(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】温度センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/22 20060101AFI20240409BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240409BHJP
G01K 1/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01K7/22 J
G01K1/14 E
G01K1/18
(21)【出願番号】P 2020200297
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今野 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】堀口 拓
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184287(JP,A)
【文献】特開2020-041921(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026394(WO,A1)
【文献】特開2012-141164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01C 7/04
H01C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状であって、感熱素子を内部に収容しており、一方の端面に配線が接続するセンサーケースと、
前記センサーケースの底面に対向する底部と、前記底部から略垂直に延びて前記センサーケースにおける前記底面および前記一方の端面に接続する側面に対向する側部と、前記側部から略垂直に延びて前記センサーケースにおける前記一方の端面とは反対方向を向く他方の端面に対向する端部と、を有する取付部材と、
前記端部と前記底部との間に形成される第1の隙間に配置され前記センサーケースの前記他方の端面に接触する第1樹脂部と、前記側面と前記側部の間に形成される第2の隙間に配置される第2樹脂部と、を有し、
前記端部と前記底部との間に形成される前記第1の隙間の幅は、前記側面と前記側部の間に形成される前記第2の隙間の幅より大きい温度センサ装置。
【請求項2】
基端が前記取付部材の前記底部に接続しており、先端が前記底部に対して前記センサーケースとは逆方向である下方に離間しており、前記底部と前記先端との間に測定対象物を配置する支持部材を有する請求項1に記載の温度センサ装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記先端から前記基端までを接続する略U字状をなし、前記支持部材の屈曲部における内側部分は、前記内側部分に隣接する前記測定対象物の角部の曲率より小さい曲率を有する請求項2に記載の温度センサ装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記他方の端面より前記一方の端面の近くで前記底部に接続している請求項2または請求項3に記載の温度センサ装置。
【請求項5】
前記取付部材は、前記底部に沿って延びており前記測定対象物に固定される固定構造を有し、
前記固定構造は、前記一方の端面より前記他方の端面の近くで前記底部に接続する請求項4に記載の温度センサ装置。
【請求項6】
前記取付部材は、前記底部に沿って延びており前記測定対象物に固定される固定構造を有し、
前記固定構造はネジを挿通させるネジ穴であり、
前記支持部材の前記基端は、前記底部が前記センサーケースの下方に位置する姿勢で前記一方の端面側から見て、前記底部の右側に接続することを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかに記載の温度センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の温度を検出する温度センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度を検出したい物体に対して取り付け可能な温度センサ装置として、たとえば下記の特許文献1に示す温度センサ装置が知られている。この温度センサ装置は、取付金具の中に、接着剤や樹脂を介してセンサ保護体を収容するものであり、金具のスプリング力で測定対象物に取り付けられるタイプに比べて、測定対象物の熱がセンサ保護体内部の感熱素子に伝わり易く、測定対象物の温度を精度良く検出する。また、従来の温度センサ装置では、センサ保護体が取付金具から離脱しにくくなるメリットがある。
【0003】
しかしながら、従来の温度センサ装置では、測定対象物からセンサ保護体への熱伝導経路に、空気層のような断熱層が偶発的に介在する場合があり、熱応答性の観点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、良好な熱応答性を有する温度検出センサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る温度センサ装置は、略直方体形状であって、感熱素子を内部に収容しており、一方の端面に配線が接続するセンサーケースと、
前記センサーケースの底面に対向する底部と、前記底部から略垂直に延びて前記センサーケースにおける前記底面および前記一方の端面に接続する側面に対向する側部と、前記側部から略垂直に延びて前記センサーケースにおける前記一方の端面とは反対方向を向く他方の端面に対向する端部と、を有する取付部材と、
前記端部と前記底部との間に形成される第1の隙間に配置され前記センサーケースの前記他方の端面に接触する第1樹脂部と、前記側面と前記側部の間に形成される第2の隙間に配置される第2樹脂部と、を有し、
前記端部と前記底部との間に形成される前記第1の隙間の幅は、前記側面と前記側部の間に形成される前記第2の隙間の幅より大きい。
【0007】
取付部材の側面が、底面から略垂直に延びることにより、側部と側面とが略平行に配置される。このため、仮に第2樹脂部の形成過程において、一時的に樹脂内部に気泡が巻き込まれた場合にも、第2樹脂部が硬化・形成されるまでに、樹脂内部の気泡が上方へ抜け易く、第2樹脂部が内部に気泡を巻き込む問題を防止できる。また、側部と側面とが略平行に配置され、かつ、その間に形成される第2の隙間が小さいため、取付部材とセンサーケースとの間の熱伝導性も良好である。したがって、このような温度センサ装置は、測定対象物からセンサーケースへの熱伝導経路に空気層のような断熱層が偶発的に介在することを防止し、良好な熱応答性を有する。また、第1樹脂部が配置される第1の隙間の幅が大きいため、アンカーとなる第1樹脂部を大きく形成し、かつ、第1樹脂部と保持部材とのひっかかり部分を多く形成することができ、外力によりセンサーケースが取付部材から剥離する問題を、効果的に防止できる。
【0008】
また、たとえば、本発明に係る温度センサ装置は、基端が前記取付部材の前記底部に接続しており、先端が前記底部に対して前記センサーケースとは逆方向である下方に離間しており、前記底部と前記先端との間に測定対象物を配置する支持部材を有してもよい。
【0009】
支持部材が、測定対象物を上下に挟むことにより、このような温度センサ装置は、外力により取付部材が測定対象物から離れるのを防止し、良好な熱応答性を有する。
【0010】
また、たとえば、前記支持部材は、前記先端から前記基端までを接続する略U字状をなし、前記支持部材の屈曲部における内側部分は、前記内側部分に隣接する前記測定対象物の角部の曲率より小さい曲率を有してもよい。
【0011】
このような支持部材は、測定対象物との間に適切な隙間を形成するため、温度センサ装置を測定対象物に固定する際に、支持部材と測定対象物とが広い範囲で接触することを防止し、測定対象物の表面に傷が生じる問題を防止できる。また、測定対象物との間に適切な隙間を形成することにより、測定対象物から感熱素子への熱伝導経路に、支持部材と測定対象物との接触状態が影響を与える問題を防止し、温度センサ装置の熱応答性の個体ばらつきを抑制できる。
【0012】
また、たとえば、前記支持部材は、前記他方の端面より前記一方の端面の近くで前記底部に接続していてもよい。
【0013】
支持部材には、配線を介して外力が加えられることが多いため、支持部材が一方の端面の近くに接続していることにより、このような温度センサ装置では、外力により取付部材が塑性変形することを効果的に防止し、良好な熱応答性を安定して奏することができる。
【0014】
また、たとえば、前記取付部材は、前記底部に沿って延びており前記測定対象物に固定される固定構造を有してもよく、
前記固定構造は、前記一方の端面より前記他方の端面の近くで前記底部に接続してもよい。
【0015】
固定構造が他方の端面の近くで底部に接続していることにより、固定作業時に配線が邪魔にならないため、このような温度センサ装置は、測定対象物への固定が容易である。また、固定構造が他方の端部の近くで底部に接続すると、配線を介して伝わる外力により取付部材が目的対象物から離間するように、固定構造または取付部材の底部が塑性変形する懸念がある。しかしながら、一方の端面の近くで底部に接続する支持部材が、配線を介して伝わる外力により取付部材が目的対象物から離間することを防止するため、このような温度センサ装置は、取付が容易で良好な熱応答性を奏し、かつ、温度センサ装置の熱応答性の個体ばらつきを抑制できる。
【0016】
また、たとえば、前記取付部材は、前記底部に沿って延びており前記測定対象物に固定される固定構造を有してもよく、
前記固定構造はネジを挿通させるネジ穴であってもよく、
前記支持部材の前記基端は、前記底部が前記センサーケースの下方に位置する姿勢で前記一方の端面側から見て、前記底部の右側に接続してもよい。
【0017】
このような支持部材は、右ネジで取付部材を測定対象物へ固定する際に、ネジの回転とともに取付部材が回転して底部と測定対象物との接触が解除されてしまう問題を、支持部材が測定対象物に係合して取付部材の回転を阻止することにより防止することができる。したがって、このような温度センサ装置は、容易に精度良く測定対象物へ固定することができ、精度の高い温度測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る温度センサ装置を測定対象に固定した状態を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す温度センサ装置および測定対象物を一方の端面側からみた背面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す温度センサ装置の取付部材、固定構造および支持部材を示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す温度センサ装置の第2樹脂部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る温度センサ装置10を測定対象物90に固定した状態を示す概略斜視図である。
図1に示すように、温度センサ装置10は、センサーケース20、取付部材40、支持部材50、配線80等を有しており、測定対象物90に固定して使用される。温度センサ装置10は、センサーケース20が内部に収容する感熱素子27(
図10参照)に、測定対象物90からの熱が伝わることにより、測定対象物90の温度を検出する。
【0021】
温度センサ装置10の測定対象物90としては、たとえば電流が流れる配線やコイルなどが挙げられるが、特に限定されない。
図1に示す例では、温度センサ装置10が、固定用ネジ98により測定対象物90に固定されているが、温度センサ装置10の測定対象物90への固定方法としては、固定用ネジ98による固定のみには限定されない。
【0022】
図1に示すように、センサーケース20は、略直方体形状であって、一方の端面21に配線80が接続する。温度センサ装置10の説明では、一方の端面21から他方の端面22に向かうセンサーケース20の長手方向をX軸方向、X軸方向に垂直であってX軸方向と同様に温度センサ装置10の測定対象物90に対する取付面に平行な方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向に垂直な方向をZ軸方向として説明を行う。
【0023】
図10は、
図1に示す温度センサ装置10のXZ平面による概略断面図であり、センサーケース20の内部構造を示している。
図10に示すように、センサーケース20は、感熱素子27を内部に収容している。感熱素子27としては、特に限定されないが、たとえばNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ素子、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ素子などが挙げられる。感熱素子27の周りは、ガラスなどによる被覆層が形成されている。
【0024】
センサーケース20の内部には、感熱素子27の他に、感熱素子27から配線80までを接続するリード線28や、リード線28を保持するリード保持部材29などが収容される。リード線28は、カシメ等により配線80に接続されている。感熱素子27やリード線28等は、ケース樹脂26等によって被覆および保護されている。
図10に示すように、センサーケース20のケース樹脂26は、リード線28などと直接接する内側樹脂部と、内側樹脂部を外側から被覆する外側樹脂部を含む2つ以上の樹脂部を有する。
【0025】
ケース樹脂26としては、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ABS樹脂、PPS樹脂、PBT樹脂などが挙げられるが、特に限定されない。配線80は、センサーケース20におけるX軸負方向側の端面である一方の端面21に接続しており、配線80の一部は、ケース樹脂26の内部に埋め込まれている。配線80の他の一部は、一方の端面21からセンサーケース20の外部に露出している。
【0026】
配線80としては、特に限定されず、たとえば塩ビ電線、ポリエチレン電線、シリコン電線、フッ素電線などが用いられる。配線80の芯線は、たとえば銅、鉄、アルミニウムなどの導電材料により構成してある。また、リード線28は、たとえば銅、鉄、ニッケル、ジュメット線などの導電材料で構成される。
【0027】
図1に示すように、取付部材40は、センサーケース20を測定対象物90に対して取り付けるために、センサーケース20を保持する。
図8に示す固定構造60を有する取付部材40および支持部材50は、たとえば銅、黄銅などの銅合金、鉄、アルミニウム、SUSなどのステンレスなどの金属、あるいはその他の導電性材で構成される板材をプレス加工および折り曲げ加工して形成することができる。すなわち、取付部材40および支持部材50は、一枚の金属板から成形することができる。ただし、取付部材40としてはこれに限定されず、支持部材50や固定構造60と別体になっていてもよい。取付部材40等を金属などの導電性材で構成することにより、センサーケース20内の感熱素子27に測定対象物90の熱が素早く伝わるため、温度センサ装置10は、良好な熱応答性を有する。
【0028】
図8に示すように、取付部材40は、底部43と、底部43から略垂直に延びる一対の側部である第1側部44aおよび第2側部44bと、一対の側部の少なくとも一方から略垂直に延びる端部としての第1端部42aおよび第2端部42bとを有する。取付部材40の底部43は、
図1に示すように温度センサ装置10を測定対象物90に固定した状態において、測定対象物90の上面に接触する。すなわち、底部43の下面43aは、温度センサ装置10の測定対象物90に対する取付面を構成する。
【0029】
図2は、
図1に示す温度センサ装置10および取付部材40を、センサーケース20の一方の端面21側(X軸負方向側)からみた背面図である。
図2に示すように、取付部材40の底部43は、センサーケース20の底面23に対向する。
図2および
図10に示すように、取付部材40の底部43は、測定対象物90からセンサーケース20内の感熱素子27に対して、最短距離で熱を伝える経路の一部である。
【0030】
図8に示すように、取付部材40の一対の側部である第1側部44aと第2側部44bは、底部43のY軸方向の両端に配置される。
図2および
図8に示すように、第1側部44aは、底部43のY軸正方向側の端部に接続し、底部43から上方(Z軸正方向)へ、底部43に対して略垂直に延びている。第2側部44bは、底部43のY軸負方向側の端部に接続し、第1側部44aと同様に、底部43から上方(Z軸正方向)へ、底部43に対して略垂直に延びている。
図2および
図5から理解できるように、第1側部44aと第2側部44bは、互いに略平行である。
【0031】
図2に示すように、取付部材40の第1側部44aおよび第2側部44bは、センサーケース20における底面23および一方の端面21に接続する一対の側面である第1側面24aおよび第2側面24bに対向する。具体的には、センサーケース20に対してY軸正方向側に位置する第1側部44aは、センサーケース20のY軸正方向側の側面である第1側面24aに対向している。また、センサーケース20に対してY軸負方向側に位置する第2側部44bは、センサーケース20のY軸負方向側の側面である第2側面24bに対向している。
【0032】
図3は、
図1に示す温度センサ装置10のY軸負方向側からの側面図である。
図3に示すように、センサーケース20のX軸方向の長さは、第2側部44bのX軸方向の長さより長く、第2側面24bのうち一方の端面21に近い部分は、第2側部44bに対向せず第2側部44bから露出している。また、第1側部44aとセンサーケース20の第1側面24aとの関係も、第2側部44bと第2側面24bとの関係と同様である。なお、底部43のX軸方向の長さは、第1側部44aおよび第2側部44bのX軸方向の長さより長く、センサーケース20のX軸方向の長さと略同じである。
【0033】
図4は、
図1に示す温度センサ装置10を、センサーケース20の他方の端面22側(X軸正方向側)からみた正面図である。また、
図6は、
図1に示す温度センサ装置10を、上方(Z軸正方向側)から見た平面図である。
図4および
図6に示すように、取付部材40の端部を構成する第1端部42aと第2端部42bとは、センサーケース20のX軸正方向側に配置される。
【0034】
図6に示すように、取付部材40の第1端部42aは、第1側部44aのX軸正方向側の端部に接続し、第1側部44aからY軸負方向側に、第1側部44aおよび底部43に対して略垂直に延びている。第2端部42bは、第2側部44bのX軸正方向側の端部に接続し、第2側部44bからY軸正方向側に、第2側部44bおよび底部43に対して略垂直に延びている。
図6に示すように、第1端部42aと第2端部42bとは、X軸方向の位置が略同じであり、第1端部42aの先端と、第2端部42bの先端とは、微小な第3の隙間78を挟んで対向している。
【0035】
図4および
図6に示すように、第1端部42aおよび第2端部42bは、センサーケース20における一方の端面21とは反対方向(X軸正方向)を向く他方の端面22に対向している。
【0036】
図4に示すように、第1端部42aおよび第2端部42bと底部43との間には第1の隙間71が形成されている。すなわち、第1端部42aおよび第2端部42bは、第1側部44aおよび第2側部44bにおける底部43に近い部分に接続しておらず、センサーケース20の他方の端面22の下方部分を覆っていない。したがって、第1端部42aおよび第2端部42bの上下方向の幅(Z軸方向の幅)は、第1側部44aおよび第2側部44bの上下方向の幅より小さい。
【0037】
図1および
図6に示すように、センサーケース20の上面25は、取付部材40に覆われている部分を有さず、上面25の全体が取付部材40から露出している。
図3に示すように、センサーケース20の上面25の底部43からの高さは、第1側部44aおよび第2側部44bの上端の底部43からの高さより高く、センサーケース20の一部は、取付部材40から上側(Z軸方向)にはみ出している。ただし、センサーケース20の上面25の位置は、第1側部44aおよび第2側部44bの上端の位置と同じであってもよく、第1側部44aおよび第2側部44bの上端の位置より低い位置であってもよい。
【0038】
図3に示すように、第1端部42aおよび第2端部42bと底部43との間に形成される第1の隙間71には、第1樹脂部74が配置される。
図1に示すように、第1樹脂部74は、センサーケース20の他方の端面22に接触する。また、第1樹脂部74は、
図4に示すように第1の隙間71を介してX軸負方向側から見える第1側部44aおよび第2側部44bのX軸正方向側端部にも、接触していてもよい。
【0039】
第1樹脂部74は、第1の隙間71に配置され、センサーケース20の他方の端面22に接触することにより、外力によりセンサーケース20が取付部材40から剥離したり、外れてしまったりすることを防止できる。特に、センサーケース20は、
図1に示す配線80などを介して、X軸負方向側に引っ張れる外力を受け易いが、このような場合でも、第1樹脂部74が取付部材40にひっかかり、センサーケース20と取付部材40との接合を、強く維持できる。なぜなら、第1樹脂部74は、取付部材40の第1および第2端部42a、42b、第1および第2側部44a、44b、並びに底部43などに接触して、好適なアンカー効果を奏するためである。
【0040】
さらに、第1樹脂部74は、第1の隙間71だけでなく、第1の隙間71の周辺に広がっていてもよく、たとえば、第1端部42aと第2端部42bとの間の第3の隙間78にも、第1樹脂部74が配置されていてもよい。第3の隙間78に第1樹脂部74の一部が配置されていることにより、外力によりセンサーケース20が取付部材40から外れる問題を、より確実に防止できる。なお、
図4に示すように、第1端部42aと第2端部42bとの間に形成される第3の隙間78は、上方に向かって幅が広がっていてもよい。第3の隙間78が上方に向けて広がっていることにより、後述する温度センサ装置10の組み立て時において、この部分に硬化前の樹脂の樹脂溜まりを形成することができ、硬化前の樹脂が、取付部材40の外側へ過剰に流出する問題を防止できる。
【0041】
図5に示すように、センサーケース20の一対の側面のうち第1側面24aと、取付部材40の一対の側部のうち第1側部44aとの間には、第2の隙間72aが形成されている。また、センサーケース20の一対の側面のうち第2側面24bと、取付部材40の一対の側部のうち第2側部44bとの間には、第2の隙間72bが形成されている。第2の隙間72aには第2樹脂部76aが配置されており、第2の隙間72bには第2樹脂部76bが配置されている。
【0042】
図5に示すように、センサーケース20の第1および第2側面24a、24bと、取付部材40の第1および第2側部44a、44bとは、いずれも互いに略平行な面であり、第2の隙間72a、72bは、互いに対向する2つの略平行な面の間に形成されている。
【0043】
図9は、
図6における断面線IX-IXに沿う温度センサ装置10の断面図であり、取付部材40内部におけるセンサーケース20の収容状態を示している。
図9に示すように、第2の隙間72a、72bに配置される第2樹脂部76a、76bは、センサーケース20の他方の端面22の周りにも形成されており、第2樹脂部76a、76bは、
図4に示す第1樹脂部74に繋がっている。
【0044】
図9に示すように、第1および第2端部42a、42bと底部43との間に形成される第1の隙間71の幅W1は、第1および第2側面24a、24bと第1および第2側部44a、44bとの間に形成される第2の隙間72a、72bの幅W2a、W2bより大きい。第2の隙間72a、72bを小さくすることにより、取付部材40の側部42a、42bとセンサーケース20の側面24a、24bとの距離が近くなるため、取付部材40は、測定対象物90の熱を効率的にセンサーケース20に伝えることができる。また、センサーケース20の側面24a、24bは、センサーケース20の他方の端面22より面積が広く、感熱素子27にも近いため、このような構造は、測定対象物90からの効率的な熱伝導に資する。
【0045】
また、第1および第2側部44a、44bが底部43から略垂直に延びることで、第2の隙間72a、72bの幅W2a、W2bの平均値を小さくすることができるため、取付部材40は、測定対象物90の熱を効率的にセンサーケース20に伝えることができる。さらに、第1および第2側部44a、44bが底部43から略垂直に延びていることにより、仮に硬化前の第2樹脂部76a、76bが気泡を巻き込んだ場合であっても、完全に硬化する前に、巻き込んだ気泡が第2の隙間72a、72bを上方に移動して樹脂から抜けやすく、硬化後の第2樹脂部76a、76bに気泡が残る問題を防止できる。したがって、このような温度センサ装置10は、測定対象物90からセンサーケース20への熱伝導経路に空気層のような断熱層が偶発的に介在することを防止し、良好な熱応答性を有する。
【0046】
また、温度センサ装置10は、第1樹脂部74が配置される第1の隙間71の幅W1が大きいため、アンカーとなる第1樹脂部74を大きく形成し、かつ、第1樹脂部74と取付部材40とのひっかかり部分を多く形成することができる。したがって、このような温度センサ装置10は、第1樹脂部74が取付部材40に対して強固に接合されることにより、外力によりセンサーケース20が取付部材40から剥離する問題を、効果的に防止できる。
【0047】
なお、温度センサ装置10は、第1樹脂部74と第2樹脂部76a、76bとが繋がっていることにより、外力によりセンサーケース20が取付部材40から剥離する問題を、より効果的に防止できる。また、温度センサ装置10は、第1樹脂部74と第2樹脂部76a、76bとがセンサーケース20と取付部材40との隙間を埋めることにより、特に感熱素子27に近い位置において取付部材40とセンサーケース20との間に空隙が形成される問題を防止する。
【0048】
図8に示すように、支持部材50は、基端51が取付部材40の底部43に接続しており、先端52が底部43に対してセンサーケース20とは逆方向である下方(Z軸負方向)に離間している。
図2に示すように、温度センサ装置10では、底部43と支持部材50の先端52との間に、測定対象物90を配置する。
【0049】
図2および
図8に示すように、支持部材50は、先端52から基端51までを接続する略U字形状をなす。
図2に示すように、支持部材50は、基端51から先端52までの間に、略90度に屈曲する2つの屈曲部53a、54aを有する。屈曲部53a、54aの内側部分53aa、54aaは、内側部分53aa、54aaに隣接する測定対象物90の角部93a、94aの曲率より小さい曲率を有する。
【0050】
これにより、支持部材50において取付部材40の底部43より下方に位置する部分と、測定対象物90との間に、適切な隙間が形成される。このような温度センサ装置10は、温度センサ装置10を測定対象物90に固定する際に、支持部材50と測定対象物90とが広い範囲で接触することを防止し、測定対象物90の表面に傷が生じる問題を防止できる。
【0051】
このような温度センサ装置10は、測定対象物90から感熱素子27への熱伝導経路に、支持部材50と測定対象物90との接触状態が影響を与える問題を防止し、温度センサ装置10の熱応答性の個体ばらつきを抑制できる。言い換えると、支持部材50において底部43より下方に位置する部分は、測定対象物90に対して、所定の間隔を空けて配置されることが好ましい。この際、支持部材50の先端52と測定対象物90との隙間は、取付部材40の底部43の測定対象物90からの浮き上がりを防止する観点から、内側部分53aa、54aaとこれに隣接する角部93a、94aとの間隔より小さいことが好ましい。
【0052】
図6に示すように、支持部材50は、センサーケース20の他方の端面22より一方の端面21の近くで、取付部材40の底部43に接続している。センサーケース20およびセンサーケース20が固定されている取付部材40には、配線80から外力が作用する場合が多いため、配線80が接続される一方の端面21の近くに支持部材50が配置されていることにより、取付部材40の底部43の測定対象物90からの浮き上がりを、効果的に防止できる。
【0053】
図1に示すように、取付部材40は、底部43に沿って延びており測定対象物90に固定される固定構造60を有する。本発明における固定構造60は、ネジを挿通するネジ穴としての貫通孔62であるが、固定構造60としてはこれに限定されず、接着や溶接などの接合しろなどであってもかまわない。
【0054】
固定構造60は、センサーケース20の一方の端面21より他方の端面22の近くで、取付部材40の底部43に接続している。固定構造60が、配線80が接続する一方の端面21とは反対側に配置されることにより、温度センサ装置10の固定時に、配線80が邪魔にならず、円滑な固定作業が可能である。
【0055】
また、固定構造60を他方の端面22側に配置すると、配線80から加えられる外力により、固定構造60と底部43との接続部分が塑性変形し、取付部材の底部43が測定対象物90から浮き上がる問題が生じ得る。しかしながら、
図1に示す温度センサ装置10は、配線80が接続する一方の端面21の近くに支持部材50が配置されているため、固定構造60および底部43が塑性変形して曲がる問題を防止できる。
【0056】
なお、
図2に示すように、支持部材50の先端52は、取付部材40に対して僅かに離間していてもよい。外力による取付部材40の変形が、一時的な弾性変形の範囲内であれば、配線80への外力が取り除かれることにより取付部材40の変形が解除され、取付部材40の底部43と測定対象物90の適切な接触が確保されるからである。
【0057】
図2に示すように、支持部材50の基端51は、底部43がセンサーケース20の下方に位置する姿勢で一方の端面21側(X軸負方向側)から見て、底部43の右側に接続することが好ましい。
図1から理解できるように、固定用ネジ98を右回りに回転させて温度センサ装置10を測定対象物90に固定する際、温度センサ装置10が固定構造60を中心として右回転して位置ずれする問題を、支持部材50が測定対象物90に係合することにより防止できる。
【0058】
図1~
図7に示す温度センサ装置10を製造するには、
図8に示す取付部材40および支持部材50を準備する。次に、取付部材40における底部43、第1および第2側部44a、44b並びに第1および第2端部42a、42bで囲まれる内部空間に、予め硬化前の樹脂(接着剤など)を充填する。さらに、接着剤を充填した取付部材40の内部空間に、センサーケース20を挿入する。
【0059】
図6に示すように、センサーケース20を取付部材40の内部空間に挿入すると、予め内部に充填してある硬化前の樹脂が、センサーケース20における他方の端面22の周辺や、第1および第2側面24a、24bの周辺など、第1の隙間71、第2の隙間72a、72bおよび第3の隙間78などに均一に流動する。また、硬化前の樹脂の一部が、第1の隙間71を埋めつつ外部に露出して、第1の隙間71から固定構造60に第1樹脂部74の一部がはみ出したはみ出し部が形成される。樹脂が硬化して、第1樹脂部74および第2樹脂部76a、76bが形成されることにより、
図6に示すような温度センサ装置10を得る。なお、硬化前の樹脂が巻き込んだ気泡は、第2の隙間72a、72bを上方に移動し、硬化する前に第1樹脂部74や第2樹脂部76a、76bから外部に排出される。
【0060】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態のみには限定されず、他の実施形態や変形例を多く含むことは言うまでもない。たとえば、取付部材40の第1端部42aおよび第2端部42bの形状は、
図4に示すような互いに略対称な形状には限定されず、第3の隙間78が、第1側部44aまたは第2側部44bに偏っていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…温度センサ装置
20…センサーケース
21…一方の端面
22…他方の端面
23…底面
24a…第1側面
24b…第2側面
25…上面
26…ケース樹脂
27…感熱素子
28…リード線
29…リード保持部材
40…取付部材
42a…第1端部
42b…第2端部
43…底部
43a…下面
44a…第1側部
44b…第2側部
50…支持部材
51…基端
52…先端
53a…第1屈曲部
53aa…内側部分
54a…第2屈曲部
54aa…内側部分
60…固定構造
62…貫通孔
71…第1の隙間
72a、72b…第2の隙間
74…第1樹脂部
76a、76b…第2樹脂部
78…第3の隙間
80…配線
90…測定対象物
93a、94a…角部
98…固定用ネジ