(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】フーリエ変換赤外分光光度計
(51)【国際特許分類】
G01J 3/45 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01J3/45
(21)【出願番号】P 2021029945
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】丸野 浩昌
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193499(WO,A1)
【文献】特開2013-213721(JP,A)
【文献】特開2003-100249(JP,A)
【文献】特開2016-142527(JP,A)
【文献】特開2019-015616(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166872(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132379(WO,A1)
【文献】特開2022-125549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/45
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を出射する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む主干渉計と、
コントロール光を出射するコントロール光源と、前記ビームスプリッタと、前記固定鏡と、前記移動鏡とを含むコントロール干渉計と、
前記主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または前記試料で反射される赤外干渉光を検出する赤外検出器と、
前記コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出するコントロール光検出器と、
前記コントロール光の光路であって、前記固定鏡または前記移動鏡と前記ビームスプリッタとの間に配置されている位相板と、
前記位相板を支持する支持部材とを備え、
前記位相板の外周は、前記支持部材によって支持されている被支持領域と、前記支持部材から解放されている解放領域とを含む、フーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項2】
前記位相板の前記外周の前記解放領域は、前記位相板の外周長さの三分の一以上である、請求項1に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項3】
前記支持部材は、前記位相板の前記外周の一辺のみを支持している、請求項1または請求項2に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項4】
前記位相板を前記支持部材に取り付ける固定部材をさらに備え、
前記支持部材には、スリットが設けられており、
前記位相板は、前記スリットに挿入されており、
前記固定部材は、弾性スペーサを含み、
前記弾性スペーサは、前記スリットに挿入されており、かつ、前記支持部材と前記位相板との間に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項5】
前記弾性スペーサの第1熱伝導率は、前記位相板の第2熱伝導率の30%以下である、請求項4に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項6】
前記固定部材は、前記弾性スペーサに接触する板と、前記板を前記弾性スペーサ及び前記位相板に向けて押圧する押圧部材とをさらに含む、請求項4または請求項5に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項7】
筐体をさらに備え、
前記支持部材は、前記位相板が取り付けられるマウント部と、柱とを含み、
前記柱は前記マウント部に接続されており、かつ、前記筐体に取り付けられており、
前記赤外光の光軸方向からの平面視において、前記柱は前記マウント部より狭い幅を有している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項8】
筐体をさらに備え、
前記支持部材は、前記位相板が取り付けられる柱を含み、
前記柱は、前記位相板より狭い幅を有しており、かつ、前記筐体に取り付けられている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フーリエ変換赤外分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平2-253103号公報(特許文献1)に開示されたフーリエ変換赤外分光光度計は、二光束干渉計を構成する、赤外光源とビームスプリッタと固定鏡と移動鏡とを備える。二光束干渉計には、固定鏡または移動鏡の向きを測定するためのレーザ光が導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを得ることができるフーリエ変換赤外分光光度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のフーリエ変換赤外分光光度計は、主干渉計と、コントロール干渉計と、赤外検出器と、コントロール光検出器と、位相板と、支持部材とを備える。主干渉計は、赤外光を出射する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。コントロール干渉計は、コントロール光を出射するコントロール光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。赤外検出器は、主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または試料で反射される赤外干渉光を検出する。コントロール光検出器は、コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出する。位相板は、コントロール光の光路上であって、固定鏡または移動鏡とビームスプリッタとの間に配置されている。支持部材は、位相板を支持する。位相板の外周は、支持部材によって支持されている被支持領域と、支持部材から解放されている解放領域とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示のフーリエ変換赤外分光光度計によれば、より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の概略図である。
【
図2】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
【
図3】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の、
図2に示される断面線III-IIIにおける概略部分拡大断面図である。
【
図4】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計に含まれる第1コントロール光検出器の概略平面図である。
【
図5】実施の形態の第1変形例のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
【
図6】実施の形態の第2変形例のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
【
図7】実施の形態の第3変形例のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
【
図8】実施例のフーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定されたバックグラウンドパワースペクトルの経時変化を示す図である。
【
図9】比較例のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
【
図10】比較例のフーリエ変換赤外分光光度計の、
図9に示される断面線X-Xにおける概略部分拡大断面図である。
【
図11】比較例のフーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定されたバックグラウンドパワースペクトルの経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0009】
図1から
図4を参照して、実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計1を説明する。フーリエ変換赤外分光光度計1は、主干渉計6と、コントロール干渉計7と、赤外検出器19と、コントロール光検出器34と、ミラー角度調整器40と、ミラー駆動装置41と、コントローラ50と、スペクトル作成器60と、位相板27と、支持部材70とを主に備える。フーリエ変換赤外分光光度計1は、コリメートレンズ22と、偏光ビームスプリッタ30とをさらに備えてもよい。フーリエ変換赤外分光光度計1は、固定部材80をさらに備えてもよい。フーリエ変換赤外分光光度計1は、筐体8をさらに備えてもよい。
【0010】
主干渉計6は、試料3のパワースペクトルを測定するための赤外干渉光11iを生成する。
図1を参照して、主干渉計6は、赤外光源10と、ビームスプリッタ13と、固定鏡14と、移動鏡15とを含む。主干渉計6は、コリメート鏡12をさらに含んでもよい。
【0011】
赤外光源10は、赤外光11を出力する。赤外光源10は、例えば、セラミック光源である。コリメート鏡12は、赤外光11をビームスプリッタ13に向けて反射するとともに、赤外光11をコリメートする。
【0012】
ビームスプリッタ13は、赤外光11を、固定鏡14に向かう第1赤外光11jと、移動鏡15に向かう第2赤外光11kとに分割する。ビームスプリッタ13は、固定鏡14で反射された第1赤外光11jと、移動鏡15で反射された第2赤外光11kとを合波する。主干渉計6(ビームスプリッタ13)は、第1赤外光11jと第2赤外光11kとの間の干渉光である赤外干渉光11iを生成して、赤外干渉光11iを、試料3及び赤外検出器19に向けて出力する。
【0013】
ミラー駆動装置41は、移動鏡15に接続されている。ミラー駆動装置41は、移動鏡15を、ビームスプリッタ13に近づく方向と、ビームスプリッタ13から遠ざかる方向とに移動させて、移動鏡15を往復運動させる。ミラー駆動装置41は、例えば、移動鏡15が固定されているピストン41aと、ピストン41aを駆動するボイスコイルモータ41bとを含む。
【0014】
移動鏡15が動く際に、移動鏡15の向き(移動鏡15の法線方向)が変動することがある。移動鏡15の向きの変動は、赤外干渉光11iの強度及び位相を変化させて、赤外検出器19で検出されるインターフェログラムを劣化させる。そのため、移動鏡15の向きの変動を補償するように、移動鏡15または固定鏡14の向きを調整する必要がある。ミラー角度調整器40は、移動鏡15または固定鏡14の向きを調整する。本実施の形態では、ミラー角度調整器40は、固定鏡14に設けられており、固定鏡14の向き(固定鏡14の法線方向)を調整する。ミラー角度調整器40は、移動鏡15に設けられてもよく、移動鏡15の向き(移動鏡15の法線方向)を調整してもよい。ミラー角度調整器40は、例えば、ピエゾ素子を含むアクチュエータである。具体的には、鏡の向きは、ピエゾ素子の形状を変化させることによって調整され得る。
【0015】
主干渉計6(ビームスプリッタ13)から出力された赤外干渉光11iは、集光鏡17で反射及び集光されて、試料室4内に配置されている試料3に入射する。赤外干渉光11iは、試料3を通過する。赤外干渉光11iは、試料3で反射されてもよい。試料3を通過するまたは試料3で反射される赤外干渉光11iは、集光鏡18で反射及び集光されて、赤外検出器19に入射する。赤外検出器19は、主干渉計6で生成され、かつ、試料3を通過または試料3で反射される赤外干渉光11iを、インターフェログラムとして検出する。インターフェログラムは、移動鏡15の移動に伴って生成される。赤外検出器19は、例えば、焦電検出器またはMCT検出器である。
【0016】
コントロール干渉計7は、移動鏡15の位置及び速度並びに固定鏡14または移動鏡15の向きを測定するためのコントロール干渉光21iを生成する。
図1を参照して、コントロール干渉計7は、コントロール光源20と、ビームスプリッタ13と、固定鏡14と、移動鏡15とを含む。
【0017】
コントロール光源20は、コントロール光21を出力する。コントロール光源20は、例えば、ヘリウムネオン(He-Ne)レーザまたは半導体レーザのようなレーザ光源である。コントロール光21は、例えば、レーザビームである。コリメートレンズ22は、コントロール光21の光路上であって、コントロール光源20とビームスプリッタ13との間に配置される。コリメートレンズ22は、コントロール光21をコリメートする。
【0018】
鏡26は、コリメートレンズ22から出力されたコントロール光21を、ビームスプリッタ13に向けて反射する。鏡26は、赤外光11中に配置されてもよい。鏡26によって遮断される赤外光11を減少させるために、鏡26のサイズは、赤外光11のビーム径より小さい。コントロール光21は、赤外光11と平行に進んで、ビームスプリッタ13に入射する。コントロール光21の光軸21pは、赤外光11の光軸11pに平行である。コントロール光21のビーム径は、赤外光11のビーム径より小さい。
【0019】
ビームスプリッタ13は、コントロール光21を、固定鏡14に向かう第1コントロール光21jと、移動鏡15に向かう第2コントロール光21kとに分割する。ビームスプリッタ13は、固定鏡14で反射された第1コントロール光21jと、移動鏡15で反射された第2コントロール光21kとを合波する。コントロール干渉計7(ビームスプリッタ13)は、第1コントロール光21jと第2コントロール光21kとの間の干渉光であるコントロール干渉光21iを生成して、コントロール干渉光21iを赤外検出器19に向けて出力する。
【0020】
位相板27は、コントロール光21の光路上に配置されている。位相板27は、固定鏡14とビームスプリッタ13との間に配置されている。位相板27は、移動鏡15とビームスプリッタ13との間に配置されてもよい。位相板27は、例えば、人工水晶のような透明材料で形成されている。位相板27は、例えば、八分の一波長板(λ/8板)である。位相板27が八分の一波長板である場合、直線偏光のコントロール光21が位相板27を一回通過すると、コントロール光21のうち位相板27の遅相軸方向の偏光成分の位相が、コントロール光21のうち位相板27の進相軸方向の偏光成分の位相に対して45°遅れる。コントロール光21は、固定鏡14または移動鏡15によって反射される。コントロール光21は固定鏡14または移動鏡15によって反射されるため、コントロール光21は位相板27を二回通過する。コントロール光21のうち位相板27の遅相軸方向の偏光成分の位相が、コントロール光21のうち位相板27の進相軸方向の偏光成分の位相に対して90°遅れる。こうして、直線偏光を有するコントロール光21(第1コントロール光21j)は、円偏光を有するコントロール光21(第1コントロール光21j)に変換される。
【0021】
図2及び
図3を参照して、支持部材70は、位相板27を支持する。位相板27の外周は、支持部材70によって支持されている被支持領域と、支持部材70から解放されている解放領域とを含む。位相板27の外周の解放領域は、例えば、位相板27の外周長さの三分の一以上である。位相板27の外周の解放領域は、位相板27の外周長さの二分の一以上であってもよい。支持部材70は、例えば、マウント部72と、柱71とを含む。支持部材70(マウント部72)は、例えば、位相板27の外周の一辺を支持している。位相板27の外周の残りの三辺は、支持部材70(マウント部72)から解放されている。支持部材70(マウント部72)は、例えば、位相板27の下部を支持している。
【0022】
支持部材70は、位相板27と異なる材料で形成されている。支持部材70は、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウムのような金属材料で形成されている。支持部材70の熱膨張係数は、位相板27の熱膨張係数と異なっている。マウント部72は、基台73を含む。マウント部72(基台73)には、スリット78が設けられている。マウント部72(基台73)には、孔79が設けられている。位相板27は、スリット78に挿入されている。
【0023】
柱71は、マウント部72(基台73)に接続されている。赤外光11(第1赤外光11j)の光軸11p方向からの平面視において、柱71は、マウント部72より狭い幅を有している。柱71の幅は、例えば、マウント部72の幅の50%以下である。柱71の幅は、マウント部72の幅の40%以下であってもよく、マウント部72の幅の30%以下であってもよく、マウント部72の幅の20%以下であってもよい。赤外光11(第1赤外光11j)の光軸11p方向からの平面視において、柱71は、位相板27より狭い幅を有してもよい。柱71は、筐体8に取り付けられている。本実施の形態では、柱71は、筐体8の底壁に取り付けられている。柱71は、筐体8に直接取り付けられてもよいし、別の部材(図示せず)を介して、筐体8に取り付けられてもよい。
【0024】
固定部材80は、位相板27を支持部材70(例えば、マウント部72(基台73))に取り付ける。固定部材80は、例えば、弾性スペーサ81と、板82と、押圧部材84とを含む。
【0025】
弾性スペーサ81は、例えば、シリコーンゴムで形成されている。弾性スペーサ81は、スリット78に挿入されており、かつ、マウント部72(基台73)と位相板27との間に配置されている。位相板27は、弾性スペーサ81によって挟持されてもよい。弾性スペーサの第1熱伝導率は、例えば、位相板27の第2熱伝導率の30%以下である。弾性スペーサの第1熱伝導率は、位相板27の第2熱伝導率の20%以下であってもよく、位相板27の第2熱伝導率の10%以下であってもよい。そのため、弾性スペーサは、位相板27と支持部材70との間の熱伝導を減少させる。
【0026】
板82は、弾性スペーサ81に接触する。板82は、スリット78に挿入されてもよい。押圧部材84は、板82を、弾性スペーサ81及び位相板27に向けて押圧する。押圧部材84は、孔79を貫通している。押圧部材84は、例えば、ねじである。こうして、位相板27は、固定部材80を用いて、支持部材70に固定される。押圧部材84は、板82を介して、位相板27を押圧している。そのため、位相板27に局所的に大きな機械的応力が印加されることが防止され得る。押圧部材84は、弾性スペーサ81を介して、位相板27を押圧している。そのため、位相板27に局所的に大きな機械的応力が印加されることが防止され得る。
【0027】
コントロール干渉計7(ビームスプリッタ13)から出力されたコントロール干渉光21iは、赤外干渉光11iと平行に進んで、鏡28に入射する。鏡28は、赤外干渉光11i中に配置されてもよい。鏡28によって遮断される赤外干渉光11iを減少させるために、鏡28のサイズは、赤外干渉光11iのビーム径より小さい。コントロール干渉光21iのビーム径は、赤外干渉光11iのビーム径より小さい。コントロール干渉光21iは、鏡28で反射されて、コントロール光検出器34に入射する。コントロール光検出器34は、コントロール干渉計7で生成されるコントロール干渉光21iを検出する。コントロール光検出器34は、例えば、フォトダイオードである。
【0028】
具体的には、偏光ビームスプリッタ30は、コントロール干渉光21iの光路上であって、ビームスプリッタ13とコントロール光検出器34との間に配置されている。鏡28で反射されたコントロール干渉光21iは、偏光ビームスプリッタ30に入射する。偏光ビームスプリッタ30は、コントロール干渉光21iを、第1コントロール干渉光21sと第2コントロール干渉光21tとに分割する。第1コントロール干渉光21sは、例えば、コントロール干渉光21iのs偏波成分であり、第2コントロール干渉光21tは、コントロール干渉光21iのp偏波成分である。コントロール干渉光21iは,円偏光を有する第1コントロール光21jと直線偏光を有する第2コントロール光21kとの間の干渉光である。そのため、第1コントロール干渉光21sと第2コントロール干渉光21tとの間の位相差は、90°である。
【0029】
コントロール光検出器34は、第1コントロール光検出器35と、第2コントロール光検出器36とを含む。第1コントロール光検出器35は、第1コントロール干渉光21sを検出する。
図4を参照して、第1コントロール光検出器35は、例えば、複数の光検出素子35a,35b,35c,35dを含む複数分割フォトダイオード(例えば、四分割フォトダイオード)である。複数の光検出素子35a,35b,35c,35dは、単一の半導体基板上に形成されてもよい。第2コントロール光検出器36は、第2コントロール干渉光21tを検出する。第2コントロール光検出器36は、例えば、単一の光検出素子を含む単素子フォトダイオードである。
【0030】
コントローラ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサまたは電気回路の少なくとも一つで構成されている。コントローラ50は、ミラー角度調整部51と、信号加算部52と、ミラー位置検出部53と、ミラー速度調整部56とを含む。コントローラ50は、例えば、プロセッサがコントローラ50の記憶部(図示せず)に格納されているプログラムを実行することによって、ミラー角度調整部51と、信号加算部52と、ミラー位置検出部53と、ミラー速度調整部56との機能を実現してもよい。
【0031】
ミラー角度調整部51は、コントロール光検出器34の出力に基づいて、ミラー角度調整器40の動作を制御して、鏡(例えば、固定鏡14)の向きを調整する。具体的には、ミラー角度調整部51は、例えば、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号の位相が一致するように、鏡(例えば、固定鏡14)の向きを調整する。こうして、移動鏡15が動く際に生じる移動鏡15の向きの変動が補償される。
【0032】
ミラー位置検出部53は、コントロール光検出器34の出力に基づいて、移動鏡15の移動方向及び位置を検出する。具体的には、ミラー位置検出部53は、波形整形器54と、アップ/ダウンカウンタ55を含む。信号加算部52は、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号を加算して、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を得る。ミラー位置検出部53は、信号加算部52から第1コントロール光検出器35の第1出力信号を受信するとともに、第2コントロール光検出器36から第2コントロール光検出器36の第2出力信号を受信する。波形整形器54は、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を、第1パルス列信号に変換する。波形整形器54は、第2コントロール光検出器36の第2出力信号を、第2パルス列に変換する。
【0033】
アップ/ダウンカウンタ55は、波形整形器54から、第1パルス列信号と第2パルス列信号とを受信する。アップ/ダウンカウンタ55は、第1パルス列信号の第1位相と第2パルス列信号の第2位相との間の位相関係から、移動鏡15の移動方向を特定する。例えば、第1パルス列信号の第1位相が第2パルス列信号の第2位相より90°進んでいる場合には、アップ/ダウンカウンタ55は、ビームスプリッタ13から離れる方向を、移動鏡15の移動方向として特定する。第1パルス列信号の第1位相が第2パルス列信号の第2位相より90°遅れている場合には、アップ/ダウンカウンタ55は、ビームスプリッタ13から遠ざかる方向を、移動鏡15の移動方向として特定する。また、アップ/ダウンカウンタ55で計数されるパルス列信号のパルス数は、移動鏡15の位置に依存している。ミラー位置検出部53は、アップ/ダウンカウンタ55によって得られる移動鏡15の移動方向とパルス列信号のパルス数とから、移動鏡15の位置を特定する。
【0034】
ミラー速度調整部56は、ミラー駆動装置41を制御して、移動鏡15の移動速度を調整する。具体的には、ミラー速度調整部56は、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または信号加算部52で得られる第1コントロール光検出器35の第1出力信号の周波数が一定になるように、ミラー駆動装置41を制御する。こうして、ミラー速度調整部56は、移動鏡15を、一定速度で移動させる。
【0035】
スペクトル作成器60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサまたは電気回路の少なくとも一つで構成されている。コントローラ50とスペクトル作成器60とは、一台のコンピュータで構成されてもよい。スペクトル作成器60は、サンプルホールド部61と、アナログデジタル変換部62と、フーリエ変換演算部63とを含む。スペクトル作成器60は、例えば、プロセッサがコントローラ50の記憶部(図示せず)に格納されているプログラムを実行することによって、サンプルホールド部61と、アナログデジタル変換部62と、フーリエ変換演算部63との機能を実現してもよい。
【0036】
スペクトル作成器60は、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムから、試料3のパワースペクトルを作成する。具体的には、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または第2パルス列信号が、サンプルホールド部61に入力される。サンプルホールド部61は、第1パルス列信号または第2パルス列信号によって規定されるタイミングで、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムをサンプリングする。アナログデジタル変換部62は、サンプリングされたインターフェログラムをデジタル変換する。フーリエ変換演算部63は、デジタル変換されたインターフェログラムをフーリエ変換する。こうして、試料3のパワースペクトルが得られる。
【0037】
筐体8は、主干渉計6、コントロール干渉計7、赤外検出器19及びコントロール光検出器34などを含むフーリエ変換赤外分光光度計1の光学系を収容している。
【0038】
[フーリエ変換赤外分光光度計1の動作]
移動鏡15の位置及び速度並びに固定鏡14または移動鏡15の向きの測定の際の、フーリエ変換赤外分光光度計1の動作を説明する。移動鏡15が移動している間、移動鏡15の位置及び速度並びに固定鏡14または移動鏡15の向きは、リアルタイムでモニターされる。
【0039】
偏光ビームスプリッタ30は、コントロール干渉計7から出力されるコントロール干渉光21iを、第1コントロール干渉光21sと第2コントロール干渉光21tとに分割する。第1コントロール光検出器35は、第1コントロール干渉光21sを検出する。第2コントロール光検出器36は、第2コントロール干渉光21tを検出する。ミラー角度調整部51は、例えば、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号の位相が一致するように、鏡(例えば、移動鏡15)の向きを調整する。
【0040】
信号加算部52は、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号を加算して、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を得る。ミラー位置検出部53は、信号加算部52から第1コントロール光検出器35の第1出力信号を受信するとともに、第2コントロール光検出器36から第2コントロール光検出器36の第2出力信号を受信する。波形整形器54は、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を、第1パルス列信号に変換する。波形整形器54は、第2コントロール光検出器36の第2出力信号を、第2パルス列に変換する。
【0041】
アップ/ダウンカウンタ55は、波形整形器54から、第1パルス列信号と第2パルス列信号とを受信する。アップ/ダウンカウンタ55は、第1パルス列信号の第1位相と第2パルス列信号の第2位相との間の位相関係から、移動鏡15の移動方向を特定する。また、ミラー位置検出部53は、アップ/ダウンカウンタ55によって得られる移動鏡15の移動方向とパルス列信号のパルス数とから、移動鏡15の位置を特定する。
【0042】
ミラー速度調整部56は、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または信号加算部52で得られる第1コントロール光検出器35の出力信号の周波数が一定となるように、ミラー駆動装置41を制御する。こうして、ミラー速度調整部56は、移動鏡15を、一定速度で移動させる。
【0043】
試料3のパワースペクトルの測定の際の、フーリエ変換赤外分光光度計1の動作を説明する。
【0044】
主干渉計6から出力される赤外干渉光11iは、試料3を通過するまたは試料3で反射される。赤外検出器19は、試料3を通過または試料3で反射される赤外干渉光11iを、インターフェログラムとして検出する。インターフェログラムは、移動鏡15の移動に伴って生成される。スペクトル作成器60は、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムから、試料3のパワースペクトルを作成する。
【0045】
具体的には、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または第2パルス列信号が、サンプルホールド部61に入力される。サンプルホールド部61は、第1パルス列信号または第2パルス列信号によって規定されるタイミングで、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムをサンプリングする。アナログデジタル変換部62は、サンプリングされたインターフェログラムをデジタル変換する。フーリエ変換演算部63は、デジタル変換されたインターフェログラムをフーリエ変換する。こうして、試料3のパワースペクトルが得られる。
【0046】
[変形例]
図5を参照して、本実施の形態の第1変形例のフーリエ変換赤外分光光度計1では、支持部材70は、柱71を含むが、マウント部72(
図2を参照)を含んでいない。スリット78は、柱71に設けられている。位相板27は、固定部材80を用いて、柱71に取り付けられている。支持部材70(柱71)は、例えば、位相板27の外周の一辺を支持している。位相板27の外周の残りの三辺は、支持部材70(柱71)から解放されている。支持部材70(柱71)は、例えば、位相板27の側縁部を支持している。押圧部材84は、位相板27の側縁部を押圧している。
【0047】
図6を参照して、本実施の形態の第2変形例のフーリエ変換赤外分光光度計1では、支持部材70は、本実施の形態の第1変形例の支持部材70(
図5を参照)と同様に構成されているが、柱71がL字の形状を有している点で、本実施の形態の第1変形例の支持部材70と異なっている。固定部材80は、ねじのような押圧部材85をさらに含む。位相板27は、固定部材80を用いて、柱71に取り付けられている。支持部材70(柱71)は、例えば、位相板27の外周の二辺を支持している。位相板27の外周の残りの二辺は、支持部材70(柱71)から解放されている。支持部材70(柱71)は、例えば、位相板27の側縁部と位相板27の上縁部とを支持している。押圧部材84は、位相板27の側縁部を押圧している。押圧部材85は、位相板27の上縁部を押圧している。
【0048】
図7を参照して、本実施の形態の第3変形例のフーリエ変換赤外分光光度計1では、位相板27は、筐体8の頂壁から吊り下げられている。具体的には、柱71は、筐体8の頂壁に取り付けられている。位相板27は、固定部材80を用いて、マウント部72(基台73)に取り付けられている。支持部材70(マウント部72)は、例えば、位相板27の外周の一辺を支持している。位相板27の外周の残りの三辺は、支持部材70(マウント部72)から解放されている。支持部材70(マウント部72)は、例えば、位相板27の上縁部を支持している。押圧部材84は、位相板27の上縁部を押圧している。
【0049】
第2コントロール光検出器36も、複数の光検出素子を含む複数分割フォトダイオードであってもよい。第2コントロール光検出器36が複数分割フォトダイオードである場合、信号加算部52は、第2コントロール光検出器36に含まれる複数の光検出素子の出力信号を加算して、第2コントロール光検出器36の第2出力信号を得る。ミラー位置検出部53は、信号加算部52から第2コントロール光検出器36の第2出力信号を受信する。位相板27は、八分の一波長板(λ/8板)に限られず、四分の一波長板(λ/4板)または半波長板(λ/2板)などであってもよい。
【0050】
[本実施の形態の作用]
本実施の形態の一実施例である
図1から
図4に示されるフーリエ変換赤外分光光度計1の作用を、比較例のフーリエ変換赤外分光光度計と比較しながら説明する。比較例のフーリエ変換赤外分光光度計は、実施例のフーリエ変換赤外分光光度計1の同様の構成を備えているが、以下の点で異なっている。
図9及び
図10を参照して、比較例では、マウント部72は、基台73と、基台73上に設けられているフレーム76とを含む。フレーム76には、開口76aが設けられている。位相板27の全ての外周は、紫外線硬化性接着剤のような接着剤88を用いて、マウント部72(フレーム76)に取り付けられている。すなわち、位相板27の全ての外周は、支持部材70(マウント部72)に拘束されている。
【0051】
図8は、実施例のフーリエ変換赤外分光光度計1を用いて取得されたバックグラウンドパワースペクトルの経時変化を示すグラフである。
図11は、比較例のフーリエ変換赤外分光光度計1を用いて取得されたバックグラウンドパワースペクトルの経時変化を示すグラフである。これらのグラフの横軸は測定を始めてからの時間を示し、これらのグラフの縦軸は、バックグラウンドの透過率を示す。これらのグラフにおいて、実線は、1000cm
-1の波数の赤外光に対するバックグラウンドの透過率の経時変化を示す。点線は、2050cm
-1の波数の赤外光に対するバックグラウンドの透過率の経時変化を示す。一点鎖線は、2850cm
-1の波数の赤外光に対するバックグラウンドの透過率の経時変化を示す。二点鎖線は、4020cm
-1の波数の赤外光に対するバックグラウンドの透過率の経時変化を示す。
【0052】
図8と
図11とを比較すると、実施例のフーリエ変換赤外分光光度計1は、比較例のフーリエ変換赤外分光光度計より、バックグラウンドパワースペクトルの経時変化が低減されていることが分かる。バックグラウンドパワースペクトルは、試料室4に試料3を配置しない場合に、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて得られるパワースペクトルを意味する。このように、本実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計1によって得られるバックグラウンドパワースペクトルの経時変化が、比較例のフーリエ変換赤外分光光度計によって得られるバックグラウンドパワースペクトルの経時変化より小さい理由は、以下のように考えられる。
【0053】
本実施の形態及び比較例では、支持部材70は、赤外光11によって照射される。位相板27は、赤外光11とコントロール光21とによって照射される。赤外光11とコントロール光21とは、支持部材70及び位相板27の熱源として作用する。また、赤外光源10が赤外光11を放射している間、赤外光源10において熱が発生する。コントロール光源20がコントロール光21を放射している間、コントロール光源20において熱が発生する。赤外光源10及びコントロール光源20で発生した熱は、筐体8を経由して、支持部材70に伝わる。
【0054】
比較例では、位相板27の全ての外周が支持部材70(フレーム76)に拘束されている。支持部材70の熱膨張係数は、位相板27の熱膨張係数と異なっている。位相板27は、支持部材70より柔らかい。そのため、支持部材70の熱膨張係数と位相板27の熱膨張係数との間の差に起因する熱応力は、位相板27に印加されやすい。位相板27のうち第1コントロール光21jが透過する領域に、熱応力が発生する。
【0055】
また、支持部材70の熱伝導率は、位相板27の熱伝導率より高い。また、支持部材70は、より大きな体積を有する筐体8に取り付けられている。支持部材70に伝わった熱は、筐体8に拡散されるため、支持部材70の温度は、位相板27より上昇しにくい。そして、比較例では、位相板27の全ての外周が支持部材70(フレーム76)に拘束されている。そのため、支持部材70(フレーム76)に近位する位相板27の周縁部の温度と、支持部材70(フレーム76)から遠位する位相板27の中央部の温度との間の差が増加する。位相板27内の不均一な温度分布に起因して、位相板27のうち第1コントロール光21jが透過する領域に、熱応力が発生する。
【0056】
これら熱応力は、位相板27のうちコントロール光21(第1コントロール光21j)が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布を変動させる。位相板27における物理厚さ及び屈折率分布の変動は、位相板27を透過したコントロール光21(第1コントロール光21j)の波面を歪ませる。コントロール光21の波面の歪みは、第1コントロール光検出器35(光検出素子35a,35b,35c,35d)の出力信号の位相及び第2コントロール光検出器36の出力信号の位相を乱す。そのため、コントロール光検出器34からの出力信号に基づいて計測される移動鏡15の速度及び固定鏡14または移動鏡15の向きに誤差が発生する。その結果、移動鏡15の速度及び固定鏡14または移動鏡15の向きを正確に設定することができなくなるとともに、移動鏡15の位置を正確に検出することができなくなる。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができなくなる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができなくなる。
【0057】
これに対し、本実施の形態では、位相板27の外周の解放領域は、支持部材70から解放されている。そのため、位相板27と支持部材70との間の熱伝導が低減する。支持部材70の熱膨張係数と位相板27の熱膨張係数との間の差に起因して位相板27のうちコントロール光21(第1コントロール光21j)が透過する領域に印加される熱応力は、減少する。また、支持部材70(フレーム76)に近位する位相板27の周縁部の温度と、支持部材70(フレーム76)から遠位する位相板27の中央部の温度との間の差が減少する。位相板27内の不均一な温度分布に起因して位相板27のうちコントロール光21(第1コントロール光21j)が透過する領域に発生する熱応力も、減少する。
【0058】
こうして、位相板27のうちコントロール光21(第1コントロール光21j)が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。位相板27を透過したコントロール光21(第1コントロール光21j)の波面の歪みが低減される。コントロール光検出器34からの出力信号に基づいて、移動鏡15の速度及び固定鏡14または移動鏡15の向きをより正確に設定することが可能になるとともに、移動鏡15の位置をより正確に検出することが可能になる。その結果、より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0059】
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0060】
(第1項)一態様に係るフーリエ変換赤外分光光度計は、主干渉計と、コントロール干渉計と、赤外検出器と、コントロール光検出器と、位相板と、支持部材とを備える。主干渉計は、赤外光を出射する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。コントロール干渉計は、コントロール光を出射するコントロール光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。赤外検出器は、主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または試料で反射される赤外干渉光を検出する。コントロール光検出器は、コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出する。位相板は、コントロール光の光路上であって、固定鏡または移動鏡とビームスプリッタとの間に配置されている。支持部材は、位相板を支持する。位相板の外周は、支持部材によって支持されている被支持領域と、支持部材から解放されている解放領域とを含む。
【0061】
そのため、位相板と支持部材との間の熱伝導が低減する。支持部材の熱膨張係数と位相板の熱膨張係数との間の差に起因して位相板のうちコントロール光が透過する領域に印加される熱応力は、減少する。また、支持部材に近位する位相板の周縁部の温度と、支持部材から遠位する位相板の中央部の温度との間の差が減少する。位相板内の不均一な温度分布に起因して位相板のうちコントロール光が透過する領域に発生する熱応力も、減少する。こうして、位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することが可能になるとともに、移動鏡の位置をより正確に検出することが可能になる。その結果、より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0062】
(第2項)第1項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、位相板の外周の解放領域は、位相板の外周長さの三分の一以上である。
【0063】
そのため、位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0064】
(第3項)第2項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、支持部材は、位相板の外周の一辺のみを支持している。
【0065】
そのため、位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0066】
(第4項)第1項から第3項のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計は、位相板を支持部材に取り付ける固定部材をさらに備える。支持部材には、スリットが設けられている。位相板は、スリットに挿入されている。固定部材は、弾性スペーサを含む。弾性スペーサは、スリットに挿入されており、かつ、支持部材と位相板との間に配置されている。
【0067】
弾性スペーサは、位相板に局所的に大きな機械的応力を印加することなく、位相板を支持部材に取り付けることを可能にする。そのため、位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0068】
(第5項)第4項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、弾性スペーサの第1熱伝導率は、位相板の第2熱伝導率の30%以下である。
【0069】
そのため、弾性スペーサは、位相板と支持部材との間の熱伝導を減少させる。位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0070】
(第6項)第4項または第5項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、固定部材は、弾性スペーサに接触する板と、板を弾性スペーサ及び位相板に向けて押圧する押圧部材とをさらに含む。
【0071】
そのため、位相板は、より均一に押圧され得る。位相板に局所的に大きな機械的応力が印加されることが防止され得る。そのため、位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0072】
(第7項)第1項から第6項のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計は、筐体をさらに備える。支持部材は、位相板が取り付けられるマウント部と、柱とを含む。柱はマウント部に接続されており、かつ、筐体に取り付けられている。赤外光の光軸の方向からの平面視において、柱はマウント部より狭い幅を有している。
【0073】
そのため、支持部材で遮断される赤外光が減少する。赤外干渉光の強度が増加する。柱の温度の上昇が抑制され得る。コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することが可能になるとともに、移動鏡の位置をより正確に検出することが可能になる。その結果、より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0074】
また、支持部材に照射される赤外光の光量が減少する。支持部材の温度上昇が低減される。位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0075】
(第8項)第1項から第6項のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計は、筐体をさらに備える。支持部材は、位相板が取り付けられる柱を含む。柱は、位相板より狭い幅を有しており、かつ、筐体に取り付けられている。
【0076】
そのため、支持部材で遮断される赤外光が減少する。赤外干渉光の強度が増加する。柱の温度の上昇が抑制され得る。コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することが可能になるとともに、移動鏡の位置をより正確に検出することが可能になる。その結果、より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0077】
また、支持部材に照射される赤外光の光量が減少する。支持部材の温度上昇が低減される。位相板のうちコントロール光が透過する領域の物理厚さ及び屈折率分布の変動が低減される。より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0078】
今回開示された実施の形態及びその変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 フーリエ変換赤外分光光度計、3 試料、4 試料室、6 主干渉計、7 コントロール干渉計、8 筐体、10 赤外光源、11 赤外光、11i 赤外干渉光、11j 第1赤外光、11k 第2赤外光、11p,21p 光軸、12 コリメート鏡、13 ビームスプリッタ、14 固定鏡、15 移動鏡、17,18 集光鏡、19 赤外検出器、20 コントロール光源、21 コントロール光、21i コントロール干渉光、21j 第1コントロール光、21k 第2コントロール光、21s 第1コントロール干渉光、21t 第2コントロール干渉光、22 コリメートレンズ、26,28 鏡、27 位相板、30 偏光ビームスプリッタ、31,32 透明ブロック、33 偏光分離膜、34 コントロール光検出器、35 第1コントロール光検出器、35a,35b,35c,35d 光検出素子、36 第2コントロール光検出器、40 ミラー角度調整器、41 ミラー駆動装置、41a ピストン、41b ボイスコイルモータ、50 コントローラ、51 ミラー角度調整部、52 信号加算部、53 ミラー位置検出部、54 波形整形器、55 ダウンカウンタ、56 ミラー速度調整部、60 スペクトル作成器、61 サンプルホールド部、62 アナログデジタル変換部、63 フーリエ変換演算部、70 支持部材、71 柱、72 マウント部、73 基台、74,76 フレーム、76a 開口、78 スリット、79 孔、80 固定部材、81 弾性スペーサ、82 板、84,85 押圧部材、88 接着剤。