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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240409BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20240409BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240409BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B60R16/03 A
H02J1/00 304E
H02J7/34 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021067358
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162476
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】栗本 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】森 勝之
【審査官】大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-191440(JP,A)
【文献】実開昭54-161517(JP,U)
【文献】特開2013-95238(JP,A)
【文献】特開2008-172908(JP,A)
【文献】特開2001-041135(JP,A)
【文献】特開2013-258689(JP,A)
【文献】米国特許第7235898(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0233938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60R 16/03
H02J 1/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を担う第一車載ユニット(18)及び第二車載ユニット(28)へ、それぞれ第一電源ユニット(10)及び第二電源ユニット(20,2020)から電力を供給し、前記運転における当該電力供給の優先度が前記第一車載ユニットよりも前記第二車載ユニットにおいて高い電源システム(1)であって、
前記第一電源ユニットから前記第一車載ユニットへ電力を供給する第一供給ライン(12)と、
前記第二電源ユニットから前記第二車載ユニットへ電力を供給する第二供給ライン(22)と、
前記第一供給ライン及び前記第二供給ラインの間を電力供給可能に中継する中継供給ライン(32)と、
前記第二供給ラインにおいて前記中継供給ラインよりも前記第二電源ユニット側に設けられ、前記第二電源ユニット側から前記第二車載ユニット側へ向かって整流方向を設定する供給整流素子(24)と、
前記中継供給ラインに設けられ、前記第一供給ライン側から前記第二供給ライン側へ向かって整流方向を設定する中継整流素子(34)と、
前記第一供給ラインにおいて前記中継供給ラインよりも前記第一車載ユニット側に設けられ、第二電源ユニットから前記第二供給ラインへの電力供給が遮断されると、前記第一供給ラインをクローズ状態からオープン状態へスイッチングするリレーユニット(16)とを、備える電源システム。
【請求項2】
前記リレーユニットは、前記第二供給ラインにおいて前記供給整流素子よりも前記第二電源ユニット(20)側に接続され、前記第二電源ユニットから前記第二供給ラインへの電力供給により前記リレーユニットへ印加される電圧が許容範囲外へ低下するのに応じて、前記第一供給ラインをオープンする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記リレーユニットは、前記第二電源ユニット(2020)に接続され、前記第二供給ラインへの電力供給に対する前記第二電源ユニットの自己検知状態が遮断状態となるのに応じて、前記第一供給ラインをオープンする請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記第二供給ラインにおいて前記供給整流素子及び前記中継供給ラインの間に接続され、前記第二供給ラインへ電力を供給する補助電源ユニット(3040)を、さらに備える請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記第二供給ラインにおいて前記第二電源ユニット及び前記供給整流素子の間に接続され、前記第二供給ラインへ電力を供給する補助電源ユニット(3040)を、さらに備える請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項6】
車両の運転を担う第一車載ユニット(18)及び第二車載ユニット(28)へ、それぞれ第一電源ユニット(10)及び第二電源ユニット(20,2020)から電力を供給し、前記運転における当該電力供給の優先度が前記第一車載ユニットよりも前記第二車載ユニットにおいて高い電源システム(1)であって、
前記第一電源ユニットから前記第一車載ユニットへ電力を供給する第一供給ライン(12)と、
前記第二電源ユニットから前記第二車載ユニットへ電力を供給可能に整流される第二供給ライン(22)と、
前記第一供給ライン及び前記第二供給ラインの間を中継し、前記第一供給ラインから前記第二供給ラインへ電力を供給可能に整流される中継供給ライン(32)とを備え、
前記第二電源ユニットから前記第二供給ラインへの電力供給が遮断されると、前記第一供給ラインは、クローズ状態からオープン状態へスイッチングされる電源システム。
【請求項7】
前記第一車載ユニットは、前記運転を制御する制御コンピュータ(180)を、含み、
前記第二車載ユニットは、監視対象の前記制御コンピュータが機能停止した場合に当該機能停止の前記制御コンピュータを代替する監視コンピュータ(280)を、含む請求項1~6のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項8】
前記制御コンピュータは、前記第一供給ラインのクローズ状態からオープン状態へのスイッチングにより機能停止し、
前記監視コンピュータは、前記制御コンピュータの当該機能停止に応じて前記運転の制御を縮退させる請求項7に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される電源システムは、車両の第一負荷群及び第二負荷群へ、それぞれ第一電源ユニット及び第二電源ユニットから電力を供給している。この電源システムでは、第一電源ユニット及び第二電源ユニットのうち一方の短絡時に、それら電源ユニットのうち他方からの電力が、第一負荷群及び第二負荷群の双方へと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-217837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、移動する車両において、第一電源ユニット及び第二電源ユニットの各々から供給可能な最大電力量には、制約が生じる。そのため、第一負荷群及び第二負荷群の双方に必要な電力が、片側の電源ユニットのみから供給され続けることで、いずれの負荷群も電力供給不足となって作動停止するまでの時間は、正常時に比べて大幅に短くなる。ここで特に、各負荷群が車両の運転を担う車載ユニットを含む場合には、それら車載ユニットの作動停止が車両停止に直結することになるため、フェイルセーフ性の観点において改善が必要であった。
【0005】
本開示の課題は、フェイルセーフ性の高い電源システムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
車両の運転を担う第一車載ユニット(18)及び第二車載ユニット(28)へ、それぞれ第一電源ユニット(10)及び第二電源ユニット(20,2020)から電力を供給し、運転における当該電力供給の優先度が第一車載ユニットよりも第二車載ユニットにおいて高い電源システム(1)であって、
第一電源ユニットから第一車載ユニットへ電力を供給する第一供給ライン(12)と、
第二電源ユニットから第二車載ユニットへ電力を供給する第二供給ライン(22)と、
第一供給ライン及び第二供給ラインの間を電力供給可能に中継する中継供給ライン(32)と、
第二供給ラインにおいて中継供給ラインよりも第二電源ユニット側に設けられ、第二電源ユニット側から第二車載ユニット側へ向かって整流方向を設定する供給整流素子(24)と、
中継供給ラインに設けられ、第一供給ライン側から第二供給ライン側へ向かって整流方向を設定する中継整流素子(34)と、
第一供給ラインにおいて中継供給ラインよりも第一車載ユニット側に設けられ、第二電源ユニットから第二供給ラインへの電力供給が遮断されると、第一供給ラインをクローズ状態からオープン状態へスイッチングするリレーユニット(16)とを、備える。
【0008】
このような第一態様によると、第二電源ユニットから第二供給ラインへの電力供給が遮断されると、第一供給ラインにおいて中継供給ラインよりも第一車載ユニット側のリレーユニットにより、第一供給ラインがクローズ状態からオープン状態へスイッチングされる。その結果、第一供給ライン及び第二供給ライン間において第一供給ライン側から第二供給ライン側への整流方向が中継整流素子により設定された中継供給ラインを通じて、第一電源ユニットからの電力が第二車載ユニットへと供給される。このとき、第二供給ラインにおいて中継供給ラインよりも第二電源ユニット側の供給整流素子は、第二電源ユニット側から第二車載ユニット側へ向かう整流方向の設定により、第一電源ユニットからの電力が第二電源ユニットへ逆流供給される事態を、回避し得る。これによれば、車両の運転を担う第一車載ユニット及び第二車載ユニットのうち、当該運転における電力供給の優先度が高い後者に限定して、第一電源ユニットからの電力が供給されることになる。故に、優先度が高い第二車載ユニットの作動を、第一電源ユニットからの電力供給が可能な限り長く継続させて、車両の運転も継続させることができるので、高いフェイルセーフ性を発揮することが可能となる。
【0009】
本開示の第二態様は、
車両の運転を担う第一車載ユニット(18)及び第二車載ユニット(28)へ、それぞれ第一電源ユニット(10)及び第二電源ユニット(20,2020)から電力を供給し、運転における当該電力供給の優先度が第一車載ユニットよりも第二車載ユニットにおいて高い電源システム(1)であって、
第一電源ユニットから第一車載ユニットへ電力を供給する第一供給ライン(12)と、
第二電源ユニットから第二車載ユニットへ電力を供給可能に整流される第二供給ライン(22)と、
第一供給ライン及び第二供給ラインの間を中継し、第一供給ラインから第二供給ラインへ電力を供給可能に整流される中継供給ライン(32)とを備え、
第二電源ユニットから第二供給ラインへの電力供給が遮断されると、第一供給ラインは、クローズ状態からオープン状態へスイッチングされる。
【0010】
このような第二態様によると、第二電源ユニットから第二供給ラインへの電力供給が遮断されると、第一供給ラインがクローズ状態からオープン状態へとスイッチングされる。その結果、第一供給ラインから第二供給ラインへ電力供給可能に整流される中継供給ラインを通じて、第一電源ユニットからの電力が第二車載ユニットへと供給される。このとき、第二電源ユニットから第二車載ユニットへ電力供給可能に整流される第二供給ラインでは、第一電源ユニットからの電力が第二電源ユニットへ逆流する事態が、回避され得る。これによれば、車両の運転を担う第一車載ユニット及び第二車載ユニットのうち、当該運転における電力供給の優先度が高い後者に限定して、第一電源ユニットからの電力が供給されることとなる。故に、優先度が高い第二車載ユニットの作動を、第一電源ユニットから電力供給可能な限り長く継続させて車両の運転も継続させることができるので、高いフェイルセーフ性を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態による電源システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】第一実施形態による電源システムの作動を説明するためのブロック図である。
図3】第一実施形態による電源システムの作動を説明するためのブロック図である。
図4】第二実施形態による電源システムの全体構成を示すブロック図である。
図5】第三実施形態による電源システムの全体構成を示すブロック図である。
図6】第三実施形態による電源システムの作動を説明するためのブロック図である。
図7】第四実施形態による電源システムの全体構成を示すブロック図である。
図8】第四実施形態による電源システムの作動を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
図1に示す第一実施形態の電源システム1は、車両2に搭載される。車両2には、手動運転モードとの間での切り替えにより一時的に、又は当該切り替えが実質実行されずに定常的に、自動運転モードが与えられる。自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより、実現されてもよい。
【0014】
電源システム1は、電源ユニット10,20、供給ライン12,22,32、整流素子24,34、及びリレーユニット16、及び車載ユニット18,28を備えている。
【0015】
第一電源ユニット10は、例えばリチウムイオン電池、又はリチウムイオン電池及び変圧器の組み合わせ等により、直流電源を構成している。第一電源ユニット10は、車両2の起動中における放電によって第一供給ライン12に出力可能な電力を、蓄える。第一電源ユニット10は、車両2の停止中に外部からの充電を受けて、第一供給ライン12への電力を蓄えてもよい。第一電源ユニット10は、車両2の起動中に内部での発電を受けて、第一供給ライン12への電力を蓄えてもよい。
【0016】
第二電源ユニット20は、例えばリチウムイオン電池、又はリチウムイオン電池及び変圧器の組み合わせ等により、第一電源ユニット10とは実質同一電圧の直流電源を構成している。第二電源ユニット20は、車両2の起動中における放電によって第二供給ライン22に出力可能な電力を、蓄える。第二電源ユニット20は、車両2の停止中に外部からの充電を受けて、第二供給ライン22への電力を蓄えてもよい。第二電源ユニット20は、車両2の起動中に内部での発電を受けて、第二供給ライン22への電力を蓄えてもよい。
【0017】
第一供給ライン12は、例えばワイヤハーネス等により、直流電線路を構成している。第一供給ライン12は、車両2及びその搭載モジュールのうち少なくとも一方の内部を、這い回しされる。第一供給ライン12は、第一電源ユニット10と複数の第一車載ユニット18とを電気的に接続している。車両2の起動中において第一供給ライン12には、第一電源ユニット10に蓄えられた電力が、設定電圧(例えば12V等)の出力として供給される。第一電源ユニット10からの出力電力は、第一供給ライン12により各第一車載ユニット18へと供給される。また、後述の構成により第一電源ユニット10からの出力電力は、各供給ライン12,32,22を順次経由することで、複数の第二車載ユニット28へも供給可能となっている。
【0018】
第二供給ライン22は、例えばワイヤハーネス等により、直流電線路を構成している。第二供給ライン22は、車両2及びその搭載モジュールのうち少なくとも一方の内部を、這い回しされる。第二供給ライン22は、第二電源ユニット20と複数の第二車載ユニット28とを電気的に接続している。車両2の起動中において第二供給ライン22には、第二電源ユニット20に蓄えられた電力が、第一電源ユニット10からの場合と実質同一の設定電圧(例えば12V等)の出力として供給される。第二電源ユニット20からの出力電力は、第二供給ライン22により各第二車載ユニット28へと供給される。
【0019】
中継供給ライン32は、例えばワイヤハーネス等により、直流電線路を構成している。中継供給ライン32は、車両2及びその搭載モジュールのうち少なくとも一方の内部を、這い回しされる。中継供給ライン32は、第一供給ライン12上において第一電源ユニット10及び全第一車載ユニット18間となる中途部と、第二供給ライン22上において第二電源ユニット20及び全第二車載ユニット28間となる中途部を、電気的に接続している。これにより中継供給ライン32は、第一供給ライン12及び第二供給ライン22の間を、電力供給可能に中継している。特に、後述の構成により中継供給ライン32は、第一電源ユニット10からの出力電力を、第一供給ライン12から第二供給ライン22へ受け渡し可能となっている。
【0020】
供給整流素子24は、例えば整流ダイオード等により、直流整流器を構成している。供給整流素子24は、第二供給ライン22上において中継供給ライン32との接続部よりも第二電源ユニット20側となる中途部に、設けられている。供給整流素子24は、電力供給方向となる電流の整流方向を、第二電源ユニット20側から各第二車載ユニット28側へ向かって設定している。これにより第二供給ライン22では、各第二車載ユニット28側から第二電源ユニット20側へ向かう、電流逆流状態での電力供給が規制されている。
【0021】
中継整流素子34は、例えば整流ダイオード等により、直流整流器を構成している。中継整流素子34は、中継供給ライン32上において第一供給ライン12及び第二供給ライン22間となる中途部に、設けられている。中継整流素子34は、電力供給方向となる電流の整流方向を、第一供給ライン12側から第二供給ライン22側へ向かって設定している。これにより中継供給ライン32では、第二供給ライン22側から第一供給ライン12側へ向かう、電流逆流状態での電力供給が規制されている。
【0022】
リレーユニット16は、リレーライン160及びリレー本体162を有している。リレーライン160は、例えばワイヤハーネス等により、直流電線路を構成している。リレーライン160は、車両2及びその搭載モジュールのうち、少なくとも一方の内部を這い回しされる。リレーライン160は、第二供給ライン22上において供給整流素子24よりも第二電源ユニット20側の中途部と、リレー本体162との間を電気的に接続している。リレーライン160には、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給に応じて、許容範囲内の電圧が印加される。一方で、例えば第二電源ユニット20での故障又は蓄電不足等の異常に起因して、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が遮断されると、リレーライン160への印加電圧は、例えば0V等の、許容範囲外の電圧まで低下する。ここで、リレーライン160への印加電圧に対する許容範囲とは、第二電源ユニット20から供給される電力の設定電圧を含む一方、第二電源ユニット20からの供給電力の遮断に応じて低下した場合の最大電圧を除く範囲に、設定される。
【0023】
リレー本体162は、例えばメカニカルリレー等により、有接点型直流リレーを構成している。リレー本体162は、第一供給ライン12上において中継供給ライン32との接続部よりも各第一車載ユニット18側となる中途部に、設けられている。リレー本体162は、第二供給ライン22からリレーライン160への印加電圧に応じて、第一供給ライン12上の接点をクローズ状態とオープン状態との間で切り替える。
【0024】
具体的に、車両2の起動中に許容範囲内の正常電圧がリレーライン160へ印加される正常時には、リレー本体162が第一供給ライン12上の接点をクローズする。これに対して、車両2の起動中に許容範囲外へ低下した異常電圧がリレーライン160へ印加される異常時には、リレー本体162が第一供給ライン12上の接点をオープンする。以上の構成により、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への正常な電力供給が異常の発生に伴って遮断されると、リレーユニット16が第一供給ライン12をクローズ状態からオープン状態へスイッチングすることとなる。
【0025】
複数の第一車載ユニット18は、車両2及びその搭載モジュールのうち少なくとも一方の内部に、搭載されている。各第一車載ユニット18は、少なくとも二つ同士で同一の箇所、又は少なくとも二つ同士で相異なる箇所に、配置されている。各第一車載ユニット18は、車両2の運転を担う車載器のうち、全第二車載ユニット28よりも電力供給の優先度が低い車載器の中から、選択される。こうした低優先度の第一車載ユニット18としては、車両2の運転を制御する制御コンピュータ180(自動運転コンピュータ等)、及び当該運転制御にセンシング情報を提供するセンサデバイス(全方位センシング用のカメラ、LiDAR、レーダ等)が、少なくとも一つずつ含まれる。
【0026】
各第一車載ユニット18は、第一供給ライン12に対して並列に接続される。第一車載ユニット18のうち制御コンピュータ180は、異常時における第一供給ライン12のクローズ状態からオープン状態へのスイッチングにより、機能停止する。この機能停止により制御コンピュータ180は、車両2の運転制御を中止する。そこで制御コンピュータ180は、第一供給ライン12のクローズ状態からオープン状態へのスイッチングに応じた、機能停止に先立つフォールバック機能として、機能停止を表す死活判定信号を出力する。一方、こうした異常時に対して正常時には、正常機能状態を表す死活判定信号を、制御コンピュータ180は出力する。
【0027】
第二車載ユニット28は、車両2及びその搭載モジュールのうち少なくとも一方の内部に、搭載されている。各第二車載ユニット28は、少なくとも二つ同士で同一の箇所、又は少なくとも二つ同士で相異なる箇所に、配置されている。各第二車載ユニット28は、車両2の運転を担う車載器のうち、全第一車載ユニット18よりも電力供給の優先度が高い車載器の中から、選択される。こうした高優先度の第二車載ユニット28としては、第一車載ユニット18のうち少なくとも制御コンピュータ180を監視して異常時に代替する監視コンピュータ280(フォールバックコンピュータ等)、及び当該代替に最低限必要なセンシング情報を提供するセンサデバイス(前方センシング用のカメラ、レーダ等)が、少なくとも一つずつ含まれる。
【0028】
各第二車載ユニット28は、第二供給ライン22に対して並列に接続される。第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280は、例えば内部バス又はLAN等を介して制御コンピュータ180と通信可能に接続されている。監視コンピュータ280は、制御コンピュータ180からの死活判定信号を受信する。監視コンピュータ280は、受信する死活判定信号に基づくことで、制御コンピュータ180の状態を監視する。その結果、監視対象の制御コンピュータ180が機能停止した異常時には、監視コンピュータ280が当該機能停止の制御コンピュータ180を代替することになる。このとき監視コンピュータ280は、制御コンピュータ180の機能停止に応じて車両2の運転制御を、縮退させることで継続させる。
【0029】
ここで運転制御の縮退とは、自動運転モードにより安全に停止可能な退避場所にまで最低限の運転を継続するように車両2を退避させる、MRMであってもよい。あるいは運転制御の縮退とは、自動運転モードにおける乗員への縮退通知により、車両2の自動運転を乗員による手動運転へと引き継いで制御的に支援する、高度運転支援であってもよい。一方、こうした異常時に対して正常時には、制御コンピュータ180による運転制御を監視コンピュータ280は、例えば安全モデル等に基づき監視する。
【0030】
ここまで説明した電源システム1の作動を、説明する。
【0031】
図2に示すように車両2の起動中に、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が適正となる正常時には、許容範囲内の正常電圧がリレーライン160へ印加されることで、リレーユニット16が第一供給ライン12をクローズ状態に維持する。その結果、第一電源ユニット10からの出力電力は第一供給ライン12を通じて各第一車載ユニット18へ供給される一方、第二電源ユニット20からの出力電力は第二供給ライン22を通じて各第二車載ユニット28へ供給される。このとき、各供給ライン12,22において電力供給により印加される電圧、即ち各供給ライン12,22の電位が実質同一レベルとなることで、第一供給ライン12から中継供給ライン32を通じた第二供給ライン22への電力供給は制限される。また、そうした電位レベルに加えて中継整流素子34での逆流規制により、第二供給ライン22から中継供給ライン32を通じた第一供給ライン12への電力供給も制限される。
【0032】
このような正常時には、第一車載ユニット18のうち制御コンピュータ180が正常機能することで、車両2の運転を制御する。このとき、制御コンピュータ180からの死活信号が正常機能状態を表すため、第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280は、制御コンピュータ180による運転制御を監視する。
【0033】
図3に示すように車両2の起動中に、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が遮断される異常時には、許容範囲外の異常電圧がリレーライン160へ印加されることで、リレーユニット16が第一供給ライン12をオープン状態からクローズ状態へスイッチングする。その結果、第一電源ユニット10からの出力電力は、第一供給ライン12を通じた各第一車載ユニット18への供給を止められる一方、第一供給ライン12から中継供給ライン32及び第二供給ライン22を通じて各第二車載ユニット28へと供給される。このとき、第一供給ライン12から中継供給ライン32及び第二供給ライン22を通じた第二電源ユニット20への電力供給は、供給整流素子24での逆流規制により制限される。
【0034】
このような異常時には、第一車載ユニット18のうち制御コンピュータ180が機能停止する。これに先立ち、制御コンピュータ180からの死活判定信号が機能停止を表すことになるため、第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280は、制御コンピュータ180による車両2の運転制御を代替して縮退させることとなる。
【0035】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0036】
第一実施形態によると、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が遮断されると、第一供給ライン12において中継供給ライン32よりも第一車載ユニット18側のリレーユニット16により、第一供給ライン12がクローズ状態からオープン状態へスイッチングされる。その結果、第一供給ライン12及び第二供給ライン22間において第一供給ライン12側から第二供給ライン22側への整流方向が中継整流素子34により設定された中継供給ライン32を通じて、第一電源ユニット10からの電力が第二車載ユニット28へと供給される。このとき、第二供給ライン22において中継供給ライン32よりも第二電源ユニット20側の供給整流素子24は、第二電源ユニット20側から第二車載ユニット28側へ向かう整流方向の設定により、第一電源ユニット10からの電力が第二電源ユニット20へ逆流供給される事態を、回避し得る。
【0037】
また、別の視点で第一実施形態では、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が遮断されると、第一供給ライン12がクローズ状態からオープン状態へとスイッチングされる。その結果、第一供給ライン12から第二供給ライン22へ電力供給可能に整流される中継供給ライン32を通じて、第一電源ユニット10からの電力が第二車載ユニット28へと供給される。このとき、第二電源ユニット20から第二車載ユニット28へ電力供給可能に整流される第二供給ライン22では、第一電源ユニット10からの電力が第二電源ユニット20へ逆流する事態が、回避され得る。
【0038】
以上の如き第一実施形態によれば、車両2の運転を担う第一車載ユニット18及び第二車載ユニット28のうち、当該運転における電力供給の優先度が高い後者に限定して、第一電源ユニット10からの電力が供給されることになる。故に、優先度が高い第二車載ユニット28の作動を、第一電源ユニット10からの電力供給が可能な限り長く継続させて、車両2の運転も継続させることができるので、高いフェイルセーフ性を発揮することが可能となる。
【0039】
第一実施形態によると、第二供給ライン22において供給整流素子24よりも第二電源ユニット20側に接続されるリレーユニット16は、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給によるリレーユニット16への印加電圧が許容範囲外へ低下するのに応じて、第一供給ライン12をオープンする。これによれば、第二供給ライン22への電力供給が遮断されるのに伴って適時に、第一供給ライン12がオープン状態へとスイッチングされる。故に、高いフェイルセーフ性の発揮に貢献することが可能となる。
【0040】
第一実施形態によると、車両2の運転を制御する制御コンピュータ180を含む第一車載ユニット18に対して第二車載ユニット28は、監視対象の制御コンピュータ180が機能停止した場合に当該機能停止の制御コンピュータ180を代替する、監視コンピュータ280を含む。これによれば、第二電源ユニット20からの電力供給が遮断されても、制御コンピュータ180よりも電力供給の優先度が高い監視コンピュータ280により、車両2の運転制御を継続させることができる。故に、高いフェイルセーフ性の発揮に貢献することが可能となる。
【0041】
第一実施形態によると、第一車載ユニット18に含まれる制御コンピュータ180が、第一供給ライン12のオープン状態へのスイッチングにより機能停止するのに応じて、第二車載ユニット28に含まれる監視コンピュータ280が、車両2の運転制御を縮退させる。これによれば、第二電源ユニット20からの電力供給が遮断されても、制御コンピュータ180よりも電力供給の優先度が高い監視コンピュータ280により、車両2の運転制御を継続させつつ縮退もさせることができる。故に、運転制御の継続による電力消費をも抑えた、高いフェイルセーフ性を発揮することが可能となる。
【0042】
(第二実施形態)
図4に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0043】
第二実施形態の電源システム1において第二電源ユニット2020には、リレーユニット16のうちリレーライン160が電気的に接続されている。この第二電源ユニット2020では、第二供給ライン22への電力供給が自己検知される。その結果、第二電源ユニット2020による自己検知状態が正常供給状態となる間は、第二電源ユニット2020からリレーライン160への印加電圧が許容範囲内となるように、第二電源ユニット2020が設計されている。一方、第二電源ユニット2020による自己検知状態が遮断状態となると、それに応じて第二電源ユニット2020からリレーライン160への印加電圧が許容範囲外となるようにも、第二電源ユニット2020が設計されている。
【0044】
このような第二実施形態によると、第二電源ユニット2020に接続されるリレーユニット16は、第二供給ライン22への電力供給に対する第二電源ユニット2020の自己検知状態が遮断状態となるのに応じて、第一供給ライン12をオープンすることになる。これによれば、第二電源ユニット2020において電力供給の遮断状態が自己検知されるのに伴って適時に、第一供給ライン12がオープン状態へとスイッチングされる。故に、高いフェイルセーフ性の発揮に貢献することが可能となる。
【0045】
(第三実施形態)
図5に示すように第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0046】
第三実施形態の電源システム1には、補助電源ユニット3040及び補助供給ライン3042が追加されている。補助電源ユニット3040は、例えば蓄電池又はリチウムイオン電池等により、各電源ユニット10,20とは実質同一電圧の予備電源を構成している。補助電源ユニット3040は、車両2の起動中における放電によって第二供給ライン22に出力可能な電力を、蓄える。補助電源ユニット3040は、車両2の起動中に内部での発電を受けて、第二供給ライン22への電力を蓄えるとよい。
【0047】
補助電源ユニット3040は、第二供給ライン22上において中継供給ライン32の接続部と供給整流素子24との間となる中途部に、補助供給ライン3042を介して電気的に接続されている。ここで補助供給ライン3042は、例えばワイヤハーネス等により、補助電線路を構成している。車両2の起動中において補助電源ユニット3040に蓄えられた電力は、各電源ユニット10,20の場合とは実質同一の設定電圧(例えば12V等)の出力として、第二供給ライン22及び各第二車載ユニット28へ順次供給可能となっている。
【0048】
こうした構成の第三実施形態における車両2の起動中に、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が遮断される異常時には、第一実施形態に準じて第一電源ユニット10からの出力電力が各第二車載ユニット28へと供給される。この電力供給下、各第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280が車両2の運転制御を代替して縮退させるに当たり、第一電源ユニット10からの供給電力は各第二車載ユニット28により消費されていく。その結果、第一電源ユニット10からの電力不足が生じて電圧が低下すると、図6に示されるように今度は補助電源ユニット3040からの出力電力が、補助供給ライン3042から第二供給ライン22を通じて各第二車載ユニット28へと供給されることになる。こうして補助電源ユニット3040からの出力電力が各第二車載ユニット28へ供給される間も、それら第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280は、車両2の運転制御を代替して縮退させる機能を継続可能となる。
【0049】
このような第三実施形態によると、第二供給ライン22へ電力を供給する補助電源ユニット3040は、第二供給ライン22において供給整流素子24及び中継供給ライン32の間に接続される。これによれば、第二電源ユニット20からの電力供給が遮断された後の第二車載ユニット28に対しては、第一電源ユニット10からの電力が遮断されたとしても、補助電源ユニット3040からの電力供給を継続することができる。故に、車両2の運転継続が可能な時間を引き伸ばす三重冗長系によって、高いフェイルセーフ性を発揮することが可能となる。
【0050】
(第四実施形態)
図7に示すように第四実施形態は、第三実施形態の変形例である。
【0051】
第四実施形態の電源システム1において補助供給ライン4042は、第二供給ライン22上において第二電源ユニット20と供給整流素子24との間となる中途部に、補助電源ユニット3040を接続させている。
【0052】
こうした構成の第四実施形態における車両2の起動中に、第二電源ユニット20から第二供給ライン22への電力供給が遮断される異常時には、図8に示されるように補助電源ユニット3040からの出力電力が、補助供給ライン3042から第二供給ライン22へ供給される。このとき、許容範囲内の正常電圧がリレーライン160へ印加されることで、リレーユニット16が第一供給ライン12をクローズ状態に維持する。その結果、補助電源ユニット3040からの出力電力が、第二供給ライン22を通じて各第二車載ユニット28へと供給される。補助電源ユニット3040からの出力電力が各第二車載ユニット28へ供給される間は、クローズ状態の第一供給ライン12を通じて第一電源ユニット10からの出力電力が、各第一車載ユニット18への供給を継続させる。こうして、各第一車載ユニット18のうち制御コンピュータ180は、機能停止せずに正常機能することとなり、また各第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280は、制御コンピュータ180による運転制御の監視を継続することとなる。
【0053】
この後、各第二車載ユニット28への供給が継続されることで、補助電源ユニット3040からの電力不足が生じて電圧が低下した場合には、許容範囲外の異常電圧がリレーライン160へ印加されることで、リレーユニット16が第一供給ライン12をオープン状態へスイッチングする。その結果として今度は、第一実施形態に準じて第一電源ユニット10からの出力電力が、各第二車載ユニット28へと供給されることとなる。こうして第一電源ユニット10からの出力電力が各第二車載ユニット28へ供給されることで、それら第二車載ユニット28のうち監視コンピュータ280が車両2の運転制御を代替して縮退させることとなる。
【0054】
このような第四実施形態によると、第二供給ライン22へ電力を供給する補助電源ユニット3040は、第二供給ライン22において第二電源ユニット20及び供給整流素子24の間に接続される。これによれば、第二電源ユニット20からの電力供給が遮断されても、補助電源ユニット3040から第二供給ライン22への電力供給により、第一供給ライン12がクローズ状態に維持される。さらに第二車載ユニット28に対しては、補助電源ユニット3040からの電力が消費されて枯渇したとしても、今度は第一供給ライン12がオープン状態にスイッチングされることで、第一電源ユニット10からの電力供給が継続される。故に、車両2の運転制御が縮退されるまでの時間を引き伸ばして、高いフェイルセーフ性を発揮することが可能となる。
【0055】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0056】
変形例においてリレーユニット16のリレー本体162は、例えば半導体リレー等により、無接点型直流リレーを構成していてもよい。変形例において第一車載ユニット18は、例えば制御コンピュータ180のみ等、単一のユニットであってもよい。変形例において第二車載ユニット28は、例えば監視コンピュータ280のみ等、単一のユニットであってもよい。変形例において第三及び第四実施形態には、第二実施形態の第二電源ユニット2020が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:電源システム、10:第一電源ユニット、12:第一供給ライン、16:リレーユニット、18:第一車載ユニット、20,2020:第二電源ユニット、22:第二供給ライン、24:供給整流素子、28:第二車載ユニット、32:中継供給ライン、34:中継整流素子、180:制御コンピュータ、280:監視コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8