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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240409BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021058794
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155349
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】風岡 諒哉
(72)【発明者】
【氏名】進藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊一
(72)【発明者】
【氏名】利行 健
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-155788(JP,A)
【文献】特開2014-46830(JP,A)
【文献】特開2011-122835(JP,A)
【文献】特開2015-149853(JP,A)
【文献】特開2011-91952(JP,A)
【文献】特開2010-272395(JP,A)
【文献】特開2019-165522(JP,A)
【文献】特開2011-146183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00,7/48
H02J 7/00
B60L 50/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームスイッチ(QUH,QVH,QWH)及び下アームスイッチ(QUL,QVL,QWL)の直列接続体を有し、スイッチング制御によりバッテリ(10)から供給される直流電力を交流電力に変換して、巻線(41)を有する回転電機(40)に供給する電力変換器(30)と、
前記直列接続体に並列接続されたコンデンサ(31)と、を備える電力変換装置の制御装置(50)において、
前記電力変換装置と前記バッテリとの間で電流が流れる際に、前記バッテリに流れるバッテリ電流の周波数特性を推定する周波数特性推定部(62)と、
前記バッテリ電流の周波数特性に基づいて、バッテリ電流に含まれるリプル電流のリプル周波数を設定するリプル電流設定部(63)と、
前記リプル電流設定部により設定されたリプル周波数に基づいて、前記リプル電流を発生させるように前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチに対してスイッチング制御を実施する制御部(59)と、を備えた電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記リプル電流設定部は、前記回転電機の巻線と前記コンデンサとの間における共振周波数(Fb1)、及び前記バッテリと前記コンデンサとの間における共振周波数(Fb2)のうち少なくともいずれかに基づいて所定の周波数範囲を設定し、その周波数範囲内から前記リプル周波数を設定する請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記リプル電流設定部は、前記回転電機の巻線と前記コンデンサとの間における共振周波数と、前記バッテリと前記コンデンサとの間における共振周波数との間に、前記周波数範囲を設定し、その周波数範囲内から前記リプル周波数を設定する請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記周波数特性推定部は、
前記回転電機のトルクと回転数の組み合わせごとに、前記バッテリ電流の周波数特性を示す電流マップを記憶する電流マップ記憶部(62a)と、
前記電流マップ記憶部に記憶されている電流マップを参照して、前記回転電機のトルクと回転数の組み合わせに応じた、前記バッテリ電流の周波数特性を推定する電流特性計算部(62b)と、を備える請求項1~3のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記周波数特性推定部は、
前記バッテリ電流の周波数特性を示す電流マップを記憶する電流マップ記憶部(62a)と、
所定期間において、発生させるリプル電流の周波数を変化させることにより、前記バッテリ電流の周波数特性を取得し、前記電流マップを更新する更新部と、
前記電流マップ記憶部に記憶されている電流マップを参照して、前記回転電機のトルクと回転数の組み合わせに応じた、前記バッテリ電流の周波数特性を推定する電流特性計算部(62b)と、を備える請求項1~4のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
前記バッテリの内部抵抗を推定する内部抵抗推定部(61)を備え、
前記リプル電流設定部は、前記周波数特性推定部により推定された前記バッテリ電流の周波数特性と、前記内部抵抗推定部により推定された前記バッテリの内部抵抗とから、前記リプル周波数と前記バッテリの消費電力との関係性を推定し、当該関係性に基づいて前記リプル周波数を設定する請求項1~5のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
前記リプル電流設定部は、前記リプル周波数と前記バッテリの消費電力特性との関係性に基づいて、少なくとも前記リプル電流の周波数がゼロである場合に比較して、消費電力が大きくなる前記リプル電流の周波数範囲を特定し、当該周波数範囲の中から前記リプル周波数を設定する請求項6に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項8】
前記リプル電流設定部は、前記リプル周波数と前記バッテリの消費電力特性との関係性に基づいて、最も消費電力が大きくなる前記リプル電流の周波数を設定する請求項6又は7に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項9】
前記内部抵抗推定部は、
前記バッテリの蓄電状態と電池温度の組み合わせごとに、前記バッテリの内部抵抗の周波数特性を示す内部抵抗マップを記憶する内部抵抗マップ記憶部(61a)と、
前記内部抵抗マップ記憶部に記憶された内部抵抗マップを参照して、前記バッテリの蓄電状態と電池温度の組み合わせに応じた、前記バッテリの内部抵抗の周波数特性を推定する内部抵抗特性計算部(61b)と、を備え、
前記リプル電流設定部は、前記バッテリ電流の周波数特性と前記バッテリの内部抵抗の周波数特性とから、前記リプル周波数と前記バッテリの消費電力との関係性を特定する請求項6~8のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記回転電機のトルクを指令するトルク指令値に基づいて、前記回転電機のd軸電流を指令するd軸電流ベース指令値及びq軸電流を指令するq軸電流ベース指令値を決定する軸電流指令部(51a)と、
前記d軸電流ベース指令値及び前記q軸電流ベース指令値により、等トルクを出力可能な等トルク曲線(X1)を特定し、前記リプル周波数及びリプル電流の振幅に基づいて、当該等トルク曲線上に動作点を設定することにより、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を決定する電流重畳部(51c)と、
前記d軸電流指令値及び前記q軸電流指令値に基づいて、スイッチング制御を実施するスイッチ制御部(52~57)と、を備え、
前記電流重畳部は、リプル電流の振幅に基づいて、等トルク曲線上で動作点を往復移動させる範囲を決定するとともに、リプル周波数に基づいて、等トルク曲線上で動作点を往復移動させる速さを決定し、それらの決定に基づいて動作点を等トルク曲線上で往復移動させることにより、リプル電流を発生させる請求項1~9のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項11】
前記電力変換器は、インバータであり、
前記制御部は、前記リプル周波数及びリプル電流の振幅に基づいて、前記インバータのキャリア周波数をスイープさせることにより、リプル電流を発生させる請求項1~10のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項12】
上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体と、コンデンサと、コイルとを備えた充電回路(200)に接続されており、
前記制御部は、前記リプル周波数及びリプル電流の振幅に基づいて、前記充電回路のキャリア周波数をスイープさせることにより、リプル電流を発生させる請求項1~11のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項13】
前記バッテリは、メインリレー(SMR)を介して前記電力変換装置に接続されており、
前記メインリレーには、プリチャージリレー(PRp)と突入電力防止用コイル(Cp)の直列接続体が並列に接続されており、
前記制御部は、リプル電流を発生させる際、前記メインリレーをオフさせる一方で前記プリチャージリレーをオンさせて、前記突入電力防止用コイルを介してバッテリ電流を流す請求項1~12のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項14】
前記リプル電流設定部は、前記回転電機のモータ回転数に基づいて、前記回転電機の基本波周波数の整数次成分とリプル周波数が一致しないように、リプル周波数を設定する請求項1~13のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項15】
前記リプル電流設定部は、騒音が所定値以下となるように、前記リプル周波数の上限を設定している請求項1~14のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項16】
前記リプル電流設定部は、前記バッテリの劣化を抑制するように、リプル周波数の下限を設定している請求項1~15のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項17】
前記電力変換装置及び前記制御装置は、車両に搭載されるものであり、
前記制御装置は、車両の走行中にリプル電流を発生可能に構成されている請求項1~16のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項18】
前記電力変換装置及び前記制御装置は、車両に搭載されるものであり、
前記制御装置は、車両の起動前にリプル電流を発生可能に構成されている請求項1~17のうちいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリは、低温環境下において入出力電力が低下するため、バッテリ温度が低温の場合にバッテリ温度を昇温させるための機構が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、バッテリ電流に高調波(リプル電流)を重畳させることにより、バッテリの内部抵抗による消費電力を増加させ、迅速かつ容易にバッテリを昇温させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-272395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の発明では、回路特性などを考慮しておらず、昇温能力を向上させる余地があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バッテリを迅速に昇温させることができる電力変換装置の制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有し、スイッチング制御によりバッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して、巻線を有する回転電機に供給する電力変換器と、前記直列接続体に並列接続されたコンデンサと、を備える電力変換装置の制御装置において、前記電力変換装置と前記バッテリとの間で電流が流れる際に、前記バッテリに流れるバッテリ電流の周波数特性を推定する周波数特性推定部と、前記バッテリ電流の周波数特性に基づいて、バッテリ電流に含まれるリプル電流のリプル周波数を設定するリプル電流設定部と、前記リプル電流設定部により設定されたリプル周波数に基づいて、前記リプル電流を発生させるように前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチに対してスイッチング制御を実施する制御部と、を備えた。
【0008】
回転電機とコンデンサの間又はコンデンサとバッテリとの間で電力変換器を介してリプル電流のやり取りを実施することにより、バッテリを昇温させる場合、インバータ、コンデンサ、及び巻線から構成される回路の特性により、バッテリ電流は、リプル周波数に応じてその大きさが変動することがわかった。そこで、周波数特性推定部によって特定されたバッテリ電流の周波数特性に基づいて、リプル周波数を設定し、設定されたリプル周波数のリプル電流を発生させるように、スイッチング制御を実施させた。これにより、回路特性を考慮して、適切なリプル周波数を設定することができ、バッテリの昇温能力を向上させることができる。また、回転電機と、電力変換器と、コンデンサとを流用するため、別途回路を設ける場合に比較して、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】駆動システムの構成図。
図2】制御装置50による制御処理を示す機能ブロック図。
図3】バッテリ10と平滑コンデンサ31との間の共振を説明するための図。
図4】バッテリ10、平滑コンデンサ31及びインバータ60のモデル回路。
図5】バッテリ内部抵抗特性推定部61による処理を示す機能ブロック図。
図6】バッテリ内部抵抗マップの一例を示す図。
図7】バッテリ電流特性推定部62による処理を示す機能ブロック図。
図8】バッテリ電流マップの一例を示す図。
図9】リプル電流指令制御部63による処理を示す機能ブロック図。
図10】消費電力特性マップの一例を示す図。
図11】モータ電流指令制御部51による処理を示す機能ブロック図。
図12】dq軸における動作点の設定態様を説明するための図。
図13】共振周波数と増幅率との関係を説明するための図。
図14】変形例における駆動システムの構成図。
図15】変形例における駆動システムの構成図。
図16】変形例における共振周波数と増幅率との関係を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、「電力変換装置の制御装置」を車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0011】
図1に示すように、車両は、駆動システム1として、バッテリ10と、BMU(Battery Management Unit)20と、電力変換器としてのインバータ30と、回転電機としてのモータ40と、制御装置50と、上位ECU100などを備える。
【0012】
バッテリ10は、例えば百V以上となる端子間電圧を有し、複数の電池セル11が並列又は直列接続されて構成されている。電池セル11として、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を用いることができる。
【0013】
BMU20は、バッテリ10の状態を監視し、バッテリ10の充放電制御を実施する装置である。より詳しくは、BMU20は、バッテリ10の端子電圧、SOC(蓄電状態)、SOH及びバッテリ温度等を監視し、それらの情報に基づいて、バッテリ10を充電させる、又はバッテリ10から電力を供給(放電)させる。
【0014】
インバータ30は、制御装置50からの制御信号に従って、バッテリ10とモータ40との間で双方向の電力変換を実行する。例えば、バッテリ10からの直流電力を交流電力に変換して、モータ40に供給して、モータ40を駆動させる。また、モータ40から供給された交流電力を直流電力に変換して、バッテリ10に供給する。なお、図示していないが、バッテリ10とインバータ30との間に、コンバータが設けられていてもよい。
【0015】
インバータ30は、上アームスイッチQUH,QVH,QWHと下アームスイッチQUL,QVL,QWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTやMOS-FETなどが用いられている。各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLには、フリーホイールダイオードとしての各ダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0016】
U相上アームスイッチQUHの低電位側端子と、U相下アームスイッチQULの高電位側端子とには、バスバー等のU相導電部材32Uを介して、モータ40のU相巻線41Uの第1端が接続されている。V相上アームスイッチQVHの低電位側端子と、V相下アームスイッチQVLの高電位側端子とには、バスバー等のV相導電部材32Vを介して、モータ40のV相巻線41Vの第1端が接続されている。W相上アームスイッチQWHの低電位側端子と、W相下アームスイッチQWLの高電位側端子とには、バスバー等のW相導電部材32Wを介して、モータ40のW相巻線41Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線41U,41V,41Wの第2端同士は、中性点Oで接続されている。なお、本実施形態において、各相巻線41U,41V,41Wは、ターン数が同じに設定されている。これにより、各相巻線41U,41V,41Wは、例えばインダクタンスが同じに設定されている。
【0017】
各上アームスイッチQUH,QVH,QWHの高電位側端子と、バッテリ10の正極端子とは、バスバー等の正極側母線Lpにより接続されている。各下アームスイッチQUL,QVL,QWLの低電位側端子と、バッテリ10の負極端子とは、バスバー等の負極側母線Lnにより接続されている。
【0018】
インバータ30は、正極側母線Lpと負極側母線Lnとを接続する平滑コンデンサ31を備えている。なお、平滑コンデンサ31は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。本実施形態において、インバータ30及び平滑コンデンサ31により、電力変換装置が構成されている。
【0019】
モータ40は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータ40は、ステータ巻線として星形結線されたU,V,W相巻線41U,41V,41Wを備えている。各相巻線41U,41V,41Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。モータ40は、インバータ30により駆動されて回転駆動力を発生し、モータ40が発生した駆動力は、駆動輪に伝達される。一方、車両の制動時には、モータ40は、発電機として動作し、回生発電を行なう。モータ40が発電した電力は、インバータ30を通じてバッテリ10に供給され、バッテリ10に蓄えられる。
【0020】
制御装置50は、CPUや各種メモリからなるマイコンを備えており、モータ40の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、モータ40の検出情報に基づいて、インバータ30を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。制御量は、例えばトルクである。モータ40の検出情報には、例えば、レゾルバ等の角度検出器(回転センサ42)により検出される回転子の回転角度θ(電気角情報)や、電圧センサにより検出される電源電圧(インバータ入力電圧)、電流センサ43~45により検出される各相の電流検出値Iu,Iv,Iwが含まれる。制御装置50は、例えば所定のスイッチング周波数(キャリア周波数)でのPWM制御により各スイッチのスイッチング制御を行う。
【0021】
また、制御装置50は、BMU20と通信可能とされている。また、制御装置50は、外部に設けられた上位ECU100と通信可能とされている。上位ECU100は、車両の制御を統括する。
【0022】
ちなみに、制御装置50は、自身が備える記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。
【0023】
次に、制御装置50により実行されるモータ40の駆動制御について説明する。車両の走行時(走行開始時を含む)において、アクセルペダルの踏み込み量及び車速に応じたトルク値をモータ40に発生させるためのトルク指令値Trが、上位ECU100のモータトルク指令制御部101から、制御装置50のモータ電流指令制御部51に入力される。モータ電流指令制御部51は、トルク-dqマップを用い、トルク指令値Trに基づいて、d軸の電流指令値であるd軸電流指令値Id*とq軸の電流指令値であるq軸電流指令値Iq*とを設定する。そして、d軸電流指令値Id*とq軸電流指令値Iq*とを、比較器52,53にそれぞれ出力する。なお、この回転直交座標をなすdq軸は、例えば、モータ40のロータを構成する永久磁石の界磁方向をd軸とし、このd軸と直交する方向をq軸としている。
【0024】
3相2相変換部57は、相ごとに設けられた電流センサ43~45による各相の電流検出値Iu,Iv,Iwを、回転センサ42から入力される回転角度θに基づいて界磁方向をd軸とする直交2次元回転座標系の成分であるd軸電流Idとq軸電流Iqとに変換し、比較器52,53にそれぞれ出力する。
【0025】
そして、比較器52は、d軸電流指令値Id*と、検出された実際のd軸電流Idとを比較し、その偏差(差分)を電流制御部54に出力する。同様に、比較器53は、q軸電流指令値Iq*と、検出された実際のq軸電流Iqとを比較し、その偏差(差分)を電流制御部54に出力する。
【0026】
電流制御部54は、入力された偏差に基づいて、d軸電流Id,q軸電流Iqを、それぞれd軸電流指令値Id*とq軸電流指令値Iq*に一致させるため、d軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*を例えば比例積分(PI)演算する。そして、d軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*を2相3相変換部55に出力する。
【0027】
2相3相変換部55は、回転センサ42から入力される回転角度θに基づいてd軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*を3相交流座標上でのU相指令電圧Vu,V相指令電圧Vv、及びW相指令電圧Vwに変換する。そして、2相3相変換部55は、変換したU相指令電圧Vu,V相指令電圧Vv、及びW相指令電圧VwをPWM波生成部56に出力する。
【0028】
PWM波生成部56は、U相指令電圧Vu,V相指令電圧Vv、及びW相指令電圧Vwに基づいてインバータ30の各スイッチのスイッチング制御を行うため、PWM波形信号(電圧指定値信号)Pu,Pv,Pwを生成する。
【0029】
インバータ30は、PWM波形信号に基づいてスイッチング制御され、バッテリ10から供給される直流電力を交流電力に変換して、モータ40の各相に供給する。これにより、トルク指令値Trに対応するように、モータ40が駆動する。なお、回生発電時には、モータ40が発電した交流電力がインバータ30により直流電力に変換されて、バッテリ10に供給される。
【0030】
以上のように、モータ電流指令制御部51、比較器52,53、電流制御部54、2相3相変換部55、PWM波生成部56、及び3相2相変換部57が、トルク指令値Trなどに基づいて、インバータ30の制御信号を生成し、出力するPWM制御部59として構成されている。このPWM制御部59が、特にモータ電流指令制御部51が、制御部に相当する。また、比較器52,53、電流制御部54、2相3相変換部55、PWM波生成部56、及び3相2相変換部57によって、d軸電流指令値及び前記q軸電流指令値に基づいて、スイッチング制御を実施するスイッチ制御部を構成する。
【0031】
続いて、制御装置50により実行されるバッテリ10の昇温制御について説明する。制御装置50は、所定の制御周期でバッテリ10の昇温要求があるか否かを判定する。例えば、上位ECU100からバッテリ10の昇温指示があったと判定した場合、又はBMU20により検出されたバッテリ温度が閾値温度(例えば、-20℃)未満であると判定した場合、昇温要求があると判定すればよい。ここで、閾値温度と比較する温度は、例えば、検出された各電池セル11の温度のうち最も低い温度、又は検出された各電池セル11の温度に基づいて算出した各電池セル11の平均温度としてもよい。
【0032】
なお、本実施形態において、昇温要求される状況は、モータ40の駆動前における車両の停車中の状況であっても、モータ40の駆動中、すなわち、車両走行中の状況であってもよい。
【0033】
昇温要求がないと判定した場合には、制御装置50は、昇温制御を終了し、前述した通常のモータ40の駆動制御を行う。一方、昇温要求があると判定した場合には、制御装置50は、バッテリ10を昇温させる昇温制御を行う。本実施形態における昇温制御の概略について説明する。本実施形態において、昇温制御を実施する際、制御装置50は、インバータ30によって、直流電力を交流電力に変換する際、高調波を交流電力に重畳させるようにしている。このようにインバータ30によって重畳された高調波は、バッテリ10に流れる電流(以下、バッテリ電流と示す)に重畳され、リプル電流が発生することとなる。リプル電流により、バッテリ10の内部抵抗による消費電力が増加するため、発熱が生じ、バッテリ10を昇温させることができる。
【0034】
ところで、リプル電流の周波数によって、バッテリ10の消費電力に関係するリプル電流の振幅が増減することがわかった。より詳しく説明する。図3に、昇温制御で用いられるバッテリ10、平滑コンデンサ31、インバータ30からなる回路の等価回路を示す。
【0035】
図3において電流源は、インバータ30に相当し、「Iinv」は、インバータ電流である。また、「C」は、平滑コンデンサ31の容量であり、「Rc」は、平滑コンデンサ31の内部抵抗である。また、「Rb」は、バッテリ10の内部抵抗であり、「Lb」は、バッテリ10内部の寄生インダクタンスであり、「Ibat」は、バッテリ10に流れるバッテリ電流である。また、「Ra」は、母線Lp,Lnの寄生抵抗であり、「La」は、母線Lp,Lnの寄生インダクタンスである。
【0036】
図3に示すように、リプル電流は、平滑コンデンサ31とバッテリ10との間において共振可能であることがわかり、共振により、その振幅が増幅されることがわかる。なお、バッテリ10に流れるリプル電流の振幅を最大にするインバータ電流の周波数(共振周波数f)は、増幅率を示す数式(1)から数式(2)に示すようにして求められる。
【数1】
【0037】
また、リプル電流は、平滑コンデンサ31とモータ40の巻線41(U相巻線41U,V相巻線41V,W相巻線41W)との間における共振によっても、その振幅が増幅されることもわかった。詳しく説明すると、昇温制御で用いられるバッテリ10、平滑コンデンサ31、インバータ30からなる回路は、図4に示すように、モデル化することができる。
【0038】
図4におけるモデル回路はd軸電流に関して、バッテリ10の端子間電圧を「E」とし、母線Lp,Lnの寄生抵抗を「Ra」とし、バッテリ10の内部抵抗を「Rb」とし、バッテリ10内部の寄生インダクタンスを、「Lb」としている。また、平滑コンデンサ31の電圧を「v」、容量を「C」としている。また、巻線41のd軸インダクタンスを「Ld」とし、巻き線抵抗を「Rd」としている。スイッチSW1pは、スイッチQUH,QVH,QWHのうちいずれかであり、スイッチSW2pは、スイッチQUH,QVH,QWHのうちいずれか(ただし、スイッチSW1pに相当するスイッチを除く)である。同様に、スイッチSW1nは、スイッチQUL,QVL,QWLのうちいずれかであり、スイッチSW2nは、スイッチQUL,QVL,QWLのうちいずれか(ただし、スイッチSW1nに相当するスイッチを除く)である。なお、バッテリ電流に含まれるリプル電流が最大振幅となるように、インバータ30は角周波数ωで180°通電制御で動作する。この時、回路方程式は、数式(3)に示すようになる。ただし、数式(3)における「ω0」及び「λ」は、数式(4)、(5)に示す通りである。
【数2】
【0039】
この回路方程式は、減衰を伴う強制振動の微分方程式であるため、数式(6)を満たすとき、最大振幅を得られる。このときの周波数fは、数式(7)に示すとおりである。なお、実際には誤差が生じるため、この近傍の値が実際の共振周波数となる可能性が高い。
【数3】
【0040】
また、バッテリ10の消費電力に関係するバッテリ10の内部抵抗も、リプル電流の周波数により、増減することも分かった。よって、本実施形態では、これらの特性を考慮して、消費電力が大きくなるようにリプル電流の周波数及び振幅を決定し、リプル電流を発生させるようにしている。以下、本実施形態における昇温制御について詳しく説明する。
【0041】
図2に示すように、制御装置50は、リプル電流を好適に発生させるために、バッテリ内部抵抗特性推定部61と、バッテリ電流特性推定部62と、リプル電流指令制御部63と、を備える。
【0042】
バッテリ内部抵抗特性推定部61は、バッテリ10の内部抵抗を推定する内部抵抗推定部に相当する。図5に示すように、バッテリ内部抵抗特性推定部61は、バッテリ内部抵抗マップ出力部61aと、内部抵抗特性計算部61bとを有する。バッテリ内部抵抗特性推定部61は、BMU20に接続されており、BMU20からバッテリ10のSOC(%)及びバッテリ温度(℃)を入力可能に構成されている。
【0043】
バッテリ内部抵抗マップ出力部61aは、図6に示すようなバッテリ10の内部抵抗と(バッテリ電流に含まれる)リプル電流の周波数との関係性を示すバッテリ内部抵抗マップR(f)を記憶している。このため、バッテリ内部抵抗マップ出力部61aが、内部抵抗マップ記憶部に相当する。また、以下では、リプル電流の周波数を単にリプル周波数と示す場合がある。バッテリ10の内部抵抗とリプル周波数との関係性は、バッテリ10のSOC及びバッテリ温度により変化する。このため、バッテリ内部抵抗マップ出力部61aは、バッテリ10のSOCとバッテリ温度の組み合わせごとに、バッテリ10の内部抵抗の周波数特性を示すバッテリ内部抵抗マップR(f)を複数記憶している。
【0044】
そして、バッテリ内部抵抗マップ出力部61aは、BMU20からバッテリ10のSOC及びバッテリ温度を入力すると、当該SOC及びバッテリ温度の組み合わせに近いバッテリ内部抵抗マップR(f)をいくつか選択し、内部抵抗特性計算部61bに出力する。
【0045】
例えば、入力したSOCが23%であり、バッテリ温度が-25℃である場合、バッテリ内部抵抗マップ出力部61aは、SOCが20%であり、バッテリ温度が-20℃であるときのバッテリ内部抵抗マップR(f)と、SOCが20%であり、バッテリ温度が-30℃であるときのバッテリ内部抵抗マップR(f)と、SOCが30%であり、バッテリ温度が-20℃であるときのバッテリ内部抵抗マップR(f)と、SOCが30%であり、バッテリ温度が-30℃である場合のバッテリ内部抵抗マップR(f)と、を選択し、出力する。なお、図5において、R(f)がバッテリ内部抵抗マップを示し、R(f)の間に、対応するSOC及びバッテリ温度の組み合わせを図示している。
【0046】
そして、内部抵抗特性計算部61bは、入力した複数種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)から、2次元線形補間により、入力した現在のSOC及びバッテリ温度に近いバッテリ内部抵抗マップR(f)を推定する。そして、バッテリ内部抵抗特性推定部61は、推定されたバッテリ内部抵抗マップR(f)をリプル電流指令制御部63に出力する。
【0047】
なお、図6に示すように、バッテリ内部抵抗マップR(f)は、一般的にリプル電流の周波数が小さい場合には、内部抵抗が大きくなり、リプル電流の周波数が大きい場合には、内部抵抗が小さくなる傾向がある。また、SOC及びバッテリ温度の組み合わせは、例示であり、それぞれどのような組み合わせに対応するバッテリ内部抵抗マップR(f)が記憶されていてもよい。また、バッテリ内部抵抗マップR(f)の記憶数を任意に変更してもよい。また、本実施形態では、複数種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)を選択し、それらに基づいてバッテリ内部抵抗マップR(f)を推定(生成)していたが、入力したSOC及びバッテリ温度の組み合わせに近い組み合わせに対応するバッテリ内部抵抗マップR(f)を選択するだけであってもよい。つまり、2次元線形補間を行う内部抵抗特性計算部61bを省略してもよい。また、選択数を任意に変更してもよい。
【0048】
バッテリ電流特性推定部62は、バッテリ電流の周波数特性を推定する周波数特性推定部に相当する。図7に示すように、バッテリ電流特性推定部62は、バッテリ電流マップ出力部62aと、バッテリ電流特性計算部62bと、リプル電流制限部62cと、を有する。バッテリ電流特性推定部62は、上位ECU100に接続されており、上位ECU100からトルク指令値Tr及びモータ回転数(rpm)を入力可能に構成されている。
【0049】
バッテリ電流マップ出力部62aは、図8に示すようなバッテリ10のバッテリ電流とリプル周波数との関係性を示すバッテリ電流マップI(f)を記憶している。したがって、バッテリ電流マップ出力部62aは、電流マップ記憶部に相当する。バッテリ電流とリプル周波数との関係性は、トルク指令値Trに対応するモータトルク及びモータ回転数により変化する。このため、バッテリ電流マップ出力部62aは、モータトルク及びモータ回転数の組み合わせごとに、バッテリ電流の周波数特性を示すバッテリ電流マップI(f)を複数記憶している。
【0050】
そして、バッテリ電流マップ出力部62aは、トルク指令値Tr及びモータ回転数を入力すると、当該トルク指令値Trに対応するモータトルク及びモータ回転数の組み合わせに近いバッテリ電流マップI(f)をいくつか選択し、バッテリ電流特性計算部62bに出力する。
【0051】
例えば、入力したトルク指令値Trが84Nmであり、モータ回転数が1430rpmである場合、バッテリ電流マップ出力部62aは、トルク指令値Trが50Nmであり、モータ回転数が1krpmであるときのバッテリ電流マップI(f)と、トルク指令値Trが50Nmであり、モータ回転数が2krpmであるときのバッテリ電流マップI(f)と、トルク指令値Trが100Nmであり、モータ回転数が1krpmであるときのバッテリ電流マップI(f)と、トルク指令値Trが100Nmであり、モータ回転数が2krpmであるときのバッテリ電流マップI(f)と、を選択し、出力する。なお、図7において、I(f)がバッテリ電流マップを示し、I(f)の間に当該マップに関係するモータトルク及びモータ回転数の組み合わせを図示している。
【0052】
そして、バッテリ電流特性計算部62bは、入力した複数種類のバッテリ電流マップI(f)から、2次元線形補間により、入力した現在のモータトルク及びモータ回転数に近いバッテリ電流マップI(f)を推定する。このため、バッテリ電流特性計算部62bは、電流特性計算部に相当する。そして、バッテリ電流特性推定部62は、推定されたバッテリ電流マップI(f)をリプル電流制限部62cに出力する。
【0053】
なお、バッテリ電流マップI(f)は、一般的に、ある周波数(つまり、共振周波数)近傍において、バッテリ電流がもっとも大きくなる傾向がある。また、モータトルク及びモータ回転数の組み合わせは、例示であり、それぞれどのような組み合わせに対応するバッテリ電流マップI(f)が記憶されていてもよい。また、バッテリ電流マップI(f)の記憶数を任意に変更してもよい。また、本実施形態では、複数種類のバッテリ電流マップI(f)を選択し、それらに基づいてバッテリ電流マップI(f)を生成していたが、入力したトルク指令値Trに対応するモータトルク及びモータ回転数の組み合わせに近い組み合わせに対応するバッテリ電流マップI(f)を選択するだけであってもよい。つまり、2次元線形補間を行うバッテリ電流特性計算部62bを省略してもよい。また、選択数を任意に変更してもよい。
【0054】
リプル電流制限部62cは、リプル電流の上限値を入力して、バッテリ電流マップI(f)において、図8に示すように、バッテリ電流の上限値を設定する。リプル電流の上限値は、予め記憶されており、バッテリ10やインバータ30の定格などにより決定される。リプル電流制限部62cは、バッテリ電流の上限値を設定したバッテリ電流マップI(f)をリプル電流指令制御部63に出力する。
【0055】
次に、リプル電流指令制御部63について図9に基づいて説明する。リプル電流指令制御部63は、バッテリ電流の周波数特性及びバッテリ10の内部抵抗に基づいて、リプル電流の周波数としてのリプル周波数を設定するリプル電流設定部に相当する。リプル電流指令制御部63は、消費電力特性推定部63aと、周波数制限設定部63bと、周波数決定部63cと、周波数指令値設定部63dと、同期検波部63eと、振幅決定部63fと、比較器63gと、振幅指令値設定部63hと、を備える。
【0056】
消費電力特性推定部63aは、バッテリ電流特性推定部62とバッテリ内部抵抗特性推定部61から、バッテリ内部抵抗マップR(f)と、バッテリ電流マップI(f)を入力する。そして、消費電力特性推定部63aは、入力したバッテリ内部抵抗マップR(f)とバッテリ電流マップI(f)から、数式(8)に基づいて、バッテリ10の内部抵抗に基づく消費電力と、リプル周波数との関係性を示す消費電力特性マップP(f)を生成する。図10(a)に消費電力特性マップP(f)の一例を示す。
【数4】
【0057】
また、周波数制限設定部63bは、周波数上限、周波数下限、及びモータ回転数を入力し、リプル周波数として制限される範囲(以下、単に制限範囲と示す)を設定する。周波数上限とは、モータ40やインバータ30による騒音が所定値以上とならない限度を示すものである。すなわち、周波数上限を超えたリプル周波数が設定された場合、騒音が所定値以上となる可能性が生じるため、周波数上限が設けられている。周波数上限は、モータ40等の機械的特性によるものであり、例えば、周波数上限として予め決められた値が記憶装置などに記憶されており、周波数制限設定部63bは、これを読み出すことにより取得する。周波数下限とは、バッテリ10の劣化を抑制するために設けられている。例えば、低温環境下でバッテリ10に周波数下限を下回る周波数を有するリプル電流が発生した場合、リチウムイオン蓄電池においてリチウム析出する可能性があり、これを抑制するために予め記憶装置などに記憶されている。周波数制限設定部63bは、記憶装置から読みだすことにより、周波数下限を取得する。
【0058】
また、モータ40の駆動時における基本波周波数の整数次成分とリプル周波数とが、一致した場合、リプル電流が予期せず過大となる可能性がある。そこで、周波数制限設定部63bは、それを防止するために、上位ECU100等から入力したモータ回転数に基づいて基本波周波数の整数次成分と同じリプル周波数を制限するように制限範囲を設定する。周波数制限設定部63bは、周波数上限、周波数下限、及びモータ回転数に基づいて設定した制限範囲を周波数決定部63cに出力する。
【0059】
周波数決定部63cは、リプル周波数の制限範囲、及び消費電力上限を入力し、それらに基づいて図10(b)に示すように、リプル周波数として設定可能な範囲を特定する。消費電力上限は、バッテリ10の規格などにより予め定められており、記憶装置などに記憶されている。そして、周波数決定部63cは、設定可能な範囲の中から入力した消費電力特性マップP(f)に基づいて、少なくともリプル周波数がゼロである場合に比較して、つまり、リプル電流を発生させない場合に比較して、消費電力が大きくなるリプル周波数範囲を特定し、当該周波数範囲の中からリプル周波数を設定する。本実施形態において、周波数決定部63cは、消費電力が最も高くなるリプル周波数を決定し、出力する。
【0060】
周波数指令値設定部63dは、周波数決定部63cからリプル周波数を入力し、インバータ30による電流の転流を考慮して、リプル周波数に所定の係数(1/2)を乗算する。これにより、周波数指令値設定部63dは、モータ40において発生させるリプル電流(交流電力(インバータ電流)に重畳させる高調波)の周波数指令値であるモータリプル電流周波数指令値を生成し、モータ電流指令制御部51に出力する。なお、電流の転流を考慮しなくてもよい場合、例えば、d軸電流及びq軸電流が正負を跨がない場合、モータ40において発生させるリプル電流の周期が、バッテリ電流に含まれるリプル電流の周期となるため、上記係数を「1」とすればよい。
【0061】
同期検波部63eは、図示しない電流センサにより検出されたバッテリ電流の検出値であるバッテリ電流検出値に基づいて、同期検波を行い、バッテリ電流におけるリプル周波数の成分、つまり、リプル電流の振幅であるバッテリリプル電流振幅検出値を抽出し、比較器63gに出力する。
【0062】
振幅決定部63fは、バッテリ電流マップI(f)を参照して、周波数決定部63cから入力したリプル周波数に基づいて、バッテリ電流のリプル周波数の成分を計算することにより、バッテリ電流に含まれるリプル電流の振幅を指令するためのバッテリリプル電流振幅指令値を生成する。
【0063】
比較器63gは、バッテリリプル電流振幅検出値とバッテリリプル電流振幅指令値とを比較し、その差分(偏差)を振幅指令値設定部63hに出力する。
【0064】
振幅指令値設定部63hは、入力された偏差に基づいて、バッテリリプル電流振幅検出値をバッテリリプル電流振幅指令値に一致させるため、モータ40に発生させるリプル電流の振幅(交流電力(インバータ電流)に重畳させる高調波)を指令するモータリプル電流振幅指令値を例えば比例積分(PI)演算する。そして、振幅指令値設定部63hは、モータリプル電流振幅指令値を、モータ電流指令制御部51に出力する。
【0065】
次に、リプル電流(高調波)を重畳させるためのモータ電流指令制御部51の構成について説明する。モータ電流指令制御部51は、図11に示すように、軸電流指令部としてのベース指令値生成部51aと、電流範囲設定部51bと、電流重畳部としてのリプル電流重畳部51cと、を有する。
【0066】
ベース指令値生成部51aは、トルク指令値Trを入力し、トルク―dqマップから、図12(a)に示すように、トルク指令値Trに対応するd軸電流ベース指令値及びq軸電流ベース指令値を設定する。電流範囲設定部51bは、モータ回転数及び電流絶対値制限を入力し、それらに基づいて、図12(b)に示すように、d軸電流及びq軸電流として設定可能な範囲を設定する。
【0067】
リプル電流重畳部51cは、図12(c)に示すように、d軸電流ベース指令値及びq軸電流ベース指令値に基づいて、等トルク曲線X1を特定する。そして、リプル電流重畳部51cは、等トルク曲線X1上において、モータリプル電流周波数指令値及びモータリプル電流振幅指令値に基づいて、モータ40の動作点をスイープさせる(一定速度で変化させる)。動作点とは、設定するd軸電流及びq軸電流により定まる点のことである。
【0068】
具体的には、リプル電流重畳部51cは、モータリプル電流振幅指令値に基づいて、等トルク曲線X1において移動させる移動範囲を設定する。その際、電流範囲設定部51bによって設定された、d軸電流及びq軸電流として設定可能な範囲を考慮して移動範囲を設定する。そして、リプル電流重畳部51cは、モータリプル電流周波数指令値に基づいて当該移動範囲において、往復移動させる周期(速さ)を設定する。
【0069】
そのように移動させる動作点に基づいて、リプル電流重畳部51cは、d軸電流指令値Id*とq軸電流指令値Iq*を設定し、比較器52,53にそれぞれ出力する。比較器52,53に出力した以降の説明は、前述した通常のモータ40の駆動制御における説明と同様であるため、省略する。
【0070】
これにより、インバータ30によって交流電力に高調波が重畳し、それが平滑コンデンサ31やモータ40を介してバッテリ10に伝わりバッテリ電流に所望のリプル電流が含まれることとなる。そして、このリプル電流の周波数や振幅は、バッテリ電流の周波数特性及びバッテリ10の内部抵抗の周波数特性を考慮して設定されており、消費電力が大きくなる。
【0071】
上記実施形態のように昇温制御を実施する制御装置50により、以下のような効果を得ることができる。
(1)モータ40の巻線41、平滑コンデンサ31及びバッテリ10の相互間でインバータ30を介してリプル電流(無効電流)のやり取りを実施させるように構成した。これにより、バッテリ10を昇温させる場合、インバータ30、平滑コンデンサ31、及び巻線41から構成される回路の特性により、バッテリ電流は、リプル周波数に応じてその大きさが変動することがわかった。そこで、制御装置50のバッテリ電流特性推定部62によって推定されたバッテリ電流の周波数特性を示すバッテリ電流マップI(f)に基づいて、リプル周波数を設定し、設定されたリプル周波数のリプル電流を発生させるように、スイッチング制御を実施させた。これにより、回路特性を考慮して、バッテリ電流を増大させるために、適切なリプル周波数を設定することができ、バッテリの昇温能力を向上させることができる。また、モータ40と、インバータ30と、平滑コンデンサ31とを流用するため、別途回路を設ける場合に比較して、装置を小型化することができる。
【0072】
(2)バッテリ電流マップ出力部62aは、モータトルクとモータ回転数の組み合わせごとに、バッテリ電流の周波数特性を示すバッテリ電流マップI(f)を記憶している。そして、バッテリ電流特性推定部62は、バッテリ電流マップ出力部62aから取得した複数のバッテリ電流マップI(f)を参照して、現在のモータトルクとモータ回転数の組み合わせに応じた、バッテリ電流マップI(f)を推定することとしている。具体的には、バッテリ電流特性推定部62のバッテリ電流特性計算部62bは、複数のバッテリ電流マップI(f)に対して2次元線形補間を行い、現在のモータトルクとモータ回転数の組み合わせに近いバッテリ電流マップI(f)を生成している。
【0073】
これにより、モータ40の動作状態を考慮して、適切なリプル周波数を設定することができる。つまり、モータトルクとモータ回転数の組み合わせに応じて、バッテリ電流の周波数特性に変化が生じる場合であっても、それらを考慮して適切なリプル周波数を設定することができる。
【0074】
(3)消費電力は、バッテリ10の内部抵抗と、バッテリ電流の大きさによって決定される。そこで、制御装置50は、バッテリ10の内部抵抗を推定し、バッテリ10の内部抵抗の周波数特性を示すバッテリ内部抵抗マップR(f)を生成して、出力するバッテリ内部抵抗特性推定部61を備えた。そして、リプル電流指令制御部63は、バッテリ電流マップI(f)と、バッテリ内部抵抗マップR(f)とから、リプル周波数と消費電力との関係性を示す消費電力特性マップP(f)を推定し、当該消費電力特性マップP(f)に基づいてリプル周波数を設定するようにした。これにより、より適切なリプル周波数を設定することができる。
【0075】
(4)リプル電流指令制御部63は、消費電力特性マップP(f)に基づいて、少なくともリプル周波数がゼロである場合に比較して、消費電力が大きくなるリプル周波数の範囲を特定し、当該周波数の範囲の中からリプル周波数を設定するようにした。これにより、少なくともリプル周波数がゼロである場合、つまり、直流電流を流した場合に比較して消費電力が大きくすることができる。
【0076】
(5)リプル電流指令制御部63は、消費電力特性マップP(f)に基づいて、最も消費電力が大きくなるリプル周波数を設定するようにした。これにより、消費電力が最大となるように、昇温能力を向上させることができる。
【0077】
(6)バッテリ10のSOC(蓄電状態)とバッテリ温度(電池温度)の組み合わせに応じて、バッテリ10の内部抵抗の周波数特性に変化が生じることがわかった。そこで、制御装置50は、バッテリ10のSOCとバッテリ温度の組み合わせごとに、バッテリ10の内部抵抗の周波数特性を示すバッテリ内部抵抗マップR(f)を記憶しているバッテリ内部抵抗マップ出力部61aを備えた。バッテリ内部抵抗マップ出力部61aは、この指定されたSOCとバッテリ温度の組み合わせに応じて、複数種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)を出力するように構成されている。
【0078】
そして、バッテリ内部抵抗特性推定部61は、複数種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)を参照して、現在のバッテリ10のSOCとバッテリ温度の組み合わせに応じたバッテリ内部抵抗マップR(f)を推定するようにした。具体的には、バッテリ内部抵抗特性推定部61の内部抵抗特性計算部61bは、複数種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)に対して2次元線形補間を行って、現在のバッテリ10のSOCとバッテリ温度の組み合わせに近いバッテリ内部抵抗マップR(f)を推定している。そして、リプル電流指令制御部63は、バッテリ電流マップI(f)とバッテリ内部抵抗マップR(f)とから、消費電力特性マップP(f)を生成するようにした。これにより、バッテリ10の状態を考慮して、適切なリプル周波数を設定することができる。
【0079】
(7)リプル電流重畳部51cは、d軸電流ベース指令値及びq軸電流ベース指令値により、等トルクを出力可能な等トルク曲線X1を特定し、リプル周波数及びリプル電流の振幅に基づいて、当該等トルク曲線X1上に動作点Pを設定するようにした。具体的には、リプル電流重畳部51cは、リプル電流の振幅に基づいて、等トルク曲線X1上で動作点を往復移動させる範囲を決定するとともに、リプル周波数に基づいて、等トルク曲線X1上で動作点Pを往復移動させる速さを決定する。そして、リプル電流重畳部51cは、それらの決定に基づいて動作点Pを等トルク曲線上で往復移動させることにより、インバータ30によって変換される交流電力に高調波を重畳させるようにしている。
【0080】
このように、リプル電流を発生させる際、要求トルクを満たす等トルク曲線X1上に、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を定める動作点Pを設定するため、リプル電流を重畳させることによりトルクに変動が生じることを防止できる。また、走行中に昇温することが可能となる。
【0081】
(8)リプル電流指令制御部63は、モータ回転数に基づいて、モータ40の基本波周波数の整数次成分とリプル周波数が一致しないように、リプル周波数を設定するようにしている。より詳しくは、制限範囲設定部66bは、モータ40の基本波周波数の整数次成分が、リプル周波数の設定範囲から除かれるように制限範囲を設定する。これにより、回転電機の基本波周波数の整数次成分とリプル周波数が一致して、リプル電流の振幅が予想以上に大きくなることや、騒音が大きくなることを抑制することができる。
【0082】
(9)リプル電流指令制御部63は、騒音が所定値以下となるように、リプル周波数の上限を設定している。より詳しくは、制限範囲設定部66bは、モータ40又はインバータ30などによる騒音が所定値以下となるように、リプル周波数の周波数上限に基づいて制限範囲を設定している。
【0083】
(10)リプル電流指令制御部63は、バッテリ10の劣化を抑制するように、リプル周波数の下限を設定している。より詳しくは、制限範囲設定部66bは、バッテリ10がリチウムイオン蓄電池である場合、低温時においてリプル周波数が低すぎて、リチウム析出が生じないように、リプル周波数の周波数下限に基づいて制限範囲を設定している。これにより、バッテリ10の劣化を抑制することができる。
【0084】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態における構成の一部を、以下に説明するように変更してもよい。以下、変形例について説明する。
【0085】
・上記実施形態において、リプル電流指令制御部63は、バッテリ電流マップI(f)と、バッテリ内部抵抗マップR(f)に基づいて、消費電力特性マップP(f)を生成し、消費電力特性マップP(f)に基づいてリプル周波数を設定していた。この別例として、リプル電流指令制御部63は、バッテリ電流マップI(f)に基づいて、リプル周波数がゼロの場合に比較してバッテリ電流が大きくなるリプル周波数を設定するようにしてもよい。これによって、簡単な処理で消費電力を増大させることができる。
【0086】
・上記実施形態において、共振周波数を算出して、共振周波数に基づいてリプル周波数を設定してもよい。具体的に説明すると、前述したように、リプル電流は、平滑コンデンサ31とバッテリ10との間において共振可能であり、このときの共振周波数(以下、配線共振周波数Fb2と示す)は、数式(2)に示す通り求めることができる。また、モータ40の巻線41と、平滑コンデンサ31との間においても共振可能であり、このときの共振周波数(以下、モータ共振周波数Fb1と示す)は、数式(7)に示す通り求めることができる。
【0087】
そこで、制御装置50は、これらの共振周波数Fb1,Fb2のうちいずれかを算出し、共振周波数Fb1,Fb2に基づいてリプル周波数を設定してもよい。若しくは、制御装置50は、これらの共振周波数Fb1,Fb2を算出し、共振周波数Fb1,Fb2のうち、バッテリ電流が大きくなるリプル周波数を特定し、それを設定してもよい。
【0088】
このように、リプル周波数を所定の共振周波数に設定されると、モータ40と平滑コンデンサ31との間において、若しくはバッテリ10と平滑コンデンサ31との間において、リプル電流を好適に共振させることができる。その結果として、バッテリ電流が増大して消費電力を増加させることができる。したがって、消費電力を増加させ、バッテリ10の昇温能力を向上させることができる。
【0089】
また、図13に示すように、共振周波数Fb1と共振周波数Fb2との間においては、一般的に増幅率(バッテリ電流)は、緩やかに大きくなりやすくなっている。そこで、制御装置50は、これらの共振周波数Fb1,Fb2を算出し、共振周波数Fb1と共振周波数Fb2との間の周波数範囲の中からリプル周波数を設定してもよい。その際、上記実施形態と同様に、リプル周波数の制限範囲や消費電力の上限などを考慮して、共振周波数Fb1と共振周波数Fb2との間の周波数範囲の中から好適なリプル周波数を設定することが望ましい。
【0090】
・上記実施形態において、モータトルクとモータ回転数に応じてバッテリ電流マップI(f)を推定していたが、モータトルクとモータ回転数に応じてバッテリ電流マップI(f)を変更しなくてもよい。これによれば、バッテリ電流マップI(f)を1種類設定し、記憶するだけでよくなる。つまり、製造の手間を少なくすることができる。
【0091】
・上記実施形態において、バッテリ電流マップI(f)を複数記憶したが、1種類だけであってもよい。この場合、1種類のバッテリ電流マップI(f)から、モータトルクとモータ回転数に応じたバッテリ電流マップI(f)を推定するように構成してもよい。
【0092】
・上記実施形態において、バッテリ電流マップI(f)を更新してもよい。例えば、制御装置50は、所定期間において、発生させるリプル電流のリプル周波数を少しずつ変化させることにより、バッテリ電流の周波数特性を取得し、バッテリ電流マップI(f)を更新する更新部としての機能を備えてもよい。これにより、車両の状態に応じたバッテリ電流の周波数特性をより正確に取得することができ、適切なリプル周波数を設定することができる。前記所定期間は、昇温制御中の期間であってもよいし、昇温制御が必要とされないときに設定されてもよい。
【0093】
・上記実施形態において、バッテリ10のSOCとバッテリ温度に応じて、複数種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)を推定していたが、SOCとバッテリ温度に応じてバッテリ内部抵抗マップR(f)を変更しなくてもよい。これによれば、バッテリ内部抵抗マップR(f)を1種類設定し、記憶するだけでよくなる。つまり、製造の手間を少なくすることができる。
【0094】
・上記実施形態において、バッテリ内部抵抗マップR(f)を複数記憶したが、1種類だけであってもよい。この場合、1種類のバッテリ内部抵抗マップR(f)から、SOCとバッテリ温度に応じたバッテリ内部抵抗マップR(f)を推定するように構成してもよい。
【0095】
・上記実施形態において、BMU20に内部抵抗を推定させ、制御装置50は、当該内部抵抗とバッテリ電流マップI(f)に基づいて、消費電力特性マップP(f)を推定してもよい。
【0096】
・上記実施形態において、等トルク曲線X1上において、動作点Pを往復移動させることにより、リプル電流を発生させるようにしていたが、リプル電流を発生させることができるのであれば、等トルク曲線X1上を移動させなくてもよい。
【0097】
・上記実施形態において、制御装置50は、リプル周波数及びリプル電流の振幅に基づいて、インバータ30のキャリア周波数をスイープさせることにより、リプル電流を発生させてもよい。これにより、リプル電流を容易に発生させることができる。
【0098】
・上記実施形態において、図14に示すように、正極側母線Lp及び負極側母線Lnに、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体と、コンデンサと、コイルとを備えた充電回路200が接続されている場合、制御装置50は、インバータ30の代わりに充電回路200を利用して、若しくはインバータ30とともに充電回路200を利用して、リプル電流を発生させてもよい。この場合、PWM制御部59は、リプル周波数及びリプル電流の振幅に基づいて、充電回路200のキャリア周波数をスイープさせることにより、リプル電流を発生させればよい。
【0099】
・上記実施形態において、図15に示すように、バッテリ10と平滑コンデンサ31との間に突入電流防止用のコイルCpが設けられている場合、このコイルCpを利用してリプル電流を増大させてもよい。詳しく説明すると、図15に示すように、バッテリ10と平滑コンデンサ31との間において、正極側母線Lpには、メインリレーSMRが設けられている。このメインリレーSMRには、プリチャージリレーPRpとコイルCpの直列接続体が並列に接続されている。このような回路構成を有する場合において、制御装置50は、昇温制御時において、メインリレーSMRをオフさせる一方でプリチャージリレーPRpをオンさせて、突入電力防止用のコイルCpを介してバッテリ電流を流すようにしてもよい。
【0100】
これにより、図16に示すように、突入電力防止用のコイルCpのインダクタンス値を上乗せすることができ、バッテリ電流に重畳させたリプル電流の振幅を大きくすることや、リプル周波数を低減させることができ、消費電力を大きくすることができる。なお、図16において、破線によりメインリレーSMRをオンした場合における増幅率のイメージを示し、実線によりプリチャージリレーPRpをオンした場合における増幅率のイメージを示している。
【0101】
・上記実施形態において、リプル周波数の上限及び下限を設けていたが、設けなくてもよい。また、モータ回転数に基づいて、モータ40の基本波周波数の整数次成分とリプル周波数が一致しないようにしていたが、一致してもよい。
【0102】
・上記実施形態において、走行中や停車中にかかわらず、バッテリ10の充電開始前に昇温制御を実施するように構成してもよい。バッテリ10の充電開始前に昇温させることにより、バッテリ10の入力電力の上限を上げることができ、バッテリ10の充電時間を短くできる。
【0103】
・上記実施形態において、バッテリ10の充電中に昇温制御を実施する場合、限られたバッテリ10の入力電力に対して昇温に使う電力を随時調整するようにしてもよい。これにより、バッテリ10の充電時間を短くできる。
【符号の説明】
【0104】
10…バッテリ、30…インバータ、31…平滑コンデンサ、40…モータ、50…制御装置、59…PWM制御部、62…バッテリ電流特性推定部、63…リプル電流指令制御部。
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