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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】高分子化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240409BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20240409BHJP
   H01L 31/0445 20140101ALI20240409BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240409BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240409BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G61/12
H01L31/04 500
H01L31/04 530
H10K30/50
H10K30/40
H10K85/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020544045
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016872
(87)【国際公開番号】W WO2020218189
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019086501
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 崇
(72)【発明者】
【氏名】今西 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 紅里
(72)【発明者】
【氏名】田中 光
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/157782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、下記式(2)で表されるビチオフェン構造単位または下記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されていることを特徴とする高分子化合物。
【化1】

[式(1)中、T1、T2は、それぞれ独立に、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、B1、B2は、それぞれ独立に、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。]
【化2】

[式(2)中、Raは、Ra1または*-Ra2-O-Ra1を表す。Ra1は、炭素数6~30の炭化水素基を表し、Ra2は、炭素数1~5の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。
また、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~5の炭化水素基を表す。]
【化3】

[式(3)中、Rc、Rdは、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
1、T2が、それぞれ独立に、下記式(t)~式(t5)のいずれかで表される基である請求項1に記載の高分子化合物。
【化4】


[式(t)~式(t5)中、R 15 、R16は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、または*-Si(R183で表される基を表す。
17は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、*-Si(R183、*-O-R19、*-S-R20、*-CF3、またはハロゲン原子を表す。
n1は1~3の整数、n2は1または2、n3は1~5の整数をそれぞれ表し、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよい。
18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。
19、R20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。]
【請求項3】
1、B2が、それぞれ独立に、下記式(b1)~式(b3)のいずれかで表される基である請求項1または2に記載の高分子化合物。
【化5】

[式(b1)~式(b3)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
n4は0~2の整数、n5は0または1を表し、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。
*は、結合手を表し、左側の*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のベンゼン環に結合する結合手を表す。]
【請求項4】
ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物である請求項1~3のいずれかに記載の高分子化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の高分子化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
【請求項6】
請求項5に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項7】
有機薄膜太陽電池である請求項6に記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の有機電子デバイスを含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾビスチアゾール構造単位と、ビチオフェン構造単位またはシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されている高分子化合物、該高分子化合物を含む有機半導体材料、該有機半導体材料を含む有機電子デバイス、および該有機電子デバイスを含む太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機エレクトロニクス分野において最も重要な材料の1つであり、電子供与性のp型有機半導体材料や電子受容性のn型有機半導体材料に分類できる。こうしたp型有機半導体材料やn型有機半導体材料を適切に組合せることによって様々な半導体素子を製造できる。半導体素子は、例えば、電子と正孔が再結合して形成する励起子(エキシトン)の作用によって発光する有機エレクトロルミネッセンスや、光を電力に変換する有機薄膜太陽電池、電流や電圧を制御する有機薄膜トランジスタなどの有機電子デバイスに用いられている。有機電子デバイスに用いられる有機半導体材料の一例が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されている有機半導体材料は、特定のベンゾビスチアゾール骨格を有する構造単位を有する高分子化合物を含んでいる。
【0003】
ところで、有機電子デバイスの中でも有機薄膜太陽電池は、大気中への二酸化炭素放出がないため環境保全に有用であり、また簡単な構造で製造も容易であることから、需要が高まっている。有機薄膜太陽電池は、太陽光のエネルギーを電力に変換する効率(光電変換効率η)が高いことが望まれる。光電変換効率ηは、短絡電流密度(Jsc)と開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の積[η=Jsc×Voc×FF]で算出される値であり、光電変換効率ηを高めるには、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、または曲線因子(FF)のいずれかを向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/122321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電変換効率ηを決定するパラメータのうち、短絡電流密度(Jsc)は、有機半導体材料の分子の密度など有機電子デバイスを作製するときの製造プロセスに大きく影響を受け、開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)は、p型半導体とn型半導体の相分離状態や、有機半導体材料の分子構造に大きく影響を受けることが知られている。そこで有機半導体材料を構成する高分子化合物の分子構造を適正化すれば、開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の積[Voc×FF]を大きくすることができ、光電変換効率ηを高められると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、有機電子デバイスの光電変換効率ηを高めることができる高分子化合物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記高分子化合物を含む有機半導体材料、該有機半導体材料を含む有機電子デバイス、該有機電子デバイスを含む太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、下記式(2)で表されるビチオフェン構造単位または下記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されていることを特徴とする高分子化合物。
【化1】
[式(1)中、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、B1、B2は、それぞれ独立に、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。]
【化2】
[式(2)中、Raは、Ra1または*-Ra2-O-Ra1を表す。Ra1は、炭素数6~30の炭化水素基を表し、Ra2は、炭素数1~5の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。
また、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~5の炭化水素基を表す。]
【化3】
[式(3)中、Rc、Rdは、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。]
[2] T1、T2が、それぞれ独立に、下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基である[1]に記載の高分子化合物。
【化4】
[式(t1)~式(t5)中、R13、R14は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
15、R16は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、または*-Si(R183で表される基を表す。
17は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、*-Si(R183、*-O-R19、*-S-R20、*-CF3、またはハロゲン原子を表す。
n1は1~3の整数、n2は1または2、n3は1~5の整数をそれぞれ表し、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよい。
18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。
19、R20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。]
[3] B1、B2が、それぞれ独立に、下記式(b1)~式(b3)のいずれかで表される基である[1]または[2]に記載の高分子化合物。
【化5】
[式(b1)~式(b3)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
n4は0~2の整数、n5は0または1を表し、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。
*は、結合手を表し、左側の*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のベンゼン環に結合する結合手を表す。]
[4] ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物である[1]~[3]のいずれかに記載の高分子化合物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の高分子化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
[6] [5]に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
[7] 有機薄膜太陽電池である[6]に記載の有機電子デバイス。
[8] [7]に記載の有機電子デバイスを含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子化合物は、特定のベンゾビスチアゾール構造単位と、特定のビチオフェン構造単位または特定のシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されている。この高分子化合物を含む有機半導体材料を用いることによって、有機電子デバイスの光電変換効率ηを高めることができる。また、本発明によれば、上記高分子化合物を含む有機半導体材料、該有機半導体材料を含む有機電子デバイス、該有機電子デバイスを含む太陽電池モジュールを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、有機電子デバイスの光電変換効率ηを高めるために開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の積[Voc×FF]を大きくするには、高分子化合物の分子構造を、特定のベンゾビスチアゾール構造単位と、特定のビチオフェン構造単位または特定のシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されている構造とし、この高分子化合物を含む有機半導体材料を用いて有機電子デバイスを作製すればよいことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の高分子化合物は、下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、下記式(2)で表されるビチオフェン構造単位または下記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されている点に特徴を有する。
【0012】
【化6】
【0013】
上記式(1)中、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。また、B1、B2は、それぞれ独立に、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。
【0014】
【化7】
【0015】
上記式(2)中、Raは、Ra1または*-Ra2-O-Ra1を表す。Ra1は、炭素数6~30の炭化水素基を表し、Ra2は、炭素数1~5の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。また、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~5の炭化水素基を表す。
【0016】
【化8】
【0017】
上記式(3)中、Rc、Rdは、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
【0018】
上記高分子化合物は、分子構造が適正化されているため、有機電子デバイスの光電変換効率ηを決定付けるファクターのうち、有機半導体材料に影響を受ける開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の積[Voc×FF]を大きくすることができる。その結果、光電変換効率ηを高めることができ、しかも出力を安定させることができる。
【0019】
[ベンゾビスチアゾール構造単位]
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位では、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、チオフェン環であるか、チアゾール環であるか、フェニル基を表す。チオフェン環は、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよく、チアゾール環は、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよく、フェニル基は、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれも用いることができる。
【0020】
上記オルガノシリル基は、Si原子に1個以上の炭化水素基が置換した1価の基を意味するものとし、Si原子に置換する炭化水素基の数は、2個以上が好ましく、3個がさらに好ましい。
【0021】
上記T1、T2は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、製造が容易である観点からは、同一であることが好ましい。
【0022】
上記T1、T2は、それぞれ独立に、下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基が好ましい。即ち、上記T1、T2で表されるアルコキシ基としては下記式(t1)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるチオアルコキシ基としては下記式(t2)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるチオフェン環としては下記式(t3)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるチアゾール環としては下記式(t4)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるフェニル基としては下記式(t5)で表される基が好ましい。上記T1、T2が下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基であると、短波長の光を吸収することができるとともに、高い平面性を有することから効率的にπ-πスタッキングが形成されるため、光電変換効率ηをより一層高めることができる。
【0023】
【化9】
【0024】
上記式(t1)~式(t5)中、R13、R14は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。R15、R16は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、または*-Si(R183で表される基を表す。R17は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、*-Si(R183、*-O-R19、*-S-R20、*-CF3、またはハロゲン原子を表す。n1は1~3の整数、n2は1または2、n3は1~5の整数をそれぞれ表し、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよい。R18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。R19、R20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。*は、結合手を表す。
【0025】
上記式(t1)~式(t5)において、R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基としては、分岐を有する炭化水素基が好ましく、より好ましくは分岐鎖状飽和炭化水素基である。R13~R17で表される炭化水素基が分岐を有することにより、有機溶剤への溶解度を上げることができ、本発明の高分子化合物は適度な結晶性を得ることができる。
【0026】
上記R13~R17で表される炭化水素基の炭素数は、大きいほど有機溶剤への溶解度を向上させることができるが、大きくなり過ぎると後述するカップリング反応における反応性が低下するため、高分子化合物の合成が困難となる。そのためR13~R17で表される炭化水素基の炭素数は6~30が好ましく、より好ましくは8~25、更に好ましくは8~20、特に好ましくは8~16である。
【0027】
上記R13~R17で表される炭化水素基としては、具体的には、n-ヘキシル基等の炭素数6のアルキル基;n-ヘプチル基等の炭素数7のアルキル基;n-オクチル基、1-n-ブチルブチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等の炭素数8のアルキル基;n-ノニル基、1-n-プロピルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基等の炭素数9のアルキル基;n-デシル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-n-ブチルヘキシル基、2-n-ブチルヘキシル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基等の炭素数10のアルキル基;n-ウンデシル基、1-n-ブチルヘプチル基、2-n-ブチルヘプチル基、1-n-プロピルオクチル基、2-n-プロピルオクチル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基等の炭素数11のアルキル基;n-ドデシル基、1-n-ペンチルヘプチル基、2-n-ペンチルヘプチル基、1-n-ブチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、1-n-プロピルノニル基、2-n-プロピルノニル基等の炭素数12のアルキル基;n-トリデシル基、1-n-ペンチルオクチル基、2-n-ペンチルオクチル基、1-n-ブチルノニル基、2-n-ブチルノニル基、1-メチルドデシル基、2-メチルドデシル基等の炭素数13のアルキル基;n-テトラデシル基、1-n-ヘプチルヘプチル基、1-n-ヘキシルオクチル基、2-n-ヘキシルオクチル基、1-n-ペンチルノニル基、2-n-ペンチルノニル基等の炭素数14のアルキル基;n-ペンタデシル基、1-n-ヘプチルオクチル基、1-n-ヘキシルノニル基、2-n-ヘキシルノニル基等の炭素数15のアルキル基;n-ヘキサデシル基、2-n-ヘキシルデシル基、1-n-オクチルオクチル基、1-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘプチルノニル基等の炭素数16のアルキル基;n-ヘプタデシル基、1-n-オクチルノニル基等の炭素数17のアルキル基;n-オクタデシル基、1-n-ノニルノニル基等の炭素数18のアルキル基;n-ノナデシル基等の炭素数19のアルキル基;n-エイコシル基、2-n-オクチルドデシル基等の炭素数20のアルキル基;n-ヘンエイコシル基等の炭素数21のアルキル基;n-ドコシル基等の炭素数22のアルキル基;n-トリコシル基等の炭素数23のアルキル基;n-テトラコシル基、2-n-デシルテトラデシル基等の炭素数24のアルキル基;等が挙げられる。中でも、特に好ましくは2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、2-n-ヘキシルデシル基、2-n-オクチルドデシル基、2-n-デシルテトラデシル基である。R13~R17で表される炭化水素基が上記の基であると、本発明の高分子化合物は、有機溶剤への溶解度が向上し、適度な結晶性を有する。上記R13~R17で表される炭化水素基は、特に炭素数8~16の分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。
【0028】
上記式(t3)~式(t5)において、R15~R17で表される*-Si(R183の基におけるR18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。R15~R17が*-Si(R183で表される基であると、本発明の高分子化合物は、有機溶剤への溶解度が向上する。
【0029】
上記R17で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0030】
上記R18で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~18であり、より好ましくは1~8である。R18で表される脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-オクチルブチル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。R18で表される芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~8であり、より好ましくは6または7であり、特に好ましくは6である。R18で表される芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。中でも、R18としては、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは分岐を有する炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくはイソプロピル基である。
【0031】
複数のR18は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0032】
上記式(t3)~式(t5)において、R15~R17で表される*-Si(R183の基としては、具体的には、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソブチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等のアルキルシリル基;トリフェニルシリル基、tert-ブチルクロロジフェニルシリル基等のアリールシリル基;等が挙げられる。中でも、アルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基またはトリイソプロピルシリル基が特に好ましい。
【0033】
上記式(t5)において、R17で表される*-O-R19または*-S-R20の基におけるR19またはR20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表し、炭素数6~30の炭化水素基としては、上記R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基として例示した基を好ましく用いることができる。
【0034】
上記式(t3)において、複数のR15は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n1は1または2が好ましく、より好ましくは1である。
【0035】
上記式(t4)において、複数のR16は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n2は1が好ましい。
【0036】
上記式(t5)において、複数のR17は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n3は1~3の整数が好ましく、より好ましくは1または2であり、更に好ましくは1である。
【0037】
1、T2としては、電子供与性の基、或いは電子求引性の基を用いることができる。
【0038】
電子供与性の基としては、下記式(t1)~式(t3)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0039】
【化10】
【0040】
上記式(t1)~式(t3)中、*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のチアゾール環に結合する結合手を表す。
【0041】
上記R13~R15は、前記と同様の基を表す。n1は、上記と同義である。
【0042】
電子供与性基としては、上記式(1)で表される構造単位全体として平面性に優れる観点から、上記式(t1)または上記式(t3)で表される基がより好ましく、上記式(t3)で表される基がさらに好ましく、下記式(t3-1)~(t3-16)で表される基が特に好ましい。下記式(t3-1)~(t3-16)中、*は結合手を表す。
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
電子求引性の基としては、下記式(t4)または下記式(t5)で表される基が挙げられる。
【0046】
【化13】
【0047】
上記式(t4)、式(t5)中、*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のチアゾール環に結合する結合手を表す。
【0048】
上記R16、R17は、前記と同様の基を表す。n2、n3は、上記と同義である。
【0049】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位では、B1、B2は、それぞれ独立に、チオフェン環であるか、チアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。チオフェン環は、炭化水素基で置換されていてもよく、チアゾール環は、炭化水素基で置換されていてもよい。
【0050】
上記B1、B2は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、製造が容易である観点からは、同一であることが好ましい。
【0051】
上記B1、B2は、それぞれ独立に、下記式(b1)~式(b3)のいずれかで表される基が好ましい。即ち、上記B1、B2で表されるチオフェン環としては下記式(b1)で表される基が好ましく、上記B1、B2で表されるチアゾール環としては下記式(b2)で表される基が好ましく、上記B1、B2で表されるエチニレン基としては下記式(b3)で表される基が好ましい。上記B1、B2が下記式(b1)、式(b2)で表される基であると、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位全体として平面性に優れるとともに、得られる高分子化合物全体としても平面性に優れる。また、上記B1、B2が下記式(b1)、式(b2)で表される基であると、ベンゾビスチアゾール構造単位中でS原子とN原子の相互作用が生じ、平面性がさらに向上する。その結果、光電変換効率ηをより一層高めることができる。
【0052】
【化14】
【0053】
上記式(b1)~式(b3)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。n4は0~2の整数、n5は0または1を表し、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。*は、結合手を表し、左側の*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のベンゼン環に結合する結合手を表す。
【0054】
上記式(b1)、式(b2)において、R21、R22が炭素数6~30の炭化水素基であると、光電変換効率ηをより一層高められる可能性があるため好ましい。
【0055】
上記式(b1)、式(b2)において、R21、R22で表される炭素数6~30の炭化水素基としては、上記R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基として例示した基を好ましく用いることができる。
【0056】
上記式(b1)において、複数のR21は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n4は0または1が好ましく、より好ましくは0である。n4が0であると、ドナー-アクセプター型半導体ポリマーの形成が容易であるため好ましい。
【0057】
上記式(b2)において、n5は0が好ましい。n5が0であると、ドナー-アクセプター型半導体ポリマーの形成が容易であるため好ましい。
【0058】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位としては、具体的には、下記式(1-1)~式(1-48)で表される構造単位が挙げられる。
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
[ビチオフェン構造単位]
上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位では、Raは、Ra1または*-Ra2-O-Ra1を表す。
【0066】
a1は、炭素数6~30の炭化水素基を表し、Ra2は、炭素数1~5の炭化水素基を表す。
【0067】
上記Ra1で表される炭素数6~30の炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基または分岐を有する炭化水素基が挙げられ、分岐を有する炭化水素基が好ましく、より好ましくは分岐鎖状飽和炭化水素基である。Ra1で表される炭化水素基が分岐を有することにより、有機溶剤への溶解度を上げることができ、本発明の高分子化合物は適度な結晶性を得ることができる。
【0068】
上記Ra1で表される炭化水素基の炭素数は、大きいほど有機溶剤への溶解度を向上させることができるが、大きくなり過ぎると後述するカップリング反応における反応性が低下するため、高分子化合物の合成が困難となる。そのため上記Ra1で表される炭化水素基の炭素数は6~30が好ましく、より好ましくは8~25、更に好ましくは8~20、特に好ましくは8~16である。上記Ra1で表される炭化水素基としては、具体的には、上記R13~R17で表される炭化水素基として例示した基が挙げられる。好ましい基も同じである。
【0069】
上記Ra2で表される炭素数1~5の炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基または分岐を有する炭化水素基が挙げられ、直鎖状の炭化水素基が好ましい。Ra2で表される炭化水素基が直鎖状であることにより、分子の配列が規則的になり性能が向上する効果が考えられる。
【0070】
上記Ra2で表される炭化水素基の炭素数は、大きいほど有機溶剤への溶解度を向上させることができるが、大きくなり過ぎると後述するカップリング反応における反応性が低下するため、高分子化合物の合成が困難となる。そのため上記Ra2で表される炭化水素基の炭素数は1~5が好ましく、より好ましくは3~5、更に好ましくは4または5である。
【0071】
上記Ra2で表される炭素数1~5の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
【0072】
上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位では、上記Rbは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~5の炭化水素基を表す。
【0073】
上記Rbで表される炭素数1~5の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
【0074】
[シクロヘキサジチオフェンジオン構造単位]
上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位では、Rc、Rdは、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
【0075】
上記Rc、Rdで表される炭素数6~30の炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基または分岐を有する炭化水素基が挙げられ、分岐を有する炭化水素基が好ましく、より好ましくは分岐鎖状飽和炭化水素基である。Rc、Rdで表される炭化水素基が分岐を有することにより、有機溶剤への溶解度を上げることができ、本発明の高分子化合物は適度な結晶性を得ることができる。
【0076】
上記Rc、Rdで表される炭化水素基の炭素数は、大きいほど有機溶剤への溶解度を向上させることができるが、大きくなり過ぎると後述するカップリング反応における反応性が低下するため、高分子化合物の合成が困難となる。そのため上記Rc、Rdで表される炭化水素基の炭素数は6~30が好ましい。上記Rc、Rdで表される炭化水素基の炭素数はより好ましくは8以上であり、より好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、特に好ましくは16以下、最も好ましくは11以下である。
【0077】
上記Rc、Rdで表される炭化水素基としては、具体的には、上記R13~R17で表される炭化水素基として例示した基が挙げられる。好ましい基も同じである。
【0078】
本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、一般に、2000以上、500000以下であり、より好ましくは3000以上、200000以下である。本発明の高分子化合物の数平均分子量(Mn)は、一般に、2000以上、500000以下であり、より好ましくは3000以上、200000以下である。本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用い、標準試料としてポリスチレンを用いて作成した較正曲線に基づいて算出できる。
【0079】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位または上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されている高分子化合物を含む有機半導体材料を用いることによって、開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の積[Voc×FF]を大きくすることができるため、有機電子デバイスの光電変換効率ηを高めることができる。特に、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とが交互に配置されている高分子化合物よりも、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位とが交互に配置されている高分子化合物を含む有機半導体材料を用いた方が、有機電子デバイスの光電変換効率ηを一段と高めることができる。
【0080】
本発明の高分子化合物は、好ましくは、ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物である。ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物は、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが交互に配置された高分子化合物を意味する。ドナー性ユニットは、電子供与性の構造単位を意味し、アクセプター性ユニットは、電子受容性の構造単位を意味する。
【0081】
本発明には、上記高分子化合物を含む有機半導体材料も含まれる。上記高分子化合物含む有機半導体材料を、特にp型有機半導体材料として用いれば、p型有機半導体とn型有機半導体との間で容易に電荷分離を起こすことができ、有機電子デバイスの光電変換効率ηを高めることができる。
【0082】
本発明には、上記有機半導体材料を含む有機電子デバイスも含まれる。有機電子デバイスとしては、例えば、有機薄膜太陽電池が挙げられ、他には、有機ELデバイス、有機レーザー、有機フォトディテクタ、有機トランジスタ、有機センサーなどが挙げられる。上記有機薄膜太陽電池は、任意の用途に用いることができ、上記有機薄膜太陽電池を適用できる分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。
【0083】
本発明には、有機薄膜太陽電池である有機電子デバイスを含む太陽電池モジュールも含まれる。即ち、本発明には、基材上に上記有機薄膜太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。具体例を挙げると、基材として建材用板材を用いる場合、この板材の表面に有機薄膜太陽電池を設けることにより、太陽電池モジュールとして太陽電池パネルを作製できる。
【0084】
次に、本発明の高分子化合物を製造できる方法について説明する。
【0085】
本発明の高分子化合物は、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位または上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位とを、交互に配置することによって製造できる。上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位または上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位は、カップリング反応によって交互に配置できる。
【0086】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物は、例えば、WO2015/122321号に記載の方法で製造できる。
【0087】
上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位を有する化合物は、例えば、東京化成工業社製の「Dithieno[3,2-c:2’,3’-e]oxepine-4,6-dione(D4972)」などを原料として用い、Journal of the American Chemical Society,2012年出版、Vol.134、18427-18439頁に記載の方法で調製できる。
【0088】
上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位を有する化合物は、公知のものを用いることができ、例えば、Chem Shuttle社製の「1,3-dibromo-5,7-bis(2-ethylhexyl)benzo[1,2-c:4,5-c’]dithiophene-4,8-dione(184533)」などが入手できる。
【0089】
カップリング反応は、金属触媒の存在下、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位を有する化合物のハロゲン化物または上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位を有する化合物のハロゲン化物とを反応させることによって行うことができる。
【0090】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位を有する化合物のハロゲン化物とのモル比は、1:99~99:1の範囲が好ましく、20:80~80:20の範囲がより好ましく、40:60~60:40の範囲が更に好ましい。
【0091】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位を有する化合物のハロゲン化物とのモル比は、1:99~99:1の範囲が好ましく、20:80~80:20の範囲がより好ましく、40:60~60:40の範囲が更に好ましい。
【0092】
上記金属触媒としては、遷移金属触媒が好ましく、遷移金属触媒としては、例えば、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、鉄系触媒、銅系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒などが挙げられる。中でも、パラジウム系触媒が好ましい。パラジウム系触媒のパラジウムは、0価でも2価でもよい。
【0093】
上記パラジウム系触媒としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)、硫化パラジウム(II)、テルル化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)、セレン化パラジウム(II)、パラジウムシアニド(II)、パラジウムアセテート(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体、ジクロロ[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロ[2,5-ノルボルナジエン]パラジウム(II)、ジクロロビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)等が挙げられる。これらの触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。これらの中でも、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体が特に好ましい。
【0094】
上記カップリング反応の際には、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と金属触媒とのモル比[上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物:金属触媒]は、一般に、1:0.0001~1:0.5程度であり特に限定されないが、収率や反応効率の観点から1:0.001~1:0.3が好ましく、1:0.005~1:0.2がより好ましく、1:0.01~1:0.1がさらに好ましい。
【0095】
上記カップリング反応の際には、上記金属触媒に配位子を配位させてもよい。上記配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート、ビス(tert-ブチル)メチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニル(メチル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-ジフェニルホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノ-2’-メチルビフェニル、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1,2-ビスジフェニルホスフィノエチレン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、2,2’-ビピリジル、1,3-ジフェニルジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ジメチルジヒドロイミダゾリリデン、ジエチルジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、バトフェナントロリン等が挙げられる。上記配位子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。中でも、トリフェニルホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンが好ましい。
【0096】
上記カップリング反応の際に、上記金属触媒に上記配位子を配位させる場合、金属触媒と配位子とのモル比(金属触媒:配位子)は、一般に、1:0.5~1:10程度であり特に限定されないが、収率や反応効率の観点から1:1~1:8が好ましく、1:1~1:7がより好ましく、1:1~1:5がさらに好ましい。
【0097】
上記カップリング反応において、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、上記式(2)で表されるビチオフェン構造単位を有する化合物のハロゲン化物または上記式(3)で表されるシクロヘキサジチオフェンジオン構造単位を有する化合物のハロゲン化物とを反応させる溶媒としては、反応に影響を及ぼさない限り特に限定されず、従来公知の溶媒を用いることができる。
【0098】
本願は、2019年4月26日に出願された日本国特許出願第2019-86501号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2019-86501号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0100】
実施例で用いた測定方法は、下記の通りである。
【0101】
(NMRスペクトル測定)
化合物について、NMRスペクトル測定装置(Agilent製(旧Varian製)の「400MR」を用いて、NMRスペクトル測定を行った。
【0102】
(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))
化合物について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量測定を行った。測定に際しては、化合物を0.5g/Lの濃度となるように移動相溶媒(クロロホルム)に溶解し、下記条件で測定を行い、ポリスチレンを標準試料として作成した較正曲線に基づいて換算することによって、化合物の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を算出した。測定におけるGPC条件は、下記の通りである。
移動相:クロロホルム流速は0.6mL/min
装置 :HLC-8320GPC(東ソー製)
カラム:TSKgel(登録商標)、SuperHM-H’2 + TSKgel(登録商標)、SuperH2000(東ソー製)
【0103】
(合成例1)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-HDTH)の合成
300mLフラスコに2,6-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-DI、5.2g、11.7mmol)、トリブチル[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]スタンナン(HDT-Sn、23.2g、38.6mmol)、トリス(2-フリル)ホスフィン(443mg、1.87mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(490mg、0.47mol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(115mL)を加えて120℃で23時間反応した。反応終了後、室温まで冷却した後に水を加えクロロホルムで2回抽出して、有機層を水洗した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-HDTH)が5.62g、薄黄色固体として得られた(収率60%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.39 (s, 2H), 7.53 (d, J= 3.6 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 2.81 (m, 4H), 1.66 (m, 2H), 1.37-1.24 (m, 48H), 0.90 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 6H).
【0104】
【化21】
【0105】
(合成例2)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DI-DBTH-HDTH)の合成
100mLフラスコに、上記合成例1で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-HDTH、4g、4.97mmol)と、テトラヒドロフラン(80mL)を加えて-40℃に冷却した後にリチウムジイソプロピルアミド(2M溶液、5.5mL、10.9mmol)を滴下して30分攪拌した。次いで、ヨウ素(3.8g、14.9mol)を加えた後に室温で2時間反応した。反応終了後、10質量%亜硫酸水素ナトリウムを加えクロロホルムで抽出して、得られた有機層を飽和重曹水、次いで飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DI-DBTH-HDTH)が2.66g、黄色固体として得られた(収率51%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.53 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 2.80 (m, 4H), 1.70 (m, 2H), 1.36-1.24 (m, 48H), 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.86 (t, J= 6.4 Hz, 6H).
【0106】
【化22】
【0107】
(合成例3)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジチオフェン-2-イル-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH)の合成
50mLフラスコに、上記合成例2で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DI-DBTH-HDTH、1.1g、1.04mmol)と、トリブチルチオフェン-2-イル-スタンナン(830μL、2.60mmol)、トリス(2-フリル)ホスフィン(40mg、0.17mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(45mg、0.04mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(22mL)を加えて80℃で19時間反応した。反応終了後、室温まで冷却した後に水を加えクロロホルムで2回抽出して、有機層を水洗した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1~クロロホルム)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジチオフェン-2-イル-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH)が1.01g、黄色固体として得られた(収率100%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.00 (dd, J = 4.0, 0.8 Hz, 2H), 7.58 (dd, J = 5.2, 0.8 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 7.27 (dd, J = 5.2, 4.0 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 2.81 (m, 4H), 1.72 (m, 2H), 1.34-1.25 (m, 48H), 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 12H).
【0108】
【化23】
【0109】
(合成例4)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM)の合成
30mLフラスコに、上記合成例3で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジチオフェン-2-イル-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH、700mg、0.72mmol)と、テトラヒドロフラン(14mL)を加え-50℃に冷却してリチウムジイソプロピルアミド(2M溶液、0.79mL、1.58mmol)を滴下して30分攪拌した。その後、トリメチルすずクロリド(1M溶液、16mL、1.58mmol)を加え室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、水を加えトルエンで2回抽出して、有機層を水洗した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をGPC-HPLC(JAIGEL-1H、2H、クロロホルム)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM)が518mg、黄色固体として得られた(収率55%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.16 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 6.82 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 2.82 (m, 4H), 1.71 (m, 2H), 1.35-1.25 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.87 (t, J= 6.4 Hz, 6H), 0.47 (s, 18H).
【0110】
【化24】
【0111】
(実施例1)
P-THDT-DBTH-EH-BTDの合成
20mLフラスコに、上記合成例4で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM、100mg、0.08mmol)と、Chem Shuttle社製の1,3-ジブロモ-5,7-ビス(2-エチルヘキシル)ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジチオフェン-4,8-ジオン(EH-BTD-DB、47mg、0.08mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(3mg、2.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(5mg、13.3μmol)、およびクロロベンゼン(7mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(50mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取し、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いで、クロロホルムを用いてソックスレー抽出し、P-THDT-DBTH-EH-BTDを90mg、黒色固体として得た(収率90%)。得られた黒色固体について、GPCを用いて分子量測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は13800、重量平均分子量(Mw)は22900であった。
【0112】
【化25】
【0113】
(p型半導体化合物とn型半導体化合物との混合溶液1の作製)
p型半導体化合物として、上記実施例1で得られたP-THDT-DBTH-EH-BTDの構造を有する高分子化合物を用い、n型半導体化合物として、PC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン製、NS-E100H)を用い、p型半導体化合物とn型半導体化合物の質量比を1:1.5とし、ジフェニルエーテル(0.03mL/mL)と共にクロロベンゼンに溶解させた。p型半導体化合物とn型半導体化合物の合計濃度は2.0質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型半導体化合物とn型半導体化合物との混合溶液1を作製した。
【0114】
(実施例2)
P-THDT-DBTH-HD-BTIの合成
20mLフラスコに、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM、70mg、0.05mmol)、2,8-ジブロモ-5-(2-ヘキシルデシル)-1,9-ジチア-5-アザ-シクロペンタ[e]アズレン-4,6-ジオン(HD-BTI-DB、34mg、0.05mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(2mg、2.2μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(3mg、8.7μmol)、およびクロロベンゼン(7mL)を加え130℃で24時間反応した。なお、上記HD-BTI-DBは、東京化成工業社製の「Dithieno[3,2-c:2’,3’-e]oxepine-4,6-dione(D4972)」を原料とし、Journal of the American Chemical Society,2012年出版、Vol.134、18427-18439頁に記載の方法に基づいて調製した。
【0115】
反応終了後、メタノール(20mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取し、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いで、クロロホルムを用いてソックスレー抽出し、P-THDT-DBTH-HD-BTIを67mg、黒色固体として得た(収率86%)。得られた黒色固体について、GPCを用いて分子量測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は33500、重量平均分子量(Mw)は77400であった。
【0116】
【化26】
【0117】
(p型半導体化合物とn型半導体化合物との混合溶液2の作製)
p型半導体化合物として、上記実施例2で得られたP-THDT-DBTH-HD-BTIの構造を有する高分子化合物を用い、n型半導体化合物として、PC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン製、NS-E100H)を用い、p型半導体化合物とn型半導体化合物の質量比を1:1.5としてクロロベンゼンに溶解させた。p型半導体化合物とn型半導体化合物の合計濃度は2.0質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型半導体化合物とn型半導体化合物との混合溶液2を作製した。
【0118】
(光電変換素子の作製)
電極となる酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたジオマテック社製のガラス基板を、アセトンによる超音波洗浄し、次いでエタノールによる超音波洗浄した後、窒素ブローで乾燥させた。乾燥したガラス基板にUV-オゾン処理を実施した後、電子輸送層を形成した。電子輸送層は、ガラス基板に、0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2-メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm、40秒)した後、175℃で30分間アニールして形成した。電子輸送層を形成したガラス基板をグローブボックス内に搬入し、不活性ガス雰囲気下でp型半導体化合物とn型半導体化合物との混合溶液1または混合溶液2をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施し、活性層を形成した。次に、蒸着機にて、ホール輸送層である酸化モリブデンを蒸着した。その後、電極(アノード)である銀を蒸着して逆型構成デバイスを作製した。
【0119】
得られた逆型構成デバイスについて、光電変換素子の評価を下記手順でソーラーシミュレーターを用いて行った。
【0120】
(光電変換素子の評価方法)
光電変換素子に0.05027mm角のメタルマスクを付け、照射光源としてソーラーシミュレーター(OTENTO-SUNIII、AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm2、分光計器製)を用い、ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)により、ITO電極と銀電極との間における電流-電圧特性を測定した。この測定結果から、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、Voc×FFの値、および光電変換効率η(%)を算出した。短絡電流密度Jscとは、電圧値が0Vのときの電流密度である。開放電圧Vocとは、電流値が0mA/cm2のときの電圧値である。曲線因子FFとは、内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF=Pmax/(Voc×Jsc)
光電変換効率ηは、次式で表される。
η=Jsc×Voc×FF
【0121】
その結果、上記混合溶液1を用いて作製した逆型構成デバイスは、Jsc(短絡電流密度)が5.31mA/cm2、Voc(開放電圧)が0.96V、FF(曲線因子)が0.60であり、Voc×FFの値は0.576であった。また、光電変換効率ηは3.06%であった。一方、上記混合溶液2を用いて作製した逆型構成デバイスは、Jsc(短絡電流密度)が10.26mA/cm2、Voc(開放電圧)が0.81V、FF(曲線因子)が0.70であり、Voc×FFの値は0.567であった。また、光電変換効率ηは5.82%であった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の高分子化合物を含む有機半導体材料を有機電子デバイスに用いれば、有機電子デバイスの開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の積[Voc×FF]を大きくすることができるため、光電変換効率ηを高めることができる。従って有機薄膜太陽電池などの有機電子デバイスの光電変換効率ηを高めることができる。