IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特許7468370X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法
<>
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図1
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図2
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図3
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図4
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図5
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図6
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図7
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図8
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図9
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図10
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図11
  • 特許-X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240409BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240409BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240409BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240409BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/40 500D
A61B6/42 500X
A61B6/46 502
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021004449
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109100
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光毅
(72)【発明者】
【氏名】田中 文哲
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-109891(JP,A)
【文献】特開2000-197621(JP,A)
【文献】特開2008-125981(JP,A)
【文献】特開2006-025893(JP,A)
【文献】特開2004-154560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が横たわる寝台と、
前記被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源に対向し前記X線源から照射されたX線を検出する検出器と、前記X線源と前記検出器とを接続するアームと、を含む撮影部と、
前記撮影部を移動させる目標となる複数の目標位置と、前記複数の目標位置に向かう順番とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記順番に従って前記複数の目標位置を順次選択する制御部と、
前記制御部が選択した目標位置に向けて前記撮影部を移動させる駆動部を備え、
前記複数の目標位置には、第1の目標位置と、前記第1の目標位置の次の目標位置である第2の目標位置とが含まれ、
前記制御部は、
X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部を含み、
目標位置として前記第1の目標位置が選択されている状態かつ、前記第1の目標位置とは異なる位置に前記撮影部が位置する状態において、前記第1の判断部によりX線撮影の実行があったと判断された場合目標位置を前記第1の目標位置から前記第2の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている、X線透視撮影装置。
【請求項2】
前記撮影部の現在情報を取得する位置情報取得部をさらに備え、
前記制御部は、
前記位置情報取得部が取得する前記撮影部の現在位置情報と、現在選択されている目標位置との一致の有無を判断する第2の判断部を含み、
前記第1の判断部によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、前記第2の判断部により一致すると判断された場合に加えて、前記第2の判断部が一致しないと判断した場合でも、次の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項3】
前記撮影部を前記目標位置に向かって移動させる操作と、前記撮影部を目標位置とは異なる方向に移動させる操作とを受け付ける操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記撮影部を前記目標位置に向かって移動させる操作を受け付けた場合に前記記憶部に記憶された前記目標位置に向かって前記撮影部を移動させる制御を行うとともに、前記撮影部を前記目標位置とは異なる方向に移動させる操作を受け付けた場合に前記目標位置とは異なる方向に前記撮影部を移動させる制御を行い、前記第1の判断部によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、撮影を完了した後に前記複数の目標位置を順次切り替える制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載のX線透視撮影装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の判断部が一致しない旨の判断を行った場合に、撮影終了時の前記撮影部の位置と、撮影を行うために前記撮影部を移動させる前記目標位置との差があらかじめ設定された範囲内である場合には、移動後の前記撮影部が前記目標位置に到達していない場合でも撮影を完了した後に前記複数の目標位置を順次切り替える制御を行うように構成されているとともに、撮影終了時の前記撮影部の位置と撮影を行うために前記撮影部を移動させる前記目標位置との差が予め設定された範囲外である場合には前記目標位置を切り替えない制御を行うように構成されている、請求項2に記載のX線透視撮影装置。
【請求項5】
前記撮影部のアームは、円弧状の形状を有し、
撮影終了時の前記撮影部の位置と撮影を行うために前記撮影部を移動させる前記目標位置との差は、前記被検体の頭と足とを結ぶ前記寝台の長手方向に延びる線を軸として前記撮影部のアームが回動する第1の回動角度の差、および、前記撮影部のアームが、前記撮影部のアームの周方向に回動する第2の回動角度の差である、請求項4に記載のX線透視撮影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記目標位置を選択する操作入力を受け付けることにより前記複数の目標位置を切り替える制御を行うように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のX線透視撮影装置。
【請求項7】
被検体を撮影する撮影部を備え、
前記撮影部を移動させる目標となる複数の目標位置と、前記複数の目標位置に向かう順番とが関連付けて記憶されているX線透視撮影装置のX線透視撮影方法であって、
前記撮影部によってX線撮影が行われたか否かを判定する工程と、
X線撮影の撮影が行われたと判定した場合に、次の目標位置に切替える工程とを備え、
前記複数の目標位置には、第1の目標位置と、前記第1の目標位置の次の目標位置である第2の目標位置とが含まれ、
次の目標位置に切替える工程は、目標位置として前記第1の目標位置が選択されている状態かつ、前記第1の目標位置とは異なる位置に前記撮影部が位置する状態において、X線撮影の実行があったと判断された場合に、目標位置を前記第1の目標位置から前記第2の目標位置に切り替えることを含む、X線透視撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透視撮影装置およびX線透視撮影方法に関し、特に、撮影部を移動させる目標となる複数の目標位置と、複数の目標位置に向かう順番とが関連付けて記憶される記憶部を備えるX線透視撮影装置およびX線透視撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影部を移動させる目標となる複数の目標位置と、複数の目標位置に向かう順番とが関連付けて記憶される記憶部を備えるX線透視撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の医用画像撮影装置は、被検体に関する医用画像を撮影する撮影手段と、撮影手段を様々な位置で支持する支持機構と、撮影手段の位置とその順番を関連付けてデータとして複数記憶する手段と、記憶された位置とその順番とに従って支持機構を制御して撮影手段の位置を順番に変更する制御手段とを備える。
【0004】
上記特許文献1に開示されている医用画像撮影装置では、制御手段は、記憶する手段に記憶された撮影手段の位置のデータとその順番とからなるシーケンシャルポジショニングデータに従って撮影手段を記憶された位置まで移動させる。そして、撮影の終了後にネクストポジショニングスイッチが押されることにより、制御手段は、記憶する手段から次の位置に関するデータを読み出すとともに、撮影手段を次の位置まで移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-197621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、被検体によって個体差(個人差)があるため、撮影位置を微調整し、撮影を行う場合がある。また、各撮影位置における一連の撮影の途中で登録されていない位置で撮影を行う場合もある。
【0007】
しかしながら、記憶部に記憶された位置に撮影部が移動したことにより次の撮影位置のデータを読み出すように構成されたX線透視撮影装置では、現在の位置から次の位置まで移動する間に撮影部を停止させて撮影を行った場合、または登録されていない位置で撮影が行われた場合に、撮影部の移動が完了していないために次の撮影位置が読み出されないという問題点があるとともに、次の撮影位置が読み出されないことにより次の撮影位置(目標位置)を選び直し、ポジショニングスイッチを再度押す必要があるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、任意の撮影位置で撮影した場合に次の目標位置を選択しなくとも次の目標位置に切り替えることが可能なX線透視撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるX線透視撮影装置は、被検体が横たわる寝台と、被検体にX線を照射するX線源と、X線源に対向しX線源から照射されたX線を検出する検出器と、X線源と検出器とを接続するアームと、を含む撮影部と、撮影部を移動させる目標となる複数の目標位置と、複数の目標位置に向かう順番とを関連付けて記憶する記憶部と、順番に従って複数の目標位置を順次選択する制御部と、制御部が選択した目標位置に向けて撮影部を移動させる駆動部を備え、複数の目標位置には、第1の目標位置と、第1の目標位置の次の目標位置である第2の目標位置とが含まれ、制御部は、X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部を含み、目標位置として第1の目標位置が選択されている状態かつ、第1の目標位置とは異なる位置に撮影部が位置する状態において、第1の判断部によりX線撮影の実行があったと判断された場合目標位置を第1の目標位置から第2の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
上記一の局面におけるX線透視撮影装置では、制御部は、X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部を含み、第1の判断部によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている。これにより、制御部が、第1の判断部によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置に切り替える制御を行うことにより、移動後の撮影部の位置に関わらず撮影を完了することによって制御部が目標位置を切り替える制御を行うため、目標位置以外の位置で撮影が行われた場合でも目標位置を切り替えることができる。この結果、任意の撮影位置で撮影した場合に次の撮影位置を選択しなくとも次の目標位置に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】X線透視撮影装置の構成を説明するための図である。
図2図2(A)は、撮影方向を説明するための模式図であり、被検体の側方から見た図である。図2(B)は、撮影方向を説明するための模式図であり、被検体の足側から見た模式図である。
図3】寝台と撮影部との相対位置について説明するための図である。
図4】X線撮像装置の制御部的な構成を示すブロック図である。
図5】撮影部の回動機構および移動機構の構成を説明するための図である。
図6】表示部に表示された目標位置の一例を示す図である。
図7図7(A)は、RAOの位置で撮影する際の回動機構によるアームの回動軸周りの回動を説明するための図である。図7(B)は、LAOの位置で撮影する際の回動機構によるアームの回動軸周りの回動を説明するための図である。
図8図8(A)は、CRANIALの位置で撮影する際の回動機構によるアームの周方向の回動を説明するための図である。図8(B)は、CAUDALの位置で撮影する際の回動機構によるアームの周方向の回動を説明するための図である。
図9】シーケンスモードにおける制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
図10】撮影部の移動制御の一例を示すフローチャートである。
図11】第1変形例のシーケンスモードにおける制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
図12】第2変形例における表示部に表示された目標位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(X線透視撮影装置の全体構成)
図1図8を参照して、本発明の一実施形態によるX線透視撮影装置100について説明する。
【0014】
図1に示すように、X線透視撮影装置100は、被検体50の対象部位における疾患について診断を行うための装置である。対象部位は、たとえば、心臓の血管(冠動脈)であるが、腹部または下肢であってもよい。
【0015】
本実施形態によるX線透視撮影装置100は、寝台1と、撮影部2と、記憶部3と、制御部4と、操作部5と、駆動部6と、位置情報取得部7とを備える。X線透視撮影装置100は、記憶部3に記憶された複数の目標位置40に基づいて、対象部位を複数の角度および位置から順次撮影する。なお、本実施形態において、X線透視撮影装置100が、記憶部3に記憶された複数の目標位置40に基づいて対象部位を複数の角度および位置から順次撮影を行うモードをシーケンスモードとする。
【0016】
寝台1は、被検体50を横たえる天板11と、寝台1を下方から支える基台12とを含む。寝台1(天板11)の長手方向と、被検体50の頭と足とを結ぶ方向とが同じなるように、被検体50を天板11に横たえる。ここで、図1の状態において、寝台1の長手方向をX方向とする。また、被検体50の頭が配置される側をX1側とし、足が配置される側をX2側とする。また、X方向に直交する寝台1の短手方向(被検体50の左右方向)をY方向とする。また、仰向けで被検体50が横たわったときの被検体50の右手側をY1側とし、左手側をY2側とする。また、X方向およびY方向に直交する寝台1の上下方向をZ方向とする。また、天板11側をZ1側とし、基台12側をZ2側とする。基台12は、寝台1の底面側(Z2側)の一部分に設けられている。
【0017】
撮影部2は、X線源21と、検出器22と、アーム23とを備える。X線源21は、図示しないX線管を含んでいる。X線管は、内部の陽極および陰極のそれぞれに電流を流すことにより過熱させるとともに、陽極と陰極との間に電圧をかけることにより陰極から飛び出した熱電子が陽極に衝突する際にX線を放射するように構成されている。また、X線管で発生したX線は、検出器22に向けて照射されるように構成されている。なお、X線管にかけられる管電圧を変化させることにより、管電圧に応じて、照射されるX線の透視線量(照射強度)が決まる。また、X線源21は、X線を照射している間は、制御部4に信号を送信するように構成されている。
【0018】
検出器22は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器22は、X線源21により照射され被検体50を透過したX線を受像して、受像したX線を電気信号に変換するように構成されている。検出器22は、内部に複数の画素(区画)を有する撮影素子(図示せず)を有し、対応する画素ごとにX線の強度を検出するとともに、画素ごとのX線の情報(検出信号)を画素値として電気信号(デジタルデータ)に変換する。電気信号に変換されたX線の情報は、制御部4に送信される。
【0019】
アーム23は、円弧状の形状を有している。アーム23の一端にはX線源21が接続されるとともに、他端には検出器22が接続されている。アーム23は、いわゆるCアームである。アーム23により、X線源21と検出器22とは、寝台1に横たわっている被検体50を挟んで対向するように配置される。また、寝台1の基台12が天板11の一部分にしか設けられていないため、基台12の設けられていない部分にアーム23を挿入するとともに、X線源21を寝台1の底面側(Z2側)に配置することができる。本実施形態では、X線透視撮影装置100は、アーム23を1つ備えるシングルプレーン型である。
【0020】
アーム23は、アーム基台24に回動可能に取り付けられている。アーム基台24には、アーム23を回動させる回動機構61が内部に配置されている。なお、回動機構61は、特許請求の範囲の「駆動部」の一例である。
【0021】
撮影部2は、図2(A)に示す被検体50を載置する寝台1の長手方向(X方向)に沿う縦断面内における一端側(CRANIAL)または他端側(CAUDAL)から被検体50に対して斜めにX線を照射する方向と、図2(B)に示す被検体50の右前斜位(RAO:right anterior oblique)、正面、および左前斜位(LAO:left anterior oblique)のそれぞれとを組み合わせた任意の方向からそれぞれ撮影を行うように構成されている。なお、図2(B)ではアーム23を省略している。
【0022】
図3に示すように、撮影部2の寝台1に対する相対位置は、撮影する部位によって異なる。図3では、矢印の方向は、撮影部2を寝台1の天板11と床との間に挿入する方向であり、被検体50側である矢印の先端側に検出器22が位置し、先端側とは反対の矢印の末端側にアーム基台24が位置する。上面視において寝台1の長手方向(X方向)に沿ってアーム23を配置する場合をHOMEポジションとする。また、被検体50の頭側(X1側)から足側(X2側)に向かうとともに、寝台1の長手方向(X方向)の周縁部から被検体50に向かうようにアーム23を斜めに配置する位置をMULTIポジションとする。また、上面視において被検体50の側方から中央に向かって寝台1の短手方向(Y方向)に沿ってアーム23を配置する位置をSIDEポジションとする。さらに、SIDEポジションより被検体50の足側(X2側)に移動させた位置をPERIポジションとする。たとえば、被検体50の頭部から胸部までを撮影する場合には、HOMEポジションが用いられる。また、下肢を撮影する場合には、PERIポジションが用いられる。また、被検体50の腹部を撮影する場合には、MULTIポジションまたはSIDEポジションが用いられる。
【0023】
図1に示すように、記憶部3は、撮影部2を移動させる複数の目標位置40と、複数の目標位置40に向かう順番とが関連付けて記憶される。記憶部3は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)または不揮発性のメモリである。
【0024】
制御部4は、操作部5を介した操作に基づき被検体50を撮影するように撮影部2を制御する。また、制御部4は、記憶部3に目標位置40を記憶させる制御を行う。また、制御部4は、表示部8に画像を表示させる制御を行う。制御部4は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)である。
【0025】
図4に示すように、ハードウエアとしてのCPUなどからなる制御部4は、ソフトウエアの機能ブロックとして、X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部41と、位置情報取得部7が取得する撮影部2の現在位置情報と、現在選択されている目標位置40との一致の有無を判断する第2の判断部42とを含んでいる。制御部4は、複数の目標位置40を順次切り替える制御を行う。また、制御部4は、撮影部2を移動させる操作に基づいて記憶部3に記憶された複数の目標位置40に向かって順次撮影部2を移動させる制御を行う。具体的には、制御部4は、アーム23を回動させるように回動機構61(図1参照)を制御することにより、撮影部2を移動(回動)させる。
【0026】
第1の判断部41は、X線撮影が行われたか否かを判断する。具体的には、第1の判断部41は、X線を照射している間にX線源21から制御部4に送信される信号に基づいてX線撮影が行われたか否かを判断する。
【0027】
第2の判断部42は、撮影部2の現在位置情報と、現在選択されている目標位置40との一致の有無を判断する。具体的には、位置情報取得部7で取得された撮影部2の現在の絶対位置と、目標位置40における撮影部2の絶対位置とを比較する。絶対位置は、たとえば、位置座標で判断する。
【0028】
第2の判断部42が撮影部2の現在位置情報と、現在選択されている目標位置40とが一致しないと判断した場合である移動後の撮影部2が目標位置40に到達していない場合であっても、撮影が完了して第1の判断部41によって撮影が行われたと判断されることにより、制御部4は、複数の目標位置40を順次切り替える制御を行う。また、制御部4は、操作部5を介して撮影の操作を受け付けたときに目標位置40を切り替える制御を行う。また、手動で撮影部2が移動されたときに、制御部4はシーケンスモードを終了させる制御を行う。なお、シーケンスモードを終了した場合、目標位置40を選択する操作を受け付けることにより、制御部4は、選択された目標位置40を新たな目標位置40に設定する制御を行う。
【0029】
図1に示すように、操作部5は、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる操作を受け付ける第1操作部51と、撮影部2を目標位置40とは異なる方向に移動させる操作を受け付ける第2操作部52と、撮影の操作を受け付ける第3操作部53とを含む。操作部5は、寝台1の側方(Y方向側)に配置される。
【0030】
第1操作部51が操作されることにより、制御部4は、アーム23を回動または移動させるように回動機構61および移動機構62を制御して、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる。また、第1操作部51が操作されなくなった場合、目標位置40に到達していなくても、制御部4は、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる制御を終了する。また、目標位置40に到達していない場合であって撮影部2を目標位置40に向かって移動が停止された後に第1操作部51が再び操作されることにより、制御部4は、アーム23を回動または移動させるように回動機構61および移動機構62を制御して、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる。第1操作部51は、たとえば、押しボタンである。なお、移動機構62は、特許請求の範囲の「駆動部」の一例である。
【0031】
第2操作部52が操作されることにより、制御部4は、アーム23を回動または移動させるように回動機構61および移動機構62を制御して、撮影部2を目標位置40とは異なる方向に移動させる。第2操作部52は、たとえば、レバースイッチである。この場合、レバースイッチを倒した方向に向かってアーム23を回動または移動させるように、制御部4は、回動機構61および移動機構62を制御する。
【0032】
第3操作部53が操作されることにより、制御部4は、被検体50を撮影するように撮影部2を制御する。第3操作部53は、たとえば、フットスイッチまたはハンドスイッチである。
【0033】
第1操作部51と、第2操作部52と、第3操作部53とは、1つの操作卓に設けられてもよく、それぞれ独立して配置されてもよい。たとえば、第3操作部53をフットスイッチにする場合は、第1操作部51と第2操作部52とを1つの操作卓に設けてもよい。また、第3操作部53をハンドスイッチにする場合は、第1操作部51と、第2操作部52と、第3操作部53とが、1つの操作卓に設けられてもよい。
【0034】
図1に示すように、駆動部6は、回動機構61と移動機構62とを含む。図5に示すように、回動機構61は、被検体50の頭と足とを結ぶ寝台1の長手方向(X方向)に延びる線である回動軸611の軸線周りにアーム23を回動する。また、回動機構61は、アーム23を、アーム23の周方向612に回動可能に構成されている。本実施形態では、回動軸611の軸線周りにアーム23が回動する角度を第1の回動角度25(図6参照)とする。また、アーム23がアーム23の周方向612に回動する角度を第2の回動角度26(図7参照)とする。回動機構61は、たとえば、モータなどを含む。
【0035】
移動機構62は、アーム基台24に取り付けられている。移動機構62によって、アーム基台24を水平移動することによりアーム23を水平移動することができる。移動機構62は、床面90に設けられた第1回動部621と、第1回動部621に回動可能に保持され、アーム基台24を回動可能に保持する第2回動部622とを含む。第1回動部621は、基台軸623と、基台軸623から離れた位置に設けられた中間軸624とを含む。第2回動部622は、水平回転軸625を含む。
【0036】
基台軸623および中間軸624は、それぞれ、床面90に対して垂直方向を向いた回転軸である。また、水平回転軸625も床面90に対して垂直方向を向いた回転軸である。これにより、移動機構62は、基台軸623の軸線周りの回動と、中間軸624の軸線周りの回動と、水平回転軸625の軸線周りの回動とを組み合わせて、アーム基台24およびアーム23を所望の位置に水平移動させることができる。
【0037】
位置情報取得部7は、撮影部2の現在位置を取得する。具体的には、位置情報取得部7は、撮影部2の絶対位置と、天板11との絶対位置とを取得する。
【0038】
図1に示すように、本実施形態のX線透視撮影装置100は、表示部8をさらに含む。表示部8は、寝台1の側方(Y方向側)に設けられる。表示部8には、複数の目標位置40が表示される。表示部8は、使用者の操作を受け付けるタッチパネル式の液晶モニタである。制御部4は、現在の目標位置40を他の目標位置40と異なる態様で表示部8に表示させる制御を行う。この場合、制御部4は、たとえば、現在の目標位置40をフレームで囲む、他の目標位置40と色を区別する、または現在の目標位置40を点滅させるなどの制御を行う。図6では、現在の目標位置40を、ハッチングを施したフレームで囲んでいる例を示す。
【0039】
表示部8の目標位置40のうち1つが選択されることにより、目標位置40が選択された目標位置40に切り替わる。そのため、不要な目標位置40をとばして撮影をすることが可能となる。また、同じ目標位置40を選択することにより同じ位置での撮影を繰り返すことができる。また、制御部4は、複数の目標位置40をリスト形式で表示部8に表示させる制御を行う。また、制御部4は、複数の目標位置40を順序に沿って表示部8に表示させる制御を行う。たとえば、制御部4は、複数の目標位置40を上から順に表示部8に表示させる制御を行う。
【0040】
目標位置40は、予め登録された被検体50の1つの対象部位を複数の角度から撮影する位置である。目標位置40は、アーム23の回動角度と、アーム23の寝台1の天板11に対する相対位置と、X線源21の焦点位置と検出器22との距離と、を含む。
【0041】
図2に示すように、アーム23の回動角度は、RAOおよびLAOのいずれかで撮影する際の回動機構61によってアーム23を回動させる角度と、CRANIALまたはCAUDALのいずれかで撮影する際のアーム23を回動させる角度との組み合わせである。
【0042】
図6に示すように、表示部8には複数の目標位置40が表示される。目標位置40のうち01、02、03および04が、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる順番を示している。また、RAOおよびLAOは、RAOの位置またはLAOの位置で撮影することを示している。また、RAOまたはLAOの後ろの数字は、第1の回動角度25(図6参照)を示している。さらに、CRAまたはCAUは、それぞれCRANIALまたはCAUDALの位置で撮影することを示している。また、CRAまたはCAUの後ろの数字は、第2の回動角度26(図7参照)を示している。また、HOMEは、寝台1に対する撮影部2の相対位置がHOMEポジション(図2参照)であることを示している。表示部8に表示された「01:RAO40、CRA20(HOME)」は、「1番目の目標位置40は、回動角度40度のRAOの位置でかつ回動角度20度のCRANIALの位置にアーム23を回動させるとともに、寝台1に対する撮影部2の相対位置はHOMEポジションである」ことを示している。なお、目標位置40の数は、2以上である。また、図5では1番目から4番目の4つの目標位置40が表示されているが、スクロールすることにより5番目以降の目標位置40表示される。
【0043】
図7(A)に示すように、目標位置40(図1参照)がRAOの場合には、制御部4は、アーム23を点線の位置から実線の位置へY1方向に回動させるように回動機構61を制御する。また、図7(B)に示すように、目標位置40がLAOの場合には、RAOの場合と異なり制御部4は、アーム23を点線の位置から実線の位置へY2方向に回動させるように回動機構61を制御する。なお、点線の位置は、アーム23を最初に配置する位置であり、図2(A)および図2(B)の正面の位置の組み合わせである。
【0044】
図8(A)に示すように、目標位置40(図1参照)がCRANIALの場合には、制御部4は、アーム23を点線の位置から実線の位置へX1方向に回動させるように回動機構61を制御する。また、図8(B)に示すように、目標位置40がCAUDALの場合には、CRANIALの場合と異なり制御部4は、アーム23を点線の位置から実線の位置へX2方向に回動させるように回動機構61を制御する。なお、点線の位置は、アーム23を最初に配置する位置であり、図2(A)および図2(B)の正面の位置の組み合わせである。
【0045】
複数の目標位置40は、使用者によって予め設定される。制御部4は、たとえば、操作部5を介した操作入力に基づき、複数の目標位置40と撮影を行う順番とを関連付けて記憶部3に記憶させる。また、制御部4は、操作部5を介した操作入力に基づき、複数の目標位置40の撮影を行う順番を入れ替える制御を行ってもよい。
【0046】
(シーケンスモードにおける制御)
図9を用いて、本実施形態のX線透視撮影装置100のシーケンスモードにおける制御部4の制御について説明する。ステップ81では、制御部4は、記憶部3に記憶されている複数の目標位置40のうち最初の目標位置40を撮影部2が向かう位置として設定する。
【0047】
ステップ82では、第1操作部51を介して撮影部2を目標位置40に向かって移動させる操作を受け付けることにより、制御部4は、回動機構61および移動機構62を制御して撮影部2を設定された目標位置40に向かって移動させる。このとき、移動させる操作の入力を受け付けなくなった位置で、制御部4は、目標位置40に到達したか否かに関わらず撮影部2を移動させる制御を終了する。また、制御部4は、第2操作部52を介して撮影部2を目標位置40とは異なる方向に移動させる操作を受け付けることにより、回動機構61または移動機構62を制御して目標位置40と異なる方向に撮影部2を移動させる。これにより、撮影を行う位置の調整が行われる。
【0048】
ステップ83では、制御部4は、第1の判断部41により撮影が行われたか否かを判定する。撮影が行われた場合は、ステップ84に進み、撮影が行われていない場合は、ステップ82に戻る。
【0049】
ステップ84では、記憶部3に次の目標位置40が記憶されているか否かにより次のステップが変わる。記憶部3に次の目標位置40が記憶されている場合、現在の目標位置40における被検体50の撮影が終了しているためステップ85に進み、制御部4は、次の目標位置40を撮影部2が向かう位置として切り替える。そしてステップ82に戻り、ステップ82からステップ85までが繰り返される。
【0050】
ステップ84では、記憶部3に次の目標位置40が記憶されていない場合、制御部4は、シーケンスモードを終了する。
【0051】
図10に基づいて、撮影部2の移動の制御について詳細に説明する。ステップ91では、第1操作部51を介した撮影部2の移動操作の入力または第2操作部52を介した撮影部2の移動操作の入力のいずれか一方があったか否かで次のステップが変わる。第1操作部51を介した撮影部2の移動操作の入力または第2操作部52を介した撮影部2の移動操作の入力のいずれか一方があった場合、ステップ92に進み、制御部4は、回動機構61および移動機構62を制御して撮影部2を移動させる。第1操作部51を介した撮影部2の移動操作の入力および第2操作部52を介した撮影部2の移動操作の入力のいずれも無い場合、ステップ94に進み、制御部4は、撮影部2を移動させる制御を終了させる。
【0052】
ステップ93では、第1操作部51を介した撮影部2の移動操作の入力および第2操作部52を介した撮影部2の移動操作の入力が終了されたか否かにより次のステップが変わる。第1操作部51を介した撮影部2の移動操作の入力および第2操作部52を介した撮影部2の移動操作の入力が終了された場合(いずれの入力もない場合)、ステップ94に進み、制御部4は、撮影部2を移動させる制御を終了する。この場合、撮影部2が目標位置40に到達しているか否かにかかわらず、制御部4は、撮影部2を移動させる制御を終了する。そして、ステップ95に進む。また、第1操作部51を介した入力または第2操作部52を介した入力のいずれか一方の撮影部2の移動操作の入力を受け付けている場合、ステップ92に進み、制御部4は、撮影部2を移動させる制御を行う。そしてステップ93で、第1操作部51を介した移動操作の入力または第2操作部52を介した移動操作の入力が終了するまで、つまり、第1操作部51を介した移動操作の入力または第2操作部52を介した移動操作の入力のいずれか一方が継続している間、制御部4は、回動機構61および移動機構62を制御して撮影部2を移動させる制御を行う。
【0053】
ステップ95では、制御部4は、撮影の操作入力があるか否かで進むステップが異なる。撮影の操作入力がある場合は、制御部4は、回動機構61および移動機構62を制御して撮影部2を移動させる制御を終了する。また、撮影の操作入力がない場合は、ステップ91に戻り、撮影の操作入力があるまでステップ91からステップ94が継続する。なお、ステップ91からステップ94の間において撮影部2が目標位置40に到達した時点で、第1操作部51による操作入力は受け付けないが、第2操作部52を介した操作は受け付けつけるように構成されている。すなわち、目標位置40に到達後は、第2操作部52を介した撮影部2の移動操作の入力があるか否かを判断するように構成されている。
【0054】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
本発明のX線透視撮影装置100では、上記のように、被検体50が横たわる寝台1と、被検体50にX線を照射するX線源21と、X線源21に対向しX線源21から照射されたX線を検出する検出器22と、X線源21と検出器22とを接続するアーム23と、を含む撮影部2と、撮影部2を移動させる目標となる複数の目標位置40と、複数の目標位置40に向かう順番とを関連付けて記憶する記憶部3と、順番に従って複数の目標位置40置を順次選択する制御部4と、制御部4が切り替えた目標位置40に向けて撮影部2を移動させる駆動部6を備え、制御部4は、X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部41を含み、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている。
【0056】
これにより、制御部4が、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置40に切り替える制御を行うことにより、移動後の撮影部2の位置に関わらず撮影を完了することによって制御部4が目標位置40を切り替える制御を行うため、目標位置40以外の位置で撮影が行われた場合でも目標位置40を切り替えることができる。この結果、任意の撮影位置で撮影した場合に次の目標位置40を選択しなくとも次の目標位置40に切り替えることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0058】
すなわち、本実施形態では、上記のように撮影部2の現在情報を取得する位置情報取得部7をさらに備え、制御部4は、位置情報取得部7が取得する撮影部2の現在位置情報と、現在選択されている目標位置40との一致の有無を判断する第2の判断部42を含み、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、第2の判断部42により一致すると判断された場合に加えて、 第2の判断部42が一致しないと判断した場合でも、次の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている。これにより第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、第2の判断部42により一致すると判断された場合に加えて、 第2の判断部42が一致しないと判断した場合でも、次の目標位置に切り替える制御を行うように構成されていることにより、目標位置40と異なる位置で撮影を行った場合でも制御部4は目標位置40を切り替えることができる。これにより使用者は目標位置40を切り替える操作を行うことなく撮影位置を任意に選択しながら被検体50の一連の撮影を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる操作と、撮影部2を目標位置40とは異なる方向に移動させる操作とを受け付ける操作部5をさらに備え、制御部4は、撮影部2を目標位置40に向かって移動させる操作を受け付けた場合に記憶部3に記憶された目標位置40に向かって撮影部2を移動させる制御を行うとともに、撮影部2を目標位置40とは異なる方向に移動させる操作を受け付けた場合に目標位置40とは異なる方向に撮影部2を移動させる制御を行い、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、撮影を完了した後に複数の目標位置40を順次切り替える制御を行うように構成されている。これにより、使用者は、目標位置40に向かう経路に沿って撮影部2を移動させることができるとともに、目標位置40に向かう経路から外れる位置に撮影部2を移動させることができる。また、制御部4が、移動後の撮影部2が目標位置40にまだ到達していない場合でも撮影を完了した後に複数の目標位置40を順次切り替える制御を行うように構成されているため、使用者が、目標位置40に向かう経路上で撮影を行った場合に加えて、目標位置40に向かう経路から外れた位置で撮影を行った場合でも、制御部4は目標位置40を切り替えることができる。これらの結果、使用者が撮影を行う位置を被検体50に合わせて調整しながら一連の撮影を行うことができる。
【0060】
[本実施形態の第1変形例]
図1~8、図10および図11を参照して、本実施形態の第1変形例について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付すとともに、説明を省略する。
【0061】
第1変形例では、第1実施形態と異なり、制御部4は、撮影終了時の撮影部2の位置と、撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差があらかじめ設定された範囲内である場合には、第2の判断部42が撮影部2の現在の位置と目標位置40とが一致しないと判断した場合である移動後の撮影部2が目標位置40に到達していない場合でも撮影を完了した後に複数の目標位置40を順次切り替える制御を行う。また、制御部4は、撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差が予め設定された範囲外である場合には目標位置40を切り替えない制御を行う。第1変形例は、誤って同じ箇所を撮影した場合などユーザの意図しない撮影によって、目標位置が切り替わることを抑制することを目的としている。
【0062】
図1に示すように、第1変形例では、目標位置40を切り替えるための条件となる撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差の範囲が設定されている。目標位置40を切り替えるための条件となる撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差の範囲は、記憶部3に記憶されている。撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差は、第1の回動角度25(図7参照)の差、および、第2の回動角度26(図8参照)の差である。設定されている範囲は、現在の目標位置40に設定されている第1の回動角度25と撮影が行われた位置の第1の回動角度25との誤差の許容範囲および第2の回動角度26と撮影が行われた位置の第2の回動角度26との誤差の許容範囲である。誤差の許容範囲は、たとえば、±5度以内に設定される。つまり。目標位置40が、LAO40の場合であるとともに、誤差が±5度に設定されているとすると、LAO35度からLAO45度の範囲内に撮影位置が位置している場合に、制御部4は、目標位置40を切り替える制御を行う。
【0063】
制御部4は、撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差が予め設定された範囲外である場合には、制御部4は、シーケンスモードを終了して、第3操作部53を介した撮影の操作入力が行われても目標位置40を切り替えない。なお、この場合、制御部4は、新しい目標位置40の選択を受け付けることにより受け付けた目標位置40からシーケンスモードを開始する。新しい目標位置40の選択は、表示部8に表示された複数の目標位置40のうち1つを選択することで行われる。このとき、現在の目標位置40の次の目標位置40が選択されてもよく、別の目標位置40が選択されてもよい。
【0064】
図11に基づいて、第1変形例のシーケンスモードにおける制御部4の制御について説明する。まず、ステップ81からステップ85までの制御は、本実施形態と同じである。また、ステップ82の撮影部2の移動は図9と同じ制御が行われる。本実施形態と異なり第1変形例では、ステップ83で撮影が終了した後、ステップ84に進む前にステップ86が行われる。ステップ86では、撮影終了時の位置と撮影部2を移動させるための目標位置40との差が予め設定された範囲内か否かにより次のステップが変わる。
【0065】
撮影終了時の撮影部2の位置と、撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差があらかじめ設定された範囲内である場合、ステップ84に進む。撮影終了時の位置と撮影部2を移動させるための目標位置40との差が予め設定された範囲外である場合、ステップ82に進む。
【0066】
第1変形例のその他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0067】
(第1変形例の効果)
第1変形例では、上記のように、被検体50が横たわる寝台1と、被検体50にX線を照射するX線源21と、X線源21に対向しX線源21から照射されたX線を検出する検出器22と、X線源21と検出器22とを接続するアーム23と、を含む撮影部2と、撮影部2を移動させる目標となる複数の目標位置40と、複数の目標位置40に向かう順番とを関連付けて記憶する記憶部3と、順番に従って複数の目標位置40置を順次選択する制御部4と、制御部4が切り替えた目標位置40に向けて撮影部2を移動させる駆動部6を備え、制御部4は、X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部41を含み、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置に切り替える制御を行うように構成されている。
【0068】
これにより、制御部4が、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置40に切り替える制御を行うことにより、移動後の撮影部2の位置に関わらず撮影を完了することによって制御部4が目標位置40を切り替える制御を行うため、目標位置40以外の位置で撮影が行われた場合でも目標位置40を切り替えることができる。この結果、任意の撮影位置で撮影した場合に次の目標位置40を選択しなくとも次の目標位置40に切り替えることができる。
【0069】
また、上記第1変形例では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0070】
第1変形例では、上記のように、制御部4は、第2の判断部42が一致しない旨の判断を行った場合に、撮影終了時の撮影部2の位置と、撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差があらかじめ設定された範囲内である場合には、移動後の撮影部2が目標位置40に到達していない場合でも撮影を完了した後に複数の目標位置40を順次切り替える制御を行うように構成されているとともに、撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差が予め設定された範囲外である場合には目標位置40を切り替えない制御を行うように構成されている。これにより、たとえば、連続する目標位置40の差よりも小さい値をあらかじめ設定された範囲の上限とすることにより、撮影をやり直す場合など同じ位置で複数の撮影の操作が行われた場合に、1度目の撮影で次の目標位置40に切り替わった後、2度目以降の撮影位置は切り替わった目標位置40ではなくひとつ前の目標位置40であるため、撮影終了時の撮影部2の位置と、撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差は連続する目標位置40の差となる。そうすると、撮影終了時の撮影部2の位置と、撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差が予め設定された範囲よりも大きくなるため、制御部4は、目標位置40を切り替えない制御を行う。この結果、同じ位置で撮影が行われたときに、撮影されるたびに順次目標位置40が切り替わることを抑制することができる。
【0071】
また、第1変形例では、上記のように、撮影部2のアーム23は、円弧状の形状を有し、撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差は、被検体50の頭と足とを結ぶ寝台1の長手方向に延びる線を軸として撮影部2のアーム23が回動する第1の回動角度25の差、および、撮影部2のアーム23が、撮影部2のアーム23の周方向に回動する第2の回動角度26の差である。ここで、第1の回動角度25または第2の回動角度26のうち少なくとも一方の差が大きくなる場合は、撮影部2の位置が目標位置40から大きく離れている可能性がある。そのため、撮影終了時の撮影部2の位置の第1の回動角度25の差および第2の回動角度26と、撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との第1の回動角度25の差および第2の回動角度26との差が範囲外の場合に、制御部4が目標位置40を切り替えない制御を行うことにより、目標位置40から大きく離れた位置で撮影された場合に目標位置40が切り替わることを抑制することができる。
【0072】
また、第1変形例では、上記のように、制御部4は、撮影終了時の撮影部2の位置と撮影部2を移動させるための目標位置40との差が予め設定された範囲外であって目標位置40を切り替えない制御を行う場合に、目標位置40に切り替える制御を行う操作入力を受け付けることにより複数の目標位置40を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、制御部4が目標位置40を切り替えない制御を行う場合に、使用者が、任意の目標位置40に切り替える制御を行うことにより目標位置40を切り替えることができる。その結果、任意の目標位置40から撮影を開始することができる。
【0073】
また、第1変形例のその他の効果は、実施形態と同様である。
【0074】
[本実施形態の第2変形例]
図1~10および図12を用いて第2変形例について説明する。なお、実施形態と同じ構成は同じ符号を用いて説明を省略する。
【0075】
第2変形例は、本実施形態と異なり、記憶部3に複数の部位の目標位置40が、まとめて記憶されるように構成されている。なお、第2変形例のそれ以外の構成は、本実施形態の構成と同じであるため、同じ符号を付して説明は省略する。複数の撮影位置は、たとえば、心臓の血管と下肢の血管との組み合わせである。
【0076】
図12に示すように、目標位置40の設定は、部位毎に行われる。たとえば、各部位で2カ所ずつ撮影する場合には、1番目の目標位置40と2番目の目標位置40として第1の部分の撮影に関する目標位置40が設定され、3番目の目標位置40と4番目の目標位置40として第2の部分に関する目標位置40が設定されて、記憶部3にまとめて記憶される。
【0077】
撮影を行う部位が心臓の血管と下肢の血管とである場合を例に説明する。この場合、心臓の血管の位置と下肢の血管の位置とが離れているため、心臓の血管の位置を撮影終了した後、撮影部2の寝台1に対する相対位置を変更する必要がある。たとえば、心臓の血管をHOMEポジションで撮影した後に、下肢の血管を撮影するために制御部4は、移動機構62を制御して撮影部2をPERIポジションに移動させる。そのため、目標位置40の設定は、HOMEポジションからPERIポジションにアーム23を移動させる相対位置の移動を含めて設定される。たとえば、1番目と2番目とに心臓の血管の撮影に関する目標位置40が設定され、3番目に変更後の寝台1に対する撮影部2の相対位置が設定され、さらに、4番目と5番目とに下肢の血管に関する目標位置40が設定される。なお、図12では、「POSITIONING CHANGE」がアーム23の寝台1に対する相対位置の変更を示す。また、「POSITIONING CHANGE」の後ろの「PERI」は変更後の相対位置がPERIであることを示す。
【0078】
第2変形例のその他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0079】
(第2変形例の効果)
第2変形例では、上記のように、被検体50が横たわる寝台1と、被検体50にX線を照射するX線源21と、X線源21に対向しX線源21から照射されたX線を検出する検出器22と、X線源21と検出器22とを接続するアーム23と、を含む撮影部2と、撮影部2を移動させる目標となる複数の目標位置40と、複数の目標位置40に向かう順番とを関連付けて記憶する記憶部3と、順番に従って複数の目標位置40置を順次選択する制御部4と、制御部4が切り替えた目標位置40に向けて撮影部2を移動させる駆動部6を備え、制御部4は、X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部41を含み、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置40に切り替える制御を行うように構成されている。
【0080】
これにより、制御部4が、第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置40に切り替える制御を行うことにより、移動後の撮影部2の位置に関わらず撮影を完了することによって制御部4が目標位置40を切り替える制御を行うため、目標位置40以外の位置で撮影が行われた場合でも目標位置40を切り替えることができる。この結果、任意の撮影位置で撮影した場合に次の目標位置40を選択しなくとも次の目標位置40に切り替えることができる。
【0081】
また、上記第2変形例では、以下のような更なる効果が得られる。
【0082】
第2変形例では、記憶部3に複数の部位の目標位置40が、まとめて記憶されるように構成されている。これにより、記憶部3に複数の部位の目標位置40が、まとめて記憶されるように構成されているため、対象部位ごとに目標位置40を設定する必要がない。そのため、目標位置40を設定する使用者の負担を減らすことができる。
【0083】
また、第2変形例のその他の効果は、実施形態と同様である。
【0084】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0085】
たとえば、上記実施形態、第1変形例および第2変形例では、アーム23が1つであるシングルプレーン型である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム23が2つであるバイプレーン型であってもよい。この場合、表示部に、各アームの目標位置が並べて表示されてもよい。また、記憶部には、各アームの動きがまとめて記憶されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態、第1変形例および第2変形例では、撮影部2を目標位置に向かって移動させる操作と、撮影部2を目標位置とは異なる方向に移動させる操作とを受け付ける操作部5が異なる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、1つの操作部が両方の操作を受け付けるように構成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態、第1変形例および第2変形例では、表示部8が操作入力を受け付けるタッチパネルである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、表示部は、操作入力を受け付けない表示パネルであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態、第1変形例および第2変形例では、操作部5および表示部8が寝台1の側方に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、操作部および表示部は、それぞれ寝台から離れて設けられてもよい。
【0089】
また、上記実施形態、第1変形例および第2変形例では、撮影終了時の撮影部2の位置と撮影を行うために撮影部2を移動させる目標位置40との差は、第1の回動角度25の差、および、第2の回動角度26の差である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、撮影終了時の撮影部の位置と撮影を行うために撮影部を移動させる目標位置との差は、撮影部と寝台との相対位置を示す位置座標の差であってもよい。
【0090】
また、上記第1変形例では、表示部8を介して新しい目標位置40の選択を受け付ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、操作部の操作により表示部に表示された目標位置を選択してもよい。
【0091】
また、第2変形例では、複数の部位が、離れているため撮影部2の寝台1に対する相対位置を変更する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の部位が、心臓の血管と肺の血管とのように近い場合は、相対位置を変更する必要がないため目標位置に相対位置の変更を含まなくてもよい。
【0092】
また、第2変形例を実施形態の変形例として説明したが、第2変形例は、第1変形例の構成を備えていてもよい。
【0093】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0094】
(項目1)
被検体50が横たわる寝台1と、
前記被検体50にX線を照射するX線源21と、前記X線源21に対向するとともに前記X線源21から照射されたX線を検出する検出器22と、前記X線源21と前記検出器22とを接続するアーム23と、を含む撮影部2と、
前記撮影部2を移動させる目標となる複数の目標位置40と、前記複数の目標位置40に向かう順番とが関連付けて記憶される記憶部3と、
前記複数の目標位置40を順次切り替える制御を行う制御部4と、
前記制御部4が切り替えた目標位置40に向けて前記撮影部2を移動させる駆動部6を備え、
前記制御部4は、
X線撮影の実行の有無を判断する第1の判断部41を含み、
前記第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合に、次の目標位置40に切り替える制御を行うように構成されている、X線透視撮影装置。
【0095】
(項目2)
前記撮影部2の現在情報を取得する位置情報取得部7をさらに備え、
前記制御部4は、
前記位置情報取得部7が取得する前記撮影部2の現在位置情報と、現在選択されている目標位置40との一致の有無を判断する第2の判断部42を含み、
前記第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、前記第2の判断部42により一致すると判断された場合に加えて、 前記第2の判断部42が一致しないと判断した場合でも、次の目標位置40に切り替える制御を行うように構成されている、項目1に記載のX線透視撮影装置。
【0096】
(項目3)
前記撮影部2を前記目標位置40に向かって移動させる操作と、前記撮影部2を目標位置40とは異なる方向に移動させる操作とを受け付ける操作部5をさらに備え、
前記制御部4は、前記撮影部2を前記目標位置40に向かって移動させる操作を受け付けた場合に前記記憶部3に記憶された前記目標位置40に向かって前記撮影部2を移動させる制御を行うとともに、前記撮影部2を前記目標位置40とは異なる方向に移動させる操作を受け付けた場合に前記目標位置40とは異なる方向に前記撮影部2を移動させる制御を行い、前記第1の判断部41によりX線撮影の実行があったと判断された場合は、撮影を完了した後に前記複数の目標位置40を順次切り替える制御を行うように構成されている、項目1または2に記載のX線透視撮影装置。
【0097】
(項目4)
前記制御部4は、前記第2の判断部42が一致しない旨の判断を行った場合に、撮影終了時の前記撮影部2の位置と、撮影を行うために前記撮影部2を移動させる前記目標位置40との差があらかじめ設定された範囲内である場合には、移動後の前記撮影部2が前記目標位置40に到達していない場合でも撮影を完了した後に前記複数の目標位置40を順次切り替える制御を行うように構成されているとともに、撮影終了時の前記撮影部2の位置と撮影を行うために前記撮影部2を移動させる前記目標位置40との差が予め設定された範囲外である場合には前記目標位置40を切り替えない制御を行うように構成されている、項目2に記載のX線透視撮影装置。
【0098】
(項目5)
前記撮影部2のアーム23は、円弧状の形状を有し、
撮影終了時の前記撮影部2の位置と撮影を行うために前記撮影部2を移動させる前記目標位置40との差は、前記被検体50の頭と足とを結ぶ前記寝台1の長手方向に延びる線を軸として前記撮影部2のアーム23が回動する第1の回動角度25の差、および、前記撮影部2のアーム23が、前記撮影部2のアーム23の周方向に回動する第2の回動角度26の差である、項目4に記載のX線透視撮影装置。
【0099】
(項目6)
前記制御部4は、前記目標位置40を選択する操作入力を受け付けることにより前記複数の目標位置40を切り替える制御を行うように構成されている、項目4または5に記載のX線透視撮影装置。
【0100】
(項目7)
被検体50を撮影する撮影部2を備え、
前記撮影部2を移動させる目標となる複数の目標位置40と、前記複数の目標位置に向かう順番とが関連付けて記憶されているX線透視撮影装置のX線透視撮影方法であって、
前記撮影部によってX線撮影が行われたか否かを判定する工程と、
X線撮影の撮影が行われたと判定した場合に、次の目標位置に切替える工程とを備える、X線透視撮影方法。
【符号の説明】
【0101】
1 寝台
2 撮影部
3 記憶部
4 制御部
5 操作部
6 駆動部
7 位置情報取得部
21 X線源
22 検出器
23 アーム
25 第1の回動角度
26 第2の回動角度
40 目標位置
41 第1の判断部
42 第2の判断部
50 被検体
100 X線透視撮影装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12