(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】超音波診断装置用保護カバーのスリーブシート
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020572133
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001230
(87)【国際公開番号】W WO2020166266
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019023959
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雄規
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-175841(JP,A)
【文献】特開2018-011766(JP,A)
【文献】特開2011-072511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置用の一方に開口部を有する袋状体の保護カバー内に配置されるスリーブシートであって、
前記スリーブシートは、第1の板体及び第2の板体を備え、
前記第1の板体及び前記第2の板体は、先端部が前記保護カバーの
開口端と底端とを結ぶ方向
の中央又は
開口端と底端とを結ぶ方向
の中央よりも
前記底端側に位置するように配置され、前記保護カバーの幅方向の両側端部を中央部方向へ押圧することにより、前記第1の板体及び前記第2の板体が互いに離間するように変形して、前記保護カバー内に空間を形成する、スリーブシート。
【請求項2】
超音波診断装置用の一方に開口部を有する袋状体である保護カバー内に配置されるスリーブシートであって、
前記スリーブシートは、前記開口部から前記保護カバーの外側に突出し、第1の板体及び第2の板体を備え、
前記第1の板体及び前記第2の板体は、前記保護カバーの幅方向の両側端部を中央部方向へ押圧することにより、前記第1の板体及び前記第2の板体が互いに離間するように変形して、前記保護カバー内に空間を形成する、スリーブシート。
【請求項3】
前記第1の板体及び前記第2の板体は、前記保護カバー内の使用位置に配置された状態において、基端部に互いに重なり合わない部分を有する、請求項2に記載のスリーブシート。
【請求項4】
超音波診断装置用の一方に開口部を有する袋状体である保護カバー内に配置されるスリーブシートであって、
前記スリーブシートは、前記保護カバー内から取り外し可能に配置され、第1の板体及び第2の板体を備え、
前記第1の板体及び前記第2の板体は、前記保護カバーの幅方向の両側端部を中央部方向へ押圧することにより、前記第1の板体及び前記第2の板体が互いに離間するように変形して、前記保護カバー内に空間を形成する、スリーブシート。
【請求項5】
前記第1の板体及び前記第2の板体は、前記保護カバーの
開口端と底端とを結ぶ方向
の長さの1/2よりも
前記底端側に先端部が位置するように配置されている、請求項2~4のいずれか1項に記載のスリーブシート。
【請求項6】
前記第1の板体及び前記第2の板体は、
基端と先端とを結ぶ方向
の長さが前記保護カバーの
開口端と底端とを結ぶ方向
の長さの1/2又は1/2よりも長い、請求項1~5のいずれか1項に記載のスリーブシート。
【請求項7】
前記第1の板体及び前記第2の板体の少なくとも一方は、先端側の少なくとも一部が切り欠かれた切欠き部を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスリーブシート。
【請求項8】
前記切欠き部は、幅方向の中央部が切り欠かれている、請求項7に記載のスリーブシート。
【請求項9】
前記第1の板体及び前記第2の板体の少なくとも一方は、前記先端側の幅方向両側方に先端方向に延びる脚状部を有し、前記脚状部は基端方向に向かって幅が増大する部分を有する、請求項7又は8に記載のスリーブシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置用保護カバーのスリーブシートに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置を用いた体内の観察は、比較的容易に行うことができるので、医療分野における利用が広がっている。最近では、プローブとモニタとが一体となり、独立して使用できる携帯型の超音波診断装置も開発されている。携帯型の超音波診断装置は、持ち運びが容易であり、心臓等の臓器の画像診断だけでなく、穿刺針の穿刺やカテーテルの挿入等の処置にも用途が広がっている。
【0003】
超音波診断装置を穿刺針の穿刺等に使用する際には、穿刺時における細菌やウイルス等による感染を予防することが求められる。このため、超音波診断装置を使用する際には、人体と接触するプローブの部分を滅菌処理したり、プローブが直接人体と接触しないように、滅菌処理された保護カバーを装着したりすることが提唱されている。プローブとモニタとが一体となった携帯型の超音波診断装置の場合、全体を滅菌することが困難であるため、袋状の保護カバーを装着して使用される(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護カバーは、汚染防止のため、超音波診断装置を完全に収容することができ、また、超音波の送受信に影響を与えないように、超音波診断装置と密着させることができることが好ましい。しかし、超音波診断装置を保護カバー内に挿入する際、軟質の保護カバーは、よれたりして、超音波診断装置がひっかかったりし易く、超音波診断装置を保護カバーの奥に位置させることは容易ではない。
【0006】
また、独立した別の課題として、超音波装置をカバーに挿入する際に、カバーの外面に装置が触れてカバー外面が汚染される可能性がある。
【0007】
また、独立した別の課題として、カバーを開いた状態に保つ部材が設けられた袋の場合には、袋の変形性の自由度が低くなったり、カバーが意図せぬ方向に動いたりするおそれがあり、施術者の操作性を損なう可能性がある。
【0008】
本開示の課題は、袋状の保護カバーを、超音波診断装置を容易に装着できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のスリーブシートの第1の態様は、超音波診断装置用の一方に開口部を有する袋状体である保護カバー内に配置されるスリーブシートを対象とし、スリーブシートは、第1の板体及び第2の板体を備え、第1の板体及び第2の板体は、先端部が保護カバーの軸方向中央又は軸方向中央よりも底端側に位置するように配置され、保護カバーの幅方向の両側端部を中央部方向へ押圧することにより、第1の板体及び第2の板体が互いに離間するように変形して、保護カバー内に空間を形成する。
【0010】
スリーブシートの第1の態様によれば、袋状体である保護カバーの両側端部を押圧するだけで、保護カバーの底端側を拡げ、空間を形成し、これを維持することができる。このため、超音波診断装置の挿入時に、超音波診断装置が保護カバーにひっかかりにくくなり、超音波診断装置の音響レンズを確実に保護カバーの底端に配置させることができる。
【0011】
スリーブシートの第1の態様において、超音波診断装置用の袋状の保護カバー内に配置されるスリーブシートを対象とし、スリーブシートは、第1の板体及び第2の板体を備え、保護カバーの長さの1/2よりも底端側に先端部が位置するように配置されていてもよい。
【0012】
スリーブシートの第1の態様によれば、袋状体である保護カバーの両側端部を押圧するだけで、保護カバーの底端部側により確実に空間を形成し、これを維持することができる。このため、超音波診断装置に装着することが容易となる。
【0013】
スリーブシートの第1の態様において、超音波診断装置用の袋状の保護カバー内に配置されるスリーブシートを対象とし、スリーブシートは、第1の板体及び第2の板体を備え、軸方向長さが保護カバーの軸方向長さの1/2よりも長く形成されていてもよい。
【0014】
スリーブシートの第1の態様によれば、袋状体である保護カバーの両側端部を押圧するだけで、保護カバーの軸方向に広く空間を形成し、これを維持することができる。このため、超音波診断装置に装着することが容易となる。
【0015】
スリーブシートの第1の態様において、第1の板体及び第2の板体の少なくとも一方は、先端側の辺の少なくとも一部が、切りかかれた切欠き部を有するようにできる。このような構成とすることにより、保護カバーが平袋状であっても、底端部を立体的に変形させて空間を大きく拡げることができる。
【0016】
スリーブシートの第1の態様において、切欠き部は、先端側の幅方向の中央部が切り欠かれていてもよい。このような構成とすることにより、底端部に密着性を向上させるためのジェル等を塗布する際に、ジェル等がスリーブシートに付着しにくくできる。
【0017】
スリーブシートの第1の態様において、第1の板体及び第2の板体の少なくとも一方は、先端側の幅方向両側方に先端方向に延びる脚状部を有し、脚状部は基端方向に向かって幅が増大する部分を有していてもよい。このような構成とすることにより、脚状部の強度を確保しつつ、底端部を大きく変形させることが可能となる。
【0018】
スリーブシートの第2の態様は、超音波診断装置用の一方に開口部を有する袋状体である保護カバー内に配置されるスリーブシートを対象とし、スリーブシートは、開口部から保護カバーの外側に突出し、第1の板体及び第2の板体を備え、第1の板体及び第2の板体は、保護カバーの幅方向の両側端部を中央部方向へ押圧することにより、第1の板体及び第2の板体が互いに離間するように変形して、保護カバー内に空間を形成する。
【0019】
スリーブシートの第2の態様によれば、カバーの開口部端部を確実に開くことができ、カバー外面に装置が触れる可能性を低減することができる。また、スリーブシートが保護カバー開口部へのガイドとなり、スムーズに保護カバー内に超音波診断装置を収容することができる。
【0020】
スリーブシートの第2の態様において、第1の板体及び第2の板体は、保護カバー内の使用位置に配置された状態において、基端部に互いに重なり合わない部分を有するようにできる。このような構成とすることにより、使用後のスリーブシートの抜き出しが容易となる。
【0021】
スリーブシートの第3の態様は、超音波診断装置用の一方に開口部を有する袋状体である保護カバー内に配置されるスリーブシートを対象とし、スリーブシートは、保護カバー内から取り外し可能に配置され、第1の板体及び第2の板体を備え、第1の板体及び第2の板体は、保護カバーの幅方向の両側端部を中央部方向へ押圧することにより、第1の板体及び第2の板体が互いに離間するように変形して、保護カバー内に空間を形成する。
【0022】
スリーブシートの第3の態様によれば、保護カバー内に適宜空間を形成し、保護カバー内に超音波診断装置を収容した後において、保護カバーから第1の板体及び第2の板体が取り外されることで、第1の板体及び第2の板体によって保護カバーの変形性が阻害される事態をなくすことができる。また、剛性部材の自重等によって保護カバーが意図せぬ方向に動いたりする事態もなくなり、超音波診断装置を保護カバーに密着させる際の操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示のスリーブシートによれば、超音波診断装置に保護カバーを容易に装着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態に係るスリーブシートを保護カバー内に挿入した状態を示す平面図である。
【
図2】一実施形態に係るスリーブシートの使用状態を示す斜視図である。
【
図3】超音波診断装置に保護カバーを装着した状態を示す正面図である。
【
図4】超音波診断装置に保護カバーを装着した状態を示す背面図である。
【
図5】第1変形例に係るスリーブシートを保護カバー内に挿入した状態を示す平面図である。
【
図6】第2変形例に係るスリーブシートを保護カバー内に挿入した状態を示す平面図である。
【
図7】第3変形例に係るスリーブシートを保護カバー内に挿入した状態を示す平面図である。
【
図8】第4変形例に係るスリーブシートを保護カバー内に挿入した状態を示す平面図である。
【
図9】第5変形例に係るスリーブシートを保護カバー内に挿入した状態を示す平面図である。
【
図10】スリーブシートと組み合わせる保護カバーの変形例を示す平面図である。
【
図11】スリーブシートと組み合わせる保護カバーの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、超音波診断装置103用の袋状体である保護カバー102内に、スリーブシート101が挿入された状態を示している。本実施形態において、保護カバー102は、重ね合わせたフィルムの開口端部102a以外の底端部102b及び両側端部102c、102dの3方が閉じられた、全体がフィルムにより形成された単純な平袋である。
【0026】
スリーブシート101は、第1の板体111及び第2の板体112を有している。第1の板体111及び第2の板体112は、それぞれ保護カバー102のフィルムよりも剛性が高い板体である。本実施形態において、第1の板体111及び第2の板体112は、同一形状であり、表裏を逆にして重ねられている。
【0027】
図2に示すように、第1の板体111及び第2の板体112は、先端側から保護カバー102内に挿入され、使用位置に配置される。本実施形態においては、使用位置において、第1の板体111及び第2の板体112の先端に一部が保護カバー102の底端部102bと接し、基端は保護カバー102の開口端部102aから突出している。
【0028】
第1の板体111及び第2の板体112は、使用位置に配置された状態において、保護カバー102の幅方向の両側端部102c、102dを両手又は片手で中央部方向へ押圧することにより、幅方向の中央部が互いに離間するように変形する。これにより、保護カバー102を構成する2枚のシートも互いに離間し、保護カバー102内に開口端部102aから底端部102bに至る空間が形成される。
【0029】
図3及び
図4には、保護カバー102を超音波診断装置103に装着した状態を示す。保護カバー102に形成された空間内に、超音波診断装置103を音響レンズ133側から挿入する。スリーブシート101が存在していることにより、拡がった空間は安定して維持されるため、超音波診断装置103を奥まで挿入することが容易となる。
【0030】
保護カバー102内の底端部102bにおける音響レンズ133と接する部分には、超音波診断装置103を挿入する前に密着性を向上させるためのジェル等を配置しておく。ジェルに代えてゲル状シート等を用いることもできる。底端部102bと音響レンズ133とをジェル等を介して密着させた後、保護カバー102の外側からブラケット104をはめ込んで、超音波診断装置103を保護カバー102内に固定する。
【0031】
本実施形態においては、保護カバー102の予め閉じられている底端部102b側に音響レンズ133を配置するため、開口端部側に音響レンズ133を配置する場合と異なり、封止操作のミスにより汚染が生じたりする危険性を小さくすることができる。
【0032】
保護カバー102の上部を折り返してシール105により固定することにより、保護カバー102内への異物の侵入を抑えることができると共に、操作性を向上させることができる。保護カバー102の上部は、超音波診断装置103のディスプレイ134が設けられていない側に折り返した方が、ディスプレイ134の視認性を妨げないので好ましい。
【0033】
なお、シール105は、通常の最貼付可能なシールとすることができるが、一部は再剥離及び再貼付が可能であり一部は再剥離しないものとすれば、位置がずれることがないので操作性が向上する。また、予め保護カバー102の表面にシール105を貼り付けておかなくても、別に用意したシールを用いてもよい。さらに、操作性に問題が無ければ、シール等により保護カバー102の折り返し部分を固定しなくてもよい。
【0034】
ブラケット104には、穿刺ガイド106を設けることができる。穿刺ガイド106を設けることにより、超音波診断装置103のディスプレイの表示を見ながら、所定の位置に所定の角度で穿刺針を穿刺することが容易となる。なお、保護カバー102の上からブラケット104をはめ込み超音波診断装置103を固定することにより、操作性を向上させることができるが、ブラケット104は必要に応じて用いればよく、ブラケット104を用いない構成とすることもできる。
【0035】
保護カバー102は、薄いフィルムにより形成された袋である。このため、スリーブシート101が挿入されていない状態において、両側端部102c、102dを中央部方向に押圧しても保護カバー102の表裏のシートが一体に変形するため、開口端部102aを開口させることは困難である。偶然に開口する場合があるとしても、操作性が良いとはいえない。また、保護カバー102は、超音波診断装置103の音響レンズ133を保護カバー102の底端に位置させやすく、且つ、底端に位置した状態の音響レンズ133との当接面にしわ等が形成されないように、超音波診断装置との間のクリアランスが小さく設計されており、超音波診断装置103を保護カバー102内にスムーズに挿入しにくい。
【0036】
一方、スリーブシート101が挿入されている状態においては、保護カバー102の両側端部102c、102dを中央部方向に押圧すると、第1の板体111及び第2の板体112も押圧される。第1の板体111及び第2の板体112は、保護カバー102よりも厚さが厚く、剛性が高いため、中央部が互いに離間するように変形する。このため、保護カバー102の開口端部102aを開口させることができる。第1の板体111及び第2の板体112の状態及び力のかかり具合によっては、第1の板体111と第2の板体112とが、中央部が接触した状態で変形する場合があり得る。しかし、第1の板体111及び第2の板体112の保護カバー102の開口端部102aから突出している基端部を指等で触れることにより、中央部が互いに離間するように誘導することが容易にできる。
【0037】
また、本実施形態のスリーブシート101は、超音波診断装置103を保護カバー102内に挿入する際に、超音波診断装置103が保護カバー102にひっかかりにくくするという機能も有する。スリーブシート101が存在することにより、保護カバー102がよれたりしにくく、超音波診断装置103を保護カバー102の底端部102bまで容易に押し込むことができる。また、超音波診断装置103と保護カバー102との間に、保護カバー102よりも摩擦が小さいスリーブシート101が存在することにより、超音波診断装置103の滑りが良くなり、挿入が容易となる。このため、スリーブシート101の表面を平滑にして、摩擦を小さくすることが好ましい。また、スリーブシート101により超音波診断装置103を挿入する際に保護カバー102が傷つきにくくなるという利点も得られる。スリーブシート101は、超音波診断装置103を保護カバー102内に完全に挿入した後で抜き取ればよいが、超音波診断装置103を途中まで挿入した状態で、スリーブシート101を引き抜くことにより、超音波診断装置103を保護カバー102内に滑り込ませることも可能である。
【0038】
底端部102bにガゼットが設けられていない平袋状の保護カバー102の場合、開口端部102aにおいて表裏のシートとを引き離すだけでは、底端部102bの変形が制限されるため、底端部102b付近において空間を大きく拡げることができない場合がある。
【0039】
本実施形態の第1の板体111及び第2の板体112は、それぞれ先端側に幅方向の中央部が切り欠かれた先端切欠き部113を有している。このため、第1の板体111及び第2の板体112は、先端側の中央部が、保護カバー102の底端部102bに接触せず、両側端の脚状部114のみが保護カバー102の底端部102bと接触する。
【0040】
図2に示すように、先端切欠き部113を有する第1の板体111及び第2の板体112を先端側から保護カバー102内に挿入して、中央部が離間するように変形させると、保護カバー102の底端部102bは、先端切欠き部113に沿って開口端部102a側に向かって立体的に変形する。このため、平袋状の保護カバー102においても、底端部102b付近において空間を大きく拡げることができる。超音波診断装置の収容操作は、汚染リスクを考慮し、保護カバー102を開口しておく者と超音波診断装置を挿入する者の2名によって行われる。保護カバー102を開口しておく者は両手又は片手で保護カバー102の開口状態を維持し、超音波診断装置を挿入する者はまず底端の幅方向の中央部に向かってジェル等の液状物を滴下する。その後、超音波診断装置を挿入する者が保護カバー102の外面に自身の手指や超音波診断装置が接触しないようにスリーブシート101を介して保護カバー102内に超音波診断装置を入れ、スリーブシート101を保護カバー102から脱離させる。音響レンズ133と皮膚との間に気泡やしわがある場合にはノイズが生じてしまうため、保護カバー102に弛み等が生じないように音響レンズ133と保護カバー102との間に密着力を加わった状態で保護カバー102の開口部側を折り返し、シール等で固定する。
【0041】
本実施形態において、先端切欠き部113を弧状にする例を示したが、三角形状又は四角形状とすることもできる。但し、先端切欠き部113を弧状又は三角形状等として、脚状部114が先端側から基端側に向かって幅が次第に広くなる形状とする方が好ましい。これにより、脚状部114の強度を確保して、脚状部114が保護カバー102の底端部102bの側端部をしっかりと押さえることができるようになると共に、先端側において大きく切り欠かれた形状となるため、底端部102bをさらに変形し易くできる。なお、脚状部114は、基端側に向かっては場が拡がる部分を有していればよく、その全体が先端側から基端側に向かって幅が広くなる形状でなくてもよい。また、先端切欠き部113及び脚状部114を曲線状として、角が生じないようにした方が、保護カバー102が傷ついたり、破れたりしにくくできるので好ましい。
【0042】
第1の板体111及び第2の板体112の中央部に先端切欠き113を設けることにより、保護カバー102内の底端部102bに音響レンズ133との密着性を向上させるためのジェル等を塗布する際に邪魔にならないという利点も得られる。スリーブシートの先端部にジェル等が付着すると、スリーブシート101を抜き出す際に、底端部102b以外の保護カバー102の内面や超音波診断装置103にジェルが付着する可能性がある。しかし、ジェル等を塗布する中央部に先端切欠き113を設けることにより、スリーブシート101へのジェル等の付着を抑えることができる。また、両側端の脚状の部分にジェル等が付着した場合においても、中央部に配置されたディスプレイ134にジェルが付着しにくく、視認性の低下が生じる事態を低減することができる。
【0043】
但し、
図5に示す第1変形例のように、第1の板体111及び第2の板体112の先端側の両側端部を切り欠き先端切欠き部113Aを設け、中央に脚状部114Aを残すこともできる。また、一方の側端部には脚状部を残し、他方の側端部まで切り欠くようにすることもできる。
【0044】
さらに、
図6に示す第2変形例のように、第1の板体111及び第2の板体112の挿入深さを調節して、第1の板体111及び第2の板体112の先端が保護カバー102の底端部102bと接触しないようにすれば、先端部に切欠きを設けなくてもよい。この場合、第1の板体111及び第2の板体112の保護カバー102内に挿入される部分の長さは、保護カバー102の軸方向長さの1/2又は1/2よりも長くすることが好ましい。保護カバー102の軸方向長さの1/2又は1/2よりも底端部102b側の位置まで第1の板体111及び第2の板体112が存在していた方が、開口端部102aから底端部102bに至るまできれいに空間を拡げることができる。但し、第1の板体111及び第2の板体112が保護カバー102の長さの1/2に達していなくてもよく、第1の板体111及び第2の板体112が保護カバーの軸方向中央部に近接しているだけでも開口端部102aから底端部102bに至るまで空間を拡げることが可能である。
【0045】
図6においては、第1の板体111及び第2の板体112の基端部に保護カバー102よりも幅が広い耳部116を設けることにより、第1の板体111及び第2の板体112の先端が保護カバー102の底端部102bと接触しないようにする例を示した、しかし、
図7に示す第3変形例のように、底端部102bにおける幅が第1の板体111及び第2の板体112よりも狭い保護カバー102Aを用いることにより、第1の板体111及び第2の板体112の先端が保護カバー102の底端部102bと接触しないようにすることもできる。また、第1の板体111及び第2の板体112の挿入深さを制限する機構を設けず、操作する際に第1の板体111及び第2の板体112を少し引っ張り出して、第1の板体111及び第2の板体112の先端が保護カバー102の底端部102bと接触しないようにしてもよい。
【0046】
また、
図8に示す第4変形例のように、底端部102bにガゼット(マチ)121を設けた保護カバー102Bであれば、切欠き部を設けていない第1の板体111及び第2の板体112を、底端部102bと接する位置まで挿入しても、開口端部102aから底端部102bに至るまできれいに空間を拡げることができる。
図8においては、底にガゼットが設けられた保護カバーを示したが、サイドガゼットが設けられていてもよく、底とサイドの両方にガゼットが設けられていてもよい。なお、ガゼットが設けられた保護カバー102Bにも、先端切欠き部を有するスリーブシート101を用いることができる。
【0047】
第1の板体111と第2の板体112とは2つの独立した部材でなく一体となっていてもよい。例えば、第1の板体111と第2の板体112の側辺同士を接着又は溶着等により接合してもよい。接合は、辺全体であっても、一部であってもよい。また、左右両方の辺を接合しても、一方の辺だけを接合してもよい。さらに、1枚の板体を2つ折りにすることにより一体となった第1の板体111と第2の板体112とすることもできる。
【0048】
第1の板体111と第2の板体112とが同一の形状であり、左右を互いに入れ替えて重ねて用いる例を示したが、第1の板体111と第2の板体112とは異なる形状であってもよい。この場合、
図9に示す第5変形例のように、第1の板体111は耳部116を有し、先端部が保護カバー102の底端部102bに達しない形状とし、第2の板体112は先端部に先端切欠き部113を有する形状とすることができる。第2の板体112は、両側部に切欠きを有する形状としてもよい。
【0049】
本実施形態及び各変形例において、第1の板体111及び第2の板体112の基端部には、斜めの基端切欠き部115が設けられている。基端切欠き部115を設けることにより、第1の板体111及び第2の板体112の基端部に互いに重なり合わない部分が生じる。一方の板体をつまんだり、押したりすることが容易にできるため、第1の板体111と第2の板体112とが同じ方向に変形する状態を容易に解消することができる。切欠きに限らず他の方法により、第1の板体111及び第2の板体112の基端部に互いに重なり合わない部分を形成してもよい。また、重なり合わない部分は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0050】
なお、第1の板体111及び第2の板体112の基端部が保護カバー102の開口端部102aから突出してことで、保護カバー102の開口端部102aを開口状態に維持することができると共に、板体を保護カバー102のガイド部材とすることができ、操作性が向上するが、開口端部102aから突出していなくてもよい。
【0051】
本実施形態及び各変形例のスリーブシート101は、超音波診断装置103を操作する際には、保護カバー102内から取り出された状態とすることができるため、超音波診断装置を使用する際に邪魔にならないという利点が得られる。しかし、スリーブシート101が保護カバー102の中に挿入された状態のまま、超音波診断装置103を使用することもできる。この場合、スリーブシートの形状を超音波診断装置103より小さくし、スリーブシート全体が超音波診断装置103の側方に位置する位置までずらし、袋の変形性をできるだけ阻害しないようにするのが好ましい。
【0052】
スリーブシート101は保護カバー102と別に保管及び輸送し、使用時に保護カバー102内に挿入することができる。また、スリーブシート101が保護カバー内に挿入された状態で保管及び輸送することもできる。この場合、輸送時等において保護カバー102内からスリーブシート101が抜けないようにするために、スリーブシート101の保護カバー102の開口端部から突出した部分と保護カバー102の上部とをテープ等で止めて固定することができる。
【0053】
また、
図10に示すように、スリーブシート101を保護カバー102の上端部付近にスポット溶着等により接合しておくこともできる。この場合、保護カバー102の接合部123を含む分離部124が、保護カバー102の本体部分125から切り離されるようにすれば、スリーブシート101の取り出しを容易にすることができる。
図10においては、スリーブシート101の中央部に先端切欠き部113が設けられている例を示したが、他の変形例のスリーブシート101についても同様の構成を採用することができる。但し、この場合、スリーブシート101に耳部等を設けなくても、スリーブシート101の先端が保護カバー102の底端部102bに接触しないようにすることができる。
【0054】
さらに、
図11に示すように、スリーブシート101を挿入して保護カバー102に封をすれば、保護カバー102内を清浄に保つことが容易にできる。
図11に示す例においては、保護カバー102の上部に切り離し可能な切り離し部126が設けられている。このため、使用時に、切り離し部126よりも上側の部分を切り離せば、スリーブシート101の基端部が保護カバー102の開口端部から突出した状態となり、操作が容易である。このような構成に限らず、保護カバー102の上部が折り返されてテープ等で止められているような構成としてもよい。
【0055】
保護カバー102は、超音波診断装置103を収容できる透明の袋であれば特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート等からなるフィルムにより形成された袋とすることができる。保護カバー102を形成するフィルムは、材質にもよるが、撮像に影響を与えないようにする観点から薄い方が好ましく、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下である。また、破れにくくする観点から、好ましくは0.005mm以上、より好ましくは0.001mm以上である。
【0056】
保護カバー102の形状は特に限定されず、平袋である場合は、1枚のフィルムを2つ折りにして、2方をシールしながら切り離したサイドシール袋や、2枚のフィルムを重ね合わせて、3方をシールした三方シール袋、1枚のフィルムを筒状にし、背面と底部をシールした合掌袋等とすることができる。また、平袋に限らず、ガゼットが設けられたガゼット袋とすることもできる。なお、保護カバー102は、全体がフィルムにより形成された袋状体とすることができるが、筒状のフィルム体と、フィルム体の一方の開口部に固定したゲルシートとで構成した袋状体としてもよい。
【0057】
第1の板体111及び第2の板体112は、保護カバー102のフィルムよりも剛性が高く且つ両側端部から中央部に向かって力を加えることにより撓むように変形させられることができるものであればよい。例えば、保護カバー102よりも厚いポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート等からなるシートとすることができる。材質にもよるが、保護カバー102内の空間形成を容易にする観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、また好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。
【0058】
第1の板体111及び第2の板体112は、表面を平滑にした方が超音波診断装置103を保護カバー102内に挿入しやすくすることができる。また、第1の板体111及び第2の板体112は、角部が面取りされていることが好ましく、特に、先端側の角部や、底端部102bと接する脚状部の部分が面取りされていることが好ましい。角部を面取りすることにより、第1の板体111及び第2の板体112により保護カバー102が傷ついたり破れたりしにくくすることができる。
【0059】
本実施形態及び各変形例において、方形状の筐体の先端部に超音波センサである音響レンズが設けられ、一方の面にディスプレイが設けられた超音波診断装置に保護カバーを装着する例を示したが、どのような超音波診断装置に保護カバーを装着する際にも、本実施形態及び各変形例に示したスリーブシートを用いることができる。また、音響レンズが設けられた部分とディスプレイ部分とが一体となった超音波診断装置に限らず、別体となった超音波診断装置にも使用することができる。
【0060】
例示した本実施形態及び各変形例のスリーブシートは、保護カバーを超音波診断装置に装着する際に生じる複数の課題を解決するために複数の構成の組合せを有している。しかし、例示した本実施形態及び各変形例のスリーブシートが有する構成の一部のみを有し、保護カバーを超音波診断装置に装着する際に生じる少なくとも1つの課題を解決するスリーブシートであっても、保護カバーの超音波診断装置への装着を容易にする。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示のスリーブシートは、超音波診断装置の保護カバーの装着性を大きく向上することができ、医療分野等において有用である。
【符号の説明】
【0062】
101 スリーブシート
102 保護カバー
102A 保護カバー
102B 保護カバー
102a 開口端部
102b 底端部
102c 側端部
102d 側端部
103 超音波診断装置
104 ブラケット
105 シール
106 穿刺ガイド
111 第1の板体
112 第2の板体
113 先端切欠き部
113A 先端切欠き部
114 脚状部
114A 脚状部
115 基端切欠き部
116 耳部
123 接合部
124 分離部分
125 本体部分
126 切り離し部
133 プローブ
134 ディスプレイ