(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】照光プラスチック光ファイバおよび照光プラスチック光ファイバコード
(51)【国際特許分類】
G02B 6/00 20060101AFI20240409BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240409BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20240409BHJP
A61B 1/07 20060101ALI20240409BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240409BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240409BHJP
F21S 8/00 20060101ALI20240409BHJP
F21S 41/24 20180101ALI20240409BHJP
F21S 43/237 20180101ALI20240409BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240409BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240409BHJP
【FI】
G02B6/00 326
G02B6/02 391
G02B6/036
A61B1/07 732
F21V8/00 200
F21S2/00 610
F21S8/00
F21S41/24
F21S43/237
F21W102:00
F21Y101:00
(21)【出願番号】P 2020184828
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松葉 聡
(72)【発明者】
【氏名】光野 皓紀
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211472(JP,A)
【文献】特開2014-21399(JP,A)
【文献】特開2010-237414(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180644(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00、6/02-6/10、6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、コアと、第1のクラッドと、第2のクラッドとをこの順に有する照光プラスチック光ファイバであって、第1のクラッドは、少なくとも、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを共重合成分として含む共重合体を含み、第2のクラッドは、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体を含み、第1のクラッドの引張破断伸度Y(%)、第2のクラッドの引張破断伸度Z(%)が、Y-Z>100%の関係を満たす、照光プラスチック光ファイバ。
【請求項2】
前記第1のクラッドは、少なくとも、
エチレン10~35重量%
テトラフルオロエチレン45~69重量%、および
ヘキサフルオロプロピレン20~45重量%
を共重合成分として含み、カーボネート基を有する共重合体を含む、
請求項1に記載の照光プラスチック光ファイバ。
【請求項3】
前記第1のクラッドは、
エチレン10~35重量%
テトラフルオロエチレン45~69重量%
ヘキサフルオロプロピレン20~45重量%および
下記一般式(1)で示されるフルオロビニル化合物0.01~10重量%を共重合成分として含む共重合体を含む、請求項1または2に記載の照光プラスチック光ファイバ。
CH
2=CX
1(CF
2)
nX
2 (1)
(式中、X
1はフッ素原子または水素原子を示し、X
2はフッ素原子または水素原子を示し、nは1~10の整数である。)
【請求項4】
前記第1のクラッドの厚みが3μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の照光プラスチック光ファイバ。
【請求項5】
前記コアがポリメチルメタクリレートを含む、請求項1~4のいずれかに記載の照光プラスチック光ファイバ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の照光プラスチック光ファイバを有する医療照明。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の照光プラスチック光ファイバからなる車載照明。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の照光プラスチック光ファイバの外層に、少なくとも1層の被覆層を有し、かつ、照光プラスチック光ファイバの一部が被覆層から露出してなる、プラスチック光ファイバコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光プラスチック光ファイバ、これを用いた医療照明、車載照明および照光プラスチック光ファイバコードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に光伝送用に使用されているプラスチック光ファイバは、透明樹脂からなるコア(内層)とクラッド(外層)とが同心円状の真円形に構成されている。このような構成からなるプラスチック光ファイバは、一端から入射した光が、コアとクラッドとの界面で全反射を繰り返しながら他端部に効率よく伝達される。
【0003】
一方、一端から入射した光を長手方向途中(側面)から漏光させて線状発光体とする側面発光プラスチック光ファイバも検討されており、屋内外の照明用途、車載照明用途、ネオンサインや電光表示の代替用途、装飾用途、センサー用途などに用途展開することができる。側面発光プラスチック光ファイバには、視認性の観点から、高い輝度が求められる。
【0004】
このような側面発光用のプラスチック光ファイバとして、例えば、芯と鞘の構造からなる直径が1mm以上のプラスチック光ファイバ裸線の1本の周りを光拡散性のある半透明の樹脂で厚さ0.1mm以上に被覆してなる拡散層で覆った側面発光用ケーブル(例えば、特許文献1参照)や、芯と鞘の構造からなるプラスチック光ファイバ裸線の1本の周りを拡散性のある半透明の樹脂で厚さ0.1mm以上に被覆してなる拡散層で覆った側面発光用ケーブル(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。また、長手方向に均一に発光する照光プラスチック光ファイバとして、コアとクラッドを有し、ファイバ側面から照光するプラスチック光ファイバであって、前記クラッドがフッ化ビニリデンを90重量%以上含む重合成分を重合して得られる重合体からなり、前記クラッドの結晶化度が45%~52%である照光プラスチック光ファイバ(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-341125号公報
【文献】特開平6-75118号公報
【文献】国際公開第2015/64459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3には、フッ化ビニリデンを重合成分として含む重合体または共重合体をクラッドに用いたプラスチック光ファイバが記載されている。本発明者らの検討により、かかるプラスチック光ファイバは、高温環境に晒されると、コアを構成する重合体とクラッドを構成する重合体が相溶しやすく、輝度が低下する、すなわち、耐熱性が不十分である課題があることが分かった。
【0007】
そこで、本発明の主な目的は、輝度が高く、耐熱性に優れた照光プラスチック光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、コアと、第1のクラッドと、第2のクラッドとをこの順に有する照光プラスチック光ファイバであって、第1のクラッドは、少なくとも、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを共重合成分として含む共重合体を含み、第2のクラッドは、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上含む重合体を含み、第1のクラッドの引張破断伸度Y(%)、第2のクラッドの引張破断伸度Z(%)が、Y-Z>100%の関係を満たす、照光プラスチック光ファイバである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、輝度が高く、耐熱性に優れた照光プラスチック光ファイバを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る照光プラスチック光ファイバおよびそれを用いた医療照明、車載照明、照光プラスチック光ファイバコードの好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0011】
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバは、少なくとも、コアと、第1のクラッドと、第2のクラッドとをこの順に有する。クラッドを3層以上有してもよく、この場合、最内層のクラッドを第1のクラッド、最外層のクラッドを第2のクラッドとする。本発明において、第1のクラッドは、少なくとも、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを共重合成分として含む共重合体を含み、第2のクラッドは、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体を含む。さらに、第1のクラッドの引張破断伸度Y(%)、第2のクラッドの引張破断伸度Z(%)が、Y-Z>100%の関係を満たすことを特徴とする。フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体は、前述のとおり、高温環境に晒されると、コアを構成する重合体と相溶しやすく、輝度が低下する、すなわち、耐熱性が不十分である課題があった。そこで、本発明においては、クラッドを多層化し、コアと、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体を含む第2のクラッドの間に、少なくとも、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを共重合成分として含む第1のクラッドを設けることにより、耐熱性を向上させることができる。さらに、クラッドを多層化するにあたり、内層である第1のクラッドと外層である第2のクラッドとの引張破断伸度の違いに着目した。引張破断伸度の違いは、各層の結晶性の違いを表していると考えられる。本発明においては、第1のクラッドの引張破断伸度Y(%)、第2のクラッドの引張破断伸度Z(%)を、Y-Z>100%の関係を満たすようにすることにより、クラッド内層の透明性を高めつつ、クラッド外層を光散乱しやすくすることにより、輝度を向上させることができる。
【0012】
(コア)
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバにおいて、コアをなす重合体(ポリマー)としては、例えば、ポリスチレン、メチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体、あるいはそれらを高分子反応したグルタル酸無水物、グルタルイミドなどの変性重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、生産性、透光性、耐環境性などの観点からから、メチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体が好ましい。ここで、「主成分とする」とは、重合体を構成するモノマーの50モル%以上を占めることを指す。メチルメタクリレートを90モル%以上含むことがより好ましく、95モル%以上含むことがより好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)がさらに好ましい。
【0013】
メチルメタクリレートと共重合される成分としては、例えば、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、置換スチレン、N-置換マレイミドなどが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレートなどが挙げられる。置換スチレンとしては、例えば、メチルスチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。N-置換マレイミドとしては、例えば、N-イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-o-メチルフェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0014】
コアには、さらに酸化防止剤などの安定剤やその他添加剤を、透光性に影響しない範囲で少量含有してもよい。
【0015】
(クラッド)
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバは、少なくとも第1のクラッドと、第2のクラッドを有する。
【0016】
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバの第1のクラッドは、少なくとも、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを共重合成分として含む共重合体を含み、第2のクラッドは、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体を含む。エチレンおよびテトラフルオロエチレンを共重合成分として含む共重合体は、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体に比べて成形加工性や耐薬品性、耐熱性に優れることから、コアと第2のクラッドの間に、このような第1のクラッドを設けることにより、耐熱性を向上させることができる。
【0017】
第1のクラッドは、少なくとも、エチレン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンを共重合成分として含む共重合体を含むことが好ましい。共重合成分中、エチレンを10~35重量%、テトラフルオロエチレンを45~69重量%、ヘキサフルオロプロピレンを20~45重量%含むことが好ましい。第1のクラッドにおいて、エチレンが10重量%以上の場合、成形安定性が向上する。35重量%以下の場合、結晶性を低くでき、透明性が向上する。エチレンの割合は11~30重量%が好ましい。テトラフルオロエチレンが45重量%以上の場合、成形安定性が向上する。69重量%以下の場合、結晶性を低くでき、透明性が向上する。ヘキサフルオロプロピレンが20重量%以上の場合、柔軟性が向上し、曲げ損失が向上する。45重量%以下の場合、粘着性が低下し、被覆層を被覆するときの加工性が向上する。
【0018】
かかる共重合体は、さらにカルボニル基含有官能基を有することが好ましく、耐溶剤性を向上させることができる。ポリマー鎖末端にカルボニル基含有官能基を有してもよいし、側鎖にカルボニル基含有官能基を有してもよい。
【0019】
カルボニル基含有官能基としては、例えば、-OC(=O)O-の結合を有するカーボネート基、-COY[Yはハロゲン元素]の構造を有するカルボン酸ハライド基などが挙げられる。これらの中でも、カーボネート基が好ましい。また、カルボニル含有官能基はフッ素を有することが好ましく、含フッ素カーボネート基(-RF-O-C(=O)-RF’-)、カルボン酸フルオライド基(-C(=O)F)が好ましい。ここで、RFやRF’はフッ素を有する基、例えばフッ化アルキル基やフッ化ビニリデン基などを表す。
【0020】
また、前記共重合体は、下記一般式(1)で示されるフルオロビニル化合物を共重合成分として含むことが好ましく、コアのメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体への密着性や耐熱性をより向上させることができる。
CH2=CX1(CF2)nX2 (1)
上記一般式(1)中、X1はフッ素原子または水素原子を示し、X2はフッ素原子または水素原子を示し、nは1~10の整数である。
【0021】
上記式(1)で表されるフルオロビニル化合物としては、例えば、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CH(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CH(CF2)4H、CH2=CF(CF2)3CH3、CH2=CF(CF2)3C2H5、CH2=CH(CF2)3Fなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、下記構造式(2)で表される、パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-1-ペンテン)が好ましく、照光プラスチック光ファイバの生産性、コスト、環境性および伝送特性において優れている。
CH2=CF(CF2)3H (2)。
【0022】
特に、コアのメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体への密着性や耐熱性に優れた特性を付与するために、前記一般式(1)で示されるフルオロビニル化合物を、共重合成分中、0.01重量%以上含有することが好ましい。一方、他の共重合成分の含有量との関係から、その含有量は10重量%以下が好ましい。
【0023】
第1のクラッドは、係る共重合体から実質的になることが好ましい。
【0024】
第1のクラッドの厚みは、3μm以下であることが好ましい。3μm以下であると、第1のクラッドから光が透過しやすくなり、第2のクラッドにおける光散乱により、輝度をより向上させることができる。第1のクラッドの厚みは、2μm以下がより好ましい。一方、第1のクラッドの厚みは、0.1μm以上が好ましく、耐熱性をより向上することができる。
【0025】
ここで、第1のクラッドの厚みは、照光プラスチック光ファイバから無作為に選択した5箇所について、長手方向に対し垂直に切断し、コア/第1のクラッド/第2のクラッドの界面が観察できるように断面を研磨した後、デジタルマイクロスコープ VHX-7000(Keyence製)を用いて、断面を拡大観察することにより測定することができる。拡大観察の倍率は、10~200倍の間で、断面が全て視野範囲に入り、界面が観察できる範囲を選択する。断面において、第1のクラッドの最も薄い部分の厚みを測定し、第1のクラッドの厚みとする。5断面についてそれぞれ第1のクラッドの厚みを測定し、その平均値を第1のクラッドの厚みとする。
【0026】
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバの第2のクラッドは、フッ化ビニリデン由来の構造単位を90重量%以上有する重合体を含む。フッ化ビニリデン由来の構造単位が90重量%未満であると、光の拡散効果が小さくなり、輝度が低下する。フッ化ビニリデン由来の構造単位を95重量%以上有することが好ましい。
【0027】
かかる重合体は、フッ化ビニリデンとともに、他の成分が10重量%以下共重合されていてもよい。他の成分としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。共重合成分の組成比が既知の場合、フッ化ビニリデン由来の構造単位の含有量は、共重合成分の組成比から算出することができる。
【0028】
第2のクラッドの結晶化度は、輝度をより向上させる観点から、40%以上が好ましい。一方、加工時に紡糸に適した粘度が得られやすいことから、第2のクラッドの結晶化度は、60%以下が好ましい。
【0029】
ここで、第2のクラッドの結晶化度は、照光プラスチック光ファイバから第2のクラッド層を削り取ったサンプルについて、X線回析装置を用いて、広角X線回析法により測定することができる。
【0030】
第2のクラッドの結晶化度は、例えば、紡糸速度、紡糸温度、冷却速度などの製造条件の選択により、所望の範囲に調整することができる。
【0031】
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバは、第1のクラッドの引張破断伸度Y(%)、第2のクラッドの引張破断伸度Z(%)が、Y-Z>100%の関係を満たす。一般に、結晶性が低いポリマーは透明性が高く、引張破断強度が大きく、結晶性が高いポリマーは半透明性となり、引張破断強度が小さくなる傾向にある。鋭意検討の結果、Y-Z>100%の関係を満たす場合に、第1クラッドに透明性を、第2クラッドに結晶性を付与することができ、第1クラッドを透過させた光を第2クラッドで光散乱させて、輝度を向上させることができることがわかった。Y-Zの値が100%以下であると、第1クラッドの透光性や第2クラッドの結晶性が低下するため、輝度が低下する。Y-Zの値は、200%以上が好ましく、300%以上がより好ましい。
【0032】
照光プラスチック光ファイバの外径は、0.1~3mm程度が一般的であり、目的に応じて適宜選択することができる。取扱性などの観点から、0.1~2.0mmが好ましい。
【0033】
ここで、照光プラスチック光ファイバの外径第1のクラッドの厚みと同様に、照光プラスチック光ファイバから無作為に選択した5箇所について、長手方向に対し垂直に切断し、コア/第1のクラッド/第2のクラッドの界面が観察できるように断面を研磨した後、デジタルマイクロスコープ VHX-7000(Keyence製)を用いて、断面を拡大観察することにより測定することができる。ただし、断面形状が円形でない場合は、光ファイバの最短径をファイバ径とする。
【0034】
照光プラスチック光ファイバの製造方法としては、例えば、コア材とクラッド材とを加熱溶融状態下で、同心円状複合用の複合口金から吐出してコア/第1クラッド/第2クラッドの3層芯鞘構造を形成させる複合紡糸法が好ましく用いられる。続いて、1.2~3倍程度の延伸処理を行うことが一般的であり、機械特性を向上させることができる。このプラスチック光ファイバの外径は通常0.1~3mm程度であり、目的に応じて適宜選択すればよいが、取扱性などの面から0.1~2.0mmのものが好ましい。
【0035】
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバコードは、前述の照光プラスチック光ファイバの外層に、少なくとも1層の被覆層を有する。被覆層を複数層有してもよい。被覆層を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンやそれらの共重合体、有機シラン基を含有するオレフィン系ポリマー、エチレン-酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ナイロン12などのポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ウレタン樹脂、弗素樹脂、EPM、EPDMなどのゴムなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、被覆層には、難燃剤、酸化防止剤、耐老化剤、UV安定剤などの安定剤などを含有してもよい。
【0036】
本発明の実施の形態に係る照光プラスチック光ファイバコードは、被覆層の一部が除去される、すなわち、照光プラスチック光ファイバの一部が被覆層から露出してなることが好ましく、露出した照光プラスチック光ファイバから側面発光させることができる。
【0037】
なお、被覆層は、クロスヘッドダイを使用した溶融押し出し成形法等の公知の方法によって形成することができる。被覆層の一部を除去する方法としては、例えば、ニッパーや被覆カッター、ワイヤーストリッパー等を用いて被覆層の一部を剥く方法などが挙げられる。
【0038】
本発明の照光プラスチック光ファイバおよび照光プラスチック光ファイバコードは、シート状、または複数本を束状にした光ファイババンドルとして用いられることが一般的である。ここで「束状」とは、複数の照光プラスチック光ファイバまたは照光プラスチック光ファイバコードを、単に集合化した状態、ロープ状・紐状に撚った状態、シート状に引き揃えたものを丸めた状態、これらの集合体を更に集めて束ねた状態、これらを撚り合わせた状態などを含む。光ファイババンドル束の本数は、目的に応じて適宜選択することができ、1本の束に、例えば5本から200本の照光プラスチック光ファイバまたは照光プラスチック光ファイバコードが使用される。
【0039】
光ファイババンドルは、国際公開公報第2014/064459号に記載されるような透明チューブに挿入したり、透明樹脂により被覆してもよい。
【0040】
本発明の照光プラスチック光ファイバおよび照光プラスチック光ファイバコードは、その少なくとも一端の端面に光源を接続して使用される。光源としては、高い輝度を有するメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプやLEDなどが好ましく用いられる。
【0041】
また、本発明の照光プラスチック光ファイバ照光プラスチック光ファイバコードを、シートや織物、編物として、感圧センサーや装飾用途に用いることができる。シートや織物、編物としては、国際公開公報第2014/064459号に記載されるものが挙げられる。
【0042】
本発明の照光プラスチック光ファイバおよび照光プラスチック光ファイバコードは、自動車や航空機、船舶、電車等の移動体内の照明、医療用内視鏡照明、眼科手術用照明、腹腔鏡手術用照明、カテーテル用照明、壁面装飾用照明、室内照明等の用途に好適に用いることができる。より具体的には、照光プラスチック光ファイバファイバの端面から入射させた光を、照光プラスチック光ファイバの側面から漏洩させ、自動車や航空機、船舶、電車等の移動体内を照らす移動体内の照明用途、体内の器官や眼球内部、体内の臓器や血管内等を照らす医療用内視鏡照明・眼科手術用照明用途・腹腔鏡手術用照明用途・カテーテル用照明用途、屋内外を光で彩ったり、物体の形状や存在を示したり、行き先や方向を示したり、その他種々の飾り等とする壁面装飾用照明用途・室内照明用途や、その他の各種照明等として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、作製した照光プラスチック光ファイバの評価は、次の方法で行った。
【0044】
(1)照光プラスチック光ファイバ輝度:
光源として白色LEDハロゲンランプ(12V1.5W)を用い、トプコンテクノハウス製2D色彩輝度計(UA-200AWS)を用いて、光源からの距離1mの地点において、各実施例および比較例により得られた照光プラスチック光ファイバ各10本について、側面から発せられる光の照度を測定し、その算術平均値を輝度とした。
【0045】
(2)照光プラスチック光ファイバの耐熱性:
上記(1)により輝度を測定した照光プラスチック光ファイバを、100℃のオーブンを用いて24時間熱処理した後、同様に照光プラスチック光ファイバの輝度を測定し、その算術平均値を求めた。熱処理後の輝度から熱処理前の輝度を差し引いた値から、耐熱性を評価した。熱処理前後の輝度の差が小さいほど耐熱性が高く、0.05(cd/m2)以下であれば、耐熱性に優れると判断した。
【0046】
(3)照光プラスチック光ファイバのコア径およびクラッド厚み:
各実施例および比較例より得られた照光プラスチック光ファイバから無作為に選択した5箇所について、長手方向に対し垂直に切断し、コア/第1のクラッド/第2のクラッドの界面が観察できるように断面を研磨した後、デジタルマイクロスコープ VHX-7000(Keyence製)を用いて拡大観察した。拡大観察の倍率は、100~2000倍の間で、断面が全て視野範囲に入り、界面が観察できる範囲を選択した。断面において、コア径とクラッド厚みを測定した。なお、断面形状が円形でない場合は、光ファイバの最短径をファイバ径とした。また、クラッド厚みは、クラッドの最も薄い部分の厚みを測定した。5断面についてそれぞれコア径と第1のクラッドの厚み、第2のクラッドの厚み、ファイバ径を測定し、それぞれの算術平均値を算出した。
【0047】
(4)クラッドの組成比:
固体19F-NMR(Bruker社製AVANCE NEO 400)およびFT-IR(Bio-Rad Digilab製FT-IR)を用いて、各実施例および比較例に用いたクラッド材料の組成比を求めた。
【0048】
(5)クラッドの引張破断伸度:
各実施例および比較例に用いられたクラッドについて、ASTM D638に準拠し、引張速度:5mm/分の条件で引張試験を行い、クラッドが破断したときの引張破断伸度を測定した。各3つのサンプルについて測定し、その算術平均値を算出した。
【0049】
[実施例1]
第1のクラッド材として、表1の共重合比のエチレン/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)/フルオロビニル化合物の共重合体(カーボネート基含有)を、第2のクラッド材として、表1のフッ化ビニリデンを、それぞれ複合紡糸機に供給した。さらに、連続魂状重合によって製造したPMMAをコア材として複合紡糸機に供給し、240℃にてコア、クラッドを芯鞘複合溶融紡糸し、ファイバ径250μm(コア径238μm、第1のクラッド厚み2μm、第2のクラッド厚み4μm)の照光プラスチック光ファイバを得た。得られた照光プラスチック光ファイバを前記の評価方法により評価した結果を表2に示した。
【0050】
[実施例2~3]
第1のクラッドの厚みを表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして照光プラスチック光ファイバを得た。得られた照光プラスチック光ファイバを前記の評価方法により評価した結果を表2に示した。
【0051】
[実施例4~6]
第1のクラッドと第2のクラッドの組成を表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして照光プラスチック光ファイバを得た。得られた照光プラスチック光ファイバを前記の評価方法により評価した結果を表2に示した。
【0052】
[比較例1~2]
表1のクラッドを1層のみ用いた以外は実施例1と同様にして照光プラスチック光ファイバを得た。得られた照光プラスチック光ファイバを前記の評価方法により評価した結果を表2に示した。
【0053】
[比較例3~4]
第2のクラッドの組成を表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして照光プラスチック光ファイバを得た。得られた照光プラスチック光ファイバを前記の評価方法により評価した結果を表2に示した。
【0054】
【0055】