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特許7468345スクレーパ装置、除去対象物除去機能を有する回転装置、除去対象物除去方法、フィルムの製造方法及び微多孔膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】スクレーパ装置、除去対象物除去機能を有する回転装置、除去対象物除去方法、フィルムの製造方法及び微多孔膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/27 20190101AFI20240409BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240409BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240409BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240409BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20240409BHJP
   B41F 35/00 20060101ALN20240409BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B29C48/27
B29C48/305
B29C48/88
B29C48/08
C08J9/28 101
C08J9/28 CES
B41F35/00 D
B29K23:00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020537805
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2020018269
(87)【国際公開番号】W WO2021059574
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2019177759
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】室井 智裕
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 勇
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-017027(JP,A)
【文献】特開平06-015806(JP,A)
【文献】特開平02-270555(JP,A)
【文献】特開2017-144711(JP,A)
【文献】特開昭58-126159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/25
B41F 35/00
B41F 3/38
B41F 5/24
B41F 9/10
B41F 15/46
B41F 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りを回転可能な円柱状体の外周面に付着した除去対象物を除去するスクレーパ装置であって、
少なくとも第1および第2のスクレーパを含む複数のスクレーパを移動可能に保持する保持機構を有し、
前記保持機構は、前記第1のスクレーパを前記円柱状体に付着した除去対象物の除去を行う処理位置に保持するとともに、前記第2のスクレーパが前記第1のスクレーパに接し前記除去対象物の除去が可能な位置に移動したときに、前記第1のスクレーパを前記処理位置から離隔させる、スクレーパ装置。
【請求項2】
前記保持機構は、前記回転軸に対して平行に延びる旋回軸部を有し、
前記複数のスクレーパは、前記旋回軸部の周りを相対的に回転する、請求項1に記載のスクレーパ装置。
【請求項3】
前記旋回軸部は、当該旋回軸部の両端のうちの少なくとも一方に形成され、外部から気体が供給される供給孔と、当該供給孔に連通するように前記旋回軸部の内部に形成された気体通流領域と、前記旋回軸部に供給された気体を噴出する気体噴出部と、を備え、
前記気体噴出部は、前記気体通流領域に連通するように前記旋回軸部の長手方向における略中央部分に設けられ、前記処理位置に位置する前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパのうち一方のスクレーパにおける除去対象物の掻き取り部位に気体を噴出する噴出孔により構成されていて、スクレーパの除去対象物を排出する、請求項2に記載のスクレーパ装置。
【請求項4】
前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパは、前記旋回軸部の周りでの旋回に伴って、相互に接触するときに、相互に重なり合うように構成されている、請求項2または請求項3に記載のスクレーパ装置。
【請求項5】
前記第1のスクレーパの内面及び前記第2のスクレーパの内面に、それぞれ、前記第2のスクレーパの背面及び前記第1のスクレーパの背面が入り込んだときに当該背面を受け止める受け止め部が形成されている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のスクレーパ装置。
【請求項6】
前記第1のスクレーパの受け止め部及び前記第2のスクレーパの受け止め部は、それぞれ、前記第2のスクレーパの背面及び前記第1のスクレーパの背面が入り込むように構成されている、請求項5に記載のスクレーパ装置。
【請求項7】
前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパの各々は、前記旋回軸部から離れた部位に弾性体からなる板状のブレードを着脱自在に備える、請求項2乃至6のいずれか1項に記載のスクレーパ装置。
【請求項8】
前記旋回軸部の長手方向に沿って第1の保持部と第2の保持部が設けられ、
前記第1の保持部は、前記旋回軸部の周りを旋回自在に前記旋回軸部に取り付けられる基端部と、該基端部から延びて前記第1のスクレーパを保持する腕部と、前記第1のスクレーパを介して前記旋回軸部の周りを前記第1の保持部とともに旋回する第1の保持部基端部と、を有し、
前記第2の保持部は、前記旋回軸部の周りを旋回自在に前記旋回軸部に取り付けられる基端部と、該基端部から延びて前記第2のスクレーパを保持する腕部と、前記第2のスクレーパを介して前記旋回軸部の周りを前記第2の保持部とともに旋回する第2の保持部基端部と、を有し、
さらに、前記第1の保持部基端部及び前記第2の保持部基端部に向かって先端側がそれぞれ突没自在に構成された係止部を備え、
前記第1の保持部基端部及び前記第2の保持部基端部の各々の外周面に、前記係止部の先端部が係合可能な凹部が形成され、前記係止部の先端部が前記凹部に係合することによって当該第1および第2の保持部基端部が前記旋回軸部に対して固定される、請求項2乃至7のいずれか1項に記載のスクレーパ装置。
【請求項9】
前記第1の保持部基端部の外周面と前記第1の保持部基端部から最も離れて位置する前記第1の保持部の外周面との少なくとも一方に、前記第1のスクレーパを旋回させるための棒状体の一端を差し込むことが可能な窪みが形成され、
前記第2の保持部基端部の外周面と前記第2の保持部基端部から最も離れて位置する前記第2の保持部の外周面との少なくとも一方に、前記第2のスクレーパを旋回させるための棒状体の一端を差し込むことが可能な窪みが形成されている、請求項8に記載のスクレーパ装置。
【請求項10】
前記旋回軸部の長手方向に沿って延びるとともに前記旋回軸部に対して上方側に離間した位置に設けられ、前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパの一方のスクレーパを旋回させたときに前記棒状体の側面が衝突して前記一方のスクレーパの旋回を停止させる棒状のストッパーをさらに備える、請求項9に記載のスクレーパ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のスクレーパ装置と、
円柱状体と、を備え、
前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパのいずれか一方ずつが前記円柱状体の外周面における除去対象物を除去するように前記円柱状体に備えられた、除去対象物除去機能を有する回転装置。
【請求項12】
前記円柱状体の長手方向における円断面方向から見て、前記第1のスクレーパおよび前記第2のスクレーパのブレードと、当該ブレードが接触する点における前記円柱状体の外周面の接線とがなす角度は、鋭角側で60°以下である、請求項11に記載の除去対象物除去機能を有する回転装置。
【請求項13】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載のスクレーパ装置と、
円柱状体と、を備え、
前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパのいずれか一方ずつが前記円柱状体の外周面における除去対象物を除去するように前記円柱状体に備えられ、
前記第1の保持部及び前記第2の保持部は、前記円柱状体の回転方向と同じ方向に旋回するが前記回転方向とは反対方向には旋回しないように前記旋回軸部に取り付けられている、除去対象物除去機能を有する回転装置。
【請求項14】
前記処理位置にある前記第1のスクレーパに対し、旋回した他のスクレーパが接触する位置を接触位置とし、前記接触位置に進む手前の位置であって前記接触位置より上方に離間した位置を待機位置とし、前記他のスクレーパが前記接触位置から前記処理位置に旋回したことにより前記第1のスクレーパが前記処理位置から離れて停止する位置を停止位置とし、前記処理位置、前記接触位置、前記待機位置及び前記停止位置に干渉しない位置にて前記第1のスクレーパの交換を行う位置を交換位置として、
前記凹部は、前記第1の保持部基端部及び前記第2の保持部基端部の各々に、対応するスクレーパの前記処理位置、前記停止位置、前記交換位置及び前記待機位置に対応して4箇所に設けられている、請求項13に記載の除去対象物除去機能を有する回転装置。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の回転装置を使用し、前記円柱状体の表面から除去対象物を除去するともに請求項3に記載の排出する工程を有する除去対象物除去方法。
【請求項16】
樹脂を口金から押出して樹脂シートとし、前記樹脂シートを円柱状体の外周面に接触させて前記樹脂シートを冷却固化する工程と、
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の除去対象物除去機能を有する回転装置を用いて前記円柱状体の表面から除去対象物を除去する工程と、
を有する、フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記樹脂はポリオレフィン樹脂と希釈剤とを含む樹脂溶液であり、
請求項16に記載のフィルムの製造方法と、
冷却固化された前記樹脂シートから前記希釈剤を除去して微多孔膜を得る工程と、を有する、微多孔膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状体の外周面に付着した付着物や余剰物を除去するために用いられるスクレーパ装置及び付着物や余剰物などの除去対象物除去機能を有する回転装置と、円柱状体の外周面から除去対象物物を除去する方法と、該方法を用いるフィルムの製造方法及び微多孔膜の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のロールなどの円柱状体の外周面から付着物や余剰物などの除去対象物を除去するために、回転中の円柱状体の外周面にスクレーパやドクターブレードを接触させて掻き落とす技術が広く用いられている。例えば微多孔ポリオレフィン樹脂シートなどの微多孔膜を製造する際には、原料樹脂に流動パラフィンなどの希釈剤(可塑剤)を添加して混練して樹脂溶液とし、この樹脂溶液を口金からシート状に押出成形してキャスト冷却装置によって冷却固化させている。キャスト冷却装置には回転する冷却ロール(チルロール)が設けられており、この冷却ロールの外周面(すなわちキャスト面)に樹脂溶液を連続的に吐出して冷却固化させ、延伸処理などを施した後、フィルムとして巻取りロールに巻き取っている。高品位の微多孔膜を得るためには、冷却ロールの外周面に残存して付着する付着物や余剰物を除去する必要があり、そのためにドクターブレードやスクレーパを使用している。特許文献1は、微多孔ポリオレフィン樹脂シートの製造方法の一例を開示している。微多孔膜の製造以外にも、例えばフレキソ印刷機では、刷版に接触されるアニロックスロールに付着した余剰のインクを除去するために、ドクターブレードを用いている。
【0003】
図6のように、スクレーパあるいはドクターブレード46を用いて円柱状体の外周面から付着物や余剰物を除去する場合、スクレーパやドクターブレード46は擦れるように円柱状体に接するので磨耗する。そのため例えば一定の時間ごとにスクレーパやドクターブレード46を交換する必要が生じるが、この交換の際には長時間にわたって円柱状体の回転を停止せざるを得ず、生産効率の低下などにつながっている。そこで特許文献2には、アニロックスロールから余剰のインクを除去するドクターブレードを支持するドクターブレード支持装置であって、回転可能に支持された保持部材をアニロックスロールと平行に配置するとともに、一対のドクターブレードを保持部材に着脱可能に取り付けられたものを開示している。一対のドクターブレードは、一方がアニロックスロールに接触する接触位置となり他方がアニロックスロールから離れた交換位置となるように、取り付けられている。このドクターブレード支持装置では、ドクターブレードの交換を行うときは、アニロックスロールの回転を停止した後に保持部材をアニロックスロールから遠ざけ、接触位置と交換位置との間で保持部材を回転させ、続いて保持部材を再びアニロックスロールに近づけ、アニロックスロールの回転を再開する。ドクターブレードの交換自体は、アニロックスロールの回転中に退避位置にあるドクターブレードに対して実行する。これにより、アニロックスロールの回転を停止する時間を短くすることができ、生産効率を向上することができる。
【0004】
以下の説明において、円柱状体の外周面の付着物や余剰物を掻き落とすために円柱状体の外周面に接触することとなる部材のことを総称してブレードと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/083591号
【文献】日本国特開2006-44193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示されるドクターブレード支持装置によれば、保持部材に取り付けられた2個のブレードのうちの一方が円柱状体の外周面から付着物を除去している間に他方のブレードの交換を行うことができるので、円柱状体の回転を停止する時間を短くすることができる。しかしながらこのドクターブレード支持装置では、保持部材の回転によって接触位置と交換位置との間で2つのブレードを相互に入れ換えるときに円柱状体の回転を停止する必要があり、円柱状体の連続運転がなお制約されている。円柱状体の回転を停止しないで接触位置と交換位置との間で2つのブレードを相互に入れ換えることも考えられるが、その場合は、ブレードが円柱状体の外周面に接触しない時間が生じるので、その間は付着物が除去されないため製品の品質に問題が生じる恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、円柱状体の回転を停止することなくブレードの交換を行うことができるスクレーパ装置及び除去対象物除去機能を有する回転装置と、除去対象物除去方法とを提供することにある。本発明の別の目的は、本発明の除去対象物除去方法を用いる微多孔膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転軸の周りを回転可能な円柱状体の外周面に付着した除去対象物を除去するスクレーパ装置であって、少なくとも第1および第2のスクレーパを含む複数のスクレーパを移動可能に保持する保持機構を有し、前記保持機構は、前記第1のスクレーパを前記円柱状体に付着した除去対象物の除去を行う処理位置に保持するとともに、前記第2のスクレーパが前記第1のスクレーパに接し前記除去対象物の除去が可能な位置に移動したときに、前記第1のスクレーパを前記処理位置から離隔させる、スクレーパ装置である。
また、回転軸の周りを回転可能な円柱状体の外周面に付着した除去対象物を除去するスクレーパ装置であって、前記回転軸に対して平行に延びる旋回軸部と、前記旋回軸部の軸方向に沿って延びると共に前記旋回軸部の周りを旋回自在に当該旋回軸部に取り付けられた第1のスクレーパと、前記旋回軸部の軸方向に沿って延びると共に前記旋回軸部の周りを旋回自在に当該旋回軸部に取り付けられた第2のスクレーパと、を有するスクレーパ装置である。
本発明は、上記スクレーパ装置と、前記円柱状体とを備え、前記第1のスクレーパ及び前記第2のスクレーパのいずれか一方ずつが前記円柱状体の外周面における付着物や余剰物を除去するように前記円柱状体に備えられたことを特徴とする除去対象物除去機能を有する回転装置である。
本発明は、本発明の除去対象物除去装置を使用し、円柱状体の表面から付着物や余剰物を除去する方法である。
本発明は、樹脂を口金から押出して樹脂シートとし、前記樹脂シートを前記円柱状体の外周面に接触させて前記樹脂シートを冷却固化する工程と、上記付着物や余剰物除去機能を有する回転装置を用いて前記円柱状体の表面から除去対象物を除去する工程と、を有するフィルムの製造方法である。
前記樹脂はポリオレフィン樹脂と希釈剤とを含む樹脂溶液であり、本発明は、既述のフィルムの製造方法と、冷却固化された前記樹脂シートから前記希釈剤を除去して微多孔膜を得る工程と、を有する、微多孔膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、第1のスクレーパと第2のスクレーパとがその相互間の距離を変えながら移動できる。そのため、これらのスクレーパの位置を制御することにより、円柱状体の外周面におけるスクレーパが接触する位置を実質的に変えることなく、更には円柱状体にスクレーパのいずれかが接触していない時間を介在させることなく、円柱状体の外周面に一方のスクレーパが接触している状態から他方のスクレーパが接触している状態に瞬間的に切り替えることができる。そのため、円柱状体の回転を停止させることなく、当該円柱状体の外周面における付着物や余剰物の除去を継続できる。すなわち、フィルムの製造においては、製造工程を止めることなく、安定した品質のフィルムを製造することが可能となる。
上記、構成が成り立つ状態であれば、複数のスクレーパを有していても良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る除去対象物除去装置の構成、旋回軸部の周りでの各保持部及び各スクレーパの旋回を説明する図である。
図2図2は、一方のスクレーパが待機位置にあるときの縦断面図である。
図3図3は、スクレーパ装置の別の例(1)を示す模式的側面図である。
図4図4は、スクレーパ装置の別の例(2)を示す図である。
図5図5は、スクレーパ装置の別の例(3)を示す図である。
図6図6は、従来技術のスクレーパ装置である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る除去対象物除去機能を有する回転装置20を示している。この回転装置20は、付着物や余剰物を除去する除去対象物除去機能を有し、後述するスクレーパを移動可能に保持する保持機構の一実施形態である。回転装置20は、以下詳述する一連の作動状況を示す状態(A)~状態(D)のうちの状態(A)において、この回転装置20の左側に位置して回転軸の周りを回転可能な円柱状体10の外周面に付着した付着物や余剰物(以下、これら付着物や余剰物をまとめて「除去対象物」と呼ぶ)を除去するために用いられる。
【0012】
除去対象物除去機能を有する回転装置20は、円柱状体の回転軸に平行に延びる旋回軸部22と、旋回軸部22の長手方向(軸方向)に沿って各々延びる2本のスクレーパ31A,31Bとを備えている。旋回軸部22の両端はそれぞれ軸固定部23を介して端部板21に固定されている。これら端部板21は、図示破線で示すように、各々直立した支柱11に対してこの回転装置20を取り付けるとともに、この回転装置20を構成する各部材を固定するために設けられている。スクレーパ31Aが第1のスクレーパをなし、スクレーパ31Bが第2のスクレーパをなしている。また、これらスクレーパ31A、31Bと旋回軸部22とによりスクレーパ装置が構成されている。
【0013】
スクレーパ31A,31Bは、互いに同一形状のものであって、それぞれ、実際に円柱状体の外周面に接触することとなる部材であるブレード32A,32Bを取り外し可能に備えている。即ち、例えばスクレーパ31A,31Bは、クランプ構造となる本体部を有し、それぞれ本体部によってブレード32A,32Bを挟み込むと共に図示しないボルトなどによって当該本体部における挟み込み状態を固定する。これによってスクレーパ31A,31Bは、ブレード32A,32Bを先端側(円柱状体側)に保持するように構成されている。ブレード32A,32Bは、円柱状体の回転軸方向すなわち旋回軸部22の長手方向に各々延びる細長い板状の部材であり、例えば、プラスチックやゴムなどの弾性体、この例ではPET(ポリエチレンテレフタレート)ブレードによって構成されている。これらブレード32A、32Bは、図1の状態(A)に示すように、円柱状体10の回転方向下流側に向かって寝るように、即ちリバースアングルとなるように各々スクレーパ31A、31Bに取り付けられている。従って、ブレード32A,32Bの長手方向における両面のうち旋回軸部22を臨む面が円柱状体10の表面における除去対象物を掻きとる面となっている。
【0014】
本実施形態の除去対象物除去機能を有する回転装置20では、スクレーパ31A,31Bは、相互に追い越すことはできないが、旋回軸部22の周りを独立して各々旋回できるようになっている。また、スクレーパ31A,31Bは、旋回軸部22の長手方向において互いにほぼ同じ長さであり、また旋回軸部22の周りでの旋回に伴って相互に接触するときに、相互に重なり合うように構成されている。スクレーパ31A,31Bの旋回半径は、すなわちスクレーパが旋回軸部22の周りを旋回することによって通過することとなる領域の外周の半径は、ブレード32A,32Bの磨耗の差による分を除けば、互いに同一である。
このようなスクレーパ31A,31Bの相互に独立した旋回を可能にするために、スクレーパ31Aは、旋回軸部22の周りを旋回自在であるように旋回軸部22に取り付けられた保持部33によって保持されている。具体的には、保持部33は、旋回軸部22の周りを回転自在に旋回軸部22に取り付けられる基端部とこの基端部から延びてスクレーパ31Aを保持する腕部とを有しており、旋回軸部22の長手方向に沿って互いに離間するように配置されている。保持部33は、旋回軸部22の長手方向に沿って複数か所設けられている。保持部33は、スクレーパ31Aを介して互いに機械的に連結されているので、旋回軸部22の周りをスクレーパ31Aと共に旋回し、また、保持部33のうちの1つを旋回させれば、保持部33の残りのものとスクレーパ31Aも同時に旋回することになる。同様に、スクレーパ31Bは、各々が旋回軸部22の周りを旋回自在に旋回軸部22に取り付けられる基端部とこの基端部から延びてスクレーパ31Bを保持する腕部とを有する保持部33によって保持されており、保持部33は、スクレーパ31Bを介して互いに機械的に連結されている。
【0015】
保持部33は、スクレーパ31A用のものとスクレーパ31B用のものとが1以上の繰り返しで交互に配置している。すなわち、スクレーパ31Aを保持する保持部とスクレーパ31Bを保持する保持部とが、旋回軸部22の長手方向に沿って交互に配置していることになる。スクレーパ31Aを保持する保持部の総数は1個でもよいが複数であることが好ましく、同様に、スクレーパ31Bを保持する保持部の総数は1個でもよいが複数であることが好ましい。また、保持部33は、円柱状体の回転方向と同一方向には旋回可能であるが、円柱状体の回転方向とは逆方向には旋回しないことが好ましく、逆方向への旋回を阻止するために、保持部33内部には例えばワンウェイベアリングが設けられていることが好ましい。
【0016】
旋回軸部22としては、管状であって内部に気体流通領域が形成されている部材を使用することが好ましい。そのような部材を用いる場合、旋回軸部22の少なくとも一方の端部は、気体流通領域の内部に空気などの気体を供給する供給孔(図示せず)として使用され、また旋回軸部22の側面には、気体流通領域から旋回軸部22の外側に気体を吹き出す噴出孔28(図2参照)が形成される。供給孔は、軸固定部23に設けられた管状の気体導入部24に連通する。気体導入部24を介して外部から気体を供給することにより、気体流通領域を介して噴出孔28から気体が吹き出すこととなる。この例では、噴出孔28は、旋回軸部22の長手方向における中央部に形成されている。
【0017】
以上説明した構成のうち、旋回軸部22、2つのスクレーパ31A,31B及び保持部33は、除去対象物除去機能を有する回転装置20を構成する基本的な要素であるスクレーパ装置を構成している。
【0018】
本実施形態の回転装置20では、スクレーパ31A,31Bが独立して、すなわちその相互間の距離を変えながら旋回軸部22の周りを旋回できるので、このことを利用して、円柱状体10の外周面におけるスクレーパが接触する位置を実質的に変えることなく、以下に説明するように円柱状体10の外周面に一方のスクレーパ31A(31B)が接触している状態から他方のスクレーパ31B(31A)が接触している状態に瞬間的に切り替えることができる。円柱状体10の外周面に接触するスクレーパ31A(31B)の切り替えを行うときは、円柱状体10の回転を停止する必要はない。これにより、この回転装置20によれば、円柱状体10の回転を停止することなく、また製品の品質などに悪影響を与えることなく、ブレード32A、32Bの交換を行うことができるようになる。
【0019】
図1は、除去対象物除去機能を有する回転装置20による円柱状体10の外周面からの除去対象物の除去を模式的に説明する図であり、各スクレーパ31A,31Bの動きを示している。旋回軸部22の周りの旋回角に応じ、スクレーパ31A,31Bの各々について、処理位置、停止位置、交換位置、待機位置及び接触位置の5つの位置が定義される。円柱状体10は、図示矢印で示すように、反時計周り方向に回転するものとする。
【0020】
図1の状態(A)は、スクレーパ31Aが処理位置にあり、スクレーパ31Bが接触位置にある状態を示している。処理位置は、2つのスクレーパ31A、31Bのうち一のスクレーパ31A(31B)が円柱状体10の外周面に接触して除去対象物の除去を行う位置である。接触位置は、スクレーパ31A(31B)の旋回に伴ってスクレーパ31A(31B)が通過する位置である。一のスクレーパ31A(31B)が処理位置にあるときに当該一のスクレーパ31A(31B)から他のスクレーパ31B(31A)に切り替える場合には、他のスクレーパ31B(31A)を旋回させて一のスクレーパ31A(31B)の上に重ね、さらに、他のスクレーパ31B(31A)を処理位置まで旋回させることによって行なわれる。切り替えのために、処理位置にある一のスクレーパ31A(31B)の上面に接触するときの他のスクレーパ31B(31A)の位置を既述の接触位置と呼んでいる。
【0021】
図1の状態(A)において接触位置ではスクレーパ31Bの先端(ブレード32Bの先端部)は円柱状体10の外周面からわずかに離れた位置にあるが、作業者がスクレーパ31Bをさらに下側のスクレーパ31Aに向かって手作業で旋回させることで、スクレーパ31Bが処理位置に向かって動き出す。先に処理位置にあったスクレーパ31Aは、スクレーパ31Bを処理位置にまで旋回させたことによってスクレーパ31Bによって処理位置から下側に押し出される。図1の状態(A)に示す場合、待機位置からスクレーパ31Bを処理位置まで旋回させるときに、ブレード32A,32Bが弾性体で構成されていることにより、スクレーパ31A,31Bの両方(より正確にはブレード32A,32Bの両方)が一瞬、同時に円柱状体10の外周面に接触する。そして、これらブレード32A、32B間における円柱状体10の外周面は、その後上側のブレード32Bに向かって進んでいき、当該外周面に付着した除去対象物はブレード32Bによって掻きとられる。これにより、円柱状体10の外周面においてスクレーパ31A,31Bによって掻き取られない領域が形成されることを防いでいる。また、両方のスクレーパ31A,31Bが同時に円柱状体10の外周面に接触するのは一瞬であり、円柱状体10の外周面におけるスクレーパ31A,31Bによる掻き取り位置は実質的には変化しない。例えば樹脂シートを冷却する冷却ロールの外周面から除去対象物を除去する場合、掻き取り位置が変化すると冷却ロールによる冷却に影響が出て製品となる樹脂シートの物性が変化することがあるが、本実施形態の除去対象物除去機能を有する回転装置20によれば、製品に対するこのような影響を排除することができる。
【0022】
処理位置から押し出されたスクレーパ31Aは、図示下方の位置にまで重力によって旋回して、停止位置にて停止する。図1の状態(B)では、スクレーパ31Aは停止位置にあり、スクレーパ31Bは処理位置にある。図2を用いて説明するように、スクレーパ31Bが処理位置に位置している時、当該スクレーパ31Bにおける除去対象物掻き取り面に対して旋回軸部22から空気などの気体が吹き出されるが、停止位置は、気体の吹出しにスクレーパ31Aが干渉しない位置に設定される。停止位置においてスクレーパ31Aの交換を行うことも可能ではあるが、処理位置にある他のスクレーパ31Bとの距離が近いので、交換作業の作業性が悪い。そこで、旋回軸部22を挟んで処理位置から見てほぼ反対側となる位置を、スクレーパ31Bの交換を行う交換位置とする。交換位置にあるスクレーパ31Bに対して、ブレード32Bの交換などを行うことができる。図1の状態(C)では、スクレーパ31Aが交換位置にあり、スクレーパ31Bは依然として処理位置にある状態を示している。スクレーパ31Aに対する交換作業が終了すると、スクレーパ31Aは、待機位置まで旋回される。待機位置は、接触位置に進む手前の位置であって接触位置より上方に離間した位置である。図1の状態(D)では、スクレーパ31Aが待機位置にあり、スクレーパ31Bは依然として処理位置にある状態を示している。この状態からスクレーパ31Aを旋回させれば、スクレーパ31Aは、処理位置にあるスクレーパ31Bに接触し、その後、処理位置に移動する。すなわち図1の状態(D)から状態(A)に戻ることになるが、その場合、前回の状態(A)とはスクレーパ31Aとスクレーパ31Bとが入れ替わっていることになる(これを状態(A’)と呼ぶ)。なお、図1の状態(B)から状態(D)までにおいて、円柱状体10の描画を省略している。
【0023】
以上のようにして、本実施形態の除去対象物除去機能を有する回転装置20では、スクレーパ31A,31Bの一方のスクレーパ31A(31B)によって円柱状体10に外周面に付着する除去対象物を除去しつつ、同時に他方のスクレーパ31B(31A)の交換を行うことができる。
【0024】
ここで示す例では、スクレーパ31A,31Bのブレード32A,32Bは、円柱状体10の回転方向に対してリバースアングル形態で円柱状体10の外周面に接触する。すなわち、スクレーパ31A,31Bは、円柱状体10の外周面に接触するときに円柱状体10の回転方向の上流側に向かうにつれて円柱状体10の外周面に接近するように傾斜する姿勢を取る。リバースアングル形態を採用することにより、より低い接触圧での確実な掻き取り性能を達成できる。ブレード32A,32Bが円柱状体10の外周面に接触するとき、円柱状体10の長手方向における端部から見て、ブレード32A,32Bとブレード32A,32Bが接触する点における円柱状体10の外周面の接線とがなす角度θは、図1の状態(A)に示すように、鋭角側で60°以下であるようにすることが好ましい。また、より好ましくは鋭角側で15°以上45°以下の範囲がよい。
【0025】
本実施形態の除去対象物除去機能を有する回転装置20についてさらに詳しく説明する。図2は、スクレーパ31Aが待機位置にあってスクレーパ31Bが処理位置にあるときの断面図である。旋回軸部22としては中空のものすなわち管が使用され、管の内部が気体流通領域となっている。旋回軸部22の外周面には、気体流通領域と連通して気体流通領域内の気体を吹き出す噴出孔28が設けられている。噴出孔28は、スクレーパ31A、31Bが処理位置にあるときのブレード32A,32Bが円柱状体10の外周面と接触することによる接触線に向けて、図示直線の矢印で示すように、気体を吹き出すように形成されている。吹き出された気体は、ブレード32A,32Bによって円柱状体10の外周面から掻き取られた除去対象物をその場でブレード32A,32Bから吹き飛ばす。これにより、安定した掻き取り効果が継続的に得られることになる。
【0026】
また、スクレーパ31A,31Bは、図1に示すように、旋回軸部22の長手方向(すなわち円柱状体10の回転軸方向)に対して垂直な面で考えていずれも湾曲した断面を有する。スクレーパ31A,31Bについて、湾曲の内側を向いた面を内面と呼び、湾曲の外側を向いた面を背面と呼ぶ。処理位置におけるスクレーパ31A(31B)の安定した切り替わりを実現するために、一方のスクレーパ31A(31B)が接触位置にあるときに当該一方のスクレーパ31A(31B)の内面に他方のスクレーパ31B(31A)の背面が入り込むように、各スクレーパ31A,31Bの断面形状が規定されていることが好ましい。さらに、一方のスクレーパ31A(31B)の内面に他方のスクレーパ31B(31A)の背面が入り込んだときに当該背面を受けとめることができるように、各スクレーパ31A,31Bの内面には、受け止め部34が形成されている。
【0027】
ところで、本実施形態の回転装置20においては、回転している円柱状体10の外周面からの除去対象物の除去を行う際に、処理位置にあるスクレーパ31A,31Bが振動したり移動したりしないようにする必要があり、処理位置にスクレーパ31A,31Bを確実に固定する必要がある。交換位置及び待機位置についてもスクレーパ31A,31Bを固定する必要がある。停止位置についてもスクレーパ31A,31Bを固定できることが好ましい。その一方で、作業者がスクレーパ31A,31Bを旋回軸部22の周りで旋回させることができることも必要である。以下、スクレーパ31A,31Bを所定位置に固定し、かつスクレーパ31A,31Bを旋回させるための機構について説明する。既述の保持部33の基端部の外周面には凹部44が形成されている。また軸固定部23に対し機械的に固定されたプランジャー43が係止部として設けられており、プランジャー43は、その先端部が、突き出た状態では保持部33の凹部44に係合するように、保持部33に向かって凸没自在となるように構成されている。プランジャー43の先端部が突出する状態ではプランジャー43によって保持部33が固定され、プランジャー43の先端部が引き込まれた状態では保持部33が旋回軸部22の周りで旋回可能となる。図1ではスクレーパ31Aに接続する保持部33の凹部44に係合可能なプランジャー43のうち紙面手前側のプランジャー43が示されているが、旋回軸部22の奥側(紙面奥側)不図示)においても同様に、スクレーパ31Bに接続する保持部33が設けられ、保持部33の凹部44に係合可能なプランジャー43が設けられている。スクレーパ31Aに接続する保持部33では、凹部44は、スクレーパ31Aが処理位置、停止位置、交換位置及び待機位置の各々にあるときに凹部44がプランジャー43の先端部と向かい合うように、保持部33の基端部の外周面の4箇所に設けられている。スクレーパ31Bに接続する保持部33においても、同様に、凹部44は基端部の外周面の4箇所に形成されている。プランジャー43を保持部33に近接して配置しつつスクレーパ31A,31Bへの干渉を避けるために、凹部44は、保持部33の基端部の外周面においてスクレーパ31,31Bの旋回領域の外側、すなわち、旋回軸部22の両端部側に形成されていることが好ましい。保持部33の基端部の外周面の凹部44にプランジャー43の先端部が係合できるように構成することによって、スクレーパ31A,31Bを処理位置、停止位置、交換位置及び待機位置の各々において停止させることができる。そして、凹部44にプランジャー43の先端部が係合してスクレーパ31A(31b)が停止した状態から作業者が当該スクレーパ31A(31B)を旋回させようと力を加えると、プランジャー43の先端部が旋回軸部22側から離れるように縮むと共に凹部44の縁を乗り越えて保持部33の基端部の外周面に到達して、スクレーパ31A(31B)が旋回自在となる。
【0028】
プランジャー43と保持部33の基端部の外周面の凹部44とによってスクレーパ31A,31Bを所定位置に固定することができるが、本実施形態の除去対象物除去機能を有する回転装置20は、さらに、作業員がスクレーパ31A,31Bを旋回させるとともにスクレーパ31A,31Bをより確実に処理位置に固定するための機構を備えている。一方のスクレーパ31Aは、保持部33に接続して支持されているが、このうち、保持部33の基端部の外周面と、保持部33から最も離れて位置する保持部33の外周面との少なくとも一方に、スクレーパ31Aを旋回させるための棒状体41の一端を差し込むことが可能な窪み42が形成されている。同様に、他方のスクレーパ31Bに接続する保持部33の基端部の外周面と、保持部33から最も離れて位置するスクレーパ31Bに接続する保持部33の外周面との少なくとも一方、この例では両方に、スクレーパ31Bを旋回させるための棒状体41の一端を差し込むことが可能な窪み42が形成されている。作業者は、窪み42に棒状体41の一端を差し込んだ上で、棒状体41の他端をスクレーパ31A(31B)の旋回方向に動かすことで、プランジャー43の先端部を引き込ませてプランジャー43による保持部33の基端部の固定を解除し、スクレーパ31A,31Bを旋回させることができる。
【0029】
そして、待機位置から処理位置にスクレーパ31A,31Bを旋回させるとき、処理位置でスクレーパ31A,31Bを正確に停止させる必要がある。既述のようにプランジャー43及び凹部44からなる機構によりスクレーパ31A、31Bは処理位置にて停止可能となっているが、処理位置での確実な停止を確保することが好ましい。そこで、本実施形態の回転装置20では、旋回軸部22の長手方向に沿って延びるとともに旋回軸部22に対して上方側に離間した位置に、丸棒状のストッパー25が設けられている。そして、ストッパー25は、棒状体41を窪み42に差し込んでスクレーパ31A,31Bの一方を旋回させたとき、そのスクレーパ31A,31Bがちょうど処理位置となるときに棒状体41の先端側の側面がストッパー25の側面に当接することとなるような高さ位置に設けられている。ストッパー25は、当該ストッパー25の長手方向に沿って伸びる軸周りに回転できるように、その両端がそれぞれ端部板21に回転自在に取り付けられている。その結果、スクレーパ31A,31Bを待機位置から旋回させて処理位置に到達すると、プランジャー43の先端部が保持部33の基端部の凹部44に係合すると共に棒状体41がストッパー25に接触することにより、いわば二重の機構によりスクレーパ31A、31Bが処理位置にて確実に停止する。
【0030】
ここで、例えば、スクレーパ31Aが処理位置にあってスクレーパ31Bが待機位置にある状態からスクレーパ31Bを処理位置に旋回させることを考える。このとき、スクレーパ31Aは、スクレーパ31Bの旋回によって処理位置から押し出されなければならないが、棒状体41がストッパー25に接触することによって処理位置から停止位置への旋回ができない状態となっている。スクレーパ31Aが処理位置から旋回するためには、スクレーパ31Aに対応する保持部33の基端部の外周面に形成された窪み42から棒状体41の一端側を抜き取る必要がある。しかしながら、保持部33はワンウェイベアリングなどによって一方向にしか旋回しないように構成されており、このため、棒状体41がストッパー25に強く押圧されて窪み42から棒状体41を抜き取ることが難しくなっていることがある。ストッパー25の外周面においてスクレーパ31A,31Bの旋回を停止するために棒状体41が接触することとなる部位を接触部位と呼ぶことにする。本実施形態では、棒状体41を窪み42から引き抜くことを容易にするために、ストッパー25の外周面において接触部位からストッパー25の周方向に離間した位置に切欠き部45を形成している。ストッパー25に設けられたレバー26によって丸棒状のストッパー25をその長手方向の軸を中心にして回転させると、ストッパー25の接触部位においてストッパー25に接触していた棒状体41は、切欠き部45のためにストッパー25に接触しないようになる。切欠き部45のためにストッパー25には接触しない状態では、棒状体41は側面側から押圧されないので、容易に窪み42から取り外すことができる。
【0031】
したがって、スクレーパ31Aが処理位置にあってスクレーパ31Bが待機位置にある状態からスクレーパ31Bを処理位置に旋回させるためには、ストッパー25を回転させた上でスクレーパ31Aに対応する棒状体41を引き抜き、スクレーパ31Bに対応する棒状体41を旋回させてスクレーパ31Bを一旦接触位置まで旋回させ、次いで処理位置に移動させればよいことになる。スクレーパ31Aは、スクレーパ31Bによって処理位置から押し出されて停止位置まで旋回する。
【0032】
次に、上述した除去対象物除去機能を有する回転装置20を使用して行う微多孔膜の製造方法について説明する。微多孔膜としてポリオレフィン微多孔膜を製造する場合、まず、ポリオレフィン樹脂に流動パラフィンなどの希釈剤を添加して二軸押出機などによりこれらを溶融混練し、樹脂溶液を得る。そして、T型ダイなどの口金を用いて樹脂溶液を円柱状体10である冷却ロールの外周面にフィルム状に押出す。このとき、冷却ロールは、円柱状体10として、本実施形態の回転装置20により、その表面に残存している希釈剤などの除去対象物が除去されている。樹脂溶液を冷却ロールの外周面に向けて押し出すことで樹脂溶液が冷却し、シート状成形物が得られる。冷却ロールを回転させつつ除去対象物除去機能を有する回転装置20によって冷却ロールの外周面から希釈剤などの除去対象物を除去し、冷却ロールの除去対象物が除去された外周面に対して連続的に樹脂溶液を押し出すことによって、長尺のフィルムとしてシート状成形物が連続的に得られることになる。このシート状成形物を機械方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸し、その後、洗浄溶剤などを用いてシート状成形物から希釈剤を溶解除去することにより、ポリオレフィン微多孔膜のフィルムが得られる。
【0033】
また、上記除去対象物除去機能を有する回転装置20を用いてフィルムを製造する場合には、原料樹脂を口金から円柱状体10の表面に押し出して冷却して樹脂シートが形成される。従って、円柱状体10の表面には、原料樹脂に含まれる低分子量成分などが除去対象物として付着するので、本発明の除去対象物除去機能を有する回転装置20によって除去対象物が除去される。その後、冷却済の樹脂シートに対して延伸処理を行うことにより、フィルムが得られる。
【0034】
以上説明した本発明の除去対象物除去機能を有する回転装置20では、第1のスクレーパ31Aと第2のスクレーパ31Bとがその相互間の距離を変えながら旋回軸部22の周りを旋回できるので、これらのスクレーパ31A、31Bの旋回を制御することにより、円柱状体10の外周面におけるスクレーパ31A、31Bが接触する位置を実質的に変えることなく、更には円柱状体10にスクレーパ31A、31Bのいずれかが接触していない時間を介在させることなく、円柱状体10の外周面に一方のスクレーパ31A(31B)が接触している状態から他方のスクレーパ31B(31A)が接触している状態に瞬間的に切り替えることができる。そのため、円柱状体10の回転を停止させることなく、当該円柱状体10の外周面における除去対象物の除去を継続できる。すなわち、フィルムの製造においては、製造工程を止めることなく、安定した品質のフィルムを製造することが可能となる。従って、円柱状体10に接触していないスクレーパ31A(31B)についてはブレード32A(32B)の交換や清掃に十分な時間を宛てることができる。
【0035】
そして、上記のようにスクレーパ31A、31Bを交換するにあたって、これらスクレーパ31A、31Bの一方及び他方がそれぞれ接触位置及び処理位置に位置するとき、互いに重なり合うように各スクレーパ31A、31Bの形状を構成している。具体的には、一方のスクレーパ31A(31B)の内面に他方のスクレーパ31B(31A)の背面が入り込むと共に、一方のスクレーパ31A(31B)の内面に他方のスクレーパ31B(31A)の背面を受け止める受け止め部を設けている。そのため、スクレーパ31A,31Bが互いに接触して切り替えを速やかに行うことができる構成としながらも、当該接触に伴うスクレーパ31A(31B)の破損を抑制することができる。
【0036】
また、スクレーパ31Aを旋回軸部22に旋回自在に保持する構成33とスクレーパ31Bを旋回軸部22に旋回自在に保持する構成33について、旋回軸部22の長手方向に沿って交互に並ぶように配置している。そのため、これらスクレーパ31A、31Bに加わる応力がほぼ等しくなり、更に旋回軸部22の長手方向における前記応力の分布もほぼ等しくなる。従って、例えば一方のスクレーパ31Aによって冷却ロール上の除去対象物の掻き取り残しがあったとしても、他方のスクレーパ31Bにおいても同様の状態となる。そのため、スクレーパ31A、31Bの交換を行っても冷却ロール上の表面状態が変わることが抑制されるので、フィルムへの当該交換の影響が最小限に留められるか、あるいは影響がない。
【0037】
即ち、スクレーパ31A、31Bによって冷却ロール上の除去対象物を掻きとっているが、除去対象物を完全に掻きとっている場合もあるし、例えば冷却ロールに対するスクレーパ31A、31Bの接圧の大きさや冷却ロールの表面粗さによっては除去対象物をスクレーパ31A、31Bで掻きとっても極わずかに取り残している場合もある。そのような除去対象物を取り残している場合、冷却ロール上にて冷却される樹脂溶液は、その除去対象物を巻き込んだまま、以降の工程に進んでいく。従って、製品となるフィルムは、除去対象物を取り込んだ状態で物性が規格値内となるように各種工程上のパラメータが調整される。一方、そのような各種工程上のパラメータが調整された後で当該工程内の一部状態が変わると、具体的には冷却ロールにおいてスクレーパ31A、31Bによって掻きとる除去対象物の量が減ったり増えたりすると、その除去対象物を取り込んだ上で調整されていたフィルムの物性が変化してしまい、結果として製品が規格値を越えてしまう場合がある。言い換えると、冷却ロール上の除去対象物を完全に掻きとっても、ある程度取り残しがあったとしても、その掻き取り状態を継続しながらフィルムの製造を継続することが重要となっている。本発明では、スクレーパ31A、31Bの交換を行うとき、既述のように冷却ロールに加わる接圧がスクレーパ31A、31B間で揃うように、且つ長手方向においても当該応力の分布が揃うように、スクレーパ31A、31Bを保持する部材の配置を調整している。そのため、複数回あるいは多数回に亘ってスクレーパ31A、31Bを交換しても、製品への影響を抑えながら製造を継続できる。従って、例えば3000mあるいは6000m以上もの長尺品のフィルムを生産する場合についても、フィルムを特定の規格内に収めながら生産できる。
【0038】
以上のように冷却ロールの回転を止めることなくスクレーパ31A、31Bを交換するにあたって、スクレーパ31A、31Bは、冷却ロールの回転方向下流側に向かうにつれて寝るように傾斜されている。即ち、旋回軸部22の端部から見た時におけるスクレーパ31A、31Bに取り付けられるブレード32A、32Bとブレード32A、32Bが冷却ロールに接触する点における接線とがなす角度を15°以上45°以下となるように設定して、いわゆる「リバースアングル」形式にしている。この点について詳細に説明する。
【0039】
具体的には、スクレーパ31A、31Bについて、冷却ロールの回転方向上流側に向かうにつれて寝るように傾斜させた場合には、説明のために既述の図2を用いると、例えば円柱状体10を逆方向(時計回り)に回転させることになる。その場合には、スクレーパ31A、31Bの交換を行う時、これらスクレーパ31A、31B間の領域における除去対象物は、冷却ロールの回転に伴って除去されることなく回転方向下流側に流れていってしまう。一方、冷却ロールの回転方向と共にスクレーパ31A、31Bの旋回方向も図2と逆方向に設定することにより、スクレーパ31A、31B間の除去対象物の取りこぼしを防ぐことができると考えられる。しかしながら、処理位置におけるスクレーパ31A(31B)の交換を行って停止位置に旋回させるとき、当該スクレーパ31A(31B)は重力に逆らって上側に移動する必要があるので、そのような駆動系を装置に加える必要が生じ、装置の大型化につながってしまう。従って、本発明は、冷却ロールの表面を継続的に清掃するにあたって、リバースアングル方式を採ることによって現実的に実施可能な簡単な装置構成を実現している。
【0040】
ところで、ブレード32A、32Bに付着した除去対象物をそのままブレード32A、32B上に堆積させると、可塑剤に含まれている低分子樹脂成分が集合して固形化してしまう。このような固形分が生成すると冷却ロールの回転方向下流側に流れて行った場合には異物として樹脂溶液に取り込まれてしまうので、ブレード32A、32Bによって除去対象物を堰き止めた後、エアなどを吹き付けることによって直ぐに除去してしまうことが好ましい。一方、既述のように、本発明ではスクレーパ31A、31Bをそれぞれ独立して旋回自在に構成しており、その旋回領域内にはエア吹き出し用のノズルなどを配置できない。また、当該旋回領域の外側からエアをブレード32A、32Bに向かってエアを噴出させた場合には、本来不要な大流量でエアを吹き付けることになり、ランニングコストの増加につながってしまう。また、旋回軸部22の両端部のうち一方の端部から他方の端部に向かってエアを吹き付ける場合には、当該他方の端部側ではエアの流速を担保しにくくなってしまう。
【0041】
そこで、本発明では、スクレーパ31A、31Bを旋回させる旋回軸部22を中空に構成して気体通流領域を形成して、この旋回軸部22の中央部における噴出孔28からブレード32A、32Bに対して気体(エア)を吹き付けている。そのため、ブレード32A、32Bによって捕集した除去対象物(液体状の可塑剤及びこの可塑剤に溶け込んでいる樹脂成分)は、当該ブレード32A、32Bを臨む近接位置からエアが吹き付けられるので、速やかに系外(旋回軸部22の端部側)に排出され、固形状の異物の発生が抑制される。そして、旋回軸部22の中央からエアを吹き出していることから、旋回軸部22の端部からエアを吹き出す場合と比べて、除去対象物がブレード32A、32B上に留まる滞留時間をいわば半分に削減できるため、この点からも異物の発生を抑制できる。
【0042】
また、スクレーパ31A、31Bが各々停止する位置に対応させて保持部33の基端部の外周面に凹部44及び係止部としてプランジャー43を設けている。そのため、各々の位置にて各処理を確実に行うことができる。特に処理位置は、既に詳述したように、製品であるフィルムの特性にも関係する重要な管理項目であるところ、このように確実な位置決めを行っていることから、製品の品質の安定化を図ることができる。
【0043】
加えて、作業者がスクレーパ31A、31Bを旋回させる機構(棒状体41)を利用して、スクレーパ31A、31Bが処理位置に更に確実に停止する機能を設けている。具体的には、処理位置におけるスクレーパ31A、31Bと共に旋回する棒状体41に干渉してスクレーパ31A、31Bの旋回を停止させるためのストッパー25を設けている。そのため、既述の凹部44及びプランジャー43からなる機構に加えて、製品の品質の安定化につき更なる確実性を担保できる。
【0044】
以上の説明では、円柱状体10の外周面に付着した除去対象物を除去する例について説明したが、例えば円柱状体10の外周面を液体やインク、ビヒクルなどの塗工液を保持可能なメッシュやスクリーンなどの液保持部材で構成しておき、液保持部材を介して紙や布などの印刷対象物に印刷する印刷処理にも本発明を適用しても良い。その場合には、円柱状体10の外周面のうち一部分である液補充部位に対して塗工液が供給され、その液補充部位に対して円柱状体10の回転方向下流側にて2本のスクレーパ31A、31Bにて余剰な(液保持部材から染み出した)塗工液が取り除かれて、その後上記印刷対象物に対して良好に(液のにじみなどの発生が抑えられて)印刷処理が行われる。
【0045】
また、以上の説明では、スクレーパ装置が2つのスクレーパ31A、31Bを有する場合について説明したが、これらスクレーパ31A、31Bに加えて更に別の1以上のスクレーパ31を使用して、3つ以上のスクレーパにより除去対象物の除去を行っても良い。
【0046】
図3は、スクレーパ装置の別の例(1)を示す模式的側面図である。別の例(1)では、スクレーパ装置が3つのスクレーパ31A、31B、31Cを有している。この場合においても、1つのスクレーパは処理位置に保持されるとともに、残り2つのスクレーパは、例えば、交換位置や待機位置にそれぞれ位置している。
【0047】
また、以上の説明では、スクレーパを保持する保持機構として、固定され回転しない旋回軸部22が用いられ、旋回軸部22に対しスクレーパが旋回自在に取り付けられる構成について説明したが、スクレーパがそれを保持する部材と一体的に回転するようになっていてもよい。図4は、スクレーパ装置の別の例(2)を示す図である。このスクレーパ装置は、円柱体51と、この円柱体51の外周に同心円状に形成された中空円筒体52とを有している。円柱体51は中空であってもよい。また、スクレーパ31Aは、円柱体51と一体に形成されており、スクレーパ31Bは、中空円筒体52と一体に形成されている。円柱体51の両端部および中空円筒体52の両端は、円柱体51および中空円筒体52の回転軸を中心にこれらが回転可能に端部板に支持されている。したがって、スクレーパ31Aは、円柱体51とともに旋回可能となっており、スクレーパ31Bは、中空円筒体52とともに旋回可能となっている。そして、中空円筒体52は円柱体51に対して相対回転可能であるのでスクレーパ31Aとスクレーパ31Bとも相対回転可能となっている。
【0048】
また、以上の説明では、スクレーパ31A、31Bは旋回軸部22に旋回自在に保持されているが、スクレーパ31A、31Bは、旋回以外の移動をするように保持されていてもよい。図5に示すように、スクレーパ装置の別の例(3)においては、スクレーパ31A、31Bは、これらのスクレーパを保持する保持機構として構成されたガイド55に摺動可能に保持されている。ガイド55は、例えば、処理位置における円柱状体10の接線方向と平行に設置されており、スクレーパ31A、31Bは上方から処理位置に移動する。また、ガイド55には、スクレーパ31A、31Bを処理位置に保持するためのプランジャー43が備えられている。処理位置に保持されているスクレーパ31Aに対し、別のスクレーパ31Bが上方から接すると、スクレーパ31Bと円柱状体10との接触が開始されるとともに、スクレーパ31Aに対するプランジャー43の係止が外れ、スクレーパ31Aは下方に移動する。なお、ガイド55は、図5のように直線状であってもよいし、曲線部を有していてもよい。また、ガイド55は、スクレーパが下方から交換位置を介して上方に戻るようになっていてもよい。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例等によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[実施例1]
上述の実施形態に係るシート製造装置を用いて、微多孔ポリオレフィン樹脂シートの製膜を2週間行った。
(1)シート材料
微多孔ポリオレフィン樹脂シート材料となるポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、粘度1000Pa・sを使用した。ここで粘度は、せん断速度100/s、温度200℃の条件で、JIS K7117-2に規定する方法で測定したものである。希釈剤としては、流動パラフィン(LP)、動粘度51cSt(40℃・mm2/sのとき)を使用した。
(2)仕込み
シート材料を乾燥後、押出機に供給して希釈剤と共に溶融混錬した後、シート成型用の口金に供給した。また、口金に至るまでの装置温度は230℃に設定した。
(3)シート成型口金
スリット幅が300mmである口金を使用し、上記の溶融混練後の樹脂溶液を70kg/hrで吐出させた。なお樹脂溶液中のLP濃度は70質量%とし、49kg/hrがLPである。
(4)キャスト冷却装置
キャスト冷却装置の冷却ロールとして、表面が鏡面状のシート成型ロールを使用した。シート成型口金からシート状に押し出した後、ロール温度を35℃に設定したシート成型ロールの上でキャスト速度15m/minで成型した。
(5)スクレーパ
本発明を用いて図1の状態Aに示すように、なす角θが鋭角側で45°となるように接地した。また、除去対象物排出用エアは中央付近からブレードに吹き付けた。
(6)欠点検出
上記(1)~(5)の条件を採用し、上述の微多孔膜製造装置を用いて、得られた微多孔膜における欠点を透過方式の欠点検出器を使用して検出した。製膜流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の両方において寸法が10mm以上である欠点をスクレーパ起因で発生した異物欠点とした。
(7)結果
製造された幅1800mm×長さ2000m/本 の微多孔膜において、欠点の数の平均は0.03個/本 であった。上述の製膜期間内に管理値である製膜直近4本の欠点平均0.50個を2度超えたため、ブレードの切り替えを2回行った。切り替え時の欠点の数は、いずれも0個であり、製品製膜を止めることなくスクレーパの交換を行うことが出来た。
【0050】
[比較例1]
スクレーパの構成を変えたほかは実施例1と同様にして微多孔膜を製造した。具体的な樹脂シートの製造方法は以下の通りである。
(1)スクレーパ
に示す構成で、硬度70度のシリコーンゴムからなるスクレーパ46を設けた。なす角αが鋭角側で45°となるように設置した。また、除去対象物排出用エアは一方の端部から他方の端部に向かって吹き付けた。
(2)結果
製造された幅1800mm×長さ2000m/本 の微多孔膜において、欠点の数の平均は0.20個/本 であった。また、上述の製膜期間内に管理値である製膜直近4本の欠点平均0.50個を3度超えたため、微多孔膜製造装置を3回停止した。そのため、実施例1に比べて36hの生産ロスが発生した。
【符号の説明】
【0051】
10 円柱状体
11 支柱
20 回転装置
21 端部板
22 旋回軸部
23 軸固定部
24 気体導入部
25 ストッパー
26 レバー
27 供給孔
28 噴出孔
31A,31B スクレーパ
32A,32B ブレード
33 保持部
34 受け止め部
41 棒状体
42 窪み
43 プランジャー
44 凹部
45 切欠き部
46 スクレーパ(ドクターブレード)
51 円柱体
52 中空円筒体
55 ガイド
【0052】
本出願は、2019年9月27日出願の日本特許出願(特願2019-177759)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、回転軸の周りを回転可能な円柱状体の外周面に付着した除去対象物を除去するスクレーパ装置であって、円柱状体の回転を停止することなくブレードの交換を行うことができるいう効果を奏する。この効果を奏する本発明は、円柱状体の外周面に付着した付着物や余剰物を除去するために用いられるスクレーパ装置及び付着物や余剰物などの除去対象物除去機能を有する回転装置と、円柱状体の外周面から除去対象物物を除去する方法と、該方法を用いるフィルムの製造方法及び微多孔膜の製造方法とに関して有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6