(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 1/06 20060101AFI20240409BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01H1/06 M
H01H50/54 B
(21)【出願番号】P 2021040361
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-199107(JP,A)
【文献】特開2020-035562(JP,A)
【文献】特開2002-334644(JP,A)
【文献】特開2020-035561(JP,A)
【文献】特開2016-015297(JP,A)
【文献】特開昭61-093518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06 - 1/66
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
前記固定接点と第1方向に向かい合って配置された可動接点と、
前記可動接点に接続された可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記固定接点と前記可動接点との間で発生するアークに対して、前記第1方向と交差する第2方向へのローレンツ力を作用させるための磁界を発生させる磁石と、
前記固定接点が取り付けられる凹溝を含む固定端子と、
を備え、
前記凹溝は、前記第2方向に前記固定端子を貫通して延びて
おり、
前記固定端子は、前記固定接点を支持する支持面を含み、
前記凹溝は、前記支持面上に配置され、
前記固定接点は、前記支持面から突出している、
電磁継電器。
【請求項2】
固定接点と、
前記固定接点と第1方向に向かい合って配置された可動接点と、
前記可動接点に接続された可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記固定接点と前記可動接点との間で発生するアークに対して、前記第1方向と交差する第2方向へのローレンツ力を作用させるための磁界を発生させる磁石と、
前記固定接点が取り付けられる凹溝を含む固定端子と、
を備え、
前記凹溝は、前記第2方向に前記固定端子を貫通して延びて
おり、
前記凹溝は、
底面と、
前記底面から突出し、前記第1方向へ延びる第1内側面と、
前記第1内側面の反対側に配置され、前記底面から前記第1方向へ延びる第2内側面と、
前記第1内側面に沿って前記底面上に配置される第1溝と、
前記第2内側面に沿って前記底面上に配置される第2溝と、
を含む、
電磁継電器。
【請求項3】
前記固定端子は、円形の底面と、曲側面とを含む円柱状の形状を有し、
前記凹溝は、前記円形の底面上に配置され、前記曲側面まで延びている、
請求項1
又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記固定端子は、前記第1方向と前記第2方向とに交差する第3方向へ延びる直線状の板部を含み、
前記凹溝は、前記第2方向に前記直線状の板部を貫通して延びている、
請求項1
又は2に記載の電磁継電器。
【請求項5】
固定接点と、
前記固定接点と第1方向に向かい合って配置された可動接点と、
前記可動接点に接続された可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記固定接点と前記可動接点との間で発生するアークに対して、前記第1方向と交差する第2方向へのローレンツ力を作用させるための磁界を発生させる磁石と、
前記固定接点が取り付けられる凹溝を含む固定端子と、
を備え、
前記凹溝は、前記第2方向に前記固定端子を貫通して延びて
おり、
前記固定端子は、
前記第2方向へ延びる第1板部と、
前記第1板部から前記第1方向に延びる第2板部と、
前記第1板部から前記第1方向に延び、前記第2方向において前記第2板部から離れて配置される第3板部と、
を含み、
前記凹溝は、前記第2方向に前記第1板部を貫通して延びている、
電磁継電器。
【請求項6】
前記固定端子は、側面をさらに含み、
前記凹溝は、前記第2方向に前記側面まで延びており、
前記固定接点は、前記第2方向に前記側面まで延びている、
請求項1
から5のいずれかに記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記固定接点は、曲面状の角部を含む、
請求項1
から6のいずれかに記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記角部は、前記固定接点において前記第2方向における端に位置する、
請求項
7に記載の電磁継電器。
【請求項9】
前記固定端子は、曲面状の角部を含む、
請求項1から
8のいずれかに記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器では、固定端子の表面に、固定接点の位置決め用の凹部が設けられたものがある。例えば、特許文献1では、固定接点が、固定端子の表面上の凹部内に配置されている。固定接点は、固定端子の表面から突出している。
【0003】
一方、電磁継電器では、電流の遮断時に接点においてアークが発生する。そのため、電磁継電器には、アークを消弧するための磁石を備えるものがある。磁石によってアークにローレンツ力が作用することで、アークが引き延ばされ、それによりアークが迅速に消弧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定端子に凹部が設けられた電磁継電器では、固定接点の周囲に段差が存在する。そのため、アークが段差において膠着することで、アークを引き延ばし難くなってしまう。本発明は、電磁継電器において、固定端子でのアークの膠着を抑えて、アークを引き延ばし易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、固定接点と、可動接点と、可動接触片と、駆動装置と、磁石と、固定端子とを備える。可動接点は、固定接点と第1方向に向かい合って配置される。可動接触片は、可動接点に接続される。駆動装置は、可動接触片を第1方向に移動させる。磁石は、固定接点と可動接点との間で発生するアークに対して、第1方向と交差する第2方向へのローレンツ力を作用させるための磁界を発生させる。固定端子は、固定接点が取り付けられる凹溝を含む。凹溝は、第2方向に固定端子を貫通して延びている。
【0007】
本態様に係る電磁継電器では、ローレンツ力は、第2方向に作用し、凹溝は第2方向に固定端子を貫通して延びている。そのため、アークは、凹溝に沿って移動する。それにより、固定端子でのアークの膠着が抑えられ、アークが容易に引き延ばされる。
【0008】
固定端子は、側面をさらに含んでもよい。凹溝は、第2方向に側面まで延びていてもよい。固定接点は、第2方向に側面まで延びていてもよい。この場合、凹溝に沿ってアークを固定端子の側面まで容易に移動させることができる。
【0009】
固定接点は、曲面状の角部を含んでもよい。この場合、固定接点の角部においてアークの引き延ばしが促進される。角部は、固定接点において第2方向における端に位置してもよい。この場合、固定接点の角部においてアークの引き延ばしが、さらに促進される。固定端子は、曲面状の角部を含んでもよい。この場合、固定端子の角部においてアークの引き延ばしが促進される。
【0010】
凹溝は、底面と、第1内側面と、第2内側面と、第1溝と、第2溝とを含んでもよい。第1内側面は、底面から突出し、第1方向へ延びていてもよい。第2内側面は、第1内側面の反対側に配置され、底面から第1方向へ延びていてもよい。第1溝は、第1内側面に沿って底面上に配置されてもよい。第2溝は、第2内側面に沿って底面上に配置されてもよい。この場合、第1内側面と底面との間、及び第2内側面と底面との間に、加工によるR形状が存在しても、第1溝と第2溝とによって、R形状を避けて、固定接点を底面に接触させることができる。それにより、固定接点が安定的に凹溝に取り付けられる。
【0011】
固定端子は、固定接点を支持する支持面を含んでもよい。凹溝は、支持面上に配置されてもよい。固定接点は、支持面から突出していてもよい。この場合、固定接点が安定的に可動接点に接触する。また、固定接点と支持面との間に段差が生じるが、凹溝に沿ってアークが移動することで、段差でのアークの膠着が抑えられる。
【0012】
固定端子は、第1板部と、第2板部と、第3板部とを含んでもよい。第1板部は、第2方向へ延びていてもよい。第2板部は、第1板部から第1方向に延びていてもよい。第3板部は、第1板部から第1方向に延びていてもよい。第3板部は、第2方向において第2板部から離れて配置されてもよい。凹溝は、第2方向に第1板部を貫通して延びていてもよい。この場合、U字型の固定端子において、アークの膠着が抑えられ、アークが引き延ばし易くなる。
【0013】
固定端子は、円形の底面と、曲側面とを含む円柱状の形状を有してもよい。凹溝は、円形の底面上に配置され、曲側面まで延びていてもよい。この場合、円柱状の固定端子において、アークの膠着が抑えられ、アークが引き延ばし易くなる。
【0014】
固定端子は、直線状の板部を含んでもよい。直線状の板部は、第1方向と第2方向とに交差する第3方向へ延びていてもよい。凹溝は、第2方向に、直線状の板部を貫通して延びていてもよい。この場合、直線状の板部を含む固定端子において、アークの膠着が抑えられ、アークが引き延ばし易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電磁継電器において、固定端子でのアークの膠着が抑えられ、アークが引き延ばし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】第1変形例に係る電磁継電器を示す図である。
【
図6】第2変形例に係る第1固定端子と第1固定接点とを示す図である。
【
図7】第3変形例に係る第1固定端子と第1固定接点とを示す図である。
【
図8】第4変形例に係る第1固定端子と第1固定接点とを示す図である。
【
図9】第5変形例に係る第1固定端子と第1固定接点とを示す図である。
【
図10】第6変形例に係る第1固定端子と第1固定接点とを示す図である。
【
図11】第7変形例に係る第1固定端子と第1固定接点とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る電磁継電器について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る電磁継電器1の断面図である。
図1に示すように、電磁継電器1は、ケース2と、接点装置3と、駆動装置4とを備えている。ケース2は、樹脂、或いはセラミックなどの絶縁材で形成されている。ケース2内には、接点装置3が収容されている。
【0018】
接点装置3は、第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8と、可動機構9と、第1固定接点10と、第2固定接点11と、第1可動接点12と、第2可動接点13とを含む。
【0019】
なお、以下の説明において、第1固定接点10と第1可動接点12とが互いに向かい合う方向が、上下方向(Z1,Z2)と定義される。上下方向(Z1,Z2)は、第1方向の一例である。上下方向(Z1,Z2)は、上方(Z1)と下方(Z2)とを含む。第1可動接点12から第1固定接点10に向かう方向が上方(Z1)と定義される。第1固定接点10から第1可動接点12に向かう方向が下方(Z2)と定義される。
【0020】
可動接触片8が延びる方向が、長手方向(X1,X2)と定義される。長手方向(X1,X2)は、上下方向(Z1,Z2)に対して垂直な方向である。長手方向(X1,X2)は、第3方向の一例である。長手方向(X1,X2)は、第1長手方向(X1)と第2長手方向(X2)とを含む。第2長手方向(X2)は、第1長手方向(X1)と反対の方向である。第2固定接点11から第1固定接点10へ向かう方向が第1長手方向(X1)と定義される。第1固定接点10から第2固定接点11へ向かう方向が第2長手方向(X2)と定義される。
【0021】
第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8と、第1固定接点10と、第2固定接点11と、第1可動接点12と、第2可動接点13とは、導電性を有する材料で形成されている。例えば、第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8とは、リン青銅、ベリリウム銅、黄銅、或いはタフピッチ銅などの端子材として公知の金属材料製である。ただし、第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8とは、これらと異なる材料製であってもよい。第1固定接点10と、第2固定接点11と、第1可動接点12と、第2可動接点13とは、銅系金属、或いは銀系金属などの接点材として公知の金属材料製である。
【0022】
第1固定端子6と第2固定端子7とは、上下方向(Z1,Z2)に延びている。第1固定端子6と第2固定端子7とは、例えば、円筒状の形状を有している。第1固定端子6と第2固定端子7とは、長手方向(X1,X2)に互いに間隔を隔てて配置されている。第1固定端子6には、第1固定接点10が接続されている。第2固定端子7には、第2固定接点11が接続されている。第1固定接点10と第2固定接点11とは、ケース2内に配置されている。
【0023】
可動接触片8と第1可動接点12と第2可動接点13とは、ケース2内に配置されている。第1可動接点12と第2可動接点13とは、可動接触片8に接続されている。第1可動接点12は、第1固定接点10に向かい合っている。第1可動接点12は、第1固定接点10に接触及び開離可能である。第2可動接点13は、第2固定接点11に向かい合っている。第2可動接点13は、第2固定接点11に接触及び開離可能である。第1可動接点12は、第2可動接点13と長手方向(X1,X2)に間隔を隔てて配置されている。
【0024】
可動接触片8は、上下方向(Z1,Z2)に移動可能である。可動接触片8は、
図1に示す開位置と、
図2に示す閉位置とに移動可能である。
図1に示すように、可動接触片8が開位置で、可動接点12,13は、固定接点10,11から離れている。
図2に示すように、可動接触片8が閉位置で、可動接点12,13は、固定接点10,11に接触している。以下、可動接点12,13が、固定接点10,11に近づく方向が接触方向と定義される。可動接点12,13が、固定接点10,11から離れる方向が開離方向と定義される。
【0025】
可動機構9は、可動接触片8を支持する。可動機構9は、駆動軸15と接点バネ16とを含む。駆動軸15は、可動接触片8に連結される。駆動軸15は、上下方向(Z1,Z2)に延びており、可動接触片8を上下方向(Z1,Z2)に貫通している。駆動軸15は、上下方向(Z1,Z2)に移動可能に設けられる。接点バネ16は、可動接触片8を接触方向へ向けて付勢する。
【0026】
駆動装置4は、コイル21と、スプール22と、可動鉄心23と、固定鉄心24と、ヨーク25と、復帰バネ26とを含む。駆動装置4は、電磁力によって、可動機構9を介して、可動接触片8を開位置と閉位置とに移動させる。コイル21は、スプール22に巻回されている。可動鉄心23と、固定鉄心24とは、スプール22内に配置されている。可動鉄心23は、駆動軸15に接続されている。可動鉄心23は、上下方向(Z1,Z2)に移動可能である。固定鉄心24は、可動鉄心23と向かい合って配置されている。復帰バネ26は、可動鉄心23を開離方向に付勢している。
【0027】
電磁継電器1では、コイル21が通電されると、コイル21から発生する磁界による磁力によって、可動鉄心23が固定鉄心24に吸引される。それにより、可動鉄心23と駆動軸15とが、復帰バネ26の付勢力に抗して、接触方向に移動する。それにより、可動接触片8が、
図2に示す閉位置へ移動し、可動接点12,13が固定接点10,11に接触する。なお、可動接点12,13が固定接点10,11に接触した後、駆動軸15がさらに接触方向へ移動することによって、接点バネ16が圧縮される。
【0028】
コイル21への通電がオフにされると、可動鉄心23と駆動軸15とが、復帰バネ26の付勢力によって、開離方向へ移動する。それにより、可動接触片8が
図1に示す開位置へ移動し、可動接点12,13が固定接点10,11から離れる。
【0029】
電磁継電器1は、磁石41,42を備えている。磁石41,42は、第1固定接点10と第1可動接点12との間と、第2固定接点11と第2可動接点13との間とで発生するアークを引き延ばすための磁界を発生させる。磁石41,42は、長手方向(X1,X2)において、第1固定端子6と第2固定端子7との外側に配置される。
【0030】
磁石41,42は、第1磁石41と第2磁石42とを含む。第1磁石41と第2磁石42とは、永久磁石である。第1磁石41と第2磁石42とは、ケース2の周囲に配置される。ただし、第1磁石41と第2磁石42とは、ケース2内に配置されてもよい。第1磁石41は、第1固定端子6に対して第1長手方向(X1)に配置されている。第2磁石42は、第2固定端子7に対して第2長手方向(X2)に配置されている。
【0031】
図3は、
図1におけるIII-III断面図である。以下、長手方向(X1,X2)及び上下方向(Z1,Z2)に垂直な方向が、横方向(Y1,Y2)と定義される。横方向(Y1,Y2)は、第2方向の一例である。また、横方向(Y1,Y2)のうちの一方が、第1横方向(Y1)と定義され、第1横方向(Y1)と反対の方向が第2横方向(Y2)と定義される。
【0032】
第1磁石41と第2磁石42とは、ケース2内に磁界を発生させる。
図3において二点鎖線で示される矢印A1は、第1磁石41及び第2磁石42によって生じる磁界を示している。第1磁石41と第2磁石42とは、互いに異なる極が向かい合って配置されている。例えば、第1磁石41のN極が、第2磁石42のS極と向かい合っている。
【0033】
電流が第1固定端子6から可動接触片8を通り第2固定端子7へ流れる場合、
図3に示すように、第1磁石41からの磁界によって、第1固定接点10と第1可動接点12とに生じるアークに、第1ローレンツ力F1が作用する。第1ローレンツ力F1は、第1横方向(Y1)に作用する。それにより、アークが、第1ローレンツ力F1の方向に引き延ばされる。また、第2磁石42からの磁界によって、第2固定接点11と第2可動接点13とに生じるアークに、第2ローレンツ力F2が作用する。第2ローレンツ力F2は、第2横方向(Y2)に作用する。それにより、アークが、第2ローレンツ力F2の方向に引き延ばされる。
【0034】
電流が上記とは逆に、第2固定端子7から可動接触片8を通り第1固定端子6へ流れる場合、第1磁石41からの磁界によって、第1固定接点10と第1可動接点12とに生じるアークに、第1ローレンツ力F1’が作用する。第1ローレンツ力F1’は、第2横方向(Y2)に作用する。それにより、アークが、第1ローレンツ力F1’の方向に引き延ばされる。また、第2磁石42からの磁界によって、第2固定接点11と第2可動接点13とに生じるアークに、第2ローレンツ力F2’が作用する。第2ローレンツ力F2’は、第1横方向(Y1)に作用する。それにより、アークが、第2ローレンツ力F2’の方向に引き延ばされる。
【0035】
図4は、第1固定端子6の斜視図である。
図4に示すように、第1固定端子6は、U字状の形状を有している。詳細には、第1固定端子6は、第1板部31と、第2板部32と、第3板部33とを含む。第1板部31は、横方向(Y1,Y2)へ延びている。第2板部32と第3板部33とは、第1板部31から上下方向(Z1,Z2)に延びている。第2板部32と第3板部33とは、横方向(Y1,Y2)に互いに離れて配置されている。第1固定端子6は、第1凹溝34を含む。第1凹溝34は、第1板部上に設けられている。第1固定
接点10は、第1凹溝34内に配置される。第1固定
接点10は、溶接、或いはカシメなどの固定手段によって、第1凹溝34に取り付けられる。
【0036】
第1凹溝34は、横方向(Y1,Y2)に、第1固定端子6を貫通して延びている。第1凹溝34は、横方向(Y1,Y2)に、第1板部31を貫通して延びている。第1固定端子6は、第1側面35と第2側面36とを含む。第1側面35は、横方向(Y1,Y2)における第1固定端子6の一方の側面であり、第2側面36は、横方向(Y1,Y2)における第1固定端子6の他方の側面である。第1凹溝34は、横方向(Y1,Y2)に第1側面35から第2側面36まで延びている。第1固定接点10は、横方向(Y1,Y2)に第1側面35から第2側面36まで延びている。第1固定接点10は、第1側面35と面一に配置されている。第1固定接点10は、第2側面36と面一に配置されている。
【0037】
第1凹溝34は、底面37と、第1内側面38と、第2内側面39とを含む、第1内側面38と第2内側面39とは、底面37から突出している。第1内側面38と第2内側面39とは、上下方向(Z1,Z2)へ延びている。第2内側面39は、長手方向(X1,X2)において、第1側面35の反対側に配置されている。第1固定端子6は、第1固定接点10を支持する支持面40を含む。支持面40は、第1板部31の表面である。第1凹溝34は、支持面40上に配置されている。第1固定接点10は、支持面40から上下方向(Z1,Z2)に突出している。
【0038】
図3に示すように、第2固定端子7は、第2凹溝43を含む。第2固定接点11は、第2凹溝43内に配置され、第2凹溝43に固定されている。第2凹溝43は、横方向(Y1,Y2)に第2固定接点11を貫通して延びている。第2凹溝43は、第1凹溝34と同様の形状を有している。第2固定端子7は、第1固定端子6と同様の形状を有しており、詳細な説明を省略する。
【0039】
以上説明した本実施形態に係る電磁継電器1では、ローレンツ力F1,F1’F2,F2’は、横方向(Y1,Y2)に作用し、第1凹溝34は横方向(Y1,Y2)に、第1固定端子6を貫通して延びている。そのため、アークは、第1凹溝34に沿って移動する。それにより、第1固定端子6でのアークの膠着が抑えられ、アークが容易に引き延ばされる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
駆動装置4の構造は、上記の実施形態のものに限らず変更されてもよい。例えば、上記の実施形態では、駆動装置4は、接点装置3の下方(Z2)に配置されている。しかし、駆動装置4は、接点装置3に対して、長手方向(X1,X2)、或いは横方向(Y1,Y2)に配置されておよい。上記の実施形態では、接触方向は上方(Z1)であり、開離方向は下方(Z2)である。しかし、接触方向は下方(Z2)であり、開離方向は上方(Z1)であってもよい。
【0042】
接点装置3の構造は、上記の実施形態のものに限らず変更されてもよい。例えば、固定接点と可動接点との数は2つに限らず、1つであってもよく、或いは2つより多くてもよい。第1固定接点10は、第1固定端子6と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。第2固定接点11は、第2固定端子7と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。第1可動接点12は、可動接触片8と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。第2可動接点13は、可動接触片8と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。
【0043】
磁石の配置は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、第1磁石41と第2磁石42とは、同じ極同士が向かい合うように配置されてもよい。例えば、第1磁石41のS極と第2磁石42のS極とが、互いに向かい合うように配置されてもよい。
【0044】
図5は、第1変形例に係る電磁継電器1を示す図である。
図5に示すように、第1磁石41と第2磁石42とは、横方向(Y1,Y2)に互いに向かい合って配置されてもよい。
図5において、矢印A3,A4は、第1磁石41と第2磁石42とによって生じる磁界を示している。第1磁石41と第2磁石42とは、互いに異なる極が向かい合って配置されてもよい。例えば、第1磁石41のN極が、第2磁石42のS極と向かい合ってもよい。
【0045】
この場合、電流が第1固定端子6から可動接触片8を通り第2固定端子7へ流れると、第1固定接点10と第1可動接点12とに生じるアークに、第1ローレンツ力F1が作用する。第1ローレンツ力F1は、第2長手方向(X2)に作用する。それにより、アークが、第1ローレンツ力F1の方向に引き延ばされる。第2固定接点11と第2可動接点13とに生じるアークに、第2ローレンツ力F2が作用する。第2ローレンツ力F2は、第1長手方向(X1)に作用する。それにより、アークが、第2ローレンツ力F2の方向に引き延ばされる。
【0046】
電流が上記とは逆に、第2固定端子7から可動接触片8を通り第1固定端子6へ流れる場合、第1固定接点10と第1可動接点12とに生じるアークに、第1ローレンツ力F1’が作用する。第1ローレンツ力F1’は、第1長手方向(X1)に作用する。それにより、アークが、第1ローレンツ力F1’の方向に引き延ばされる。第2固定接点11と第2可動接点13とに生じるアークに、第2ローレンツ力F2’が作用する。第2ローレンツ力F2’は、第2長手方向(X2)に作用する。それにより、アークが、第2ローレンツ力F2’の方向に引き延ばされる。
【0047】
第1変形例では、ローレンツ力F1,F1’F2,F2’は、長手方向(X1,X2)に作用する。従って、第1変形例では、長手方向(X1,X2)が、第2方向に相当する。第1凹溝34は、長手方向(X1,X2)に、第1固定端子6を貫通して延びていてもよい。第2凹溝43は、長手方向(X1,X2)に、第2固定端子7を貫通して延びていてもよい。第1変形例の他の構造については、上述した実施形態と同様である。なお、第1磁石41と第2磁石42とは、同じ極同士が向かい合って配置されてもよい。
【0048】
図6は、第2変形例に係る第1固定端子6と第1固定接点10とを示す図である。
図6に示すように、第1固定接点10は、第1角部51と第2角部52とを含んでもよい。第1角部51は、第1固定接点10において横方向(Y1,Y2)における一方の端に位置する。第2角部52は、第1固定接点10において横方向(Y1,Y2)における他方の端に位置する。第1角部51は、曲面状の形状を有してもよい。第2角部52は、曲面状の形状を有してもよい。この場合、第1角部51及び第2角部52において、アークの引き延ばしが促進される。
【0049】
曲面状の第1角部は、第1固定接点10において長手方向(X1,X2)における一方の端に位置してもよい。曲面状の第2角部は、第1固定接点10において長手方向(X1,X2)における他方の端に位置してもよい。
【0050】
図7は、第3変形例に係る第1固定端子6と第1固定接点10とを示す図である。
図7に示すように、第1固定端子6は、第1角部53と第2角部54とを含んでもよい。第1角部53は、第1固定端子6において横方向(Y1,Y2)における一方の端に位置する。第2角部54は、第1固定接点10において横方向(Y1,Y2)における他方の端に位置する。第1角部53は、曲面状の形状を有してもよい。第2角部54は、曲面状の形状を有してもよい。この場合、第1角部53及び第2角部54において、アークの引き延ばしが促進される。
【0051】
曲面状の第1角部は、第1固定接点10において長手方向(X1,X2)における一方の端に位置してもよい。曲面状の第2角部は、第1固定接点10において長手方向(X1,X2)における他方の端に位置してもよい。
【0052】
図8は、第4変形例に係る第1固定端子6と第1固定接点10とを示す図である。
図8に示すように、第1凹溝34は、第1溝55と第2溝56とを含んでもよい。第1溝55は、第1内側面38に沿って底面37上に配置される。第2溝56は、第2内側面39に沿って底面37上に配置される。底面37は、第1溝55と第2溝56との間で平坦な形状を有する。第1固定接点10は、平坦な底面57を含む。第1固定接点10の底面57は、第1凹溝34の底面37に接触している。
【0053】
この場合、第1内側面38と底面37との間、及び第2内側面39と底面37との間に、加工によるR形状が存在しても、第1溝55と第2溝56とによって、R形状を避けて、第1固定接点10の底面57を、第1凹溝34の底面37に接触させることができる。それにより、第1固定接点10が安定的に第1凹溝34に取り付けられる。また、第1固定接点10が第1凹溝34に溶接により固定される場合、余分なロウ材が第1溝55と第2溝56とに入り込む。それにより、第1固定接点10の高さを安定させることができる。
【0054】
図9は、第5変形例に係る第1固定端子6と第1固定接点10とを示す図である。
図9に示すように、第1固定端子6は、円柱状の形状を有してもよい。第1固定端子6は、円形の底面58と、曲側面59とを含んでもよい。第1凹溝34は、円形の底面58上に配置されてもよい。第1凹溝34は、曲側面59まで延びていてもよい。
【0055】
図10は、第6変形例に係る第1固定端子6と第1固定接点10とを示す図である。
図10に示すように、第1固定端子6は、直線状の板部61を含んでもよい。直線状の板部61は、長手方向(X1,X2)へ延びていてもよい。第1凹溝34は、横方向(Y1,Y2)に、直線状の板部61を貫通して延びていてもよい。第1固定端子6は、
図10に示すように、L字型に屈曲した形状を有してもよい。或いは、第1固定端子6は、長手方向(X1,X2)に一直線状に延びた形状を有してもよい。
【0056】
上記の実施形態では、第1固定接点10は、第1固定端子6の第1側面35及び第2側面36と面一に配置されている。しかし、第1固定接点10は、第1固定端子6の第1側面35及び第2側面36と面一に配置されなくてもよい。
【0057】
図11は、第7変形例に係る第1固定端子6と第1固定接点10とを示す図である。
図11に示すように、第1固定接点10、横方向(Y1,Y2)において第1凹溝34よりも短くてもよい。第1固定接点10は、第1端面62と第2端面63とを含む。第1端面62と第2端面63とは、横方向(Y1,Y2)を向いている。第1端面62は、横方向(Y1,Y2)において、第1側面35よりも内側に位置してもよい。第2端面63は、横方向(Y1,Y2)において、第2側面36よりも内側に位置してもよい。
【0058】
上記の変形例では、第1固定端子6と第1固定接点10について説明したが、第2固定端子7も、上記の変形例に係る第1固定端子6と同様の形状を有してもよい。第2固定接点11も、上記の変形例に係る第1固定接点10と同様の形状を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、電磁継電器において、固定端子でのアークの膠着を抑えて、アークを引き延ばし易くすることができる。
【符号の説明】
【0060】
4:駆動装置, 6:第1固定端子, 8:可動接触片, 10:第1固定接点, 12:第1可動接点, 31:第1板部, 32:第2板部, 33:第3板部, 34:第1凹溝, 35:第1側面, 37:底面, 38:第1内側面, 39:第2内側面, 40:支持面, 41第1磁石, 51:第1角部, 53:第1角部, 55:第1溝, 56:第2溝, 58:円形の底面, 59:曲側面, 61:直線状の板部