(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ用検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 30/62 20060101AFI20240409BHJP
G01N 27/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01N30/62 A
G01N27/08
(21)【出願番号】P 2021016100
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 勇樹
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-27733(JP,A)
【文献】特開平9-251015(JP,A)
【文献】特開2007-132841(JP,A)
【文献】実開平3-48763(JP,U)
【文献】特開平9-264890(JP,A)
【文献】特開2002-71658(JP,A)
【文献】国際公開第2016/146714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
G01N 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の成分を検出する検出部と、
前記検出部に導入される液体の温度を調整する熱交換部とを備え、
前記熱交換部は、
巻回部を有する配管と、
前記巻回部が埋設された鋳造体とを含み、
前記配管は、樹脂により形成され、
前記鋳造体は、前記樹脂の連続使用温度よりも低い融点を有する合金により形成される、液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項2】
前記配管の前記巻回部は、順次連続しかつ第1の方向に積層された複数の巻き配管部を含み、
前記複数の巻き配管部は、前記第1の方向に交差する第2の方向において互いに離間する第1の端部および第2の端部を有し、
前記第1の方向および前記第2の方向に交差する第3の方向における前記複数の巻き配管部の最大幅は、前記複数の巻き配管部の前記第1の端部と前記第2の端部との間の距離よりも小さい、請求項1記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項3】
前記複数の巻き配管部の各々は、前記第1の端部と前記第2の端部との間に交差部を有する、請求項2記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項4】
前記複数の巻き配管部の各々は、
前記第1の端部を含む第1の湾曲配管部と、
前記第2の端部を含む第2の湾曲配管部と、
前記第1の湾曲配管部と前記第2の湾曲配管部との間に位置する第1の連結配管部と、
前記第1の湾曲配管部と前記第2の湾曲配管部との間に位置する第2の連結配管部とを含み、
前記第1および第2の湾曲配管部の各々は、前記第3の方向における一端および他端を有し、
前記第1の連結配管部は、前記第1の湾曲配管部の前記一端から前記第2の湾曲配管部の前記他端まで延び、
前記第2の連結配管部は、前記第1の湾曲配管部の前記他端から前記第2の湾曲配管部の前記一端まで延び、
前記第1および第2の連結配管部は、前記第1の端部と前記第2の端部との間において互いに交差する前記交差部を構成する、請求項3記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項5】
前記配管の前記巻回部の温度を調整する温度調整部をさらに備え、
前記鋳造体は、前記第2の方向に延びる側面を有し、
前記温度調整部は、前記側面に沿って設けられる、請求項2~4のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項6】
前記配管は、ケトン系樹脂またはフッ素系樹脂により形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項7】
前記配管は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンまたはパーフルオロアルコキシアルカンにより形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【請求項8】
前記合金は半田である、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ用検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフには、液体の移動相中の試料の成分を検出するために、電気伝導度検出器等の検出器が用いられる。例えば、特許文献1には、フローセル部の全体がアルミブロック内に格納された電気伝導度検出器が記載される。アルミブロックには、ステンレスにより形成される熱交換チューブ、およびカートリッジヒータが埋め込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体クロマトグラフ用検出器において、ステンレスにより形成される配管が用いられた場合、移動相等の液体がステンレスに接触することにより液体の活性が変化することがある。それにより、配管内に目的のイオンが吸着し、配管から脱離する。この場合、液体クロマトグラフ用検出器により生成されるクロマトグラムには、吸着および脱離したイオンに起因するゴーストピークが発生する。
【0005】
本発明の目的は、温度安定性を確保しつつゴーストピークの発生を防止することが可能な液体クロマトグラフ用検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る液体クロマトグラフ用検出器によれば、液体中の成分を検出する検出部と、検出器に導入される液体の温度を調整する熱交換部とを備え、熱交換部は、巻回部を有する配管と、巻回部が埋設された鋳造体とを含み、配管は、耐薬品性および耐熱性を有する樹脂により形成され、鋳造体は、樹脂の連続使用温度よりも低い融点を有する合金により形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体クロマトグラフ用検出器によれば、温度安定性を確保しつつゴーストピークの発生を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る液体クロマトグラフ用検出器を備える液体クロマトグラフの構成を示す図である。
【
図3】
図2の熱交換ブロックの内部の構成を示す斜視図である。
【
図5】熱交換ブロックの鋳造体の製造方法を説明するための斜視図である。
【
図6】熱交換ブロックの鋳造体を示す斜視図である。
【
図7】他の実施の形態に係る熱交換ブロックの内部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る液体クロマトグラフ用検出器について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(1)液体クロマトグラフの構成
図1は、一実施の形態に係る液体クロマトグラフ用検出器を備える液体クロマトグラフの構成を示す図である。本実施の形態に係る液体クロマトグラフは、イオンクロマトグラフである。
【0011】
図1の液体クロマトグラフ100は、ポンプ20、試料導入部30、分離カラム40、サプレッサ装置50、電気伝導度検出器(以下、検出器と略記する。)60およびカラムオーブン70を備える。カラムオーブン70内に分離カラム40および検出器60が収容される。
【0012】
ポンプ20は、溶離液収容器10から溶離液を吸引し、吸引した溶離液を分離カラム40に導く。試料導入部30は、ポンプ20から分離カラム40に導かれる溶離液に試料を導入する。それにより、分離カラム40には、溶離液および試料が導入される。分離カラム40は、導入された試料を成分ごとに分離する。成分ごとに分離された試料を含む溶離液は、サプレッサ装置50に導入される。また、サプレッサ装置50から導出された溶離液は、検出器60を通して再度サプレッサ装置50に導入された後に廃棄される。
【0013】
サプレッサ装置50は、イオン交換膜を含む。サプレッサ装置50は、分離カラム40から導入された溶離液中のイオンのうち分析対象外のイオンと検出器60から導入された溶離液中のイオンのうち分析対象のイオンとをイオン交換膜を通して交換する。それにより、分析対象外の不要なイオン成分が除去された溶離液が検出器60に導かれる。検出器60は、溶離液中の試料の成分を検出する。
【0014】
(2)検出器60の構成
図2は、検出器60の構成を示す模式的正面断面図である。
図2に示すように、検出器60は、筐体61、複数の板状の断熱材62A~D、複数の配管63a~63e、カップリング64、熱交換ブロック65、温度調整部66および検出部67を備える。検出部67は、電極67A,67Bを有する。
【0015】
筐体61は、上板61A、側板61B,61C、底板61D、正面板(図示せず)および背面板(図示せず)により構成される。断熱材62A~Dは、それぞれ筐体61内で、上板61A、側板61B,61C、底板61D、正面板および背面板に沿って配置される。筐体61内には、複数の配管63a~63e、カップリング64、熱交換ブロック65、温度調整部66および検出部67が収容される。
【0016】
配管63a~63eは、耐薬品性および耐熱性を有する樹脂により形成される。耐薬品性および耐熱性を有する樹脂は、例えばケトン系樹脂またはフッ素系樹脂等である。ケトン系樹脂としては、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が用いられる。フッ素系樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)が用いられる。本実施の形態において、配管63a~63eは、PEEKにより形成される。PEEKの連続使用温度は、約250℃である。PTFEまたPFAの連続使用温度は、約260℃である。
【0017】
配管63aは、筐体61の外部から底板61Dおよび断熱材62Dを貫通して筐体61の内部に延びる。筐体61外の配管63aの一端を配管入口63Iと呼ぶ。配管63aの他端は、カップリング64の一端に接続される。配管63bは、熱交換ブロック65から引き出される。配管63bの端部は、カップリング64の他端に接続される。配管63cは、後述するように巻回されるとともに熱交換ブロック65内に収容される。以下、熱交換ブロック65内の配管63cの巻回された部分を巻回部1と呼ぶ。熱交換ブロック65の構成の詳細については、後述する。
【0018】
配管63dは、熱交換ブロック65から引き出される。配管63dの端部は、電極67Aを通して検出部67内に挿入される。配管63eは、検出部67から電極67Bを通して引き出される。配管63eは、断熱材62Dおよび底板61Dを貫通して筐体61の外部に延びる。配管63eの端部を配管出口63Oと呼ぶ。配管63b,63c,63dは、連続的かつ一体的に形成されている。
【0019】
サプレッサ装置50から配管入口63Iに導かれた溶離液は、カップリング64および配管63bを通して熱交換ブロック65内の配管63cに導かれる。温度調整部66は、温度センサおよびヒータを含む。温度調整部66は、熱交換ブロック65の側面に沿って設けられ、熱交換ブロック65の温度を所定の温度に維持する。それにより、熱交換ブロック65内の配管63c中を流れる溶離液の温度が一定に保たれる。
【0020】
この状態で、熱交換ブロック65内の配管63cから導出された溶離液が配管63dを通して検出部67に導かれる。電極67A,67Bには、電圧が印加される。この状態で、電極67Aと電極67Bとの間を流れる溶離液のイオン濃度に応じた電流値の変化が測定される。それにより、電流値の変化が電気伝導度の変化として測定されることにより溶離液内の試料の成分が検出される。検出部67から導出される溶離液は、配管63eを通して配管出口63Oに導かれ、サプレッサ装置50に導入される。
【0021】
(3)熱交換ブロック65の構成
図3は、
図2の熱交換ブロック65の内部の構成を示す斜視図である。
図4は、巻回部1の形状を説明するための図である。
図5は、熱交換ブロック65の製造方法を説明するための斜視図である。
図6は、熱交換ブロック65の外観斜視図である。
図3~
図6には、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印が示されている。
【0022】
図3に示すように、熱交換ブロック65は、Y方向に延びるケースCSを含む。ケースCSは、一対の側板651,652および1つの底板653を有する。一対の側板651,652は、互いに対向するようにY方向およびZ方向に平行に配置される。底板653の一対の長辺が一対の側板651,652の長辺に接合される。一対の側板651,652および底板653により取り囲まれる空間内に配管63cの巻回部1が収容される。
【0023】
巻回部1は、配管63cが巻回されつつZ方向に積層されることにより形成される。巻回部1における配管63cの一巻きを巻き配管部2と呼ぶ。本実施の形態では、巻回部1は、複数の巻き配管部2により構成される。複数の巻き配管部2は順次連続している。
【0024】
複数の巻き配管部2は、Y方向において互いに離間する第1の端部E1および第2の端部E2を有する。複数の巻き配管部2の各々は、第1の湾曲配管部CV1、第2の湾曲配管部CV2、第1の連結配管部CN1および第2の連結配管部CN2を有する。第1および第2の湾曲配管部CV1,CV2は、半円形状を有する。第1および第2の連結配管部CN1,CN2は、直線形状を有する。第1の湾曲配管部CV1は一端および他端を有する。第1の端部E1は、第1の湾曲配管部CV1の一端と他端との中間に位置する。同様に、第2の湾曲配管部CV2は一端および他端を有する。第2の端部E2は、第1の湾曲配管部CV1の一端と他端との中間に位置する。
【0025】
連結配管部CN1は、第1の湾曲配管部CV1の一端から第2の湾曲配管部CV2の他端まで延びる。連結配管部CN2は、第1の湾曲配管部CV1の他端から第2の湾曲配管部CV2の一端まで延びる。それにより、連結配管部CN1と連結配管部CN2とが互いに交差し、Y方向において複数の巻き配管部2の第1の端部E1と第2の端部E2との中間に交差部CPが形成される。
図4に示すように、各巻き配管部2の第1の端部E1と第2の端部E2との間のY方向における距離Lは、各巻き配管部2のX方向における最大幅Wよりも大きい。
【0026】
ケースCSの底板653には、一対の保持片654,655が固定されている。複数の巻き配管部2の第1の湾曲配管部CV1は、保持片654により保持される。複数の巻き配管部2の第2の湾曲配管部CV2は、保持片655により保持される。
【0027】
ここで、熱交換ブロック65の製造方法について説明する。
図5に示すように、熱交換ブロック65の製造時には、治具TLが用いられる。治具TLは、ベース治具TL1、閉塞治具TL2,TL3および固定治具TL4を含む。
【0028】
ベース治具TL1に固定治具TL4が取り付けられる。
図4の配管63cの巻回部1を収容するケースCSが固定治具TL4に沿ってベース治具TL1上に載置される。ケースCSの両端の開口を閉塞するように一対の閉塞治具TL2,TL3がベース治具TL1に取り付けられる。ケースCS内には、ケースCSおよび閉塞治具TL2,TL3により取り囲まれる直方体形状の空間SPが形成される。
【0029】
この状態で、空間SP内に溶融した合金が流し込まれる。この場合、配管63cの連続使用温度よりも低い融点を有する合金が用いられる。それにより、
図6に示すように、配管63cの巻回部1を含む鋳造体3が形成される。合金としては、例えば、鉛を含有しない種々の低融点半田を用いることができる。本実施の形態では、合金として、Sn(錫)、Ag(銀)およびCu(銅)を含有するSn-Ag-Cu系半田が用いられる。本実施の形態で用いられるSn-Ag-Cu系半田の融点(液相線)は約220℃である。なお、Sn-Ag-In(インジウム)-Bi(ビスマス)系半田、Sn-Cu系半田、またはSn-Zn(亜鉛)-Bi系半田等の他の半田が用いられてもよい。特に、鉛を含有しない半田が用いられることが好ましい。また、配管63cの連続使用温度よりも低い融点を有する他の合金が用いられてもよい。
【0030】
その後、熱交換ブロック65のケースCSの側板651に温度調整部66が取り付けられる。
【0031】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係る液体クロマトグラフ用検出器60によれば、配管63a~63eが耐熱性および耐薬品性を有するケトン系樹脂またはフッ素系樹脂により形成されているので、配管63a~63eにイオンが吸着しにくい。それにより、クロマトグラムにおいて、吸着および脱離したイオンに起因するゴーストピークの発生が抑制される。また、配管63cの複数の巻き配管部2が埋設される鋳造体3が低融点合金により形成されるので、鋳造体3の鋳造時に配管63cが溶融することが防止される。さらに、低融点合金により形成される鋳造体3は、高い熱伝導率を有するので、温度調整部66による温度調整時に鋳造体3内の配管63cの複数の巻き配管部2に迅速に熱が伝達される。したがって、温度安定性を確保しつつゴーストピークの発生を防止することが可能となる。
【0032】
また、複数の巻き配管部2の第1の端部E1および第2の端部E2のY方向における距離Lは、複数の巻き配管部2のX方向における最大幅Wよりも大きい。それにより、配管63cが円筒状に巻回される場合に比べて、複数の巻き配管部2における配管63cの巻き回数を少なくすることができるので、複数の巻き配管部2のZ方向の寸法を小さくすることができる。したがって、複数の巻き配管部2の内側の領域に存在する合金と複数の巻き配管部2の外側に存在する合金との間での熱の伝達効率が良好となる。そのため、配管63cの複数の巻き配管部2の温度調整における応答性が高くなる。その結果、熱交換ブロック65から検出部67に導かれる液体の温度安定性を十分に確保することができる。
【0033】
さらに、複数の巻き配管部2の第1の端部E1と第2の端部E2との間の距離Lを長くすることなく各巻き配管部2の配管63cの長さを大きくすることができる。それにより、熱交換ブロック65のサイズを大きくすることなく温度安定性を向上させることができる。
【0034】
また、複数の巻き配管部2の各々が第1の湾曲配管部CV1、第2の湾曲配管部CV2、第1の連結配管部CN1および第2の連結配管部CN2により構成され、第1の連結配管部CN1および第2の連結配管部CN2により交差部CPが構成される。この場合、Y方向における第1の湾曲配管部CV1と第2の湾曲配管部CV2との間の距離Lを長くすることなく、第1の連結配管部CN1および第2の連結配管部CN2の長さを大きくすることができる。それにより、熱交換ブロック65のサイズを大きくすることなく温度安定性を向上させることができる。
【0035】
また、温度調整部66が熱交換ブロック65のY方向に延びる側板651に沿って設けられるので、鋳造体3内の配管63cの複数の巻き配管部2内の複数の第1の連結配管部CN1および第2の連結配管部CN2に熱が伝達される。それにより、配管の複数の巻き配管部2内を流れる液体に迅速に熱が伝達される。
【0036】
特に、配管63a~63eは、PEEK、PTFEまたはPFAにより形成される場合には、配管63a~63eが多数の液体に対して耐薬品性を有するとともに、高い連続使用温度を有することができる。それにより、使用可能な移動相の種類が制限されず、鋳造体3を構成する合金の種類の選択範囲が広くなる。
【0037】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、複数の巻き配管部2は、それぞれ交差部CPを有するが、本発明はこれに限定されない。
図7は、他の実施の形態に係る熱交換ブロック65の内部の構成を示す斜視図である。
【0038】
図7に示すように、第1の連結配管部CN1は、第1の湾曲配管部CV1の一端から第2の連結配管部CN2の一端まで延びる。第2の連結配管部CN2は、第1の湾曲配管部CV1の他端から第2の湾曲配管部CV2の他端まで延びる。この場合、第1の連結配管部CN1および第2の連結配管部CN1は、互いに平行に延び、かつ交差部を有しない。それにより、複数の巻き配管部2は長円形状を有する。
【0039】
(b)上記実施の形態において、巻回部1は、複数の巻き配管部2を含むが、配管63cの温度が十分安定する場合、単一の巻き配管部2が設けられてもよい。
【0040】
(c)上記実施の形態において、温度調整部66は、側板652に沿って設けられるが、本発明は、これに限定されない。温度調整部66は、例えば底板653または側板651に沿って設けられてもよい。
【0041】
(d)上記実施の形態において、クロマトグラフ用検出器が電気伝導度検出器であるが、クロマトグラフ用検出器が、蛍光検出器または示差屈折率検出器等の他の検出器であってもよい。
【0042】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、Z方向が第1の方向の例であり、Y方向が第2の方向の例であり、X方向が第3の方向の例であり、熱交換ブロック65が熱交換部の例である。
【0043】
(7)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0044】
(第1項) 一態様に係る液体クロマトグラフ用検出器は、
液体中の成分を検出する検出部と、
検出部に導入される液体の温度を調整する熱交換部とを備え、
熱交換部は、
巻回部を有する配管と、
巻回部が埋設された鋳造体とを含み、
配管は、樹脂により形成され、
鋳造体は、樹脂の連続使用温度よりも低い融点を有する合金により形成されてもよい。
【0045】
一態様に係る液体クロマトグラフ用検出器によれば、配管が樹脂により形成されているので、配管にイオンが吸着しにくい。それにより、クロマトグラムにおいて、吸着および脱離したイオンに起因するゴーストピークの発生が抑制される。また、配管の巻回部が埋設される合金の鋳造体が配管の連続使用温度よりも低い融点を有するので、合金の鋳造時に配管が溶融することが防止される。さらに、合金の鋳造体は、高い熱伝導率を有するので、温度調整時に鋳造体内の配管の巻回部に迅速に熱が伝達される。したがって、温度安定性を確保しつつゴーストピークの発生を防止することが可能となる。
【0046】
(第2項) 第1項に記載の液体クロマトグラフ用検出器において、
配管の巻回部は、順次連続しかつ第1の方向に積層された複数の巻き配管部を含み、
複数の巻き配管部は、第1の方向に交差する第2の方向において互いに離間する第1の端部および第2の端部を有し、
第1の方向および第2の方向に交差する第3の方向における複数の巻き配管部の最大幅は、複数の巻き配管部の第1の端部と第2の端部との間の距離よりも小さくてもよい。
【0047】
第2項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、複数の巻き配管部の第1の端部と第2の端部との間の距離は、第3の方向における最大幅よりも大きい。それにより、配管が円筒状に巻回される場合に比べて、巻回部における配管の巻き回数を少なくすることができるので、巻回部の積層方向の寸法を小さくすることができる。したがって、巻回部の内側の領域に存在する合金と巻回部の外側に存在する合金との間での熱の伝達効率が良好となる。そのため、配管の巻回部の温度調整における応答性が高くなる。その結果、熱交換部から検出部に導かれる液体の温度安定性を十分に確保することができる。
【0048】
(第3項) 第2項の液体クロマトグラフ用検出器において、
複数の巻き配管部の各々は、第1の端部と第2の端部との間に交差部を有してもよい。
【0049】
第3項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、巻回部の第1の端部と第2の端部との間の距離を長くすることなく各巻き配管部の配管の長さを大きくすることができる。それにより、熱交換部のサイズを大きくすることなく温度安定性を向上させることができる。
【0050】
(第4項) 第3項に記載の液体クロマトグラフ用検出器において、
複数の巻き配管部の各々は、
第1の端部を含む第1の湾曲配管部と、
第2の端部を含む第2の湾曲配管部と、
第1の湾曲配管部と第2の湾曲配管部との間に位置する第1の連結配管部と、
第1の湾曲配管部と第2の湾曲配管部との間に位置する第2の連結配管部とを含み、
第1および第2の湾曲配管部の各々は、第3の方向における一端および他端を有し、
第1の連結配管部は、第1の湾曲配管部の一端から第2の湾曲配管部の他端まで延び、
第2の連結配管部は、第1の湾曲配管部の他端から第2の湾曲配管部の一端まで延び、
第1および第2の連結配管部は、第1の端部と第2の端部との間において互いに交差する交差部を構成してもよい。
【0051】
第4項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、複数の巻き配管部の各々が第1の湾曲配管部、第2の湾曲配管部、第1の連結配管部および第2の連結配管部により構成され、第1の連結配管部および第2の連結配管部により交差部が構成される。この場合、第1の湾曲配管部と第2の湾曲配管部との間の距離を長くすることなく、第1および第2の連結配管部の長さを大きくすることができる。それにより、熱交換部のサイズを大きくすることなく温度安定性を向上させることができる。
【0052】
(第5項) 第2項~第4項のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器において、
配管の巻回部の温度を調整する温度調整部をさらに備え、
鋳造体は、第2の方向に延びる側面を有し、
温度調整部は、側面に沿って設けられてもよい。
【0053】
第5項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、温度調整部が第2の方向に延びる側面に沿って設けられるので、鋳造体内の配管の巻回部の長い部分に熱が伝達される。それにより、配管の巻回部内を流れる液体に迅速に熱が伝達される。
【0054】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器において、
配管は、ケトン系樹脂またはフッ素系樹脂により形成されてもよい。
【0055】
第6項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、配管が多数の液体に対して耐薬品性を有するとともに、高い連続使用温度を有することができる。それにより、使用可能な移動相の種類が制限されず、鋳造体を構成する合金の種類の選択範囲が広くなる。
【0056】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器において、
配管は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンまたはパーフルオロアルコキシアルカンにより形成されてもよい。
【0057】
第7項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、配管が多数の液体に対して耐薬品性を有するとともに、高い連続使用温度を有することができる。それにより、使用可能な移動相の種類が制限されず、鋳造体を構成する合金の種類の選択範囲が広くなる。
【0058】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用検出器において、
合金は半田であってもよい。
【0059】
第8項に記載の液体クロマトグラフ用検出器によれば、半田が比較的低い融点を有するので、配管を形成する樹脂の選択範囲が広くなる。また、比較的安価に液体クロマトグラフ用検出器を製作することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…巻回部,2…巻き配管部,3…鋳造体,10…溶離液収容器,20…ポンプ,30…試料導入部,40…分離カラム,50…サプレッサ装置,60…液体クロマトグラフ用検出器,61…筐体,61A…上板,61B,61C…側板,61D…底板,62A,62B,62C,62D…断熱材,63I…配管入口,63O…配管出口,63a,63b,63c,63d,63e…配管,64…カップリング,65…熱交換ブロック,66…温度調整部,67…検出部,67A,67B…電極,70…カラムオーブン,100…液体クロマトグラフ,651,652…側面,653…底板,E1…第1の端部,E2…第2の端部,CP…交差部,CV1…第1の湾曲配管部,CV2…第2の湾曲配管部,CN1…第1の連結配管部,CN2…第2の連結配管部,SP…空間,TL…治具,TL1…ベース治具,TL2,TL3…閉塞治具,TL4…固定治具