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特許7468278通信制御装置、通信制御方法、および通信制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法、および通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/20 20090101AFI20240409BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20240409BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H04W28/20
H04W4/40
G08G1/09 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020163786
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056016
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山岡 功佑
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065676(WO,A1)
【文献】特開2000-115198(JP,A)
【文献】国際公開第2011/045828(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/090285(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/065407(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/052447(WO,A1)
【文献】特開2019-080320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1411295(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
G08G 1/09
H04L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(A)と前記車両の外部との間の通信を制御する前記車両に搭載された通信制御装置であって、
前記車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅であって要求帯域幅を、前記車両のセンシング能力に基づいて算出する算出部(130)と、
前記要求帯域幅の確保を、前記車両の外部の通信管理装置(3)に要求する要求部(140)と、
前記要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、前記車両にて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定する規定部(150)と、
を備え、
前記算出部は、前記特定処理に必須な必須帯域幅と、前記必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類の帯域を、前記車両に搭載されたセンサ(20)の種類と前記車両の走行環境との関係に応じた、前記車両の自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、前記センサによって取得される周辺環境情報と、の差分に基づく前記要求帯域幅として算出し、
前記規定部は、複数種類の前記要求帯域幅のうち確保可能と応答された前記要求帯域幅を、前記利用帯域と規定する通信制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記要求帯域幅を、前記センシング能力と前記車両の演算能力とに基づいて算出する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記規定部は、前記通信管理装置にて確保された前記要求帯域幅の変更に関する変更情報を取得し、前記変更情報に基づいて、規定する前記利用帯域を変更する請求項1または請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
車両(A)と前記車両の外部との間の通信を制御するために、前記車両に搭載されたプロセッサ(102)により実行される通信制御方法であって、
前記車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を、前記車両のセンシング能力に基づいて算出する算出プロセス(S320)と、
前記要求帯域幅の確保を、前記車両の外部の通信管理装置(3)に要求する要求プロセス(S330)と、
前記要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、前記車両にて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定する規定プロセス(S350)と、
を含み、
前記算出プロセスでは、前記特定処理に必須な必須帯域幅と、前記必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類の帯域を、前記車両に搭載されたセンサ(20)の種類と前記車両の走行環境との関係に応じた、前記車両の自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、前記センサによって取得される周辺環境情報と、の差分に基づく前記要求帯域幅として算出し、
前記規定プロセスでは、複数種類の前記要求帯域幅のうち確保可能と応答された前記要求帯域幅を、前記利用帯域と規定する通信制御方法。
【請求項5】
車両(A)と前記車両の外部との間の通信を制御するために、記憶媒体(101)に格納され、前記車両に搭載されたプロセッサ(102)に実行させる命令を含む通信制御プログラムであって、
前記命令は、
前記車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を、前記車両のセンシング能力に基づいて算出させる算出プロセス(S320)と、
前記要求帯域幅の確保を、前記車両の外部の通信管理装置(3)に要求させる要求プロセス(S330)と、
前記要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、前記車両にて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定させる規定プロセス(S350)と、
を含み、
前記算出プロセスでは、前記特定処理に必須な必須帯域幅と、前記必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類の帯域を、前記車両に搭載されたセンサ(20)の種類と前記車両の走行環境との関係に応じた、前記車両の自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、前記センサによって取得される周辺環境情報と、の差分に基づく前記要求帯域幅として算出させ、
前記規定プロセスでは、複数種類の前記要求帯域幅のうち確保可能と応答された前記要求帯域幅を、前記利用帯域と規定させる通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両と外部との間の通信を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のシステムは、安全運転支援のサービス対象を、交通事故発生率が高い特定エリアに限定する。このシステムは、車両の特定エリアへの進入を検知すると、位置、速度、方向の情報をアップロードし、衝突を起こす可能性のある車両同士で情報を交換することで、通信帯域幅を使用する車両を限定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-198260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両が送受信するデータ量は、近年増加傾向にある。このため、特許文献1の技術のように、単に通信エリアを限定するのみでは、当該エリア内において無線通信を実行する車両の台数が多い、または送受信するデータ量が大きい等の場合には、輻輳が発生し得る。
【0005】
開示される目的は、輻輳を抑制可能な通信制御装置、通信制御方法、および通信制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された通信制御装置のひとつは、車両(A)と車両の外部との間の通信を制御する車両に搭載された通信制御装置であって、
車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を、車両のセンシング能力に基づいて算出する算出部(130)と、
要求帯域幅の確保を、車両の外部の通信管理装置(3)に要求する要求部(140)と、
要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、車両にて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定する規定部(150)と、
を備え、
算出部は、特定処理に必須な必須帯域幅と、必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類の帯域を、車両に搭載されたセンサ(20)の種類と車両の走行環境との関係に応じた、車両の自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、センサによって取得される周辺環境情報と、の差分に基づく要求帯域幅として算出し、
規定部は、複数種類の要求帯域幅のうち確保可能と応答された要求帯域幅を、利用帯域と規定する。
【0008】
開示された通信制御方法のひとつは、車両(A)と車両の外部との間の通信を制御するために、車両に搭載されたプロセッサ(102)により実行される通信制御方法であって、
車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を、車両のセンシング能力に基づいて算出する算出プロセス(S320)と、
要求帯域幅の確保を、車両の外部の通信管理装置(3)に要求する要求プロセス(S330)と、
要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、車両にて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定する規定プロセス(S350)と、
を含み、
算出プロセスでは、特定処理に必須な必須帯域幅と、必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類の帯域を、車両に搭載されたセンサ(20)の種類と車両の走行環境との関係に応じた、車両の自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、センサによって取得される周辺環境情報と、の差分に基づく要求帯域幅として算出し、
規定プロセスでは、複数種類の要求帯域幅のうち確保可能と応答された要求帯域幅を、利用帯域と規定する。
【0009】
開示された通信制御プログラムのひとつは、車両(A)と車両の外部との間の通信を制御するために、記憶媒体(101)に格納され、車両に搭載されたプロセッサ(102)に実行させる命令を含む通信制御プログラムであって、
命令は、
車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を、車両のセンシング能力に基づいて算出させる算出プロセス(S320)と、
要求帯域幅の確保を、車両の外部の通信管理装置(3)に要求させる要求プロセス(S330)と、
要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、車両にて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定させる規定プロセス(S350)と、
を含み、
算出プロセスでは、特定処理に必須な必須帯域幅と、必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類の帯域を、車両に搭載されたセンサ(20)の種類と車両の走行環境との関係に応じた、車両の自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、センサによって取得される周辺環境情報と、の差分に基づく要求帯域幅として算出させ、
規定プロセスでは、複数種類の要求帯域幅のうち確保可能と応答された要求帯域幅を、利用帯域と規定させる。
【0010】
これらの開示によれば、車両における特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅が、車両の演算能力およびセンシング能力の少なくとも一方に基づいて算出され、要求帯域幅の確保が、通信管理装置に要求される。そして、要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、車両にて利用される通信帯域幅である利用帯域が規定される。故に、各車両の能力に応じて、利用帯域が適切に割り当てられ得る。したがって、車両と外部との通信において輻輳を抑制可能な通信制御装置、通信制御方法、および通信制御プログラムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両システムおよびセンタサーバを示す図である。
図2】通信ECUを含む車両システム全体を示す図である。
図3】通信ECUが有する機能の一例を示すブロック図である。
図4】センタサーバが有する機能の一例を示すブロック図である。
図5】各周辺環境センサのセンシング能力の一例を示す表である。
図6】自動運転ECUが実行する通信要求生成方法の一例を示すフローチャートである。
図7】通信ECUが実行する通信制御方法の一例を示すフローチャートである。
図8】センタサーバが実行するリソース調停方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の通信ECU100を含む全体システムについて、図1図8を参照しながら説明する。通信ECU100は、車両Aに搭載された電子制御装置である。車両Aは、基地局BSおよびネットワークNWを介して、センタサーバ3と通信可能である。通信ECU100は、図2に示すように、自車状態センサ10、周辺環境センサ20、ナビゲーション装置30、自動運転ECU40、狭域通信器50、広域通信器60および走行アクチュエータ70と通信バス等を介して接続されている。
【0013】
自車状態センサ10は、車両Aの各種状態を検出するセンサ群である。自車状態センサ10は、例えば、GNSS受信機11、車速センサ12、加速度センサ13、角速度センサ14を含む。GNSS受信機11は、測位衛星からの航法信号に基づく車両Aの位置を検出する。車速センサ12は、車両Aの速度を検出する。加速度センサ13は、車両Aに作用する加速度を検出する。角速度センサ14は、車両Aに作用する角速度を検出する。
【0014】
周辺環境センサ20は、車両Aの周辺環境に関する各種情報を検出するセンサ群である。周辺環境センサ20は、例えば、周辺監視カメラ21、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)22、ミリ波レーダ23、ソナー24を含む。周辺監視カメラ21は、車両Aの前方を含んだ所定範囲を撮像する。LiDAR22は、レーザ光を射出し、レーザ光が地物にて反射された反射光を検知することで、地物の特徴点の点群を検出する。ミリ波レーダ23は、射出したミリ波または準ミリ波の反射波を受信することで、周辺環境の検出情報を生成する。ソナー24は、超音波の反射を受信することで、周辺環境の検出情報を生成する。
【0015】
ナビゲーション装置30は、ユーザによって設定された目的地までの経路案内を行う車載装置である。ナビゲーション装置30は、目的地までの複数経路を、例えば時間優先および距離優先等の条件を満たすように探索する。探索された複数経路のうちの一つが選択されると、ナビゲーション装置30は、進行予定経路に関する経路情報を自動運転ECU40に提供する。
【0016】
自動運転ECU40および通信ECU100は、それぞれメモリ40a,101、プロセッサ40b,102、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。プロセッサ40b,102は、演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ40b,102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)およびRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0017】
メモリ40a,101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータ等を非一時的に格納または記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体および光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。メモリ40a,101は、対応するプロセッサ40b,102によって実行される種々のプログラムを格納している。具体的には、メモリ40aは、車両Aの走行支援を実行する走行支援プログラムを格納している。そして、メモリ101は、車両Aとクラウドおよび/または他車両との通信を制御する通信制御プログラムを格納している。
【0018】
プロセッサ40b,102は、対応するメモリ40a,101に格納されたプログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより、自動運転ECU40および通信ECU100は、複数の機能部を構築する。各ECU40,100の構築する機能部の詳細については、後述する。通信ECU100は、「通信制御装置」の一例である。
【0019】
狭域通信器50および広域通信器60は、車両Aに搭載される通信モジュールである。狭域通信器50は、路車間(Vehicle to roadside Infrastructure,以下「V2I」)通信および車車間(Vehicle to Vehicle,以下「V2V」)通信等の比較的狭域での通信機能を有している。広域通信器60は、LTE(Long Term Evolution)および5G等の通信規格に沿ったV2N(Vehicle to cellular Network)通信の機能を少なくとも有しており、車両Aの周囲の基地局BSとの間で電波を送受信する。広域通信器60は、V2N通信により、クラウドと車載システムとの連携(Cloud to Car)を可能にする。広域通信器60の搭載により、車両Aは、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。
【0020】
走行アクチュエータ70は、車両Aの走行を制御する走行制御デバイス群である。走行アクチュエータ70は、例えば、電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータを含む。走行アクチュエータ70は、自動運転ECU40からの制御指示に基づいて、当該制御指示に従う自律走行または運転支援を実行する。なお、走行アクチュエータ70は、制御指示を自動運転ECU40から直接取得してもよいし、他のECUを介して間接的に取得してもよい。
【0021】
次に、自動運転ECU40および通信ECU100が構築する機能部の詳細について図3を参照して説明する。自動運転ECU40は、車両Aの走行を部分的または実質全て制御する自動走行制御のための機能部を複数構築する。具体的には、自動運転ECU40は、自車位置特定部41、周辺環境認識部43、経路設定部44、車車間連携部45、クラウド連携部46および自動運転制御部47を機能部として構築する。
【0022】
自車位置特定部41は、自車状態センサ10から得られる挙動情報と車載機の記憶部に記録された走行環境DB42から取得される地図データに基づいて、車両Aの位置を特定する。
【0023】
周辺環境認識部43は、周辺環境センサ20から得られる車両A周辺の移動体の情報や地物情報、走行環境DBに格納された周辺環境情報を使って、自車周辺の状態を推定する。経路設定部44は、進行予定経路に関する経路情報をナビゲーション装置30から取得し、自動走行において車両Aが辿る経路として設定する。
【0024】
車車間連携部45は、狭域通信器50および通信ECU100を介して、他車両から送信されたデータの取得および他車両へ送信するデータの提供を実行する。
【0025】
クラウド連携部46は、広域通信器60および通信ECU100を介して、クラウドから送信されたデータを取得する。具体的には、クラウド連携部46は、予定経路上の走行環境情報をセンタサーバ3から取得する。走行環境情報は、渋滞などの交通情報や、道路構造の複雑度、天候情報や事故やイベントなどの規制情報等を含む。
【0026】
自動運転制御部47は、自車位置から車両Aの周辺環境を認知し、制御内容を判断し、走行アクチュエータ70に出力する制御指示を生成する。加えて、自動運転制御部47は、走行環境情報に基づいて、車両Aの走行領域がODD(運行設計領域)を超えているか否かを判定する。ODDを超えていると判定した場合、自動運転制御部47は、自動運転による走行不可と判断し、走行制御のドライバへのハンドオーバー、または車両Aの停車等の処理の実行に移行する。走行領域がODD内であると判定した場合、自動運転制御部47は、通信を利用せずに自動運転制御を継続できるか否かを判定する。走行領域がODD内であり、且つ通信不要で自動運転制御を継続可能であると判定した場合、自動運転制御部47は、自動運転制御処理を継続する。走行領域がODD内であり、且つ通信が必要であると判定した場合、自動運転制御部47は、通信活用要求を生成し、通信活用可否の問い合わせを通信ECU100に対して行う。
【0027】
自動運転制御部47は、車両Aの備えるセンサ群および制御ソフトの性能に基づく、走行予測ルートをユーザの要求した自動運転レベルを維持して通過するために必要な周辺環境情報との差分を、通信活用要求として算出する。例えば、周辺環境センサ20として周辺監視カメラ21のみ搭載されている車両Aの場合は、図5の表に示すように、夜間や逆光、悪天候(濃霧等)の環境下においてカメラ認識性能が低下することが想定される。したがってこのような環境下で走行中であると判断した場合、自動運転制御部47は、周辺の移動体の位置情報等の取得を、通信活用要求としてリクエストする。なお、図5の表において、丸印、三角印、バツ印の順に、該当する環境において対応する周辺環境センサ20の性能が低下する。また、表中のアスタリスクは、対応する周辺環境センサ20の搭載場所または個数によって、対応する環境での性能の評価が変化することを示す。または、自動運転制御部47は、自動運転ECU40における演算能力に基づいて、通信活用要求を生成してもよい。
【0028】
また、自動運転制御部47は、複数の水準の通信活用要求を作成する。例えば、自動運転制御部47は、希望水準および必須水準の2水準の通信活用要求を、生成する。
【0029】
自動運転制御部47は、通信ECU100からの問い合わせ応答を受信すると、通信活用可能範囲を確認した後、設定範囲内に通信利用を制限するクラウド活用条件を設定する。
【0030】
次に、通信ECU100の構築する機能部について説明する。通信ECU100は、車両Aの通信制御のための機能部を複数構築する。具体的には、通信ECU100には、狭域送受信部110、広域送受信部120、要求帯域幅算出部130、帯域幅要求部140、および連携条件通知部150等の機能部が構築される。狭域送受信部110は、狭域通信器50を介して外部との通信を実施する。広域送受信部120は、広域通信器60を介して外部との通信を実施する。
【0031】
要求帯域幅算出部130は、車両Aにおける自動運転制御の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を、車両Aの演算能力およびセンシング能力の少なくとも一方に基づいて算出する。例えば、要求帯域幅算出部130は、上述したセンシング能力に基づいて自動運転制御部47にて生成された通信活用要求の問い合わせを取得すると、通信活用要求内容を確認し、要求内容に必要な通信帯域幅を算出する。このとき、要求帯域幅算出部130は、希望水準に対応した希望帯域幅および必須水準に対応した必須帯域幅の2つの帯域を、要求帯域幅として算出する。自動運転制御は、「特定処理」の一例である。また、要求帯域幅算出部130は、「算出部」の一例である。
【0032】
帯域幅要求部140は、広域送受信部120を介して、算出された要求帯域幅に関する情報を、通信帯域幅予約要求としてセンタサーバ3へ送信する。帯域幅要求部140は、「要求部」の一例である。
【0033】
連携条件通知部150は、要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、車両Aにて利用する通信帯域幅である利用帯域を規定する。具体的には、連携条件通知部150は、要求に対するセンタサーバ3からの応答結果を受けて、自動運転制御部47の問い合わせに対して応答する。応答内容には、希望帯域幅可、必須帯域幅可、帯域幅確保不可を返却する。予約済みの要求に対してセンタサーバ3から変更通知を受信した場合は、変更内容を自動運転ECU40へ通知する。連携条件通知部150は、「規定部」の一例である。
【0034】
センタサーバ3は、複数の車両Aが利用する通信帯域幅を管理する通信管理装置である。センタサーバ3は、自動運転ECU40および通信ECU100と同様に、メモリ301、プロセッサ302、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。メモリ301は、プロセッサ302によって実行されるリソース調停プログラム等の種々のプログラムを格納している。
【0035】
プロセッサ302は、メモリ301に格納されたプログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより、センタサーバ3は、複数の機能部を構築する。具体的には、センタサーバ3は、リソース調停プログラムに含まれる命令を実行することで、図4に示すように、要求応答部310および無線リソース調停部320を機能部として構築する。
【0036】
要求応答部310は、車両Aからの通信帯域幅予約要求の受信および要求に対する応答の送信を実行する。
【0037】
無線リソース調停部320は、基地局BS毎の無線リソースのキャパシティを管理し、車両Aからの通信帯域幅予約要求に応じてリソースを予約する。無線リソース調停部320は、問い合わせのあった基地局BSエリア内の無線リソースのキャパシティを無線リソースDB340から取得する。加えて、無線リソース調停部320は、無線リソースの現在の予約状況を予約リソースDB330から取得する。無線リソース調停部320は、要求された要求帯域幅を確保できるかを予測する。無線リソース調停部320は、無線リソースがキャパシティ内に収まり、希望帯域幅まで確保できる場合は要求に対して希望帯域幅可の応答を実行する。また、無線リソース調停部320は、必須帯域幅まで確保できる場合は要求に対して必須帯域幅可の応答を実行する。
【0038】
一方で、要求帯域幅がキャパシティオーバーする場合、無線リソース調停部320は、予約済みのリソースに対して再割り付けが可能かを確認する。無線リソース調停部320は、希望帯域幅として許可された無線リソースを対象として、再割り付けの判断を行う。すなわち、無線リソース調停部320は、希望帯域幅として許可された予約済みの無線リソースを必須帯域幅に変更すると、キャパシティオーバーしている要求帯域幅を確保可能になるか否かを判定する。再割り付けが可能な無線リソースが確保できた場合、無線リソース調停部320は、予約済みのリソースの更新を行い、希望帯域幅可または必須帯域幅可として調停結果を送信する。再割り付け不可の場合、無線リソース調停部320は、帯域幅確保不可として調停結果を送信する。再割り付けのため予約リソースBDを更新した場合、無線リソース調停部320は、変更通知を対象車両へ通知する。
【0039】
次に、機能ブロックの共同により、自動運転ECU40、通信ECU100およびセンタサーバ3が実行する各方法のフローを、図6図8に従って以下に説明する。なお、後述するフローにおいて「S」とは、プログラムに含まれた複数命令によって実行される、フローの複数ステップを意味する。
【0040】
まず、自動運転ECU40が実行する要求生成方法について、図6に従って説明する。
【0041】
S110では、クラウド連携部46が、走行予測ルート上の道路環境をセンタサーバ3から取得する。道路環境とは、渋滞などの交通情報や、道路構造の複雑度、天候情報や事故やイベントなどの規制情報などを含む。次に、S120では、自動運転制御部47が、自動運転が可能且つ自動運転の継続に通信が必要か否かを判定する。自動運転が不可能または自動運転の継続に通信が不要であると判定すると、通信活用要求の必要がないため、自動運転制御部47は、一連の処理を終了する。
【0042】
一方で、S120にて、自動運転が可能且つ自動運転の継続に通信が必要であると判定すると、自動運転制御部47は、S130にて通信活用要求を生成する。続くS140では、自動運転制御部47が、通信活用要求を通信ECU100に送信することで、通信必要可否の問い合わせを実行する。
【0043】
そして、S150では、自動運転制御部47が、S140での問い合わせに対する通信ECU100の返答に基づいて、クラウド活用条件を設定する。これにより、自動運転制御部47は、設定された範囲内に通信利用を制限する。
【0044】
次いで、通信ECU100が実行する通信制御方法について、図7に従って説明する。
【0045】
まず、S310にて、要求帯域幅算出部130が、自動運転ECU40からの通信活用可否の問い合わせを取得する。次に、S320では、要求帯域幅算出部130が、取得した問い合わせ内容に基づいて、2水準の要求帯域幅、すなわち希望帯域幅および必須帯域幅を算出する。続くS330では、帯域幅要求部140が、要求帯域幅に基づく通信帯域幅予約要求を、広域送受信部120を介してセンタサーバ3へと送信する。
【0046】
そして、S340では、帯域幅要求部140が、通信帯域幅予約要求に対するセンタサーバ3からの応答結果を取得し、当該応答結果の内容を判定する。具体的には、S340にて、通信帯域幅予約要求に対する応答結果であるか、予約済みの要求の変更を通知する応答結果であるかを判定する。
【0047】
通信帯域幅予約要求に対する応答結果を取得したと判定すると、S350にて、連携条件通知部150が、通信を活用可能であるか否かの通知(活用可否通知)と、2水準のうち利用可能な要求帯域幅を示す通知(可能内容通知)とを、自動運転ECU40に対して送信する。
【0048】
一方で、S340にて予約済みの帯域の変更を通知する応答結果を取得したと判定すると、S360にて、変更内容に関する通知(変更内容通知)を自動運転ECU40に対して送信する。
【0049】
次に、センタサーバ3が実行するリソース調停方法について図8に従って説明する。まず、S410では、要求応答部310が、通信帯域幅要求を取得する。次に、S420では、無線リソース調停部320が、通信帯域幅要求に含まれる要求帯域幅を確保できるか否かを予測し、無線リソースを調停する。そして、S430では、要求応答部310が、調停結果を通信帯域幅要求に対する応答結果として、車両Aの通信ECU100に対して送信する。
【0050】
続いて、S440では、無線リソース調停部320が、S420でのリソース調停により既存予約の更新が発生したか否かを判定する。既存予約の更新が発生したと判定すると、S450にて、帯域幅予約変更通知を、更新された既存予約が対応する車両に対して送信して、一連の処理を終了する。一方で、S440にて既存予約の更新が発生していないとすると、S450の処理をスキップして一連の処理を終了する。
【0051】
なお、上述のS320が「算出プロセス」、S330が「要求プロセス」、S350が「規定プロセス」の一例である。
【0052】
以上の第1実施形態によれば、車両Aにおける特定処理の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅が、車両Aの演算能力およびセンシング能力の少なくとも一方に基づいて算出され、要求帯域幅の確保が、センタサーバ3に要求される。そして、要求帯域幅の確保の要求に対する応答に基づいて、車両Aにて利用される通信帯域幅である利用帯域が規定される。故に、各車両の能力に応じて、利用帯域が適切に割り当てられ得る。これにより、車両と外部との通信において輻輳が抑制され得る。
【0053】
また、第1実施形態によれば、特定処理に必須な必須帯域幅と、必須帯域幅よりも大きい希望帯域幅の少なくとも2種類が要求帯域幅として算出され得る。故に、複数の車両Aからの通信活用要求に応じて、より適当に利用帯域が割り当てられ得る。
【0054】
加えて、第1実施形態によれば、センタサーバ3にて確保された要求帯域幅の変更に関する変更情報に基づいて、規定される利用帯域が変更される。したがって、他の車両Aからの通信活用要求に対応し易い通信制御が実現され得る。
【0055】
さらに、第1実施形態によれば、車両Aの自律走行の継続処理に必要な周辺環境情報と、車両Aに搭載された周辺環境センサ20によって取得される周辺環境情報との差分に基づく要求帯域幅が算出される。故に、自律走行の継続が可能な通信帯域幅がより確実に確保され得る。したがって、情報の不足による自律走行の中断が回避され得る。
【0056】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0057】
上述の実施形態において、要求帯域幅算出部130は、自動運転制御の実行のために要求する通信帯域幅である要求帯域幅を算出するとしたが、自動運転制御以外の処理の実行のための要求帯域幅を算出してもよい。例えば、要求帯域幅算出部130は、車載ディスプレイでの映像コンテンツの表示処理を実行するための要求帯域幅を算出してもよい。
【0058】
通信ECU100は、デジタル回路およびアナログ回路のうち少なくとも一方をプロセッサとして含んで構成される、専用のコンピュータであってもよい。ここで特にデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、およびCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0059】
通信ECU100は、1つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供され得る。例えば、上述の実施形態における通信ECU100の提供する機能の一部は、他のECUによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
3 通信管理装置(センタサーバ)、 20 周辺環境センサ(センサ)、 100 通信ECU(通信制御装置)、 101 メモリ(記憶媒体)、 102 プロセッサ、 130 要求帯域幅算出部(算出部)、 140 帯域要求部、 150 連携条件通知部(規定部) A 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8