(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240409BHJP
【FI】
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2020192833
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 均志
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】内尾 勇貴
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-018143(JP,A)
【文献】国際公開第2020/209324(WO,A1)
【文献】特開2021-118616(JP,A)
【文献】特開2013-258880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00- 9/28
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるモータ軸を中心に回転するロータ、およびステータを有するモータと、
前記モータに電力を供給するインバータと、
前記モータを収容するモータハウジング部、および、前記インバータを収容するインバータ収容部を有するハウジングと、
前記インバータ収容部の開口を塞ぐインバータ蓋部と、
前記モータハウジング部に配置されるオイルと、
前記ハウジングに固定され、前記オイルが流れる油路の一部が配置される熱交換器と、
前記インバータ蓋部、前記ハウジングの一部および前記熱交換器を通り、冷却媒体が流れる冷媒流路と、を備え、
前記インバータは、前記インバータ蓋部に固定されるスイッチング素子を有し、
前記冷媒流路は、
前記インバータ蓋部に配置され前記スイッチング素子を冷却するスイッチング素子冷却部と、
前記熱交換器に配置され前記オイルと前記冷却媒体とを熱交換する熱交換部と、
前記冷媒流路のうち前記スイッチング素子冷却部と前記熱交換部とを接続する部分に配置され、前記インバータ蓋部に開口する蓋部側開口部と、
前記冷媒流路のうち前記スイッチング素子冷却部と前記熱交換部とを接続する部分に配置され、前記インバータ収容部に開口する収容部側開口部と、を有し、
所定方向から見て、前記蓋部側開口部と前記収容部側開口部とが、互いに重なり、かつ対向する、
駆動装置。
【請求項2】
前記インバータ収容部に前記インバータ蓋部を取り付ける向きは、前記第1方向に直交する第2方向であり、
前記所定方向は、前記第2方向である、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記インバータは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に延び、前記第2方向と垂直な方向に拡がる平板状であり、
前記インバータは、前記インバータの前記第3方向の一方側の端部に位置し前記モータと電気的に接続されるインバータ側接続部を有し、
前記蓋部側開口部は、前記インバータの前記第3方向の他方側に位置する、
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記インバータは、前記インバータ蓋部に固定されるコンデンサを有し、
前記冷媒流路は、前記インバータ蓋部のうち前記スイッチング素子冷却部よりも前記第3方向の他方側に配置され、前記コンデンサを冷却するコンデンサ冷却部を有し、
前記コンデンサ冷却部は、前記スイッチング素子冷却部よりも前記冷媒流路の下流側に位置する、
請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記モータから出力される回転を、出力軸を中心に回転する車軸に伝達する伝達機構を備え、
前記インバータは、1つまたは複数の基板を有し、
少なくとも1つの前記基板は、前記第1方向に直交する第2方向から見て、前記モータ軸および前記出力軸と重なる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記インバータ収容部または前記インバータ蓋部は、前記所定方向に延びる筒状部材を有し、
前記蓋部側開口部と前記収容部側開口部とは、前記筒状部材を介して接続される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記筒状部材は、
前記所定方向に延びる筒体と、
前記筒体の外周面から突出するフランジ部と、
前記フランジ部を前記所定方向に貫通する貫通孔と、
前記貫通孔に挿入され、前記インバータ収容部または前記インバータ蓋部に固定される固定部材と、を有する、
請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記筒状部材は、
前記蓋部側開口部に挿入される第1挿入部と、
前記収容部側開口部に挿入される第2挿入部と、
前記第1挿入部と前記第2挿入部とにそれぞれ取り付けられ、前記蓋部側開口部の内周面または前記収容部側開口部の内周面と接触する弾性変形可能な複数のOリングと、を有し、
前記第1挿入部は、前記筒状部材の中心軸を中心とし前記第1挿入部の外周面から窪む環状の第1溝、または、前記第1挿入部の外周面から突出する第1突起を有し、
前記第2挿入部は、前記中心軸を中心とし前記第2挿入部の外周面から窪む環状の第2溝、または、前記第2挿入部の外周面から突出する第2突起を有し、
複数の前記Oリングのうち、前記第1挿入部に取り付けられる第1Oリングは、前記第1溝に配置され、または、前記所定方向において前記第1突起と対向し、
複数の前記Oリングのうち、前記第2挿入部に取り付けられる第2Oリングは、前記第2溝に配置され、または、前記所定方向において前記第2突起と対向する、
請求項6または7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記筒状部材は、
前記所定方向に延びる筒体と、
前記筒体の外周面から突出し前記筒状部材の中心軸を中心とする環状のフランジ部と、
前記インバータ蓋部の前記所定方向を向く面のうち前記蓋部側開口部を囲う第1部分と前記フランジ部との間、および、前記インバータ収容部の前記所定方向を向く面のうち前記収容部側開口部を囲う第2部分と前記フランジ部との間、の少なくともいずれかに挟まれる弾性変形可能なOリングと、を有し、
前記インバータ収容部および前記インバータ蓋部の少なくともいずれかは、前記フランジ部、前記第1部分および前記第2部分の少なくともいずれかに配置され、前記所定方向に開口し、前記所定方向から見て前記中心軸を囲う環状溝を有し、
前記Oリングは、前記環状溝に配置される、
請求項6から8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記熱交換器は、前記インバータ収容部に対向する部分を有し、
前記対向する部分は、前記収容部側開口部の中心軸に直交する方向から見て、前記収容部側開口部の少なくとも一部と重なる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記モータから出力される回転を、出力軸を中心に回転する車軸に伝達する伝達機構を備え、
前記モータ軸は、前記第1方向に直交する第3方向において、前記出力軸よりも一方側に位置し、
前記熱交換器は、前記出力軸よりも前記第3方向の他方側に位置する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとインバータとを一体化した回転電機においては、例えば特許文献1に記載されるように、インバータを冷却水で冷却する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の機電一体型の回転電機装置では、インバータを冷却した後の冷却水により、モータが冷却される。すなわちモータの冷却は、冷却水をハウジングに流してステータから抜熱する、いわゆる水冷方式を採用している。しかしながら、装置全体のサイズおよび冷却特性の最適化の観点から、モータ内部にオイルを入れてモータ内を循環させることによりモータを冷却する、いわゆる油冷方式を採用した方が望ましい場合がある。
【0005】
本発明は、モータとインバータとが一体化され、かつモータをオイルにより冷却する油冷方式の駆動装置において、冷却効率を高めつつ組み立て工程を簡素化できる駆動装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、第1方向に延びるモータ軸を中心に回転するロータ、およびステータを有するモータと、前記モータに電力を供給するインバータと、前記モータを収容するモータハウジング部、および、前記インバータを収容するインバータ収容部を有するハウジングと、前記インバータ収容部の開口を塞ぐインバータ蓋部と、前記モータハウジング部に配置されるオイルと、前記ハウジングに固定され、前記オイルが流れる油路の一部が配置される熱交換器と、前記インバータ蓋部、前記ハウジングの一部および前記熱交換器を通り、冷却媒体が流れる冷媒流路と、を備える。前記インバータは、前記インバータ蓋部に固定されるスイッチング素子を有する。前記冷媒流路は、前記インバータ蓋部に配置され前記スイッチング素子を冷却するスイッチング素子冷却部と、前記熱交換器に配置され前記オイルと前記冷却媒体とを熱交換する熱交換部と、前記冷媒流路のうち前記スイッチング素子冷却部と前記熱交換部とを接続する部分に配置され、前記インバータ蓋部に開口する蓋部側開口部と、前記冷媒流路のうち前記スイッチング素子冷却部と前記熱交換部とを接続する部分に配置され、前記インバータ収容部に開口する収容部側開口部と、を有する。所定方向から見て、前記蓋部側開口部と前記収容部側開口部とが、互いに重なり、かつ対向する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、モータとインバータとが一体化され、かつモータをオイルにより冷却する油冷方式の駆動装置において、冷却効率を高めつつ組み立て工程を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。具体的に、本実施形態でいう「平行」とは、略同一方向に並進する(延びる)一対の構成要素同士の間の角度、すなわち一方を基準として他方が傾斜する角度(傾斜角)が、30°以下であることを指す。本実施形態では、Y軸方向が第1方向に相当し、Z軸方向が第2方向に相当し、X軸方向が第3方向に相当する。
【0012】
適宜図に示すモータ軸J2は、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、モータ軸J2は、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。つまりモータ軸J2は、第1方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J2に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする周方向、つまりモータ軸J2の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、軸方向一方側は右側(-Y側)に相当し、軸方向他方側は左側(+Y側)に相当する。
【0013】
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸55を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。
【0014】
図1に示すように、駆動装置100は、モータ2と、伝達機構3と、オイルOと、油路(図示略)と、ハウジング6と、インバータユニット7と、熱交換器9と、ポンプ(図示略)と、冷媒流路11と、を備える。インバータユニット7は、インバータ12と、インバータ蓋部13と、を有する。つまり駆動装置100は、インバータ12と、インバータ蓋部13と、を備える。
【0015】
ハウジング6は、モータ2を収容するモータハウジング部60と、伝達機構3を収容するギヤハウジング部62と、モータハウジング部60とギヤハウジング部62とを区画する壁部(図示略)と、インバータ12を収容するインバータ収容部8と、を有する。ギヤハウジング部62は、モータハウジング部60の左側に配置される。ハウジング6の上記以外の構成については、後述する。
【0016】
モータ2は、水平方向に延びるモータ軸J2を中心として回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、モータ側接続部35と、を備える。モータ2は、ステータ30の内側にロータ20が配置されるインナーロータ型モータである。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネット(図示略)と、を有する。
【0017】
シャフト21は、水平方向かつ車両の幅方向に延びるモータ軸J2を中心とする。シャフト21は、内部に中空部(図示略)を有する中空シャフトである。シャフト21は、モータハウジング部60からギヤハウジング部62内へ突出する。ギヤハウジング部62に突出するシャフト21の端部は、伝達機構3に連結される。
【0018】
ステータ30は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイル(図示略)と、ステータコア32とコイルとの間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、モータハウジング部60に保持される。
【0019】
モータ側接続部35は、ステータ30から突出する。モータ側接続部35は、コイルと接続される配線部材などであり、例えばバスバーである。モータ側接続部35は、コイル31から延び出て束ねられる複数の導線を含んでいてもよい。モータ側接続部35は、ステータコア32から径方向外側に突出する。モータ側接続部35は、インバータ12と電気的に接続される。
【0020】
伝達機構3は、モータ2から出力される回転を、出力軸J5を中心に回転する車軸55に伝達する。つまり伝達機構3は、モータ2の動力を車軸55に伝達する。モータ軸J2と出力軸J5とは、互いに平行に延びる。本実施形態では、モータ軸J2と出力軸J5とが、略水平方向に並んで配置される。
図1に示すように第1方向(Y軸方向)から見て、モータ軸J2と出力軸J5とを通る仮想直線VLは、第3方向であるX軸方向に延びる。すなわち、第1方向から見て、仮想直線VLは、第3方向と平行に延びる。モータ軸J2は、第3方向において、出力軸J5よりも一方側に位置する。すなわち本実施形態において、第3方向の一方側は前側(+X側)であり、第3方向の他方側は後側(-X側)である。
【0021】
伝達機構3は、ギヤハウジング部62に収容される。伝達機構3は、モータ軸J2の軸方向他方側においてシャフト21に接続される。伝達機構3は、モータ2の回転を減速させる減速装置4と、減速装置4において減速したモータ2の回転を車軸55に伝達する差動装置5とを有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0022】
減速装置4は、モータ2のシャフト21に接続される。減速装置4は、第1ギヤ41と、第2ギヤ42と、第3ギヤ43と、中間シャフト45とを有する。第1ギヤ41は、モータ2のシャフト21に連結される。第1ギヤ41は、ロータ20のシャフト21に固定される。中間シャフト45は、モータ軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びる。第2ギヤ42および第3ギヤ43は、中間シャフト45の例えば両端部に固定される。第2ギヤ42および第3ギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2ギヤ42、中間シャフト45および第3ギヤ43は、中間軸J4を中心に回転する。中間軸J4は、仮想直線VLに対して第2方向(Z軸方向)に位置する。すなわち中間軸J4は、仮想直線VLから第2方向に離れて配置される。本実施形態では中間軸J4が、仮想直線VLの上側(+Z側)に位置する。
【0023】
第2ギヤ42は、カウンタギヤである。第2ギヤ42は、第1ギヤ41に噛み合う。第1方向から見て、第2ギヤ42つまりカウンタギヤと、インバータ12とが重なる。一般的にカウンタギヤ42は、モータ2、および差動装置5のリングギヤ51よりも小径であるため、カウンタギヤ42の中心(中間軸J4)を仮想直線VLから第2方向にずらして配置することで、駆動装置100全体としての第2方向の寸法の嵩張りを抑えられる。そして、第1方向から見てカウンタギヤ42とインバータ12とが重なることで、駆動装置100全体を第2方向により扁平化できる。第3ギヤ43は、リングギヤ51と噛み合う。
【0024】
モータ2から出力されるトルクは、モータ2のシャフト21、第1ギヤ41、第2ギヤ42、中間シャフト45および第3ギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ51に伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0025】
差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車軸55に伝達する。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸(ドライブシャフト)55に同トルクを伝達する。差動装置5は、減速装置4の第3ギヤ43に噛み合うリングギヤ51のほか、図示しないデフケース、ピニオンギヤ、ピニオンシャフトおよびサイドギヤ等を有する。リングギヤ51は、減速装置4に接続され、出力軸J5を中心に回転する。
【0026】
オイルOは、モータハウジング部60およびギヤハウジング部62に配置される。少なくともギヤハウジング部62内の下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。本実施形態では、モータハウジング部60の底部は、ギヤハウジング部62の底部より上側に位置する。この構成により、モータ2を冷却した後のオイルOを、モータハウジング部60の下部領域からギヤハウジング部62のオイル溜りPに容易に回収できる。
【0027】
オイル溜りPには、差動装置5の一部が浸かる。オイル溜りPに溜るオイルOは、差動装置5の動作によってかき上げられる。かき上げられたオイルOの一部は、シャフト21内に供給される。ただし、シャフト21内に供給されなくてもよい。オイルOの他の一部は、ギヤハウジング部62内に拡散され、減速装置4および差動装置5の各ギヤに供給される。減速装置4および差動装置5の潤滑に使用されたオイルOは、滴下してギヤハウジング部62の下側に位置するオイル溜りPに回収される。
【0028】
オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。
【0029】
オイルOは、ハウジング6に設けられた油路(図示略)内を循環する。油路は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給するオイルOの経路である。油路は、オイルOを循環させモータ2を冷却する。また油路の一部は、熱交換器9を通る。
【0030】
油路は、ハウジング6下部のオイル溜りPからモータ2を経て、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。特に図示しないが、油路は、モータ2の内部を通る第1の油路と、モータ2の外部を通る第2の油路と、を有する。オイルOは、第1の油路および第2の油路において、モータ2を内部および外部から冷却する。ただし、第1の油路および第2の油路のいずれかが設けられなくてもよい。
【0031】
第1の油路において、オイルOは、オイル溜りPから図示しないポンプにより吸い上げられ、ロータ20のシャフト21内に導かれる。オイルOは、ロータ20からコイルに向かって噴射され、ステータ30を冷却する。ステータ30を冷却したオイルOは、モータハウジング部60の下部領域を経由してギヤハウジング部62のオイル溜まりPに移動する。
【0032】
第2の油路において、オイルOは、ポンプによってオイル溜りPから汲み上げられる。オイルOは、モータ2の上部に汲み上げられ、モータ2の上側からステータ30に供給される。モータ2を冷却したオイルOは、モータハウジング部60の下部領域を経由してギヤハウジング部62のオイル溜まりPに移動する。
【0033】
ハウジング6は、モータ軸J2に沿って延びる筒状のモータハウジング部60と、モータハウジング部60の軸方向他方側に位置するギヤハウジング部62と、モータハウジング部60とギヤハウジング部62とを区画する壁部(図示略)と、インバータ収容部8と、を有する。ハウジング6において、モータハウジング部60の少なくとも一部、ギヤハウジング部62の少なくとも一部、およびインバータ収容部8は、単一の部材の部分である。モータハウジング部60の少なくとも一部、ギヤハウジング部62の少なくとも一部、およびインバータ収容部8は、単一のダイカスト部品の一部をそれぞれ構成する。このため、例えば別体のインバータ収容部8をボルト等を用いてモータハウジング部60に固定する場合と比較して、本実施形態によれば振動を抑制でき、騒音を低減できる。また、インバータ収容部8とモータハウジング部60の筒状部とが一体であることにより、インバータ収容部8をモータ2の近くに配置でき、駆動装置100全体を小型化できる。モータハウジング部60とギヤハウジング部62との間を隔てる壁部は、シャフト21を回転可能に支持するベアリング、および中間シャフト45を回転可能に支持するベアリングを保持する。
【0034】
インバータ収容部8は、上側に開口する有底筒状である。インバータ収容部8およびその開口部は、第3方向に延びる。インバータ収容部8の開口部には、インバータユニット7が装着され、これによりインバータ収容部8の開口部が閉じられる。具体的に、インバータ収容部8の開口部は、インバータ蓋部13の下面における外周部と接触する。インバータ収容部8は、第2方向(Z軸方向)から見て、モータ軸J2および出力軸J5と重なる。インバータ収容部8のうち第3方向の一方側の端部は、第2方向から見て、ステータ30のうち第3方向の一方側の端部と重なる。本実施形態によれば、第3方向の一方側において、インバータ収容部8がステータ30の外端部まで延びているため、第3方向におけるインバータ収容部8の寸法、つまり駆動装置100の長手方向におけるインバータ収容部8の寸法を大きく確保でき、これにより第2方向においてさらなる薄型化が可能となる。
【0035】
インバータ収容部8は、周壁部8aと、境界壁部8bと、を有する。周壁部8aは、第2方向に延びる筒状であり、例えば角筒状である。境界壁部8bは、板状である。境界壁部8bは、第2方向において、インバータ収容部8の仮想直線VL側つまり下側の境界に位置する。境界壁部8bは、インバータ収容部8の内部と外部とを、第2方向に隔てる。境界壁部8bの第2方向の位置は、境界壁部8bの第3方向の各位置において互いに異なる。本実施形態では境界壁部8bが、第2方向と垂直な方向に拡がり第2方向の位置が互いに異なる一対の第1板部8baと、一対の第1板部8ba同士を繋ぎ第3方向と垂直な方向に拡がる第2板部8bbと、を有する。第2板部8bbは、上記構成に限らず、例えば、モータ2外周に沿って周方向に延びていてもよいし、他の形状でもよい。なお境界壁部8bは、底壁部と言い換えてもよい。
【0036】
本実施形態では第2方向において、境界壁部8bとモータ軸J2との間の距離に比べて、境界壁部8bと出力軸J5との間の距離が小さい。具体的には、一対の第1板部8baのうち第3方向の一方側に位置する一方の第1板部8baと、モータ軸J2との間の第2方向の距離に比べて、一対の第1板部8baのうち第3方向の他方側に位置する他方の第1板部8baと、出力軸J5との間の距離が短い。すなわち、インバータ収容部8のうち、第2方向から見て出力軸J5と重なる部分は、境界壁部8bが出力軸J5に近づいて配置されるため、部材の収容スペースが大きく確保されている。このため、インバータ12の構成部材の中でも寸法が嵩張りやすい電子部品等を上記収容スペースの部分に配置することで、ハウジング6内のデッドスペースを有効活用でき、駆動装置100を小型化できる。
【0037】
本実施形態では第1方向から見て、インバータ収容部8と差動装置5とが重なる。これにより、インバータ12と差動装置5とを近くに配置でき、駆動装置100全体を小型化できる。また、第1方向から見て、モータ2と差動装置5とが重なる。これにより、モータ2と差動装置5とを近くに配置でき、駆動装置100全体を小型化できる。また、第1方向から見て、減速装置4とインバータ収容部8とが重なる。これにより、減速装置4とインバータ12とを近くに配置でき、駆動装置100全体を小型化できる。
【0038】
インバータユニット7は、ステータ30のコイルと電気的に接続される。インバータユニット7は、モータ2に供給される電流を制御する。インバータユニット7は、インバータ収容部8に収容される部分を有し、ハウジング6に固定される。インバータ12は、モータ2に電力を供給する。インバータ12は、モータ軸J2に対して上側つまり第2方向(Z軸方向)に位置し、かつ第3方向(X軸方向)に延びる。インバータ12は、第2方向と垂直な方向に拡がる平板状である。本実施形態によれば、インバータ12が、第3方向すなわちモータ2と伝達機構3とが並ぶ駆動装置100の長手方向に延びるため、その分、インバータユニット7の第2方向の寸法を小さく抑えることができ、薄型化が可能となる。
【0039】
インバータ12は、1つまたは複数の基板12aと、複数の電子部品12bと、インバータ側接続部14と、を有する。基板12aおよび電子部品12bは、インバータ蓋部13に固定される。つまりインバータ12は、インバータ蓋部13に固定される。
【0040】
少なくとも1つの基板12aは、第2方向から見て、モータ軸J2および出力軸J5と重なる。本実施形態によれば、第2方向から見て、基板12aがモータ軸J2および出力軸J5とオーバーラップするので、電子部品を多数実装可能な大きい基板を採用できる。例えば小さい基板を複数枚積層させて配置する場合と比べて、本実施形態によればコストを削減できる。
【0041】
複数の電子部品12bは、スイッチング素子12baと、コンデンサ12bbと、を含む。つまりインバータ12は、スイッチング素子12baおよびコンデンサ12bbを有する。スイッチング素子12baおよびコンデンサ12bbは、インバータ蓋部13に固定される。スイッチング素子12baは、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。コンデンサ12bbは、第2方向から見て、出力軸J5と重なる。本実施形態によれば、電子部品としては外形が嵩張りやすいコンデンサ12bbを、第2方向から見て出力軸J5とオーバーラップする位置に配置することで、出力軸J5上方のデッドスペースを利用でき、駆動装置100を薄型化できる。また、例えば、車両レイアウト上の理由などにより、インバータユニット7のうち第2方向から見て出力軸J5と重なる部分の上端位置を、下側へ下げる必要が生じる場合がある。このような場合であっても、上記のようにコンデンサ12bbが出力軸J5とオーバーラップする位置に配置されていると、設計変更が行いやすい。なおこのような設計変更を行う際に、例えば基板12aを、後側(-X側)へ向かうに従い下側(-Z側)に位置するように傾斜させてもよい。また、コンデンサ12bbのサイズが大きい場合には、基板12aの下側にコンデンサ12bbを配置することも可能である。いずれの場合も、出力軸J5上方のデッドスペースを利用でき、駆動装置100を薄型化できる。
【0042】
インバータ側接続部14は、インバータ12の第3方向の一方側の端部に位置し、モータ2と電気的に接続される。インバータ側接続部14は、例えばバスバー等を介してモータ側接続部35と接続される。モータ側接続部35は、第3方向(X軸方向)において、モータ軸J2よりも出力軸J5とは反対側に位置する部分を有する。本実施形態によれば、モータ側接続部35が、インバータ収容部8のうち第3方向の一方側の端部に近づいて配置されるため、モータ側接続部35とインバータ側接続部14とを接続しやすい。またインバータ収容部8内で基板上の電子部品等の配置スペースを確保しやすく、さらなる薄型化が可能となる。
【0043】
インバータ蓋部13は、第2方向と垂直な方向に拡がる平板状である。インバータ蓋部13は、第3方向に延びる。インバータ蓋部13は、インバータ収容部8の開口を塞ぐ。インバータ蓋部13は、インバータ収容部8に対して所定方向から取り付けられる。本実施形態では、インバータ収容部8にインバータ蓋部13を取り付ける向きが、第2方向(Z軸方向)である。つまり前記所定方向は、第2方向であり、具体的には鉛直方向である。
図2に示すように、インバータ蓋部13は、インバータ収容部8の開口部上に載せられた状態、すなわち開口部に接触した状態で、第2方向から図示しないネジ部材等により締結されることで、インバータ収容部8と固定される。本実施形態によれば、インバータ蓋部13にインバータ12が固定され、詳しくは、基板12a、およびスイッチング素子12ba等の電子部品12bが固定されているため、モータ2側からの熱が伝わりにくく、後述する冷媒流路11によるインバータ12の各構成部材の冷却効率が高められる。インバータ収容部8またはインバータ蓋部13は、筒状部材15を有する。筒状部材15は、所定方向つまり第2方向に延びる。筒状部材15の上記以外の構成については、後述する。
【0044】
図1および
図2に示すように、熱交換器9は、ハウジング6に固定される。本実施形態では熱交換器9が、第3方向において、出力軸J5よりもモータ軸J2とは反対側に位置する。つまり熱交換器9は、出力軸J5よりも第3方向の他方側に位置する。熱交換器9は、ハウジング6のうち第3方向の他方側を向く壁部に固定される。熱交換器9は、インバータ収容部8に対向する部分9aを有する。本実施形態では、熱交換器9の上側部分が、インバータ収容部8の周壁部8aと対向する。本実施形態によれば、従来の駆動装置では利用されていなかったデッドスペースを有効活用できる。特に図示しないが、オイルOが循環する油路の一部は、熱交換器9を通る。すなわち、熱交換器9には、オイルOが流れる油路の一部が配置される。
【0045】
特に図示しないが、本実施形態のポンプは、例えば電動オイルポンプである。ポンプは、ハウジング6に固定される。本実施形態ではポンプが、第3方向において、出力軸J5よりもモータ軸J2とは反対側に位置する。つまりポンプは、出力軸J5よりも第3方向の他方側に位置する。ポンプは、ハウジング6のうち第3方向の他方側を向く壁部に固定される。ポンプは、例えば、熱交換器9と第1方向に並んで配置される。ポンプは、オイル溜りPから吸い上げたオイルOを、熱交換器9へ送る。熱交換器9で冷却媒体と熱交換されたオイルOは、例えば、ステータ30の上側およびシャフト21の内部からそれぞれ、モータ2に供給される。
【0046】
図1に示すように、冷媒流路11は、インバータ蓋部13、ハウジング6の一部および熱交換器9を通る。冷媒流路11には、ラジエータ(図示略)で冷却された冷却媒体が流れる。冷媒流路11は、インバータユニット7およびオイルOを冷却する。冷媒流路11は、電子部品冷却部11aと、熱交換部11bと、蓋部側開口部11cと、収容部側開口部11dと、シールボルト11eと、を有する。
【0047】
電子部品冷却部11aは、インバータ蓋部13に配置され、電子部品12bを冷却する。冷却媒体は、電子部品冷却部11aを第3方向の一方側から他方側へ向けて流れる。電子部品冷却部11aは、スイッチング素子冷却部11aaと、コンデンサ冷却部11abと、を有する。スイッチング素子冷却部11aaは、スイッチング素子12baを冷却する。コンデンサ冷却部11abは、インバータ蓋部13のうちスイッチング素子冷却部11aaよりも第3方向の他方側に配置され、コンデンサ12bbを冷却する。コンデンサ冷却部11abは、スイッチング素子冷却部11aaよりも冷媒流路11の下流側に位置する。冷媒流路11のうちインバータ蓋部13に位置する部分を流れる冷却媒体は、スイッチング素子12baを冷却した後、コンデンサ12bbを冷却し、その後、熱交換器9のオイルOを冷却する。本実施形態によれば、発熱量の大きい部材から順に効率よく冷却することができる。
【0048】
熱交換部11bは、熱交換器9に配置され、オイルOと冷却媒体とを熱交換する。熱交換部11bは、冷媒流路11のうち熱交換器9に位置する部分であり、熱交換部11bを流れる冷却媒体により、オイルOが冷却される。
【0049】
図2に示すように、蓋部側開口部11cは、冷媒流路11のうちスイッチング素子冷却部11aaを含む電子部品冷却部11aと、熱交換部11bとを接続する部分に配置され、インバータ蓋部13に開口する。蓋部側開口部11cは、インバータ蓋部13の下側つまりインバータ収容部8側を向く面に開口し、第2方向に延びる。蓋部側開口部11cは、例えば円穴状である。
【0050】
収容部側開口部11dは、冷媒流路11のうちスイッチング素子冷却部11aaを含む電子部品冷却部11aと、熱交換部11bとを接続する部分に配置され、インバータ収容部8に開口する。収容部側開口部11dは、インバータ収容部8の上側つまりインバータ蓋部13側を向く面に開口し、第2方向に延びる。本実施形態では収容部側開口部11dが、周壁部8aの上端面に開口し、周壁部8aの内部を第2方向に延びる。収容部側開口部11dは、例えば円穴状である。
【0051】
所定方向から見て、つまり本実施形態では第2方向(Z軸方向)から見て、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとは、互いに重なり、かつ対向する。本実施形態によれば、インバータ収容部8に対してインバータ蓋部13を取り付ける第2方向において、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとが対向するので、インバータ蓋部13をハウジング6に組み付けることにより、冷媒流路11のうちインバータ蓋部13に位置する部分と、インバータ収容部8に位置する部分とが接続される。このため、従来のように冷媒流路の部分同士を接続するためのホース部材等は不要であり、本実施形態によれば部品点数が削減され、組み立て工程を簡素化できる。
【0052】
図1に示すように、蓋部側開口部11cは、インバータ12の第3方向の他方側に位置する。インバータ12のスイッチング素子12baは、インバータ側接続部14と接近して配置される。すなわち、スイッチング素子冷却部11aaは、インバータ蓋部13のうち第3方向の一方側の端部付近に配置される。また、スイッチング素子冷却部11aaと通じる蓋部側開口部11cは、インバータ12の第3方向の他方側に配置される。このため本実施形態によれば、冷媒流路11のうちインバータ12を冷却する部分の流路面積(長さ)を大きく確保できる。
【0053】
図2に示すように、熱交換器9のうちインバータ収容部8に対向する部分9aは、収容部側開口部11dの中心軸Cに直交する方向から見て、収容部側開口部11dの少なくとも一部と重なる。本実施形態によれば、冷媒流路11のうち、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとの接続箇所から、熱交換部11bまでの間の部分の流路長さを短く抑えることができる。これにより、冷却媒体の流路抵抗を抑えることができ、オイルOの冷却効率がより高められる。
【0054】
シールボルト11eは、電子部品冷却部11aの第3方向の他方側の端部を塞ぐ。シールボルト11eは、電子部品冷却部11aの第3方向の他方側の端部に、ねじにより固定される。シールボルト11eが設けられることにより、電子部品冷却部11aから蓋部側開口部11cへと流れの向きを変える流路の部分を、コンパクトかつ簡素に構成できる。またシールボルト11eを取り外すことにより、電子部品冷却部11aの流路の内部に容易にアクセスすることができる。
【0055】
筒状部材15は、中心軸Cを中心とするパイプ状である。筒状部材15の中心軸Cは、所定方向つまり第2方向に延びる。なお中心軸Cは、筒状部材15、蓋部側開口部11cおよび収容部側開口部11dの共通軸でもある。すなわち、筒状部材15、蓋部側開口部11cおよび収容部側開口部11dは、互いに同軸に配置される。蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとは、筒状部材15を介して接続される。本実施形態によれば、筒状部材15が設けられることにより、組み立てが簡素化されつつ、冷媒流路11のうち蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとの接続部分において冷却媒体が漏れることが抑制される。
【0056】
筒状部材15は、筒体15aと、フランジ部15bと、貫通孔(図示略)と、固定部材(図示略)と、複数のOリング15c,15dと、を有する。筒体15aは、所定方向つまり第2方向に延びる。筒体15aは、中心軸Cを中心とする円筒状である。筒体15aは、蓋部側開口部11cに挿入される第1挿入部15aaと、収容部側開口部11dに挿入される第2挿入部15abと、を有する。つまり筒状部材15は、第1挿入部15aaと、第2挿入部15abと、を有する。第1挿入部15aaは、筒状部材15の中心軸Cを中心とし第1挿入部15aaの外周面から窪む環状の第1溝15eを有する。第2挿入部15abは、中心軸Cを中心とし第2挿入部15abの外周面から窪む環状の第2溝15fを有する。
【0057】
フランジ部15bは、筒体15aの外周面から突出する。フランジ部15bは、中心軸Cと垂直な方向に拡がる板状である。フランジ部15bは、筒状部材15の中心軸Cを中心とする環状であり、本実施形態では円環板状である。特に図示しないが、貫通孔は、フランジ部15bを所定方向に貫通する。貫通孔は、フランジ部15bに、中心軸C回りに互いに間隔をあけて複数設けられる。固定部材は、例えばネジ部材等である。固定部材は、複数設けられる。固定部材の数は、貫通孔の数と同じである。固定部材は、貫通孔に挿入され、インバータ収容部8またはインバータ蓋部13に固定される。すなわち、筒状部材15は、インバータ収容部8またはインバータ蓋部13に固定される。本実施形態によれば、筒状部材15をインバータ収容部8またはインバータ蓋部13に精度よく取り付けることができ、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとの接続部分から冷却媒体が漏れることがより抑制される。
【0058】
Oリング15c,15dは、環状であり、弾性変形可能である。Oリング15c,15dは、筒状部材15に複数設けられる。本実施形態ではOリング15c,15dが、一対設けられる。複数のOリング15c,15dは、第1挿入部15aaと第2挿入部15abとにそれぞれ取り付けられ、蓋部側開口部11cの内周面または収容部側開口部11dの内周面と接触する。具体的に、複数のOリング15c,15dのうち、第1挿入部15aaに取り付けられる第1Oリング15cは、第1溝15eに配置される。第1Oリング15cは、第1溝15eの溝壁と蓋部側開口部11cの内周面とに接触し、これらの間をシールする。複数のOリング15c,15dのうち、第2挿入部15abに取り付けられる第2Oリング15dは、第2溝15fに配置される。第2Oリング15dは、第2溝15fの溝壁と収容部側開口部11dの内周面とに接触し、これらの間をシールする。
【0059】
特に図示しないが、第1挿入部15aaに第1溝15eを設ける代わりに、第1挿入部15aaの外周面から突出する第1突起を設けてもよい。第1突起は、例えば中心軸Cを中心とする円環板状、または中心軸C回りに延びるリブ状等である。この場合、第1Oリング15cは、所定方向において第1突起と対向する。第1Oリング15cは、第1突起に所定方向から支持されることで、第1挿入部15aaの外周面に、所定方向において位置決め状態で保持される。第1Oリング15cは、第1挿入部15aaの外周面と、蓋部側開口部11cの内周面とに接触し、これらの間をシールする。
【0060】
また、第2挿入部15abに第2溝15fを設ける代わりに、第2挿入部15abの外周面から突出する第2突起を設けてもよい。第2突起は、例えば中心軸Cを中心とする円環板状、または中心軸C回りに延びるリブ状等である。この場合、第2Oリング15dは、所定方向において第2突起と対向する。第2Oリング15dは、第2突起に所定方向から支持されることで、第2挿入部15abの外周面に、所定方向において位置決め状態で保持される。第2Oリング15dは、第2挿入部15abの外周面と、収容部側開口部11dの内周面とに接触し、これらの間をシールする。
【0061】
特に図示しないが、筒状部材15は下記のようなシール構造を有していてもよい。すなわち、Oリングは、インバータ蓋部13の下側つまり所定方向を向く面のうち蓋部側開口部11cを囲う第1部分とフランジ部15bとの間、および、インバータ収容部8の上側つまり所定方向を向く面のうち収容部側開口部11dを囲う第2部分とフランジ部15bとの間、の少なくともいずれかに挟まれる。インバータ収容部8およびインバータ蓋部13の少なくともいずれかは、フランジ部15b、前記第1部分および前記第2部分の少なくともいずれかに配置され、前記所定方向に開口し、前記所定方向から見て前記中心軸Cを囲う環状溝を有する。Oリングは、前記環状溝に配置される。この場合においても、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとの接続部分から駆動装置100外部へ冷却媒体が漏れることを抑制できる。
【0062】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0063】
前述の実施形態では、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとが対向する所定方向が、第2方向である例を挙げたが、この構成に限らない。例えば、インバータ蓋部13が、インバータ収容部8に対して第3方向にスライドしつつ装着される場合には、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとが対向する所定方向は、第3方向である。同様に、インバータ蓋部13が、インバータ収容部8に対して第1方向にスライドしつつ装着される場合には、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとが対向する所定方向は、第1方向である。また、例えば、インバータ蓋部13が、インバータ収容部8に対して第2方向と交差する傾斜方向から取り付けられる場合には、蓋部側開口部11cと収容部側開口部11dとが対向する所定方向は、前記傾斜方向である。つまり本発明の「所定方向」は、例えば、インバータ収容部8に対してインバータ蓋部13を組み付ける種々の方向に設定され得る。
【0064】
前述の実施形態では、熱交換器9が、内部を流れる冷却媒体によりオイルOを冷却する構成であると説明したが、換言すると、熱交換器9は、内部を流れるオイルOにより冷却媒体を加熱する構成であってもよい。
【0065】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0066】
2…モータ、3…伝達機構、6…ハウジング、8…インバータ収容部、9…熱交換器、9a…部分、11…冷媒流路、11aa…スイッチング素子冷却部、11ab…コンデンサ冷却部、11b…熱交換部、11c…蓋部側開口部、11d…収容部側開口部、12…インバータ、12a…基板、12ba…スイッチング素子、12bb…コンデンサ、13…インバータ蓋部、14…インバータ側接続部、15…筒状部材、15a…筒体、15aa…第1挿入部、15ab…第2挿入部、15b…フランジ部、15c…第1Oリング(Oリング)、15d…第2Oリング(Oリング)、15e…第1溝、15f…第2溝、20…ロータ、30…ステータ、55…車軸、60…モータハウジング部、100…駆動装置、C…中心軸、J2…モータ軸、J5…出力軸、O…オイル