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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20240409BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60N2/14
A47C3/18 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020197970
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086123
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 健太
(72)【発明者】
【氏名】板東 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 幸雄
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147186(JP,A)
【文献】特開昭63-235137(JP,A)
【文献】特開2017-039468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体を第一位置から第二位置に移動させる移動機構を備える車両用シート装置において、
前記移動機構は、移動不能な基盤部に対して前記シート本体を支持する着座部を移動させるリンク機構と、前記基盤部と前記着座部の間に配置された複数の摺動部材とを備え、
前記複数の摺動部材は、前記基盤部と前記着座部のいずれか一方に設けられた状態で、前記一方とは異なる前記基盤部と前記着座部のいずれか他方に設けた被摺動部位に対して摺動可能に構成され、
前記複数の摺動部材の少なくとも一つは、前記被摺動部位との接触方向及び逆方向に移動可能とされており、
前記被摺動部位として、前記摺動部材の相対移動軌跡に沿うようにガイドレールが設けられており、前記ガイドレールは、前記基盤部と前記着座部のいずれか一方を臨む第一ガイド面と、前記第一ガイド面の縁に沿って形成され且つ前記基盤部と前記着座部との隙間方向に起立する第二ガイド面とを有し、
前記複数の摺動部材の少なくとも一つは、前記第一ガイド面との接触方向に付勢されている第一摺動部と、前記第二ガイド面との接触方向に付勢されている第二摺動部とを有している車両用シート装置。
【請求項2】
前記複数の摺動部材の少なくとも一つは、接触方向及び逆方向としての前記基盤部と前記着座部との隙間方向に移動可能とされている請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記シート本体を車両前向きの前記第一位置からドア開口部を向く前記第二位置に回転移動させる前記移動機構を備え、
前記シート本体は、車室内のドア開口部側に設けられている請求項1又は2に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体を第一位置から第二位置に移動させる移動機構を備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両用シート装置は、シート本体を車両前後方向にスライドさせるシートスライド機構と、シート本体を回転させるシート回転機構とを備えている。シート回転機構は、本発明の移動機構に相当し、シート本体を支持するプレート(着座部)を、シートスライド機構上の前後スライドテーブル(基盤部)上で回転させられるように構成されている。そしてプレートの下面には、本発明の摺動部材に相当する四つのスライドが前後左右に分かれて設けられている。また前後スライドテーブルの上面には、各スライドと対応する位置に、本発明の被摺動部位に相当する円弧形のレール部材が複数設けられている。
【0003】
そしてシート本体を、車両前向きの第一位置から、ドア開口部を向く第二位置まで回転させる。この場合には、まず車両のセンターピラーと干渉しない位置までシートスライド機構を利用してシート本体を車両前後方向にスライドさせる。つぎにシート回転機構を利用してシート本体を第一位置から第二位置まで回転移動させる。そしてプレートと前後スライドテーブルとは、その回転移動の際に、これらの間に配置された各スライドをレール部材に対して摺動させながら相対回転していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記構成では、プレートに設けられた複数のスライド(着座部に設けられた摺動部材)が、前後スライドテーブルに設けられたレール部材(基盤部の被摺動部位)に接地していることが望ましい。すなわち複数のスライドのいずれかがレール部材から浮いた場合、この浮いたスライドがレール部材に再び接地することで、意図しない異音が発生するおそれがある。このため各スライドをレール部材に接地させるように精度良く配置するのであるが、この種の構成では、スライドが多くなるほどその精度管理の負担が増す。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、複数の摺動部材を、その精度管理を極力容易としつつ、移動機構を構成する基盤部と着座部との間に精度良く配置しておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シート装置は、シート本体を第一位置から第二位置に移動させる移動機構を備えている。また移動機構は、移動不能な基盤部に対してシート本体を支持する着座部を移動させるリンク機構と、基盤部と着座部の間に配置された複数の摺動部材とを備えている。そして複数の摺動部材は、基盤部と着座部のいずれか一方に設けられた状態で、一方とは異なる基盤部と着座部のいずれか他方に設けた被摺動部位に対して摺動可能に構成されている。この種のシート構成では、複数の摺動部材を、その精度管理を極力容易としつつ、基盤部と着座部との間に精度良く配置できることが望ましい。そこで本発明では、複数の摺動部材の少なくとも一つは、被摺動部位との接触方向及び逆方向に移動可能とされている。また被摺動部位として、摺動部材の相対移動軌跡に沿うようにガイドレールが設けられており、ガイドレールは、基盤部と着座部のいずれか一方を臨む第一ガイド面と、第一ガイド面の縁に沿って形成され且つ基盤部と着座部との隙間方向に起立する第二ガイド面とを有している。そして複数の摺動部材の少なくとも一つは、第一ガイド面との接触方向に付勢されている第一摺動部と、第二ガイド面との接触方向に付勢されている第二摺動部とを有している。本発明では、複数の摺動部材の少なくとも一つを被摺動部位との接触方向に移動させることができるため、この移動可能な摺動部材の分だけ精度管理を容易にすることができる。また本発明では、複数の摺動部材の少なくとも一つを被摺動部位との接触方向に付勢することで、この付勢された摺動部材の分だけ精度管理を更に容易にすることができる。そして本発明では、使用されるガイドレールの構造に応じて、第一摺動部と第二摺動部を対応するガイド面との接触方向及び逆方向に移動可能にでき、精度管理を一層容易にすることができる
【0007】
第2発明の車両用シート装置は、第1発明の車両用シート装置において、複数の摺動部材の少なくとも一つは、接触方向及び逆方向としての基盤部と着座部との隙間方向に移動可能とされている。本発明では、複数の摺動部材の少なくとも一つを、基盤部と着座部との隙間方向に移動させて被摺動部位に接触させるようにしたことで、この移動可能な摺動部材の分だけ精度管理をより容易にすることができる。
【0010】
発明の車両用シート装置は、第1発明又は明の車両用シート装置において、シート本体を車両前向きの第一位置からドア開口部を向く第二位置に回転移動させる移動機構を備え、シート本体は、車室内のドア開口部側に設けられている。本発明では、ドア開口部側に設けられたシート本体を、移動機構によって第一位置からドア開口部を向く第二位置に回転移動させることができ、優れた乗降性の確保に資する構成となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る第1発明によれば、複数の摺動部材を、その精度管理を容易としつつ、移動機構を構成する基盤部と着座部との間に精度良く配置しておくことができる。また第1発明によれば、複数の摺動部材の精度管理を一層容易にすることができる。また第2発明によれば、複数の摺動部材の精度管理をより容易にすることができる。そして第発明によれば、優れた乗降性を確保しつつ、複数の摺動部材を、移動機構を構成する基盤部と着座部との間に精度良く配置しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ドア開口部と車両用シート装置を表す車両の模式側面図である。
図2】第一位置のシート本体を表す車両の概略側面図である。
図3】第一位置にある後部リンクを後方から見た縦断面図である。
図4】第一位置にある前部リンクを後方から見た縦断面図である。
図5】移動機構の動作初期を表す車両用シート装置の模式平面図である。
図6】移動機構の動作中期を表す車両用シート装置の模式平面図である。
図7】移動機構の動作後期を表す車両用シート装置の模式平面図である。
図8】移動機構の動作最後期を表す車両用シート装置の模式平面図である。
図9】第二位置にある後部リンクを後方から見た縦断面図である。
図10】第二位置にある前部リンクを後方から見た縦断面図である。
図11】各摺動部材を表す車両用シート装置の模式透視斜視図である。
図12】第一位置の各摺動部材を表す移動機構の模式透視上面図である。
図13】ガイドレールと摺動部材の分解斜視図である。
図14】ガイドレールと摺動部材の模式横断面図である。
図15】摺動部材の斜視図である。
図16】ガイドレールと摺動部材の模式縦断面図である。
図17】摺動部材の模式上面図である。
図18】他の摺動部材の斜視図である。
図19】ガイドレールと摺動部材の位置関係を示す模式下面図である。
図20】動作後期の各摺動部材を表す移動機構の模式平面図である。
図21】動作最後期の各摺動部材を表す移動機構の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図21を参照して説明する。各図には、便宜上、車両用シート装置の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。そして図2図10では、便宜上、専ら乗物用シート装置の四節リンク機構を図示し、各摺動部材を省略又は簡略化して図示している。また図11図21では、専ら乗物用シート装置の摺動部材を図示し、四節リンク機構を省略又は簡略化して図示している。そして図11では、便宜上、着座部を二点破線で図示し且つ基盤部を実線で図示する。また図12では、着座部及びリンク機構を二点破線で図示し、各摺動部材及びガイドレールを実線で示してこれらの位置関係を示している。
【0014】
[車両用シート装置の概要]
車両用シート装置10は、図1に示すように車両2の車室内の右側に設置されるシート装置である。この車両用シート装置10は、図2に示すように、乗員が着座するシート本体20と、シート本体20を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構30と、その前後スライド機構30の上側でシート本体20を回転させる回転機構40とを備えている。シート本体20は、車両2右側の前部座席であり、車室内のドア開口部D側に設けられている。ここで前後スライド機構30は、車室内のフロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右一対のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている。各アッパレール33は、多段式ロック機構(図示省略)の働きにより、各ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。
【0015】
[回転機構(移動機構)]
また図2に示す回転機構40は、本発明の移動機構に相当し、シート本体20を車両前向きの第一位置と右側のドア開口部Dを向く第二位置との間で回転移動させる。この回転機構40は、後述するように、回転移動不能な基盤部35に対してシート本体20を支持する着座部45を回転移動させる四節リンク機構40rと、複数の摺動部材51~54とを備えている。なお車両用シート装置10には、回転機構40の回転移動をロックする回転ロック装置(図示省略)が設けられている。ここで基盤部35は、回転移動不能、即ち、シート本体20の回転移動に追従しない部位であり、左右の一対のアッパレール33及びそれらの間に渡された上方視で矩形の前後スライドテーブル34から構成することができる。そして着座部45は、シート本体20を支持する上方視で矩形の部材であり、四節リンク機構40r及び各摺動部材51~54に支持された状態で基盤部35の上方に配置されている。すなわち基盤部35と着座部45とは上下方向に離れて配置されており、この上下方向が基盤部35と着座部45との隙間方向D1に相当する。
【0016】
そして後述するシート本体20の位置変位の際には、図2に示す回転機構40によって基盤部35に対して着座部45を回転移動させる。このとき基盤部35と着座部45とは、これらの間に配置された各摺動部材51~54を摺動させながら相対回転していく。そして車両用シート装置10では、異音の発生を極力阻止する観点から、複数の摺動部材51~54を、基盤部35又は着座部45に精度良く配置(接地)しておくことが望ましい。そこで本実施例では、後述する構成によって、複数の摺動部材51~54を、その精度管理を容易としつつ、回転機構40を構成する基盤部35と着座部45との間に精度良く配置しておくこととした。以下、移動機構としての回転機構40の各構成を詳述する。
【0017】
[四節リンク機構(リンク機構)]
各摺動部材51~54について説明する前に、まず四節リンク機構40r及びその作用(回転機構の回転動作)の概要について説明する。図2図4に示す四節リンク機構40rは、本発明のリンク機構に相当し、基盤部35の前後スライドテーブル34上で着座部45を前傾させながら回転させられるように支持する。この四節リンク機構40rは、前部リンク41と後部リンク42とから構成されている。そして前部リンク41と後部リンク42とは、ドア開口部D側、即ち、右側が低くなるように傾斜した状態で前後スライドテーブル34と着座部45とに連結されている。そして前部リンク41と後部リンク42とは、後述する回転中心側と回動自由端側の高さ寸法差が基盤部35と着座部45間の隙間寸法(図2の符号D1で表す部分を参照)と等しい値になるように設定されている。
【0018】
前部リンク41の回動中心側は、図5に示すように、前後スライドテーブル34の前部の幅方向右側部に下部連結軸41dを介して回動可能な状態で連結されている。ここで前後スライドテーブル34は、図4に示すように、前部リンク41が連結される部分が傾斜部35kとなっており、その傾斜部35kが右側(ドア開口部D側)で低くなるように傾斜している。そして下部連結軸41dは、傾斜部35kに対して直角な状態で、前後スライドテーブル34に連結されている。即ち、下部連結軸41dは、前後スライドテーブル34上で右側に傾いた状態で立設されている。また前部リンク41の先端側、即ち、回動自由端側は、図5に示すように、着座部45の略中央部に上部連結軸41uを介して回動可能な状態で連結されている。ここで着座部45は、図4に示すように、前部リンク41が連結される部分が傾斜部45kとなっており、その傾斜部45kが前後スライドテーブル34の傾斜部35kと等しい角度で右側が低くなるように傾斜している。そして上部連結軸41uは、傾斜部45kに対して直角な状態で、着座部45に連結されている。即ち、上部連結軸41uは、下部連結軸41dと等しい傾斜角度で着座部45の下側に設けられている。
【0019】
また後部リンク42の回動中心側は、図5に示すように、前後スライドテーブル34の後部の幅方向中央部に下部連結軸42dを介して回動可能な状態で連結されている。ここで前後スライドテーブル34は、図3に示すように、後部リンク42が連結される部分が傾斜部35kとなっている。そして下部連結軸42dは、傾斜部35kに対して直角な状態で、前後スライドテーブル34に連結されている。即ち、下部連結軸42dは、前部リンク41の下部連結軸41dと等しい傾斜角度で前後スライドテーブル34上に立設されている。また後部リンク42の先端側、即ち、回動自由端側は、図5に示すように、着座部45の後右角部に上部連結軸42uを介して回動可能な状態で連結されている。ここで着座部45は、図3に示すように、後部リンク42が連結される部分が傾斜部45kとなっている。そして上部連結軸42uは、傾斜部45kに対して直角な状態で、着座部45に連結されている。即ち、上部連結軸42uは、前部リンク41の上部連結軸41uと等しい傾斜角度で着座部45の下側に設けられている。
【0020】
[回転機構の回転動作の概要]
つづいてシート本体20の位置変位の際における回転機構40の回転動作について説明する(各摺動部材の挙動については後述)。この回転機構40は、上記構成により、第一位置(図5参照)にあるシート本体20に対して右回転方向に外力が加わると、四節リンク機構40rの前部リンク41の先端側(回動自由端側)が着座部45を介して右方向に外力を受ける。これにより、前部リンク41は、下部連結軸41dを中心に図5に示す位置から左回動する。即ち、前部リンク41の先端側に連結された上部連結軸41uは、ドア開口部Dに近づくように円弧運動する。
【0021】
そして円弧運動の初期、即ち、第一位置(図5参照)から前部リンク41がθ1°左回動するまでは、図6に示すように、上部連結軸41uと、この上部連結軸41uに連結された着座部45とは、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ後退する。また、前部リンク41に連結された上部連結軸41uの後退により、後部リンク42の先端側に連結された上部連結軸42uが着座部45を介して後方向に力を受ける。これにより、後部リンク42は、下部連結軸42dを中心に若干右回動する。この結果、シート本体20及び着座部45(シート本体20等)は、図6に示すように、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ後退する(白矢印参照)。
【0022】
そして前部リンク41が第一位置からθ1°左回動した状態(図6参照)から引き続きシート本体20に対して右回転方向に外力が加えられると、図7に示すように、シート本体20等は右側に移動しつつ右方向に回転し、前部リンク41は角度θ1の位置から左回動する。そして、前部リンク41は角度θ1の位置から角度θ2だけ左回動した状態で、前部リンク41の下部連結軸41d、上部連結軸41uと、後部リンク42の上部連結軸42uとが平面視において一直線上に保持される。この状態で、着座部45は角度略θ2だけ右側を向いて、その着座部45の後右角部が前後スライドテーブル34の後端縁から後方に突出する。この位置が着座部45の後退限位置である。
【0023】
つづいて後退限位置においてシート本体20に対し、さらに右回転方向に外力が加えられると、図8に示すように、前部リンク41と後部リンク42とが共に左回動してシート本体20等は前方に移動しつつ、右回転するようになる。即ち、シート本体20等は、回転中心を前方に移動させながら右方向に回転するようになる。そして、前部リンク41が後退限位置から角度θ3だけ回動した状態で(図8参照)、シート本体20等は第二位置に到達する。
【0024】
また上記したように、四節リンク機構40rの前部リンク41と後部リンク42とが、ドア開口部D側(右側)が低くなるように傾斜した状態で前後スライドテーブル34と着座部45とに連結されている。このため、前部リンク41と後部リンク42とが後退限位置から左回動して、シート本体20等が回転中心を前方に移動させながら右方向に回転すると、シート本体20等は、図9図10に示すように、その前側が低くなるように傾斜するようになる。こうして本実施例では、ドア開口部側に設けられたシート本体20を、回転機構40によって第一位置からドア開口部Dを向く第二位置まで回転移動させることができ、優れた乗降性の確保に資する構成となる。
【0025】
[複数の摺動部材]
つぎに図2及び図11に示す複数の摺動部材51~54について説明する。車両用シート装置10では、その概ね四隅に摺動部材がそれぞれ設けられており、各摺動部材51~54は、回転機構40を構成する基盤部35と着座部45のいずれか一方に設けることができる。例えば図11を参照して、車両用シート装置10の前右側に位置する第一摺動部材51と、後右側に位置する第二摺動部材52とは基盤部35に設けられている。一方、前左側に位置する第三摺動部材53と、後左側に位置する第四摺動部材54とは着座部45に設けられている。そして各摺動部材51~54は、後述するように、シート本体の位置変位の際に、一方とは異なる基盤部35と着座部45のいずれか他方の被摺動部位(71~74)に摺動可能に構成されている。
【0026】
[摺動部材、ガイドレール]
そして前右側に位置する第一摺動部材51は、図11及び図12に示すように、着座部45に設けられた被摺動部位としての第一ガイドレール71に摺動可能な構成とされている。ここで第一ガイドレール71は、着座部45が四節リンク機構40rの働きで回転をする際の第一摺動部材51の相対移動軌跡に沿う円弧形状に形成されて、着座部45の前右角部側に位置決めされて固定されている。この第一ガイドレール71の右端は、図11に示す着座部45の前右角部から前方に張り出す支持ブラケット46に固定され、第一ガイドレール71の左端は着座部45の前縁側に固定されている。そして第一ガイドレール71は、本発明のガイドレールに相当し、図13及び図14に示すように、基盤部35側を臨む第一ガイド面711と、第一ガイド面711の内縁に沿って上方(隙間方向)に立ち上がる第二ガイド面712(内壁)とが形成されている。また第二ガイド面712の上縁には、その外方(各図の左方又は後方)に向けて概ね水平に張り出したのち下方に向けて段差状に屈曲する第三ガイド面713が形成されている。また第一ガイド面711の外縁にも上方に立ち上がる外壁714が形成され、この外壁714の上縁は、その外方(各図の右方又は前方)に向けて概ね水平に張り出すように屈曲している。
【0027】
そして図13及び図15を参照して、第一摺動部材51は、複数の摺動部61~63と、各摺動部61~63を保持する上部ブラケット64と、上下追従フレーム65と、ベースブラケット66と、複数の付勢部67,68とから構成されている。ここで図13に示すベースブラケット66は、基盤部35の前右側351(右側のアッパレール33側)に固定された固定部661と、この固定部661から第一ガイドレール71と交差するように延長する支持部662を有している。そして支持部662には一段高い段差部663が形成され、この段差部663に突設された位置決めボルトBMが、第一ガイドレール71の第一ガイド面711の下方に配置されている。
【0028】
また図13及び図15に示すベースブラケット66の上側には、上下追従フレーム65と上部ブラケット64とがこの順で配設されている。ここで上下追従フレーム65は、ベースブラケット66に対して交差するように配置されており、板状の不動フレーム651と板状の可動フレーム652とを、概ね前後方向に向けた状態で軸連結することで構成されている。不動フレーム651は、上下追従フレーム65の前部に位置しており、可動フレーム652は、上下追従フレーム65の前部に位置している。そして不動フレーム651の後端には、断面U字形の軸受653が形成され、この軸受653には、概ね水平に渡された傾動中心軸A1が固定されている。また可動フレーム652は、その断面U字形に形成された前端が、不動フレーム651の軸受653に嵌められて傾動中心軸A1に軸支されている。そして図16に示すように、不動フレーム651は、その前端が基盤部35にボルトBで固定されることで、可動フレーム652を傾動中心軸A1周りに傾動可能な状態で支持している。
【0029】
また図13及び図15に示す可動フレーム652は、その後部側がベースブラケット66の段差部663の上側に配置されている。そして可動フレーム652の後部には、段差部663の位置決めボルトBMに重なるように第一孔部H1(貫通孔)が形成されている。この第一孔部H1には、後述する上部ブラケット64を軸連結するための首振り中心軸A2が嵌められており、この首振り中心軸A2が第一孔部H1を上下に挿通している。また可動フレーム652とベースブラケット66の間には、首振り中心軸A2と位置決めボルトBMとの間に嵌装されたコイルバネ状の上方付勢部67が配設されている。そして図16を参照して、上下追従フレーム65の可動フレーム652は、上方付勢部67の付勢力によって上方に向けて付勢されているとともに、上方付勢部67の付勢力に抗して下方に移動させることも可能となっている(図16の白矢印P1を参照)。さらに可動フレーム652には、傾動中心軸A1に近い位置に第二孔部H2(貫通孔)が設けられ、第二孔部H2には、円筒状のストッパー部69が嵌められて下方に突出している。このストッパー部69は、可動フレーム652に追従して上下動可能とされて、基盤部35の前後スライドテーブル34上に位置している。そして乗員の荷重を着座部45が受けた際に、この着座部45に設けられた第一ガイドレール71が下方に移動する。このとき第一ガイドレール71に押された可動フレーム652を、ストッパー部69が基盤部35に接地して支持することができる。
【0030】
また図13及び図15に示す上部ブラケット64は、上下追従フレーム65の可動フレーム652に首振り中心軸A2及び座金Wを介して軸連結されている。この上部ブラケット64は、第一ガイドレール71を幅方向DW(外壁714から第二ガイド面712に向かう方向)に横断する板状の部材である。そして上部ブラケット64は、第一ガイドレール71の直下に配置されているとともに、後述する第一摺動部61と第二摺動部62と第三摺動部63とが回転可能に軸支されている。
【0031】
[摺動部]
ここで図13図15に示す第一摺動部61は、第一ガイドレール71の第一ガイド面711に対して摺動する縦向きローラ状の部材である。この第一摺動部61を軸支するために、上部ブラケット64右端には、図14に示すように断面U字形に構成された第一軸受部641が形成されている。そして第一摺動部61は、第一軸受部641に渡された軸A3に回転可能に軸支されて、第一ガイド面711に下側から接地可能に配置される。また第二摺動部62は、第一ガイドレール71の第二ガイド面712に対して摺動する横向きローラ状の部材である。この第二摺動部62を軸支するために、上部ブラケット64の左側には、第一軸受部641よりも一段高い位置に平板状の第二軸受部642が設けられている。そして第二摺動部62は、第二軸受部642から上方に突出する軸A4に回転可能に軸支されて、第二ガイド面712に後側から接地可能に配置される。さらに第三摺動部63は、第一ガイドレール71の第三ガイド面713の上面に対して摺動する縦向きローラ状の部材である。この第三摺動部63を軸支するために、上部ブラケット64には、上方視でL字形の縦板部643が固定されている。この縦板部643は、第二軸受部642に対して起立して左方に延びているとともに、前方に屈曲する先端部の上部には軸A5が突設されている。そして第三摺動部63は、図14に示す縦板部643の軸A5に回転可能に軸支されて、第一ガイドレール71の第三ガイド面713に上側から接地可能に配置される。
【0032】
そして図15及び図16に示す第一摺動部材51では、複数の摺動部61~63を備えた上部ブラケット64が、上下追従フレーム65の可動フレーム652上に設けられることで、上方付勢部67によって上方に付勢される(図16の白矢印P1を参照)。また上部ブラケット64は、上方付勢部67の付勢力に抗して下方に移動させることも可能となっている。さらに図15及び図17に示す上部ブラケット64は、首振り中心軸A2の軸線周りに回転可能(図17の白矢印P2を参照)とされ、さらにコイルバネ状の首振り付勢部68によって、第一ガイドレール71の幅方向DW外側(各図の右方又は前方)に付勢されている。この首振り付勢部68は、上部ブラケット64を外側に付勢するために、その上端が上部ブラケット64の第一軸受部641の左側に引っ掛けられ、その下端がベースブラケット66の固定部661の前側に引っ掛けられている。
【0033】
[その他の摺動部材]
また図11及び図12に示す第二摺動部材52と第三摺動部材53と第四摺動部材54は、配設位置が異なる以外は概ね同一の基本構成を有している。例えば第二摺動部材52は、図18に示すように縦向きのローラ状の部材であり、断面U字形のブラケットBRに回転可能に軸支されて基盤部35の前後スライドテーブル34に配設されている。そして第二摺動部材52は、四節リンク機構の後部リンク42の下方に配置されて、着座部45の下面に設けた第二ガイドレール72(被摺動部位)に摺動可能に構成されている。この第二ガイドレール72は、着座部45が回転をする際の第二摺動部材52の相対移動軌跡に沿うように円弧形状に形成されている。なお第二摺動部材52を第二ガイドレール72により確実に接地させる観点から、着座部45の後右角部側を弾性材(図示省略)にて下側に向けて押圧(付勢)しておくこともできる。
【0034】
また図11及び図12に示す前左側に位置する第三摺動部材53と後左側に位置する第四摺動部材54も、それぞれ縦向きのローラ状の部材であり、断面U字形のブラケット(図示省略)に回転可能に軸支されて着座部45の下面に配設されている。そして第三摺動部材53は、基盤部35の上面に設けた第三ガイドレール73(被摺動部位)に摺動可能に構成されている。この第三ガイドレール73は、上方視で前右側に向けて直線的に延びており、右方に向かうにつれて次第に前方に傾斜している。また第四摺動部材54は、基盤部35の上面に設けた第四ガイドレール74(被摺動部位)に摺動可能に構成されている。この第四ガイドレール74は、上方視で前右側に向けて直線的に延びており、右方に向かうにつれて次第に前方に傾斜している。なお左側の各摺動部材53,54を対応するガイドレールにより確実に接地させる観点から、着座部45の前左角部側と後左角部を弾性材(図示省略)にて下側に向けて押圧しておくこともできる。
【0035】
[摺動部材の配設]
図11及び図12に示す回転機構40では、上述したシート本体の位置変位の際に、基盤部35と着座部45とが、これらの間に配置された各摺動部材51~54を摺動させながら相対回転していく。この種の構成では、複数の摺動部材51~54を、異音の発生を極力回避する観点から、基盤部35又は着座部45に精度良く配置(接地)しておくのであるが、摺動部材が増えるほどその精度管理の負担が増していく。例えば後右側の第二摺動部材52と前左側の第三摺動部材53と後左側の第四摺動部材54を、対応するガイドレールに摺動可能に接地させた場合を想定する。この場合には、対向位置にある第二摺動部材52と第三摺動部材53とが振り子の基点のように作用し、着座部45の前右角部が浮き上がるなどして、前右側の第一摺動部材51の接地に手間取りがちである。
【0036】
そこで本実施例では、第一摺動部材51が、図15及び図16に示すように、第一ガイドレール71(被摺動部位)との接触方向及び反対方向に移動可能とされている。すなわち複数の摺動部61等を備えた第一摺動部材51の上部ブラケット64は、上述したように、上方付勢部67にて上方(第一ガイド面711との接触方向)に付勢され、上方付勢部67の付勢力に抗して下方(反対方向)に移動させることもできる。そして上部ブラケット64が上方付勢部67にて上方に付勢されることで、この上部ブラケット64に設けられた第一摺動部61が第一ガイド面711との接触方向(上方)に移動して接地される。このため着座部45の前右角部が浮き上がっても、その浮き上がり分を第一摺動部61の上方移動で吸収できる。こうして本実施例では、第一摺動部材51を第一ガイドレール71との接触方向に移動させて接地できるため、この移動可能な摺動部材の分だけ精度管理が容易となる。特に本実施例では、第一摺動部材51と第一ガイドレール71との接触方向及び逆方向が、基盤部35と着座部45との隙間方向D1と一致している。このため第一摺動部材51を、当該隙間方向D1を詰めるように移動させることができ、精度管理をより容易にすることが可能となる。
【0037】
ところで第一摺動部材51では、図12及び図19に示す上面視において、縦向きローラ状の第一摺動部61の向きを、第一ガイドレール71の第一ガイド面711に沿うように合わせておくことが望ましい(図19の実線状態を参照)。すなわち第一摺動部61と第一ガイド面711の向きを合わせることで、摺動の際の摩擦が小さくなり、シート本体を回転移動させる際の優れた操作性を確保できる。ここで図15及び図17を参照して、第一摺動部材51の上部ブラケット64は、首振り中心軸A2の軸線周りに回転可能とされている。このため上部ブラケット64に設けられた第二摺動部62が、第一ガイドレール71の幅方向DW外側及び内側(第二ガイド面712との接触方向及び反対方向)に移動可能となっている。さらに上部ブラケット64は、首振り付勢部68にて第一ガイドレール71の幅方向DW外側(各図の右方又は前方)に付勢されることで、第二摺動部62が、第二ガイド面712との接触方向に付勢される。そこで上部ブラケット64を首振り中心軸A2の軸線周りに回転させて、上部ブラケット64に設けられた第一摺動部61の向きを第一ガイド面711の向きに合わせておく。そして首振り付勢部68の付勢力にて、第二摺動部62が第二ガイド面712に接触することにより、第一摺動部61が第一ガイドレール71の幅方向DWにズレないように位置決めしておくことができる。こうして本実施例では、図19に示す上面視において、シート本体の位置変位の際に第一摺動部61の向きが第一ガイド面711からズレて横滑り(ドリフト)するといった事態を極力回避できる(図19の二点破線状態を参照)。
【0038】
[回転機構の回転移動に伴う各摺動部材の挙動]
つづいてシート本体の位置変位の際における各摺動部材51~54の挙動を説明する。例えば第一摺動部材51の第一摺動部61は、図12図20及び図21に示すように、第一位置における第一ガイドレール71の右端から、次第に第一ガイドレール71に沿って相対移動(滑走)し、第二位置において第一ガイドレール71の左端に至る。このとき第一摺動部材51の第一摺動部61は、図15及び図16に示すように、上方付勢部67の付勢力によって第一ガイドレール71の第一ガイド面711との接地状態を極力維持できるため、意図しない異音の発生を極力阻止することができる。さらに図19に示すようにシート本体の位置変位の間、第二ガイド面712に対して第二摺動部62が摺動(接触)して、第一摺動部61が第一ガイド面711の向きに合わせられてこれらの間の摩擦が小さくなっている。このため図2に示すシート本体20をスムーズに回転移動させることができ、その位置変位の際の優れた操作性の確保や優れた操作フィーリングの確保に資する構成となる。
【0039】
またシート本体の位置変位の際には、図12図20及び図21に示す基盤部35と着座部45が、その他の摺動部材(第二摺動部材52~第四摺動部材54)を、対応するガイドレールに摺動させながら相対回転する。このとき着座部45に固定された前左側の第三摺動部材53は、図20及び図21に示すように次第に第三ガイドレール73から外れていく。そして第三摺動部材53がフリーになると、着座部45の前右角部が上下に揺動しやすくなり、とりわけ着座部45の後部側が図示しない弾性材で下方に押圧されている場合には上下動が大きくなりやすい。そこで本実施例では、着座部45の前右角部が過度に上方に揺れようとした際に、図14に示す第一摺動部材51の第三摺動部63が、第一ガイドレール71の第三ガイド面713に上側から接触する。こうして第三摺動部63と第三ガイド面713の接触によって、着座部45の過度の揺れを極力阻止することにより、優れた操作性の確保に資する構成となる。また反対に着座部45の前右角部の下方への揺れは、それを支持する第一摺動部61が、上方付勢部67を縮めながら下方(接触方向と反対方向)に移動することで吸収する。
【0040】
以上説明した通り本実施例では、第一摺動部材51(複数の摺動部材の少なくとも一つ)を第一ガイドレール71(被摺動部位)との接触方向に移動させることができるため、この移動可能な摺動部材の分だけ精度管理を容易にすることができる。このとき第一摺動部材51を、基盤部35と着座部45との隙間方向D1に移動させて被摺動部位に接触させるようにしたことで、この移動可能な摺動部材の分だけ精度管理をより容易にすることができる。このため本実施例によれば、複数の摺動部材51~54を、その精度管理を容易としつつ、回転機構40を構成する基盤部35と着座部45との間に精度良く配置しておくことができる。こうして本実施例の車両用シート装置10は、各摺動部材51~54のシビアな精度管理や組付け作業を極力要さないことから、組付け工数を低減でき、優れた生産性の確保やコスト低減に資する構成となっている。
【0041】
さらに本実施例では、第一摺動部材51(第一摺動部61,第二摺動部62)を被摺動部位との接触方向に付勢することで、この付勢された摺動部材の分だけ精度管理を更に容易にすることができる。また本実施例では、使用される第一ガイドレール71の構造に応じて、第一摺動部61と第二摺動部62の両方を、対応するガイド面711,712との接触方向及び逆方向に移動可能にでき、精度管理を一層容易にすることができる。そして本実施例では、ドア開口部側に設けられたシート本体20を、移動機構によって第一位置からドア開口部Dを向く第二位置に回転移動させることができ、優れた乗降性の確保に資する構成となる。
【0042】
[変形例]
ここで移動機構(摺動部材,被摺動部位)の構成は、上記構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば第一ガイドレール(被摺動部位)の構成に応じて、第一摺動部材の第一摺動部と第二摺動部のいずれか一方を、対応するガイド面との接触方向及び逆方向に移動可能とすることも可能である。そして第一摺動部を、隙間方向に移動させることができ、第二摺動部を、隙間方向と直交する方向に移動させることができる。また他の具体例として、移動機構によって、シート本体を車両のフロア上で直線的に移動させる場合を想定すると、この場合には直線的な第一ガイドレール(被摺動部位)が車両前後方向や車幅方向等に向けられる。そしてこの場合にも、第一摺動部と第二摺動部の片方又は両方を、第一ガイドレールの対応するガイド面(第一ガイド面としての下面、第二ガイド面としての内壁や外壁)との接触方向及び逆方向に移動可能とすることができる。こうして本変形例では、使用されるガイドレールの構造に応じて、第一摺動部と第二摺動部の片方又は両方を対応するガイド面との接触方向及び逆方向に移動可能にでき、精度管理を一層容易にすることができる。なお第一摺動部と第二摺動部の片方だけを使用する場合には、使用されない摺動部(及びその関連構成)を省略することもできる。
【0043】
本実施形態の車両用シート装置10は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、各摺動部材51~54の構成を例示したが、各摺動部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば複数の摺動部材は、その中の一部(一つあるいは二つ以上)又は全部を、対応する被摺動部位との移動方向及び反対方向に移動可能に構成することができる。また複数の摺動部材は、それぞれ独立に、基盤部と着座部のいずれかに設けることができ、例えば第一摺動部材を着座部に設け且つ第一ガイドレールを基盤部に設けることもできる。また摺動部材の数も4つに限られず、2、3又は5以上に設定することができ、各摺動部材(及び被摺動部位)の配置位置も、車両用シート装置の四隅に限る必要はない。
【0044】
また摺動部材(各摺動部)と被摺動部位として、互いに相対移動(摺動)可能な各種の構成を採用でき、可能ならば摺動部材としてスライドレールを使用し且つ被摺動部材としてローラ状や車輪状や球状の部材を使用してもよい。また各付勢部は、バネやゴムやエラストマなどの素材で形成でき、アクチュエータなどの構造で構成することもできる。また摺動部材に、各付勢部の代替えとして多段式ロック機構を設け、対応する摺動部の接触方向及び反対方向における位置を保持できるようにロックすることもできる。なお本実施形態の第二ガイド面は、第一ガイドレールの内壁と外壁のいずれか又は双方で構成することができる。
【0045】
また本実施形態では、移動機構として回転機構40等(着座部,基盤部,リンク機構)を例示したが、移動機構の構成を限定する趣旨ではない。例えば車両用シート装置は、前後スライド機構を省略することができ、この場合には基盤部が車両のフロア側に設けられる。また被摺動部位は、必ずしもガイドレールにて構成する必要はなく、またリンク機構も、四節リンク機構に限られず、着座部の移動方向に応じて構成される。なお車両用シート装置の配置位置は、移動機構の構成に応じて設定でき、必ずしもドア開口部側に設ける必要はなく、他の車両用シート間に位置するセンターシートでもよい。そして車両用シート装置の第一位置と第二位置は、車両用シート装置の構成に応じて設定可能であり、第一位置の車両用シート装置は、必ずしも車両前向きである必要はなく、車両の前後左右の適宜の向きに向けておくことができる。また第二位置の車両用シート装置は、その位置(向き)が第一位置と異なっていればよい。また車両用シート装置は、一人用や複数人用のシート本体を有していてもよい。
【符号の説明】
【0046】
車両 2
車室内のフロア F
D ドア開口部
10 車両用シート装置
20 シート本体
30 前後スライド機構
32 ロアレール
33 アッパレール
34 前後スライドテーブル
35 基盤部
35k 傾斜部
40 回転機構(本発明の移動機構)
40r 四節リンク機構(本発明のリンク機構)
41d 下部連結軸
41u 上部連結軸
41 前部リンク
42d 下部連結軸
42 後部リンク
42u 上部連結軸
45 着座部
45k 傾斜部
46 支持ブラケット
51 第一摺動部材(本発明の複数の摺動部材の少なくとも一つ)
52 第二摺動部材
53 第三摺動部材
54 第四摺動部材
61 第一摺動部
62 第二摺動部
63 第三摺動部
64 上部ブラケット
641 第一軸受部
642 第二軸受部
643 縦板部
H1 第一孔部
H2 第二孔部
65 上下追従フレーム
651 不動フレーム
652 可動フレーム
653 軸受
66 ベースブラケット
661 固定部
662 支持部
663 段差部
67 上方付勢部
68 首振り付勢部
69 ストッパー部
71 第一ガイドレール(本発明の被摺動部位及びガイドレール)
711 第一ガイド面
712 第二ガイド面
713 第三ガイド面
714 外壁
72 第二ガイドレール(本発明の被摺動部位)
73 第三ガイドレール(本発明の被摺動部位)
74 第四ガイドレール(本発明の被摺動部位)
A1 傾動中心軸
A2 首振り中心軸
A3~A5 (上部ブラケットの)軸
BM 位置決めボルト
BR ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21