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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】内燃機関のスラスト軸受潤滑構造
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20240409BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20240409BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20240409BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20240409BHJP
   F16C 3/14 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F02F7/00 301F
F01M1/06 D
F16C17/04 Z
F16C33/10 Z
F16C3/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020182229
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072665
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂場 涼太
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-089216(JP,A)
【文献】特開2005-069170(JP,A)
【文献】特開2008-002294(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116429(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0029413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F01M 1/06
F16C 17/04
F16C 33/10
F16C 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有する気筒部と、前記気筒部の下部に設けられ、クランク室が形成されたクランクケースとを備えたシリンダブロックと、
前記気筒部に設けられ、前記複数の気筒をクランク軸の軸方向に仕切る気筒部側隔壁部と、
前記気筒部側隔壁部に連絡されるようにして前記クランク室に設けられ、前記クランク軸を回転自在に支持する軸受孔を有するクランク室側隔壁部と、
前記クランク軸のスラスト規制面と対向して前記クランク室側隔壁部の側面に取付けられ、前記クランク軸が軸方向に移動することを規制するスラスト軸受とを備えた内燃機関のスラスト軸受潤滑構造であって、
前記クランク室側隔壁部は、前記軸受孔の上方において前記気筒部側隔壁部に連なる上側壁部と、前記上側壁部の下部から前記クランク軸の軸方向に突出する突出壁部とを有し、
前記クランク室側隔壁部に、前記クランク室側隔壁部を貫通する連通孔が形成されており、
前記連通孔は、前記上側壁部と前記突出壁部とに跨がる位置に開口しており、
前記クランク室側隔壁部に油路が形成されており、
前記油路は、前記連通孔の底面と前記スラスト軸受とを連絡していることを特徴とする内燃機関のスラスト軸受潤滑構造。
【請求項2】
前記連通孔を前記クランク軸の軸方向から見た場合に、前記連通孔が四角形状に開口していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のスラスト軸受潤滑構造。
【請求項3】
前記油路は、前記クランク室側隔壁部に複数個形成されており、
前記連通孔の底面に、前記連通孔の底面から上方に突出する突部が形成されており、
前記突部は、前記連通孔の前記底面を流れる潤滑油を、前記複数個の油路に分配することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のスラスト軸受潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のスラスト軸受潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された内燃機関において、クランク軸を支持する嵌合孔を有する滑り軸受がクランクケースに設置され、潤滑油を滑り軸受に供給する供給油路がクランクケースに形成されたクランク軸滑り軸受の潤滑構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
供給油路は、クランク室内で飛散する潤滑油を収集する通路部を有しており、通路部はクランクケースのケース本体の壁面に設置される2つのリブによって構成されている(図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-177459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のクランク軸滑り軸受の潤滑構造にあっては、専用のリブをクランクケースのケース本体の壁面に形成しているので、クランク室の構造が複雑化するおそれがあり、未だ、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、シリンダブロックの構造を簡素化しつつ、スラスト軸受の潤滑性を向上できる内燃機関のスラスト軸受潤滑構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の気筒を有する気筒部と、前記気筒部の下部に設けられ、クランク室が形成されたクランクケースとを備えたシリンダブロックと、前記気筒部に設けられ、前記複数の気筒をクランク軸の軸方向に仕切る気筒部側隔壁部と、前記気筒部側隔壁部に連絡されるようにして前記クランク室に設けられ、前記クランク軸を回転自在に支持する軸受孔を有するクランク室側隔壁部と、前記クランク軸のスラスト規制面と対向して前記クランク室側隔壁部の側面に取付けられ、前記クランク軸が軸方向に移動することを規制するスラスト軸受とを備えた内燃機関のスラスト軸受潤滑構造であって、前記クランク室側隔壁部は、前記軸受孔の上方において前記気筒部側隔壁部に連なる上側壁部と、前記上側壁部の下部から前記クランク軸の軸方向に突出する突出壁部とを有し、前記クランク室側隔壁部に、前記クランク室側隔壁部を貫通する連通孔が形成されており、前記連通孔は、前記上側壁部と前記突出壁部とに跨がる位置に開口しており、前記クランク室側隔壁部に油路が形成されており、前記油路は、前記連通孔の底面と前記スラスト軸受とを連絡していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、シリンダブロックの構造を簡素化しつつ、スラスト軸受の潤滑性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造を示す図であり、シリンダブロックを右斜め前方から見た断面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造を示す図であり、シリンダブロックの中央部の平面図である。
図3図3は、図2のIII-III方向矢視断面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造を示す図であり、クランク室側隔壁部とその周辺の拡大図である。
図5図5は、図4のV-V方向矢視断面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造を示す図であり、連通孔の他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造は、複数の気筒を有する気筒部と、気筒部の下部に設けられ、クランク室が形成されたクランクケースとを備えたシリンダブロックと、気筒部に設けられ、複数の気筒をクランク軸の軸方向に仕切る気筒部側隔壁部と、気筒部側隔壁部に連絡されるようにしてクランク室に設けられ、クランク軸を回転自在に支持する軸受孔を有するクランク室側隔壁部と、クランク軸のスラスト規制面と対向してクランク室側隔壁部の側面に取付けられ、クランク軸が軸方向に移動することを規制するスラスト軸受とを備えた内燃機関のスラスト軸受潤滑構造であって、クランク室側隔壁部は、軸受孔の上方において気筒部側隔壁部に連なる上側壁部と、上側壁部の下部からクランク軸の軸方向に突出する突出壁部とを有し、クランク室側隔壁部に、クランク室側隔壁部を貫通する連通孔が形成されており、連通孔は、上側壁部と突出壁部とに跨がる位置に開口しており、クランク室側隔壁部に油路が形成されており、油路は、連通孔の底面とスラスト軸受とを連絡している。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造は、シリンダブロックの構造を簡素化しつつ、スラスト軸受の潤滑性を向上できる。
【実施例
【0012】
以下、本発明に係る内燃機関のスラスト軸受潤滑構造の実施例について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1から図6は、本発明に係る一実施例の内燃機関のスラスト軸受潤滑構造を示す図である。図1から図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の内燃機関を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1において、車両には内燃機関としてのエンジン1が搭載されており、エンジン1は、図示しないエンジンルームに設置されている。
【0015】
エンジン1は、シリンダブロック2を備えている。シリンダブロック2の上部には図示しないシリンダヘッドが取付けられており、シリンダブロック2の下部にはオイルが貯留されるオイルパン5が取付けられている(図3参照)。
【0016】
シリンダブロック2は、気筒部3と、気筒部3の下部に気筒部3と一体に形成されたクランクケース4とを有する。
【0017】
図1図2に示すように、気筒部3には複数の気筒3A、3Bが設けられており、気筒3A、3Bには図示しないピストンが上下方向に往復移動自在に収容されている。
【0018】
気筒部3にはウォータジャケット3Cが設けられており、ウォータジャケット3Cは、気筒3A、3Bを取り囲むようにして、気筒3A、3Bと気筒部3の左壁部3Lの間、および気筒3A、3Bと気筒部3の右壁部3Rの間に形成されている。
【0019】
ウォータジャケット3Cには図示しないラジエータによって冷却された冷却水が供給されることにより、気筒3A、3Bが冷却水によって冷却される。
【0020】
本実施例のエンジン1は、4つの気筒を有する4気筒エンジンから構成されている。但し、気筒数は4気筒に限定されるものではなく、1つ以上あればよい。
【0021】
クランクケース4の内部にはクランク室4Aが設けられており、クランク室4Aは、オイルパン5に連通している。
【0022】
図5に示すように、クランク室4Aにはクランク軸6が収容されている。クランク軸6はクランクジャーナル6A、クランクウェブ6B、クランクピン6Cおよびスラスト規制面6Dを有する。
【0023】
気筒3A、3Bは、クランク軸6の軸方向に並んで設置されている。クランク軸6の軸方向は、クランク軸6の回転中心軸の方向と同方向であり、前後方向である。
【0024】
図1図3図5に示すように、シリンダブロック2には隔壁7が設けられている。隔壁7は、気筒部3に設けられた気筒部側隔壁部7Aを有し、気筒部側隔壁部7Aは、複数の気筒3A、3Bをクランク軸6の軸方向に仕切っている。
【0025】
隔壁7は、クランクケース4のクランク室4Aに設けられたクランク室側隔壁部7Bを有し、クランク室側隔壁部7Bは、気筒部側隔壁部7Aに連絡されている。クランク室側隔壁部7Bは、クランク軸6のクランクジャーナル6Aの上側の半円部分を回転自在に支持する半環状の軸受孔7aを有する。
【0026】
軸受孔7aの周辺においてクランク室側隔壁部7Bには軸受キャップ8が設けられている。軸受キャップ8は、クランクジャーナル6Aの下側の半円部分を支持しており、ボルト9によってクランク室側隔壁部7Bに締結されている。
【0027】
図3図4に示すように、クランクジャーナル6Aと軸受孔7aおよび軸受キャップ8との間にはラジアル軸受10が設けられている。
【0028】
クランク軸6は、クランクジャーナル6Aがラジアル軸受10を介して軸受孔7aと軸受キャップ8に回転自在に支持されることにより、クランク室4Aにおいて回転自在となっている。ラジアル軸受10は、半円状の一対のメタル軸受から構成されている。
【0029】
図4図5に示すように、複数のクランク室側隔壁部7Bのうちの1つのクランク室側隔壁部7Bの側面には半環状のスラスト軸受11が設けられており、スラスト軸受11は、クランク軸6のスラスト規制面6Dと軸方向に対向している。
【0030】
スラスト軸受11は、クランク軸6が軸方向に移動するときにスラスト規制面6Dに接触してクランク軸6が軸方向に移動することを規制する。
【0031】
図5に示すように、クランク室側隔壁部7Bには突出壁部7bが設けられている。突出壁部7bは、軸受孔7aの上方において気筒部側隔壁部7Aに連なる上側壁部7wの下部からクランク軸6の軸方向に突出している。
【0032】
図5において、気筒部側隔壁部7Aの壁面7hから突出壁部7bの突出方向の先端までの寸法を矢印7tで示す。
【0033】
図1図4図5に示すように、クランク室側隔壁部7Bには連通孔7cが形成されており、上側壁部7wと突出壁部7bとに跨がる位置に開口している。具体的には、連通孔7cは、その底面7dがその天井面7uより寸法7tだけ側方に拡がるようにクランク軸6の軸方向に貫通されており、気筒3A、3Bとクランク室4Aとを連通している。また、気筒3Aと気筒3Bは、連通孔7cを通して連通されている。
【0034】
これにより、気筒3A、3Bの内部を往復運動するピストンにより、気筒3A、3Bの内部に生じる圧力を連通孔7cからクランク室4Aに逃がすことができ、気筒3A、3B間の圧力変動を低減できる。
【0035】
また、図5に示すように、突出壁部7bは、気筒部側隔壁部7Aの壁面7hからクランク軸6の軸方向に突出しているので、連通孔7cの天井面7uのクランク軸6の軸方向の長さよりも連通孔7cの底面7dのクランク軸6の軸方向の長さが長い。
【0036】
これに加えて、連通孔7cの底面7dは、連通孔7cの天井面7uよりも気筒3A、3Bの中心軸C1側に突出している。
【0037】
図3に示すように、連通孔7cをクランク軸6の軸方向から見た場合に、連通孔7cは、四角形状に形成されている。換言すれば、連通孔7cをクランク軸6の軸方向から見た場合に、連通孔7cは、車幅方向に延び、かつ、クランク軸6を上下に横切る断面が四角形状に形成されている。
【0038】
気筒3A、3Bの内壁には図示しないオイルジェットから潤滑油が噴射されるようになっており、この潤滑油によって気筒3A、3Bの内部を往復運動するピストンが潤滑される。
【0039】
ピストンを潤滑したオイルは、気筒3A、3Bを伝って下方に移動し、連通孔7cの周辺を通過してクランク室4Aに排出され、オイルパン5に戻される。
【0040】
図1図4に示すように、クランク室側隔壁部7Bには2つの油路7e、7fが形成されている。
【0041】
油路7e、7fは、クランク軸6の軸方向でクランク軸6のクランクウェブ6Bに対向するクランク室側隔壁部7Bの壁面7gに対してクランクウェブ6Bから離れる方向に窪んでいる。油路7e、7fは、連通孔7cの底面7dとスラスト軸受11とを連絡している。
【0042】
これにより、気筒3A、3Bから連通孔7cを通してクランク室4Aに排出される潤滑油は、油路7e、7fに沿ってスラスト軸受11に導かれる(図4図5の潤滑油O参照)。
【0043】
図5に示すように、クランク軸6の軸方向でクランク室側隔壁部7Bとクランクウェブ6Bの間には微小な隙間が形成されており、この隙間よりも油路7e、7fとクランクウェブ6Bの間の隙間が大きく形成されている。
【0044】
これにより、気筒3A、3Bから連通孔7cの周辺を通過してクランク室4Aに排出される潤滑油は、クランク室側隔壁部7Bとクランクウェブ6Bの間を流れる際に油路7e、7fに集まりやすい。
【0045】
スラスト軸受11には2つの油溝11a、11bが形成されており、油溝11a、11bは、それぞれ油路7e、7fに連通している。これにより、油路7e、7fを流れる潤滑油は、油溝11a、11bに導かれる(図4図5の潤滑油O参照)。
【0046】
クランク軸6の軸方向でスラスト軸受11とスラスト規制面6Dの間には隙間が形成されており、油溝11a、11bを流れる潤滑油によってスラスト軸受11とスラスト規制面6Dの間に油膜が形成され、スラスト軸受11が潤滑油によって潤滑される。
【0047】
次に、本実施例のスラスト軸受11の潤滑構造の効果を説明する。
本実施例のスラスト軸受11の潤滑構造は、隔壁7を備えており、隔壁7は、気筒部側隔壁部7Aと、クランク室側隔壁部7Bとを備えている。
【0048】
気筒部側隔壁部7Aは、シリンダブロック2の気筒部3に設けられており、気筒3A、3Bをクランク軸6の軸方向に仕切っている。クランク室側隔壁部7Bは、気筒部側隔壁部7Aに連絡されるようにしてクランク室4Aに設けられており、下面にクランク軸6を回転自在に支持する半環状の軸受孔7aを有する。
【0049】
また、スラスト軸受11の潤滑構造は、クランク軸6のスラスト規制面6Dと軸方向に対向してクランク室側隔壁部7Bの側面に取付けられ、クランク軸6が軸方向に移動することを規制するスラスト軸受11を備えている。
【0050】
クランク室側隔壁部7Bは、軸受孔7aの上方において気筒部側隔壁部7Aの上側壁部7wの下部からクランク軸6の軸方向に突出する突出壁部7bを有する。
【0051】
クランク室側隔壁部7Bに、クランク室側隔壁部7Bを貫通する連通孔7cが形成されており、連通孔7cは、上側壁部7wと突出壁部7bとに跨がる位置に開口している。
【0052】
これに加えて、クランク室側隔壁部7Bに油路7e、7fが形成されており、油路7e、7fは、連通孔7cの底面7dとスラスト軸受11とを連絡している。
【0053】
これにより、連通孔7cの天井面7uより連通孔7cの底面7dを気筒3A、3Bの中心軸C1側に突出させることができる。
【0054】
このため、気筒3A、3Bを伝って落下し、連通孔7cの周辺を通過してクランク室4Aに排出される潤滑油Oを、底面7dによって容易に捕捉できる。
【0055】
次いで、底面7dによって捕捉された潤滑油Oを油路7e、7fを通してスラスト軸受11に供給できる。
【0056】
この結果、潤滑油を収集するリブ等をクランク室側隔壁部7Bに形成する場合に比べ、シリンダブロック2の構造を簡素化しつつ、スラスト軸受11の潤滑性を向上できる。
【0057】
また、本実施例のスラスト軸受11の潤滑構造によれば、連通孔7cをクランク軸6の軸方向から見た場合に、連通孔7cが四角形状に形成されている。
【0058】
これにより、円形の連通孔7cよりも連通孔7cの底面7dを大きくでき、連通孔7cを通してクランク室4Aに排出される潤滑油Oの多くを、底面7dによって効率よく収集できる。このため、スラスト軸受11により多くの潤滑油を供給でき、スラスト軸受11の潤滑性を向上できる。
【0059】
本実施例の連通孔7cの底面7dは、平面に形成されているが、図6に示すように連通孔7cの底面7dに突部7mを形成してもよい。
【0060】
具体的には、図6に示すように、連通孔7cの底面7dには突部7mが形成されており、突部7mは、底面7dから上方に突出している。突部7mは、底面7dの車幅方向の中央部に形成されており、車幅方向で油路7e、7fの間に位置している。
【0061】
このように連通孔7cの底面7dに突部7mを形成すれば、図6に示すように、連通孔7cの底面7dを流れる潤滑油O1を、突部7mによって油路7e、7fに均等に分配できる。なお、油路7e、7fと油溝11a、11bは、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0062】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0063】
1...エンジン(内燃機関)、2...シリンダブロック、3A,3B...気筒、4...クランクケース、4A...クランク室、6...クランク軸、6D...スラスト規制面、7A...気筒部側隔壁部、7a...軸受孔、7B...クランク室側隔壁部、7b...突出壁部、7c...連通孔、7d...底面(連通孔の底面)、7e,7f...油路、7m...突部、7w...上側壁部、11...スラスト軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6