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特許7468393オートフォーカス眼鏡およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】オートフォーカス眼鏡およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240409BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B3/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021021025
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123612
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義和
(72)【発明者】
【氏名】飯島 成幸
(72)【発明者】
【氏名】植村 昂紀
(72)【発明者】
【氏名】横田 壮太郎
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-38915(JP,A)
【文献】特表2013-535022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00 - 3/14
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートフォーカス眼鏡であって、
度数を調節可能な左右のレンズと、
目視対象までの距離を計測する距離検出部と、
前記目視対象までの距離と、前記距離に関連付けられた、前記左右のレンズの各々のまたは共通の度数とを格納する記憶部と、
前記オートフォーカス眼鏡の動作モードを通常モードまたは訓練モードに切り替えるための入力部と、
前記左右のレンズの度数を調節する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記目視対象までの距離を取得し、
前記記憶部を参照して、前記距離に対応する前記度数を取得し、
前記度数に基づいて、前記左右のレンズの度数を調節し、
前記オートフォーカス眼鏡の前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算
前記訓練モードは、第1の弱視訓練モードと、近距離用の第2の弱視訓練モードとを選択可能に構成され、
前記記憶部は、前記第1の弱視訓練モード用の第1の設定情報と、前記第2の弱視訓練モード用の第2の設定情報とをさらに格納し、
前記第2の設定情報は、前記第1の設定情報と比較して、前記距離が短い程前記オフセット値が大きくなるように設定されている、オートフォーカス眼鏡。
【請求項2】
前記入力部は、前記左右のレンズの片方ずつの前記動作モードを設定可能に構成されており、
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算することは、前記訓練モードに設定された前記左右のレンズの片方または両方のレンズの前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算することを含む、請求項1に記載のオートフォーカス眼鏡。
【請求項3】
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算することは、前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記距離に距離のオフセット値を加算することを含む、請求項1または2に記載のオートフォーカス眼鏡。
【請求項4】
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算することは、前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記度数に度数のオフセット値を加算することを含む、請求項1または2に記載のオートフォーカス眼鏡。
【請求項5】
前記度数は、前記通常モード用の度数と、前記訓練モード用の度数とを含み、
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算することは、前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記訓練モード用の度数から、前記距離に対応する度数を取得することを含む、請求項1~4のいずれかに記載のオートフォーカス眼鏡。
【請求項6】
前記制御部は、前記入力部から取得した指示に基づいて、複数の使用者の設定を選択可能に構成されており、
前記度数は、前記複数の使用者の各々の、前記距離に関連付けられた前記左右のレンズの度数を含む、請求項1~のいずれかに記載のオートフォーカス眼鏡。
【請求項7】
オートフォーカス眼鏡の制御方法であって、
前記オートフォーカス眼鏡の動作モードを通常モードまたは訓練モードに切り替えるための指示を受け付けるステップと、
目視対象までの距離を計測するステップと、
前記距離に関連付けられた、左右のレンズの度数にアクセスするステップと、
前記度数に基づいて、左右のレンズの度数を調節するステップと、
前記オートフォーカス眼鏡の前記動作モードを前記訓練モードに切り替える指示を受け付けたことに基づいて、前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算するステップとを含
前記訓練モードは、第1の弱視訓練モードと、近距離用の第2の弱視訓練モードとを選択可能に構成され、
前記制御方法は、前記第1の弱視訓練モード用の第1の設定情報、または、前記第2の弱視訓練モード用の第2の設定情報を参照するステップをさらに含み、
前記第2の設定情報は、前記第1の設定情報と比較して、前記距離が短い程前記オフセット値が大きくなるように設定されている、制御方法。
【請求項8】
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、前記訓練モードに設定された前記左右のレンズの片方または両方のレンズの前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算するステップを含む、請求項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記距離に距離のオフセット値を加算するステップを含む、請求項またはに記載の制御方法。
【請求項10】
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記度数に度数のオフセット値を加算するステップを含む、請求項またはに記載の制御方法。
【請求項11】
1つ以上の前記度数は、前記通常モード用の度数と、前記訓練モード用の度数とを含み、
前記度数に前記訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、前記動作モードが前記訓練モードであることに基づいて、前記訓練モード用の度数から、前記距離に対応する度数を取得するステップを含む、請求項7~10のいずれかに記載の制御方法。
【請求項12】
前記オートフォーカス眼鏡の使用者の選択の指示に基づいて、複数の使用者の設定を選択するステップをさらに含み、
前記度数は、前記複数の使用者の各々の、前記距離に関連付けられた前記左右のレンズの度数を含む、請求項7~11のいずれかに記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オートフォーカス眼鏡に関し、より特定的には、弱視訓練の機能を有するオートフォーカス眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
弱視とは、メガネやコンタクトレンズで矯正しても視力が出ない症状を示す。弱視は、遠視または近視等の屈折率異常によって、幼少期に鮮明な像が網膜に投影されず、その結果、脳や神経が十分に発達しないことが一因とされている。
【0003】
弱視の治療方法として、眼鏡をかけることにより鮮明な像を網膜に投影する方法がある。また、片目のみが弱視の場合、眼科等に設置されている特殊な訓練機器を用いて、弱視ではない目を隠して、弱視の目を使用したゲームを行なう方法がある。その他の治療方法として、弱視ではない目に特殊な目薬を点眼し、弱視ではない目の視力を一定期間低下させて、弱視の目を積極的に使用する方法がある。これらの訓練は、眼科にある機材等を使用する必要があり、患者にとって負担となる。一方で、近年、患者が比較的容易に使用できる機材として、オートフォーカス眼鏡が開発されている。
【0004】
オートフォーカス眼鏡に関し、例えば、特開2014-038302号公報(特許文献1)は、「焦点距離を変化させることができる可変焦点レンズ毎に設けられ、可変焦点レンズの焦点距離を変化させる駆動部、駆動部を制御する制御部、所定のスイッチを備え、スイッチに対して所定の操作をした場合には、駆動部の駆動量が、スイッチの操作によって指定される、可変焦点レンズ毎に記憶された、所定の距離にある視認対象物を可変焦点眼鏡の使用者が明瞭に視認できる際の駆動量となるように、制御部が駆動部を個別に制御する」可変焦点眼鏡を開示している([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-038302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術によると、レンズの度数を調節できても弱視の訓練を行なうことができない。したがって、容易に弱視の訓練を実行するための技術が必要とされている。
【0007】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、容易に弱視の訓練を実行するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従うとオートフォーカス眼鏡が提供される、オートフォーカス眼鏡は、度数を調節可能な左右のレンズと、目視対象までの距離を計測する距離検出部と、目視対象までの距離と、距離に関連付けられた、左右のレンズの各々のまたは共通の度数とを格納する記憶部と、オートフォーカス眼鏡の動作モードを通常モードまたは訓練モードに切り替えるための入力部と、左右のレンズの度数を調節する制御部とを備える。制御部は、目視対象までの距離を取得し、記憶部を参照して、距離に対応する度数を取得し、度数に基づいて、左右のレンズの度数を調節し、オートフォーカス眼鏡の動作モードが訓練モードであることに基づいて、度数に訓練モード用のオフセット値を加算する。
【0009】
ある局面において、入力部は、左右のレンズの片方ずつの動作モードを設定可能に構成されている。度数に訓練モード用のオフセット値を加算することは、訓練モードに設定された左右のレンズの片方または両方のレンズの度数に訓練モード用のオフセット値を加算することを含む。
【0010】
ある局面において、度数に訓練モード用のオフセット値を加算することは、動作モードが訓練モードであることに基づいて、距離に距離のオフセット値を加算することを含む。
【0011】
ある局面において、度数に訓練モード用のオフセット値を加算することは、動作モードが訓練モードであることに基づいて、度数に度数のオフセット値を加算することを含む。
【0012】
ある局面において、度数は、通常モード用の度数と、訓練モード用の度数とを含む。度数に訓練モード用のオフセット値を加算することは、動作モードが訓練モードであることに基づいて、訓練モード用の度数から、距離に対応する度数を取得することを含む。
【0013】
ある局面において、度数は、近距離における訓練用の第1の度数と、それ以外の訓練用の第2の度数とを含む。
【0014】
ある局面において、制御部は、入力部から取得した指示に基づいて、複数の使用者の設定を選択可能に構成されている。度数は、複数の使用者の各々の、距離に関連付けられた左右のレンズの度数を含む。
【0015】
ある実施の形態に従うとオートフォーカス眼鏡の制御方法が提供される、制御方法は、オートフォーカス眼鏡の動作モードを通常モードまたは訓練モードに切り替えるための指示を受け付けるステップと、目視対象までの距離を計測するステップと、距離に関連付けられた、左右のレンズの度数にアクセスするステップと、度数に基づいて、左右のレンズの度数を調節するステップと、オートフォーカス眼鏡の動作モードを訓練モードに切り替える指示を受け付けたことに基づいて、度数に訓練モード用のオフセット値を加算するステップとを含む。
【0016】
ある局面において、度数に訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、訓練モードに設定された左右のレンズの片方または両方のレンズの度数に訓練モード用のオフセット値を加算するステップを含む。
【0017】
ある局面において、度数に訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、動作モードが訓練モードであることに基づいて、距離に距離のオフセット値を加算するステップを含む。
【0018】
ある局面において、度数に訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、動作モードが訓練モードであることに基づいて、度数に度数のオフセット値を加算するステップを含む。
【0019】
ある局面において、1つ以上の度数は、通常モード用の度数と、訓練モード用の度数とを含む。度数に訓練モード用のオフセット値を加算するステップは、動作モードが訓練モードであることに基づいて、訓練モード用の度数から、距離に対応する度数を取得するステップを含む。
【0020】
ある局面において、1つ以上の度数は、近距離における訓練用の第1の度数と、それ以外の訓練用の第2の度数とを含む。
【0021】
ある局面において、方法は、オートフォーカス眼鏡の使用者の選択の指示に基づいて、複数の使用者の設定を選択するステップをさらに含む。度数は、複数の使用者の各々の、距離に関連付けられた左右のレンズの度数を含む。
【発明の効果】
【0022】
ある実施の形態に従うと、容易に弱視の訓練を実行することができる。
【0023】
この開示内容の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本開示に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ある実施の形態に従うオートフォーカス眼鏡100の構成の一例を示す図である。
図2】オートフォーカス眼鏡100における各構成間の連携手順の一例を示す図である。
図3】各動作モードにおける度数可変レンズ150の度数と、オートフォーカス眼鏡100またはユーザーの目から目視対象までの距離との対応関係の一例を示す図である。
図4】弱視訓練モードの実現方法の第1の例を示す図である。
図5図4に示す弱視訓練モードの実現方法による度数のオフセットの様子の一例を示す図である。
図6】弱視訓練モードの実現方法の第2の例を示す図である。
図7図6に示す弱視訓練モードの実現方法による度数のオフセットの様子の一例を示す図である。
図8】弱視訓練モードの実現方法の第3の例を示す図である。
図9】弱視訓練モードを実現する手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
図1は、本実施の形態に従うオートフォーカス眼鏡100の構成の一例を示す図である。オートフォーカス眼鏡100は、備え付けられたレンズの度数を変更可能な眼鏡である。そのため、視力の異なる複数のユーザーが同一のオートフォーカス眼鏡100を使用することができる。また、オートフォーカス眼鏡100は、レンズの度数を変更する機能を備える。当該機能により、ユーザーは、自分から目視対象180までの距離に応じて、適宜、レンズの度数を調節し得る。さらに、本実施の形態に従うオートフォーカス眼鏡100は、弱視訓練モードを備える。ユーザーは、オートフォーカス眼鏡100の弱視訓練モードを使用することで、眼科等に設置されている特殊な訓練機器を用いることなく、容易に弱視訓練を行ない得る。
【0027】
オートフォーカス眼鏡100は、フレーム102と、制御部110と、入力部120と、記憶部130と、距離検出部140と、左右の度数可変レンズ150L,150R(総称する場合は、「度数可変レンズ150」と表す)と、電源部160と、通信部170とを備える。
【0028】
フレーム102は、度数可変レンズ150および他の構成を内蔵する。ある局面において、制御部110、入力部120、記憶部130、距離検出部140、度数可変レンズ150、電源部160、および、通信部170の一部または全ては、フレーム102から脱着可能であってもよい。その場合、ユーザーは、必要に応じて各パーツをフレーム102に装着し得る。他の局面において、フレーム102は、樹脂、金属、木材およびその他の任意の素材またはこれらの組み合わせによって実現されてもよい。
【0029】
制御部110は、オートフォーカス眼鏡100の全体の動作を制御する。制御部110は、左右の度数可変レンズ150の度数を調節する。ここでの度数可変レンズ150の度数の調節は、一例として、度数可変レンズ150に対する電圧の調節、または度数可変レンズ150内の液体の量の調節を含み得る。制御部110は、後述する入力部120または通信部170から取得した度数可変レンズ150の設定情報に基づいて、度数可変レンズ150の度数を調節し得る。
【0030】
入力部120は、度数可変レンズ150に関する設定の指示を受け付ける。度数可変レンズ150に関する設定は、例えば、動作モード、および、ユーザー選択を含み得る。「動作モード」は、少なくとも、通常モード、第1の弱視訓練モード、および、第2の弱視訓練モードを含み得る。これ以降、第1の弱視訓練モードおよび第2の弱視訓練モードを総称する場合は、「弱視訓練モード」と表す。「通常モード」は、ユーザーが普段使用するモードである。通常モードにおける度数可変レンズ150の度数は、ユーザーが目視対象180を見るのに適した値に設定され得る。
【0031】
「第1の弱視訓練モード」は、ユーザーが弱視訓練を行なうためのモードである。第1の弱視訓練モードにおける度数可変レンズ150の度数は、ユーザーが目視対象180を見るのに適した値から少しずれた値(度数可変レンズ150のピントが少し合っていない状態)に設定される。ユーザーは、度数可変レンズ150のピントが少し合っていない状態で、目視対象180を見ることで、弱視訓練を行ない得る。
【0032】
「第2の弱視訓練モード」は、ユーザーが、近距離の目視対象180を見ることで弱視訓練を行なうためのモードである。第2の弱視訓練モードにおける度数可変レンズ150の度数は、ユーザーが近距離の目視対象180を見るのに適した値から少しずれた値(度数可変レンズ150のピントが少し合っていない状態)に設定される。第2の弱視訓練モードは、第1の弱視訓練モードと異なり、近距離の目視対象180を見ることに特化したモードである。ユーザーは、度数可変レンズ150のピントが少し合っていない状態で、近距離の目視対象180を見ることで、近距離における弱視訓練を行ない得る。
【0033】
「ユーザー選択」は、オートフォーカス眼鏡100を使用するユーザーの切り替え設定である。制御部110は、入力部120において選択されたユーザーに関する設定情報を記憶部130から参照して使用し得る。当該設定情報は、例えば、距離度数テーブル(ユーザーの目から目視対象180までの距離および度数可変レンズ150の度数の対応情報)と、第1および第2の弱視訓練モードにおけるオフセット値等を含み得る。オフセット値とは、例えば、通常モードにおける度数可変レンズ150の度数と、第1および第2の弱視訓練モードの各々の度数との差分である。
【0034】
ある局面において、入力部120は、ダイヤル、タッチパネルまたはボタン等の任意の入力手段を備えていてもよく、当該入力手段から度数可変レンズ150に関する設定(動作モード、および、ユーザー選択の指示)を受け付け得る。他の局面において、制御部110は、入力部120の代わりに、通信部170を介して、度数可変レンズ150に関する設定を受信し得る。また、他の局面において、入力部120は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の動作モードの指示を個別に受け付け得る。その場合、制御部110は、動作モードの指示に基づいて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の動作モードを個別に変更し得る。
【0035】
記憶部130は、制御部110が度数可変レンズ150の度数を調節するときに使用する設定情報を保存する。制御部110は、入力部120または通信部170から取得した設定情報を記憶部130に保存し得る。当該設定情報は、ユーザー毎の通常モードにおける設定と、ユーザー毎の第1の弱視訓練モードにおける設定と、ユーザー毎の第2の弱視訓練モードにおける設定とを含み得る。制御部110は、記憶部130に保存された設定情報に基づいて、適宜、度数可変レンズ150の度数を変更し得る。また、記憶部130は、制御部110によって実行されるプログラムを格納する。
【0036】
距離検出部140は、度数可変レンズ150またはユーザーの目から目視対象180までの距離を測定し得る。ある局面において、距離検出部140は、レーザー、赤外線、画像または超音波等の任意の手段またはこれらの組み合わせにより、度数可変レンズ150またはユーザーの目から目視対象180までの距離(位置情報)を測定する。他の局面において、オートフォーカス眼鏡100は、複数の距離検出部140を備えていてもよい。距離検出部140は、取得した距離を示す信号を制御部110に出力する。
【0037】
度数可変レンズ150は、度数、すなわち光の屈折率を変更可能なレンズである。また、左右の度数可変レンズ150の各々の度数は、互いに異なっていてもよい。ある局面において、度数可変レンズ150は、液晶レンズであってもよい。液晶レンズは、入力された電圧に基づいて液晶を変化させることで、液晶レンズ自体の度数調節を可能にする。他の局面において、度数可変レンズ150は、液体レンズであってもよい。液体レンズの度数調節は、例えば、ポンプ等によりレンズ内に含まれる液体の量を調節することで可能になる。
【0038】
電源部160は、制御部110と、入力部120と、記憶部130と、距離検出部140と、度数可変レンズ150と、通信部170とに電力を提供する。ある局面において、電源部160は、バッテリー(図示せず)と、変圧装置(図示せず)と、給電部(図示せず)とを含んでいてもよい。給電部は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子を含む任意の端子を含んでいてもよく、当該端子を介して外部から給電を受け、バッテリーを充電し得る。
【0039】
通信部170は、制御部110が実行するプログラムのアップデート、または、他の装置との連携等に使用され得る。ある局面において、通信部170は、スマートフォン等から、度数可変レンズ150に関する設定(動作モードおよびユーザー選択等)の指示を受け付け得る。さらに、通信部170は、他の装置から、ユーザー毎の通常モードにおける設定、ユーザー毎の第1の弱視訓練モードにおける設定、および、ユーザー毎の第2の弱視訓練モードにおける設定の追加または変更の指示を受け付けてもよい。
【0040】
ある局面において、通信部170は、有線LAN(Local Area Network)ポートおよびWi-Fi(登録商標)モジュール等によって実現されてもよい。他の局面において、通信部170は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルを用いてデータを送受信してもよい。
【0041】
次に、図2図8を参照して、オートフォーカス眼鏡100の動作概要、弱視訓練モードの仕組み、および、弱視訓練モードを実現するための手順について説明する。弱視訓練モードは、複数の手段によって実現され得る。
【0042】
図2は、オートフォーカス眼鏡100における各構成間の連携手順の一例を示す図である。図2を参照して、オートフォーカス眼鏡100の基本動作(通常モードを実現するための動作)について説明する。
【0043】
まず、距離検出部140は、オートフォーカス眼鏡100またはユーザーの目から目視対象までの距離(距離を示す情報)を制御部110に出力する。次に、制御部110は、取得した距離を検索キーとして、記憶部130内の距離度数テーブルを検索する。そして、制御部110は、距離に対応する度数可変レンズ150の度数を取得する。ある局面において、制御部110は、度数可変レンズ150Lの度数と、度数可変レンズ150Rの度数とを個別に取得してもよい。次に、制御部110は、取得した度数に基づいて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数をそれぞれ調節する。その際、制御部110は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を調節するための度数制御値を度数可変レンズ150L,150Rの各々に出力する。その結果、度数可変レンズ150L,150Rの液晶の屈折率、または、レンズ内の液体の量の変化が発生する。また、制御部110は、適宜、入力部120からの動作モードの指示に基づいて、オートフォーカス眼鏡100の動作モードを切り替え得る。
【0044】
図3は、各動作モードにおける度数可変レンズ150の度数と、オートフォーカス眼鏡100またはユーザーの目から目視対象までの距離との対応関係の一例を示す図である。グラフ310は、通常モードにおける、度数可変レンズ150の度数と、目視対象までの距離との対応を示す。グラフ320は、第1の弱視訓練モードにおける、度数可変レンズ150の度数と、目視対象までの距離との対応を示す。グラフ330は、第2の弱視訓練モードにおける、度数可変レンズ150の度数と、目視対象までの距離との対応を示す。
【0045】
グラフ310とグラフ320とを比較すると、第1の弱視訓練モードの度数は、距離にかかわらず、通常モードの度数とずれていることがわかる。一方で、グラフ310とグラフ330とを比較すると、第2の弱視訓練モードの度数は、主に近距離(ユーザーの目から目視対象までの距離が近い場合)において、通常モードの度数とずれていることがわかる。言い換えれば、第1の弱視訓練モードは、全ての距離における弱視訓練に使用可能なモードであり、第2の弱視訓練モードは、近距離における弱視訓練に特化したモードであると言える。
【0046】
制御部110は、通常モードの度数に、オフセット値を加算または減算することで、度数可変レンズ150を第1の弱視訓練モード用の度数または第2の弱視訓練モード用の度数に調節し得る。ある局面において、記憶部130は、各訓練モードのオフセット値、または、オフセット値(距離に応じて増減し得る)の表または計算プログラムを格納していてもよい。他の局面において、記憶部130は、通常モードの設定情報(距離および度数の対応情報)、第1の弱視訓練モードの設定情報、および、第2の弱視訓練モードの設定情報を個別に格納していてもよい。さらに、他の局面において、記憶部130は、ユーザー毎に個別に用意された上記のいずれかの情報(オフセット値、オフセット値の計算プログラムのパラメーター、または、動作モード毎の設定情報等)を格納していてもよい。その場合、制御部110は、動作モード毎に、記憶部130内の必要な情報を参照して、度数可変レンズ150の度数を調節し得る。
【0047】
図4は、弱視訓練モードの実現方法の第1の例を示す図である。制御部110は、動作モードが弱視訓練モードであることに基づいて、距離検出部140から取得した距離(距離を示す情報)にオフセット値を加算する。ある局面において、オートフォーカス眼鏡100は、オフセット値の加算回路410を備えていてもよい。その場合、加算回路410は、固定のオフセット値を距離に加算してもよい。また、加算回路410は、制御部110から指令を受け付けて、当該指令に基づいてオフセット値を距離に加算してもよい。
【0048】
次に、制御部110は、オフセット値の加算後の距離を検索キーとして、記憶部130内の距離度数テーブルを検索する。そして、制御部110は、オフセット値の加算後の距離に対応する度数可変レンズ150の度数を取得する。当該度数は、オフセット値の加算後の距離を検索キーとして検索されているため、通常モードの度数に対してオフセット値が加算された値となる。
【0049】
ある局面において、制御部110は、度数可変レンズ150Lの度数と、度数可変レンズ150Rの度数とを個別に取得してもよい。次に、制御部110は、取得した度数に基づいて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を調節する。その際、制御部110は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を調節するための度数制御値を度数可変レンズ150L,150Rの各々に出力する。その結果、度数可変レンズ150L,150Rの液晶の屈折率、または、レンズ内の液体の量の変化が発生する。他の局面において、記憶部130は、距離に加算するオフセット値を格納していてもよい。この場合、制御部110は、記憶部130を参照してオフセット値を取得する。
【0050】
図5は、図4に示す弱視訓練モードの実現方法による度数のオフセットの様子の一例を示す図である。グラフ510は、通常モードにおける、度数可変レンズ150の度数と、オートフォーカス眼鏡100またはユーザーの目から目視対象までの距離との対応を示す。グラフ520は、度数可変レンズ150の度数と、図4に示す方法によりオフセット値が加算された目視対象までの距離との対応を示す。
【0051】
制御部110は、距離検出部140から取得する距離にオフセット値を加算する。そして、制御部110は、当該オフセット値の加算後の距離を検索キーとして、度数可変レンズ150の度数を取得する。そのため、制御部110が取得する度数もオフセット値が加算された値となる。その結果、グラフ520は、全体的に、距離の軸方向に沿ってシフトする。
【0052】
図6は、弱視訓練モードの実現方法の第2の例を示す図である。まず、距離検出部140は、オートフォーカス眼鏡100またはユーザーの目から目視対象までの距離(距離を示す情報)を制御部110に出力する。次に、制御部110は、取得した距離を検索キーとして、記憶部130内の距離度数テーブルを検索する。そして、制御部110は、距離に対応する度数可変レンズ150の度数を取得する。ある局面において、制御部110は、度数可変レンズ150Lの度数と、度数可変レンズ150Rの度数とを個別に取得してもよい。次に、制御部110は、動作モードが弱視訓練モードであることに基づいて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数にオフセット値を加算する。ある局面において、オートフォーカス眼鏡100は、度数可変レンズ150L,150Rの各々オフセット値の加算回路610L,610Rを備えていてもよい。その場合、加算回路610L,610Rは、固定のオフセット値を度数に加算してもよい。また、加算回路610L,610Rは、制御部110からの指令を受け付けて、当該指令に基づいてオフセット値を度数に加算してもよい。
【0053】
制御部110は、オフセット値の加算後の度数に基づいて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を調節する。その際、制御部110は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を調節するための度数制御値を度数可変レンズ150L,150Rの各々に出力する。その結果、度数可変レンズ150L,150Rの液晶の屈折率、または、レンズ内の液体の量の変化が発生する。ある局面において、記憶部130は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数に加算するオフセット値を格納していてもよい。この場合、制御部110は、記憶部130を参照してオフセット値を取得する。
【0054】
図7は、図6に示す弱視訓練モードの実現方法による度数のオフセットの様子の一例を示す図である。グラフ720は、図6に示す方法によりオフセット値が加算された度数可変レンズ150の度数と、オートフォーカス眼鏡100またはユーザーの目から目視対象までの距離との対応を示す。制御部110は、度数可変レンズ150の度数にオフセット値を加算する。そのため、グラフ720は、全体的に、度数の軸方向に沿ってシフトする。
【0055】
図8は、弱視訓練モードの実現方法の第3の例を示す図である。図8に示す例では、記憶部130は、動作モード毎の距離度数テーブル800を格納する。すなわち、記憶部130は、通常モードの設定情報(距離および度数の対応情報)、第1の弱視訓練モードの設定情報、および、第2の弱視訓練モードの設定情報を個別に格納している。この場合、制御部110は、入力部120から取得した動作モードの指示に基づいて、動作モード毎の距離度数テーブル800から参照する情報を変更し得る。第1の弱視訓練モードの設定情報、および、第2の弱視訓練モードの設定情報は、通常モードの設定情報にオフセット値が加算された設定情報であると言える。図8に示す例では、距離の上限は2.2mになっているがこれは一例であり、距離の上限はこれに限られない。ある局面において、距離の上限は、2.2m以上であってもよい。他の局面において、記憶部130は、ユーザー毎に、動作モード毎の距離度数テーブル800を格納していてもよい。
【0056】
図9は、弱視訓練モードを実現する手順の一例を示す図である。ある局面において、制御部110は、図9の処理を行うためのプログラムを記憶部130から読み込んで、当該プログラムを実行してもよい。他の局面において、当該処理の一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0057】
ステップS910において、制御部110は、入力部120から動作モード切替の指示を取得する。動作モード切替の指示は、通常モード、第1の弱視訓練モードおよび第2の弱視訓練モードのいずれかへの切り替える指示を含む。当該指示は、オートフォーカス眼鏡100のユーザーによって与えられる。ある局面において、制御部110は、入力部120の代わりに、通信部170から、動作モード切替の指示を受信してもよい。また、他の局面において、入力部120または通信部170は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の動作モード切替の指示を個別に受け付け得る。その場合、制御部110は、動作モード切替の指示に基づいて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の動作モードを個別に変更し得る。例えば、制御部110は、度数可変レンズ150Lを通常モードに設定し、度数可変レンズ150Rを第1の弱視訓練モードに設定し得る。
【0058】
ステップS920において、制御部110は、入力部120からの動作モード切替の指示に基づいて、オートフォーカス眼鏡100の動作モードを変更する。制御部110は、オートフォーカス眼鏡100の動作モードを通常モード、第1の弱視訓練モードおよび第2の弱視訓練モードのいずれかに変更し得る。ある局面において、制御部110は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の動作設定を通常モード、第1の弱視訓練モードおよび第2の弱視訓練モードのいずれかに個別に変更し得る。
【0059】
ステップS930において、制御部110は、距離検出部140から、目視対象までの距離(距離を示す情報)を取得する。ある局面において、当該距離は、距離検出部140から目視対象までの距離、度数可変レンズ150から目視対象までの距離、または、ユーザーの目から目視対象までの距離であってもよい。
【0060】
ステップS940において、制御部110は、記憶部130内の距離度数テーブルを参照する。より具体的には、制御部110は、ステップS930にて取得した距離をキーとして、距離度数テーブルを検索し、度数可変レンズ150の度数を取得する。
【0061】
ステップS950において、制御部110は、動作モードに基づいて、度数のオフセット値を度数可変レンズ150の度数に加算する。ある局面において、制御部110は、度数のオフセット値を記憶部130から取得してもよい。他の局面において、制御部110は、ステップS950の処理の代わりに、ステップS930にて、距離のオフセット値を取得した距離に換算してもよい。その場合、制御部110は、距離のオフセット値を記憶部130から取得してもよい。
【0062】
ステップS960において、制御部110は、度数可変レンズ150の度数を調節する。ある局面において、制御部110は、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を個別に調節してもよい。その場合、制御部110は、ステップS940にて、度数可変レンズ150L,150Rの各々の度数を取得し得る。
【0063】
以上説明した通り、本実施の形態に従うオートフォーカス眼鏡100は、距離検出部140および距離度数テーブルに基づいて、度数可変レンズ150の度数を調節し得る。さらに、オートフォーカス眼鏡100は、弱視訓練モードにおいて、度数可変レンズ150の度数をユーザーにとって最適な度数から少しずらすことによって、弱視訓練を可能にする。これにより、ユーザーは、眼科等にある特殊な機材を用いることなく、容易に弱視訓練を行なうことができる。ある局面において、本実施の形態に従うオートフォーカス眼鏡100は、弱視訓練以外の任意の訓練に使用されてもよい。
【0064】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された開示内容は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0065】
100 オートフォーカス眼鏡、102 フレーム、110 制御部、120 入力部、130 記憶部、140 距離検出部、150L,150R 度数可変レンズ、160 電源部、170 通信部、310,320,330,510,520,720 グラフ、410,610L,610R 加算回路、800 動作モード毎の距離度数テーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9