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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ボルト及びボルト締付構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20240409BHJP
   F16D 3/38 20060101ALI20240409BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240409BHJP
【FI】
F16B35/00 H
F16B35/00 P
F16B35/00 Q
F16D3/38 Z
F01N13/08 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021024997
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127073
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 謙一郎
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-297915(JP,A)
【文献】実開昭48-048047(JP,U)
【文献】特開2012-189144(JP,A)
【文献】特開2013-148162(JP,A)
【文献】実開平04-128560(JP,U)
【文献】再公表特許第2005/121568(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16D 3/38
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の軸部と前記軸部の一方端に設けられた頭部とを有するボルトであって、
前記軸部は、一方端の側には前記頭部と連結される軸部側連結部を有するとともに、他方端の側にはねじ部を有し、
前記頭部は、一方端の側には前記軸部の外径よりも大きな外径とされた大径部を有するとともに、他方端の側には前記軸部と連結される頭部側連結部を有し、
前記軸部に対して前記頭部が揺動可能となるように、首振り機構として前記軸部側連結部と前記頭部側連結部が連結されており、
前記頭部側連結部の外径は、前記軸部の外径よりも小さく設定されている、
ボルト。
【請求項2】
請求項に記載のボルトであって、
前記首振り機構は、自在継手である、
ボルト。
【請求項3】
ルトを用いて、締め付け相手となる相手材に被締付体を締め付けるボルト締付構造であって、
前記ボルトは、円柱状の軸部と前記軸部の一方端に設けられた頭部とを有し、
前記軸部は、一方端の側には前記頭部と連結される軸部側連結部を有するとともに、他方端の側にはねじ部を有し、
前記頭部は、一方端の側には前記軸部の外径よりも大きな外径とされた大径部を有するとともに、他方端の側には前記軸部と連結される頭部側連結部を有し、
前記軸部に対して前記頭部が揺動可能となるように、首振り機構として前記軸部側連結部と前記頭部側連結部が連結されており、
前記相手材には、前記軸部の前記ねじ部をねじ込むねじ穴が設けられており、
前記被締付体には、前記軸部が挿通されて前記ねじ穴へと通じる連通孔が設けられており、
前記ボルトの前記軸部が前記連通孔に挿通されて、前記ねじ部が前記ねじ穴にねじ込まれて、前記ボルトを用いて前記被締付体を前記相手材に締め付けた状態において、
前記頭部側連結部の個所における前記連通孔の内径は、前記頭部側連結部の外径よりも大きく、かつ、前記大径部の外径よりも小さく設定されている、
ボルト締付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のボルト締付構造であって、
前記頭部側連結部の外径は、前記軸部の外径よりも小さく設定されている、
ボルト締付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、首振り機構を備えたボルト、および、当該ボルトを用いたボルト締付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用エンジンの排気システムにおいては、各気筒の排気を合流させる排気マニホールドがボルト締結によりエンジンに取り付けられている。エンジンが停止されて長時間放置されると、排気マニホールドの温度は雰囲気温度(大気の温度)まで低下する。またエンジンが運転状態とされると排気マニホールドの温度は例えば800[℃]以上にもなる。このため、エンジンの運転と停止が繰り返されると、排気マニホールドは、上記の温度差により、膨張と収縮を繰り返し、温度差による熱ひずみの発生に伴う変形と復元を繰り返す場合がある。排気マニホールドが、熱ひずみの発生に伴う変形と復元を繰り返した場合、当該排気マニホールドを締結しているボルトの座面が接触している排気マニホールドの面の傾斜角度が、大きくなったり小さくなったりする場合がある。この場合、ボルトの軸部に対して頭部を揺動させる応力の印加が繰り返され、ボルトの頭部が折損する可能性がある。
【0003】
そのため、従来、ボルトにカラーを装着することが知られている。具体的には、排気マニホールドのフランジとボルトの間にカラーを挟むことでボルトの座面を排気マニホールドのフランジから離し、排気マニホールドのフランジの熱ひずみによる影響を避けている。例えば、特許文献1では、カラーの内周面とボルトの軸の間に隙間を設けることで、ボルトに対する排気マニホールドのフランジの熱ひずみによる影響をより少なくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-246868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボルトの締結にカラーを用いた場合、排気マニホールドのフランジの熱ひずみによる影響を避けられるというメリットが得られる反面、カラーを装着して大きく突出したボルトが他の部材に干渉するというデメリットが発生する。近年のエンジンは極めてタイトな設計がされているため、ボルトが大きく突出することは、あまり好ましくない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、カラー等を用いてボルトを大きく突出させることなく、被締付体の熱ひずみによる影響を回避し、折損を防止することが可能なボルト及びボルトの締付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の発明は、円柱状の軸部と前記軸部の一方端に設けられた頭部とを有するボルトであって、前記軸部は、一方端の側には前記頭部と連結される軸部側連結部を有するとともに、他方端の側にはねじ部を有し、前記頭部は、一方端の側には前記軸部の外径よりも大きな外径とされた大径部を有するとともに、他方端の側には前記軸部と連結される頭部側連結部を有し、前記軸部に対して前記頭部が揺動可能となるように、首振り機構として前記軸部側連結部と前記頭部側連結部が連結されている、ボルトである。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るボルトであって、前記頭部側連結部の外径は、前記軸部の外径よりも小さく設定されている、ボルトである。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係るボルトであって、前記首振り機構は、自在継手である、ボルトである。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明に係るボルトを用いて、締め付け相手となる相手材に被締付体を締め付けるボルト締付構造であって、前記相手材には、前記軸部の前記ねじ部をねじ込むねじ穴が設けられており、前記被締付体には、前記軸部が挿通されて前記ねじ穴へと通じる連通孔が設けられており、前記ボルトの前記軸部が前記連通孔に挿通されて、前記ねじ部が前記ねじ穴にねじ込まれて、前記ボルトを用いて前記被締付体を前記相手材に締め付けた状態において、前記頭部側連結部の個所における前記連通孔の内径は、前記頭部側連結部の外径よりも大きく、かつ、前記大径部の外径よりも小さく設定されている、ボルト締付構造である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、被締付体としての、例えば排気マニホールドが、熱ひずみの発生に伴う変形と復元を繰り返したとしても、首振り機構により、ボルトの頭部の座面が排気マニホールドのフランジ表面に追従するので、頭部を揺動させる応力の印加が繰り返されても頭部が折損することはない。よって、カラー等を用いてボルトを大きく突出させることなく、被締付体の熱ひずみによる影響を回避し、折損等を防止することができる。
【0012】
第2の発明によれば、相手材に対し被締付体をボルトによって締め付ける場合、相手材にはボルトの軸部をねじ込むねじ穴が、被締付体には軸部が挿通されてねじ穴へと通じる連通孔が、それぞれ設けられている。このような場合において、連通孔とねじ穴の内径がそれぞれ同じ大きさであっても、頭部が揺動しても、頭部側連結部の外径が軸部の外径に収まっているため、頭部側連結部と連通孔の内壁との干渉を避けることができる。
【0013】
第3の発明によれば、自在継手であれば、ボルトの頭部を軸部に対して揺動可能に保持しつつ、頭部で受けたトルクを軸部に伝えることができるため、首振り機構としては好適である。
【0014】
第4の発明によれば、被締付体が熱ひずみの発生に伴う変形と復元を繰り返したとしても、首振り機構により、ボルトの頭部の座面が被締付体の表面に追従するので、頭部を揺動させる応力の印加が繰り返されても頭部が折損することはない。また、被締付体に設けられた連通孔と頭部側連結部それぞれの径の大小関係により、頭部が揺動した際に、頭部側連結部と連通孔の内壁との干渉を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るボルトの分解斜視図である。
図2】ボルトの被締付体である排気マニホールドと締め付け相手となるシリンダヘッドを示した図である。
図3】締め付けに第1の実施形態に係るボルトを用いた場合の図2における線III-IIIに沿った断面図である。
図4】フランジに熱ひずみが発生した場合における第1の実施形態に係るボルトの頭部の揺動を説明する図である。
図5】第2の実施形態に係るボルトの分解斜視図である。
図6】締め付けに第2の実施形態に係るボルトを用いた場合の図2における線III-IIIに沿った断面図である。
図7】フランジに熱ひずみが発生した場合における第2の実施形態に係るボルトの頭部の揺動を説明する図である。
図8】揺動可能な首振り機構を有するボルトの変形例を示す図である。
図9】変形例のボルトを回すためのソケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈第1の実施形態〉
以下、本発明の一実施形態に係る について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るボルト10の分解斜視図である。図1に示すように、ボルト10は、円柱状の軸部30と、軸部30の一方端に設けられる頭部20とを有する。軸部30は、雄ねじが形成されたねじ部31と、形成されていない円柱部32を備え、円柱部32の上面32aに、軸部側連結部に相当する第1ヨーク部60を有する。頭部20は、工具からのトルクを受ける六角部21と座部22からなる大径部25を有するとともに、座部22の座面22aには、頭部側連結部に相当する第2ヨーク部40を有する。なお、大径部25の外径Aは、軸部の外径Bよりも大きく設定されている。
【0018】
ボルト10では、軸部30に対して頭部20が揺動可能となるように、首振り機構として、第1ヨーク部60と、第2ヨーク部40を連結し、自在継手70を構成している。具体的には、自在継手70は、十字形に突出する4本のピン51~54を備えたクロスピン50と、クロスピン50において同軸の2本のピン52、54を第1の軸として回転可能に支持する第1ヨーク部60と、残りの同軸の2本のピン51、53を第2の軸として回転可能に支持する第2ヨーク部40と、から構成される。
【0019】
第1ヨーク部60は、具体的には、軸部30における円柱部32の上面32aから突出した2つの突起61、62からなり、突起61の外面61aおよび突起62の外面62aと、円柱部32の外周面32bとは連なっている。
【0020】
第2ヨーク部40は、具体的には、頭部20における座部22の座面22aから突出した2つの突起41、42からなり、外面41aから外面42aまでの最大幅である外径Cと、軸部30の外径Bとは同じである。これらの突起41、42と突起61、62に設けられたそれぞれのピン孔に対し、クロスピン50のピン51~54を挿入することで、自在継手70として機能する。なお、突起41、42の外面41a、42aおよび突起61、62の外面61a、62aは、曲面になっており、それぞれのピン孔に挿入されたピン51~54の先端についても、その曲面に合わせた形状となっている。
【0021】
図2は、ボルト10の被締付体に相当する排気マニホールド100と締め付け相手となる相手材に相当するシリンダヘッド130を示した図である。図3は、図2における線III-IIIに沿った断面図である。なお、図2では、シリンダヘッド130に対してフランジ110を締め付けているボルト10を省略している。図2、3に示すように、排気マニホールド100は、フランジ110を有しており、フランジ110とシリンダヘッド130の間にガスケット120を挟んだうえでシリンダヘッド130に取り付けられる。
【0022】
シリンダヘッド130には、軸部30のねじ部31をねじ込むねじ穴132が複数設けられており、フランジ110とガスケット120には、軸部30が挿通されてねじ穴132へと通じる連通孔111、121がそれぞれ設けられている。このような連通孔111、121とねじ穴132に対しボルト10の軸部30を入れてねじ込んでいくと、頭部20の座面22aがフランジ110の表面113に当接し、さらにねじ込むことによってシリンダヘッド130に対しフランジ110をガスケット120と併せて締め付ける。
【0023】
図3に示すように、シリンダヘッド130には、上述したように、ボルト10の軸部30におけるねじ部31をねじ込むねじ穴132が設けられている。また、フランジ110とガスケット120には、ねじ穴132に対応する連通孔111、121が設けられている。ここで、連通孔111、121の内径Rは、第2ヨーク部40の外径Cより大きく設定されている。したがって、ボルト10の軸部30におけるねじ部31が連通孔111、121を通ってねじ穴132にねじ込まれ、頭部20の座面22aによってフランジ110とガスケット120がシリンダヘッド130に対して押し付けられた場合に、第2ヨーク部40と連通孔111の内壁112には隙間Lが存在することになる。
【0024】
図4は、フランジ110に熱ひずみが発生した場合におけるボルト10の頭部20の揺動を説明する図である。図4に示すように、エンジン運転中は、シリンダヘッド130、ガスケット120、フランジ110ともに高熱となるため、熱膨張により熱ひずみが発生し、例えばフランジ110がしなり、冷却時における状態と比べると、フランジ110の表面113が変形する。そして、エンジンが停止すれば、熱膨張は収まり、フランジ110は元の形に復元する。従来のボルトの場合、このようなフランジ110の表面113の変形と復元により、ボルトの首下に応力が集中し、ボルトの折損等重大な不具合に至る場合があった。
【0025】
なお、フランジ110の表面113が変形する態様としては様々な場合があり、そもそもフランジ110やガスケット120の加工精度が悪く、冷却時においてフランジ110がしなっていて、熱膨張によってそのしなりが元に戻る、ということもある。いずれにせよ、エンジン周りに配置されるフランジ110やガスケット120は、冷却時における状態と加熱時における状態でその形状が変化し、フランジ110の表面113が変形(復元)するため、ボルト10の座面22aを直接フランジ110に接触させずにカラーを用いていた。
【0026】
しかしながら、本実施形態に係るボルト10は、頭部20が軸部30に対して自在継手70により接合されることで、揺動可能な首振り機構を有する結果、ボルト10の座面22aによる押付け力を保ったまま、フランジ110の表面113に追従して頭部20を動かすことができる。また、その際、隙間Lにより、突起41や突起42と連通孔111の内壁112とが干渉することはない。つまり、図4に示すように頭部20が揺動する際、突起41の根本部分や、突起42の先端部分については、軸部30における円柱部32の延長線上からはみ出ることになる。そのため、仮に隙間Lが無く、突起41や突起42と内壁112が近接していると、干渉が起こってしまう。隙間Lは、このような干渉を避けるために設けられたものである。
【0027】
以上のように、ボルト10の座面22aを直接フランジ110に接触させた場合に、エンジンの熱により上述したようなフランジ110の表面113の変形が起こったとしても、当該変形を自在継手70が吸収するため、ボルト10の首下に応力が集中するということはない。よって、本実施形態に係るボルト10によれば、カラー等を用いてボルト10を大きく突出させることなく、被締付体である排気マニホールド100の熱ひずみによる影響を回避し、ボルト10における頭部20の折損等を防止することができる。
【0028】
〈第2の実施形態〉
続いて、本発明の第2の実施形態に係るボルト200について説明する。本実施形態に係るボルト200は、実施形態1と異なり、第2ヨーク部240の外径Wが軸部30の外径Bより小さい点が特徴である。なお、実施形態1にてすでに説明した事項については適宜説明を省略する。
【0029】
図5は、本実施形態に係るボルト200の分解斜視図である。図5に示すように、第2ヨーク部240は、第1の実施形態と同様、頭部20の座面22aから突出した2つの突起241、242からなる。突起241の外面241aから突起242の外面242aまでの外径Wは、第1の実施形態と異なり、軸部30の外径Bより小さく設定されている。
【0030】
第1ヨーク部260は、第1の実施形態と同様、軸部30における円柱部32の上面32aから突出した2つの突起261、262からなる。突起261の外面261aから突起262の外面262aまでの幅は、突起241の外面241aから突起242の外面242aまでの外径Wに合わせてある。これらの突起241、242と突起261、262に設けられたそれぞれのピン孔に対し、クロスピン250のピン251~254を挿入することで、自在継手75として機能する。なお、クロスピン250のピン251~254の長さは、上述した各幅に合わせるべく、第1の実施形態に比較してそれぞれ短く設定されている。
【0031】
図6は、ボルト200を用いた場合の図2における線III-IIIに沿った断面図である。図6に示すように、シリンダヘッド130には、ボルト200の軸部30におけるねじ部31をねじ込むねじ穴132が設けられている。また、フランジ110とガスケット120には、ねじ穴132に対応する連通孔115、125が設けられている。ここで、連通孔115、125の内径R1は、ねじ穴132の内径R2と同じに設定されている。しかし、上述したように、突起241の外面241aから突起242の外面242aまでの外径Wが、軸部30の外径Bより小さく設定されているため、当然、第2ヨーク部240と連通孔115の内壁116には隙間Lが設けられることになる。
【0032】
図7は、フランジ110に熱ひずみが発生した場合におけるボルト200の頭部20の揺動を説明する図である。図7に示すように、本実施形態に係るボルト200は、第1の実施形態と同様、頭部20が軸部30に対して自在継手70により接合されることで、揺動可能な首振り機構を有する結果、ボルト200の座面22aによる押付け力を保ったまま、フランジ110の表面113に追従して頭部20を動かすことができる。
【0033】
また、その際、隙間Lにより、突起241や突起242と連通孔115の内壁116とが干渉することはない。つまり、突起241の根本部分や、突起242の先端部分については、もともと軸部30における円柱部32の延長線上より内側にあるため、頭部20が揺動しても延長線上からはみ出ることはない。
【0034】
以上のように、相手材であるシリンダヘッド130に対し被締付体である排気マニホールド100をボルト200によって締め付ける場合、シリンダヘッド130にはボルト200の軸部30をねじ込むねじ穴132が、排気マニホールド100のフランジ110やガスケット120には軸部30が挿通されてねじ穴132へと通じる連通孔115、125が、それぞれ設けられている。そして、連通孔115、125とねじ穴132の径がそれぞれ同じ大きさであっても、第2ヨーク部240の外径Wが軸部30の外径Bに収まっているため、第2ヨーク部240と連通孔115の内壁116との干渉を避けることができる。
【0035】
本発明のボルト10、200は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、ボルト10、200による被締付体やその相手材として、シリンダヘッド130、排気マニホールド100、ガスケット120を例に説明したが、これらに限定されるものではない。例えば、熱ひずみ以前に、そもそも被締付体の加工精度が悪く、ボルト10、200の座面22aが当接する被締付体の表面において、ねじ穴に対する直角が出ていない場合であっても、頭部20の揺動によりバラつきを吸収できるため、このような被締付体であっても締め付けを可能とする。
【0036】
また、上述した各実施形態では、ボルトの頭部と軸部を自在継手により接合したが、揺動可能な首振り機構が実現できればよく、例えばボールジョイントにより接合してもよい。具体的には、図8に示すように、軸部30における円柱部32の上面32aに球部310(軸部側連結部)を設けるとともに、頭部20の座面22aには、球受け320(頭部側連結部)を設けることで、軸部30に対して頭部20が揺動するボルト300とすることもできる。
【0037】
さらに、頭部20から球部310にかけて六角穴330が設けられており、図9に示すようなソケット400を用いて頭部20と軸部30の両方にトルクをかけることができる。つまり、ソケット400は、頭部20の六角部21に対応する六面410を有し、六角穴330に対応する六角棒420を有する。ソケット400を別途用意されたハンドルに取り付けてボルト300を回すツールとして利用することができる。
【0038】
また、クロスピンの形状として十字状のものを例に挙げたが、十字形に突出する4本のピンを備えたものであればよく、例えば立方体や球からなるコマ部から4本のピンが突出したものをクロスピンとしてもよい。また、より滑らかに頭部20を揺動させるべく、第1ヨーク部60や第2ヨーク部40におけるピン孔にベアリングを組み込むこともできる。
【0039】
また、頭部20における大径部25は、六角部21と座部22からなるものとして説明したが、六角部21のみとしてもよい。その場合、六角部21の外径を軸部30の外径Bより大きくし、六角部21における軸部30側の面を座面とし、その座面より第2ヨーク部40、240が形成されるものとすればよい。
【符号の説明】
【0040】
10 ボルト
20 頭部
21 六角部
22 座部
22a 座面
25 大径部
30 軸部
31 ねじ部
32 円柱部
32a 上面
32b 外周面
40 第2ヨーク部
41 突起
41a 外面
42 突起
42a 外面
50 クロスピン
60 第1ヨーク部
61 突起
61a 外面
62 突起
62a 外面
70 自在継手
100 排気マニホールド
110 フランジ
111 連通孔
112 内壁
113 表面
120 ガスケット
130 シリンダヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9