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特許7468329運転支援装置、運転支援方法、運転支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240409BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/00 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020207924
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094829
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中川 康紀
(72)【発明者】
【氏名】岡 宏充
(72)【発明者】
【氏名】亀山 昌吾
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220096(JP,A)
【文献】特開2012-185582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)のドライバ(6)による運転を支援する運転支援装置(1)であって、
前記車両の走行中における前記ドライバの個人状態を、複数レベルに判別する走行中状態判別部(100)と、
前記走行中における前記ドライバの運転スキルを、複数レベルに判別する走行中スキル判別部(110)と、
前記個人状態の経年変化を、複数レベルに判別する経年状態判別部(120)と、
前記運転スキルの経年変化を、複数レベルに判別する経年スキル判別部(130)と、
前記個人状態及び前記運転スキルの前記走行中における各レベルと、前記個人状態及び前記運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じて前記ドライバに対する支援処理を制御する支援処理制御部(140)とを、備え
過去の前記走行中における前記個人状態の分布に対して、現在の前記走行中における前記個人状態の相関を、複数レベルに判別する前記走行中状態判別部は、前記個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標を、前記車両の走行条件及び前記ドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択する運転支援装置。
【請求項2】
前記走行中スキル判別部は、過去の前記走行中における前記運転スキルの分布に対して、現在の前記走行中における前記運転スキルの相関を、複数レベルに判別する請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記走行中スキル判別部は、前記運転スキルの相関として過去と現在とを対比するためのスキル指標を、前記車両の走行条件及び前記ドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択する請求項に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記経年状態判別部は、現在の前記走行中に判別された前記個人状態のレベルと、過去の前記走行中に判別された前記個人状態のレベルとの、相関を前記個人状態の前記経年変化として複数レベルに判別する請求項1~のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記経年スキル判別部は、現在の前記走行中に判別された前記運転スキルのレベルと、過去の前記走行中に判別された前記運転スキルのレベルとの、相関を前記運転スキルの経年変化として複数レベルに判別する請求項1~のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両(2)のドライバ(6)による運転を支援する運転支援方法であって、
前記車両の走行中における前記ドライバの個人状態を、複数レベルに判別する走行中状態判別工程(S1)と、
前記走行中における前記ドライバの運転スキルを、複数レベルに判別する走行中スキル判別工程(S2)と、
前記個人状態の経年変化を、複数レベルに判別する経年状態判別工程(S5)と、
前記運転スキルの経年変化を、複数レベルに判別する経年スキル判別工程(S6)と、
前記個人状態及び前記運転スキルの前記走行中における各レベルと、前記個人状態及び前記運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じて前記ドライバに対する支援処理を制御する支援処理制御工程(S8)とを、含み、
過去の前記走行中における前記個人状態の分布に対して、現在の前記走行中における前記個人状態の相関を、複数レベルに判別する前記走行中状態判別工程は、前記個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標を、前記車両の走行条件及び前記ドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択する運転支援方法。
【請求項7】
前記走行中スキル判別工程は、過去の前記走行中における前記運転スキルの分布に対して、現在の前記走行中における前記運転スキルの相関を、複数レベルに判別する請求項に記載の運転支援方法。
【請求項8】
前記走行中スキル判別工程は、前記運転スキルの相関として過去と現在とを対比するためのスキル指標を、前記車両の走行条件及び前記ドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択する請求項に記載の運転支援方法。
【請求項9】
前記経年状態判別工程は、現在の前記走行中に判別された前記個人状態のレベルと、過去の前記走行中に判別された前記個人状態のレベルとの、相関を前記個人状態の前記経年変化として複数レベルに判別する請求項6~8のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項10】
前記経年スキル判別工程は、現在の前記走行中に判別された前記運転スキルのレベルと、過去の前記走行中に判別された前記運転スキルのレベルとの、相関を前記運転スキルの経年変化として複数レベルに判別する請求項6~9のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項11】
車両(2)のドライバ(6)による運転を支援するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む運転支援プログラムであって、
前記命令は、
前記車両の走行中における前記ドライバの個人状態を、複数レベルに判別させる走行中状態判別工程(S1)と、
前記走行中における前記ドライバの運転スキルを、複数レベルに判別させる走行中スキル判別工程(S2)と、
前記個人状態の経年変化を、複数レベルに判別させる経年状態判別工程(S5)と、
前記運転スキルの経年変化を、複数レベルに判別させる経年スキル判別工程(S6)と、
前記個人状態及び前記運転スキルの前記走行中における各レベルと、前記個人状態及び前記運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じて前記ドライバに対する支援処理を制御させる支援処理制御工程(S8)とを、含み、
過去の前記走行中における前記個人状態の分布に対して、現在の前記走行中における前記個人状態の相関を、複数レベルに判別させる前記走行中状態判別工程は、前記個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標を、前記車両の走行条件及び前記ドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択させる運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のドライバによる運転を支援する運転支援技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される技術では、ドライバの運転スキルに応じてドライバに対する運転支援の内容が決定される。一方、特許文献2に開示される技術では、ドライバの感情状態に応じてドライバモデルが更新されることで、車両の制御処理が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-220796号公報
【文献】特開2018-18169706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2の開示技術の場合、ドライバの運転スキルと感情状態との相関によっては、それら運転スキルと感情状態とのいずれか一方に応じて走行中に判断される支援処理では、ドライバ個人に不適合となるおそれがあった。
【0005】
本開示の課題は、車両のドライバに対する支援処理の適合性を高める車両運転支援装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、車両のドライバに対する支援処理の適合性を高める車両運転支援方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、車両のドライバに対する支援処理の適合性を高める車両運転支援プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
車両(2)のドライバ(6)による運転を支援する運転支援装置(1)であって、
車両の走行中におけるドライバの個人状態を、複数レベルに判別する走行中状態判別部(100)と、
走行中におけるドライバの運転スキルを、複数レベルに判別する走行中スキル判別部(110)と、
個人状態の経年変化を、複数レベルに判別する経年状態判別部(120)と、
運転スキルの経年変化を、複数レベルに判別する経年スキル判別部(130)と、
個人状態及び運転スキルの走行中における各レベルと、個人状態及び運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じてドライバに対する支援処理を制御する支援処理制御部(140)とを、備え
過去の走行中における個人状態の分布に対して、現在の走行中における個人状態の相関を、複数レベルに判別する走行中状態判別部は、個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標を、車両の走行条件及びドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択する
【0008】
本開示の第二態様は、
車両(2)のドライバ(6)による運転を支援する運転支援方法であって、
車両の走行中におけるドライバの個人状態を、複数レベルに判別する走行中状態判別工程(S1)と、
走行中におけるドライバの運転スキルを、複数レベルに判別する走行中スキル判別工程(S2)と、
個人状態の経年変化を、複数レベルに判別する経年状態判別工程(S5)と、
運転スキルの経年変化を、複数レベルに判別する経年スキル判別工程(S6)と、
個人状態及び運転スキルの走行中における各レベルと、個人状態及び運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じてドライバに対する支援処理を制御する支援処理制御工程(S8)とを、含み、
過去の走行中における個人状態の分布に対して、現在の走行中における個人状態の相関を、複数レベルに判別する走行中状態判別工程は、個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標を、車両の走行条件及びドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択する
【0009】
本開示の第三態様は、
車両(2)のドライバ(6)による運転を支援するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む運転支援プログラムであって、
命令は、
車両の走行中におけるドライバの個人状態を、複数レベルに判別させる走行中状態判別工程(S1)と、
走行中におけるドライバの運転スキルを、複数レベルに判別させる走行中スキル判別工程(S2)と、
個人状態の経年変化を、複数レベルに判別させる経年状態判別工程(S5)と、
運転スキルの経年変化を、複数レベルに判別させる経年スキル判別工程(S6)と、
個人状態及び運転スキルの走行中における各レベルと、個人状態及び運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じてドライバに対する支援処理を制御させる支援処理制御工程(S8)とを、含み、
過去の走行中における個人状態の分布に対して、現在の走行中における個人状態の相関を、複数レベルに判別させる走行中状態判別工程は、個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標を、車両の走行条件及びドライバの特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択させる
【0010】
これら第一~第三態様によると、車両の走行中におけるドライバの個人状態と、走行中におけるドライバの運転スキルとは、それぞれ複数レベルずつに判別される。さらに第一~第三態様によると、ドライバの個人状態と運転スキルとのそれぞれ経年変化も、複数レベルずつに判別される。そこで第一~第三態様では、個人状態及び運転スキルの走行中における各レベルと、個人状態及び運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じてドライバに対する支援処理が制御される。これによれば、個人状態と運転スキルとのレベル相関を、走行中と経年変化という二種類の視点で細分化して、支援処理へ緻密に反映させることができる。したがって、ドライバに対する支援処理の適合性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による運転支援装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態による運転支援装置の詳細構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態による運転支援方法の運転支援フローを示すフローチャートである。
図4図3の走行中状態判別ルーチンを示すフローチャートである。
図5図3の走行中状態判別ルーチンにおける状態指標の選択フロー例を示すフローチャートである。
図6図4の状態相関判別サブルーチンを示すフローチャートである。
図7図3の走行中スキル判別ルーチンを示すフローチャートである。
図8図3の走行中スキル判別ルーチンにおけるスキル指標の選択フロー例を示すフローチャートである。
図9図7のスキル相関判別サブルーチンを示すフローチャートである。
図10図3の運転支援フローにおける相関マトリクスを示す特性表である。
図11図3の経年状態判別ルーチンを示すフローチャートである
図12図3の経年スキル判別ルーチンを示すフローチャートである
図13図3の支援処理制御ルーチンを示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1に示す一実施形態の運転支援装置1は、車両2のドライバ6による運転を支援する。車両2は、自動運転モードにおいて定常的に、又は手動運転モードとの間の切り替えにより一時的に、自動走行可能となっていてもよい。ここで自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律運転制御により、実現されてもよい。自動運転制御モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、ドライバ6が一部又は全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御において、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律運転制御と高度運転支援制御との組み合わせ又は切り替えにより、実現されてもよい。
【0014】
車両2には、センサ系3、情報提示系4及び地図ユニット5が搭載される。センサ系3は、運転支援装置1による運転制御に利用可能な各種情報を、取得する。図2に示すようにセンサ系3は、外界センサ30、及び内界センサ32を含んで構成される。
【0015】
外界センサ30は、車両2の周辺環境となる外界の情報を、生成する。外界センサ30は、車両2の外界に存在する物体を検知することで、外界情報を生成してもよい。この物体検知タイプの外界センサ30は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサ30は、車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星、又はITS(Intelligent Transport Systems)の路側機から信号受信することで、外界情報を生成してもよい。信号受信タイプの外界センサ30は、例えばGNSS受信機、及びテレマティクス受信機等のうち、少なくとも一種類である。
【0016】
内界センサ32は、車両2の内部環境となる内界の情報を、生成する。内界センサ32は、車両2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を生成してもよい。物理量検知タイプの内界センサ32は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、及び車内温度センサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ32は、車両2の内界において乗員に関する特定状態を検知することで、内界情報を生成してもよい。乗員検知タイプの内界センサ32は、例えばドライバステータスモニタ、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0017】
ここでドライバステータスモニタは、車両2の乗員のうち手動運転において車両2の運転操作をするドライバ6の状態として、例えば眼球状態、瞼状態、頭部状態、表情及び姿勢等のうち、少なくとも一種類を検知する。生体センサは、ドライバ6のバイタルサインとして、例えば脈拍(即ち心拍)、血圧、心電図、呼吸、体温、及び指紋等のうち、少なくとも一種類を検知する。着座センサは、車両2の運転席におけるドライバ6の着座状態を検知する。アクチュエータセンサは、車両2の走行アクチュエータに関するドライバ6からの指示状態として、例えばアクセルペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態、ステアリングホイールの操舵状態、始動スイッチのオンオフ状態、及びシフトレバーのシフト状態等のうち、少なくとも一種類を検知する。車内機器センサは、情報提示系4を含んだ車内機器に関するドライバ6、又は他乗員の操作状態として、例えばスイッチのオンオフ状態、タッチパネルの入力状態、及び非接触認識可能なジェスチャー状態等のうち、少なくとも一種類を検知する。
【0018】
情報提示系4は、ドライバ6を含む乗員に向けて、各種情報を提示する。情報提示系4は、視覚提示ユニット40、聴覚提示ユニット42、及び皮膚感覚提示ユニット44を含んで構成される。
【0019】
視覚提示ユニット40は、ドライバ6の視覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。視覚提示ユニット40は、例えばHUD(Head-up Display)、MFD(Multi Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。聴覚提示ユニット42は、ドライバ6の聴覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。聴覚提示ユニット42は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。皮膚感覚提示ユニット44は、ドライバ6の皮膚感覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。皮膚感覚提示ユニット44により刺激する皮膚感覚には、例えば触覚、温度覚、及び風覚等のうち、少なくとも一種類が含まれる。皮膚感覚提示ユニット44は、例えばステアリングハンドルのバイブレーションユニット、運転席のバイブレーションユニット、ステアリングハンドルの反力ユニット、アクセルペダルの反力ユニット、ブレーキペダルの反力ユニット、及び空調ユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0020】
地図ユニット5は、運転支援装置1による運転に利用可能な地図情報を、非一時的に記憶する。地図ユニット5は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地図ユニット5は、車両2の自己位置を含む自己状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図ユニット5は、車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図ユニット5は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されてもよい。
【0021】
地図ユニット5は、例えば外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。地図情報は、車両2の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。
【0022】
図1に示す運転支援装置1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス、及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系3と情報提示系4と地図ユニット5とに接続される。運転支援装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成される。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の運転制御を統合する統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の運転制御における運転タスクを判断する判断ECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の運転制御を監視する監視ECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の走行アクチュエータを個別制御するアクチュエータECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の自己状態量を推定するロケータECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、情報提示系4の情報提示を制御するHCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、例えば車両2との間で通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構築する、少なくとも一つの外部コンピュータであってもよい。
【0023】
運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、メモリ10、及びプロセッサ12を少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0024】
プロセッサ12は、メモリ10に記憶された運転支援プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより運転支援装置1は、車両2の運転を支援するための機能ブロックを、複数構築する。このとき運転支援装置1では、車両2の運転を支援するためにメモリ10に記憶された運転支援プログラムが複数の命令をプロセッサ12に実行させることで、複数の機能部(機能ブロック)が構築される。運転支援装置1により構築される複数の機能ブロックには、図2に示すように走行中状態判別部100、走行中スキル判別部110、経年状態判別部120、経年スキル判別部130、及び支援処理制御部140が含まれる。
【0025】
以下、各機能部100,110,120,130,140の共同により車両2の運転を支援する運転支援方法を、図3~11に示す運転支援フロー等の図面に従って、説明する。尚、本フローにおける各「S」は、運転支援プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0026】
図3に示す運転支援フローのS1において走行中状態判別部100は、車両2の走行中におけるドライバ6の個人状態を複数レベルに判別するために、走行中状態判別ルーチンを実行する。図4に示す走行中状態判別ルーチンのS10において走行中状態判別部100は、走行中における個人状態の相関として過去と現在とを対比するための状態指標Ipを、選択する。
【0027】
ここで状態指標Ipは、走行中におけるドライバ6の個人状態として、例えば眠気状態、脇見状態、疲労状態、及び漫然状態等を推定的に判別するための指標である。状態指標Ipとしては、例えばサッカード及び視線方向を含む眼球の運動、瞬きを含む瞼の開閉運動、顔の向きを含む頭部の運動、顔の表情、身体の姿勢、脈拍(即ち心拍)、血圧、心電図、呼吸、並びに体温等のうち、センサ系3の情報に基づく少なくとも複数種類が挙げられる。
【0028】
状態指標Ipの選択は、車両2の走行条件及びドライバ6の特性条件のうち少なくとも一方に応じて実行される。車両2の走行条件は、例えば走行路の種類及び形状、周辺環境の交通混雑度及び構造複雑度、走行速度を含む自車両2の挙動、他の車両又は交通ユーザとの相対関係及びそれに基づく周辺リスク、走行の時刻及び時間帯、並びに天候等のうち、センサ系3の情報に基づく少なくとも一種類に関して設定される。ドライバ6の特性条件は、例えば運転スコア、運転開始からの経過時間、及び個人状態の判別精度等のうち、過去の運転結果に基づく少なくとも一種類に関して設定される。
【0029】
図5は、状態指標Ipの選択フロー例を示す。選択フロー例のS100において走行中状態判別部100は、センサ系3から必要情報を取得する。続くS101において走行中状態判別部100は、車両2の走行条件として走行路の種別を判別する。その結果、走行環境が自動車専用道路である場合にS102において走行中状態判別部100は、当該自動車専用道路での走行中に個人状態のレベル判別が必要な種類の状態指標Ipを、選択する。一方、走行環境が混雑度の高い都心部の一般道路である場合にS103において走行中状態判別部100は、当該高混雑度での走行中に個人状態のレベル判別が必要な種類の状態指標Ipを、選択する。また一方、走行環境が混雑度の低い郊外の一般道路である場合にS104において走行中状態判別部100は、当該低混雑度での走行中に個人状態のレベル判別が必要な種類の状態指標Ipを、選択する。
【0030】
図4に示す走行中状態判別ルーチンのS11において走行中状態判別部100は、走行中における個人状態の相関として現在の状態指標Ipと対比させる過去の状態指標Ipに関して、ベースラインデータDpbを設定する。ここでベースラインデータDpbは、S10における状態指標Ipの全選択肢をカバーする過去のサンプリングデータ中で、S10により選択された状態指標Ipに関して必要な分布を与えるように、設定される。
【0031】
図4に示す走行中状態判別ルーチンのS12において走行中状態判別部100は、走行中における個人状態の相関として対比させる過去及び現在の各状態指標Ipに関して、レベルを判別するための状態閾値Tpを設定する。ここで状態閾値Tpは、安全運転時及びリスク運転時等の過去の運転行動に応じて設定される。状態閾値Tpの選択は、S11により設定された過去走行中での状態指標Ipに関するベースラインデータDpbの分布に基づくことで、実行される。この場合、例えばベースラインデータDpbの分布における安全運転時及びリスク運転時でのピーク同士の中間値、谷値、又は機械学習値等が、状態指標Ipに対する状態閾値Tpに選択される。
【0032】
図4に示す走行中状態判別ルーチンのS13において走行中状態判別部100は、過去の走行中における個人状態の分布に対して、現在の走行中における個人状態の相関を複数レベルに判別するために、状態相関判別サブルーチンを実行する。図6に示す状態相関判別サブルーチンのS130において走行中状態判別部100は、S10により選択された状態指標Ipの現在走行中でのデータDppと、S11により設定された過去走行中でのベースラインデータDpbと、S12により選択された状態閾値Tpとを、取得する。続くS131において走行中状態判別部100は、過去走行中でのベースラインデータDpbの分布に対して、現在走行中での状態指標IpのデータDppを対比させる相関分析により、状態閾値Tpを基準として現在走行中の個人状態を複数レベルに判別する。
【0033】
ここで相関分析では、ベースラインデータDpbの分布における重心から、状態指標IpのデータDppまでのマハラノビス距離が算出され、当該算出結果と状態閾値Tpとの大小関係に従って個人状態のレベルが判別されてもよい。相関分析では、ベースラインデータDpbの分布と状態指標IpのデータDppとの相関が、例えばサポートベクタマシン又はk近傍アルゴリズム等により算出され、当該算出結果に従って個人状態のレベルが判別されてもよい。相関分析では、ベースラインデータDpbの分布と状態指標IpのデータDppとの相関の揺らぎである精度行列が、例えばグラフィカルラッソ等により算出され、当該算出結果に従って個人状態のレベルが判別されてもよい。いずれかの手法により相関分析から判別される個人状態レベルは、正常レベル、正常より状態の悪化した悪化レベル、及び悪化レベルからさらに状態の悪化した異常レベルの、三種類である。
【0034】
例えばマハラノビラス距離が第一の状態閾値Tp以下となる等により、個人状態レベルが正常レベルと判別された場合には、状態相関判別サブルーチンがS132へ移行する。S132において走行中状態判別部100は、現在走行時刻を表すタイムスタンプと共に、正常レベルとの判別結果をメモリ10に記憶する。一方、例えばマハラノビラス距離が第一の状態閾値Tp超過且つ第二の状態閾値Tp以下となる等により、個人状態レベルが悪化レベルと判別された場合には、状態相関判別サブルーチンがS133へ移行する。S133において走行中状態判別部100は、悪化レベルとの判別結果をタイムスタンプと共にメモリ10に記憶する。また一方、例えばマハラノビラス距離が第二の状態閾値Tp超過となる等により、個人状態レベルが異常レベルと判別された場合には、状態相関判別サブルーチンがS134へ移行する。S134において走行中状態判別部100は、異常レベルとの判別結果をタイムスタンプと共にメモリ10に記憶する。尚、メモリ10の少なくとも一部が外部コンピュータの外部メモリにより構成される場合、個人状態レベルの判別結果は、通信により当該外部メモリへと出力されて記憶される。
【0035】
図3に示す運転支援フローのS2において走行中スキル判別部110は、車両2の走行中におけるドライバ6の運転スキルを複数レベルに判別するために、走行中スキル判別ルーチンを実行する。図7に示す走行中スキル判別ルーチンのS20において走行中スキル判別部110は、走行中における運転スキルの相関として過去と現在とを対比するためのスキル指標Idを、選択する。
【0036】
ここでスキル指標Idは、走行中におけるドライバ6の運転スキルとして、例えば運転スコア等を推定的に判別するための指標である。スキル指標Idとしては、例えば加速度、減速度、横G、操舵角及びそれらに関するペダル又はステアリングホイールの操作量若しくは操作速度、並びに車線内での横方向位置(修正舵時又はレーンチェンジ時)等のうち、センサ系3の情報に基づく少なくとも複数種類が挙げられる。スキル指標Idの選択は、車両2の走行条件及びドライバ6の特性条件のうち少なくとも一方に応じて実行される。車両2の走行条件及びドライバ6の特性条件については、状態指標Ipの場合に準じて設定される。
【0037】
図8は、スキル指標Idの選択フロー例を示す。選択フロー例のS200において走行中スキル判別部110は、センサ系3から必要情報を取得する。続くS201において走行中スキル判別部110は、車両2の走行条件として走行路の種別を判別する。その結果、走行環境が自動車専用道路である場合にS202において走行中スキル判別部110は、当該自動車専用道路での走行中に運転スキルのレベル判別が必要な種類のスキル指標Idを、選択する。一方、走行環境が混雑度の高い都心部の一般道路である場合にS203において走行中スキル判別部110は、当該高混雑度での走行中に運転スキルのレベル判別が必要な種類のスキル指標Idを、選択する。また一方、走行環境が混雑度の低い郊外の一般道路である場合にS204において走行中スキル判別部110は、当該低混雑度での走行中に運転スキルのレベル判別が必要な種類のスキル指標Idを、選択する。
【0038】
図7に示す走行中スキル判別ルーチンのS21において走行中スキル判別部110は、走行中における運転スキルの相関として現在のスキル指標Idと対比させる過去のスキル指標Idに関して、ベースラインデータDdbを設定する。ここでベースラインデータDdbは、S20におけるスキル指標Idの全選択肢をカバーする過去のサンプリングデータ中で、S20により選択されたスキル指標Idに関して必要な分布を与えるように、設定される。
【0039】
図7に示す走行中スキル判別ルーチンのS22において走行中スキル判別部110は、走行中における運転スキルの相関として対比させる過去及び現在の各スキル指標Idに関して、レベルを判別するためのスキル閾値Tdを設定する。ここでスキル閾値Tdは、安全運転時及びリスク運転時等の過去の運転結果に応じて設定される。スキル閾値Tdの設定は、S21により設定された過去走行中でのスキル指標Idに関するベースラインデータDdbの分布に基づくことで、実行される。この場合、例えばベースラインデータDdbの分布における安全運転時及びリスク運転時でのピーク同士の中間値、谷値又は機械学習値等が、スキル指標Idに対するスキル閾値Tdに設定される。
【0040】
図7に示す走行中スキル判別ルーチンのS23において走行中スキル判別部110は、過去の走行中における運転スキルの分布に対して、現在の走行中における運転スキルの相関を複数レベルに判別するために、スキル相関判別サブルーチンを実行する。図9に示すスキル相関判別サブルーチンのS230において走行中スキル判別部110は、S20により選択されたスキル指標Idの現在走行中でのデータDdpと、S21により設定された過去走行中でのベースラインデータDdbと、S22により選択されたスキル閾値Tdとを、取得する。続くS231において走行中スキル判別部110は、過去走行中でのベースラインデータDdbの分布に対して、現在走行中でのスキル指標IdのデータDdpを対比させる相関分析により、スキル閾値Tdを基準として現在走行中の運転スキルを複数レベルに判別する。ここで相関分析は、ベースラインデータDpbの場合に準じた手法のいずれかにより、運転スキルのレベルが判別されるとよい。いずれかの手法により相関分析から判別される運転スキルレベルは、正常レベル、正常より運転の荒いラフレベル、及びラフレベルからさらに運転の荒くなったリスクレベルの、三種類である。
【0041】
例えばマハラノビラス距離が第一のスキル閾値Td以下となる等により、運転スキルレベルが正常レベルと判別された場合には、スキル相関判別サブルーチンがS232へ移行する。S232において走行中スキル判別部110は、現在走行時刻を表すタイムスタンプと共に、正常レベルとの判別結果をメモリ10に記憶する。一方、例えばマハラノビラス距離が第一のスキル閾値Td超過且つ第二のスキル閾値Td以下となる等により、運転スキルレベルがラフレベルと判別された場合には、スキル相関判別サブルーチンがS233へ移行する。S233において走行中スキル判別部110は、ラフレベルとの判別結果をタイムスタンプと共にメモリ10に記憶する。また一方、例えばマハラノビラス距離が第二のスキル閾値Td超過となる等により、運転スキルレベルがリスクレベルと判別された場合には、スキル相関判別サブルーチンがS234へ移行する。S234において走行中スキル判別部110は、リスクレベルとの判別結果をタイムスタンプと共にメモリ10に記憶する。尚、メモリ10の少なくとも一部が外部コンピュータの外部メモリにより構成される場合、運転スキルレベルの判別結果は、通信により当該外部メモリへと出力されて記憶される。
【0042】
図3に示す運転支援フローのS3において走行中状態判別部100及び走行中スキル判別部110は、S13により判別された個人状態の走行中レベルと、S23により判別された運転スキルの走行中レベルとの、相関を共同して抽出する。この相関抽出では、個人状態及び運転スキルの各現在走行中レベルが相関ペアとして、図10に示す相関マトリクスにおいて当該相関ペアと対応する行列値が、所定の抽出フラグ値Cnに設定される。
【0043】
図3に示す運転支援フローのS4において経年状態判別部120及び経年スキル判別部130は共同して、基準時刻からの経過時間が設定時間以上であるか否かを、判定する。ここで基準時刻は、例えば車両2の完成又はメンテナンス後における初回使用時刻、又はS4による前回の肯定判定時刻等に、設定される。基準時刻からの経過時間が設定時間以上であることにより肯定判定が下される場合には、運転支援フローがS5~S8へ順次移行する。一方、基準時刻からの経過時間が設定時間未満であることにより否定判定が下される場合には、運転支援フローがS5~S7をスキップしてS8へと移行する。
【0044】
図3に示す運転支援フローのS5において経年状態判別部120は、個人状態の経年変化を複数レベルに判別するために、経年状態判別ルーチンを実行する。図11に示す経年状態判別ルーチンのS50において経年状態判別部120は、基準時刻での過去走行中に判別された個人状態のレベルと、基準時刻から設定時間以上の経過した現在走行中に判別された個人状態のレベルとを、取得する。続くS51において経年状態判別部120は、過去走行中での個人状態レベルに対して、現在走行中での個人状態レベルの相関におけるズレ度を、さらに経年変化のレベルとして判別する。個人状態レベルのズレ度となる経年変化レベルは、個人状態レベルが改善傾向にある改善傾向レベル、個人状態レベルが実施変化しないで定常化している定常傾向レベル、並びに個人状態レベルが悪化傾向にある悪化傾向レベルの、三種類である。
【0045】
図3に示す運転支援フローのS6において経年スキル判別部130は、運転スキルの経年変化を複数レベルに判別するために、経年スキル判別ルーチンを実行する。図12に示す経年スキル判別ルーチンのS60において経年スキル判別部130は、基準時刻での過去走行中に判別された運転スキルのレベルと、基準時刻から設定時間以上の経過した現在走行中に判別された運転スキルのレベルとを、取得する。続くS61において経年スキル判別部130は、過去走行中での運転スキルレベルに対して、現在走行中での運転スキルレベルの相関におけるズレ度を、さらに経年変化のレベルとして判別する。運転スキルレベルのズレ度となる経年変化レベルは、運転スキルレベルが改善傾向にある改善傾向レベル、運転スキルレベルが実質変化しないで定常化している定常傾向レベル、並びに運転スキルレベルが悪化傾向にある悪化傾向レベルの、三種類である。
【0046】
図3に示す運転支援フローのS7において経年状態判別部120及び経年スキル判別部130は、S51により判別された個人状態の経年変化レベルと、S61により判別された運転スキルの経年変化レベルとの、相関を共同して抽出する。この相関抽出では、個人状態及び運転スキルの各経年変化レベルが相関ペアとされ、図10に示す相関マトリクスにおいて当該相関ペアと対応する行列値が、所定の抽出フラグ値Caに設定される。
【0047】
ここで本実施形態のS7では、図10に示すように、S51により判別された個人状態の経年変化レベルと、S23により判別された運転スキルの走行中レベルとの、相関がさらに抽出されてもよいし、抽出されなくてもよい。また本実施形態のS7では、図10に示すように、S13により判別された個人状態の走行中レベルと、S61により判別された運転スキルの経年変化レベルとの、相関がさらに抽出されてもよいし、抽出されなくてもよい。
【0048】
図3に示す運転支援フローのS8において支援処理制御部140は、個人状態及び運転スキルの走行中における各レベルと、個人状態及び運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じた支援処理を制御するために、支援処理制御ルーチンを実行する。図13に示す支援処理制御ルーチンのS80は、基準時刻からの経過時間が設定時間以上の場合(S5~S7を経由の場合)でも、当該経過時間が設定時間未満の場合(S5~S7をスキップの場合)でも、移行する。S80において支援処理制御部140は、S3により抽出された走行中レベルの相関を表す抽出フラグ値Cnに合わせて、ドライバ6にとって適正な短期支援処理を決定する。
【0049】
ここで短期支援処理では、図10に示す相関マトリクスにおいて各相関ペア毎に登録された支援アプリケーションの中から、抽出フラグ値Cnの設定された行列値に適合する支援アプリケーションが、選択的に起動される。例えば現在走行中での相関ペアが正常レベルの個人状態と正常レベルの運転スキルとなる場合等には、適合する支援アプリケーションの起動により、利便性及び快適性を高めるための提案が情報提示系4からドライバ6へ提示される。一方、例えば現在走行中での相関ペアが正常レベルの個人状態とラフレベルの運転スキルとなる場合等には、適合する支援アプリケーションの起動により、運転を補助するための提案が情報提示系4からドライバ6へ提示される。この場合、自動運転モードを利用してドライバ6の運転を直接的に補助するための支援アプリケーションが、補助提案の支援アプリケーションに代えて又は加えて、起動されてもよい。また一方、例えば現在走行中での相関ペアが悪化レベルの個人状態と正常レベルの運転スキルとなる場合等には、適合する支援アプリケーションの起動により、集中力を回復させるための休憩促進を含む提案が情報提示系4からドライバ6へ提示される。
【0050】
図13に示す支援処理制御ルーチンのS81は、基準時刻からの経過時間が設定時間未満の場合(S5~S7をスキップの場合)には移行せず、当該経過時間が設定時間以上の場合(S5~S7を経由の場合)にのみ移行する。S81において支援処理制御部140は、S7により抽出された経年変化レベルの相関を表す抽出フラグ値Caに合わせて、ドライバ6にとって適正な長期支援処理を決定する。
【0051】
ここで長期支援処理では、図10に示す相関マトリクスにおいて各相関ペア毎に登録された支援アプリケーションの中から、抽出フラグ値Caの設定された行列値に適合する支援アプリケーションが、選択的に起動される。例えば経年変化の相関ペアが悪化傾向レベルの個人状態と定常傾向レベルの運転スキルとなる場合等には、適合する支援アプリケーションの起動により、状態悪化傾向に気付きを与えるための早期警告又は休憩促進を含む提案が情報提示系4からドライバ6へ提示される。一方、例えば経年変化の相関ペアが定常レベルの個人状態と悪化傾向レベルの運転スキルとなる場合等には、適合する支援アプリケーションの起動により、スキル悪化傾向に気付きを与えるための提案が情報提示系4からドライバ6へ提示される。この場合、自動運転モードを利用してドライバ6の運転へ早期に介入するための支援アプリケーションが、気付き提案の支援アプリケーションに代えて又は加えて、起動されてもよい。また一方、例えば経年変化の相関ペアが悪化傾向レベルの個人状態と悪化傾向レベルの運転スキルとなる場合等には、適合する支援アプリケーションの起動により、運転免許の返上を誘導するための提案が情報提示系4からドライバ6へ提示される。
【0052】
以上の短期支援処理及び長期支援処理をそれぞれ実現する支援アプリケーションは、例えば車両2の工場出荷時又はメンテナンス時等の初回使用前にインストールされていてもよいし、初回使用以降にドライバ6の登録操作によってインストールされてもよい。特に支援アプリケーションの登録操作によるインストールは、図10に示す相関マトリクスにおいて相関ペア毎に実行可能になっているとよい。但し、新規の支援アプリケーションを登録する相関ペアに関連付けて既存の支援アプリケーションが登録されている場合、情報提示系4において利用されるユニットの利用権限の重複状況を踏まえて、ドライバ6には支援アプリケーションの入れ替え要否が確認されてから、インストールが実行されるとよい。
【0053】
ここまでの説明から本実施形態では、S1が走行中状態判別工程に相当し、S2が走行中スキル判別工程に相当し、S5が経年状態判別工程に相当し、S6が経年スキル判別工程に相当し、S8が支援処理制御工程に相当する。
【0054】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0055】
本実施形態によると、車両2の走行中におけるドライバ6の個人状態と、走行中におけるドライバ6の運転スキルとは、それぞれ複数レベルずつに判別される。さらに本実施形態によると、ドライバ6の個人状態と運転スキルとのそれぞれ経年変化も、複数レベルずつに判別される。そこで本実施形態では、個人状態及び運転スキルの走行中における各レベルと、個人状態及び運転スキルの経年変化における各レベルとの、相関に応じてドライバ6に対する支援処理が制御される。これによれば、個人状態と運転スキルとのレベル相関を、走行中と経年変化という二種類の視点で細分化して、支援処理へ緻密に反映させることができる。したがって、ドライバ6に対する支援処理の適合性を高めることが可能である。
【0056】
本実施形態によると、過去の走行中における個人状態の分布に対して、現在の走行中における個人状態の相関が、複数レベルに判別される。これによれば、過去分布が表す定常の個人状態をベースとして、現在走行中での個人状態が適正に判別され得る。故に、こうした過去分布に対する個人状態の判別は、支援処理の適合性を高める上で有利となる。
【0057】
本実施形態によると、個人状態の相関としては、過去と現在とを対比するための状態指標Ipが、車両2の走行条件及びドライバ6の特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択される。これによれば、個人状態を左右する条件の反映された状態指標Ipに関して、過去走行中と現在走行中とでの個人状態の相関が判別されることになるので、当該判別の精度が向上し得る。故に、こうした状態指標Ipを用いる個別状態の判別は、支援処理の適合性を高める上で有利となる。
【0058】
本実施形態によると、過去の走行中における運転スキルの分布に対して、現在の走行中における運転スキルの相関が、複数レベルに判別される。これによれば、過去分布が表す定常の運転スキルをベースとして、現在走行中での運転スキルが適正に判別され得る。故に、こうした過去分布に対する運転スキルの判別は、支援処理の適合性を高める上で有利となる。
【0059】
本実施形態によると、運転スキルの相関としては、過去と現在とを対比するためのスキル指標Idが、車両2の走行条件及びドライバ6の特性条件のうち少なくとも一方に応じて選択される。これによれば、運転スキルを左右する条件の反映されたスキル指標Idに関して、過去走行中と現在走行中とでの運転スキルの相関が判別されることになるので、当該判別の精度が向上し得る。故に、こうしたスキル指標Idを用いる運転スキルの判別は、支援処理の適合性を高める上で有利となる。
【0060】
本実施形態によると、現在の走行中に判別された個人状態のレベルと、過去の走行中に判別された個人状態のレベルとの、相関が個人状態の経年変化として複数レベルに判別される。これによれば、過去走行中の個人状態をベースとして、現在走行中の個人状態に現出する相関のズレ度から、個人状態の経年変化が適正に判別され得る。故に、こうした過去の判別結果に基づく個人状態の経年変化判別は、支援処理の適合性を高める上で有利となる。
【0061】
本実施形態によると、現在の走行中に判別された運転スキルのレベルと、過去の走行中に判別された運転スキルのレベルとの、相関が運転スキルの経年変化として複数レベルに判別される。これによれば、過去走行中の運転スキルをベースとして、現在走行中の運転スキルに現出する相関のズレ度から、運転スキルの経年変化が適正に判別され得る。故に、過去の判別結果に基づく運転スキルの経年変化判別は、支援処理の適合性を高める上で有利となる。
【0062】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0063】
変形例において運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして含んでいてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:運転支援装置、2:車両、6:ドライバ、100:走行中状態判別部、110:走行中スキル判別部、120:経年状態判別部、130:経年スキル判別部、140:支援処理制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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図13