(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光学フィルム及び偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240409BHJP
C08L 33/12 20060101ALI20240409BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20240409BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B5/30
C08L33/12
C08L51/00
C08J5/18 CEY
(21)【出願番号】P 2020572323
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005693
(87)【国際公開番号】W WO2020166682
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019025927
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩花
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 奈々恵
(72)【発明者】
【氏名】笠原 健三
(72)【発明者】
【氏名】南條 崇
(72)【発明者】
【氏名】服部 達哉
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08L 33/12
C08L 51/00
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な下記式(1)で表される可動体積が0.5~3.6
Å
3
である特定の共重合モノマーに由来する構造単位とを含むメタクリル系樹脂と、
ゴム粒子と
を含み、
前記特定の共重合モノマーは、炭素原子数5~15の直鎖状アルキレン部位を有し、かつ分岐構造を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、
光学フィルム。
式(1):可動体積=モノマーの剛球体体積/モノマーの分子量
(式(1)において、剛球体体積は、モノマーの構造から解析して得られる慣性半径を半径とする剛球体の体積を示す)
【請求項2】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な下記式(1)で表される可動体積が0.5~3.6
Å
3
である特定の共重合モノマーに由来する構造単位とを含むメタクリル系樹脂と、
ゴム粒子と
を含み、
前記特定の共重合モノマーは、炭素原子数4~20の直鎖状アルキレン部位を有し、かつ分岐構造を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、
前記特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量は、前記メタクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して10~30質量%である、
光学フィルム。
式(1):可動体積=モノマーの剛球体体積/モノマーの分子量
(式(1)において、剛球体体積は、モノマーの構造から解析して得られる慣性半径を半径とする剛球体の体積を示す)
【請求項3】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な下記式(1)で表される可動体積が0.5~3.6
Å
3
である特定の共重合モノマーに由来する構造単位とを含むメタクリル系樹脂と、
ゴム粒子と
を含み、
前記特定の共重合モノマーは、炭素原子数4~20の直鎖状アルキレン部位を有し、かつ分岐構造を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、
前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量は、60~300万である、
光学フィルム。
式(1):可動体積=モノマーの剛球体体積/モノマーの分子量
(式(1)において、剛球体体積は、モノマーの構造から解析して得られる慣性半径を半径とする剛球体の体積を示す)
【請求項4】
前記特定の共重合モノマーの可動体積は、1.2~3.2
Å
3
である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
JIS K 7126-2(2006)に準拠して測定される酸素透過率は、250~700(cc/m
2・day)である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記ゴム粒子の含有量は、前記メタクリル系樹脂に対して5~10質量%である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記メタクリル系樹脂の含有量は、前記光学フィルムに対して80質量%以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光学フィルムを含む、
偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板、光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置では、偏光板保護フィルムなどの光学フィルムが用いられている。そのような光学フィルムとしては、優れた透明性や寸法安定性、低吸湿性を有することから、ポリメチルメタクリレートなどのメタクリル系樹脂を主成分とするメタクリル系樹脂フィルムが用いられることがある。
【0003】
メタクリル系樹脂フィルムは、一般的に脆いことから、靱性を付与するために、ゴム粒子を添加されることがある。例えば、特許文献1では、偏光板の外側保護フィルム(液晶セルとは反対側に配置される保護フィルム)として、アクリル系樹脂と、ゴム弾性体粒子とを含むアクリル系樹脂フィルムが開示されている。また、特許文献2には、アクリル系樹脂とゴム粒子とを含む熱可塑性樹脂組成物を延伸して得られる光学フィルムが開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、メタクリル酸メチルと、環状の部分構造を有する重合性単量体とのアクリル共重合体を含む光学フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-13850号公報
【文献】国際公開第2016/158968号
【文献】特開2014-38180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、表示装置のフレキシブル化、偏光板の高機能化などのさらなる要求に伴い、光学フィルムは、さらに高い靱性を有することが望まれている。そのため、特許文献1~3に示される光学フィルムも、これまで以上に高い靱性を有することが望まれている。
【0007】
また、メタクリル系樹脂フィルムは、比較的高分子量の樹脂を用いることができ、靱性の良好なフィルムが得られやすい観点などから、溶液製膜法(キャスト法)で製造されることがある。溶液製膜法では、樹脂を有機溶媒(以下、「溶媒」という)に溶解させたドープを支持体上に流延した後、溶媒を除去する工程を経て、フィルムを得る。しかしながら、メタクリル系樹脂は疎水性が高いため、溶媒との親和性が高く、溶媒を除去するのに時間を要する、すなわち、乾燥性が低いという問題があった。
【0008】
これに対し、特許文献3では、メタクリル酸メチルと環状の部分構造を有する重合性単量体のアクリル共重合体を用いることで、乾燥性を高めることができる。一方で、より高い靱性(屈曲性)を有するフィルムを得やすくする観点では、環状の部分構造を有する重合性単量体を多く用いなくても、乾燥性を高めることができることが望まれている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い乾燥効率で得ることができ、かつ十分な屈曲性を有する光学フィルム、偏光板、光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の構成によって解決することができる。
【0011】
本発明の光学フィルムは、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な前記メタクリル酸メチル以外の共重合モノマーに由来する構造単位とを含むメタクリル系樹脂と、ゴム粒子とを含み、前記共重合モノマーに由来する構造単位は、下記式(1)で表される可動体積が0.5~3.6である特定の共重合モノマーに由来する構造単位を含む。
式(1):可動体積=モノマーの剛球体体積/モノマーの分子量
(式(1)において、剛球体体積は、モノマーの構造から解析して得られる慣性半径を半径とする剛球体の体積を示す)
【0012】
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムを含む。
【0013】
本発明の光学フィルムの製造方法は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な前記メタクリル酸メチル以外の共重合モノマーに由来する構造単位とを含み、かつ前記共重合モノマーに由来する構造単位は、下記式(1)で表される可動体積が0.5~3.6である特定の共重合モノマーに由来する構造単位を含むメタクリル系樹脂と、ゴム粒子と、溶媒とを含むドープを得る工程と、前記ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程と、前記膜状物を乾燥させる工程とを含む。
式(1):可動体積=モノマーの剛球体体積/モノマーの分子量
(式(1)において、剛球体体積は、モノマーの構造から解析して得られる慣性半径を半径とする剛球体の体積を示す)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い乾燥効率で得ることができ、かつ十分な屈曲性を有する光学フィルム、偏光板および光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、メタクリル系樹脂を構成する共重合モノマーにおける直鎖状アルキレン部位の炭素原子数と、フィルムの酸素透過率との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討した結果、可動体積が特定の範囲内にある特定の共重合モノマーに由来する構造単位を含むメタクリル系樹脂を用いることで、フィルムを溶液製膜法で製造する際の溶媒の除去性、すなわち乾燥性を顕著に高めうることを見出した。
【0017】
共重合モノマーの可動体積は、共重合モノマーのうちメタクリル系樹脂の側鎖となる基(具体的には、直鎖状のアルキレン部位を含む基)が動ける範囲が、共重合モノマーの単位分子量あたりにどのくらいあるかを示すものであり、その値が大きいほど、側鎖となる基が動ける範囲が広いことを意味する。共重合モノマーの可動体積は、直鎖状アルキレン部位の炭素原子数と相関性を有する。すなわち、直鎖状アルキレン部位の炭素原子数が多いほど、共重合モノマーの可動体積は大きくなる。また、フィルムの乾燥性は、フィルムの酸素透過率と、ある程度の相関性を有する。すなわち、フィルムの酸素透過率が高いほど、フィルムの乾燥性は、概ね高くなる傾向がみられる。
【0018】
図1は、共重合モノマー中の直鎖状アルキレン部位の炭素原子数と、フィルムの酸素透過率との関係の一例を示すグラフである。
【0019】
図1に示されるように、共重合モノマー中の直鎖状アルキレン部位の炭素原子数が増えるほど、フィルムの酸素透過率は高くなるものの;ある程度まで高くなると、フィルムの酸素透過率は、低下することがわかる。すなわち、本発明者らは、共重合モノマー中の直鎖状アルキレン部位の炭素原子数、ひいては共重合モノマーの可動体積を特定の範囲(0.5~3.6、好ましくは1.2~3.2)に調整することで、フィルムの酸素透過率、ひいては乾燥性を顕著に高めうることを見出した。
【0020】
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。共重合モノマーの可動体積が下限値以上であると、メタクリル系樹脂の側鎖が動ける範囲が広いため、メタクリル系樹脂の主鎖同士の過剰な絡まり合いを抑制しうる。それにより、樹脂マトリクス中で、溶媒分子が、メタクリル系樹脂の樹脂鎖を押しのけながら移動する際に、溶媒分子が移動できるような比較的大きな空隙(空間)を形成しやすく、それにより、溶媒分子の移動性が高められ、乾燥性が高められる。一方で、共重合モノマーの可動体積が上限値以下であると、メタクリル系樹脂の側鎖同士の過剰な絡まり合いを抑制できるため、溶媒分子が移動する際に形成される空隙(空間)が塞がれるのを抑制できる。
【0021】
さらに、可動体積が調整された特定の共重合モノマーに由来する構造単位を含むメタクリル系樹脂を含むフィルムは、高い靱性を有することも見出された。可動体積が大きくなることで、メタクリル系樹脂の側鎖が動ける範囲が大きくなるため、靱性が向上したと推察される。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0022】
1.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、メタクリル系樹脂と、ゴム粒子とを含む。
【0023】
1-1.メタクリル系樹脂
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な共重合モノマーに由来する構造単位とを含む共重合体である。そして、共重合モノマーに由来する構造単位は、下記式(1)で表される可動体積が0.5~3.6である特定の共重合モノマーに由来する構造単位を含む。
式(1):可動体積=モノマーの剛球体体積/モノマーの分子量
【0024】
式(1)における剛球体体積は、モノマーの構造から慣性半径解析ソフトで解析して得られる慣性半径を半径とする剛球体の体積を示す。
【0025】
特定の共重合モノマーの可動体積が0.5以上であると、メタクリル系樹脂の主鎖同士の過剰な絡まり合いを抑制できるため、樹脂マトリクス中で、溶媒分子が、メタクリル系樹脂の樹脂鎖を押しのけながら移動する際に、特定の共重合モノマーに由来する比較的大きな空間を形成しやすい。そのような空間では溶媒分子が移動しやすいため、溶液製膜時の乾燥性を高めることができる。一方、特定の共重合モノマーの可動体積が3.6以下であると、メタクリル系樹脂の側鎖同士の過剰な絡まり合いを抑制できるため、溶媒分子が移動する際に形成される空間が閉塞されるのを抑制できる。それにより、溶媒分子が移動できる空間が失われにくいため、溶液製膜時の乾燥性を高めることができる。特定の共重合モノマーの可動体積は、上記観点から、1.2~3.2であることがより好ましい。
【0026】
特定の共重合モノマーの可動体積は、以下の手順で測定することができる。
1)まず、特定の共重合モノマーの構造について、室温にて、NVTアンサンブルでQuench計算を500ps計算し、1psごとにエネルギー評価を行う。力場には、Dreidingを使用する。そして、Quench計算の結果を、Radius of gyration(慣性半径)解析モジュールで解析して、慣性半径分布の平均値(平均慣性半径値)を「慣性半径」として算出する。解析には、シミュレーションソフトとして、Materials Studio 2017R2 Forciteモジュール(ダッソー・システムズ・バイオビア株式会社)を用いることができる。そして、得られた共重合モノマーの慣性半径に等しい半径を有する剛体球の体積を、「剛体球体積」とする。
2)上記1)で算出した剛体球体積と、特定の共重合モノマーの分子量とを、上記式(1)に当てはめて、可動体積を算出する。
【0027】
特定の共重合モノマーは、可動体積を上記範囲内に調整しやすい観点から、直鎖状アルキレン部位を有することが好ましい。すなわち、特定の共重合モノマーの可動体積は、特定の共重合モノマーが有する直鎖状アルキレン部位の長さ(炭素原子数)や分岐の有無によって調整することができる。特定の共重合モノマーの可動体積を大きくするためには、特定の共重合モノマーが有する直鎖状アルキレン部位の炭素原子数を多くすることが好ましく、さらに分岐構造を有しないことがより好ましい。
【0028】
すなわち、特定の共重合モノマーは、炭素原子数4~20、好ましくは炭素原子数5~15、より好ましくは炭素原子数8~15の直鎖状アルキレン部位を有することが好ましい。「炭素原子数4~20の直鎖状アルキレン部位を有する」とは、炭素原子数4~20の直鎖状のアルキレン基そのものを有する場合だけでなく、炭素原子数が4~20の直鎖部分を有する分岐状のアルキレン基を有する場合も含まれる。
【0029】
そのような特定の共重合モノマーの例には、(メタ)アクリル酸n-ブチル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:4)、(メタ)アクリル酸ペンチル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:5)、(メタ)アクリル酸ヘキシル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:6)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:6)、(メタ)アクリル酸n-オクチル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:8)、(メタ)アクリル酸2-プロピルノニル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:9)、(メタ)アクリル酸ドデシル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:12)、(メタ)アクリル酸セチル(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:16)などの炭素原子数4~20の直鎖状アルキレン部位を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル:ペンチル(メタ)アクリルアミド(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:5)、ヘキシル(メタ)アクリルアミド(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:6)、オクチル(メタ)アクリルアミド(直鎖状アルキレン部位の炭素原子数:8)などの炭素原子数4~20の直鎖状アルキレン部位を有する(メタ)アクリルアミド類が含まれる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。中でも、炭素原子数5~15の直鎖状アルキレン部位を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、特定の共重合モノマーの可動体積を1.2以上に調整しやすい観点では、炭素原子数8~15の直鎖状アルキレン部位を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。
【0030】
なお、特定の共重合モノマーは、可動体積が上記範囲内を満たしていればよく、環構造(芳香族環や脂肪族環)をさらに有してもよい。
【0031】
メタクリル系樹脂は、必要に応じて、特定の共重合モノマー以外の他の共重合モノマーに由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。なお、他の共重合モノマーは、炭素原子数が4~20の直鎖状アルキレン部位を有しないことが好ましい。
【0032】
他の共重合モノマーの例には、
アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの、直鎖状アルキレン部位の炭素原子数が4未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;
ビニルシクロヘキサンなどの脂環式ビニル類;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル-スチレン共重合体などの不飽和ニトリル類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステルなどの不飽和カルボン酸類;
酢酸ビニル、エチレンやプロピレンなどのオレフィン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;
(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;
(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類;
N-フェニルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド類が含まれる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
中でも、ガラス転移温度を高くして、溶液製膜時の乾燥性をさらに高めやすくする観点では、他の共重合モノマーは、環構造を有するモノマーであってもよい。
【0034】
環構造を有するモノマーの例には、
(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルなどの脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;
ビニルシクロヘキサンなどの脂環式ビニル類;
N-フェニルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド類が含まれる。
【0035】
メタクリル系樹脂を構成する共重合モノマーに由来する構造単位の総量は、メタクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。このうち、可動体積が上記範囲内にある特定の共重合体モノマーに由来する構造単位の含有量は、例えばフィルムの乾燥性や靱性を高めやすくする観点では、共重合モノマーに由来する構造単位の総量に対して100質量%であることが好ましい。
【0036】
すなわち、特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量は、メタクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して1~50質量%であることが好ましい。特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量が1質量%以上であると、メタクリル系樹脂を含む膜状物中で、溶媒分子が、メタクリル系樹脂の樹脂鎖を押しのけながら移動する際に、溶媒分子が移動しやすい空間を多く形成しうるため、溶液製膜時に十分に乾燥性を高めやすい。上記特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量が50質量%以下であると、メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が低くなりすぎないため、耐熱性が損なわれにくいだけでなく、乾燥温度の低下に伴う乾燥性の低下も抑制しうる。特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量は、上記観点から、メタクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
あるいは、フィルムの乾燥温度や耐熱性を高めやすくする観点などから、メタクリル系樹脂は、例えば環構造を有するモノマー(他の共重合モノマー)に由来する構造単位をさらに含んでもよい。その場合、特定の共重合体モノマーに由来する構造単位と環構造を有するモノマーに由来する構造単位の含有比率は、例えば50/50~90/10(質量比)としうる。
【0038】
メタクリル系樹脂のモノマーの種類や組成は、1H-NMRにより特定することができる。
【0039】
メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ハンドリング性や後加工(延伸性など)の観点から、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、光学フィルムの靱性を損いにくくする観点では、メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)の上限値は、例えば160℃としうる。
【0040】
メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定することができる。
【0041】
メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、モノマーの種類や組成によって調整することができる。メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を高めるためには、例えば特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量を一定以下としたり、特定の共重合モノマーに含まれる直鎖状アルキレン部位の炭素原子数を一定以下としたりすることが好ましい。
【0042】
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60~300万であることが好ましい。メタクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、フィルムに十分な機械的強度(靱性)を付与しつつ、製膜性や乾燥性も損なわれにくい。メタクリル系樹脂の重量平均分子量は、上記観点から、100~300万であることがより好ましい。
【0043】
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定することができる。具体的には、東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定することができる。測定条件は、後述する実施例と同様としうる。
【0044】
メタクリル系樹脂の含有量は、光学フィルムに対して好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上としうる。
【0045】
1-2.ゴム粒子
ゴム粒子は、光学フィルムの溶液製膜時の乾燥工程において、メタクリル系樹脂の分子鎖を動きやすくし、溶液製膜時の乾燥性を高めうる。また、ゴム粒子は、光学フィルムに柔軟性や靱性を付与しつつ、光学フィルムの表面に凹凸を形成して滑り性を付与しうる。
【0046】
ゴム粒子は、ゴム状重合体(架橋重合体)を含むグラフト共重合体、すなわち、ゴム状重合体(架橋重合体)からなるコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型のゴム粒子であることが好ましい。
【0047】
ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、-10℃以下であることが好ましい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)が-10℃以下であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、-15℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがさらに好ましい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定される。
【0048】
ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、例えばコア部やシェル部を構成するモノマー組成、コア部とシェル部の質量比(グラフト率)、および後述するような軟質層と硬質層の質量比などによって調整することができる。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)を低くするためには、後述するように、例えばコア部のアクリル系ゴム状重合体(a)を構成するモノマー混合物(a’)における、アルキル基の炭素数が4以上のアクリル酸エステル/共重合可能なモノマーの合計の質量比を多くする(例えば3以上、好ましくは4以上10以下とする)ことが好ましい。
【0049】
ゴム状重合体の例には、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、およびオルガノシロキサン系架橋重合体が含まれる。中でも、メタクリル系樹脂との屈折率差が小さく、光学フィルムの透明性が損なわれにくい観点では、(メタ)アクリル系架橋重合体が好ましく、アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)がより好ましい。
【0050】
すなわち、ゴム粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むアクリル系グラフト共重合体であることが好ましい。アクリル系ゴム状重合体(a)を含むアクリル系グラフト共重合体は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型の粒子であることが好ましい。そのようなコアシェル型の粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)の存在下で、メタクリル酸エステルを主成分とするモノマー混合物(b)を少なくとも1段以上重合して得られる多段重合体である。重合は、乳化重合法で行うことができる。
【0051】
(コア部について)
コア部を構成するアクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルを主成分とする架橋重合体である。アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルと、それと共重合可能な任意のモノマーとを含むモノマー混合物(a’)、および、1分子あたり2以上の非共役な反応性二重結合(ラジカル重合性基)を有する多官能性モノマーを重合させて得られる架橋重合体である。アクリル系ゴム状重合体(a)は、これらのモノマーを全部混合して重合させて得てもよいし、モノマー組成を変化させて2回以上で重合させて得てもよい。
【0052】
アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアルキル基の炭素数1~12のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。ゴム粒子のガラス転移温度を-15℃以下にする観点では、アクリル酸エステルは、少なくとも、炭素数4~10のアクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
【0053】
アクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(a’)100質量%に対して50~100質量%であることが好ましく、60~99質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることがさらに好ましい。アクリル酸エステルの含有量が50重量%以上であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすい。
【0054】
また、ゴム粒子のガラス転移温度を-10℃以下にしやすくする観点では、モノマー混合物(a’)における、アルキル基の炭素数が4以上のアクリル酸アルキルエステル/それ以外の共重合可能なモノマーの合計の質量比は、3以上であることが好ましく、4以上10以下であることがより好ましい。
【0055】
共重合可能なモノマーの例には、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類などが含まれる。
【0056】
多官能性モノマーの例には、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトロメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0057】
多官能性モノマーの含有量は、モノマー混合物(a’)の合計100質量%に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。多官能性モノマーの含有量が0.05質量%以上であると、得られるアクリル系ゴム状重合体(a)の架橋度を高めやすいため、得られるフィルムの硬度、剛性が損なわれすぎず、10質量%以下であると、フィルムの靱性が損なわれにくい。
【0058】
(シェル部について)
シェル部を構成するモノマー混合物(b)の重合体は、アクリル系ゴム状重合体(a)に対するグラフト成分である。モノマー混合物(b)は、メタアクリル酸エステルを主成分として含む。
【0059】
メタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルなどのアルキル基の炭素数1~12のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。メタクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0060】
メタクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(b)100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸エステルの含有量が50質量%以上であると、得られるフィルムの硬度、剛性を低下させにくくしうる。また、メチレンクロライドなどの溶媒との親和性を高める観点では、メタクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(b)100質量%に対して70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0061】
モノマー混合物(b)は、必要に応じて他のモノマーをさらに含んでもよい。他のモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルなどのアクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系モノマー類(環構造含有(メタ)アクリル系モノマー)が含まれる。
【0062】
(ゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)について)
アクリル系グラフト共重合体の例には、アクリル系ゴム状重合体(a)5~75質量部の存在下で、メタクリル酸エステルを主成分とするモノマー混合物(b)95~25質量部を少なくとも1段階で重合させた重合体が含まれる。
【0063】
アクリル系グラフト共重合体は、必要に応じて、アクリル系ゴム状重合体(a)の内側に硬質重合体をさらに含んでもよい。そのようなアクリル系グラフト共重合体は、以下の(I)~(III)の重合工程を経て得ることができる。
(I)メタクリル酸エステル40~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー60~0質量%からなるモノマー混合物(c1)、および多官能性モノマー0.01~10質量部(モノマー混合物(c1)の合計100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る工程
(II)アクリル酸エステル60~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー0~40質量%からなるモノマー混合物(a1)、および多官能性モノマー0.1~5質量部(モノマー混合物(a1)の合計100質量部に対して)を重合して軟質重合体を得る工程
(III)メタクリル酸エステル60~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー40~0質量%からなるモノマー混合物(b1)、および多官能性モノマー0~10質量部(モノマー混合物(b1)の合計100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る工程
【0064】
(I)~(III)の各重合工程の間に、他の重合工程がさらに含まれてもよい。
【0065】
アクリル系グラフト共重合体は、さらに(IV)の重合工程を経て得られてもよい。
(IV)メタクリル酸エステル40~100質量%、アクリル酸エステル0~60質量%、および共重合可能な他のモノマー0~5質量%からなるモノマー混合物(b2)、ならびに多官能性モノマー0~10質量部(モノマー混合物(b2)100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る。
【0066】
各工程で用いられるメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、共重合可能な他のモノマー、および多官能性モノマーは、前述と同様のものを用いることができる。
【0067】
軟質層は、光学フィルムに衝撃吸収性を付与しうる。軟質層の例には、アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系ゴム状重合体(a)からなる層が含まれる。硬質層は、光学フィルムの靱性を損ないにくくし、かつゴム粒子の製造時に、粒子の粗大化や塊状化を抑制しうる。硬質層の例には、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体からなる層が含まれる。
【0068】
アクリル系グラフト共重合体におけるグラフト率(アクリル系ゴム状重合体(a)に対するグラフト成分の質量比)は、10~250%であることが好ましく、25~200%であることがより好ましく、40~200%であることがより好ましく、60~150%であることがさらに好ましい。グラフト率が10%以上であると、シェル部の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの硬度や剛性が損なわれにくい。アクリル系グラフト共重合体のグラフト率が250%以下であると、アクリル系ゴム状重合体(a)の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの靱性や脆性改善効果が損なわれにくい。
【0069】
アクリル系グラフト共重合体のグラフト率は、以下の方法で測定される。
1)アクリル系グラフト共重合体2gを、メチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。
2)得られた不溶分の重量を下記式に当てはめて、グラフト率を算出する。
グラフト率(%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の重量)-(アクリル系ゴム状重合体(a)の重量)}/(アクリル系ゴム状重合体(a)の重量)]×100
【0070】
ゴム粒子の平均粒子径は、100~400nmであることが好ましく、150~300nmであることがより好ましい。平均粒子径が100nm以上であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすく、400nm以下であると、フィルムの透明性が低下しにくい。
【0071】
ゴム粒子の平均粒子径は、フィルム表面および切片のSEM撮影またはTEM撮影によって得た粒子100個の円相当径の平均値として特定される。円相当径は、撮影によって得られた粒子の投影面積を、同じ面積を持つ円の直径に換算することによって求めることができる。この際、倍率5000倍のSEM観察および/またはTEM観察によって観察されるゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)を、平均粒子径の算出に使用する。なお、分散液でのゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)の平均粒子径は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定することができる。
【0072】
ゴム粒子の含有量は、メタクリル系樹脂に対して2~30質量%であることが好ましい。ゴム粒子の含有量が2質量%以上であると、溶液製膜時の乾燥性を十分に高めうるだけでなく、得られるフィルムに十分な靱性を付与しうる。30質量%以下であると、ヘイズが上昇しすぎない。ゴム粒子の含有量は、上記観点から、メタクリル系樹脂に対して2~20質量%であることがより好ましい。
【0073】
また、本発明で用いられるメタクリル系樹脂は、フィルムに特定の共重合モノマーに由来する良好な靱性を付与しうることから、ゴム粒子の含有量を少なくすることができる。そのような観点では、ゴム粒子の含有量は、メタクリル系樹脂に対して5~10質量%であってもよい。
【0074】
1-3.他の成分
光学フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、微粒子、残留溶媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが含まれる。
【0075】
(微粒子)
光学フィルムは、滑り性をさらに高める観点などから、マット剤として、無機微粒子またはゴム粒子以外の有機微粒子をさらに含んでもよい。
【0076】
無機微粒子を構成する無機材料の例には、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、およびリン酸カルシウムが含まれ、ヘイズの増大を少なくする観点では、好ましくは二酸化ケイ素である。有機微粒子は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは80℃以上の樹脂粒子である。中でも、フィルムの靱性を高めやすい観点から、有機微粒子が好ましい。
【0077】
(有機溶媒)
光学フィルムは、後述するように溶液製膜法により製造されることから、溶液製膜法で用いられるドープの溶媒に由来する残留溶媒を含んでいてもよい。
【0078】
残留溶媒量は、光学フィルムに対して700ppm以下であることが好ましく、30~700ppmであることがより好ましい。残留溶媒の含有量は、後述する光学フィルムの製造工程における、支持体上に流延させたドープの乾燥条件によって調整されうる。
【0079】
光学フィルムの残留溶媒量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定することができる。ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法では、試料を容器に封入し、加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分を定量するものである。ヘッドスペース法では、ガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析法を用いることによって、高精度で揮発性物質やモノマーなどの定量も併せて行うことができる。
【0080】
他の成分の合計含有量は、光学フィルムに対して10質量%以下であることが好ましい。
【0081】
1-4.光学フィルムの物性
(乾燥係数)
光学フィルムは、前述の通り、高い乾燥効率で製造されうる。具体的には、光学フィルムの乾燥係数(D)は、0.02以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
【0082】
光学フィルムの乾燥係数(D)は、以下の方法で測定することができる。
1)まず、光学フィルムを所定の大きさにカットし、試料とする。この試料を、90℃で60分間乾燥させた後、質量を測定して、「加熱処理前質量」とする。
2)次いで、この試料を140℃で15分間加熱処理した後、質量を測定し、「加熱処理後質量」とする。
3)上記1)および2)で得られた値を下記式に当てはめて、加熱処理後の残留溶媒量Zを算出する。
残留溶媒量Z(%)=(試料の加熱処理前質量-試料の加熱処理後質量)/(試料の加熱処理後質量)×100
4)上記3)で得られた残留溶媒量Z(%)、初期値Zo(%)および加熱時間t(分)を、下記式に当てはめて、乾燥係数(D)を算出する。初期値Zo(%)は、5(%)とする。
式(II):D=(-1/t)×ln(Z/Zo)
【0083】
光学フィルムの乾燥係数(D)は、メタクリル系樹脂のモノマー組成によって調整することができる。光学フィルムの乾燥係数(D)を高くするためには、例えばメタクリル系樹脂中の特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量を多くしたり、特定の共重合モノマーにおける直鎖状アルキレン部位の炭素原子数を4~20の範囲内としたりすることが好ましい。
【0084】
(酸素透過率)
光学フィルムの、JIS K 7126-2(2006)に準拠して測定される酸素透過率は、200~700(cc/m2・day)であることが好ましい。酸素透過率が200(cc/m2・day)以上であると、乾燥性が高く、700(cc/m2・day)以下であると、光学フィルムの可撓性が高くなりすぎず、ハンドリング性が損なわれにくい。酸素透過率は、250~700(cc/m2・day)であることがより好ましく、350~700(cc/m2・day)であることがさらに好ましい。
【0085】
光学フィルムの酸素透過率は、メタクリル系樹脂のモノマー組成によって調整することができる。光学フィルムの酸素透過率を上記範囲内とするためには、メタクリル系樹脂中の特定の共重合モノマーに由来する構造単位の含有量を多くしたり、特定の共重合モノマーにおける直鎖状アルキレン部位の炭素原子数を4~20の範囲内としたりすることが好ましい。
【0086】
(ヘイズ)
光学フィルムは、透明性が高いことが好ましい。光学フィルムのヘイズは、4.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズは、試料40mm×80mmを25℃、60%RHでヘイズメーター(HGM-2DP、スガ試験機)で、JISK-6714に従って測定することができる。
【0087】
(位相差RoおよびRt)
光学フィルムは、例えばIPSモード用の位相差フィルムとして用いる観点では、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、0~10nmであることが好ましく、0~5nmであることがより好ましい。光学フィルムの厚み方向の位相差Rtは、-20~20nmであることが好ましく、-10~10nmであることがより好ましい。
【0088】
RoおよびRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(2a):Ro=(nx-ny)×d
式(2b):Rt=((nx+ny)/2-nz)×d
(式中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
【0089】
光学フィルムの面内遅相軸とは、フィルム面において屈折率が最大となる軸をいう。光学フィルムの面内遅相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
【0090】
RoおよびRtは、以下の方法で測定することができる。
1)光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。このフィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後のフィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRoおよびRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。
【0091】
光学フィルムの位相差RoおよびRtは、例えばメタクリル系樹脂の種類によって調整することができる。光学フィルムの位相差RoおよびRtを低くするためには、延伸によって位相差が出にくいメタクリル系樹脂を用いる(例えば負の複屈折を有するモノマー由来の構造単位と、正の複屈折を有するモノマー由来の構造単位とで位相差を相殺できるようなモノマー比率にする)ことが好ましい。
【0092】
(厚み)
光学フィルムの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは5~40μmとしうる。
【0093】
2.光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に制限されないが、高分子量の樹脂を用いることができるなど、使用できる材料の制限が少ない観点から、溶液製膜法(キャスト法)が好ましい。
【0094】
すなわち、本発明の光学フィルムは、1)少なくともメタクリル系樹脂と、ゴム粒子と、溶媒とを含むドープを得る工程と、2)得られたドープを支持体上に流延し、乾燥および剥離して膜状物を得る工程と、3)得られた膜状物をさらに乾燥させる工程とを経て製造されうる。
【0095】
1)の工程について
本工程では、例えばメタクリル系樹脂と、ゴム粒子とを、溶媒に溶解または分散させて、ドープを得ることができる。メタクリル系樹脂およびゴム粒子は、それぞれ前述のものである。
【0096】
ドープに用いられる溶媒は、少なくともメタクリル系樹脂を溶解させうる有機溶媒(良溶媒)を含む。良溶媒の例には、メチレンクロライドなどの塩素系有機溶媒や;酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどの非塩素系有機溶媒が含まれる。中でも、メチレンクロライドが好ましい。
【0097】
ドープに用いられる溶媒は、貧溶媒をさらに含んでいてもよい。貧溶媒の例には、炭素原子数1~4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールが含まれる。ドープ中のアルコールの比率が高くなると、膜状物がゲル化しやすく、金属支持体からの剥離が容易になりやすい。炭素原子数1~4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいことなどからエタノールが好ましい。
【0098】
ドープの調製は、溶媒に、メタクリル系樹脂と、ゴム粒子とをそれぞれ直接添加し、混合して調製してもよいし;溶媒に、メタクリル系樹脂を溶解させた樹脂溶液と、溶媒にゴム粒子を分散させたゴム粒子分散液とをそれぞれ調製しておき、それらを混合して調製してもよい。
【0099】
2)の工程について
本工程では、得られたドープを、支持体上に流延する。ドープの流延は、流延ダイから吐出させて行うことができる。
【0100】
次いで、支持体上に流延されたドープ中の溶媒を適度に蒸発させた後(乾燥させた後)、支持体から剥離して、膜状物を得る。
【0101】
支持体から剥離する際のドープの残留溶媒量(剥離時の膜状物の残留溶媒量)は、例えば25質量%以上であることが好ましく、30~37質量%であることがより好ましく、30~35質量%であることがさらに好ましい。剥離時の残留溶媒量が25質量%以上であると、剥離後の膜状物から溶媒を一気に揮発させやすい。また、剥離時の残留溶媒量が37質量%以下であると、剥離による膜状物が伸びすぎるのを抑制できる。
【0102】
剥離時のドープの残留溶媒量は、下記式で定義される。以下においても同様である。
ドープの残留溶媒量(質量%)=(ドープの加熱処理前質量-ドープの加熱処理後質量)/ドープの加熱処理後質量×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、140℃15分の加熱処理をいう。
【0103】
剥離時の残留溶媒量は、支持体上でのドープの乾燥温度や乾燥時間、支持体の温度などによって調整することができる。
【0104】
3)の工程について
本工程では、得られた膜状物を乾燥させる。
【0105】
乾燥は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。また、乾燥は、必要に応じて延伸しながら行ってもよい。
【0106】
延伸は、求められる光学特性に応じて行えばよく、少なくとも一方の方向に延伸することが好ましく、互いに直交する二方向に延伸(例えば、膜状物の幅方向(TD方向)と、それと直交する搬送方向(MD方向)の二軸延伸)してもよい。
【0107】
延伸倍率は、光学フィルムを、例えばIPS用の位相差フィルムとして用いる観点では、1.01~2倍とすることができる。延伸倍率は、(延伸後のフィルムの延伸方向大きさ)/(延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)として定義される。なお、二軸延伸を行う場合は、TD方向とMD方向のそれぞれについて、上記延伸倍率とすることが好ましい。
【0108】
なお、光学フィルムの面内遅相軸方向(面内において屈折率が最大となる方向)は、通常、延伸倍率が最大となる方向である。
【0109】
延伸時の乾燥温度(延伸温度)は、メタクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg(℃)以上であることが好ましく、(Tg+10)~(Tg+50)℃であることがより好ましい。延伸温度がTg℃以上であると、溶媒を適度に揮発させやすいため、延伸張力を適切な範囲に調整しやすく、(Tg+50)℃以下であると、溶媒が揮発しすぎないため、延伸性が損なわれにくい。延伸温度は、例えば115℃以上としうる。
【0110】
延伸温度は、(a)テンター延伸機などのように非接触加熱型で乾燥させる場合は、延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度、(b)熱ローラーなどの接触加熱型で乾燥させる場合は、接触加熱部の温度、あるいは(c)膜状物(被乾燥面)の表面温度のいずれかの温度として測定することができる。中でも、(a)延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
【0111】
延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量は、剥離時の膜状物中の残留溶媒量と同程度であることが好ましく、例えば20~30質量%であることが好ましく、25~30質量%であることがより好ましい。
【0112】
膜状物のTD方向(幅方向)の延伸は、例えば膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げる方法(テンター法)で行うことができる。膜状物のMD方向の延伸は、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用する方法(ロール法)で行うことができる。
【0113】
残留溶媒量をより低減させる観点から、延伸後に得られた膜状物をさらに乾燥(後乾燥)させることが好ましい。例えば、延伸後に得られた膜状物を、ロールなどで搬送しながらさらに乾燥させることが好ましい。
【0114】
このときの乾燥温度(延伸しない場合の乾燥温度または延伸後の乾燥温度)は、メタクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-40)~(Tg+30)℃であることが好ましく、(Tg-30)~Tg℃であることがより好ましい。乾燥温度が(Tg-40)℃以上、好ましくは(Tg-30)℃以上であると、延伸後の膜状物から溶媒を十分に揮発除去しやすく、(Tg+30)℃以下、好ましくはTg℃以下であると、膜状物の変形などを高度に抑制しうる。乾燥温度は、前述と同様に、(a)延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
【0115】
本発明では、膜状物が、前述のメタクリル系樹脂を含む。そのような膜状物は、溶媒分子がメタクリル系樹脂の樹脂鎖を押しのけながら移動する際に、溶媒分子が移動可能な比較的大きな空間を形成しうることから、乾燥工程、特に延伸後の乾燥工程において、膜状物から溶媒を揮発除去させやすくしうる。それにより、乾燥速度を従来よりも高めることができるか、または低い乾燥温度でも従来と同等以上の乾燥速度を実現することができる。
【0116】
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置における光学部材として用いられる。光学部材の例には、偏光板保護フィルム(位相差フィルムや輝度向上フィルムなどを含む)、透明基板、光拡散フィルムが含まれる。中でも、本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルムとして用いられることが好ましい。
【0117】
3.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムと、それらの間に配置された接着層とを有する。
【0118】
3-1.偏光子
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0119】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし;ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
【0120】
例えば、特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、けん化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。
【0121】
偏光子の厚みは、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化するため等から、5~20μmであることがより好ましい。
【0122】
3-2.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面(少なくとも液晶セルと対向する面)に配置されている。光学フィルムは、偏光板保護フィルムとして機能しうる。
【0123】
本発明の光学フィルムが偏光子の一方の面のみに配置されている場合、偏光子の他方の面には、他の光学フィルムが配置されうる。他の光学フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY-HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC8UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フィルム(株)製)などが含まれる。
【0124】
他の光学フィルムの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは40~80μmでありうる。
【0125】
3-3.接着層
接着層は、光学フィルム(または他の光学フィルム)と偏光子との間に配置されている。接着層の厚みは、例えば0.01~10μm、好ましくは0.03~5μm程度でありうる。
【0126】
3-4.偏光板の製造方法
本発明の偏光板は、偏光子と本発明の光学フィルムを、接着剤を介して貼り合わせて得ることができる。接着剤は、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)、または活性エネルギー線硬化性接着剤でありうる。活性エネルギー線硬化性接着剤は、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、またはそれらの併用物のいずれであってもよい。
【0127】
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、液晶セルの一方の面に配置された第1偏光板と、液晶セルの他方の面に配置された第2偏光板とを含む。
【0128】
液晶セルの表示モードは、例えばSTN(Super-Twisted Nematic)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、HAN(Hybridaligned Nematic)、VA(Vertical Alignment、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment))、IPS(In-Plane-Switching)などでありうる。中でも、VA(MVA,PVA)モードおよびIPSモードが好ましい。
【0129】
第1および第2偏光板のうち一方または両方が、本発明の偏光板である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムが液晶セル側となるように配置されることが好ましい。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0131】
1.光学フィルムの材料
(1)メタクリル系樹脂の調製
表1に示されるメタクリル系樹脂1~13を準備した。
【0132】
メタクリル系樹脂1~13の共重合モノマーの可動体積、ガラス転移温度(Tg)および重量平均分子量(Mw)を、以下の方法でそれぞれ測定した。
【0133】
〔可動体積〕
1)まず、共重合モノマーの構造について、室温にて、NVTアンサンブルでQuench計算を500ps計算し、1psごとにエネルギー評価を行った。力場には、Dreidingを使用した。そして、Quench計算の結果を、Radius of gyration(慣性半径)解析モジュールで解析して、慣性半径分布の平均値(平均慣性半径値)を「慣性半径」として算出した。解析には、シミュレーションソフトとして、Materials Studio 2017 R2 Forciteモジュール(ダッソー・システムズ・バイオビア株式会社)を用いた。そして、得られた共重合モノマーの慣性半径に等しい半径を有する剛球体の体積を、「剛球体体積」として算出した。
2)上記1)で得られた剛体球体積と、共重合体モノマーの分子量とを、下記式(1)に当てはめて、可動体積を算出した。
式(1):可動体積=共重合モノマーの剛球体体積/共重合モノマーの分子量
【0134】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
メタクリル系樹脂のガラス転移温度を、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定した。
【0135】
〔重量平均分子量(Mw)〕
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定した。試料20±0.5mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、0.45mmのフィルターで濾過した。この溶液をカラム(温度40℃)に100ml注入し、検出器RI温度40℃で測定し、スチレン換算して、重量平均分子量を求めた。
【0136】
【0137】
(2)ゴム粒子
<ゴム粒子R1>
アクリル系ゴム粒子M-210(コア部:アクリル系ゴム状重合体、シェル部:メタアクリル酸メチルを主成分とするメタクリル酸エステル系重合体、のコアシェル型のゴム粒子、Tg:約-10℃、平均粒子径:220nm)
【0138】
<ゴム粒子R2>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の化合物を仕込んだ。
脱イオン水:175質量部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸:0.104質量部
ホウ酸:0.4725質量部
炭酸ナトリウム:0.04725質量部
【0139】
重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、モノマー混合物(c1)27質量部(メタクリル酸メチル97質量%、アクリル酸ブチル3質量%)およびメタクリル酸アリル0.135質量部からなる混合物の26質量%を重合機に一括で追加し、その後、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレート0.0645質量部、エチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム0.0056質量部、硫酸第一鉄0.0014質量部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.0207質量部を追加し、その15分後にt-ブチルハイドロパーオキサイド0.0345質量部を追加し、さらに15分重合を継続させた。
次に、水酸化ナトリウム0.0098質量部を2質量%水溶液の形態で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.0852質量部をそのまま追加し、上記混合物の残り74質量%を60分かけて連続的に添加した。添加終了30分後に、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.069質量部を追加し、さらに30分重合を継続することにより、重合物を得た。重合転化率は100.0%であった。
【0140】
その後、水酸化ナトリウム0.0267質量部を2質量%水溶液の形態で、過硫酸カリウム0.08質量部を2質量%水溶液の形態で添加し、次いで、モノマー混合物(a1)(アクリル酸ブチル82質量%、メタクリル酸メチル18質量%)50質量部およびメタクリル酸アリル0.75質量部からなる混合物を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム0.015質量部を2質量%水溶液の形態で添加し、120分重合を継続し、重合物を得た。重合転化率は99.0%であり、平均粒子径は225nmであった。
【0141】
その後、過硫酸カリウム0.023質量部を2質量%水溶液の形態で添加し、モノマー混合物(b1)15質量部(メタクリル酸メチル95質量%、アクリル酸ブチル5質量%)を45分かけて連続的に添加し、さらに30分重合を継続した。
【0142】
その後、モノマー混合物(b2)8質量部(メタクリル酸メチル52質量%、アクリル酸ブチル48質量%)を25分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続することにより、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。
【0143】
得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(ゴム粒子C1)を得た。ゴム粒子C1のグラフト率は24.2%であり、ガラス転移温度(Tg)は-30℃、平均粒子径は250nmであった。
【0144】
(3)微粒子
<微粒子A1>
微粒子A1として、以下の方法で調製した有機微粒子を用いた。
【0145】
(種粒子の作製)
攪拌機、温度計を備えた重合器に、脱イオン水1000gを入れ、そこへメタクリル酸メチル50g、t-ドデシルメルカプタン6gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを溶解した脱イオン水20gを添加した後、10時間重合させた。得られたエマルジョン中の種粒子の平均粒子径は、0.05μmであった。
【0146】
(有機微粒子の作製)
攪拌機、温度計を備えた重合器に、ゲル化抑制剤としてラウリル硫酸ナトリウム2.4gを溶解した脱イオン水800gを入れ、そこへ単量体混合物としてメタクリル酸メチル66g、スチレン20gおよびエチレングリコールジメタクリレート64gと、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gとの混合液を入れた。次いで、混合液をT.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)にて攪拌して、分散液を得た。
【0147】
得られた分散液に、上記種粒子を含むエマルジョン60gを加え、30℃で1時間攪拌して種粒子に単量体混合物を吸収させた。次いで、吸収させた単量体混合物を、窒素気流下で50℃、5時間加温して重合させた後、室温(約25℃)まで冷却して、重合体微粒子(有機微粒子)のスラリーを得た。得られた有機微粒子の平均粒子径は、0.14μmであり、ガラス転移温度(Tg)は、280℃であった。
【0148】
(有機微粒子の集合体の作製)
このエマルジョンを噴霧乾燥機としての坂本技研社製のスプレードライヤー(型式:アトマイザーテイクアップ方式、型番:TRS-3WK)で次の条件下にて噴霧乾燥して複合体1の集合体を得た。重合体粒子の集合体の平均粒子径は、30μmであった。
供給速度:25ml/min
アトマイザー回転数:11000rpm
風量:2m3/min
噴霧乾燥機のスラリー入口温度:100℃
重合体粒子集合体出口温度:50℃
【0149】
<微粒子A2>
微粒子A2として、無機微粒子(アエロジル(登録商標)R812、日本アエロジル株式会社製)を用いた。
【0150】
ゴム粒子および微粒子の平均粒子径は、以下の方法で測定した。
【0151】
(平均粒子径)
得られた分散液中の微粒子の分散粒径を、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定した。なお、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)用いて測定される微粒子の平均粒子径は、フィルムをTEM観察して測定される微粒子の平均粒子径とほぼ一致するものである。
【0152】
2.光学フィルムの作製および評価
<光学フィルム101の作製>
(ゴム粒子分散液の調製)
20質量部のゴム粒子R1と、380質量部のメチレンクロライドとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散し、ゴム粒子分散液を得た。
【0153】
(ドープの調製)
次いで、下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。次いで、加圧溶解タンクに、メタクリル系樹脂1を撹拌しながら投入した。次いで、上記調製した微粒子分散液を投入して、これを60℃に加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。加熱温度は、室温から5℃/minで昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。得られた溶液を濾過した後、ドープを得た。
メタクリル系樹脂1:100質量部
メチレンクロライド:318質量部
エタノール:61質量部
ゴム粒子分散液:400質量部
【0154】
(製膜)
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。ステンレスベルトの搬送速度は20m/minとした。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が30%になるまで溶剤を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したフィルムを多数のロールで搬送させながら、得られた膜状物を、テンターにて(Tg+10)℃(Tgは、メタクリル系樹脂のTgを示す)の条件下で幅方向に1.2倍延伸した。その後、ロールで搬送しながら、(Tg-30)℃(Tgは、メタクリル系樹脂のTgを示す)でさらに乾燥させ、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットして巻き取り、膜厚40μmの光学フィルムを得た。
【0155】
<光学フィルム102~103、107~108、110~113および115~117の作製>
メタクリル系樹脂の種類を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム101と同様にして、光学フィルムを作製した。
【0156】
<光学フィルム104の作製>
(微粒子分散液1の調製)
12質量部の上記微粒子A1と、388質量部のメチレンクロライドとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散し、微粒子分散液1を得た。
【0157】
そして、ドープ組成を以下のように変更した以外は光学フィルム102と同様にして光学フィルムを得た。
メタクリル系樹脂2:100質量部
メチレンクロライド:296質量部
エタノール:61質量部
ゴム粒子分散液:400質量部
微粒子分散液1:23質量部
【0158】
<光学フィルム105の作製>
(微粒子分散液2の調製)
11.3質量部の上記微粒子A2と、84質量部のエタノールとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散させた。
一方、溶解タンク中の十分攪拌されているメチレンクロライド(100質量部)に、5質量部の上記得られた溶液を、ゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線株式会社製のファインメットNFでろ過し、微粒子分散液2を得た。
【0159】
そして、微粒子分散液1を微粒子分散液2に変更し、かつフィルム中の微粒子の含有量が表2に示される値となるように、当該微粒子分散液2の配合量を調整した以外は光学フィルム104と同様にして、光学フィルムを得た。
【0160】
<光学フィルム106の作製>
ゴム粒子の種類を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様にして光学フィルムを得た。
【0161】
<光学フィルム109、114の作製>
ゴム粒子の含有量を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様にして光学フィルムを得た。
【0162】
得られた光学フィルム101~117の酸素透過率、乾燥係数、およびMIT屈曲性を、それぞれ以下の方法で評価した。
【0163】
〔酸素透過率〕
光学フィルムの酸素透過率を、JIS K 7126-2 2006に準拠して測定した。具体的には、試験片として、100mm角のフィルムを準備した。このフィルムの酸素透過率を、ガス透過試験機(MOCON社製酸素透過率測定器OX-TRAN1_50)を用いて、JIS K 7126-2 2006に準拠して測定した。測定温度は、23℃とした。
【0164】
〔乾燥係数〕
1)まず、光学フィルムを所定の大きさにカットし、試料とした。この試料を、90℃で60分間乾燥させた後、質量を測定して、「加熱処理前質量」とした。
2)次いで、この試料を140℃で15分間加熱処理した後、質量を測定し、「加熱処理後質量」とした。
3)上記1)および2)で得られた値を下記式に当てはめて、加熱処理後の残留溶媒量Zを算出した。
残留溶媒量Z(%)=(試料の加熱処理前質量-試料の加熱処理後質量)/(試料の加熱処理後質量)×100
4)次いで、得られた残留溶媒量Z(%)、初期値Zo(%)および加熱時間t(分)を、下記式に当てはめて、乾燥係数(D)を算出した。初期値Zo(%)は、5(%)とした。
式(II):D=(-1/t)×ln(Z/Zo)
【0165】
そして、以下の基準に基づいて、乾燥性を評価した。
◎:乾燥係数(D)が0.1以上
○:乾燥係数(D)が0.05以上0.1未満
△:乾燥係数(D)が0.02以上0.05未満
×:乾燥係数(D)が0.02未満
Dの値が大きいほど、溶液製膜法で製造する際の溶媒の抜け(乾燥性)がよいことを示す。△以上であれば良好と判断した。
【0166】
〔MIT屈曲性〕
得られた光学フィルムを、幅15mm、長さ150mmにカットし、試験片とした。この試験片を、温度25℃、相対湿度65%RHの状態で1時間以上静置させた。その後、耐折度試験機(テスター産業株式会社製、MIT、BE-201型、折り曲げ曲率半径0.38mm)を用いて、JIS P8115:2001に準拠して、荷重500gの条件で、試験片が破断するまでの折り曲げ回数を測定した。そして、光学フィルムのMIT屈曲性を、以下の基準で評価した。
◎:20000回以上
○:15000回~19999回
△:5000回~14999回
×:4999回以下
破断するまでの折り曲げ回数が多いほど、屈曲性に優れており、繰り返しの折り曲げ耐性に優れていることを示す。
△以上であれば良好と判断した。
【0167】
光学フィルム101~117の評価結果を、表2に示す。
【0168】
なお、得られた光学フィルム101~117の残留溶媒量を前述のヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定したところ、いずれも30~600質量ppmの範囲内の残留溶媒量であった。
【0169】
【0170】
表2に示されるように、共重合モノマーの可動体積が式(1)の範囲内であるメタクリル系樹脂と、ゴム粒子とを含む光学フィルム101~111および115~117は、いずれも高い乾燥係数(乾燥性)と、高い屈曲性とを有することがわかる。
【0171】
特に、共重合モノマーの可動体積を1.2以上とすることで、乾燥性がより高くなることがわかる(光学フィルム103と107の対比)。これは、共重合モノマーの可動体積がより大きいと、樹脂マトリクス中で、溶媒分子がメタクリル系樹脂の樹脂鎖を押しのけながら移動する際に形成される、溶媒が移動しうる空間をより大きくすることができるためであると考えられる。また、共重合モノマーの可動体積を3.2以下とすることで、乾燥性がより高くなることがわかる(フィルム101と108の対比)。これは、共重合モノマーの可動体積が大きすぎないと、共重合モノマーに由来する側鎖同士の絡まりが生じにくく、それにより、溶媒分子が移動する際に形成される、溶媒分子が移動できる空間が小さくなるのを抑制でき、乾燥性が損なわれにくくなるためであると考えられる。
【0172】
また、共重合モノマーの共重合比が10~30質量%程度であると、得られる光学フィルムの乾燥性がさらに向上することがわかる(光学フィルム102、110および111の対比)。
【0173】
また、ゴム粒子の含有量が少なくても、良好な乾燥性および屈曲性を有することがわかる(光学フィルム102と109の対比)。
【0174】
また、有機微粒子をさらに含むことで、得られる光学フィルムの屈曲性をより高めうることがわかる(光学フィルム102と104の対比)。
【0175】
また、表1に示されるように、他の共重合モノマーとして環構造を有するモノマーに由来する構造単位をさらに含むメタクリル系樹脂を用いたり、分子量がさらに高いメタクリル系樹脂を用いたりすることで、樹脂のTgがさらに高くなり、フィルムの耐熱性が高まることが示唆される(光学フィルム102と116または117との対比)。
【0176】
これに対し、共重合モノマーの可動体積が式(1)の範囲外であるメタクリル系樹脂を含む光学フィルム112および113は、いずれも乾燥係数(乾燥性)が低いことがわかる。光学フィルム112では、共重合モノマーの可動体積が小さいため、溶媒が移動しうる空間が小さくなりやすく;光学フィルム113では、共重合モノマーの可動体積が大きすぎるため、共重合モノマー自体の絡まりが生じて、溶媒の移動できる空間が小さくなりやすく、いずれも乾燥性が低下したと考えられる。
【0177】
また、ゴム粒子を含まない光学フィルム114は、乾燥性も屈曲性も低いことがわかる。屈曲性の低下は、ゴム粒子を含まないことにより光学フィルムの脆性が高くなったためと考えられ;乾燥性の低下は、ゴム粒子を含まないことにより、乾燥中に樹脂が動きにくく、溶媒分子が移動しにくいためであると考えられる。
【0178】
本出願は、2019年2月15日出願の特願2019-025927に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明によれば、高い乾燥効率で得ることができ、かつ十分な屈曲性を有する光学フィルムを提供することができる。