(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】壁掛式便器用取付装置およびトイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/14 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
E03D11/14
(21)【出願番号】P 2020146287
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 知祥
(72)【発明者】
【氏名】谷本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松崎 貴
(72)【発明者】
【氏名】神渡 幹也
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123667(JP,A)
【文献】特開2015-001081(JP,A)
【文献】特開2017-133288(JP,A)
【文献】特開2020-111926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/10-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室の壁裏空間に配置され、壁掛式便器を壁に固定する壁掛式便器用取付装置であって、
前記壁裏空間に立設されるフレームと、
前記フレームによって支持されたタンクと、前記タンクの前面に設けられ、前記壁を介して前記トイレ室に露出した操作パネルを含み、前記タンクに貯留された水を前記操作パネルへの操作に従って前記壁掛式便器に供給するタンク装置と
を備え、
前記フレームは、
上下方向に延在し、前記壁掛式便器よりも高い位置において前記タンクを支持する複数の支柱部と、
前記タンクよりも低い位置において前記支柱部同士を接続し、前記壁掛式便器の後端部が前記壁を介して固定される梁部と
を備え、
前記支柱部は、
前記タンクが固定される部位と、前記梁部が固定される部位との間に、前記支柱部の上下方向の長さを調整する高さ調整部を備える、壁掛式便器用取付装置。
【請求項2】
前記支柱部は、
前記タンクが固定される上側支柱部材と、
前記梁部が固定される下側支柱部材と
を備え、
前記高さ調整部は、前記上側支柱部材と前記下側支柱部材との連結部であって、前記上側支柱部材と前記下側支柱部材とを連結させた状態で、前記下側支柱部材に対する前記上側支柱部材の高さ位置を調整する、請求項1に記載の壁掛式便器用取付装置。
【請求項3】
前記タンクと前記壁掛式便器とを接続する給水管
を備え、
前記給水管は、
前記タンクから前記壁掛式便器までの流路長を変更可能な長さ調整部を備える、請求項1または2に記載の壁掛式便器用取付装置。
【請求項4】
前記タンクは、排水量を調整する排水量調整部を備える、請求項1~3のいずれか一つに記載の壁掛式便器用取付装置。
【請求項5】
前記壁掛式便器の上面に設置される衛生洗浄装置と、
前記タンクと前記衛生洗浄装置とを接続する接続ホースと、
前記接続ホースが挿通されるガイド管と
を備え、
前記接続ホースは、前記支柱部によって最も高い位置に支持された前記タンクと前記衛生洗浄装置とを接続可能な長さを有しており、
前記ガイド管は、前記接続ホースの余長部分を格納する格納空間を有する、請求項1~4のいずれか一つに記載の壁掛式便器用取付装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一つに記載の壁掛式便器用取付装置を備えるトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、壁掛式便器用取付装置およびトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁掛式の水洗大便器(以下、「壁掛式便器」と記載する)を壁に固定するための壁掛式便器用取付装置が知られている。壁掛式便器用取付装置は、トイレ室の壁裏空間に壁と接するように立設されたフレームを備えており、壁掛式便器は、トイレ室の壁を介してフレームに固定される。
【0003】
壁掛式便器用取付装置は、フレームの上部に操作パネルを備えている。操作パネルは、トイレ室の壁を介してトイレ室側に露出しており、使用者による操作が可能となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、たとえば壁掛式便器の上面に設置される衛生洗浄装置の種類によっては、衛生洗浄装置に設けられた便蓋を開いたときに、開いた便蓋が操作パネルと干渉するおそれがある。
【0006】
なお、特許文献1に記載の壁掛式便器用取付装置には、壁掛式便器の高さ位置を調整するための調整機構がフレームに設けられている。このため、特許文献1に記載の壁掛式便器用取付装置によれば、壁掛式便器の高さを下げることで、操作パネルと便蓋との干渉を回避することが可能である。しかしながら、壁掛式便器の高さを低くすると、水洗大便器の使用感を損ねるおそれがある。そのため、壁掛式便器の高さを変えずに操作パネルと便蓋との干渉を回避するためには、高さが異なる専用のフレームを複数用意する必要があった。複数のフレームが存在するとフレームに取り付けられたタンクの高さ位置が変化してしまい、洗浄能力が不安定になるおそれや、タンク装置と壁掛式便器とを連結する配管なども複数用意する必要があることから、壁掛式便器の設営が煩雑になるおそれがある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、壁掛式便器の背面側に位置する壁に設けられた操作パネルと便蓋との干渉を容易に回避することができ、回避に伴う壁掛式便器の設営を容易にした壁掛式便器用取付装置およびトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る壁掛式便器用取付装置は、トイレ室の壁裏空間に配置され、壁掛式便器を壁に固定する壁掛式便器用取付装置であって、前記壁裏空間に立設されるフレームと、前記フレームによって支持されたタンクと、前記タンクの前面に設けられ、前記壁を介して前記トイレ室に露出した操作パネルを含み、前記タンクに貯留された水を前記操作パネルへの操作に従って前記壁掛式便器に供給するタンク装置とを備え、前記フレームは、上下方向に延在し、前記壁掛式便器よりも高い位置において前記タンクを支持する複数の支柱部と、前記タンクよりも低い位置において前記支柱部同士を接続し、前記壁掛式便器の後端部が前記壁を介して固定される梁部とを備え、前記支柱部は、前記タンクが固定される部位と、前記梁部が固定される部位との間に、前記支柱部の上下方向の長さを調整する高さ調整部を備える。
【0009】
たとえば便器との一体感を向上させるために、便蓋のヒンジ位置を既存位置よりも後方に移動させた衛生洗浄装置が知られている。この種の衛生洗浄装置が備える便蓋は、ヒンジ位置を後方に移動させることで、既存の便蓋よりも大きく形成されるため、壁掛式便器の背面に位置する操作パネルとの干渉が生じ易い。これに対し、実施形態に係る壁掛式便器用取付装置は、タンクが固定される部位と、梁部が固定される部位との間に、支柱部の上下方向の長さを調整する高さ調整部を備える。これにより、壁掛式便器の高さ位置を変えることなく、タンクの前面に設けられた操作パネルの高さ位置を調整することができる。したがって、実施形態に係る壁掛式便器用取付装置によれば、壁掛式便器の使用感を損ねることなく、壁掛式便器の背面側の壁に設けられた操作パネルと便蓋との干渉を回避することができる。
【0010】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記支柱部は、前記タンクが固定される上側支柱部材と、前記梁部が固定される下側支柱部材とを備え、前記高さ調整部は、前記上側支柱部材と前記下側支柱部材との連結部であって、前記上側支柱部材と前記下側支柱部材とを連結させた状態で、前記下側支柱部材に対する前記上側支柱部材の高さ位置を調整する。
【0011】
たとえば継ぎ足し部材や異なる高さの上側支柱部材に交換するなどで、支柱部の高さを調整することも考えられるが、上側支柱部材を下側支柱部材から外さないといけないため付け替えが煩雑である。これに対し、実施形態に係る壁掛式便器用取付装置は、上側支柱部材と下側支柱部材とを連結させたまま支柱部の高さ調整が可能であるため、作業が容易である。また、継ぎ足し部材を別途用意する必要がないため、部品の無駄を抑えることができる。
【0012】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記タンクと前記壁掛式便器とを接続する給水管を備え、前記給水管は、前記タンクから前記壁掛式便器までの流路長を変更可能な長さ調整部を備える。
【0013】
支柱部の長さを調整すると、タンクから壁掛式便器までの距離が変化する。実施形態に係る壁掛式便器用取付装置は、流路長を調整可能な給水管を備えるため、支柱部の長さを調整した場合であっても、給水管を取り替える必要がない。したがって、支柱部の長さ調整に付随する作業を簡略化することができる。
【0014】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記タンクは、排水量を調整する排水量調整部を備える。
【0015】
タンクの高さ位置が変化すると、位置エネルギーの変化により、タンクから排出される水の勢いが変化する。この結果、適切な洗浄動作が行われなくなるおそれがある。これに対し、実施形態に係る壁掛式便器用取付装置は、タンクに排水量調整部を設けることで、タンクの高さ位置に合わせて排水量を調整することができるため、タンクの高さ位置によらず適切な洗浄動作を行うことができる。
【0016】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記壁掛式便器の上面に設置される衛生洗浄装置と、前記タンクと前記衛生洗浄装置とを接続する接続ホースと、前記接続ホースが挿通されるガイド管とを備え、前記接続ホースは、前記支柱部によって最も高い位置に支持された前記タンクと前記衛生洗浄装置とを接続可能な長さまたは必要な長さよりも長い余長分を有しており、前記ガイド管は、前記接続ホースの余長部分を格納する格納空間を有する。
【0017】
最も高い位置に支持されたタンクと衛生洗浄装置とを接続可能な長さまたは複数の高さに設定できるように必要な長さよりも長い余長分を含む長さの接続ホースを備えることで、タンクの高さによらず同一の接続ホースを使用することができる。また、たとえばタンクの高さを調整する作業を行う際に、接続ホースの余長部分が作業の邪魔になることを抑制することができる。加えて、接続ホースの余長分を壁裏空間へ格納することができるため、タンクと衛生洗浄装置とを接続に必要な長さよりも長い接続ホースを備えることができるため、タンクの高さ調整や衛生洗浄装置との接続において、操作を容易に行うことができる。
【0018】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記格納空間は、前記壁裏空間に設けられる。
【0019】
接続ホースの余長部分を格納する格納空間を壁裏空間に設けることで、たとえば、接続ホースの余長部分がトイレ室側に飛び出て使用者に視認されてしまうことを抑制することができる。
【0020】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記ガイド管は、一端部が前記タンクに連通するとともに、他端部が前記トイレ室の室内に連通する主管路と、前記主管路の中途部から分岐して前記格納空間を形成する分岐管路とを備える。
【0021】
かかる構成により、接続ホースの余長部分を湾曲させて確実に格納することができることから、たとえば接続ホースと衛生洗浄装置との接続部に負荷がかかることを好適に抑制することができる。
【0022】
また、上記した壁掛式便器用取付装置では、前記格納空間は、前記壁裏空間の左右方向または上下方向に広がる。
【0023】
トイレ室の室内の広さを確保する観点から、壁裏空間は、奥行き方向に狭く形成される傾向にある。これに対し、壁裏空間の左右方向または上下方向に広がる格納空間を有することで、奥行き方向に狭い壁裏空間に対してガイド管を適切に配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
実施形態の一態様によれば、壁掛式便器の背面側に位置する壁に設けられた操作パネルと便蓋との干渉を容易に回避することができ、回避に伴う壁掛式便器の設営を容易にした壁掛式便器用取付装置およびトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る衛生洗浄装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るタンクフレーム装置の正面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る高さ調整部の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る給水管の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るガイド管の側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るガイド管の側面図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係るガイド管の正面図である。
【
図9】
図9は、第2変形例に係るガイド管の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する壁掛式便器用取付装置およびトイレ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0027】
<トイレ装置の全体構成>
まず、
図1を参照して実施形態に係るトイレ装置の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。
【0028】
なお、
図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系が図示されている。かかる直交座標系は、他の図においても図示される場合がある。また、かかる直交座標系は、Y軸の正方向視を正面と規定し、X軸の正方向視を左側面、Xの負方向視を右側面、Z軸の負方向視を平面(「上面」ともいう)と規定している。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向(あるいは高さ方向)という場合がある。
【0029】
図1に示すように、実施形態に係るトイレ装置Tは、タンクフレーム装置1(「壁掛式便器用取付装置」の一例)と、壁掛式便器2と、衛生洗浄装置3とを備える。
【0030】
(タンクフレーム装置について)
タンクフレーム装置1は、トイレ室の壁裏空間に配置される。壁裏空間とは、水洗大便器2が配置されるトイレ室の室内に対してトイレ室の壁Wを挟んで反対側に位置する空間である。壁裏空間は、壁Wによって隠蔽される。
【0031】
タンクフレーム装置1は、フレーム11と、タンク装置12と、ガイド管13と、給水管14と、排水管15とを備える。フレーム11、タンク12、ガイド管13、給水管14および排水管15は、壁裏空間に配置される。
【0032】
フレーム11は、壁裏空間に立設され、上部においてタンク装置12を支持する。具体的には、フレーム11は、壁裏空間の床面から垂直上向きに延在する複数(ここでは2本)の支柱部111と、壁裏空間の床面に対して平行に延在し、支柱部111同士を接続する複数(ここでは3本)の梁部112~114とを備える。フレーム11が備える支柱部111および梁部112~114の数は、上記の例に限定されない。
【0033】
複数の梁部112~114のうち、梁部113は、タンク装置2よりも低く、排水管15よりも高い位置に設けられる。かかる梁部113には、壁掛式便器2の後端部が壁Wを介して固定される。具体的には、梁部113には、複数の取付孔115が形成されており、取付孔115には、ロッド状の支持部材(図示せず)が挿通される。支持部材は、壁部Wを介してトイレ室の室内に突出している。一方、壁掛式便器2の後端部には、梁部113の取付孔115に対応する位置に挿通孔が設けられており、かかる挿通孔に支持部材が挿通されることにより、壁掛式便器2は、フレーム11に支持された状態となる。
【0034】
タンク装置12は、タンク120と、操作パネル122とを備える。タンク120は、外部の給水源(図示せず)に接続され、給水源から供給される水を貯留する。タンク120の下部には、後述する給水管14が接続されており、タンク120に貯留された水は、給水管14を介して壁掛式便器2に供給される。タンク120の内部には、給水源からの水をタンク120に供給する給水装置、給水管14に連通するタンク120の排水口を開閉する排水弁装置等が設けられている。これら給水装置および排水弁装置による洗浄動作(給排水動作)は、後述する操作パネル122に対するボタン操作によって開始される。なお、タンク120は、たとえば、重力を利用して壁掛式便器2に水を供給する重力給水式である。
【0035】
タンク120の上部前面には、取付後のメンテナンス等を行うことができる開口部121が形成されている。通常使用時において、開口部121は操作パネル122によって塞がれた状態となっている。操作パネル122は、壁Wに設けられた開口を介してトイレ室に露出しており、使用者によって操作される。たとえば、操作パネル122には、給水装置および排水弁装置に対して大洗浄動作を開始させるための大洗浄ボタンと、小洗浄動作を開始させるための小洗浄ボタンとが設けられている。
【0036】
ガイド管13は、管状の部材であり、衛生洗浄装置3とタンク本体12を接続する接続ホースを案内する。接続ホースは、たとえば衛生洗浄装置3への給水を行うための給水ホースである。また、ガイド管13は、害虫や害獣等から接続ホースを保護する。接続ホースとしては、給水ホース以外にも衛生洗浄装置3とタンク本体12を接続するものであれば、自由に設けることができる。
【0037】
ガイド管13は、上下方向に延在しており、上部においてタンク本体12に接続され、下部は、壁Wの下部に設けられた貫通孔Whに連通する。図示しない接続ホースは、貫通孔Whからガイド管13に挿通され、ガイド管13によってタンク本体12の内部空間に導かれる。そして、接続ホースは、タンク本体12の内部空間に設けられた止水栓に分岐金具を介して接続される。なお、分岐金具の他方には、給水源から供給される水をタンク本体12の内部空間に供給するためのホースが接続される。ガイド管13の具体的構成については後述する。
【0038】
給水管14は、タンク120と壁掛式便器2とを接続し、タンク120に貯留された水を壁掛式便器2に供給する。給水管14は、上下方向に延在してタンク120の中央下部に接続される延在部141と、延在部141から水平方向に屈曲して壁掛式便器2の導水管(図示せず)と接続する屈曲部142とを備える。給水管14の具体的な構成については後述する。
【0039】
排水管15は、管状の部材である。排水管15は、排水口Dが設けられた壁裏空間の床面から垂直上向きに延伸し、壁掛用便器本体2の背面において水平向きに開口する排水流路(図示省略)の高さでおよそ90度に屈曲して、排水口Dと壁掛用便器本体2の排水流路とを接続する。
【0040】
(壁掛式便器について)
壁掛式便器2は、壁Wを介してフレーム11に固定される壁掛式の洋式大便器である。壁掛式便器2は、たとえば陶器製である。なお、壁掛式便器2は、樹脂製であってもよいし、陶器および樹脂の組み合わせにより形成されてもよい。壁掛式便器2は、給水管14を介してタンク120と接続されており、タンク120から供給される水を用いて洗浄動作を行う。洗浄動作とは、壁掛式便器2のボウル部で受けた汚物を床下の排水管に流す動作のことである。
【0041】
(衛生洗浄装置について)
衛生洗浄装置3は、壁掛式便器2の上面に設置される。衛生洗浄装置3の構成例について
図2を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る衛生洗浄装置3の斜視図である。
【0042】
図2に示すように、衛生洗浄装置3は、ケーシング311と、便座312と、便蓋313とを備える。ケーシング311は、壁掛式便器2の上面後部に設置される。便座312および便蓋313は、ケーシング311に対して回動可能に軸支される。
【0043】
ケーシング311の内部には、複数の機能部が収納されている。たとえば、ケーシング311の内部には、熱交換器ユニットやノズルユニット等が収納される。熱交換器ユニットは、接続ホースH(
図6等参照)を介してタンク120と接続され、タンク120から接続ホースHを介して供給された水を加熱する。熱交換器ユニットによって加熱された水は、ノズルユニットに供給される。ノズルユニットは、たとえば、洗浄ノズル、洗浄ノズルを可動させるノズルモータ等を備えており、熱交換器ユニットから供給される水(温水)を人体局部などに吐出する。
【0044】
なお、ケーシング311の内部には、他の機能部が設けられていてもよい。たとえば、ケーシング311には、電解槽等を含む多機能ユニット、トイレ室の脱臭を行う脱臭ユニット等が設けられてもよい。また、ケーシング311の内部には、バルブユニット、タンクユニット、ストレーナ、ポンプユニット等が設けられてもよい。
【0045】
操作パネル122は、衛生洗浄装置3の上方に位置する。このため、衛生洗浄装置3の便蓋313が開いたときに、便蓋313と操作パネル122とが干渉する可能性がある。たとえば、実施形態に係る衛生洗浄装置3は、壁掛式便器2との一体感を向上させるために、便蓋313のヒンジ位置を既存位置よりも後方に移動させていることから、便蓋313の寸法が比較的大きい。このような場合、操作パネルと便蓋313とが干渉する可能性がある。
【0046】
そこで、実施形態に係るタンクフレーム装置1では、フレーム11の支柱部111における、タンク120が固定される部位と、梁部113が固定される部位との間に、支柱部111の上下方向の長さを調整する高さ調整部を設けることとした。
【0047】
以下、タンクフレーム装置1の構成について具体的に説明する。
図3は、実施形態に係るタンクフレーム装置1の正面図である。
【0048】
図3に示すように、タンクフレーム装置1が備えるフレーム11の支柱部111は、上側支柱部材101と、下側支柱部材102と、高さ調整部103とを備える。
【0049】
上側支柱部材101および下側支柱部材102は、上下方向に延在する長尺状の部材である。このうち、上側支柱部材101は、下側支柱部材102の上方に位置する支柱部材であり、かかる上側支柱部材101には、タンク装置12が固定される。一方の支柱部111の上側支柱部材101と他方の支柱部111の上側支柱部材101とは、梁部112によって連結される。上側支柱部材101は筒状に形成されており、下部の開口101aから後述する高さ調整部103が挿入される。
【0050】
下側支柱部材102は、上側支柱部材101の下方に位置する。下側支柱部材102は、下部に設けられた脚部104を介して壁裏空間の床面に固定される。一方の支柱部111の下側支柱部材102と他方の支柱部111の下側支柱部材102とは、梁部113,114によって連結されている。なお、上述したように、梁部113には、壁Wを介して壁掛式便器2が固定される。また、梁部114には、排水管15が固定される。
【0051】
高さ調整部103は、上側支柱部材101と下側支柱部材102との連結部であり、下側支柱部材102の上部から上方に向かって延在する。高さ調整部103は、上側支柱部材101よりも一回り小さく形成されており、上側支柱部材101の開口101aから上側支柱部材101の内部に挿入される。
【0052】
高さ調整部103は、上側支柱部材101と下側支柱部材102とを連結させた状態、言い換えれば、高さ調整部103が上側支柱部材101の内部に挿入された状態で、下側支柱部材102に対する上側支柱部材101の高さ位置を調整することが可能である。
【0053】
図4は、実施形態に係る高さ調整部103の斜視図である。
図4に示すように、高さ調整部103には、上下方向に沿って複数の第1調整孔103aが設けられている。同様に、上側支柱部材101には、上下方向に沿って複数の第2調整孔101bが設けられている。なお、第1調整孔103aが一対設けられており、第2調整孔101bが複数対設けられていてもよい。
【0054】
高さ調整部103は、上側支柱部材101の下部に設けられた開口101aから上側支柱部材101の内部に挿入される。そして、高さ調整部103に設けられた何れかの第1調整孔103aと、上側支柱部材101に設けられた何れかの第2調整孔101bとの高さ位置を合わせた状態で、これら第1調整孔103aおよび第2調整孔101bに固定部材105を挿通させる。これにより、下側支柱部材102に対する上側支柱部材101の高さ位置が固定される。なお、固定部材105を上側支柱部材101または下側支柱部材102に設けてもよい。
【0055】
このように、実施形態に係るタンクフレーム装置1の支柱部111は、操作パネル122を含むタンク装置12が固定される上側支柱部材101と、壁掛式便器2の固定部に相当する梁部113が固定される下側支柱部材102との間に、支柱部111の上下方向の長さを調整する高さ調整部103を備える。
【0056】
これにより、壁掛式便器2の高さ位置を変えることなく、タンク120の前面に設けられた操作パネル122の高さ位置を調整することができる。したがって、実施形態に係るタンクフレーム装置1によれば、壁掛式便器2の使用感を損ねることなく、壁掛式便器2の背面側の壁に設けられた操作パネル122と便蓋313との干渉を回避することができる。
【0057】
また、実施形態に係るタンクフレーム装置1は、上側支柱部材101と下側支柱部材102とを連結させたまま支柱部111の高さ調整が可能であるため、たとえば継ぎ足し部材などで支柱部111の高さを調整する場合と比べて作業が容易である。また、継ぎ足し部材を別途用意する必要がないため、部品の無駄を抑えることができる。
【0058】
ここでは、下側支柱部材102の上部に高さ調整部103が設けられる場合の例について説明したが、高さ調整部103は、上側支柱部材101の下部に設けられてもよい。この場合、下側支柱部材102に複数の第2調整孔101bを設ければよい。また、ここでは、上側支柱部材101の内部に高さ調整部103が挿入される場合の例について説明したが、筒状に形成された高さ調整部103の内部に上側支柱部材101(または下側支柱部材102)が挿入されてもよい。
【0059】
次に、実施形態に係る給水管14の構成について
図5を参照して説明する。
図5は、実施形態に係る給水管14の断面図である。
【0060】
図5に示すように、実施形態に係る給水管14の延在部141は、複数(ここでは、3つ)の管状部材143~145に分割されている。管状部材143~145は、上方から、管状部材143、管状部材144および管状部材145の順番で配置される。
【0061】
管状部材143~145の内径は、これらのうち最も高い位置に配置される管状部材143が最も大きく、管状部材144、管状部材145の順に小さくなる。すなわち、下流側に配置される管状部材ほど内径が小さく形成される。なお、管状部材143~145の内径の大小関係は、上記の例に限定されず、たとえば、管状部材143および管状部材145が同一の内径を有し、管状部材144が、管状部材143および管状部材145よりも大きいまたは小さい内径を有していてもよい。
【0062】
管状部材143と管状部材144との間には、シール部材146が設けられる。また、管状部材144と管状部材145との間には、シール部材147が設けられる。シール部材146,147は、たとえばOリングである。管状部材144は、シール部材146により、管状部材143と管状部材144との密閉状態を維持したまま、管状部材143に対して上下方向にスライドすることができる。同様に、管状部材145は、シール部材147により、管状部材144と管状部材145との密閉状態を維持したまま、管状部材144に対して上下方向にスライドすることができる。
【0063】
このように、給水管14は、タンク120から壁掛式便器2までの流路長を変更可能な長さ調整部(管状部材143~145およびシール部材146,147)を備える。
【0064】
支柱部111の長さを調整すると、タンク120から壁掛式便器2までの距離が変化する。実施形態に係るタンクフレーム装置1は、流路長を調整可能な給水管14を備えるため、支柱部111の長さを調整した場合であっても、給水管14を取り替える必要がない。このように、実施形態に係るタンクフレーム装置1によれば、支柱部111の長さ調整に付随する作業を簡略化することができる。
【0065】
また、
図3に示すように、タンク120の内部には、タンク120からの排水量を調整する排水量調整部123が設けられている。排水量調整部123は、たとえば、タンク120内の排水弁装置に設けられる。一例として、排水弁装置は、上方に延在する弁体主軸を有し、弁体主軸の上下動に応じてタンクの排水口を開閉する排水弁体と、タンク120内の水位に連動して上下動するフロート部とを備えており、フロート部は、タンク120内において水を貯留し、貯留する水を排出可能な調整窓を有する貯水桶(排水量調整部123に相当)と、貯水桶に収容され、下降時には貯水桶内の水位に連動するフロートとを備える。調整窓は、たとえば左右方向にスライドすることで、貯水桶の側面に形成された開口の開放面積を変更することができる。これにより、貯水桶からの排水量を調整することができる。貯水桶からの排水量を調整することで、タンク120からの排水量を調整することができる。
【0066】
タンク120の高さ位置が変化すると、位置エネルギーの変化により、タンク120から排出される水の勢いが変化する。この結果、適切な洗浄動作が行われなくなるおそれがある。これに対し、実施形態に係るタンクフレーム装置1は、タンク120に排水量調整部を設けることで、タンク120の高さ位置に合わせて排水量を調整することができるため、タンク120の高さ位置によらず適切な洗浄動作を行うことができる。
【0067】
次に、実施形態に係るガイド管13の構成について
図6および
図7を参照して説明する。
図6および
図7は、実施形態に係るガイド管13の側面図である。
図6には、蛇腹管が延びた状態のガイド管13を示しており、
図7には、蛇腹管が縮んだ状態のガイド管13を示している。なお、
図6および
図7では、壁Wやフレーム11等を省略して示している。
【0068】
図6および
図7に示すように、実施形態に係るガイド管13は、長さ調整部としての蛇腹管131を備える。蛇腹管131は、蛇腹状の配管部材であり、伸縮可能である。ガイド管13の一端は、タンク120に固定され、他端は梁部114に固定される。かかるガイド管13は、中途部に設けられた蛇腹管131が伸縮することで、支柱部111の長さに応じてガイド管13の全長を可変することができる。
【0069】
このように、支柱部111の長さを調整した場合であっても、ガイド管13を取り替える必要がないため、支柱部111の長さ調整に付随する作業を簡略化することができる。
【0070】
タンク120と衛生洗浄装置3とを接続する接続ホースHは、支柱部111によって最も高い位置に支持されたタンク120と衛生洗浄装置3とを接続可能な長さを有している。このため、タンク120の高さによらず同一の接続ホースHを使用することが可能である。
【0071】
一方、接続ホースHを長めにすると、タンク120が低い位置に配置された場合に、余長部分が生じ、たとえば接続ホースHがトイレ室の室内に飛び出る等、タンク120の高さを調整する作業の邪魔になるおそれがある。
【0072】
これに対し、実施形態に係るガイド管13は、接続ホースHの余長部分を格納する格納空間132を有する。格納空間132は、ガイド管13の内部空間の一部を拡大させることによって形成された余剰空間である。たとえば、格納空間132は、壁裏空間において、蛇腹管131よりも下流側(壁掛式便器2側)に設けられる。特に、格納空間132は、貫通孔Wh(
図1参照)の近傍に設けられている。貫通孔Whの近傍に格納空間132を設けることで、接続ホースHの余長分の引き出しや押し入れをスムーズに行うことができる。
【0073】
このように、ガイド管13に格納空間132を設けることで、タンク120の高さを調整する作業を行う際に、接続ホースHの余長部分が作業の邪魔になることを抑制することができる。また、壁裏空間に格納空間132を設けることで、接続ホースHの余長部分が使用者に視認されてしまうことを抑制することができる。
【0074】
次に、上述したガイド管13の変形例について
図8および
図9を参照して説明する。
図8は、第1変形例に係るガイド管の正面図である。また、
図9は、第2変形例に係るガイド管の側面図である。
【0075】
図8に示すように、第1変形例に係るガイド管13Aは、主管路133Aと分岐管路134Aとを備える。主管路133Aは、一端部がタンク120に連通するとともに、他端部がトイレ室の室内に連通する。上述した蛇腹管131は、主管路133Aに設けられる。分岐管路134Aは、主管路133Aの中途部から分岐して格納空間132を形成する。分岐管路134Aは、主管路133Aからの分岐部分に括れ部135Aを有している。
【0076】
このように、分岐管路134Aに格納空間132を設けることで、接続ホースHの余長部分を湾曲させて確実に格納することができることから、たとえば接続ホースHと衛生洗浄装置3との接続部に負荷がかかることを好適に抑制することができる。また、実施形態に係るガイド管13に比べて接続ホースHの余長分を多く収納することができる。また、接続ホースHの余長分が湾曲されて格納空間132に収納されることにより生じる反発力(戻り力)によって、格納した接続ホースHの余長分が突出することを抑制することができる。
【0077】
また、分岐管路134Aは、主管路133Aの側方に延びている。すなわち、格納空間132は、壁裏空間の左右方向に広がっている。トイレ室の室内の広さを確保する観点から、壁裏空間は、奥行き方向(Y軸方向)に狭く形成される。第1変形例に係るガイド管13Aのように、壁裏空間の左右方向に延びる格納空間132を有することで、奥行き方向に狭い壁裏空間にガイド管13Aを適切に配置することができる。
【0078】
図9に示すように、第2変形例に係るガイド管13Bは、主管路133Bと分岐管路134Bとを備える。分岐管路134Bは、主管路133Bからの分岐部分に括れ部135Bを有している。
【0079】
第2変形例に係る分岐管路134Bは、主管路133Bの下方に延びている。すなわち、格納空間132は、壁裏空間の上下方向に広がっている。
【0080】
このように、格納空間132は、壁裏空間の上下方向に広がっていてもよい。この場合も、奥行き方向に狭い壁裏空間にガイド管13Bを適切に配置することができる。
【0081】
上述してきたように、実施形態に係る壁掛式便器用取付装置(一例として、タンクフレーム装置1)は、トイレ室の壁裏空間に配置され、壁掛式便器(一例として、壁掛式便器2)を壁(一例として、壁W)に固定する壁掛式便器用取付装置であって、壁裏空間に立設されるフレーム(一例として、フレーム11)と、フレームによって支持されたタンク(一例として、タンク120)と、タンクの前面に設けられ、壁を介してトイレ室に露出した操作パネル(一例として、操作パネル122)を含み、タンクに貯留された水を操作パネルへの操作に従って壁掛式便器に供給するタンク装置(一例として、タンク装置1)とを備え、フレームは、上下方向に延在し、壁掛式便器よりも高い位置においてタンクを支持する複数の支柱部(一例として、支柱部111)と、タンクよりも低い位置において支柱部同士を接続し、壁掛式便器の後端部が壁を介して固定される梁部(一例として、梁部113)とを備え、支柱部は、タンクが固定される部位と、梁部が固定される部位との間に、支柱部の上下方向の長さを調整する高さ調整部(一例として、高さ調整部103)を備える。
【0082】
したがって、実施形態に係る壁掛式便器用取付装置によれば、壁掛式便器の背面側に位置する壁に設けられた操作パネルと便蓋との干渉を容易に回避することができ、回避に伴う壁掛式便器の設営を容易にすることができる。
【0083】
他の実施形態として、フレームは、上下方向に延在し、壁掛式便器よりも高い位置においてタンクを支持する複数の支柱部(一例として、支柱部111)と、タンクよりも低い位置において支柱部同士を接続し、壁掛式便器の後端部が壁を介して固定される梁部(一例として、梁部113)とを備え、支柱部は、タンクが固定される部位と、梁部が固定される部位との間に、支柱部の上下方向の長さを調整する高さ調整部を備え、高さ調整部よりも上側の上側支柱部材を交換可能にすることもできる。このように、複数の高さの上側支柱部材を弁蓋の位置に合わせて交換することにより、弁蓋と操作ボタンとの干渉を防ぐことができる。また、上記実施形態のように給水管14の延在部141や格納空間132を備えることにより、複数の高さの上側支柱部材を弁蓋の位置に合わせて交換する場合でも、給水管14や接続ホースHを複数用意しなくても、弁蓋と操作ボタンとの干渉を防いだ状態で壁掛式便器の設営を容易に行うことができる。
【0084】
また、上記他の実施形態において、高さ調整機構を備えたフレームに代えて、高さが異なる複数種類のフレームを用意し、弁蓋と操作ボタンとの高さや使用環境に合わせてフレームの高さを選択してもよい。複数の高さのフレームに合わせて、上記実施形態のように給水管14の延在部141や格納空間132を備えることにより、給水管14や接続ホースHを各高さに合わせて複数用意する必要がなく、弁蓋と操作ボタンとの干渉を防いだ状態で壁掛式便器の設営を容易に行うことができる。また、上記実施形態のように給水管14の延在部141や格納空間132を備えることにより、給水管14や接続ホースHをプラットフォーム化することができるので、壁掛式便器用取付装置の費用を抑えることができる。
【0085】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 :タンクフレーム装置
2 :壁掛式便器
3 :衛生洗浄装置
11 :フレーム
12 :タンク装置
14 :給水管
15 :排水管
101 :上側支柱部材
102 :下側支柱部材
103 :高さ調整部
111 :支柱部
112~114 :梁部
120 :タンク
121 :開口部
122 :操作パネル
131 :蛇腹管
132 :格納空間
141 :延在部
142 :屈曲部
311 :ケーシング
312 :便座
313 :便蓋
T :トイレ装置
W :壁