(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240409BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240409BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240409BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240409BHJP
H01M 8/04492 20160101ALI20240409BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240409BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/04492
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021042657
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴史
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-227159(JP,A)
【文献】特開2016-126827(JP,A)
【文献】特開2011-113647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池セル(C)が複数積層された燃料電池(10)と、
前記燃料電池の乾湿状態を検知する乾湿検知部(100a)と、
前記燃料電池の運転を制御する運転制御部(100b)と、を備え、
前記乾湿検知部は、前記燃料電池が高温および高負荷となる運転条件が成立すると、前記燃料電池の温度よりも前記燃料電池の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量に基づいて前記燃料電池が理想の前記乾湿状態から乖離した乖離状態であるか否かを判定し、
前記運転制御部は、前記乖離状態が検知された際に、前記乾湿状態を回復するリセット運転を行
い、その後、前記燃料電池の前記乾湿状態が回復された否かを判定する回復条件が成立するまで前記リセット運転を継続するようになっており、
前記運転条件は、前記燃料電池を流れる電流が基準電流以上となり、且つ、前記燃料電池の温度が基準温度以上となる際に成立する条件であり、
前記乾湿検知部は、前記運転条件が成立した際の前記物理量をメモリに記憶しておき、前記メモリに記憶された前記物理量に対する前記物理量の変化量に基づいて前記回復条件の成否を判定する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記物理量は、前記燃料電池の電圧および前記燃料電池のインピーダンスの少なくとも1つが含まれている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記乾湿検知部は、前記燃料電池セルの面内における特定箇所での前記物理量に基づいて前記乖離状態であるか否かを判定する、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池の発電に理論上必要とされる酸化剤ガスの量に対する前記燃料電池に供給する酸化剤ガスの量との比をエアストイキ比とし、前記燃料電池の内部における酸化剤ガスの圧力をエア圧力としたとき、
前記リセット運転は、前記エアストイキ比の低下および前記エア圧力の増加のうち少なくとも一方を行う運転である、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記リセット運転は、前記エア圧力を増加させた後、所定の条件が成立すると、前記エアストイキ比の低下を行う運転である、請求項
4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記リセット運転は、前記エアストイキ比の低下を行った後、所定の条件が成立すると、前記エア圧力を増加させる運転である、請求項
4に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記リセット運転は、前記エアストイキ比および前記エア圧力の少なくとも一方を連続的に変化させる徐変運転である、請求項
4に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記リセット運転では、前記燃料電池の出力電圧の低下が抑制されるように、前記出力電圧に基づいて、前記エアストイキ比および前記エア圧力の少なくとも一方の変化量が制御される、請求項
4ないし
7のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部(32)を備え、
前記リセット運転では、前記酸化剤ガス供給部の負荷増大が抑制されるように、前記酸化剤ガス供給部の負荷に基づいて、前記エアストイキ比および前記エア圧力の少なくとも一方の変化量が制御される、請求項
4ないし
7のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部(32)を備え、
前記リセット運転では、前記燃料電池の発電電力から前記燃料電池の運転で消費される消費電力を除いた総合電力の低下、または、前記燃料電池の運転で生ずる発熱量の増大が抑制されるように、前記総合電力または前記発熱量に基づいて、前記エアストイキ比および前記エア圧力の少なくとも一方の変化量が制御される、請求項
4ないし
7のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記運転制御部は、前記リセット運転を行った後は、前記リセット運転と前記リセット運転を行う前の通常運転とを交互に繰り返す、請求項1ないし
10のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記運転制御部は、前記リセット運転を行った後、
前記回復条件が成立すると、前記リセット運転から前記リセット運転を行う前の通常運転に切り替える、請求項1ないし
10のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記運転条件が成立した際の前記物理量を初期値としたとき、
前記回復条件は、前記リセット運転を行っている際の前記物理量が前記初期値以下になった際に成立する条件になっている、請求項
12に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池セルが複数積層された燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池の乾燥を抑制するために、燃料電池の温度が所定の基準温度を超える場合に、カソードガスの背圧が高くなるように背圧調圧弁を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料電池の乾燥は、燃料電池の温度変化よりも遅れて発現する。このため、従来技術の如く、燃料電池の温度に応じてカソードガスの背圧を調整すると、燃料電池が乾燥していない状態で燃料電池の乾燥を抑制することになり、システムの性能が低下してしまう。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0005】
本開示は、燃料電池の乾湿状態を精度よく検知して、システムの性能向上を図ることが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
燃料電池システムであって、
燃料電池セル(C)が複数積層された燃料電池(10)と、
燃料電池の乾湿状態を検知する乾湿検知部(100a)と、
燃料電池の運転を制御する運転制御部(100b)と、を備え、
乾湿検知部は、燃料電池が高温および高負荷となる運転条件が成立すると、燃料電池の温度よりも燃料電池の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量に基づいて燃料電池が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であるか否かを判定し、
運転制御部は、乖離状態が検知された際に、乖離状態を回復するリセット運転を行い、その後、燃料電池の乾湿状態が回復された否かを判定する回復条件が成立するまでリセット運転を継続するようになっており、
運転条件は、燃料電池を流れる電流が基準電流以上となり、且つ、燃料電池の温度が基準温度以上となる際に成立する条件であり、
乾湿検知部は、運転条件が成立した際の物理量をメモリに記憶しておき、メモリに記憶された物理量に対する物理量の変化量に基づいて回復条件の成否を判定する。
【0007】
燃料電池が高温かつ高負荷となる際に燃料電池の乾燥が生ずる傾向がある。つまり、燃料電池が高温かつ高負荷となる運転条件が成立した際に、燃料電池が理想の乾湿状態から乖離し易い。このため、燃料電池が高温かつ高負荷となる運転条件が成立した際に、燃料電池の乾湿状態を判定することが望ましい。これによれば、燃料電池の乾湿状態が乖離状態であるか否かを精度よく検知することができる。加えて、燃料電池の温度よりも燃料電池の乾燥および湿潤に相関性がある高い物理量に基づいて燃料電池の乾湿状態を判定するので、燃料電池の温度に基づいて乾湿状態を判定する場合に比べて、燃料電池の乾湿状態を精度よく検知することができる。これにより、適切なタイミングでリセット運転を行うことが可能となる。したがって、燃料電池の乾湿状態を精度よく検知して、システムの性能向上を図ることができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【
図2】燃料電池システムの制御装置を示す模式的なブロック図である。
【
図3】第1実施形態の制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の制御装置が実行する乾燥診断処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の制御装置が実行する回復診断処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係る燃料電池システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】第1実施形態の第1比較例となる燃料電池システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】第1実施形態の第2比較例となる燃料電池システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】第2実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】第4実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第5実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第6実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】第7実施形態の制御装置が実行するリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】第8実施形態の制御装置が実行する乾燥診断処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】第8実施形態の制御装置が実行する回復診断処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。本実施形態では、本開示の燃料電池システム1を、燃料電池10にて車両走行用のモータへ供給する電力を得る車両FCVに適応した例について説明する。FCVは、Fuel Cell Vehicleの略称である。
【0012】
燃料電池システム1は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生させる燃料電池10を備えている。燃料電池10は、インバータINV等の電力変換機器11に電力を供給する。インバータINVは、燃料電池10から供給された直流電流を交流電流に変換して走行用モータ等の負荷機器12に供給して当該負荷機器12を駆動する。
【0013】
図示しないが、燃料電池10には、電力を蓄積する蓄電装置が接続されている。燃料電池システム1は、燃料電池10から出力される電力のうち余剰となる電力が蓄電装置に蓄積されるように構成されている。
【0014】
燃料電池10は、最小単位となる燃料電池セルCが複数積層されたセルスタックCSとして構成されている。燃料電池セルCは、燃料電池セルCの積層方向に直交する方向に拡がるセル面を有する。燃料電池セルCのセル面における発電に寄与する発電面が「燃料電池セルCの面内」に相当する。
【0015】
燃料電池セルCは、電解質膜、触媒、ガス拡散層、セパレータを有する固体高分子電解質型のセル(いわゆる、PEFC)で構成されている。燃料電池セルCは、電解質膜が触媒、ガス拡散層、セパレータで挟持されている。燃料電池セルCは、アノード電極側に水素が供給され、カソード電極側に酸素が供給されると、以下の反応式F1、F2に示す電気化学反応が起きて電気エネルギが発生する。
・アノード電極側:H2→2H++2e-・・・(F1)
・カソード電極側:2H++1/2O2+2e-→H2O・・・(F2)
上記の電気化学反応が起きるためには、燃料電池セルCの電解質膜は、水を含んだ湿潤状態になっている必要がある。燃料電池システム1は、燃料電池10の内部の電解質膜を加湿する。電解質膜の加湿は、燃料ガスである水素または酸化剤ガスである空気の供給経路に加湿装置等を配置することで実現可能である。
【0016】
燃料電池10は、上記の電気化学反応により発熱する。そして、燃料電池10は、発電効率向上、電解質膜の劣化抑制等の関係で、その作動温度を80℃程度に維持する必要がある。
【0017】
燃料電池システム1は、燃料電池10の温度を適温に調整するための冷却水回路20を備える。冷却水回路20は、ラジエータ21および水ポンプ22が設けられている。ラジエータ21は、燃料電池10の熱によって昇温した冷却水を外気と熱交換させて放熱させる放熱器である。
【0018】
燃料電池システム1は、燃料電池10に向けて酸素を含む空気を供給するための空気供給経路30が設けられている。空気供給経路30には、最上流部にエアフィルタ31が設けられ、エアフィルタ31の下流にエアポンプ32が設けられている。エアポンプ32は、燃料電池10に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部を構成する。エアポンプ32は、後述の制御装置100からの制御信号に基づいて、燃料電池10への空気の供給能力が制御される。
【0019】
エアポンプ32と燃料電池10との間には、インタクーラ33が配置されている。インタクーラ33は、エアポンプ32で加圧された空気を燃料電池10のオフガスまたは冷却水と熱交換させて冷却する。
【0020】
燃料電池システム1は、燃料電池10から排出される空気のオフガス(すなわち、オフ空気)を図示しないマフラに流すための空気排出経路34が設けられている。空気排出経路34には、エアバルブ35が設けられている。エアバルブ35は、燃料電池10の内部のエア圧力を調整する調整弁である。
【0021】
燃料電池システム1は、燃料電池10をバイパスして空気供給経路30を流れる空気の一部を空気排出経路34に流すバイパス経路36が設けられている。バイパス経路36は、後述の燃料排出経路を介してマフラから排気するオフ燃料中の水素濃度を低下させるために設けられている。
【0022】
バイパス経路36は、一端側が空気供給経路30におけるインタクーラ33と燃料電池10との間に接続され、他端側が空気排出経路34におけるエアバルブ35の下流に接続されている。バイパス経路36は、空気供給経路30との接続部に三方弁37が設けられている。三方弁37は、バイパス経路36に流す空気の流量を調整する流量調整弁である。
【0023】
燃料電池システム1には、燃料電池10に向けて水素を供給するための水素供給経路40が設けられている。水素供給経路40には、図示しないが、最上流部に高圧水素タンクが設けられ、高圧水素タンクの下流に燃料バルブが設けられている。
【0024】
燃料電池システム1は、燃料電池10から排出される水素のオフガス(すなわち、オフ燃料)を図示しないマフラに流すための水素排出経路41が設けられている。水素排出経路41には、図示しないが、排気バルブが設けられている。水素排出経路41の下流側は、空気排出経路34に接続されている。これにより、水素排出経路41を流れるオフ燃料は、オフ空気と混合されて希釈された後にマフラから排気される。
【0025】
次に、燃料電池システム1の電子制御部について
図2を参照しつつ説明する。燃料電池システム1は、
図2に示すように、制御装置100を備える。制御装置100は、燃料電池システム1を構成する各種の制御対象機器の作動を制御する。制御装置100は、プロセッサ、メモリを含むマイクロコンピュータとその周辺回路を備えている。制御装置100のメモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0026】
制御装置100は、その入力側に、エアフローメータ101、エア温度センサ102、エア圧力センサ103、水温センサ104、FC電圧検出部105、FC電流検出部106、インピーダンス検出部107等が接続されている。
【0027】
エアフローメータ101、エア温度センサ102、およびエア圧力センサ103は、空気供給経路30に配置されている。エアフローメータ101は、空気供給経路30を流れる空気の流量を検出するセンサである。エア温度センサ102は、空気供給経路30を流れる空気の温度を検出するセンサである。エア圧力センサ103は、空気供給経路30を流れる空気の圧力を検出するセンサである。エア圧力センサ103の検出値は、燃料電池10の内部の空気の圧力(すなわち、エア圧力)に相当する。
【0028】
水温センサ104は、冷却水回路20に設けられている。水温センサ104は、燃料電池10を通過直後の冷却水の温度を検出するセンサである。水温センサ104の検出値は、燃料電池10の温度(すなわち、FC温度)に相当する。
【0029】
FC電圧検出部105およびFC電流検出部106は、燃料電池10とインバータINVとの接続ラインに設けられている。FC電圧検出部105は、燃料電池10が出力する出力電圧(すなわち、FC電圧)を検出するセンサである。FC電流検出部106は、燃料電池10を流れる電流を検出するセンサである。
【0030】
ここで、燃料電池10が乾燥すると、燃料電池セルCの電解質膜の膜抵抗が大きくなることで、燃料電池10の出力電圧が低下する。このように、燃料電池10内部の含水量と燃料電池10の出力電圧との間には強い相関性がある。すなわち、燃料電池10の出力電圧は、燃料電池10の温度よりも燃料電池10の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量である。
【0031】
インピーダンス検出部107は、燃料電池10のインピーダンスimpを検出する装置である。インピーダンス検出部107は、燃料電池10の出力電流に所定の周波数の交流信号を重畳させて交流重畳部107aおよび交流信号が重畳された出力電流からインピーダンスimpを算出する演算部107bを有する。
【0032】
ここで、燃料電池10が乾燥すると、燃料電池セルCの電解質膜の膜抵抗が大きくなることで、燃料電池10のインピーダンスimpが大きくなる。すなわち、燃料電池10のインピーダンスimpは、燃料電池10の温度よりも燃料電池10の乾燥に高い相関性がある物理量である。特に、500Hz以上の高周波数の交流信号を重畳させた際のインピーダンスimpは、燃料電池セルCの電解質膜の膜抵抗と強い相関性を有する。これらを加味して、本実施形態のインピーダンス検出部107は、高周波数の交流信号を重畳させた際のインピーダンスimpを燃料電池10の温度よりも燃料電池10の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量として検出する。
【0033】
また、インピーダンス検出部107は、燃料電池セルCの面内におけるインピーダンスimpの分布が把握可能に構成されている。例えば、インピーダンス検出部107は、燃料電池セルCの面内におけるエア入口領域、エア出口領域、中間領域それぞれのインピーダンスimpを把握可能になっている。これにより、インピーダンス検出部107では、燃料電池セルCの面内における特定箇所でのインピーダンスimpを検出することができる。特定箇所は、例えば、燃料電池セルCの面内のうち、特に乾燥が生じ易い、空気流路のエア入口側の部位である。燃料電池セルCのエア入口側は、燃料電池10に供給される空気とともに水が下流に押し流されることで乾燥が生じ易い。
【0034】
本実施形態の制御装置100は、インピーダンス検出部107の検出値に基づいて、燃料電池10の乾湿状態を検知する。本実施形態では、制御装置100のうち燃料電池10の乾湿状態の検知機能を発揮する部分が乾湿検知部100aを構成している。
【0035】
制御装置100の出力側には、水ポンプ22、エアポンプ32、エアバルブ35、三方弁37、図示しない燃料バルブ等の制御対象機器が接続されている。また、制御装置100は、インバータINV等の電力変換機器11が接続されている。制御装置100は、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて、出力側に接続される制御対象機器を動作させて、燃料電池10の運転を制御する。本実施形態の制御装置100は、燃料電池10の運転を制御する運転制御部100bを構成している。
【0036】
このように構成される燃料電池システム1は、走行用モータ等の負荷機器12からの要求電力に応じた電力が出力されるように、出力側に接続される制御対象機器の作動が制御装置100によって制御される。
【0037】
制御装置100は、燃料電池10への要求電力が小さい場合、燃料電池10への水素および空気の供給量が少なくなるように、エアポンプ32の能力および燃料バルブの開度を制御する。
【0038】
一方、制御装置100は、燃料電池10への要求電力が大きい場合、燃料電池10への水素および空気の供給量が多くなるように、エアポンプ32の能力および燃料バルブの開度を制御する。
【0039】
燃料電池10への要求電力が大きい場合、燃料電池10を流れる電流が大きくなって燃料電池10が高負荷になる。加えて、燃料電池10の発熱量が増大することで、燃料電池10が高温になる。このような運転状態が継続されると、燃料電池10が乾き易くなってしまう。そこで、燃料電池10の乾燥を抑制するために、燃料電池10の温度が所定の基準温度を超える場合に、乾燥を抑える処理を実施することが考えられる。
【0040】
しかし、燃料電池10の乾燥は、燃料電池10の温度変化よりも遅れて発現する。このため、上述の如く、燃料電池10の温度に応じて乾燥を抑える処理を実施すると、燃料電池10が乾燥していない状態で燃料電池10の乾燥を抑制することになり、システムの性能が低下してしまう。
【0041】
これらを考慮し、本実施形態の制御装置100は、燃料電池10の温度よりも燃料電池10の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量を用いて燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であるか否かを検知するようにしている。この乖離状態には、電解質膜が乾燥した乾燥状態だけでなく、電解質膜が過度に湿潤した過湿潤状態も含まれる。以下、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理について
図3、
図4、
図5、
図6を参照しつつ説明する。
図3に示す制御処理は、燃料電池10の起動後に周期的または不定期に制御装置100によって実行される。
【0042】
図3に示すように、制御装置100は、ステップS100にて、高温高負荷条件が成立いたか否かを判定する。この高温高負荷条件は、燃料電池10が高温および高負荷となる運転条件である。すなわち、高温高負荷条件は、燃料電池10を流れる電流が基準電流以上となり、且つ、燃料電池10の温度が基準温度以上となる際に成立する条件である。
【0043】
高温高負荷条件が成立する場合、燃料電池10が乾燥し易い状況になっている。このため、高温高負荷条件が成立すると、制御装置100は、ステップS110の乾燥診断処理に移行する。一方、高温高負荷条件が不成立であると、制御装置100は、以降の処理をスキップして本制御処理を抜ける。
【0044】
乾燥診断処理では、インピーダンスimpの変化量に基づいて燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であるか否かを判定する。以下、制御装置100が実行する乾燥診断処理について、
図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0045】
図4に示すように、制御装置100は、ステップS111にて、燃料電池10のインピーダンスimpを測定する。具体的には、制御装置100は、インピーダンス検出部107にインピーダンス検出部107にインピーダンスimpの検出を要求する要求信号を出力する。これにより、インピーダンス検出部107は、制御装置100から要求信号を受けると、所定周波数の交流信号が重畳された燃料電池10の出力電流に基づいて、燃料電池10のインピーダンスimpを算出する。そして、制御装置100は、インピーダンス検出部107から燃料電池10のインピーダンスimpを取得する。
【0046】
続いて、制御装置100は、ステップS112にて、燃料電池10の起動後に最初に高温高負荷条件が成立した際のインピーダンスimpを初期値としてメモリに記憶する。この初期値は、固定値であってもよいが、次回以降に高温高負荷条件が成立した際のインピーダンスimpに基づいて学習して更新するようになっていてもよい。例えば、初期値は、高温高負荷条件が成立した際のインピーダンスimpの平均値であってもよい。
【0047】
続いて、制御装置100は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、ステップS113にて、インピーダンスimpが基準値以上であるか否かを判定する。この基準値は、例えば、燃料電池10が乾燥した状態で実際に測定されたインピーダンスimpや燃料電池10の内部の含水量が所定値以下となった状態でのインピーダンスimpに設定される。
【0048】
インピーダンスimpが基準値以上である場合、燃料電池10が乾燥していると推定される。このため、制御装置100は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であると判定する。具体的には、制御装置100は、ステップS114にて、乾燥フラグをオンする。乾燥フラグは、燃料電池10の乾湿状態を示すフラグであり、燃料電池10の乾燥が検知されると制御装置100によってオンされる。
【0049】
一方、インピーダンスimpが基準値未満である場合、燃料電池10が乾燥していないと推定される。このため、制御装置100は、ステップS115にて、乾燥フラグをオフする。
【0050】
ここまでが乾燥診断処理の説明である。
図3のステップS110の乾燥診断処理が完了すると、制御装置100は、ステップS120に移行し、乾燥診断処理で燃料電池10の乾燥が検知されたか否かを判定する。この判定は、乾燥フラグの状態に基づいて実施される。
【0051】
燃料電池10の乾燥が検知されると、制御装置100は、ステップS130のリセット処理に移行する。燃料電池10の乾燥が検知されなかった場合、制御装置100は、以降の処理をスキップして本制御処理を抜ける。
【0052】
リセット処理は、燃料電池10の乾湿状態を理想の状態に回復させるリセット運転を行う処理である。リセット運転は、燃料電池10の乾湿状態を理想の乾湿状態から乖離した乖離状態から理想の乾湿状態に近づけるための運転モードである。リセット運転は、例えば、電解質膜が乾燥した乾燥状態である場合、当該乾燥状態を適正な湿潤状態にリセットしたり、当該乾燥状態から電解質膜が過度に湿潤した過湿潤状態に近づけたりする運転である。以下、制御装置100が実行するリセット処理について、
図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0053】
図5に示すように、制御装置100は、ステップS131にて、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加を行う。制御装置100は、エアストイキ比を連続的に低下させるとともに、エア圧力を連続的に増加させる。このリセット運転は、エアストイキ比およびエア圧力を徐々に変化させる徐変運転である。本実施形態のリセット運転は、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加が制御装置100によって同じタイミングで開始される。
【0054】
ここで、エアストイキ比は、燃料電池10の発電に理論上必要とされる酸化剤ガスの量に対する燃料電池10に供給する酸化剤ガスの量との比である。エアストイキ比は、燃料電池10の発電に理論上必要とされる酸化剤ガスの量と、エアフローメータ101の検出される空気の流量に基づいて算出可能である。また、エア圧力は、燃料電池10の内部における酸化剤ガスの圧力である。エア圧力は、エア圧力センサ103で検出することができる。
【0055】
具体的には、制御装置100は、エアポンプ32の空気の供給能力(例えば、回転数)を徐々に低下させることで、エアストイキ比を低下させる。エアストイキ比が低下すると、燃料電池10のエア入口側における水蒸気が下流側に押し流される量が減ることで、燃料電池10の乾燥が抑制される。
【0056】
また、制御装置100は、エアバルブ35の開度を絞ることで、エア圧力を徐々に増加させる。エア圧力が増加すると、燃料電池10の内部の飽和水蒸気圧が上昇し、飽和水蒸気量が大きくなることで、燃料電池10の乾燥が抑制される。
【0057】
ここまでがリセット処理である。
図3のステップS130のリセット処理が完了すると、制御装置100は、ステップS140に移行して、回復診断処理を実行する。
【0058】
回復診断処理は、燃料電池10の乾燥を回復するリセット運転を行った後、燃料電池10の乾燥が回復されか否かを判定する回復条件の成否を診断する処理である。以下、制御装置100が実行する回復診断処理について、
図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0059】
図6に示すように、制御装置100は、ステップS141にて、燃料電池10のインピーダンスimpを測定する。この処理は、
図4のステップS111と同様の処理であるため、その説明を省略する。
【0060】
続いて、制御装置100は、ステップS142にて、インピーダンスimpが初期値以下であるか否かを判定する。この初期値は、高温高負荷条件が成立した際のインピーダンスimpである。
【0061】
インピーダンスimpが初期値以下である場合、インピーダンスimpが高温高負荷条件の成立時まで低下したことになり、リセット処理によって燃料電池10の乾燥が充分に回復していると推定される。このため、インピーダンスimpが初期値以下である場合、制御装置100は、ステップS143にて、乾燥フラグをオフにする。
【0062】
一方、インピーダンスimpが初期値を超えている場合、依然として燃料電池10が乾燥していると推定される。このため、制御装置100は、ステップS144にて、乾燥フラグをオンに維持する。
【0063】
ここまでが回復診断処理の説明である。
図3のステップS140の回復診断処理が完了すると、制御装置100は、ステップS150に移行し、回復診断処理で燃料電池10の乾燥の回復が検知されたか否かを判定する。この判定は、乾燥フラグの状態に基づいて実施される。
【0064】
燃料電池10の乾燥の回復が検知されると、制御装置100は、ステップS160にて、燃料電池10の運転モードを、リセット処理を含むリセット運転から当該リセット運転を行う前の通常運転に切り替える。この通常運転では、負荷機器12からの要求電力に応じた電力が出力されるように、燃料電池10の出力側に接続される制御対象機器の作動が制御装置100によって制御される。
【0065】
一方、燃料電池10の乾燥の回復が検知されない場合、制御装置100は、ステップS170にて、リセット処理を開始してから所定時間経過したか否かを判定する。この所定時間は、例えば、リセット処理を開始してから燃料電池10の乾燥が回復するまでに要する時間に設定されている。
【0066】
制御装置100は、リセット処理を開始してから所定時間経過するまでは、ステップS150の判定を繰り返す。そして、リセット処理を開始してから所定時間経過すると、制御装置100は、ステップS180に移行する。
【0067】
制御装置100は、ステップS180にて、リセット運転とリセット運転を行う前の通常運転とを交互に繰り返す処理を行い、ステップS150に移行する。ステップS180の処理では、例えば、リセット運転および通常運転のうち一方の運転を所定の基準時間実施すると、他方の運転に切り替える。
【0068】
ここで、
図7は、高温および高負荷となる際の燃料電池10の作動を説明するための説明図である。
図7に示すように、燃料電池10の出力が高くなるとともに燃料電池10の温度が上昇すると、高温高負荷条件が成立する。
【0069】
高温高負荷条件が成立した段階では、燃料電池セルCの面内の水分布は、均一になっている。なお、
図7では、燃料電池セルCの面内における水が多い箇所に対してドット柄を付して強調している。
【0070】
燃料電池10の高温および高負荷な状態が継続されると、燃料電池セルCが乾き始める。具体的には、燃料電池セルCの面内におけるエア入口側の水分量が減少して乾き始める。これに伴って、燃料電池10のインピーダンスimpが上昇するとともに、燃料電池10の出力電圧が低下する。
【0071】
この際、
図8の第1比較例で示すように、リセット運転を行わない場合、燃料電池セルCの面内における乾燥が拡大し、燃料電池10のインピーダンスimpが増大するとともに、燃料電池10の出力電圧(すなわち、FC電圧)が低下する。
【0072】
これに対して、本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池10のインピーダンスimpが基準値まで上昇すると、乾燥フラグがオンされて、リセット運転が開始される。具体的には、制御装置100が、エアストイキ比を低下させるとともに、エア圧力を増加させる。これにより、燃料電池セルCの面内におけるエア入口側の水分が徐々に増え、燃料電池セルCの面内における乾燥が回復し始めることで、燃料電池10のインピーダンスimpが小さくなるとともに、燃料電池10の出力電圧(すなわち、FC電圧)が増加する。
【0073】
但し、
図9の第2比較例で示すように、リセット運転を長時間継続すると、エア出口側等の別の箇所で乾きが生じたり、エア入口側での水分が過剰になったりすることで、リセット運転の効果が低下して、狙い通りに燃料電池10を回復させ難くなってしまう。
【0074】
これに対して、本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池10のインピーダンスimpが初期値まで低下すると、乾燥フラグがオフされて通常運転に切り替わる。これによれば、エア出口側等の別の箇所で乾きが生じたり、エア入口側での水分が過剰になったりすることが抑制されるので、リセット運転の効果を適切に得ることができる。
【0075】
以上説明した燃料電池システム1は、燃料電池10が高温および高負荷となる運転条件が成立すると、燃料電池10の温度よりも燃料電池10の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量に基づいて燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離しているか否かを判定する。そして、理想の乾湿状態から乖離していることが検知された際に、燃料電池10の乾湿状態を理想の状態に回復するリセット運転を行う。これによると、燃料電池10の温度に基づいて燃料電池10が乾燥しているか否かを判定する場合に比べて、燃料電池10の乾湿状態を精度よく検知することができる。加えて、燃料電池10の温度に基づいて燃料電池10が乾燥しているか否かを判定する場合に比べて、適切なタイミングでリセット運転を行うことができる。したがって、燃料電池10の乾湿状態を精度よく検知して、システムの性能向上を図ることができる。
【0076】
(1)具体的には、制御装置100は、燃料電池10のインピーダンスimpに基づいて、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離しているか否かを判定する。これによると、燃料電池10の乾燥を精度よく検知することができる。
【0077】
(2)制御装置100は、燃料電池セルCの面内における特定箇所でのインピーダンスimpに基づいて燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離しているか否かを判定する。燃料電池10の乾燥は、燃料電池セルCの面内のち特定の箇所で生ずる傾向がある。このため、燃料電池セルCの面内全域ではなく、特定箇所でのインピーダンスimpに基づいて燃料電池10が乾燥しているか否かを判定することが望ましい。
【0078】
(3)リセット運転の運転条件である高温高負荷条件は、燃料電池10を流れる電流が基準電流以上となり、且つ、燃料電池10の温度が基準温度以上となる際に成立する条件である。制御装置100は、高温高負荷条件が成立すると、インピーダンスimpの変化量に基づいて燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離しているか否かを判定する。これによると、燃料電池10が乾燥しやすい条件下で燃料電池10の乾燥を精度よく検知することができる。
【0079】
(4)リセット運転は、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加を行う運転になっている。このように、リセット運転時に、エアストイキ比の低下またはエア圧力の増加を行うことで、燃料電池10の乾燥を充分に抑制することができる。
【0080】
(5)具体的には、リセット運転は、エアストイキ比およびエア圧力を連続的に変化させる徐変運転である。これのように、エアストイキ比またはエア圧力を連続的に変化させることで、リセット運転に伴う電力変動やドライバビリティへの影響を抑えることができる。
【0081】
(6)リセット運転を行った後は、リセット運転とリセット運転を行う前の通常運転とを交互に繰り返す。リセット運転による効果が永続的でないことがあるため、リセット運転および通常運転を交互に切り替えることで、システムにおいて総合的によい出力ポイントで燃料電池10を運転させることが望ましい。また、リセット運転と通常運転とを交互に実施することで、リセット運転によって燃料電池10が過湿潤状態に維持されてしまうことが抑制される。ここで、リセット運転によって電解質膜が乾燥した乾燥状態から過湿潤状態に近づける場合、リセット運転によって乾燥状態から適正な湿潤状態にする場合に比べて、リセット運転から通常運転に切り替えてから乾燥状態になるまでの期間を長くすることができる。このため、リセット運転は、燃料電池10の内部が乾燥した乾燥状態から過湿潤状態に近づける運転になっていることが望ましい。
【0082】
(7)制御装置100は、燃料電池10の乾湿状態を回復するリセット運転を行った後、燃料電池10の乾湿状態が回復されたと推定される回復条件が成立すると、リセット運転からリセット運転を行う前の通常運転に切り替える。これにより、システムにおいて総合的によい出力ポイントで燃料電池10を運転させることが可能となる。
【0083】
(8)具体的には、回復条件は、リセット運転を行っている際のインピーダンスimpが初期値以下になった際に成立する条件になっている。このように、リセット運転によって燃料電池10の状態を高温高負荷条件の成立時の状態にまで回復させることができる。なお、回復条件としては、例えば、リセット運転を行っている際のインピーダンスimp等が予め定めた閾値になった際に成立する条件とすることも考えられるが、この場合、部品等の個体差によるバラツキに対応できない。このため、回復条件は、リセット運転を行っている際の物理量が初期値以下になった際に成立する条件になっていることが望ましい。
【0084】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図10を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0085】
図10は、本実施形態の制御装置100が実行するリセット処理の流れを示している。
図10に示すリセット処理は、第1実施形態で説明した
図5のリセット処理に対応する処理である。
図10に示すリセット処理は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離すると開始される。
【0086】
図10に示すように、制御装置100は、ステップS231にて、エアストイキ比の低下を行う。制御装置100は、エアストイキ比を連続的に減少させる。このリセット運転は、エアストイキ比を徐々に変化させる徐変運転である。
【0087】
続いて、制御装置100は、ステップS232にて、所定条件が成立したか否かを判定する。この所定条件は、例えば、エアストイキ比の低下を開始してから予め定めた時間が経過した際に成立する条件、エアストイキ比が狙いの値に到達した際に成立する条件とすればよい。
【0088】
制御装置100は、所定条件が成立するまで待機し、所定条件が成立すると、制御装置100は、ステップS233に移行して、エア圧力の増加を行う。制御装置100は、エア圧力を連続的に増加させる。このリセット運転は、エア圧力を徐々に変化させる徐変運転である。
【0089】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0090】
(1)本実施形態のリセット運転は、エアストイキ比の低下を行った後、所定の条件が成立すると、エア圧力を増加させる運転になっている。このように、先にエアストイキ比を低下させることで、エア圧の増加に伴うエアポンプ32等の補機でのエネルギ消費量増加やエアポンプ32等の熱負荷の増加を抑制することができる。このようなリセット運転は、燃料電池10およびエアポンプ32等の補機の動力に余裕がなく、先に負荷を低減させることが望ましい場合や、燃料電池10の出力低下をバッテリ等によって補える場合に有効である。なお、燃料電池10の出力低下は、走行用モータ等のトルクショックの要因となることから好ましくない。
【0091】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の制御装置100は、所定条件が成立するまで待機し、所定条件が成立すると、エア圧力の増加を行っているが、この処理は必須ではない。例えば、制御装置100は、エアストイキ比の低下だけでは燃料電池10の乾燥の回復効果が充分でない場合にエア圧力の増加を行うようになっていてもよい。この場合、所定条件は、例えば、エアストイキ比を低下してから所定時間経過しても燃料電池10のインピーダンスimpが初期値以下にならない場合に成立する条件とすればよい。
【0092】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0093】
図11は、本実施形態の制御装置100が実行するリセット処理の流れを示している。
図11に示すリセット処理は、第1実施形態で説明した
図5のリセット処理に対応する処理である。
図11に示すリセット処理は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離すると開始される。
【0094】
図11に示すように、制御装置100は、ステップS331にて、エア圧力の増加を行う。制御装置100は、エア圧力を連続的に増加させる。このリセット運転は、エア圧力を徐々に変化させる徐変運転である。
【0095】
続いて、制御装置100は、ステップS332にて、所定条件が成立したか否かを判定する。この所定条件は、例えば、エア圧力の増加を開始してから予め定めた時間が経過した際に成立する条件、エア圧力が狙いの値に到達した際に成立する条件とすればよい。
【0096】
制御装置100は、所定条件が成立するまで待機し、所定条件が成立すると、制御装置100は、ステップS333に移行して、エアストイキ比の低下を行う。制御装置100は、エアストイキ比を連続的に低下させる。このリセット運転は、エアストイキ比を徐々に変化させる徐変運転である。
【0097】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0098】
(1)本実施形態のリセット運転は、エア圧力の増加を行った後、所定の条件が成立すると、エアストイキ比を低下させる運転になっている。このように、先にエア圧力を増加させることで、エアストイキ比の低下に伴う燃料電池10の出力低下を抑制することができる。このようなリセット運転は、燃料電池10およびエアポンプ32等の補機の動力に余裕があり、一時的な燃料電池10の出力低下や熱量増大に耐えられる場合に有効である。
【0099】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態の制御装置100は、所定条件が成立するまで待機し、所定条件が成立すると、エアストイキ比の低下を行っているが、この処理は必須ではない。例えば、制御装置100は、エア圧力の増加だけでは燃料電池10の乾燥の回復効果が充分でない場合にエアストイキ比の低下を行うようになっていてもよい。この場合、所定条件は、例えば、エアストイキ比を低下してから所定時間経過しても燃料電池10のインピーダンスimpが初期値以下にならない場合に成立する条件とすればよい。
【0100】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図12を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0101】
リセット運転を行うと、燃料電池10の出力電圧が低下してしまうことがある。このため、本実施形態の制御装置100は、リセット運転時に、燃料電池10の出力電圧の低下が抑制されるように、燃料電池10の出力電圧に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を制御する。以下、本実施形態の制御装置100が実行するリセット処理について
図12を参照しつつ説明する。
図12に示すリセット処理は、第1実施形態で説明した
図5のリセット処理に対応する処理である。
図12に示すリセット処理は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離すると開始される。
【0102】
図12に示すように、制御装置100は、ステップS431にて、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加を行う。この処理は、第1実施形態で説明した
図5のステップS131の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0103】
続いて、制御装置100は、ステップS432にて、燃料電池10の出力電圧が所定の基準電圧以下になったか否かを判定する。この基準電圧は、予め定めた固定電圧にしてもよいが、例えば、高温高負荷条件の成立時の出力電圧から所定値を減算した値にしてもよい。
【0104】
制御装置100は、燃料電池10の出力電圧が所定の基準電圧を超える場合は、以降の処理をスキップしてリセット処理を抜ける。一方、制御装置100は、燃料電池10の出力電圧が所定の基準電圧以下になった場合、ステップS433に移行する。
【0105】
制御装置100は、ステップS433にて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を減少させる。具体的には、燃料電池10の出力電圧の低下が抑制されるように、制御装置100がエアストイキ比およびエア圧力の変化量をゼロにする。なお、燃料電池10の出力電圧の低下が抑制されるのであれば、制御装置100が、エアストイキ比を若干上昇させたり、エア圧力の変化を若干減少させたりするようになっていてもよい。
【0106】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0107】
(1)本実施形態のリセット運転は、燃料電池10の出力電圧の低下が抑制されるように、燃料電池10の出力電圧に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御される。これによると、燃料電池10の出力電圧の変動を抑制しつつ、燃料電池10の乾燥を回復させることが可能となる。
【0108】
(第4実施形態の変形例)
第4実施形態のリセット運転は、燃料電池10の出力電圧に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御されているが、これに限定されない。リセット運転は、例えば、燃料電池10の出力電圧に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の一方の変化量が制御されるようになっていてもよい。
【0109】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図13を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0110】
リセット運転を行うと、エア圧力が上昇することでエアポンプ32の負荷が増加してしまうことがある。そこで、本実施形態の制御装置100は、リセット運転時に、エアポンプ32の負荷増大が抑制されるように、エアポンプ32の負荷に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を制御する。以下、本実施形態の制御装置100が実行するリセット処理について
図13を参照しつつ説明する。
図13に示すリセット処理は、第1実施形態で説明した
図5のリセット処理に対応する処理である。
図13に示すリセット処理は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離すると開始される。
【0111】
図13に示すように、制御装置100は、ステップS531にて、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加を行う。この処理は、第1実施形態で説明した
図5のステップS131の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
続いて、制御装置100は、ステップS532にて、エアポンプ32の負荷が所定の基準負荷以上であるか否かを判定する。この基準負荷は、予め定めた固定負荷にしてもよいが、例えば、高温高負荷条件の成立時の負荷から所定値を加算した値にしてもよい。
【0113】
制御装置100は、エアポンプ32の負荷が所定の基準負荷未満の場合は、以降の処理をスキップしてリセット処理を抜ける。一方、制御装置100は、エアポンプ32の負荷が所定の基準負荷以上になった場合、ステップS533に移行する。
【0114】
制御装置100は、ステップS543にて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を減少させる。具体的には、エアポンプ32の負荷増大が抑制されるように、制御装置100がエアストイキ比およびエア圧力の変化量をゼロにする。なお、エアポンプ32の負荷増大が抑制されるのであれば、制御装置100が、エアストイキ比を若干上昇させたり、エア圧力の変化を若干減少させたりするようになっていてもよい。
【0115】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0116】
(1)リセット運転では、エアポンプ32の負荷増大が抑制されるように、エアポンプ32の負荷に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御される。これによると、エアポンプ32の負荷増大を抑制しつつ、燃料電池10の乾燥を回復させることが可能となる。
【0117】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態のリセット運転は、エアポンプ32の負荷に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御されているが、これに限定されない。リセット運転は、例えば、エアポンプ32の負荷に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の一方の変化量が制御されるようになっていてもよい。
【0118】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図14を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0119】
リセット運転を行うと、燃料電池10の発電電力から燃料電池10の運転で消費される消費電力を除いた総合電力が低下してしまうことがある。そこで、本実施形態の制御装置100は、リセット運転時に、総合電力の低下が抑制されるように、当該総合電力に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を制御する。以下、本実施形態の制御装置100が実行するリセット処理について
図14を参照しつつ説明する。
図14に示すリセット処理は、第1実施形態で説明した
図5のリセット処理に対応する処理である。
図14に示すリセット処理は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離すると開始される。
【0120】
図14に示すように、制御装置100は、ステップS631にて、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加を行う。この処理は、第1実施形態で説明した
図5のステップS131の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0121】
続いて、制御装置100は、ステップS632にて、燃料電池システム1の総合電力が所定の基準電力以下であるか否かを判定する。この基準電力は、予め定めた固定負荷にしてもよいが、例えば、高温高負荷条件の成立時の負荷から所定値を減算した値にしてもよい。
【0122】
制御装置100は、燃料電池システム1の総合電力が基準電力を超える場合は、以降の処理をスキップしてリセット処理を抜ける。一方、制御装置100は、燃料電池システム1の総合電力が基準電力以下の場合は、ステップS633に移行する。
【0123】
制御装置100は、ステップS633にて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を減少させる。具体的には、燃料電池システム1の総合電力の低下が抑制されるように、制御装置100がエアストイキ比およびエア圧力の変化量をゼロにする。なお、燃料電池システム1の総合電力の低下が抑制されるのであれば、制御装置100が、エアストイキ比を若干上昇させたり、エア圧力の変化を若干減少させたりするようになっていてもよい。
【0124】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることが
【0125】
(1)リセット運転では、燃料電池システム1の総合電力の低下が抑制されるように、燃料電池10の総合電力に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御される。これによると、燃料電池システム1の総合電力の低下を抑制しつつ、燃料電池10の乾燥を回復させることが可能となる。
【0126】
(第6実施形態の変形例)
第6実施形態のリセット運転は、燃料電池システム1の総合電力に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御されているが、これに限定されない。リセット運転は、例えば、燃料電池システム1の総合電力に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の一方の変化量が制御されるようになっていてもよい。
【0127】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、
図15を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0128】
リセット運転を行うと、燃料電池10の運転で生ずる発熱量が増大してしまうことがある。燃料電池10の運転で生ずる発熱量には、燃料電池10の発熱量に加え、エアポンプ32等の補機での発熱量が含まれる。
【0129】
そこで、本実施形態の制御装置100は、リセット運転時に、燃料電池10の運転で生ずる発熱量の増大が抑制されるように、当該発熱量に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を制御する。以下、本実施形態の制御装置100が実行するリセット処理について
図15を参照しつつ説明する。
図15に示すリセット処理は、第1実施形態で説明した
図5のリセット処理に対応する処理である。
図15に示すリセット処理は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離すると開始される。
【0130】
図15に示すように、制御装置100は、ステップS731にて、エアストイキ比の低下およびエア圧力の増加を行う。この処理は、第1実施形態で説明した
図5のステップS131の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0131】
続いて、制御装置100は、ステップS732にて、燃料電池システム1の発熱量が所定の基準発熱量以上であるか否かを判定する。この基準発熱量は、予め定めた固定負荷にしてもよいが、例えば、高温高負荷条件の成立時の発熱量から所定値を加算した値にしてもよい。
【0132】
制御装置100は、燃料電池システム1の発熱量が基準発熱量未満の場合は、以降の処理をスキップしてリセット処理を抜ける。一方、制御装置100は、燃料電池システム1の発熱量が基準発熱量以上の場合は、ステップS733に移行する。
【0133】
制御装置100は、ステップS733にて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量を減少させる。具体的には、燃料電池システム1の発熱量の増大が抑制されるように、制御装置100がエアストイキ比およびエア圧力の変化量をゼロにする。なお、燃料電池システム1の発熱量の増大が抑制されるのであれば、制御装置100が、エアストイキ比を若干上昇させたり、エア圧力の変化を若干減少させたりするようになっていてもよい。
【0134】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることが
【0135】
(1)リセット運転では、燃料電池システム1の発熱量の増大が抑制されるように、燃料電池システム1の発熱量に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御される。これによると、燃料電池システム1の発熱量の増大を抑制しつつ、燃料電池10の乾燥を回復させることが可能となる。
【0136】
(第7実施形態の変形例)
第7実施形態のリセット運転は、燃料電池システム1の発熱量に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の変化量が制御されているが、これに限定されない。リセット運転は、例えば、燃料電池システム1の発熱量に基づいて、エアストイキ比およびエア圧力の一方の変化量が制御されるようになっていてもよい。
【0137】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、
図16、
図17を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0138】
第1実施形態で説明したように、燃料電池10の出力電圧は、燃料電池10の温度よりも燃料電池10の乾燥および湿潤に高い相関性がある物理量である。そこで、本実施形態の乾燥診断処理および回復診断処理では、燃料電池10の出力電圧の変化量に基づいて燃料電池10が理想の乾燥状態から乖離した乖離状態であるか否かを判定したり、乖離状態乾燥から回復しているか否かを判定したりする。
【0139】
先ず、制御装置100が実行する乾燥診断処理について、
図16のフローチャートを参照しつつ説明する。
図16に示す乾燥診断処理は、第1実施形態で説明した
図4の乾燥診断処理に対応する処理である。
図16に示す乾燥診断処理は、高温高負荷条件が成立すると開始される。
【0140】
図16に示すように、制御装置100は、ステップS811にて、燃料電池10の出力電圧を測定する。具体的には、制御装置100は、FC電圧検出部105から燃料電池10の出力電圧を取得する。
【0141】
続いて、制御装置100は、ステップS812にて、燃料電池10の起動後に最初に高温高負荷条件が成立した際の出力電圧を初期値としてメモリに記憶する。この初期値は、固定値であってもよいが、次回以降に高温高負荷条件が成立した際の出力電圧に基づいて学習して更新するようになっていてもよい。例えば、初期値は、高温高負荷条件が成立した際の出力電圧の平均値であってもよい。
【0142】
続いて、制御装置100は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、ステップS813にて、燃料電池10の出力電圧が基準値以下であるか否かを判定する。この基準値は、例えば、燃料電池10が乾燥した状態で実際に測定された出力電圧や燃料電池10の内部の含水量が所定値以下となった状態での出力電圧に設定される。
【0143】
燃料電池10の出力電圧が基準値以下である場合、燃料電池10が乾燥していると推定される。このため、制御装置100は、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離した乖離状態であると判定する。具体的には、制御装置100は、ステップS814にて、乾燥フラグをオンする。乾燥フラグは、燃料電池10の乾湿状態を示すフラグであり、燃料電池10の乾燥が検知されると制御装置100によってオンされる。
【0144】
一方、燃料電池10の出力電圧が基準値未満である場合、燃料電池10が乾燥していないと推定される。このため、制御装置100は、ステップS815にて、乾燥フラグをオフする。
【0145】
次に、制御装置100が実行する回復診断処理について、
図17のフローチャートを参照しつつ説明する。
図17に示す回復診断処理は、第1実施形態で説明した
図6の回復診断処理に対応する処理である。
図17に示す回復診断処理は、リセット処理の実施後に開始される。
【0146】
図17に示すように、制御装置100は、ステップS841にて、燃料電池10の出力電圧を測定する。この処理は、
図16のステップS811と同様の処理であるため、その説明を省略する。
【0147】
続いて、制御装置100は、ステップS842にて、燃料電池10の出力電圧が初期値以上であるか否かを判定する。この初期値は、高温高負荷条件が成立した際の燃料電池10の出力電圧である。
【0148】
燃料電池10の出力電圧が初期値以上である場合、燃料電池10の出力電圧が高温高負荷条件の成立時まで回復したことになり、リセット処理によって燃料電池10の乾燥が充分に回復していると推定される。このため、燃料電池10の出力電圧が初期値以上である場合、制御装置100は、ステップS843にて、乾燥フラグをオフにする。
【0149】
一方、燃料電池10の出力電圧が初期値未満の場合、依然として燃料電池10が乾燥していると推定される。このため、制御装置100は、ステップS844にて、乾燥フラグをオンに維持する。
【0150】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池システム1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0151】
(1)本実施形態の制御装置100は、燃料電池10の出力電圧に基づいて、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離しているか否かを判定する。これによると、燃料電池10の乾燥を精度よく検知することができる。
【0152】
(2)本実施形態の制御装置100は、燃料電池10の出力電圧に基づいて、燃料電池10が理想の乾湿状態から乖離しているか否かを判定する。これによると、燃料電池10の回復を精度よく検知することができる。
【0153】
(第8実施形態の変形例)
第8実施形態の制御装置100は、燃料電池10の出力電圧に基づいて、乾燥診断処理や回復診断処理を行っているが、これに限定されない。例えば、制御装置100は、燃料電池10のインピーダンスimpおよび燃料電池10の出力電圧それぞれに基づいて、乾燥診断処理や回復診断処理を行うようになっていてもよい。
【0154】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0155】
上述の実施形態の乾燥診断処理や回復診断処理は、燃料電池10のインピーダンスimpや燃料電池10の出力電圧に基づいて実施されるが、これらに加え、燃料電池10を通過直後の冷却水の温度等の他の物理量を参照して実施されるようになっていてもよい。なお、燃料電池10を通過直後の冷却水の温度は、燃料電池10の乾燥および湿潤と相関性を有する物理量である。なお、制御装置100は、例えば、燃料電池10のインピーダンスimpや燃料電池10の出力電圧に基づいて燃料電池100が過湿潤であるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0156】
上述の実施形態の如く、インピーダンス検出部107は、燃料電池セルCの面内におけるインピーダンスimpの分布が把握可能になっていることが望ましいが、これに限らず、燃料電池セルCの面内全体のインピーダンスimpを把握可能になっていてもよい。
【0157】
上述の実施形態の高温高負荷条件は、燃料電池10を流れる電流および燃料電池10の温度に応じて成立する条件であったが、これに限定されない。高温高負荷条件は、例えば、負荷機器12からの要求電力や冷却水の温度に応じて成立する条件になっていてもよい。
【0158】
上述の実施形態のリセット運転は、エアストイキ比の低下やエア圧力の増加を行っているが、これに限定されない。燃料電池システム1に加湿器が設置されている場合、リセット運転は、加湿器における加湿量を増大させる処理になっていてもよい。
【0159】
上述の実施形態の燃料電池システム1は、リセット運転を行った後、リセット運転と通常運転とを繰り返すようになっているが、これに限らず、例えば、リセット運転を継続するようになっていてもよい。
【0160】
上述の実施形態の燃料電池システム1は、リセット運転を行った後、インピーダンスimpや出力電圧が高温高負荷条件の成立時の値に戻ると、リセット運転から通常運転に切り替えているが、これに限定されない。例えば、燃料電池システム1は、リセット運転を行った後、所定時間経過後にリセット運転から通常運転に切り替えるようになっていてもよい。
【0161】
上述の実施形態では、本開示の燃料電池システム1を車両FCVに適用した例について説明したが、本開示の燃料電池システム1は、車両FCV以外にも適用することができる。
【0162】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0163】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0164】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0165】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0166】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
100a 乾湿検知部
100b 運転制御部
C 燃料電池セル