式ホイルトラップ50のホイル上を径方向に移動し、前記ホイルの端部から離脱したデブリが接続チャンバ42の内部に飛散するのを防止する機能を有する。したがって、回転式ホイルトラップ50は、支持フレーム90によって全周を覆われる。支持フレーム90の前壁(遮熱板構造体60側の壁)には開口が設けられ、支持フレーム90の後壁(遮熱板構造体60と反対側の壁)には、貫通孔90a,90bが形成されている。貫通孔90aは、開口60aと窓44の間にあって、EUV光Eが利用装置40に進行するのを許容する。貫通孔90bは、開口60bと極端紫外光案内孔71の間にあって、EUV光Eが監視装置70に進行するのを許容する。支持フレーム90の下端には、デブリの排出孔90cが形成されている。回転式ホイルトラップ50から離脱したデブリは、排出孔90cを通じて落下し、貫通孔66を通じてデブリ収容容器64に受け止められる。
【0040】
第1の遮熱板75は、冷却機構によって除熱されるように構成されている。この実施形態では、冷却機構は、接続チャンバ42を冷却する水冷配管88(
図4、
図5参照)と、接続チャンバ42に接続され第1の遮熱板75を保持する保持部77(後述、
図5~
図7参照)を有する。水冷配管88は、実施形態では、接続チャンバ42の壁内に配置されているが、接続チャンバ42の外側または内側に配置して接続チャンバ42の壁に接触させてもよい。いずれにせよ、水冷配管88で冷却された接続チャンバ42に、保持部77を介して第1の遮熱板75の熱が伝導する。したがって、第1の遮熱板75が冷却される。
他方、第2の遮熱板76は、接続チャンバ42および冷却機構(水冷配管88と保持部77)とは離隔しており、第1の遮熱板75と間隔をおいている。しかも、第2の遮熱板76は第1の遮熱板75に接続されず、支持フレーム90に取り付けられた支柱91上に固定されている。したがって、第1の遮熱板75と第2の遮熱板76とは直接的な熱伝導がないため、第2の遮熱板76は高温に維持される。
プラズマに近い第2の遮熱板76ではなく、プラズマから遠い第1の遮熱板75を冷却し、第2の遮熱板76より低温にすることによって、プラズマによって高温になった第2の遮熱板76からの二次的な熱輻射を第1の遮熱板75で遮蔽し、第1の遮熱板75の背後にあるデブリトラップ(この実施形態では回転式ホイルトラップ50)の過熱を防止することができる。その際、第2の遮熱板76は、熱伝導による冷却を受けないので、プラズマからの放射を受け高温に維持される。したがって、第2の遮熱板76上に堆積したデブリは、やがてある程度の量に達すると液滴となる。そして、その液滴は重力により遮熱板構造体60の下方に集まりデブリ収容容器64に落下する。デブリ収容容器64はヒーター配線によりスズの融点(約232℃)以上に加熱されているので、蓄積されるスズを主とするデブリは局所的に存在することなく液体として平坦化されて貯蔵される。
【0041】
図7に示すように、第1の遮熱板75は、厚さが数mmの板であって、上端と下端が除去された円板の形状を有する。第1の遮熱板75の材料はモリブデンである。モリブデンの融点は約2600℃であり、第1の遮熱板75は高い耐熱性を有する。第1の遮熱板75の中央には、プラズマ(発光点)から監視装置70および利用装置40へのEUV光Eの光路を妨げない形状を持つ2つの貫通孔75a,75bがそれぞれ形成されている。
第1の遮熱板75の四隅には、接続チャンバ42に第1の遮熱板75を接続し保持するための保持部77が形成されている。このように、この実施形態では、第1の遮熱板75を保持する保持部77が第1の遮熱板75上に一体構造として形成されているが、保持部77は第1の遮熱板75との熱伝導が良好であればよく、第1の遮熱板75とは別個の部材を、溶接、ロウ付け、ネジ止め等で取り付けてもよい。その場合、保持部77はタングステンやモリブデン、アルミニウムや銅などの熱伝導率が良好な金属であってもよいし、炭化ケイ素(SiC)や窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)などの熱伝導が良好なセラミックスであってもよい。
【0042】
第1の遮熱板75には、複数の円形の貫通孔78が形成されている。各貫通孔78の直径は、背後の支持フレーム90に第2の遮熱板76を保持するための円柱状の支柱91の外径より大きくして、支柱91が貫通孔78の内周面に接触しないようにする。なお、貫通孔78の形状は必ずしも円形である必要はなく、同様に支柱91の形状は円柱状でなくともよい。
【0043】
図8に示すように、第2の遮熱板76は、中央部80と、中央部80を囲む周辺部81を有する。中央部80と周辺部81は、複数のネジ82によって交換可能に結合されている。中央部80は、厚さが数mmのタングステン製の円板である。周辺部81は、厚さが数mmのモリブデン製の円板であり、中央部80の外径よりはるかに大きい外径を有する。
周辺部81の中央には、周辺部81を貫通する開口81Aが形成されている。中央部80の外径は開口81Aの外径より大きく、中央部80は開口81Aを覆う。中央部80には、2つの貫通孔76a,76bが形成されている。
【0044】
第2の遮熱板76の周辺部81には、複数の貫通孔81bが形成されている。貫通孔81bの位置は、第1の遮熱板75の貫通孔78および支持フレーム90に取り付けられた支柱91に対応する位置である。ネジ79は、貫通孔81bを通過し、支柱91のネジ穴に締結されている。
【0045】
第2の遮熱板76において、プラズマからの直線距離が周辺部81より近く高温になる中央部80を、より高融点のタングステンから形成することにより、第2の遮熱板76の耐久性が向上する。周辺部81は、タングステンより廉価なモリブデンから形成されているので、第2の遮熱板76のコストを低減することができる。周辺部81は、可撓性が高いモリブデンから形成されているので、周辺部81を周囲の部材の配置に順応するように曲げ加工するのが容易である。例えば、この実施形態では、周辺部81の上部84と下部85が曲げ加工されており、遮熱板構造体60が接続チャンバ42内部の形状に干渉することなく配置可能である。また、中央部80と周辺部81が交換可能に結合されているので、中央部80が高温で損傷した場合には、中央部80のみを交換して周辺部81は再利用できるので、コストを低減することができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0047】
例えば、上記の実施形態においては、遮熱板構造体60の冷却機構は、接続チャンバ42を冷却する水冷配管88と、第1の遮熱板75を保持する保持部77である。しかし、遮熱板構造体60は、第1の遮熱板75を冷却するように第1の遮熱板75に接触する水冷配管または空冷配管(図示せず)でもよい。
上記の実施形態では、第2の遮熱板76が中央部80と周辺部81の二種類の部材から構成されている。しかし、第2の遮熱板76全体を、タングステン製の一種類の部材により構成してもよい。
上記の実施形態では、遮熱板構造体60は、2枚の遮熱板75,76を有する。但し、遮熱板構造体60はさらに多くの遮熱板を有してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 極端紫外光光源装置(EUV光源装置)
12 光源部
40 利用装置
42 接続チャンバ(真空筐体)
46 デブリ
50 回転式ホイルトラップ(デブリトラップ)
60 遮熱板構造体
60a 開口
60b 開口
64 デブリ収容容器
70 監視装置
75 第1の遮熱板
76 第2の遮熱板
77 保持部(冷却機構)
80 中央部
81 周辺部
88 水冷配管(冷却機構)