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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20240409BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20240409BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240409BHJP
   H03F 1/48 20060101ALI20240409BHJP
   H03M 1/16 20060101ALI20240409BHJP
   H03M 1/10 20060101ALI20240409BHJP
   H03M 3/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/45
H03F3/68 220
H03F1/48
H03M1/16 B
H03M1/10 A
H03M3/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021011242
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114805
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】牧原 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】森永 剛
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-060934(JP,A)
【文献】特表2010-534038(JP,A)
【文献】特開2011-171975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H03M 1/00-3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅回路であって、
メインアンプ(10)と、
前記メインアンプのスルーレートを向上させる補助回路(20)と、を有し、
前記メインアンプと前記補助回路とが入力端子(VIN+、VIN-)と出力端子(OUT+、OUT-)との間に並列に接続され、
前記メインアンプは、1段CMOS増幅器で構成され、前記入力端子から入力される2つの入力信号の電圧の差分を増幅し、前記入力信号の電圧の差分に応じた出力信号を前記出力端子から出力し、
前記補助回路は、前記入力信号の電圧の差分に応じて前記出力端子に流れる補助バイアス電流を制御し、
セトリング完了前の所定タイミングで、前記出力端子に流れる前記補助バイアス電流を遮断するようになっており、
前記出力端子に流れる前記補助バイアス電流を遮断するよう指示するカット信号を出力する制御部(30)を備え、
前記補助回路は、前記制御部から前記カット信号が入力されると、前記出力端子に流れる前記補助バイアス電流を遮断する、増幅回路。
【請求項2】
請求項に記載の増幅回路において、
前記出力端子は、プラス側出力端子(OUT+)とマイナス側出力端子(OUT-)を有し、
補助回路20は、
前記マイナス側出力端子に接続され、前記マイナス側出力端子に流れる前記補助バイアス電流を制御する第1P型MOSFET(251)と、
前記マイナス側出力端子に接続され、前記マイナス側出力端子に流れる前記補助バイアス電流を制御する第1N型MOSFET(252)と、
前記プラス側出力端子に接続され、前記プラス側出力端子に流れる前記補助バイアス電流を制御する第2P型MOSFET(253)と、
前記プラス側出力端子に接続され、前記プラス側出力端子に流れる前記補助バイアス電流を制御する第2N型MOSFET(254)と、を有し、
前記制御部から前記補助回路に前記カット信号が入力されると前記第1P型MOSFET、前記第1N型MOSFET、前記第2P型MOSFETおよび前記第2N型MOSFETがオフする増幅回路。
【請求項3】
請求項に記載の増幅回路において、
前記補助回路は、
電源ライン(VDD)と前記第1P型MOSFETのゲートの間に配置され、前記第1P型MOSFETをオフするための第1制御用P型MOSFET(241)と、
前記第2N型MOSFETのゲートと接地ライン(GND)の間に配置され、前記第2N型MOSFETをオフするための第1制御用N型MOSFET(242)と、
前記電源ライン(VDD)と前記第2P型MOSFETの間に配置され、前記第2P型MOSFETをオフするための第2制御用P型OSFET(243)と、
前記第1N型MOSFETのゲートと前記接地ラインの間に配置され、前記第1N型MOSFETをオフするための第2制御用N型OSFET(244)と、を有し、
前記制御部から前記カット信号が入力されると前記第1制御用P型MOSFET、前記第1制御用N型MOSFET、前記第2制御用P型OSFETおよび前記第2制御用N型OSFETが前記第1P型MOSFET、前記第2N型MOSFET、前記第2P型MOSFETおよび前記第1N型MOSFETをオフさせる増幅回路。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の増幅回路において、
前記所定タイミングは、外部から入力されるサンプル/ホールド信号に同期したタイミングである増幅回路。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の増幅回路において、
前記所定タイミングは、前記入力信号の電圧の差分が所定範囲内となったタイミングである増幅回路。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の増幅回路において、
スイッチトキャパシタ回路に用いられる増幅回路。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の増幅回路において、
ΔΣ型オーバーサンプリング型ADコンバータを含むオーバーサンプリング型ADコンバータまたは巡回型ADコンバータを含むナイキスト型ADコンバータに用いられる増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された増幅回路がある。この増幅回路は、2つの入力信号の電圧の差を増幅して出力端子から出力信号を出力する2段CMOS増幅器を有するメインアンプを備えている。さらに、出力端子と電源ラインの間に配置された第1補償コンデンサと、出力端子と接地ラインの間に配置された第2補償コンデンサと、を備えている。この増幅回路は、さらに、第1補償コンデンサを充電する第1電流源と、第2補償コンデンサを充電する第2電流源と、メインアンプのスルーレートを向上させるスルーレートエンハンスメント回路と、を備えている。
【0003】
この増幅回路では、スルーレートエンハンスメント回路が、2つの入力信号の差電圧に応答して第1電流源と第2電流源の一方をオンする信号を送信する。これにより、増幅回路のスルーレートを増加させ、増幅回路から出力される信号の変動が収束するセトリング時間の短縮化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7362173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された増幅回路は、2つの増幅回路を縦続接続した2段CMOS増幅器を有する構成となっているので電流経路が多く消費電力が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、消費電力を低減するため、図12に示すような1段CMOS増幅器を有するメインアンプ80を備えた増幅回路を採用することが考えられる。この増幅回路は、2つの入力信号の電圧の差分を増幅するメインアンプ80と、スルーレートエンハンスメント回路に対応する補助回路81を有している。この増幅回路は、補助回路81が出力端子に流れる補助バイアス電流を制御する構成となっており、メインアンプ80のさらなる高速動作が可能である。
【0007】
しかし、このような増幅回路では、メインアンプ80と補助回路81の各トランジスタにトランジスタばらつきがあると、メインアンプ80と補助回路81との間にオフセットのミスマッチが生じてしまう。この場合、メインアンプ80の出力信号のセトリングが完了した後もメインアンプ80の出力端子に補助バイアス電流が供給され続け、出力端子の電位が変化し、メインアンプ80の出力信号の精度が悪化してしまうといった問題がある。
【0008】
特に、1段CMOS増幅器を有するメインアンプ80を備えた構成では、複数段のCMOS増幅器を有するメインアンプを備えた構成と比較して、出力インピーダンスが高くなるため、補助バイアス電流の影響を受けやすい。このため、メインアンプ80の出力信号の精度の悪化が顕著となる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みたもので、1段CMOS増幅器を有するメインアンプとし、スルーレートを向上させるスルーレート回路を構成する補助回路を備えた増幅回路において、出力信号の精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、増幅回路であって、メインアンプ(10)と、メインアンプのスルーレートを向上させる補助回路(20)と、を有し、メインアンプと補助回路とが入力端子(VIN+、VIN-)と出力端子(OUT+、OUT-)との間に並列に接続され、メインアンプは、1段CMOS増幅器で構成され、入力端子から入力される2つの入力信号の電圧の差分を増幅し、入力信号の電圧の差分に応じた出力信号を出力端子から出力し、補助回路は、入力信号の電圧の差分に応じて出力端子に流れる補助バイアス電流を制御し、セトリング完了前の所定タイミングで、出力端子に流れる補助バイアス電流を遮断するようになっており、出力端子に流れる補助バイアス電流を遮断するよう指示するカット信号を出力する制御部(30)を備え、補助回路は、制御部からカット信号が入力されると、出力端子に流れる補助バイアス電流を遮断する
【0011】
このような構成によれば、セトリング完了前の所定タイミングで、出力端子に流れる補助バイアス電流が遮断され、出力信号が補助バイアス電流の影響を受けなくなる。したがって、1段CMOS増幅器を有するメインアンプのスルーレートを向上させる補助回路を備えた低電力増幅回における出力信号の精度を向上することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の増幅回路の全体構成を示した図である。
図2】比較例と第1実施形態の増幅回路である本案のタイミングチャートである。
図3】第2実施形態のメインアンプの回路図である。
図4】第2実施形態の補助回路の回路図である。
図5】比較例と第2実施形態の増幅回路である本案のタイミングチャートである。
図6】第2実施形態の増幅回路を用いた1次ΔΣADコンバータのブロック図である。
図7図6中の1次ΔΣADコンバータのスイッチトキャパシタ積分器、減算器およびDAコンバータの回路図である。
図8】第3実施形態に係る増幅回路の制御部の回路図である。
図9】第4実施形態に係る増幅回路の制御部の回路図である。
図10】第5実施形態の増幅回路の全体構成を示した図である。
図11】第6実施形態の増幅回路の全体構成を示した図である。
図12】課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る増幅回路について、図1図2を用いて説明する。本増幅回路1は、消費電力の少ない低電力増幅回路として構成されている。本増幅回路1は、メインアンプ10、補助回路20および制御部30を備えている。なお、本増幅回路1は、メインアンプ10と補助回路20とが、入力端子としての信号端子VIN+、VIN-と出力端子OUT+、OUT-との間に並列に接続されたSRE(Slew-Rate Enhancement)型増幅回路として構成されている。なお、出力端子OUT+はプラス側出力端子に相当し、OUT-はマイナス側出力端子に相当する。
【0016】
メインアンプ10は、1段CMOS増幅器で構成され、信号端子VIN+と信号端子VIN-を介して入力される2つの入力信号の電圧の差分を増幅し、2つの入力信号の電圧の差分に応じた2つの出力信号を信号端子OUT+と信号端子OUT-から出力する。
【0017】
補助回路20は、信号端子VIN+と信号端子VIN-を介して入力される2つの入力信号に応じて出力端子としての信号端子OUT+、信号端子OUT-に流れる補助バイアス電流を制御する。補助回路20は、信号端子OUT+、信号端子OUT-に流れる補助バイアス電を制御することにより、メインアンプ10のスルーレートを向上させる。
【0018】
制御部30は、補助回路20からメインアンプ10への補助バイアス電流の供給の遮断を指示する信号を補助回路20に出力する。
【0019】
図2(a)は、セトリング完了前の所定タイミングで、信号端子OUT+と信号端子OUT-に流れる補助バイアス電流が遮断される機能を有していない比較例のタイミングチャートである。なお、比較例は、本実施形態の増幅回路1と比較してセトリング完了前の所定タイミングで、信号端子OUT+と信号端子OUT-に流れる補助バイアス電流が遮断される機能を有していない点のみが異なる。また、図2(b)は、本実施形態の増幅回路1のタイミングチャートである。
【0020】
まず、図2(a)の比較例のタイミングチャートについて説明する。外部から制御部30に入力されるサンプル/ホールド信号がサンプルSMPからホールドHLDに変化すると、信号端子VIN+および信号端子VIN-にそれぞれ外部から入力信号が入力される。
【0021】
メインアンプ10は、信号端子VIN+および信号端子VIN-から入力される2つの入力信号の差分を増幅し、入力信号の差分に応じた出力信号を信号端子OUT+、OUT-から出力する。
【0022】
また、補助回路20は、信号端子VIN+および信号端子VIN-から入力される2つの入力信号の差分に応じて信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流を制御する。
【0023】
図2(a)中に示す補助バイアス電流の波形は、ある電流値まで増加すると一定となり、その後、徐々に減少している。このとき、補助バイアス電流の波形は、比較的緩やかに減少する。そして、ホールドからサンプルに変化する時点でも補助バイアス電流の波形は0に戻っていない。
【0024】
これは、メインアンプ10と補助回路20との間にオフセットのミスマッチにより、補助回路20から信号端子OUT+、OUT-に補助バイアス電流が流れ続けているためと考えられる。この場合、信号端子OUT+、OUT-から出力される出力差電圧に誤差が生じてしまう。
【0025】
次に、本実施形態の増幅回路1のタイミングチャートについて、図2(b)を参照して説明する。比較例と同様に、外部から制御部30に入力されるサンプル/ホールド信号がサンプルSMPからホールドHLDに変化すると、信号端子VIN+および信号端子VIN-にそれぞれ外部から入力信号が入力される。
【0026】
図2(b)中に示す補助バイアス電流の波形は、ある電流値まで増加すると一定となり、その後、徐々に減少する。このとき、補助バイアス電流の波形は、比較的緩やかに減少する。
【0027】
ここで、本実施形態の増幅回路1の補助回路20は、制御部30から出力される信号に応じて、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流を遮断する。これにより、セトリング完了前の所定タイミングで、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流は遮断され速やかに0になる。
【0028】
そして、ホールド状態が終了した時点でも補助バイアス電流の波形は0となり、信号端子OUT+、OUT-の出力差電圧も0となる。このように、補助バイアス電流が遮断され、出力信号が補助バイアス電流の影響を受けなくなるので、メインアンプの出力信号の精度が向上する。
【0029】
以上、説明したように、本増幅回路1は、メインアンプ10とメインアンプ10のスルーレートを向上させる補助回路20とを有し、メインアンプ10と補助回路20とが信号端子VIN+、VIN-と信号端子OUT+、OUT-との間に並列に接続されている。そして、メインアンプ10は、1段CMOS増幅器で構成され、信号端子VIN+、VIN-から入力される2つの入力信号の電圧の差分を増幅し、入力信号の電圧の差分に応じた出力信号を信号端子OUT+、OUT-から出力する。また、補助回路20は、入力信号の電圧の差分に応じて信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流を制御する。そして、補助回路20は、セトリング完了前の所定タイミングで、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流を遮断する。
【0030】
このような構成によれば、セトリング完了前の所定タイミングで、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流が遮断され、出力信号が補助バイアス電流の影響を受けなくなる。したがって、1段CMOS増幅器を有するメインアンプのスルーレートを向上させる補助回路を備えた低電力増幅回における出力信号の精度を向上することができる。
【0031】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る増幅回路1について図3図7を用いて説明する。本実施形態の増幅回路1は、上記第1実施形態の増幅回路1の具体的な構成を表している。本増幅回路1は、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータに用いられる。また、本増幅回路1は、図1に示したものと同様に、メインアンプ10、補助回路20および制御部30を備えている。
【0032】
メインアンプ10の回路構成について図3を用いて説明する。メインアンプ10は、アンプ部110を備えている。
【0033】
アンプ部110は、P型MOSFET111a、111b、112a、112b、N型MOSFET114a、114b、115a、115b、117を有している。
【0034】
P型MOSFET111aとP型MOSFET111b、P型MOSFET112aとP型MOSFET112bは、それぞれ互いのゲートが接続されている。P型MOSFET111aとP型MOSFET111bの各ゲートと、P型MOSFET112aとP型MOSFET112bの各ゲートには不図示の外部回路によって所定のバイアス電圧が印加されている。
【0035】
また、P型MOSFET111aおよびP型MOSFET112aは、電源ラインVDDと信号端子OUT-の間でカスコード接続されている。
【0036】
また、P型MOSFET111bおよびP型MOSFET112bは、電源ラインVDDと信号端子OUT+の間でカスコード接続されている。
【0037】
N型MOSFET114aおよびN型MOSFET115aは、信号端子OUT-と接地ラインGNDとの間でカスコード接続されている。また、N型MOSFET114bおよびN型MOSFET115bは、信号端子OUT-と接地ラインGNDとの間でカスコード接続されている。
【0038】
信号端子VIN+は、N型MOSFET115aのゲートに接続され、信号端子VIN-は、N型MOSFET115bのゲートに接続されている。また、N型MOSFET115aとN型MOSFET115bの各ソースは、互いに接続されている。
【0039】
N型MOSFET117のドレインは、N型MOSFET115aとN型MOSFET115bの各ソースに接続され、N型MOSFET117のソースは、接地ラインGNDに接続されている。なお、図示してないが、N型MOSFET117のゲートには、不図示の外部回路によって所定のバイアス電圧が印加されている。
【0040】
次に、メインアンプ10の作動について説明する。
【0041】
信号端子VIN+の電位が上昇し、信号端子VIN-の電位が低下すると、N型MOSFET115aのドレイン-ソース間電圧は小さくなり、N型MOSFET115bのドレイン-ソース間電圧は大きくなる。したがって、信号端子OUT-の電位は低下し、信号端子OUT+の電位は上昇する。
【0042】
反対に、信号端子VIN+の電位が低下し、信号端子VIN-の電位が上昇すると、N型MOSFET115aのドレイン-ソース間電圧は大きくなり、N型MOSFET115bのドレイン-ソース間電圧は小さくなる。したがって、信号端子OUT-の電位は上昇し、信号端子OUT+の電位は低下する。
【0043】
このように、メインアンプ10は、信号端子VIN+と信号端子VIN-を介して入力される2つの入力信号の電圧の差分を増幅し、2つの入力信号の電圧の差分に応じた出力信号を信号端子OUT+と信号端子OUT-から出力する。
【0044】
次に、補助回路20の回路構成について図4を用いて説明する。なお、図3図4の信号端子のうち、同一名の信号端子は、互いに接続線で接続される。具体的には、同一名の信号端子は、信号端子VIN+、信号端子VIN-、信号端子OUT+、信号端子OUT-である。
【0045】
補助回路20は、補助アンプ210、カレントミラー回路部220、230、P型MOSFET241、243、251、253、N型MOSFET242、244、252、254を有している。
【0046】
補助アンプ210は、P型MOSFET211、212、N型MOSFET213、214を有している。
【0047】
P型MOSFET211とP型MOSFET212は、互いのゲートが接続されている。P型MOSFET211とP型MOSFET212の各ゲートには外部回路によって所定のバイアス電圧が印加されている。
【0048】
N型MOSFET213のドレインは、P型MOSFET211のドレインに接続されている。また、N型MOSFET214のドレインは、P型MOSFET212のドレインに接続されている。
【0049】
信号端子VIN+は、N型MOSFET213のゲートに接続され、信号端子VIN-は、N型MOSFET214のゲートに接続されている。また、N型MOSFET213とN型MOSFET214の各ソースは、互いに接続されている。
【0050】
N型MOSFET215のドレインは、N型MOSFET213とN型MOSFET214の各ソースに接続され、N型MOSFET215のソースは、接地ラインGNDに接続されている。なお、図示してないが、N型MOSFET215のゲートには、不図示の外部回路によって所定のバイアス電圧が印加されている。
【0051】
カレントミラー回路部220は、P型MOSFET221、222、N型MOSFET223を有している。
【0052】
P型MOSFET221とP型MOSFET222は、互いのゲートが接続され、カレントミラー回路を構成している。P型MOSFET221とP型MOSFET222の各ゲートには外部回路によって所定のバイアス電圧が印加されている。P型MOSFET221には、P型MOSFET222に流れる電流に比例した電流が流れる。
【0053】
P型MOSFET221とP型MOSFET222の各ソースは、電源ラインVDDに接続され、P型MOSFET222のドレインは、P型MOSFET221とP型MOSFET222の各ゲートに接続されている。
【0054】
N型MOSFET223は、P型MOSFET221と直列に接続されている。具体的には、N型MOSFET223のドレインはP型MOSFET221のドレインに接続され、N型MOSFET223のソースは接地ラインGNDに接続されている。
【0055】
カレントミラー回路部230は、P型MOSFET231、232、N型MOSFET233を有している。
【0056】
P型MOSFET231とP型MOSFET232は、互いのゲートが接続され、カレントミラー回路を構成している。P型MOSFET231とP型MOSFET232の各ゲートには外部回路によって所定のバイアス電圧が印加されている。P型MOSFET232には、P型MOSFET231に流れる電流に比例した電流が流れる。
【0057】
P型MOSFET231とP型MOSFET232の各ソースは、電源ラインVDDに接続され、P型MOSFET231のドレインは、P型MOSFET231とP型MOSFET232の各ゲートに接続されている。
【0058】
N型MOSFET233は、P型MOSFET232と直列に接続されている。具体的には、N型MOSFET233のドレインおよびゲートはP型MOSFET232のドレインに接続され、N型MOSFET233のソースは接地ラインGNDに接続されている。
【0059】
P型MOSFET251、253、N型MOSFET252、254は、信号端子OUT+、OUT-に流れるバイアス電流を制御するバイアス電流用MOSFETである。P型MOSFET251、253、N型MOSFET252、254は、信号端子OUT+、OUT-に流れるバイアス電流I1~I4を制御する。
【0060】
なお、P型MOSFET251は第1P型MOSFETに相当し、N型MOSFET252は第1N型MOSFETに相当し、P型MOSFET253は第2P型MOSFETに相当し、N型MOSFET254は第2N型MOSFETに相当する。 P型MOSFET251のゲートには、P型MOSFET221とP型MOSFET222の各ゲートが接続されるとともに、P型MOSFET241のドレインが接続されている。
【0061】
P型MOSFET253のゲートには、P型MOSFET231とP型MOSFET232の各ゲートが接続されるとともに、P型MOSFET243のドレインが接続されている。
【0062】
N型MOSFET252のゲートには、N型MOSFET233のドレインおよびゲートが接続されるとともにN型MOSFET244のドレインが接続されている。
【0063】
N型MOSFET254のゲートには、N型MOSFET223のドレインおよびゲートが接続されるとともにN型MOSFET242のドレインが接続されている。
【0064】
P型MOSFET241、243、N型MOSFET242、244は、バイアス電流用MOSFETであるP型MOSFET251、253、N型MOSFET252、254をオフさせるための制御用MOSFETである。
【0065】
なお、P型MOSFET241は第1制御用N型MOSFETに相当し、N型MOSFET242は第1制御用N型MOSFETに相当する。また、P型MOSFET243は第2制御用P型OSFETに相当し、N型MOSFET244は第2制御用N型OSFETに相当する。
【0066】
P型MOSFET241およびP型MOSFET243のゲートには、信号端子CUTnを介してカット信号CUTNが入力される。また、N型MOSFET242およびN型MOSFET244のゲートには、信号端子CUTpを介してカット信号CUTPが入力される。
【0067】
P型MOSFET241およびP型MOSFET243の各ソースは電源ラインVDDに接続されている。また、N型MOSFET242およびN型MOSFET244の各ソースは接地ラインGNDに接続されている。
【0068】
制御部30は、デジタル回路により構成されている。制御部30は、増幅回路1から出力される信号の変動が収束するセトリング完了前の所定タイミングで、補助バイアス電流I1~I4の遮断を指示するカット信号を補助回路20に出力する。カット信号には、カット信号CUTNとカット信号CUTPがある。カット信号CUTNは、ローレベルのときに補助バイアス電流I1、I3の遮断を指示する。カット信号CUTPは、ハイレベルのときに補助バイアス電流I2、I4の供給の遮断を指示する。
【0069】
制御部30には、外部からサンプル/ホールド信号が入力される。制御部30は、サンプル/ホールド信号がサンプルからホールドに変化してから所定期間が経過したタイミングでカット信号CUTNおよびカット信号CUTPを出力する。具体的には、サンプル/ホールド信号がサンプルからホールドに変化してからホールド期間の半分が経過したタイミングでカット信号CUTNおよびカット信号CUTPを出力する。
【0070】
次に、本実施形態の増幅回路1の作動について説明する。
【0071】
まず、図4に示した補助回路20において、N型MOSFET215には、所定のドレイン電流が流れるようになっており、信号端子VIN+と信号端子VIN-に入力される2つの信号の電位差が0になっているものとする。
【0072】
ここで、信号端子VIN+の電位が上昇し、信号端子VIN-の電位が低下すると、N型MOSFET213のドレイン-ソース間電圧は小さくなる。このため、P型MOSFET221のゲートの電位とP型MOSFET251のゲートの電位はそれぞれ低下し、信号端子OUT-に流れる補助バイアス電流I1は増加する。
【0073】
また、信号端子VIN+の電位が上昇し、信号端子VIN-の電位が低下すると、N型MOSFET214のドレイン-ソース間電圧は大きくなる。このため、P型MOSFET232のゲートの電位とP型MOSFET253のゲートの電位はそれぞれ上昇し、信号端子OUT+に流れる補助バイアス電流I3は減少する。
【0074】
また、P型MOSFET222とP型MOSFET221には等しい電流が流れる。また、P型MOSFET231とP型MOSFET232にも等しい電流が流れる。
【0075】
N型MOSFET223は、ドレインとゲートが接続されたダイオード接続となっている。このため、N型MOSFET223にP型MOSFET221を介して電流が流れると、N型MOSFET223のゲートの電位はある値に収束し、N型MOSFET223には所定のドレイン電流が流れる。そして、P型MOSFET221のゲートの電位が低下した際には、P型MOSFET221のドレインの電位は上昇し、N型MOSFET254のゲート電位が上昇し、信号端子OUT+に流れる補助バイアス電流I4は増加する。
【0076】
また、N型MOSFET233は、ドレインとゲートが接続されたダイオード接続となっている。このため、N型MOSFET233にP型MOSFET232を介して電流が流れると、N型MOSFET233のゲートの電位はある値に収束し、N型MOSFET233には所定のドレイン電流が流れる。そして、P型MOSFET232のゲートの電位が上昇した際には、P型MOSFET232のドレインの電位は低下し、N型MOSFET252のゲート電位が低下し、信号端子OUT-に流れる補助バイアス電流I2は減少する。
【0077】
このように、図4に示した補助回路20において、信号端子VIN+の電位が上昇し、信号端子VIN-の電位が低下すると、P型MOSFET251に流れる補助バイアス電流I1は増加し、N型MOSFET252に流れる補助バイアス電流I2は減少する。これにより、図3に示したメインアンプ10において信号端子OUT-の電位は、さらに上昇しようとする。
【0078】
また、図4に示した補助回路20において、信号端子VIN+の電位が上昇し、信号端子VIN-の電位が低下すると、P型MOSFET253に流れる補助バイアス電流I3は減少し、N型MOSFET254に流れる補助バイアス電流I4は増加する。これにより、図3に示したメインアンプ10において信号端子OUT+の電位は、さらに低下しようとする。
【0079】
このように、信号端子OUT+および信号端子OUT-には、補助回路20からの信号に応じた補助バイアス電流I1~I4が流れる。これらの補助バイアス電流I1~I4によりメインアンプ10の信号端子OUT+および信号端子OUT-の動作が補助され、さらなる高速動作が可能となっている。
【0080】
しかし、メインアンプ10と補助回路20との間にオフセットのミスマッチがあると、メインアンプ10の出力信号のセトリングが完了した後も信号端子OUT+および信号端子OUT-に補助バイアス電流I1~I4が供給され続けてしまう。このため、メインアンプ10の出力信号の精度が悪化してしまう。
【0081】
そこで、本増幅回路1は、セトリング完了前の所定タイミングで、制御部30からカット信号CUTN、CUTPを出力するようにしている。よって、補助回路20のP型MOSFET241、243、N型MOSFET242、244がそれぞれオンすることで補助バイアス電流I1~I4を遮断する。
【0082】
P型MOSFET241、243は、ローレベルのカット信号CUTNが入力されるとオン状態となる。また、N型MOSFET242、244は、ハイレベルのカット信号CUTPが入力されるとオン状態となる。
【0083】
P型MOSFET241、243、N型MOSFET242、244がオンすることで、信号端子VP+、VP-の電位は、それぞれ電源ラインVDDの電位と同等となり、信号端子VN+、VN-の電位は、それぞれ接地ラインGNDの電位と同等となる。
【0084】
これにより、セトリング完了前の所定タイミングで、P型MOSFET251、N型MOSFET252、P型MOSFET253、N型MOSFET254は、それぞれオフとなる。このため、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4が遮断される。
【0085】
このように、補助回路20は、制御部30から出力されるカット信号CUTN、CUTPに応じてP型MOSFET241、243、N型MOSFET242、244がそれぞれオンする。そして、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4が遮断される。
【0086】
図5(a)は、補助回路20のP型MOSFET251、N型MOSFET252、P型MOSFET253、N型MOSFET254をオフする機能を有していない比較例のタイミングチャートである。また、図5(b)は、本実施形態の増幅回路1のタイミングチャートである。
【0087】
まず、図5(a)の比較例のタイミングチャートは、図2(a)と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0088】
本実施形態の増幅回路1のタイミングチャートについて、図5を参照して説明する。なお、図5中の補助バイアス電流は、図3中に示したI1+I4-(I3+I2)を表している。比較例と同様に、外部から制御部30に入力されるサンプル/ホールド信号がサンプルSMPからホールドHLDに変化すると、信号端子VIN+および信号端子VIN-にそれぞれ外部から入力信号が入力される。そして、入力信号の入力差電圧が大きくなると、補助回路20のP型MOSFET251、253およびN型MOSFET252、254により信号端子OUT+、OUT-に補助バイアス電流I1~I4が流れる。
【0089】
図5(b)中に示す補助バイアス電流の波形は、ある電流値まで増加すると一定となり、その後、徐々に減少する。このとき、補助バイアス電流の波形は、比較的緩やかに減少する。
【0090】
ここで、本実施形態の増幅回路1は、制御部30から補助回路20にカット信号CUTP、CUTNが入力されるようになっている。カット信号CUTP、CUTNは、セトリング完了前の所定タイミングで信号レベルが反転するようになっている。具体的には、カット信号CUTP、CUTNは、サンプル/ホールド信号がサンプルSMPからホールドHLDに変化してから所定期間が経過すると、信号レベルが反転するようになっている。
【0091】
補助回路20は、制御部30からカット信号CUTP、CUTNが入力されると、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4を遮断する。これにより、セトリング完了前の所定タイミングで、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4は遮断され速やかに0になる。
【0092】
そして、ホールド状態が終了した時点でも補助バイアス電流I1~I4の波形は0となり、信号端子OUT+、OUT-の出力差電圧も0となる。このように、補助バイアス電流I1~I4が遮断され、出力信号が補助バイアス電流I1~I4の影響を受けなくなるので、メインアンプ10の出力信号の精度を向上することができる。
【0093】
上記した増幅回路1は、例えば、スイッチトキャパシタ積分器を用いた1次ΔΣADコンバータに適用可能である。図6を用いて、スイッチトキャパシタ積分器6を用いた1次ΔΣADコンバータについて説明する。なお、図6では、1つの入力端子Inputから1つの入力信号が入力されるように示してあるが、実際には、2つの入力信号の差電圧が入力されるようになっている。
【0094】
1次ΔΣADコンバータは、スイッチトキャパシタ積分器6、コンパレータ3、DAコンバータ4および減算器5を備えている。図5に示す回路は、1つの積分器としてスイッチトキャパシタ積分器6を有する1次ΔΣADコンバータとして構成されている。なお、スイッチトキャパシタ積分器6はスイッチトキャパシタ回路に相当する。
【0095】
減算器5は、入力端子inputから入力されるアナログの入力信号の値からDAコンバータ4から出力されるデジタル信号の値を減算し、この減算した結果をスイッチトキャパシタ積分器6に出力する。
【0096】
スイッチトキャパシタ積分器6は、減算器5からの信号を積分する。すなわち、スイッチトキャパシタ積分器6は、減算器5で減算した結果を次々に加算することにより積分する。そして、この積分した結果をコンパレータ3に出力する。
【0097】
コンパレータ3は、スイッチトキャパシタ積分器6によって積分された結果をある値と比較する比較器である。コンパレータ3は、スイッチトキャパシタ積分器6によって積分された結果と所定の基準電圧とを比較して量子化する。そして、この量子化した信号を出力端子Outputから出力するとともにDAコンバータ4に出力する。
【0098】
DAコンバータ4は、コンパレータ3からのデジタル信号をアナログ信号に変換して減算器5に出力する。DAコンバータ4は、3レベルの容量式のDAコンバータとして構成されている。
【0099】
上記した減算、加算、比較を繰り返すことにより、デジタル値の1、もしくは0の数列が出力端子Outputから出力される。
【0100】
次に、本実施形態の増幅回路1を用いたスイッチトキャパシタ積分器6およびDAコンバータ4について図7を用いて説明する。
【0101】
スイッチトキャパシタ積分器6は、上述した増幅回路1、第1入力コンデンサ661、第2入力コンデンサ671、コンデンサ662、672、第1帰還コンデンサ681および第2帰還コンデンサ682を有している。また、スイッチトキャパシタ積分器6は、第1スイッチ611、第2スイッチ641、第3スイッチ621、第4スイッチ651、第5スイッチ631、第6スイッチ632、第7スイッチ633、第8スイッチ634を有している。
【0102】
スイッチトキャパシタ積分器6は、さらに、第9スイッチ642、第10スイッチ644、第11スイッチ643、第12スイッチ652、第13スイッチ654、第14スイッチ653を有している。なお、図示してないが、スイッチトキャパシタ積分器6は、各スイッチ611~614、621~624、631~634、641~644、651~654を制御するデジタル回路を有している。
【0103】
第1スイッチ611は、第1入力端子SCIN-と第1入力コンデンサ661の一端との間に接続されている。第2スイッチ641は、第1入力コンデンサ661の他端とメインアンプ10の反転入力端子との間に接続されている。
【0104】
第3スイッチ621は、第2入力端子SCIN+と第2入力コンデンサ671の一端との間に接続されている。第4スイッチ651は、第2入力コンデンサ671の他端とメインアンプ10の非反転入力端子との間に接続されている。
【0105】
第5スイッチ631は、第2入力コンデンサ671の一端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。第6スイッチ632は、第1入力コンデンサ661の他端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。
【0106】
第7スイッチ633は、第2入力コンデンサ671の一端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。第8スイッチ634は、第2入力コンデンサ671の他端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。
【0107】
また、第1帰還コンデンサ681の一端は、増幅回路1の信号端子VIN-に接続され、第2帰還コンデンサ682の一端は、増幅回路1の信号端子VIN-に接続されている。
【0108】
第9スイッチ642は、第1帰還コンデンサ681の一端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。第10スイッチ644は、第1帰還コンデンサ681の他端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。第11スイッチ643は、第1帰還コンデンサ681の他端と信号出力端子SCOUT+との間に接続されている。
【0109】
第12スイッチ652は、第2帰還コンデンサ682の一端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。第13スイッチ654は、第2帰還コンデンサ682の他端とコモンモード電圧端子VCMとの間に接続されている。第14スイッチ653は、第2帰還コンデンサ682の他端と信号出力端子SCOUT-との間に接続されている。
【0110】
DAコンバータ4は、コモンモード電圧VCM、P側リファレンス電圧VREFP、M側リファレンス電圧VREFMの3レベルの容量式のDAコンバータとして構成されている。
【0111】
DAコンバータ4は、スイッチ612、613、614、622、623、624を有している。
【0112】
スイッチ612、613、614およびスイッチ622、623、624は、図6中に示したコンパレータ3の出力信号に応じて択一的にオンされる。
【0113】
次に、図7に示す回路の動作について説明する。
【0114】
なお、初期状態では、スイッチ642、644はオンしており、スイッチ642、644以外のスイッチはオフしているものとする。スイッチ642、644がオンすることにより、帰還コンデンサ681、682の電荷は放電されている。このとき、増幅回路1の信号端子VIN-および信号端子VIN+は、それぞれコモンモード電圧端子VCMと同電位になっている。
【0115】
まず、制御部30は、初期状態になってから所定期間が経過すると、スイッチ642、644をオフするとともにスイッチ611、632、621、634をオンする。これにより、入力端子SCIN-、入力端子SCIN+から入力される各入力信号に応じて第1、第2入力コンデンサ661、671に電荷が蓄積される。
【0116】
また、コンパレータ3の出力信号に応じてスイッチ612~614のうちの1つがオンするとともに、スイッチ622~624のうちの1つがオンする。これにより、コンデンサ662、672に電荷が蓄積される。
【0117】
次に、制御部30は、さらに所定期間が経過すると、スイッチ611、632、621、634をオフするとともにスイッチ631、633、641、651、643、653をオンする。
【0118】
これにより、入力コンデンサ661、662に蓄積された電荷の一部が帰還コンデンサ681に移動するとともに、入力コンデンサ671、692に蓄積された電荷の一部が帰還コンデンサ682に移動する。また、増幅回路1の信号端子VIN-には、入力端子SCIN-から入力されるアナログの入力信号の値からDAコンバータ4から出力されるデジタル信号の値を減算した結果が入力される。また、増幅回路1の信号端子VIN+には、入力端子SCIN+から入力されるアナログの入力信号の値からDAコンバータ4から出力されるデジタル信号の値を減算した結果が入力される。
【0119】
次に、制御部30は、さらに所定期間が経過すると、再度、スイッチ642、644をオンするとともにスイッチ642、644以外のスイッチをオフする。これにより、帰還コンデンサ681、682に蓄積された電荷が放電される。
【0120】
このように、制御部30は、入力コンデンサ661、662の充電および帰還コンデンサ681、682の充電を行うよう各スイッチ611~614、621~624、631~634、641~644、651~654を切り替える。
【0121】
このように、上記した増幅回路1を備えたスイッチトキャパシタ積分器6を構成することもできる。さらに、上記したスイッチトキャパシタ積分器6を備えた1次ΔΣADコンバータを構成することもできる。
【0122】
以上、説明したように、本増幅回路1は、メインアンプ10とメインアンプ10のスルーレートを向上させる補助回路20と制御部30を備えている。また、メインアンプ10と補助回路20とが信号端子VIN+、VIN-と信号端子OUT+、OUT-との間に並列に接続されている。
【0123】
そして、メインアンプ10は、1段CMOS増幅器で構成され、信号端子VIN+、VIN-から入力される2つの入力信号の電圧の差分を増幅し、入力信号の電圧の差分に応じた出力信号を信号端子OUT+、OUT-から出力する。
【0124】
また、補助回路20は、入力信号の電圧の差分に応じて信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4を制御する。そして、補助回路20は、制御部30からカット信号CUTN、CUTPが入力されると、出力端子に流れる補助バイアス電流を遮断する。
【0125】
このような構成によれば、制御部30からカット信号が入力されると、出力端子に流れる補助バイアス電流I1~I4が遮断され、出力信号が補助バイアス電流I1~I4の影響を受けなくなるので、メインアンプの出力信号の精度を向上することができる。
【0126】
以上、説明したように、本実施形態の増幅回路1は、出力端子への補助バイアス電流I1~I4の流れを遮断するよう指示するカット信号CUTN、CUTPを出力する制御部30を備えている。
【0127】
したがって、制御部30から出力されるカット信号CUTN、CUTPに応じたタイミングで出力端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4を遮断することができる。
【0128】
また、本実施形態の増幅回路1は、入力信号の電圧の差分に応じて信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4を制御する補助回路20を備えている。また、補助回路20は、制御部30からカット信号CUTN、CUTPが入力されると、出力端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4を遮断する。
【0129】
補助バイアス電流I1~I4が流れる経路に新たにスイッチを配置し、各スイッチを制御して補助バイアス電流I1~I4を遮断するのではなく、補助バイアス電流I1~I4を遮断する。
【0130】
したがって、補助バイアス電流I1~I4が流れる経路に配置した複数のスイッチを制御する際に生じるノイズによる誤差をなくすことができる。
【0131】
また、本増幅回路は、プラス側出力端子としての出力端子OUT+と、マイナス側出力端子としての出力端子OUT-と、を有している。また、補助回路20は、出力端子OUT-に接続され、出力端子OUT-に流れる補助バイアス電流I1を制御するP型MOSFET251を有している。また、補助回路20は、出力端子OUT-に接続され、出力端子OUT-に流れる補助バイアス電流I2を制御するN型MOSFET252を有している。
【0132】
また、補助回路20は、出力端子OUT+に接続され、出力端子OUT+に流れる補助バイアス電流I3を制御するP型MOSFET253を有している。また、補助回路20は、出力端子OUT+に接続され、出力端子OUT+に流れる補助バイアス電流I4を制御する第2N型MOSFET254を有している。
【0133】
そして、制御部30から補助回路20にカット信号CUTN、CUTPが入力されると複数のP型MOSFET251、N型MOSFET252、P型MOSFET253およびN型MOSFET254がオフする。
【0134】
また、補助回路20は、電源ラインVDDとP型MOSFET251のゲートの間に配置され、P型MOSFET251をオフするためのP型MOSFET241と、を有している。また、補助回路20は、N型MOSFET254のゲートと接地ラインGNDの間に配置され、N型MOSFET254をオフするためのN型MOSFET242を有している。
【0135】
また、補助回路20は、電源ラインVDDとP型MOSFET253の間に配置され、P型MOSFET253をオフするためのP型OSFET243を有している。また、補助回路20は、N型MOSFET252のゲートと接地ラインの間に配置され、N型MOSFET252をオフするためのN型OSFET244を有している。
【0136】
そして、制御部30からカット信号CUTN、CUTPが入力されるとP型MOSFET241、243、N型MOSFET242、244が複数のバイアス電流用MOSFETをオフさせる。
【0137】
このように、複数の制御用MOSFETが複数のバイアス電流用MOSFETをオフさせることにより、出力端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4の流れを遮断することができる。
【0138】
また、上記したセトリング完了前の所定タイミングは、外部から入力されるサンプル/ホールド信号に同期したタイミングである。
【0139】
このように、外部から入力されるサンプル/ホールド信号に同期したタイミングで、出力端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4が遮断されるよう構成することができる。
【0140】
また、本実施形態の増幅回路1は、スイッチトキャパシタ回路に用いることができ、さらに、ΔΣ型オーバーサンプリング型ADコンバータに用いることもできる。
【0141】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る増幅回路1について図8を用いて説明する。本実施形態の増幅回路1は、上記第1~第2実施形態の増幅回路1と比較して、制御部30の構成が異なる。
【0142】
本実施形態の制御部30は、外部からのサンプル/ホールド信号からカット信号CUTN、CUTPを生成する。制御部30は、抵抗34、コンデンサ35およびAND回路36を有している。抵抗34およびコンデンサ35によってRCローパスフィルタが構成されている。
【0143】
AND回路36の一方の入力端子には、サンプル/ホールド信号が入力され、AND回路36の他方の入力端子には、サンプル/ホールド信号が抵抗34およびコンデンサ35によって構成されたRCローパスフィルタを通過した信号が入力される。
【0144】
この制御部30の作動について説明する。
【0145】
まず、サンプル/ホールド信号がローレベルからハイレベルに変化すると、AND回路36の一方の入力端子の電位はハイレベルとなる。また、AND回路36の他方の入力端子は、まだコンデンサ35への充電が十分に行われていないためローレベルとなりAND回路36からローレベルの信号が出力される。次に、コンデンサ35が充電されAND回路36の他方の入力端子がハイレベルになるとAND回路36からハイレベルの信号が出力される。次に、サンプル/ホールド信号がハイレベルからローレベルに変化すると、AND回路36の一方の入力端子の電位はローレベルとなる。また、コンデンサ35は放電してAND回路36の他方の入力端子はローレベルとなる。このため、AND回路36からローレベルの信号が出力される。
【0146】
したがって、制御部30の出力信号は、サンプル/ホールド信号の立ち上がりより若干遅延して立ち上がる波形となる。
【0147】
ところで、カット信号CUTN、CUTPは、サンプル/ホールド信号の4倍速クロックの逆相エッジをDフリップフロップ回路のCLK端子に入力するようにして生成することができる。しかし、このような構成では、回路面積が広くなってしまう。
【0148】
これに対し、本実施形態の制御部30は、このように簡素な構成でカット信号CUTN、CUTPを生成することができるので、倍速クロック回路を必要とせず、少ない回路面積でカット信号CUTN、CUTPを生成することができる。
【0149】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る増幅回路1について図9を用いて説明する。本実施形態の増幅回路1は、上記第1~第3実施形態の増幅回路1と比較して、制御部30の構成が異なる。
【0150】
本実施形態の制御部30も、外部からサンプル/ホールド信号からカット信号CUTN、CUTPを生成する。制御部30は、多段接続されたインバータ回路37a、・・37nとAND回路36を有している。
【0151】
AND回路36の一方の入力端子には、サンプル/ホールド信号が入力され、AND回路36の他方の入力端子には、サンプル/ホールド信号が、多段接続されたインバータ回路37a、・・37nを通過して遅延した信号が入力される。
【0152】
この制御部30の作動について説明する。
【0153】
まず、サンプル/ホールド信号がローレベルからハイレベルに変化すると、AND回路36の一方の入力端子の電位はハイレベルとなる。また、AND回路36の他方の入力端子は遅延によりローレベルとなる。このため、AND回路36からローレベルの信号が出力される。
【0154】
次に、サンプル/ホールド信号が、多段接続されたインバータ回路37a、・・37nを通過するのに要する時間が経過して、AND回路36の他方の入力端子がハイレベルになるとAND回路36からハイレベルの信号が出力される。
【0155】
次に、サンプル/ホールド信号がハイレベルからローレベルに変化すると、AND回路36の一方の入力端子の電位はローレベル、AND回路36の他方の入力端子はハイレベルとなりAND回路36からローレベルの信号が出力される。
【0156】
したがって、制御部30の出力信号は、サンプル/ホールド信号の立ち上がりより若干遅延して立ち上がる波形となる。
【0157】
上記第3実施形態と同様に、本実施形態の制御部30は、簡素な構成でカット信号CUTN、CUTPを生成することができるので、倍速クロック回路を必要とせず、少ない回路面積でカット信号CUTN、CUTPを生成することができる。
【0158】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る増幅回路1について図10を用いて説明する。本実施形態の増幅回路1は、上記第1実施形態の増幅回路1と比較して制御部30の構成が異なる。
【0159】
本実施形態の増幅回路1は、メインアンプ10への2つの入力信号の差電圧が所定範囲内となったタイミングで、制御部30から補助回路20にカット信号CUTN、CUTPを出力し、信号端子OUT+、OUT-に流れる補助バイアス電流I1~I4を遮断する。
【0160】
本実施形態の制御部30は、コンパレータ31、32およびOR回路33を有している。
【0161】
コンパレータ31は、2つの入力信号の差電圧が正となっている場合にその差電圧と、閾値電圧VREF1からVREF2を差し引いた差電圧とを比較する。ここで、閾値電圧VREF1は閾値電圧VREF2よりも大きな値となっている。コンパレータ31は、2つの入力信号の差電圧の大きさが、閾値電圧VREF1-閾値電圧VREF2より小さいときにハイレベルの信号を出力する。
【0162】
コンパレータ32は、2つの入力信号の差電圧が負となっている場合にその差電圧と、閾値電圧VREF2から閾値電圧VREF1を差し引いた差電圧とを比較する。コンパレータ32は、2つの入力信号の差電圧の大きさが、閾値電圧VREF2-閾値電圧VREF1より小さいときにハイレベルの信号を出力する。
【0163】
OR回路33は、コンパレータ31とコンパレータ32の論理和をカット信号CUTPとして補助回路20に出力するとともに、カット信号CUTPの論理を反転させたカット信号COUNを補助回路20に出力する。
【0164】
上記したように、コンパレータ31、32およびOR回路33により制御部30を構成することができる。
【0165】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る増幅回路1について図11を用いて説明する。本実施形態の増幅回路1は、上記第5実施形態の増幅回路1と同様に、メインアンプ10への2つの入力信号の差電圧が所定範囲内となったタイミングで、補助バイアス電流I1~I4を遮断する。
【0166】
本実施形態の増幅回路1は、上記第1実施形態の増幅回路1と比較して、制御部30の構成が異なる。本実施形態のコンパレータ31は、メインアンプ10の内部ノードから取り出した2つの信号の差電圧と、閾値電圧VREF1-VREF2とを比較する。また、コンパレータ31は、メインアンプ10の内部ノードから取り出した2つの信号の差電圧と、閾値電圧VREF2-VREF1とを比較する。
【0167】
このように、メインアンプ10の内部ノードから取り出した2つの信号の差電圧と、閾値電圧VREF1-VREF2あるいは閾値電圧VREF2-VREF1を比較するよう構成することもできる。
【0168】
上記したように、コンパレータ31、32およびOR回路33により制御部30を構成することができる。
【0169】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、増幅回路1をADコンバータに用いた例を示したが、本増幅回路1をADコンバータ以外の用途で用いることもできる。
【0170】
(2)上記各実施形態では、外部から入力されるサンプル/ホールド信号がサンプル状態からホールド状態に変化したときと同期したタイミングで制御部30からカット信号が出力される例を示した。これに対し、サンプル/ホールド信号がサンプル状態からホールド状態に変化したときからサンプル/ホールド信号のホールド期間の3/4程度の期間が経過した際に制御部30からカット信号が出力されるようにしてもよい。
【0171】
(3)上記各実施形態では、制御部30からカット信号が各種タイミングで出力される例を示した。これに対し、例えば、制御部30の後段に、複数のインバータを縦続接続した遅延回路を設け、この遅延回路により制御部30から出力されるカット信号を1クロック遅延させるようにしてもよい。
【0172】
(4)上記第2実施形態では、1次ΔΣ型ADコンバータに本増幅回路1を用いた例を示したが、2次以上のΔΣ型ADコンバータに本増幅回路1を用いることもできる。また、ΔΣ型ADコンバータ含むオーバーサンプリング型ADコンバータに本増幅回路1を用いることもできる。また、巡回型ADコンバータを含むナイキスト型ADコンバータに本増幅回路1を用いることもできる。
【0173】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0174】
1 増幅回路
3 コンパレータ
4 DAコンバータ
5 減算器
6 スイッチトキャパシタ積分器
10 メインアンプ
20 補助回路
30 制御部
110 アンプ部
210 補助アンプ
220、230 カレントミラー回路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図12