IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

<>
  • 特許-自覚式検眼装置 図1
  • 特許-自覚式検眼装置 図2
  • 特許-自覚式検眼装置 図3
  • 特許-自覚式検眼装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61B3/028
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020553934
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042353
(87)【国際公開番号】W WO2020090811
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018206100
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】平山 幸人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真也
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊洋
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143571(JP,A)
【文献】特表2018-509983(JP,A)
【文献】国際公開第2004/034893(WO,A1)
【文献】特表2018-528452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の光学特性の自覚的検査に用いられる自覚式検眼装置であって、
各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現するライトフィールドディスプレイと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記自覚的検査が実行される際に、前記被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互に前記ライトフィールドディスプレイに出力させると共に、
前記ライトフィールドディスプレイに出力させる前記視標画像の前記特徴値のピッチ、および、前記視標画像の数の少なくともいずれかを変更し、
同一の被検眼に対する一連の前記自覚的検査において、前記ライトフィールドディスプレイに前記視標画像の出力動作を複数回実行させる場合に、少なくとも最後の出力動作において出力させる前記視標画像の数を、最初の出力動作において出力させる前記視標画像の数よりも少なくすることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自覚式検眼装置であって、
前記制御部は、
同一の被検眼に対する一連の前記自覚的検査において、前記ライトフィールドディスプレイに前記視標画像の出力動作を複数回実行させる場合に、少なくとも最後の出力動作における前記特徴値のピッチを、最初の出力動作における前記特徴値のピッチよりも小さくすることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自覚式検眼装置であって、
前記制御部は、
前記自覚的検査が実行される際に、前記被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互に前記ライトフィールドディスプレイに出力させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の自覚式検眼装置であって、
前記制御部は、
前記自覚的検査が実行される際に、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互に前記ライトフィールドディスプレイに出力させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性の自覚的検査に用いられる自覚式検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の光学特性の自覚的検査は、視標を見た被検者の応答結果に基づいて行われる検査である。例えば、特許文献1に記載の自覚式検眼装置では、屈折度の矯正が可能な矯正光学系が被検眼の眼前に個別に配置されており、矯正光学系を介して視標が被検眼の眼底へ投光される。また、特許文献2に記載の自覚式検眼装置では、矯正光学系を介した視標の像が、被検眼の眼前に形成されるので、被検眼の眼前には矯正光学系が配置されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-176893号公報
【文献】特開2018-38788号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1,2に例示される自覚式検眼装置では、被検眼への視標の呈示、被検者の応答結果に応じた矯正光学系の調整、および視標の再呈示という一連の検査サイクルが繰り返される。従来の自覚式検眼装置では、上記の検査サイクルが実行される頻度を減少させることは困難であった。
【0005】
そこで、本願の発明者は、ライトフィールドディスプレイ(以下、「LFD」という場合もある)を利用した自覚式検眼装置について検討を行った。LFDは、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現することができる。LFDを用いると、例えば、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互に被検眼に呈示することも可能であると考えられる。また、LFDは、円柱度数の矯正量等を調整した複数の視標画像を被検眼に呈示することもできると考えられる。従って、LFDを備えた自覚式検眼装置によると、従来に比べて検査の工数が減少する可能性がある。
【0006】
しかし、LFDは方向毎に異なる光を出射するので、複数の視標画像の光が同時に、または交互に被検眼に入射し得る。従って、複数の視標画像を適切にLFDに出力させなければ、自覚的検査が適切に行われない可能性がある。例えば、状況によっては、被検者が複数の視標画像の識別をし辛くなる場合、または、目的とする精度で検査結果を取得することが困難となる場合等があり得る。
【0007】
本開示の典型的な目的は、被検眼の光学特性の自覚的検査を、ライトフィールドディスプレイを用いて適切に実行することが可能な自覚式検眼装置を提供することである。
【0008】
本開示における典型的な実施形態が提供する自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性の自覚的検査に用いられる自覚式検眼装置であって、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現するライトフィールドディスプレイと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記自覚的検査が実行される際に、前記被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互に前記ライトフィールドディスプレイに出力させると共に、前記ライトフィールドディスプレイに出力させる前記視標画像の前記特徴値のピッチ、および、前記視標画像の数の少なくともいずれかを変更し、同一の被検眼に対する一連の前記自覚的検査において、前記ライトフィールドディスプレイに前記視標画像の出力動作を複数回実行させる場合に、少なくとも最後の出力動作において出力させる前記視標画像の数を、最初の出力動作において出力させる前記視標画像の数よりも少なくする
【0009】
本開示に係る自覚式検眼装置によると、被検眼の光学特性の自覚的検査を、ライトフィールドディスプレイを用いて適切に実行することができる。
【0010】
本開示で例示する自覚式検眼装置は、ライトフィールドディスプレイ(以下、「LFD」という場合もある)、および制御部を備える。LFDは、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFDは、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFDは、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。例えば、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像をLFDが出力した場合、被検者は、複数の画像のうち、被検眼の球面度数に対応する呈示距離に呈示された画像を観測することができる。
【0011】
制御部は、自覚的検査が実行される際に、被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が異なる複数の視標画像を、同時に、または交互にLFDに出力させることができる。制御部は、LFDに出力させる視標画像の特徴値のピッチ、および、視標画像の数の少なくともいずれかを変更する。なお、本開示における特徴値のピッチとは、LFDが出力する複数の視標画像の各々の特徴値のうち、値が隣接する2つの特徴値の差の最小値である。
【0012】
特徴値のピッチを小さくすると、被検者は、出力される複数の視標画像を区別し辛くなるが、被検眼の光学特性を細かい精度で検査することができる。一方で、特徴値のピッチを大きくすると、被検眼の光学特性の検査精度は粗くなるが、被検者は視標画像を区別しやすい。また、同時または交互に出力する視標画像の数を多くすると、被検者は複数の視標画像を区別し辛くなるが、広い範囲で効率よく光学特性の検査を行うことができる。従って、本開示で例示する自覚式検眼装置によると、視標画像における特徴値のピッチ、および、出力する視標画像の数の少なくともいずれかを、検査の進行状況または検査内容等に応じて変更することで、LFDを用いた自覚的検査をより適切に実行することができる。
【0013】
制御部は、同一の被検眼に対する一連の自覚的検査において、LFDに視標画像の出力動作を複数回実行させる場合に、少なくとも最後の出力動作における特徴値のピッチを、最初の出力動作における特徴値のピッチよりも小さくしてもよい。この場合、一連の自覚的検査の最初の段階では、被検眼の光学特性が大まかに把握される。その後、一連の自覚的検査の最後の段階では、最初のピッチよりも小さいピッチによって、被検眼の光学特性が細かい精度で検査される。従って、検査結果が、細かい精度で効率よく得られ易い。
【0014】
また、制御部は、検査の進行状況と共に、または検査の進行状況の代わりに、検査内容に応じて特徴値のピッチおよび視標画像数の少なくともいずれかを変更してもよい。例えば、小児の光学特性の検査(例えば弱視検査等)は、大人の光学特性の検査に比べて、検査結果の精度の細かさを必要としない場合もある。従って、制御部は、小児の光学特性の自覚的検査を行う場合の特徴値のピッチを、大人の光学特性の自覚的検査を行う場合の特徴値のピッチよりも大きくしてもよい。また、健康診断における光学特性の検査は、眼鏡またはコンタクトレンズを作成する際の光学特性の検査に比べて、検査結果の精度の細かさを必要としない場合もある。従って、制御部は、健康診断における特徴値のピッチを、眼鏡またはコンタクトレンズを作成する際の特徴値のピッチよりも大きくしてもよい。また、他の方法で特徴値のピッチを変更することも可能である。例えば、制御部は、検者から入力された指示に応じて特徴値のピッチを変更してもよいことは言うまでもない。
【0015】
制御部は、同一の被検眼に対する一連の自覚的検査において、LFDに視標画像の出力動作を複数回実行させる場合に、少なくとも最後の出力動作において出力させる視標画像の数(以下、「出力画像数」という場合もある)を、最初の出力動作における出力画像数よりも少なくしてもよい。この場合、一連の自覚的検査の最初の段階では、多くの視標画像を用いて大まかに被検眼の光学特性が把握される。その後、一連の自覚的検査の最後の段階では、最初の出力画像数よりも少ない視標画像によって、被検眼の光学特性がより高い精度で検査される。従って、検査結果が、高い精度で効率よく得られ易い。
【0016】
また、制御部は、検査の進行状況と共に、または検査の進行状況の代わりに、検査内容に応じて出力画像数を変更してもよい。例えば、制御部は、前述したような理由から、小児の光学特性の自覚的検査を行う場合の出力画像数を、大人の光学特性の自覚的検査を行う場合の出力画像数よりも少なくしてもよい。また、制御部は、健康診断における出力画像数を、眼鏡またはコンタクトレンズを作成する際の出力画像数よりも少なくしてもよい。また、他の方法で出力画像数を変更することも可能である。例えば、制御部は、検者から入力された指示に応じて出力画像数を変更してもよいことは言うまでもない。
【0017】
制御部は、自覚的検査が実行される際に、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互にLFDに出力させてもよい。被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時にまたは交互にLFDに出力させると、被検眼の球面度数に応じて、呈示された複数の視標画像の各々の見え方が異なる。従って、被検者の球面度数の検査が適切に行われる。
【0018】
制御部は、二次元の領域内の同一の領域に、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を同時にLFDに呈示させてもよい。複数の視標画像が互いに重複しないように、別々の領域に複数の視標画像を呈示させると、視標画像毎に被検眼の調節力が働きやすくなってしまい、球面度数の検査に影響が出てしまう可能性がある。自覚式検眼装置は、呈示距離が異なる複数の視標画像を同一の領域に同時に呈示することで、被検眼の調節力によって検査の精度が悪化することを抑制することができる。
【0019】
ただし、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像の出力方法を変更することも可能である。例えば、制御部は、二次元の領域内の同一の領域に、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、時間的に交互に呈示させてもよい。前述したように、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同一の領域に同時に呈示すると、複数の視標画像間の呈示距離のピッチ等によっては、複数の視標画像が重なった状態で被検眼によって視認されてしまい、視標画像がぼけてしまう可能性もある。複数の視標画像を交互に呈示させることで、複数の視標画像が重なって視認されてしまうことが抑制される。また、後述するように、制御部は、二次元の領域内の別々の領域に、複数の視標画像の各々を呈示させてもよい。
【0020】
制御部は、自覚的検査が実行される際に、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかが互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互にLFDに出力させてもよい。この場合、被検眼の乱視に関する自覚的検査が、効率よく適切に実行される。
【0021】
制御部は、完全には互いに重複しない複数の領域の各々に、複数の視標画像を別々にLFDに呈示させてもよい。この場合、被検眼の光学特性(例えば、球面度数の検査、または乱視の検査等)の自覚的検査が、同時または交互に呈示される複数の視標画像を用いて円滑に実行される。なお、複数の視標画像を別々の領域に呈示する場合には、複数の視標画像が重なって被検眼に視認されてしまう可能性が低下する。
【0022】
なお、複数の領域に別々に呈示される複数の視標画像は、被検眼への呈示距離が異なる視標画像であってもよいし、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかが異なる視標画像であってもよい。また、複数の領域に別々に呈示される複数の視標画像は、複数の領域に同時に(つまり、並行して)表示されてもよいし、複数の領域の各々に交互に表示されてもよい。また、本開示における「交互に」とは、同一の視標画像を、少なくともいずれかの特徴値を連続的に変化させてLFDに出力される場合も含む。
【0023】
LFDは、画像源とマイクロレンズアレイを備えていてもよい。画像源は、二次元の方向に並べられた複数の画素を有する。マイクロレンズアレイは、画像源よりも被検眼側に配置されており、二次元の方向に並べられた複数のマイクロレンズを有する。マイクロレンズは、画像源における複数の画素を含む画素集合単位に対応して設けられる。制御部は、マイクロレンズの焦点距離を変更してもよい。マイクロレンズの焦点距離を長くすると、設定可能な視標画像の特徴値の最大幅は小さくなるが、特徴値のピッチをより細かく設定することができる。逆に、マイクロレンズの焦点距離を短くすると、特徴値の最小ピッチは大きくなってしまうが、設定可能な特徴値の最大幅は大きくなる。従って、制御部は、マイクロレンズの焦点距離を変更することで、特徴値が異なる複数の視標画像を適切にLFDに出力させることができる。
【0024】
なお、マイクロレンズの焦点距離を変更するための具体的方法は、適宜選択できる。例えば、焦点距離を変更することが可能な液晶レンズがマイクロレンズとして使用されていてもよい。この場合、制御部は、液晶レンズを駆動して焦点距離を変更してもよい。また、制御部は、アクチュエータ等を駆動し、マイクロレンズの焦点距離が互いに異なる複数のマイクロレンズアレイを入れ替えることで、マイクロレンズの焦点距離を変更してもよい。また、マイクロレンズアレイは、ユーザによって入れ替え可能な状態で設けられていてもよい。この場合、ユーザは、マイクロレンズの焦点距離が異なる複数のマイクロレンズアレイを入れ替えることで、特徴値のピッチ等を変更することができる。
【0025】
LFDは、前述した画像源と微小素子アレイを備えていてもよい。微小素子アレイは、画像源よりも被検眼側に配置されており、二次元の方向に並べられた複数の微小素子を有する。微小素子は、画像源における複数の画素を含む画素集合単位に対応して設けられる。制御部は、微小素子アレイと画像源の間の距離を変更してもよい。微小素子アレイと画像源の間の距離を長くすると、設定可能な視標画像の特徴値の最大幅は小さくなるが、特徴値のピッチをより細かく設定することができる。逆に、微小素子アレイと画像源の間の距離を短くすると、特徴値の最小ピッチは大きくなってしまうが、設定可能な特徴値の最大幅は大きくなる。従って、制御部は、微小素子アレイと画像源の間の距離を変更することで、特徴値が異なる複数の視標画像を適切にLFDに出力させることができる。
【0026】
なお、微小素子アレイが備える複数の微小素子は、例えば、レンズ(マイクロレンズ)、ピンホール(マイクロホール)、回折素子、偏光素子、屈折素子等のいずれであってもよい。また、微小素子アレイと画像源の間の距離を変更するための具体的方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、アクチュエータ等を駆動し、微小素子アレイと画像源の少なくともいずれかを移動させることで、距離を変更してもよい。また、微小素子アレイと画像源の少なくともいずれかがユーザによって移動されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】自覚式検眼装置1の概略構成を示す図である。
図2】被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像をLFDが出力している場合の一部の光線の状態を、模式的に示す図である。
図3】自覚式検眼装置1が実行する球面度数検査処理のフローチャートである。
図4】自覚式検眼装置1が実行する乱視検査処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(概略構成)
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態の自覚式検眼装置1の概略構成について説明する。自覚式検眼装置1は、ライトフィールドディスプレイ(LFD)2、制御ユニット5、および操作部6を備える。一例として、本実施形態の自覚式検眼装置1では、LFD2、制御ユニット5、および操作部6等の複数の構成が、1つの筐体内に設けられている。しかし、自覚式検眼装置では、LFD2および制御ユニット5等の複数の構成のうち、少なくとも2つ以上の構成が、別々の筐体(別々のデバイス)に設けられていてもよい。
【0029】
LFD2について説明する。LFD2は、各々の画素集合単位(詳細は後述する)から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFD2は、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFD2は、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。
【0030】
例えば、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像をLFD2が出力した場合、被検者は、複数の画像のうち、被検眼の球面度数に対応する呈示距離に呈示された画像を観測することができる。また、被検眼の乱視度数および乱視軸の方向に応じて、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向が適切に設定された画像をLFD2が出力した場合、被検者は、乱視の影響が抑制された状態で、呈示された画像を観測することができる。
【0031】
現在、光線を再現する方式が互いに異なる複数種類のLFDが提案されている。LFDの方式には、例えば、微小素子アレイ方式、複数ディスプレイ方式、およびバリア基盤方式等がある。
【0032】
微小素子アレイ方式のLFDは、画像源(例えばディスプレイ等)の正面側(画像を視認するユーザ側)に微小素子アレイを備える。微小素子アレイとは、複数の画素集合単位の各々に対応して設けられる複数の微小素子が、二次元上に並べて(例えば格子状に)配置された光学部材である。微小素子アレイには、例えば、複数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイ、複数のマイクロホールを備えるマイクロホールアレイ、複数の回折素子を備える回折素子アレイ、複数の偏光素子を備える偏光素子アレイ、および、複数の屈折素子を備える屈折素子アレイ等の少なくともいずれかを採用できる。
【0033】
また、複数ディスプレイ方式のLFDでは、複数のディスプレイがスタック状に組み合わされている。複数ディスプレイ方式のLFDには、例えばテンソルディスプレイ等がある。バリア基盤方式のLFDでは、細かいスリットが形成されたバリア基盤が、画像源(例えばディスプレイ等)の背面側(画像を視認するユーザ側の反対側)に設けられている。なお、LFDの構成は、画素からの光を被検眼に向けて出射する構成でもよいし、スクリーンに画素を投影する構成でもよい。また、LFDは、光を走査させることで画像を出力してもよい。
【0034】
自覚式検眼装置1には、いずれの方式のLFDを採用することも可能である。本実施形態では、マイクロレンズアレイを備えた微小素子アレイ方式のLFD2を採用する場合を例示して説明を行う。図1に示すように、本実施形態のLFD2は、画像源10、バックライト20、微小素子アレイ30、および分解能変更部40を備える。なお、図1では、LFD2の構成の理解を容易にするために、画像源10、バックライト20、および微小素子アレイ30の各々が分解された状態が示されている。
【0035】
画像源10は、画像を視認するユーザ(本実施形態では被検者)の視線方向に交差する二次元の方向(つまり、ディスプレイの表示面に平行な二次元方向)に並べられた複数の画素を有する。一例として、本実施形態の画像源10には、多数の画素を備えた(つまり、高解像度の)ディスプレイが使用されている。しかし、ディスプレイ以外の画像源が使用されてもよい。例えば、物体が放つ光線を再現するための所定の画像が印刷された印刷媒体(紙等)が、画像源10として使用されてもよい。この場合、印刷媒体が交換されることで、LFD2によって出力(呈示)される画像が変更されてもよい。
【0036】
バックライト20は、画像源10の背面側に設けられており、画像源10を背面側から照明する。なお、画像源10自体が十分な強さで発光可能な場合等には、バックライト20を省略することも可能である。
【0037】
微小素子アレイ(本実施形態ではマイクロレンズアレイ)30は、複数の微小素子31(本実施形態ではマイクロレンズ)を備える。複数の微小素子31は、二次元上に並べて(本実施形態では格子状に)配置されている。各々の微小素子31には、画像源10における複数の画素に対応する。詳細には、画像源10のうち、各々の微小素子31の領域を背面側に投影した領域内に配置された複数の画素が、1つの画素集合単位11となる。画素集合単位11内の画素から出射される光は、画素集合単位11に対応する微小素子31(つまり、画素集合単位11の正面側に配置された微小素子31)を通過して、正面側に出射される。
【0038】
ここで、図2を参照して、LFD2によって出力される画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を変更するための方法の一例について説明する。図2は、被検眼に対する呈示距離(本実施形態では、LFD2から画像の呈示位置までの距離)が互いに異なる複数の視標画像をLFD2が出力している場合の一部の光線の状態を、模式的に示す図である。図2(A)は、視標画像の呈示位置(つまり、結像面の位置)を、図2(B)の呈示位置PP2比べて被検眼の位置EPに近い位置PP1とした場合の、光線の状態の一例である。
【0039】
図2(A)、(B)に示すように、LFD2は被検眼に対する視標画像の呈示位置を、前後方向(図2における左右方向)に変化させることができる。一例として、本実施形態のLFD2は、各々の画素集合単位11のうち、発光させる画素の集合の数を変化させることで、視標画像の呈示位置(つまり、視標画像の結像面の位置)を変化させることができる。また、LFD2は、各々の画素集合単位11のうち、発光させる画素の位置を変えることで、画角を変更することも可能である。
【0040】
また、LFD2は、被検眼の視線方向に交差する二次元の領域内の同一の領域に、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像(例えば、図2(A)の視標画像と、図2(B)の視標画像)を同時に呈示させることも可能である。この場合、被検者は、呈示された複数の画像のうち、被検眼の球面度数に応じた視標画像を観測することができる。従って、自覚式検眼装置1は、呈示距離が異なる複数の視標画像をLFD2に出力させることで、被検眼の球面度数の自覚的検査を適切に行うことができる。また、複数の視標画像を同一の領域に呈示する場合、視標画像毎に被検眼の調節力が働いてしまう可能性が、複数の視標画像を別々の領域に呈示させる場合よりも低い。
【0041】
なお、詳細は後述するが、LFD2は、呈示距離が異なる複数の視標画像の各々を、異なる領域に別々に呈示することも可能である。また、LFD2は、呈示距離が異なる複数の視標画像の各々を、交互に呈示することも可能である。また、LFD2が1つの視標画像のみを、設定された呈示距離に呈示できることは言うまでもない。これらの場合でも、球面度数の自覚的検査は適切に実行される。
【0042】
また、LFD2は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向を調整して視標画像を呈示することも可能である。つまり、LFD2は、表示面に平行な平面上に視標画像を呈示するだけでなく、円柱軸を中心に湾曲させた面上に視標画像を呈示することも可能である。さらに換言すると、LFD2は、円柱軸からの距離に応じてフォーカスを変化させた視標画像を呈示することもできる。被検眼の乱視度数および乱視軸の方向に応じて、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向が適切に設定されたている場合、被検者は、乱視の影響が抑制された状態で、呈示された画像を観測することができる。
【0043】
LFD2は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互に出力することができる。この場合、被検眼の乱視に関する自覚的検査が、効率よく適切に実行される。なお、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の視標画像は、異なる領域に別々に呈示されてもよいし、交互に呈示されてもよい。
【0044】
なお、画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)が互いに異なる複数の画像を呈示するための具体的な方法は、適宜選択されればよい。例えば、図2(A)、(B)に示す例では、各々の画素集合単位11(つまり、各々のマイクロレンズ31)から、複数の視標画像用の光線が出射される。従って、被検者によって観測される視標画像の解像度が低下し難い。しかし、LFD2は、特徴値が互いに異なる視標画像毎に、光線を出射させる画素集合単位11を区別してもよい。この場合、特徴値が互いに異なる複数の視標画像用の光線が、重複して被検眼に観測されてしまう可能性が低下する。また、LED2は、画像の表示面(本実施形態ではマイクロレンズアレイ30)とユーザの間に、各々の画素集合単位11から出射される複数の光線がいずれも通過する光学素子(例えばレンズ等)を備えていてもよい。
【0045】
図1の説明に戻る。分解能変更部40は、視標画像の特徴値の分解能を変更する。特徴値の分解能とは、LFD2が調整することが可能な特徴値の最小ピッチである。LFD2は、分解能変更部40によって分解能を高くすることで、細かいピッチで視標画像の特徴値を調整することができる。また、LFD2は、分解能変更部40によって分解能を低くすることで、設定可能な視標画像の特徴値の最大幅(最大範囲)を大きくすることができる。
【0046】
分解能変更部40の具体的な構成は、適宜選択できる。一例として、本実施形態の分解能変更部40は、微小素子アレイ(マイクロレンズアレイ)30が備える複数の微小素子(マイクロレンズ)31の焦点距離を変更することで、視標画像の特徴値の分解能を変更することができる。詳細には、本実施形態では、焦点距離を変更することが可能な焦点距離可変レンズ(例えば液晶レンズ等)が、微小素子アレイ30のマイクロレンズとして使用されている。分解能変更部40は、焦点距離可変レンズを駆動させることで、焦点距離を変更する。マイクロレンズの焦点距離を長くすると、特徴値の分解能が高くなる。逆に、マイクロレンズの焦点距離を短くすると、設定可能な特徴値の最大幅が大きくなる。
【0047】
また、本実施形態の分解能変更部40は、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を変更することで、視標画像の特徴値の分解能を変更することができる。一例として、本実施形態の分解能変更部40は、アクチュエータ(例えばモータ等)を駆動し、微小素子アレイ30と画像源10の少なくともいずれかを、表示面に垂直な方向に移動させる。その結果、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離が変更されて、特徴値の分解能が変更される。微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を長くすると、特徴値の分解能が高くなる。逆に、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を短くすると、設定可能な特徴値の最大幅が大きくなる。
【0048】
なお、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を長くした際に、光線を通過させる物質(例えば、ガラスおよび樹脂等の少なくともいずれか)が、微小素子アレイ30と画像源10の間に挿入されてもよい。この場合、微小素子アレイ30と画像源10の間の位置調整(所謂「アライメント」)等が容易になる。また、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を変更して特徴値の分解能を変更する場合、マイクロレンズアレイ以外の微小素子アレイ30(例えば、マイクロホールアレイ、回折素子アレイ、偏光素子アレイ、または、屈折素子アレイ等)が使用されていてもよい。
【0049】
制御ユニット5は、CPU51、不揮発性メモリ(Non-volatile memory:NVM)52等を備える。CPU51は、自覚式検眼装置1の制御(例えば、LFD2による視標画像の出力制御等)を司る。NVM52は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および着脱可能なUSBメモリ等を不揮発性メモリ34として使用してもよい。本実施形態では、後述する視力検査処理(図3および図4参照)を実行するための視力検査処理プログラム等が、NVM52に記憶される。
【0050】
制御ユニット5は、LFD2および操作部6に接続されている。操作部6は、ユーザ(例えば、検者および被検者等の少なくともいずれか)が各種指示および応答を自覚式検眼装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部6には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、操作部6と共に、または操作部6に代えて、各種指示および応答を入力するためのマイク等が使用されてもよい。この場合、例えば、視標画像を観測した結果を示す声を被検者が出すだけで、自覚的検査が適切に実行される。
【0051】
なお、前述したように、制御ユニット5および操作部6は、自覚式検眼装置1の筐体とは別の筐体に設けられていてもよい。例えば、自覚式検眼装置1に接続されたパーソナルコンピュータの制御ユニットが、自覚式検眼装置1の制御ユニット5として機能してもよい。
【0052】
<球面度数検査処理>
図3を参照して、本実施形態における視力検査処理の1つである球面度数検査処理について説明する。制御ユニット5のCPU51は、球面度数の自覚的検査の開始指示を入力すると、NVM52に記憶された視力検査処理プログラムに従って、図3に例示する球面度数検査処理を実行する。
【0053】
まず、CPU51は、同時または交互に呈示させる複数の視標画像における特徴値のピッチPを、大きい値に設定する(S1)。ピッチPとは、複数の視標画像の各々の特徴値(図3に示す例では、被検眼に対する呈示距離)のうち、値が隣接する2つの特徴値の差の最小値である。特徴値のピッチPを大きい値に設定した場合、被検眼の光学特性(図3に示す例では球面度数)が大まかに把握される。一例として、本実施形態のS1では、被検眼の球面度数の2ディオプターの差に対応する呈示距離の差が、ピッチPとして設定される。
【0054】
次いで、CPU51は、分解能変更部40(図1参照)の駆動を制御することで、視標画像の特徴値の分解能を低い値に設定する(S2)。前述したように、特徴値の分解能を低い値とすると、複数の視標画像における特徴値の最大幅(最大範囲)が大きくなる。
【0055】
次いで、CPU51は、同時または交互に出力する視標画像の数(以下、「出力画像数」という場合もある)Nを、大きい値(本実施形態ではN≧3)に設定する(S3)。出力画像数Nを大きい値に設定した場合、被検眼の光学特性(図3に示す例では球面度数)を広い範囲で検査することができる。一例として、本実施形態のS3では、出力画像数Nは「3」に設定される。
【0056】
次いで、CPU51は、被検眼に対する呈示距離が互いに異なるN個の視標画像をLFD2に出力させる(S4)。詳細には、本実施形態のS4では、N個の視標画像が同一領域内に同時に呈示される。その結果、視標画像毎に被検眼の調節力が働いてしまう可能性が低下する。S4で呈示される複数の視標画像によると、被検眼の球面度数が大まかに効率よく検査される。
【0057】
視標画像を観測した被検者による応答が入力されると(S6:YES)、より詳細に被検眼の球面度数を検査するための処理が実行される。まず、CPU51は、特徴値のピッチPと出力画像数Nを減少させる(S7)。特徴値Pおよび出力画像数Nを減少させることで、より詳細に(細かく)球面度数を検査することが容易となる。
【0058】
CPU51は、分解能変更部40(図1参照)の駆動を制御することで、視標画像の特徴値の分解能を上げる(S8)。前述したように、特徴値の分解能を上げることで、特徴値のピッチPを細かく設定することが可能となる。
【0059】
CPU51は、S6で入力された被検者の応答結果に応じて、複数の視標画像の各々の、被検眼に対する呈示距離を設定する(S9)。CPU51は、呈示距離が互いに異なるN個の視標画像を、LFD2に出力させる(S10)。S10で呈示される複数の視標画像によると、被検眼の球面度数がより細かく検査される。
【0060】
視標画像を観測した被検者による応答が入力されると(S12:YES)、CPU51は、追加検査の実行指示が入力されたか否かを判断する(S13)。検者は、適切な検査結果が未だ得られていない場合には、追加検査の実行指示を操作部6に入力する。追加検査の実行指示が入力されている場合(S13:YES)、CPU51は、特徴値のピッチP、出力画像数N、および特徴値の分解能を状況に応じて再設定し(S14)、追加検査を実行する(S9~12)。なお、ピッチP等の値を再設定する必要が無い場合には、S14の処理はスルーされる。検査の終了指示が入力されると(S13:NO)、球面度数検査処理は終了する。
【0061】
なお、図3に示した処理は一例に過ぎない。従って、図3に示した処理の一部を変更することも可能である。まず、一部の処理の順番(例えば、S1,S2,S3の処理の順番等)を適宜入れ替えてもよい。また、呈示距離のピッチPを変更する処理(S1,およびS7の一部)のみを実行し、呈示する視標画像数Nを変更する処理(S3,およびS7の一部)を省略してもよい。逆に、呈示する視標画像数Nを変更する処理(S3,およびS7の一部)のみを実行し、呈示距離のピッチPを変更する処理(S1,およびS7の一部)を省略することも可能である。
【0062】
<乱視検査処理>
図4を参照して、本実施形態における視力検査処理の1つである乱視検査処理について説明する。制御ユニット5のCPU51は、乱視の自覚的検査の開始指示を入力すると、NVM52に記憶された視力検査処理プログラムに従って、図4に例示する乱視検査処理を実行する。
【0063】
まず、CPU51は、同時または交互に呈示させる複数の視標画像における特徴値のピッチPを、大きい値に設定する(S21)。図4の処理におけるピッチPとは、複数の視標画像における円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかの、差の最小値である。ピッチPを大きい値に設定すると、被検眼の乱視度数および乱視軸の方向の少なくともいずれかが、大まかに把握される。CPU51は、分解能変更部40(図1参照)の駆動を制御することで、視標画像の特徴値の分解能を低い値に設定する(S22)。
【0064】
次いで、CPU51は、同時または交互に出力する視標画像の出力画像数Nを、大きい値(N≧3)に設定する(S23)。出力画像数Nを大きい値に設定した場合、被検眼の乱視度数および乱視軸の少なくともいずれかを、広い範囲で検査することができる。
【0065】
次いで、CPU51は、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかが互いに異なるN個の視標画像をLFD2に出力させる(S24)。詳細には、本実施形態のS24では、被検眼の視線方向に交差する二次元の領域(視野領域)のうち、完全には互いに重複しない複数の領域の各々に、N個の視標画像が別々に呈示される。従って、複数の視標画像が重なって被検眼に視認されてしまう可能性が低下する。S24で呈示される複数の視標画像によると、被検眼の乱視に関する大まかな検査結果が得られる。
【0066】
視標画像を観測した被検者による応答が入力されると(S26:YES)、より詳細に被検眼の乱視を検査するための処理が実行される。まず、CPU51は、特徴値のピッチPと出力画像数Nを減少させる(S27)。特徴値Pおよび出力画像数Nを減少させることで、より詳細に(細かく)乱視の検査を行うことが容易となる。CPU51は、分解能変更部40(図1参照)の駆動を制御することで、視標画像の特徴値の分解能を上げる(S28)。
【0067】
CPU51は、S26で入力された被検者の応答結果に応じて、複数の視標画像の各々の、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかを設定する(S29)。CPU51は、N個の視標画像をLFD2に出力させる(S30)。S30で呈示される複数の視標画像によると、被検眼の乱視がより細かく検査される。
【0068】
視標画像を観測した被検者による応答が入力されると(S32:YES)、CPU51は、追加検査の実行指示が入力されたか否かを判断する(S33)。追加検査の実行指示が入力されている場合(S33:YES)、CPU51は、特徴値のピッチP、出力画像数N、および特徴値の分解能を状況に応じて再設定し(S34)、追加検査を実行する(S29~32)。検査の終了指示が入力されると(S33:NO)、乱視検査処理は終了する。
【0069】
なお、図4に示した処理の一部を変更することも可能である。まず、一部の処理の順番(例えば、S21,S22,S23の処理の順番等)を適宜入れ替えてもよい。また、ピッチPを変更する処理(S21,およびS27の一部)のみを実行し、呈示する視標画像数Nを変更する処理(S23,およびS27の一部)を省略してもよい。逆に、呈示する視標画像数Nを変更する処理(S23,およびS27の一部)のみを実行し、ピッチPを変更する処理(S21,およびS27の一部)を省略することも可能である。
【0070】
上記実施形態の開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、図3および図4に例示した処理では、同一の被検眼に対して実行される一連の複数回の検査の各々において、特徴値が互いに異なる複数の視標画像がLFD2によって出力される。しかし、複数回の検査のうちの少なくともいずれかにおいて、1つの視標画像によって自覚的検査が行われてもよい。例えば、自覚式検眼装置1は、被検眼の光学特性を最終的に確定させる場合に、1つの視標画像のみをLFD2に出力させて自覚的検査を行ってもよい。つまり、自覚式検眼装置1のCPU51(制御部)は、同一の被検眼に対する一連の自覚的検査において、被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または交互にLFD2に出力させる予備検査を少なくとも1回実行した後に、予備検査の結果に基づいて特徴値が決定された1つの視標画像をLFD2に出力させてもよい。この場合でも、自覚的検査の効率は従来に比べて向上し易い。
【0071】
また、図3および図4に例示した処理では、特徴値のピッチPと出力画像数Nが共に変更される。しかし、ピッチPと出力画像数Nの一方のみが変更されてもよい。また、図3のS4およびS10では、複数の視標画像が同一領域内に呈示される。しかし、複数の視標画像が異なる領域に別々に呈示されてもよい。
【0072】
また、図3および図4に例示した処理では、特徴値のピッチPが変更される毎に、LFD2における特徴値の分解能が変更される。しかし、分解能は常に変更されなくてもよい。例えば、LFD2における特徴値の分解能が十分に高く、且つ、設定可能な複数の特徴値の幅も十分に大きい場合等には、分解能を変更する処理を省略することも可能である。
【0073】
上記実施形態の分解能変更部40は、LFD2の表示領域全体における視標画像の特徴値の分解能を、一律に変更する。しかし、分解能変更部40は、LFD2における複数の表示領域毎に、特徴値の分解能を個別に変更してもよい。例えば、分解能変更部40は、微小素子アレイ30が備える複数のマイクロレンズの一部の焦点距離を変えることで、一部の表示領域の分解能を個別に変更してもよい。また、LFD2の表示領域内に、特徴値の分解能が互いに異なる複数の表示領域が予め設けられていてもよい。この場合、CPU51は、視標画像を呈示する際のピッチPに応じて、ピッチPに対応する分解能を有する表示領域に視標画像を呈示させてもよい。たとえば、LFD2の表示領域のうち、領域Aにおけるマイクロレンズの焦点距離をf1とし、領域Bにおけるマイクロレンズの焦点距離をf2(≠f1)とすることで、各々の領域における分解能に差を設けてもよい。また、領域毎に、微小素子アレイと画像源の間の距離に予め差を設けておくことで、特徴値の分解能が異なる複数の領域が設けられていてもよい。
【0074】
図3および図4に例示した処理では、検査の進行状況に応じて、特徴値のピッチPおよび出力画像数の少なくともいずれかが変更される。しかし、検査の進行状況と共に、または進行状況の代わりに、検査内容に応じてピッチPおよび出力画像数の少なくともいずれかが変更されてもよい。例えば、検査精度の細かさが重要でない検査(例えば、小児の弱視検査、健康診断における検査等)では、他の検査を行う場合に比べて、特徴値のピッチPおよび出力画像数の少なくともいずれかが大きい値に設定されてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、視標画像の特徴値のうち、被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかが適宜設定されることで、被検眼の球面度数または乱視の検査が実行される。しかし、他の視標画像の特徴値が適宜設定されることで、球面度数および乱視以外の被検眼の光学特性(例えば、プリズムまたは加入度等)の検査が行われてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、被検眼の球面度数の検査(図3参照)と乱視の検査(図4参照)が別々に実行される。しかし、球面度数の検査と乱視の検査が並行して実行されてもよい。この場合、CPU51は、視標画像の特徴値のうち、被検眼に対する呈示距離と、乱視に関する特徴値(円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれか)の両方を適宜設定する。
【0077】
また、上記実施形態では、被検者の両眼のうち片眼ずつ自覚的検査を実行する場合を例示した。しかし、自覚式検眼装置1は、被検者の両眼の各々に同時に視標画像を呈示して検査を実行することも可能である。例えば、自覚式検眼装置1は、左眼と右眼の各々に、少なくともいずれかの特徴値が互いに異なる視標画像を呈示してもよい。この場合、両眼の検査が適切に実行される。また、自覚式検眼装置1は、左眼の右眼の各々に、異なる視標画像(例えば、一方の眼に背景画像、他方の眼に視力チャート)を呈示してもよい。左眼と右眼の各々に視標画像を呈示する場合、自覚式検眼装置1は、左眼および右眼の少なくとも一方の位置を種々の方法(例えば、被検者を撮影した画像に対する画像処理等)で検出し、検出した位置に応じて、左眼用の視標画像と右眼用の視標画像を呈示してもよい。
【0078】
また、自覚式検眼装置1は、被検眼の右眼および左眼の一方でのみ視標画像が視認されるように、視標画像を呈示してもよい。この場合、自覚式検眼装置1は、左眼および右眼の少なくとも一方の位置を検出し、検出した位置に応じて、一方の眼に視標画像を呈示してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 自覚式検眼装置
2 LFD
5 制御部
10 画像源
30 微小素子アレイ
31 微小素子
40 分解能変更部
51 CPU

図1
図2
図3
図4