(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ロール管理装置
(51)【国際特許分類】
B21C 51/00 20060101AFI20240409BHJP
B21B 28/02 20060101ALI20240409BHJP
B21B 38/08 20060101ALI20240409BHJP
B21B 38/10 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B21C51/00 N
B21B28/02 Z
B21B38/08
B21B38/10 Z
B21C51/00 M
(21)【出願番号】P 2021008248
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東谷 諒介
(72)【発明者】
【氏名】久保 直博
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-227511(JP,A)
【文献】特開2002-250718(JP,A)
【文献】特開平01-148406(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137014(WO,A1)
【文献】特開昭58-022901(JP,A)
【文献】特開2009-226517(JP,A)
【文献】特開2011-161461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0178854(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110639958(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
B21B 28/00- 28/04
B21B 38/00- 38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延時の複数の圧延ロールに関する物理量および圧延の適用条件データを採取するデータ採取部と、
前回の圧延時までに前記データ採取部が採取した物理量および圧延の適用条件データを蓄積するデータ記憶部と、
圧延に使用する特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する前記データ記憶部に蓄積された圧延の適用条件データについて、関連する物理量を読み出し、前記関連する物理量に基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する状態判定部と、
前記状態判定部に判定された前記特定の圧延ロールの状態に基づき前記特定の圧延ロールに対して推奨される適用方法を提示する推奨適用方法判定部と、
を備えた
ロール管理装置において、
前記物理量を定量化した状態定量化データを生成するデータ定量化部をさらに備え、
前記データ記憶部は、前記データ定量化部が生成した状態定量化データを蓄積し、
前記状態判定部は、
状態定量化データ夫々に対して、前記特定の圧延ロールの複数の状態レベルを判定するための複数の状態判定閾値を記録する状態判定閾値データベースと、
状態判定閾値に抵触した状態定量化データおよびその状態レベルの組み合わせに対して設定される複数の状態モードを記録する状態モードデータベースと、を備え、
前記データ定量化部が生成した状態定量化データおよびその状態レベルに基づき状態モードを判定し、
前記推奨適用方法判定部は、
判定された状態モードに対して、前記推奨される適用方法として、前記特定の圧延ロールの交換と、前記特定の圧延ロールの負荷低減と、が設定される推奨適用方法データベースを備え、
前記状態判定部が判定した状態モードに基づいて、前記特定の圧延ロールの交換と、前記特定の圧延ロールの負荷低減と、のうちから選択した1つを、前記適用方法として提示するロール管理装置。
【請求項2】
前記状態判定部は、前記特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する前記データ記憶部に蓄積された前記特定の圧延ロールに関する圧延の適用条件データについて、関連する物理量を読み出し、前記関連する物理量に基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項1に記載のロール管理装置。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する前記データ記憶部に蓄積された他の圧延ロールに関する圧延の適用条件データについて、関連する物理量を読み出し、前記関連する物理量に基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項1に記載のロール管理装置。
【請求項4】
前記データ採取部は、予め定められたサンプリング周期に基づき前記物理量を採取する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項5】
前記データ採取部は、予め定められたサンプリング時間範囲に基づき物理量を採取する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項6】
前記データ採取部は、採取した圧延時の複数の圧延ロールに関する前記物理量をフィルター処理またはクレンジング処理する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項7】
前記データ記憶部は、圧延される材料ごとに複数の物理量および複数の圧延の適用条件データを時系列順に層別に蓄積し、
前記状態判定部は、前記特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する前記データ記憶部に蓄積された前記特定の圧延ロールのロールIDについて関する圧延の適用条件データについて、関連する物理量を読み出し、前記関連する物理量に基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項8】
前記データ記憶部は、圧延される材料ごとに複数の物理量および複数の圧延の適用条件データを時系列順に層別に蓄積し、
前記状態判定部は、前記データ記憶部に蓄積された複数の物理量および複数の圧延の適用条件データについて因果関係モデルを構築し、
前記特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと因果関係モデルを比較することで、前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項9】
前記状態判定部は、前記特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する前記データ記憶部に蓄積された圧延の適用条件データについて、関連する状態定量化データを読み出し、前記関連する状態定量化データに基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項10】
前記データ定量化部は、前記物理量を基本統計量により定量化して状態定量化データを生成する請求項9に記載のロール管理装置。
【請求項11】
前記データ定量化部は、前記物理量を周波数解析により定量化して状態定量化データを生成する請求項9に記載のロール管理装置。
【請求項12】
前記データ定量化部は、データモデルに基づき前記物理量を解析して状態定量化データを生成する請求項9に記載のロール管理装置
。
【請求項13】
前記状態判定部は、前記閾値を動的に算出する請求項
1に記載のロール管理装置。
【請求項14】
前記状態判定部は、前記特定の圧延ロールのロールIDと同一のロールIDについて前記データ記憶部に蓄積された圧延の適用条件データについて関連する状態定量化データに基づき圧延ロール適用時の状態レベルを判定し、
前記推奨適用方法判定部は、前記状態判定部が判定した状態レベルに基づき前記特定の圧延ロールに対して推奨される適用方法を判定する請求項9から請求項
13のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項15】
前記状態判定部は、外部から入力された状態定量化データに基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項9から請求項
14のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【請求項16】
前記状態判定部は、事前知識による推論に基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する請求項1から請求項
15のいずれか1項に記載のロール管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本開示は、ロール管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ロール管理装置を開示する。当該ロール管理装置は、圧延ロールの偏芯を除去し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロール管理装置は、圧延ロールの偏芯が発生する要因を見つけない。このため、次の圧延の機会に圧延ロールを適切に適用できない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、圧延ロールを適切に適用することができるロール管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るロール管理装置は、圧延時の複数の圧延ロールに関する物理量および圧延
の適用条件データを採取するデータ採取部と、前回の圧延時までに前記データ採取部が採
取した物理量および圧延の適用条件データを蓄積するデータ記憶部と、圧延に使用する特
定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する前記データ記憶部に蓄積さ
れた圧延の適用条件データについて、関連する物理量を読み出し、前記関連する物理量に
基づき前記特定の圧延ロールの状態を判定する状態判定部と、前記状態判定部に判定され
た前記特定の圧延ロールの状態に基づき前記特定の圧延ロールに対して推奨される適用方
法を提示する推奨適用方法判定部と、を備えた。ロール管理装置は、物理量を定量化した状態定量化データを生成するデータ定量化部をさらに備え、データ記憶部は、データ定量化部が生成した状態定量化データを蓄積する。状態判定部は、状態定量化データ夫々に対して、特定の圧延ロールの複数の状態レベルを判定するための複数の状態判定閾値を記録する状態判定閾値データベースと、状態判定閾値に抵触した状態定量化データおよびその状態レベルの組み合わせに対して設定される複数の状態モードを記録する状態モードデータベースと、を備え、データ定量化部が生成した状態定量化データおよびその状態レベルに基づき状態モードを判定する。推奨適用方法判定部は、判定された状態モードに対して、推奨される適用方法として、特定の圧延ロールの交換と、特定の圧延ロールの負荷低減と、が設定される推奨適用方法データベースを備え、状態判定部が判定した状態モードに基づいて、特定の圧延ロールの交換と、特定の圧延ロールの負荷低減と、のうちから選択した1つを、適用方法として提示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロール管理装置は、特定の圧延ロールの状態に基づき特定の圧延ロールに対して推奨される適用方法を提示する。このため、圧延ロールを適切に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるロール管理装置が適用されるロール管理システムの構成図である。
【
図2】実施の形態1におけるロール管理装置の構成図である。
【
図3】実施の形態1におけるロール管理装置のロール物理量信号と材料進入検出信号と材料離脱検出信号と材料全長計測信号の例を示すグラフである。
【
図4】実施の形態1におけるロール管理装置の処理前ロール現象データと前処理済ロール現象データの例を示すグラフである。
【
図5】実施の形態1におけるロール管理装置の層別現象履歴データベースの例を示す図である。
【
図6】実施の形態1におけるロール管理装置の状態判定閾値データベースの例を示す図である。
【
図7】実施の形態1におけるロール管理装置の状態モードデータベースの例を示す図である。
【
図8】実施の形態1におけるロール管理装置の推奨適用方法データベースの例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるロール管理装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図10】実施の形態1におけるロール管理装置のハードウェア構成図である。
【
図11】実施の形態2におけるロール管理装置の構成図である。
【
図12】実施の形態3におけるロール管理装置の構成図である。
【
図13】実施の形態4におけるロール管理装置の構成図である。
【
図14】実施の形態5におけるロール管理装置の構成図である。
【
図15】実施の形態6におけるロール管理装置の構成図である。
【
図16】実施の形態7におけるロール管理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるロール管理装置が適用されるロール管理システムの構成図である。
【0011】
図1に示されるように、ロール管理システムは、圧延機11とロール管理装置1とプロセスコンピュータ12を備える。
【0012】
圧延機11は、上側圧延ロール21と下側圧延ロール22とロール物理量センサ31と材料進入検出センサ32と材料離脱検出センサ33と材料全長計測センサ34とを備える。例えば、圧延機11は、鉄・非鉄材料を圧延する。
【0013】
上側圧延ロール21と下側圧延ロール22は、材料を挟み込んで圧延する。Lは、圧延後材料42の全長である。L1は、圧延後材料42の中間位置である。L2は、圧延後材料42の中間位置である。
【0014】
ロール物理量センサ31は、上側圧延ロール21に関する物理量を計測し得るように設けられる。例えば、上側圧延ロール21に関する物理量は、上側圧延ロール21に加わる圧力である。例えば、上側圧延ロール21に関する物理量は、上側圧延ロール21の位置の変位である。例えば、上側圧延ロール21に関する物理量は、上側圧延ロール21における圧延荷重の振動の値である。例えば、上側圧延ロール21に関する物理量は、上側圧延ロール21における圧延張力である。ロール物理量センサ31は、上側圧延ロール21に関する物理量に基づきロール物理量信号を送信する。
【0015】
材料進入検出センサ32は、圧延前材料41の進入を検出し得るように設けられる。例えば、材料進入検出センサ32は、圧延前材料41が自己の検出範囲を通過したことを検出する。例えば、材料進入検出センサ32は、圧延前材料41の進入を検出したときに材料進入検出信号を送信する。例えば、材料進入検出センサ32は、圧延前材料41の自己の検出範囲における通過状況について材料進入検出信号を送信する。例えば、材料進入検出センサ32は、自身の近接位置で圧延前材料41を検出したか否かについて示す信号として材料進入検出信号を送信する。例えば、材料進入検出信号は、真理値である。例えば、材料進入検出信号は、材料進入検出センサ32が自身の近接位置で圧延前材料41を検出したときに「1」を示す。例えば、材料進入検出信号は、材料進入検出センサ32が自身の近接位置で圧延前材料41を検出していないときに「0」を示す。
【0016】
材料離脱検出センサ33は、圧延後材料42の離脱を検出し得るように設けられる。例えば、材料離脱検出センサ33は、圧延後材料42が自己の検出範囲を通過したことを検出する。例えば、材料離脱検出センサ33は、圧延後材料42の離脱を検出したときに材料離脱検出信号を送信する。例えば、材料離脱検出センサ33は、圧延後材料42の自己の検出範囲における通過状況について材料離脱検出信号を送信する。例えば、材料離脱検出信号は、真理値である。例えば、材料離脱検出信号は、材料離脱検出センサ33が自身の近接位置で圧延後材料42を検出したときに「1」を示す。例えば、材料離脱検出信号は、材料離脱検出センサ33が自身の近接位置で圧延後材料42を検出していないときに「0」を示す。
【0017】
例えば、材料全長計測センサ34は、圧延後材料42の先端が自己の検出範囲を通過したことを検出する。例えば、材料全長計測センサ34は、圧延後材料42の先端が自己の検出範囲を通過した時間を検出する。例えば、材料全長計測センサ34は、圧延後材料42の末端が自己の検出範囲を通過したことを検出する。例えば、材料全長計測センサ34は、圧延後材料42の末端が自己の検出範囲を通過した時間を検出する。材料全長計測センサ34は、材料全長計測信号を送信する。例えば、材料全長計測信号は、圧延開始後の計測時点における圧延後材料42の先端から自己の検出点までの長さである。例えば、圧延開始時点を時刻0、圧延終了時刻Tとした場合、圧延終了時刻Tにおける材料全長計測信号は、圧延後材料42の全長Lを示す。
【0018】
ロール管理装置1は、圧延機11と通信可能に設けられる。ロール管理装置1は、プロセスコンピュータ12と通信可能に設けられる。
【0019】
例えば、プロセスコンピュータ12は、汎用コンピュータである。プロセスコンピュータ12は、図示されない生産管理コンピュータから圧延の適用条件データを受信し得るように設けられる。例えば、適用条件データは、生産指示である。例えば、適用条件データは、製造仕様である。例えば、適用条件データは、圧延される材料の鋼種、サイズ、温度等の情報である。プロセスコンピュータ12は、受信した情報に基づき圧延条件を計算する。プロセスコンピュータ12は、算出した値を送信する。
【0020】
次に、
図2を用いて、ロール管理装置1の構成を説明する。
図2は、実施の形態1におけるロール管理装置の構成図である。
【0021】
図2に示されるように、ロール管理装置1は、データ採取部2とデータ定量化部3とデータ記憶部4と状態判定部5と推奨適用方法判定部6とを備える。
【0022】
データ採取部2は、圧延機11からロール物理量信号と材料進入検出信号と材料離脱検出信号と材料全長計測信号とを受信する。例えば、データ採取部2は、ロール物理量信号と材料進入検出信号と材料離脱検出信号と材料全長計測信号とを同期して受信する。データ採取部2は、データ抽出ユニット2aとデータ前処理ユニット2bを備える。
【0023】
データ抽出ユニット2aは、圧延機11から受信した信号から処理前ロール現象データを採取する。処理前ロール現象データは、上側圧延ロール21に関する情報である。例えば、処理前ロール現象データは、上側圧延ロール21に関する情報のうち、定量化するために必要な範囲のデータを抜き出した情報である。例えば、処理前ロール現象データは、圧延荷重の振動の値である。例えば、処理前ロール現象データは、圧延張力の値である。例えば、処理前ロール現象データは、圧延ロールの変位値である。例えば、処理前ロール現象データは、予め定められたサンプリング周期と、予め定められたサンプリング時間範囲とを含む。例えば、処理前ロール現象データは、圧延ロールに関わる現象を定量化するための、適切なサンプリング周期と、適切なサンプリング時間範囲とを含む。具体的なサンプリング周期の例は、ロール偏芯の振動のデータを採取する際にロール偏芯の振動数が約2Hzだった場合、標本化定理およびノイズの影響を考慮し4倍のサンプリング周波数とする。この場合、適切なサンプリング周期は、約100msに設定される。例えば、適切なサンプリング時間範囲は、圧延開始後、圧延中の中盤、圧延の終わり際などの時間タイミングである。例えば、適切なサンプリング時間範囲は、材料全長における測定箇所の位置に基づき設定される。例えば、材料全長における測定箇所の位置は、材料全長における先端の位置、材料全長における中ほどの位置、材料全長における後端の位置などである。データ抽出ユニット2aは、処理前ロール現象データを送信する。
【0024】
データ前処理ユニット2bは、データ抽出ユニット2aから処理前ロール現象データを受信する。データ前処理ユニット2bは、処理前ロール現象データを処理し、前処理済ロール現象データを得る。例えば、データ前処理ユニット2bは、処理前ロール現象データをフィルター処理する。例えば、フィルターは、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタである。なお、処理前ロール現象データと前処理済ロール現象データをまとめてロール現象データと称する。
【0025】
例えば、データ定量化部3は、PLCである。例えば、データ定量化部3は、DCSである。例えば、データ定量化部3は、汎用のコンピュータである。データ定量化部3は、データ採取部2から前処理済ロール現象データを受信する。データ定量化部3は、前処理済ロール現象データから状態定量化データを生成する。状態定量化データは、圧延ロールの状態を定量化したデータである。データ定量化部3は、状態定量化データを送信する。データ定量化部3は、基本統計量算出ユニット3aを備える。
【0026】
基本統計量算出ユニット3aは、データ定量化を行う対象とする前処理済ロール現象データから基本統計量を算出し、状態定量化データを生成する。例えば、基本的統計量は、平均値、中央値、最大・最小値の差、標準偏差または分散などである。基本統計量算出ユニット3aは、様々なロール現象データそれぞれについて、それぞれの状態定量化データを生成する。基本統計量算出ユニット3aは、圧延前材料41および圧延後材料42ごとに、状態定量化データを生成する。
【0027】
データ記憶部4は、データ定量化部3と通信可能に設けられる。データ記憶部4は、プロセスコンピュータ12と通信可能に設けられる。データ記憶部4は、データ定量化部3から状態定量化データを受信する。データ記憶部4は、複数の圧延ロールについて個々の圧延ロールごとに、データ定量化部3から状態定量化データを受信する。データ記憶部4は、状態定量化データを記憶する。データ記憶部4は、過去に受信した状態定量化データを蓄積して記憶する。データ記憶部4は、プロセスコンピュータ12からプロセスコンピュータ12が算出した値および適用条件データを受信する。データ記憶部4は、データ記憶ユニット4aと層別現象履歴データ読み出しユニット4bと層別現象履歴データベース4cとを備える。データ記憶部4は、適用条件データと記憶されたデータとに基づき層別現象履歴データを生成する。例えば、層別現象履歴データは、ロールID、ロールを支えるチョック、圧延される材料の鋼種・サイズ・温度などの製造仕様、圧延条件などの項目を層別に記録したデータである。なお、ロールIDは、圧延ロールを個別に識別する番号である。
【0028】
データ記憶ユニット4aと層別現象履歴データ読み出しユニット4bと層別現象履歴データベース4cとは、それぞれ相互に通信できるように設けられる。
【0029】
データ記憶ユニット4aは、データ定量化部3からロール現象データと状態定量化データとを受信する。データ記憶ユニット4aは、プロセスコンピュータ12からロールを適用するときに関連する適用条件データを受信する。例えば、圧延ロールに関連する適用条件データは、ロールID、ロールを支えるチョック、圧延される材料の鋼種・サイズ・温度などの製造仕様、圧延条件などである。例えば、データ記憶ユニット4aは、ロールIDをキーとして、その他の適用条件など関連するデータを併せて記憶する。
【0030】
層別現象履歴データ読み出しユニット4bは、外部からの要求に基づき層別現象履歴データを読み出す。層別現象履歴データ読み出しユニット4bは、他の装置からの要求を受けて、層別現象履歴データを読み出す。層別現象履歴データ読み出しユニット4bは、他の装置からの要求を受けて、適用条件データが同一の層別現象履歴データを読み出す。層別現象履歴データ読み出しユニット4bは、他の装置からの要求を受けて、適用条件データが類似の層別現象履歴データを読み出す。例えば、層別現象履歴データ読み出しユニット4bは、プロセスコンピュータ12からの要求に基づき層別現象履歴データを読み出す。層別現象履歴データは、層別現象履歴データベース4cに記憶されたデータの中から、ロールIDをキーとして、状態定量化データとその他の紐づけられた適用条件など関連するデータの中から任意の項目によって層別で索引し生成されたデータである。
【0031】
層別現象履歴データベース4cは、データ記憶ユニット4aが受信したデータと、それぞれのデータの取得時刻とを層別現象履歴データとして紐づけて記憶する。
【0032】
状態判定部5は、データ記憶部4と通信可能に設けられる。状態判定部5は、データ記憶部4から状態定量化データを受信する。状態判定部5は、データ記憶部4から層別現象履歴データを読み出す。状態判定部5は、圧延に使用する特定の圧延ロールの圧延の適用条件データと同一または類似する適用条件データに関連する状態定量化データと層別現象履歴データに基づき圧延ロールの状態モードを判定する。状態判定部5は、状態現象データベース5aと状態判定ユニット5bを備える。
【0033】
状態現象データベース5aは、状態判定閾値データベースと状態モードデータベースを備える。例えば、状態判定閾値データベースは、状態定量化データのそれぞれに対して、状態が異常か否かと、その状態のレベルである状態レベルを判定するための状態判定閾値を一覧化したデータベースである。状態判定閾値は、ロールの状態が異常か否か、その状態レベルを判定するための値である。例えば、状態判定閾値は、あらかじめ設定される。例えば、状態判定閾値は、半固定的に設定される。例えば、状態判定閾値は、利用者7のプラントに対する過去の経験と知識から算出される。例えば、状態モードは、あらかじめ設定される。例えば、状態モードは、半固定的に設定される。例えば、状態モードは、利用者7のプラントに対する過去の経験と知識から算出される。
【0034】
状態判定ユニット5bは、圧延に使用する特定の圧延ロールの適用条件データを受信した場合、その適用条件と同一または類似する適用条件データに関わる層別現象履歴データをデータ記憶部4から読み出す。例えば、状態判定ユニット5bは、状態定量化データに関する圧延ロールIDと適用条件を受信した場合、その圧延ロールIDと適用条件に関わる層別現象履歴データをデータ記憶部4から読み出す。例えば、状態判定ユニット5bは、データ記憶部4から圧延ロールIDと適用条件を受信したときに、その圧延ロールIDと適用条件に関わる層別現象履歴データをデータ記憶部4から読み出す。状態判定ユニット5bは、読み出された層別現象履歴データと状態現象データベース5aから得たデータと比較し、状態定量化データの状態レベルと状態モードを判定する。状態判定ユニット5bは、読み出された層別現象履歴データと状態現象データベース5aから得た状態判定閾値をもとに、ロールの状態が異常か否か、その状態レベルを判定する。状態判定ユニット5bは、状態判定閾値に抵触したデータ項目と、その状態レベルの組み合わせに対して、どのような状態モードであるかを判定する。
【0035】
推奨適用方法判定部6は、データ記憶部4と通信可能に設けられる。推奨適用方法判定部6は、状態判定部5と通信可能に設けられる。推奨適用方法判定部6は、状態判定部5から状態判定閾値に抵触したデータ項目と状態判定部5が判定した状態モードを受信する。推奨適用方法判定部6は、圧延ロールの推奨適用方法と層別現象履歴データとを判定する。推奨適用方法判定部6は、圧延ロールの推奨適用方法と層別現象履歴データとを外部に表示する。推奨適用方法判定部6は、圧延ロールの推奨適用方法と層別現象履歴データとを利用者7に提示する。推奨適用方法判定部6は、推奨適用方法データベース6aと推奨適用方法判定ユニット6bを備える。
【0036】
推奨適用方法データベース6aは、圧延ロールの推奨適用方法を判定するための値を記憶する。例えば、圧延ロールの推奨適用方法を判定するための値は、状態モードの組み合わせに対して、推奨適用方法を定めるための値である。推奨適用方法は、状態モードに対して推奨される圧延ロールの適用方法である。例えば、推奨適用方法は、ロール交換によるロール適用の回避である。例えば、推奨適用方法は、ロール負荷の低減による圧延条件変更である。
【0037】
推奨適用方法判定ユニット6bは、圧延ロールIDと適用条件が与えられた場合、当該圧延ロールIDと適用条件に関わる層別現象履歴データと当該層別現象履歴データに対して、状態判定ユニット5bから状態モードを得る。推奨適用方法判定ユニット6bは、受信した状態モードに対して、推奨適用方法データベース6aから適当な推奨適用方法を得る。推奨適用方法判定ユニット6bは、圧延ロールの推奨適用方法と層別現象履歴データとを外部に表示する。例えば、推奨適用方法判定ユニット6bは、圧延ロールの推奨適用方法と層別現象履歴データとを利用者7に提示する。例えば、推奨適用方法判定ユニット6bは、表示装置の表示により利用者7に提示する。例えば、推奨適用方法判定ユニット6bは、音声出力装置の音声により利用者7に提示する。
【0038】
次に、
図3を用いて、圧延開始後に圧延前材料41が距離Lだけ圧延するまでにデータ抽出ユニット2aが行う処理の例を説明する。
図3は、実施の形態1におけるロール管理装置のロール物理量信号と材料進入検出信号と材料離脱検出信号と材料全長計測信号の例を示す図である。
【0039】
最上段のグラフは、ロール物理量信号を示すグラフである。上から2段目のグラフは、材料進入検出信号を示すグラフである。上から3段目のグラフは、材料離脱検出信号を示すグラフである。最下段のグラフは、材料全長計測信号を示すグラフである。
【0040】
時刻T0は、材料が上側圧延ロール21と下側圧延ロール22に噛みこんだ時刻である。時刻Tは、材料が長さL分、圧延された時刻である。時刻T1は、圧延後材料42が先端からL1の位置まで圧延された時刻である。時刻T2は、圧延後材料42が先端からL2の位置まで圧延された時刻である。
【0041】
例えば、図示されないデータ抽出ユニット2aは、圧延開始後の経過時間による時間範囲でロール物理量信号を切り出す。具体的には、データ抽出ユニット2aは、切り出す時間範囲を時刻T0から時刻Tまでとすることで、圧延開始から距離L分圧延するまでの上側圧延ロール21に関わるロール現象データが採取する。データ抽出ユニット2aは、切り出す時間範囲を時刻T0から時刻T1までとすることで、圧延開始から距離L1までの距離分圧延するまでの上側圧延ロール21に関わるロール現象データが採取する。
【0042】
例えば、データ抽出ユニット2aは、圧延後材料42の部位から、適切な部位を圧延中のロール現象データを採取する。具体的には、データ抽出ユニット2aは、圧延後材料42の中間部位L1からL2に該当する時間範囲に該当するタイミングとして材料全長計測信号を参照することで、時刻T1からT2の時間範囲が得る。データ抽出ユニット2aは、時刻T1から時刻T2の時間範囲でロール物理量信号を切り出す。その結果、データ抽出ユニット2aは、圧延後材料42のL1からL2を圧延しているときのロール現象データが採取する。
【0043】
次に、
図4を用いて、処理前ロール現象データと前処理済ロール現象データの例を説明する。
図4は、実施の形態1におけるロール管理装置の処理前ロール現象データと前処理済ロール現象データの例を示すグラフである。
【0044】
図4の上段のグラフは、データ抽出ユニット2aが採取した圧延ロールの振動に関する処理前ロール現象データを示すグラフである。
図4の下段のグラフは、データ前処理ユニット2bが処理した前処理済ロール現象データを示すグラフである。
図4に示されるように、処理前ロール現象データは、ノイズを含む。ノイズには、瞬時的なノイズと大きなうねりの低周波ノイズとが含まれる。前処理済ロール現象データでは、フィルター処理によりノイズが除去される。
【0045】
次に、
図5を用いて、層別現象履歴データベースの例を説明する。
図5は、実施の形態1におけるロール管理装置の層別現象履歴データベースの例を示す図である。
【0046】
図5に示されるように、層別現象履歴データには圧延材ID、ロールID、チェックID、圧延材種類、圧延材寸法、圧延条件、データ取得時刻、状態定量化データが項目として記録される。例えば、層別現象履歴データにはデータレコード1、データレコード2、データレコード3のようにデータ取得時で分けて、項目ごとに層別にデータが記録される。
【0047】
次に、
図6を用いて、状態判定閾値データベースの例を説明する。
図6は、実施の形態1におけるロール管理装置の状態判定閾値データベースの例を示す図である。
【0048】
図6に示されるように、状態判定閾値データベースには、状態定量化データそれぞれに対して、複数の状態判定閾値が設定される。例えば、
図6に示す例においては、状態定量化データAに対して閾値X1の場合、状態レベルは、「レベル1」となる。
【0049】
次に、
図7を用いて、状態モードデータベースの例を説明する。
図7は、実施の形態1におけるロール管理装置の状態モードデータベースの例を示す図である。
【0050】
図7に示されるように、状態モードデータベースには、状態判定閾値に抵触したデータ項目とその状態レベルの組み合わせごとに、判定される状態モードが設定される。例えば、
図7に示す例においては、状態判定閾値に抵触したデータ項目が状態定量化データAであり状態レベルが2の場合かつ状態判定閾値に抵触したデータ項目が状態定量化データBであり状態レベルが2の場合、状態モードは、「状態モードXの可能性がある」と判定される。
【0051】
次に、
図8を用いて、推奨適用方法データベースの例を説明する。
図8は、実施の形態1におけるロール管理装置の推奨適用方法データベースの例を示す図である。
【0052】
図8に示されるように、推奨適用方法データベースには、判定された状態モードに対して推奨する適用方法が設定される。例えば、
図9に示す例においては、状態モードXの可能性があると判定された場合、推奨する適
用方法は、「負荷低減」となる。
【0053】
次に、
図9を用いて、ロール管理装置1の動作を説明する。
図9は実施の形態1におけるロール管理装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0054】
ステップS1では、圧延機11は、材料の圧延を開始する。その後、データ採取部2は、ステップS2の動作を行う。
【0055】
ステップS2では、データ採取部2は、ロール現象データを採取する。その後、データ定量化部3は、ステップS3の動作を行う。
【0056】
ステップS3では、データ定量化部3は、状態定量化データを生成する。その後、データ記憶部4は、ステップS4の動作を行う。
【0057】
ステップS4では、データ記憶部4は、状態定量化データを記憶する。次に、データ記憶部4は、プロセスコンピュータ12からの入力に基づき層別現象履歴データを読み出す。その後、状態判定部5は、ステップS5の動作を行う。
【0058】
ステップS5では、状態判定部5は、層別現象履歴データに基づき圧延ロールの状態モードを判定する。その後、推奨適用方法判定部6は、ステップS6の動作を行う。
【0059】
ステップS6では、推奨適用方法判定部6は、状態モードに基づき推奨適法方法を判定する。その後、ロール管理装置1は、ステップS7の動作を行う。
【0060】
ステップS7では、ロール管理装置1は、推奨適用方法を外部に表示する。その後、ロール管理装置1は、フローを終了する。
【0061】
次に、
図10を用いて、ロール管理装置1の例を説明する。
図10は実施の形態1におけるロール管理装置のハードウェア構成図である。
【0062】
ロール管理装置1の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0063】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、ロール管理装置1の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ロール管理装置1の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0064】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、監視装置9の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、ロール管理装置1の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0065】
ロール管理装置1の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、データ採取部2の機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、データ採取部2の機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0066】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせでロール管理装置1の各機能を実現する。
【0067】
以上で説明した実施の形態1によれば、ロール管理装置1は、特定の圧延ロールの状態に基づき特定の圧延ロールに対して推奨される適用方法を提示する。このため、圧延ロールを適切に適用することができる。
【0068】
また、ロール管理装置1は、圧延ロールの異常を抑制することができる。このため、圧延材を計画的に生産することができる。
【0069】
また、ロール管理装置1は、圧延ロールの折損を抑制することができる。このため、圧延機の故障による圧延機以外の設備への影響を減らすことができる。
【0070】
また、ロール管理装置1は、データ定量化を自動的に行う。このため、データ定量化の作業を利用者7が行う必要がない。
【0071】
また、ロール管理装置1は、圧延に関する複数のデータを記録する。このため、圧延に関する複数のデータを統合する作業が必要ない。
【0072】
また、ロール管理装置1は、圧延ロールの推奨適用方法と層別現象履歴データとを利用者7に提示する。このため、利用者7は、圧延機11に適用した圧延ロールをどのように圧延に適用すべきか、自身の経験および知識をもとに判断することができる。
【0073】
また、ロール管理装置1は、状態判定閾値データベースを備える。このため、圧延の位置ごとの判定精度が向上する。
【0074】
また、ロール管理装置1は、ロール現象データを定量化し状態定量化データを生成する。このため、ロール状態を定量的に把握することができる。
【0075】
また、ロール管理装置1は、必要な時間範囲に該当するタイミングのデータのみを採取する。このため、採取するデータ量を減少させることができる。その結果、データ処理の時間の短縮、算出の負荷低減、処理精度を向上することができる。これにより、汎用のコンピュータを利用して処理前ロール現象データの処理をすることができる。
【0076】
また、ロール管理装置1は、適切なサンプリング周期で処理前ロール現象データを採取する。このため、採取するデータ量を減少させることができる。その結果、データ処理の時間の短縮、算出の負荷低減、処理精度を向上することができる。これにより、汎用のコンピュータを利用して処理前ロール現象データの処理をすることができる。
【0077】
また、ロール管理装置1は、適切なサンプリング時間範囲で処理前ロール現象データの全体を採取する。このため、汎用のコンピュータを利用して処理前ロール現象データの処理をすることができる。
【0078】
また、ロール管理装置1は、適切なサンプリング時間範囲として材料全長における先端、材料全長における中ほど、材料全長における後端とをそれぞれ設定する。このため、圧延の位置ごとの判定精度が向上する。
【0079】
なお、ロール管理装置1は、データ定量化部3を備えなくてもよい。この場合、データ記憶部4は、データ採取部2から前処理済ロール現象データを受信する。その結果、ロール管理装置1は、前処理済ロール現象データに基づき圧延ロールの推奨適用方法を判定する。
【0080】
なお、実施の形態1にかかる説明においてはデータ抽出ユニット2aが必要な時間範囲に該当するタイミングのデータの採取方法を例示したが、適切なタイミングが得られる他の手段で代用してもよい。
【0081】
また、ロール管理装置1は、処理前ロール現象データに対してフィルターを適用することで、前処理済ロール現象データを生成する。このため、データ処理の時間の短縮、算出の負荷低減、処理精度を向上することができる。
【0082】
なお、データ採取手段における処理前ロール現象データに対する前処理の実行においては、欠損データの補完または異なるデータ様式の正規化などのデータクレンジングをあわせて実行してもよい。
【0083】
なお、ロール管理装置1は、処理前ロール現象データに対してフィルター処理およびデータクレンジングをしなくてもよい。
【0084】
なお、データ定量化部3は、データ採取部2と一体化されていてもよい。
【0085】
なお、上側圧延ロール21を管理する対象として説明したが、下側圧延ロール22を管理の対象としてもよい。この場合、ロール物理量センサ31は、下側圧延ロール22に関する物理量を測定すればよい。
【0086】
なお、上側圧延ロール21を管理する対象として説明したが、上側圧延ロール21と下側圧延ロール22の両方を管理の対象としてもよい。この場合、ロール物理量センサ31は、上側圧延ロール21と下側圧延ロール22に関する物理量をそれぞれ測定すればよい。
【0087】
なお、推奨適用方法判定ユニット6bが推奨適用方法の判定を行うために与えられた適用条件に関わるデータをデータ記憶部4から読み出すとき、適用条件を構成するすべてのデータ項目が合致するデータを読み出してもよい。
【0088】
なお、推奨適用方法判定ユニット6bが推奨適用方法の判定を行うために与えられた適用条件に関わるデータをデータ記憶部4から読み出すとき、一部のデータ項目が合致するデータを読み出してもよい。
【0089】
実施の形態2.
図11は実施の形態2におけるロール管理装置の構成図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0090】
本実施の形態2におけるデータ定量化部3は、周波数解析ユニット3bを備える。
【0091】
周波数解析ユニット3bは、データ定量化を行う対象とする前処理済ロール現象データに対して周波数解析し、周波数成分ごとの信号強度などの周波数領域のデータに変換する。周波数解析ユニット3bは、変換された周波数領域のデータに基づき状態定量化データを生成する。例えば、周波数解析とは、時間領域表現のロール現象データを、周波数成分ごとの信号強度など、周波数領域表現のデータに変換するフーリエ変換、離散フーリエ変換、ウェーブレット変換などの既知の解析方法である。
【0092】
以上で説明した実施の形態2によれば、ロール現象データにどのような周波数成分がどれだけ含まれているかを定量化した状態定量化データを生成することができる。このため、状態判定の対象とする状態定量化データ項目の種類を増やすことができる。その結果、状態モードの特定精度を高めることができる。さらに、有用な推奨利用方法と、判断根拠データとを利用者7に提示することができる。
【0093】
実施の形態3.
図12は実施の形態3におけるロール管理装置の構成図である。なお、実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0094】
本実施の形態3におけるデータ定量化部3は、データモデル推定ユニット3cを備える。データモデル推定ユニット3cは、データ定量化を行う対象とする前処理済ロール現象データに対してデータモデルに基づき解析し状態定量化データを生成する。データモデルとは、確率密度関数モデル、自己回帰モデルまたはニューラルネットワークモデルなどの既知のモデルである。
【0095】
以上で説明した実施の形態3によれば、データモデルのパラメータを定量化手段として利用することができる。このため、状態判定の対象とする状態定量化データ項目の種類を増やすことができる。その結果、状態モードの特定精度を高めることができる。さらに、有用な推奨利用方法と、判断根拠データとを利用者7に提示することができる。
【0096】
なお、本実施の形態3における定量化部3は、周波数解析ユニット3bを備えなくてもよい。
【0097】
実施の形態4.
図13は実施の形態4におけるロール管理装置の構成図である。なお、実施の形態3の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0098】
本実施の形態4におけるデータ定量化部3は、定量化データ手動入力ユニット3dを備える。定量化データ手動入力ユニット3dは、外部で定量化したデータの入力を受け付ける。例えば、外部で定量化したデータは、利用者7が自身の経験と知識をもとに定量化したデータである。具体的には、外部で定量化したデータは、オペレータが発見した事象などに基づくデータである。例えば、オペレータが発見した事象などに基づくデータは、圧延中に発生した材料の蛇行、横ずれなどの圧延不安定事象、製品の疵、および製品の不良形状などの圧延失敗事象、材料と圧延ロールの衝突、圧延ロールの状態振動、圧延ロールの過負荷、および圧延ロールの疵などの圧延設備状態事象またはこれらの発生回数、評価点数、または発生回数と評価点数である。
【0099】
以上で説明した実施の形態4によれば、外部で定量化したデータを受け付ける。このため、状態判定の対象とする状態定量化データ項目の種類を増やすことができる。その結果、状態モードの特定精度を高めることができる。さらに、有用な推奨利用方法と、判断根拠データとを利用者7に提示することができる。
【0100】
なお、本実施の形態4におけるデータ定量化部3は、周波数解析ユニット3bを備えなくてもよい。
【0101】
なお、本実施の形態4におけるデータ定量化部3は、データモデル推定ユニット3cを備えなくてもよい。
【0102】
実施の形態5.
図14は実施の形態5におけるロール管理装置の構成図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0103】
本実施の形態5における状態判定部5は、状態判定閾値算出ユニット5cを備える。
【0104】
状態判定閾値算出ユニット5cは、状態定量化データから状態判定閾値を動的に算出する。状態判定閾値算出ユニット5cは、算出した状態判定閾値を設定する。例えば、状態判定閾値算出ユニット5cは、圧延ロールIDと適用条件が与えられたときに、その圧延ロールIDに関わる状態定量化データに対しHotelling理論など状態判定閾値を算出する手法を適用する。その結果、状態判定閾値算出ユニット5cは、状態判定閾値を動的に算出する。
【0105】
以上で説明した実施の形態5によれば、状態判定閾値は、状態判定閾値算出ユニット5cにより動的に算出される。このため、状態判定部5は、想定外の状況などが生じた場合、その状況に対応して状態判定閾値を変化させることができる。その結果、状態モードの特定精度を高めることができる。さらに、有用な推奨利用方法と、判断根拠データとを利用者7に提示することができる。
【0106】
実施の形態6.
図15は実施の形態6におけるロール管理装置の構成図である。なお、実施の形態5の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0107】
本実施の形態6における状態判定部5は、状態判定ロジック推定ユニット5dを備える。
【0108】
状態判定ロジック推定ユニット5dは、圧延ロールIDと層別現象履歴データと適用条件データから、因果関係モデルを構築する。状態判定ロジック推定ユニット5dは、構築された因果関係モデルと圧延時の適用条件データを比較し、状態モードを判定するためのロジックを設定する。例えば、因果関係モデルは、統計的因果関係モデル、決定木、ニューラルネットワークなど非統計因果関係モデルである。状態判定ロジック推定ユニット5dは、因果関係モデルに基づき状態判定閾値に抵触したデータ項目とその状態レベルの組み合わせに対して状態モードを判定するためのロジックを設定する。状態判定部5は、当該ロジックに基づき状態モードを判定する。
【0109】
以上で説明した実施の形態6によれば、状態判定部5は、当該ロジックに基づき状態モードを判定する。このため、状態モードの特定精度を高めることができる。さらに、有用な推奨利用方法と、判断根拠データとを利用者7に提示することができる
【0110】
なお、本実施の形態6における状態判定部5は、状態判定閾値算出ユニット5cを備えなくてもよい。
【0111】
変形例.
変形例におけるロール管理装置1は、本実施の形態1におけるロール管理装置1と同一の構成である。
本実施の形態7における推奨適用方法判定ユニット6bは、圧延ロールIDの当該適用条件における推奨適用方法を、他の圧延ロールIDに関する同じ適用条件における状態モードから推定してもよい。
【0112】
推奨適用方法判定ユニット6bは、ある圧延ロールIDと適用条件が与えられたときに、当該圧延ロールIDに関わらず当該適用条件をキーとして、当該適用条件関わる層別現象履歴データと、当該層別現象履歴データに対して状態判定装置が処理を実行して判定した状態モードを得る。
【0113】
例えば、推奨適用方法判定ユニット6bは、ある圧延ロールIDと適用条件が与えられたときに、当該圧延ロールIDに関わらず当該適用条件と同一の層別現象履歴データと、当該層別現象履歴データに対して状態判定装置が処理を実行して判定した状態モードを得る。具体的には、推奨適用方法判定ユニット6bは、ある圧延ロールで、軟らかい材料かつ幅広の材料を圧延する場合、他の圧延ロールに関する軟らかい材料かつ幅広の材料を圧延した場合の層別現象履歴データと、当該層別現象履歴データに対して状態判定装置が処理を実行して判定した状態モードを得る。
【0114】
例えば、推奨適用方法判定ユニット6bは、ある圧延ロールIDと適用条件が与えられたときに、当該圧延ロールIDに関わらず当該適用条件と類似の層別現象履歴データと、当該層別現象履歴データに対して状態判定装置が処理を実行して判定した状態モードを得る。推奨適用方法判定ユニット6bは、ある圧延ロールで、軟らかい材料かつ幅広の材料を圧延する場合、他の圧延ロールに関する材料の硬さにかかわらず、幅広の材料を圧延した場合の層別現象履歴データと、当該層別現象履歴データに対して状態判定装置が処理を実行して判定した状態モードを得る。
【0115】
以上で説明した変形例によれば、推奨適用方法判定ユニット6bは、圧延ロールIDに関わらず状態モードを得る。このため、ロール管理装置1は、同じ圧延条件に関わるデータであれば推奨適用方法の判定を行うことができる。その結果、ロール管理装置1は、広範な判定が実行でき、判定精度を向上させることができる。
【0116】
実施の形態7.
図16は実施の形態7におけるロール管理装置の構成図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0117】
本実施の形態7における状態判定部5は、状態発生予測ユニット5eを備える。
【0118】
状態発生予測ユニット5eは、事前知識による推論に基づく状態モードのデータを推奨適用方法判定部6に送信する。具体的には、事前知識による推論が、ある状態モード:Pについて、ある圧延ロールID:Xが適用条件:Aの下で状態モードが発生した場合、異なる圧延ロールID:Yと異なる適用条件:Bの下でも同様の状態モードが発生し得る、という推論がある場合、推奨適用方法判定部6は、以下の動作を行う。推奨適用方法判定部6は、圧延ロールID:Xと適用条件:Aの下で状態モード:Pが発生した場合に、圧延ロールID:Yと適用条件:Bに関わる状態モードを得ようとしたとき、状態モード:Pが発生し得るという推定状態モードのデータを推奨適用方法判定部6に送信する。
【0119】
以上で説明した実施の形態7によれば、ロール管理装置1は、推論を示す事前知識による推論に基づき推奨適用方法の判定を行う。このため、ある圧延ロールIDとある適用条件に関して、過去に状態モードが判定されていない場合であっても推奨適用方法の判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0120】
1 ロール管理装置、 2 データ採取部、 2a データ抽出ユニット、 2b データ前処理ユニット、 3 データ定量化部、 3a 基本統計量算出ユニット、 3b 周波数解析ユニット、 3c データモデル推定ユニット、 3d 定量化データ手動入力ユニット、 4 データ記憶部、 4a データ記憶ユニット、 4b 層別現象履歴データ読み出しユニット、 4c 層別現象履歴データベース、 5 状態判定部、 5a 状態現象データベース、 5b 状態判定ユニット、 5c 状態判定閾値算出ユニット、 5d 状態判定ロジック推定ユニット、 5e 状態発生予測ユニット、 6 推奨適用方法判定部、 6a 推奨適用方法データベース、 6b 推奨適用方法判定ユニット、 7 利用者、 11 圧延機、 12 プロセスコンピュータ、 21 上側圧延ロール、22 下側圧延ロール、 31 ロール物理量センサ、 32 材料進入検出センサ、33 材料離脱検出センサ、 34 材料全長計測センサ、 41 圧延前材料、 42 圧延後材料、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア