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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】レール検査装置
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20240409BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20240409BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240409BHJP
   E01B 35/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B61K9/08
B61B3/02
B61B13/00 L
B61B13/00 W
E01B35/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021160784
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050599
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-62241(JP,A)
【文献】特開2001-213311(JP,A)
【文献】特開2006-290177(JP,A)
【文献】特開2004-094417(JP,A)
【文献】特開2018-177037(JP,A)
【文献】特開2004-122991(JP,A)
【文献】特開2011-109860(JP,A)
【文献】特開2008-207755(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 9/08
B61B 3/02
B61B 13/00
E01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の走行レール及び案内レールに沿って走行方向に走行する台車を備えたレール検査装置であって、
上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
一対の前記走行レールは、前記幅方向に並んで互いに平行に配置されていると共に、前記走行方向が直線状となる直線区間と、前記走行方向が曲線状となるカーブ区間と、を備え、
前記案内レールは、前記カーブ区間に少なくとも設置されていると共に、一対の前記走行レールに対して上下方向の異なる位置において一対の前記走行レールの少なくとも一方と平行に配置され、
前記台車は、前記幅方向に並ぶ右前輪及び左前輪と、前記右前輪及び前記左前輪よりも前記走行方向の後側に配置され、前記幅方向に並ぶ右後輪及び左後輪と、案内輪と、を備え、
前記右前輪及び前記右後輪は、一対の前記走行レールの一方である右レール上を転動するように設けられ、
前記左前輪及び前記左後輪は、一対の前記走行レールの他方である左レール上を転動するように設けられ、
前記案内輪は、前記案内レールに対して前記幅方向の一方側から接触して転動するように設けられ、
前記台車が前記直線区間を走行する場合には、前記右前輪及び前記右後輪が前記右レールに接触して転動すると共に、前記左前輪及び前記左後輪が前記左レールに接触して転動し、前記案内輪が前記案内レールから離間し、
前記台車が前記カーブ区間を走行する場合には、前記右前輪及び前記右後輪の組と前記左前輪及び前記左後輪の組との一方が、対応する前記走行レールに接触して転動する接触輪となると共に、前記右前輪及び前記右後輪の組と前記左前輪及び前記左後輪の組との他方が、対応する前記走行レールから離間する離間輪となり、更に、前記案内輪が前記案内レールに接触して転動し、
接触時期判定処理とカーブ進入時期判定処理とレール検査処理とを実行する判定部を更に備え、
前記接触時期判定処理は、前記案内輪が前記案内レールに接触した時期である接触時期を判定する処理であり、
前記カーブ進入時期判定処理は、前記右前輪及び前記左前輪が前記直線区間から前記カーブ区間に入った時期であるカーブ進入時期を判定する処理であり、
前記レール検査処理は、前記カーブ進入時期と前記接触時期との前後関係に基づいて、前記案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かを判定する処理である、レール検査装置。
【請求項2】
前記案内レールは、一対の前記走行レールに対して上側に配置され、
前記レール検査処理では、前記接触時期が、前記カーブ進入時期に対して、予め定めた判定範囲を超えて前であった場合、前記案内レールの設置位置が前記適正範囲に対して、前記幅方向における前記接触輪の側にずれていると判定する、請求項1に記載のレール検査装置。
【請求項3】
前記案内レールは、一対の前記走行レールに対して上側に配置され、
前記レール検査処理では、前記接触時期と前記カーブ進入時期との差が、予め定めた判定範囲内である場合に、前記案内レールの設置位置が前記適正範囲内、又は、前記案内レールの設置位置が前記適正範囲に対して、前記幅方向における前記離間輪の側にずれていると判定する、請求項1又は2に記載のレール検査装置。
【請求項4】
前記右前輪及び前記左前輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する測定部を更に備え、
前記判定部は、前記測定部により検出される速度の振動が生じた時期を前記接触時期と判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のレール検査装置。
【請求項5】
前記右前輪及び前記左前輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、前記右後輪及び前記左後輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、を測定する測定部を更に備え、
前記判定部は、前記測定部の検出結果に基づく、前記右前輪及び前記左前輪の回転速度と前記右後輪及び前記左後輪の回転速度との差である前後輪速度差が規定値以上となった時期を前記カーブ進入時期と判定する、請求項1から4のいずれか一項に記載のレール検査装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記前後輪速度差として、前記右前輪及び前記左前輪の回転速度と前記右後輪及び前記左後輪の回転速度との差の値から高周波成分を除去した値を用いて前記カーブ進入時期判定処理を行う、請求項5に記載のレール検査装置。
【請求項7】
前記台車は、物品を保持して搬送する搬送車であり、
前記判定部は、前記搬送車の走行中に、前記接触時期判定処理、前記カーブ進入時期判定処理、及び前記レール検査処理を実行する、請求項1から6のいずれか一項に記載のレール検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の走行レール及び案内レールに沿って走行方向に走行する台車を備えたレール検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなレール検査装置の一例が、特開2018-62241号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1の図5に示されているように、特許文献1のレール検査装置(2)は、一対の走行レール(91)及びガイドレール(92)に沿って走行する台車(20)を備えている。ガイドレール(92)は、一対の走行レール(91)の幅方向(W)の中央位置において、走行レール(91)よりも上方に設置されている。台車(20)は、走行レール(91)上を転動する車輪(22)と、走行レール(91)の側面(91a)に接して転動する第一ローラ(31)と、ガイドレール(92)の側面(92a)に接して転動する第二ローラ(32)と、を備えている。
【0003】
特許文献1の段落0003に記載されているように、走行レールに対するガイドレールの位置関係が適正な状態となっていることが重要である。この点に関し、特許文献1の図5に示されるレール検査装置(2)では、台車(20)が第一位置センサ(41)と第二位置センサ(42)とを備えており、これら2つのセンサの検出結果に基づいて、走行レール(91)の側面(91a)とガイドレール(92)の側面(92a)との間の幅方向間隔(Δw)が算出される。そして、算出された幅方向間隔(Δw)に基づいて、走行レール(91)とガイドレール(92)との設置状態の異常の有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-62241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、案内レール(特許文献1では、ガイドレール)の設置位置が適正範囲内でない場合の台車の挙動は、案内レールの設置位置が適正範囲内である場合の台車の挙動とは異なるのが通常である。そのため、特許文献1のレール検査装置のように、検査のための専用の2つのセンサを台車に設けて走行レールと案内レールとの間の幅方向間隔を算出するのではなく、台車の挙動に基づいて、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かの検査を行うことが考えられる。台車が自走式の台車である場合、台車の挙動(例えば、走行挙動)を制御するための各種センサが台車に設けられているため、台車の挙動に基づき検査を行う場合、台車に既存のセンサを検査にも利用してコストの低減を図ることが可能となる。また、台車の挙動に基づき検査を行う場合、台車の実際の挙動を考慮して案内レールの設置位置の良否を判断することもできる。このように、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かの検査を、台車の挙動に基づいて行うことの利点があるが、特許文献1には、台車の挙動に基づき検査を行うことは開示されていない。
【0006】
そこで、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かの検査を、台車の挙動に基づき行うことが可能なレール検査装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレール検査装置は、一対の走行レール及び案内レールに沿って走行方向に走行する台車を備えたレール検査装置であって、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、一対の前記走行レールは、前記幅方向に並んで互いに平行に配置されていると共に、前記走行方向が直線状となる直線区間と、前記走行方向が曲線状となるカーブ区間と、を備え、前記案内レールは、前記カーブ区間に少なくとも設置されていると共に、一対の前記走行レールに対して上下方向の異なる位置において一対の前記走行レールの少なくとも一方と平行に配置され、前記台車は、前記幅方向に並ぶ右前輪及び左前輪と、前記右前輪及び前記左前輪よりも前記走行方向の後側に配置され、前記幅方向に並ぶ右後輪及び左後輪と、案内輪と、を備え、前記右前輪及び前記右後輪は、一対の前記走行レールの一方である右レール上を転動するように設けられ、前記左前輪及び前記左後輪は、一対の前記走行レールの他方である左レール上を転動するように設けられ、前記案内輪は、前記案内レールに対して前記幅方向の一方側から接触して転動するように設けられ、前記台車が前記直線区間を走行する場合には、前記右前輪及び前記右後輪が前記右レールに接触して転動すると共に、前記左前輪及び前記左後輪が前記左レールに接触して転動し、前記案内輪が前記案内レールから離間し、前記台車が前記カーブ区間を走行する場合には、前記右前輪及び前記右後輪の組と前記左前輪及び前記左後輪の組との一方が、対応する前記走行レールに接触して転動する接触輪となると共に、前記右前輪及び前記右後輪の組と前記左前輪及び前記左後輪の組との他方が、対応する前記走行レールから離間する離間輪となり、更に、前記案内輪が前記案内レールに接触して転動し、接触時期判定処理とカーブ進入時期判定処理とレール検査処理とを実行する判定部を更に備え、前記接触時期判定処理は、前記案内輪が前記案内レールに接触した時期である接触時期を判定する処理であり、前記カーブ進入時期判定処理は、前記右前輪及び前記左前輪が前記直線区間から前記カーブ区間に入った時期であるカーブ進入時期を判定する処理であり、前記レール検査処理は、前記カーブ進入時期と前記接触時期との前後関係に基づいて、前記案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かを判定する処理である。
【0008】
本構成では、台車が直線区間を走行する場合には案内輪が案内レールから離間し、台車がカーブ区間を走行する場合には案内輪が案内レールに接触して転動するため、台車が直線区間からカーブ区間に入る過程で、案内輪が案内レールに接触する。案内レールの設置位置が適正範囲内である場合には、台車の右前輪及び左前輪が直線区間からカーブ区間に入るのに合わせて、案内輪が案内レールに接触する。この場合、案内輪が案内レールに接触する時期である接触時期と、右前輪及び左前輪が直線区間からカーブ区間に入る時期であるカーブ進入時期との時期的な前後関係が、規定の範囲内となる。一方、案内レールの設置位置が適正範囲内でない場合には、接触時期とカーブ進入時期との時期的な前後関係が、規定の範囲外となる。本構成によれば、このようなカーブ進入時期と接触時期との関係に着目して、カーブ進入時期と接触時期との前後関係に基づいて、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かを判定することができる。このように、本構成によれば、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かの検査を、台車の挙動に基づき行うことが可能となっている。
【0009】
レール検査装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】台車の斜視図
図2】台車の正面図
図3】直線区間に位置する台車の平面図
図4】直線区間とカーブ区間との境界に位置する台車の平面図
図5】台車がカーブ区間を通過する場面を時系列的に示す図
図6】案内レールの設置位置が適正範囲内である場合の台車の挙動の説明図
図7】案内レールの設置位置が適正範囲内である場合の車輪の回転速度及び出力信号の時間変化図
図8】案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における接触輪の側にずれている場合の台車の挙動の説明図
図9】案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における接触輪の側にずれている場合の車輪の回転速度及び出力信号の時間変化図
図10】案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における離間輪の側にずれている場合の台車の挙動の説明図
図11】案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における離間輪の側にずれている場合の車輪の回転速度及び出力信号の時間変化図
図12】制御ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
レール検査装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明するレール検査装置の種々の技術的特徴は、レール検査装置を用いたレール検査方法や、レール検査装置を制御するためのレール検査プログラムにも適用可能であり、そのような方法やプログラム、更には、そのようなプログラムが記憶された記憶媒体(例えば、光ディスク、フラッシュメモリ等)も、本明細書によって開示される。
【0012】
図1及び図2に示すように、レール検査装置1は、一対の走行レール80及び案内レール83に沿って走行方向Xに走行する台車10(ここでは、自走式の台車10)を備えている。図1では、案内レール83を省略している。一対の走行レール80及び案内レール83は、台車10の走行経路70に沿って配置されている。上下方向Z(鉛直方向)に沿う上下方向Z視(平面視)で走行方向Xに直交する方向を幅方向Yとする。ここでは、幅方向Yは、走行方向Xに直交する水平方向である。
【0013】
本実施形態では、レール検査装置1は、物品2を搬送する物品搬送設備100に適用されている。そして、物品2を保持して搬送する搬送車(物品搬送車)を、案内レール83の設置位置が適正範囲内であるか否かの検査のための台車10として利用している。すなわち、本実施形態では、台車10は、物品2を保持して搬送する搬送車である。図1に示すように、本実施形態では、台車10は、天井に沿って形成された走行経路70に沿って走行する天井搬送車である。そのため、図示は省略するが、一対の走行レール80及び案内レール83(図2参照)は、例えば、天井から吊り下げ支持される。なお、台車10は、天井搬送車以外の搬送車であってもよい。また、物品2の種類はこれに限定されないが、物品2は、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)とされる。
【0014】
図3及び図4に示すように、一対の走行レール80は、幅方向Yに並んで互いに平行に配置されている。一対の走行レール80は、上下方向Zの同じ位置に(すなわち、同じ高さに)配置されている。一対の走行レール80は、走行方向Xが直線状となる直線区間71と、走行方向Xが曲線状となるカーブ区間72と、を備えている。すなわち、走行経路70には、直線区間71とカーブ区間72とが含まれている。直線区間71には、一対の走行レール80の双方が設置される。一方、カーブ区間72には、一対の走行レール80の少なくとも一方が設置される。具体的には、カーブ区間72には、一対の走行レール80のうちの、少なくとも後述する接触輪20Aが転動する方が設置される。図3及び図4では、カーブ区間72に一対の走行レール80の双方が設置される場合を例示している。なお、図3及び図4に示すカーブ区間72は、2つの直線区間71のそれぞれの端部同士を接続しているが、カーブ区間72は、直線区間71から分岐したり直線区間71に合流するように設けられてもよい。
【0015】
案内レール83は、カーブ区間72に少なくとも設置されている。図3及び図4に示す例では、案内レール83は、カーブ区間72の全域と、直線区間71における境界B(直線区間71とカーブ区間72との境界B)側の一部とに、設置されている。案内レール83は、上下方向Z視で一対の走行レール80の間に配置されている。ここでは、案内レール83は、上下方向Z視で一対の走行レール80の間の幅方向Yの中央部に(言い換えれば、走行経路70の幅方向Yの中央部に)配置されている。
【0016】
案内レール83は、一対の走行レール80に対して上下方向Zの異なる位置に配置されている。図2に示すように、本実施形態では、案内レール83は、一対の走行レール80に対して上下方向Zの上側Z2に配置されている。また、案内レール83は、一対の走行レール80の少なくとも一方と平行に配置されている。直線区間71では、案内レール83は、一対の走行レール80の双方と平行に配置される。カーブ区間72に一対の走行レール80が設置されている場合には、案内レール83は、一対の走行レール80の双方と平行に配置され、カーブ区間72に一対の走行レール80の一方(具体的には、一対の走行レール80のうちの接触輪20Aが転動する方)のみが設置されている場合には、案内レール83は、一対の走行レール80の当該一方と平行に配置される。
【0017】
図1に示すように、台車10は、幅方向Yに並ぶ右前輪24及び左前輪23と、幅方向Yに並ぶ右後輪22及び左後輪21と、を備えている。右後輪22及び左後輪21は、右前輪24及び左前輪23よりも走行方向Xの後側X2に配置されている。右前輪24及び右後輪22は、一対の走行レール80の一方(具体的には、台車10の進行方向を向いて右側に配置された方)である右レール82上を転動するように設けられ、左前輪23及び左後輪21は、一対の走行レール80の他方(具体的には、台車10の進行方向を向いて左側に配置された方)である左レール81上を転動するように設けられる。このように、右レール82は、右前輪24及び右後輪22の組に対応する走行レール80であり、左レール81は、左前輪23及び左後輪21の組に対応する走行レール80である。本実施形態では、左後輪21、右後輪22、左前輪23、及び右前輪24は、それぞれ1つずつ設けられている。
【0018】
左後輪21、右後輪22、左前輪23、及び右前輪24は、上下方向Zに直交する軸心回り(言い換えれば、幅方向Yに沿う軸心回り)に回転するように設けられている。そして、右前輪24及び右後輪22は、右レール82における上側Z2を向く面(ここでは、水平面)に接触して転動し、左前輪23及び左後輪21は、左レール81における上側Z2を向く面(ここでは、水平面)に接触して転動する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、台車10は、第1走行部11と第2走行部12とを備えている。第2走行部12は、第1走行部11に対して走行方向Xの前側X1に配置されている。右後輪22及び左後輪21は、第1走行部11に設けられ、右前輪24及び左前輪23は、第2走行部12に設けられている。台車10は、当該台車10の前後方向である車体前後方向Lが走行方向Xに沿う姿勢で走行経路70に配置される。上下方向Z視で後述する第1軸心A1と第2軸心A2とを結ぶ方向(図3図4参照)が、車体前後方向Lである。カーブ区間72では、台車10は、上下方向Z視で車体前後方向Lが曲線状の走行方向Xの接線方向に沿う姿勢(図4参照)で走行経路70に配置される。また、図1に示すように、台車10は、当該台車10の上下方向である車体上下方向Hが上下方向Zに沿う姿勢で走行経路70に配置される。本明細書における「走行方向X」及び「上下方向Z」は、基本的に、「車体前後方向L」及び「車体上下方向H」と言い換えることができる。
【0020】
図1に示すように、台車10は、第1走行部11及び第2走行部12に連結された本体部13を備えている。本実施形態では、本体部13は、第1走行部11及び第2走行部12に対して上下方向Zの下側Z1に配置された状態で、第1走行部11及び第2走行部12に支持されている。詳細は省略するが、本体部13は、物品2を保持する保持部を備えており、物品2は、当該保持部に保持された状態で、台車10により搬送される。
【0021】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、第1走行部11は、上下方向Zに沿う第1軸心A1回りに回転自在に本体部13に連結され、第2走行部12は、上下方向Zに沿う第2軸心A2回りに回転自在に本体部13に連結されている。そのため、図5に示すように、台車10が直線区間71、カーブ区間72、別の直線区間71を順に走行する際に、第1走行部11や第2走行部12の姿勢(上下方向Zに沿う軸心回りの姿勢)を適宜変化させて、台車10を円滑に走行させることが可能となっている。なお、第1軸心A1及び第2軸心A2はいずれも仮想軸心であり、第1軸心A1は、第1走行部11における幅方向Yの中心位置に配置され、第2軸心A2は、第2走行部12における幅方向Yの中心位置に配置されている。
【0022】
図1に示すように、台車10は、案内輪40を備えている。案内輪40は、案内レール83に対して幅方向Yの一方側から接触して転動するように設けられている(図2参照)。案内輪40は、上下方向Zに沿う軸心回りに回転する(ここでは、遊転する)ように設けられており、案内レール83における幅方向Yの一方側を向く面(ここでは、鉛直面)に接触して転動する。本実施形態では、第1走行部11及び第2走行部12のそれぞれに案内輪40が設けられている。ここで、第1走行部11に設けられた案内輪40を後案内輪41といい、第2走行部12に設けられた案内輪40を前案内輪42という。本実施形態では、後案内輪41及び前案内輪42は、いずれも、走行方向Xに並ぶように2つ設けられている。
【0023】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、第1走行部11は、幅方向Yに並ぶ右後補助輪52及び左後補助輪51を備え、第2走行部12は、幅方向Yに並ぶ右前補助輪54及び左前補助輪53を備えている。右後補助輪52、左後補助輪51、右前補助輪54、及び左前補助輪53は、走行レール80に対して幅方向Yの一方側から接触して転動するように設けられている。左後補助輪51、右後補助輪52、左前補助輪53、及び右前補助輪54は、上下方向Zに沿う軸心回りに回転する(ここでは、遊転する)ように設けられている。そして、右前補助輪54及び右後補助輪52は、右レール82における幅方向Yの中央側(一対の走行レール80の間の幅方向Yの中央部に近づく側)を向く面(ここでは、水平面)に接触して転動し、左前補助輪53及び左後補助輪51は、左レール81における幅方向Yの中央側を向く面(ここでは、水平面)に接触して転動する。このように、右レール82は、右後補助輪52及び右前補助輪54の組に対応する走行レール80であり、左レール81は、左後補助輪51及び左前補助輪53の組に対応する走行レール80である。本実施形態では、右後補助輪52、左後補助輪51、右前補助輪54、及び左前補助輪53は、いずれも、走行方向Xに並ぶように2つ設けられている。
【0024】
台車10が直線区間71を走行する場合には、右前輪24及び右後輪22が右レール82に接触して転動すると共に、左前輪23及び左後輪21が左レール81に接触して転動し、案内輪40が案内レール83から離間する。上述したように、直線区間71における境界B側の一部を除き、案内レール83は直線区間71には設置されていない。
【0025】
本実施形態では、台車10が直線区間71を走行する場合には、右後補助輪52及び右前補助輪54(本実施形態では、2つの右後補助輪52及び2つの右前補助輪54)が右レール82に対して幅方向Yの中央側から接触し、且つ、左後補助輪51及び左前補助輪53(本実施形態では、2つの左後補助輪51及び2つの左前補助輪53)が左レール81に対して幅方向Yの中央側から接触する。これにより、第1走行部11の第1軸心A1回りの回転及び第2走行部12の第2軸心A2回りの回転が、一対の走行レール80により規制されて、第1走行部11及び第2走行部12の姿勢(すなわち、台車10の姿勢)が、一対の走行レール80に沿って走行する姿勢に維持される。
【0026】
台車10がカーブ区間72を走行する場合には、右前輪24及び右後輪22の組と左前輪23及び左後輪21の組との一方が、対応する走行レール80に接触して転動する接触輪20Aとなると共に、右前輪24及び右後輪22の組と左前輪23及び左後輪21の組との他方が、対応する走行レール80から離間する離間輪20Bとなり、更に、案内輪40(本実施形態では、後案内輪41及び前案内輪42)が案内レール83に接触して転動する。図3及び図4、並びに後に参照する図6図8、及び図10では、カーブ区間72に進入する前の車輪について、当該カーブ区間72において接触輪20Aとなる車輪には符号“20A”を付し、当該カーブ区間72において離間輪20Bとなる車輪には符号“20B”を付している。
【0027】
台車10がカーブ区間72を走行する場合には、台車10の姿勢を、離間輪20Bが当該離間輪20Bに対応する走行レール80から離間した姿勢に維持できる側から、案内輪40が案内レール83に対して接触する。本実施形態では、案内レール83は、一対の走行レール80に対して上側Z2に配置されている。そのため、図2に示すように、案内輪40は、案内レール83に対して、幅方向Yにおける接触輪20Aの側から接触する。図3に示すように、本実施形態では、カーブ区間72には、接触輪20Aに対応する走行レール80(ここでは、左レール81)だけでなく、離間輪20Bに対応する走行レール80(ここでは、右レール82)も設置されている。本実施形態では、図2に示すように、カーブ区間72においては、離間輪20Bに対応する走行レール80(ここでは、右レール82)の上面に凹部を形成することで、カーブ区間72において離間輪20Bを対応する走行レール80から離間させている。
【0028】
本実施形態では、台車10がカーブ区間72を走行する場合には、案内輪40が案内レール83に対して接触し、且つ、接触輪20Aに対応する走行レール80に、右後補助輪52及び右前補助輪54の組又は左後補助輪51及び左前補助輪53の組が接触する。図3に示すように、台車10が、接触輪20Aに対応する走行レール80が左レール81となるカーブ区間72を走行する場合には、案内輪40が案内レール83に対して接触し、且つ、左後補助輪51及び左前補助輪53の組が左レール81に接触する(図2及び図4参照)。これにより、第1走行部11の第1軸心A1回りの回転及び第2走行部12の第2軸心A2回りの回転が、案内レール83及び接触輪20Aに対応する走行レール80により規制されて、第1走行部11及び第2走行部12の姿勢が、一対の走行レール80に沿って走行する姿勢に維持される。
【0029】
本実施形態では、台車10がカーブ区間72を走行する場合には、更に、離間輪20Bに対応する走行レール80に、右後補助輪52及び右前補助輪54の組又は左後補助輪51及び左前補助輪53の組が接触する。図3に示すように、台車10が、接触輪20Aに対応する走行レール80が左レール81となるカーブ区間72を走行する場合には、右後補助輪52及び右前補助輪54の組が右レール82に接触する(図2及び図4参照)。よって、第1走行部11の第1軸心A1回りの回転及び第2走行部12の第2軸心A2回りの回転は、離間輪20Bに対応する走行レール80によっても規制される。
【0030】
本実施形態では、台車10がカーブ区間72を走行する場合には、右レール82及び左レール81のうちの幅方向Yの内側(旋回中心に近づく側)に配置される走行レール80に、右前輪24及び右後輪22の組又は左前輪23及び左後輪21の組が接触する。言い換えれば、右前輪24及び右後輪22の組と左前輪23及び左後輪21の組とのうちの、カーブ区間72において内輪となる組が、接触輪20Aとなり、カーブ区間72において外輪となる組が、離間輪20Bとなる。そして、案内輪40は、案内レール83に対して幅方向Yの内側から接触する。例えば、図3に示すように、台車10が、左レール81が右レール82に対して幅方向Yの内側に配置されるカーブ区間72(左カーブ区間)を走行する場合には、内輪となる左前輪23及び左後輪21の組が接触輪20Aとなり、外輪となる右前輪24及び右後輪22の組が離間輪20Bとなる。図示は省略するが、台車10が、右レール82が左レール81に対して幅方向Yの内側に配置されるカーブ区間72(右カーブ区間)を走行する場合には、内輪となる右前輪24及び右後輪22の組が接触輪20Aとなり、外輪となる左前輪23及び左後輪21の組が離間輪20Bとなる。
【0031】
図1に示すように、第1走行部11は、右後輪22と左後輪21とを同速で回転させる第1駆動部M1(例えば、サーボモータ等の電動モータ)を備え、第2走行部12は、右前輪24と左前輪23とを同速で回転させる第2駆動部M2(例えば、サーボモータ等の電動モータ)を備えている。右後輪22及び左後輪21は、互いに同径に形成されており、右後輪22及び左後輪21が第1駆動部M1により同速で回転駆動されることで、第1走行部11が一対の走行レール80に沿って走行する。また、右前輪24及び左前輪23は、互いに同径に形成されており、右前輪24及び左前輪23が第2駆動部M2により同速で回転駆動されることで、第2走行部12が一対の走行レール80に沿って走行する。なお、台車10の構成はこれに限定されず、例えば、第2走行部12が第2駆動部M2を備えず、右前輪24及び左前輪23が遊転する構成とすることもできる。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、第1走行部11は、後案内輪41を幅方向Yに移動させる第3駆動部M3(例えば、ソレノイドや電動モータ)を備え、第2走行部12は、前案内輪42を幅方向Yに移動させる第4駆動部M4(例えば、ソレノイドや電動モータ)を備えている。カーブ区間72が左カーブ区間と右カーブ区間とのいずれの場合であっても、第3駆動部M3及び第4駆動部M4の駆動により、後案内輪41及び前案内輪42の幅方向Yの位置を、案内レール83に対して幅方向Yの内側から接触する位置に切り替えることができる。
【0033】
図12に示すように、レール検査装置1は、制御部60を備えている。制御部60の各機能は、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。制御部60は、台車10に設けられても、台車10とは独立に設けられてもよい。また、制御部60の一部が台車10に設けられ、制御部60の残りの部分が台車10とは独立に設けられてもよい。
【0034】
制御部60は、台車10の走行動作を制御する。本実施形態では、制御部60は、第1走行部11及び第2走行部12の走行動作を制御する。具体的には、制御部60は、第1駆動部M1の駆動を制御することで、第1走行部11の走行動作を制御し、第2駆動部M2の駆動を制御することで、第2走行部12の走行動作を制御する。
【0035】
また、制御部60は、台車10が直線区間71からカーブ区間72に進入する際に、第3駆動部M3及び第4駆動部M4の駆動を制御することで、当該カーブ区間72の構造に応じて後案内輪41及び前案内輪42の幅方向Yの位置を切り替える。具体的には、制御部60は、進入先のカーブ区間72が左カーブ区間である場合には(図3参照)、後案内輪41及び前案内輪42を左側(台車10の進行方向を向いて左側)に移動させ、進入先のカーブ区間72が右カーブ区間である場合には、後案内輪41及び前案内輪42を右側(台車10の進行方向を向いて右側)に移動させることで、後案内輪41及び前案内輪42の幅方向Yの位置を、案内レール83に対して幅方向Yの内側から接触する位置に切り替える。
【0036】
本実施形態では、制御部60は、右後輪22及び左後輪21の回転速度を目標回転速度に合わせるように制御して、第1走行部11を走行させるように構成されている。具体的には、制御部60は、右後輪22及び左後輪21の回転速度を目標回転速度に合わせるための駆動指令を生成し、当該駆動指令を第1駆動部M1に出力する。この駆動指令は、速度指令又は位置指令とされる。位置指令は、例えば、速度指令を積分して生成される。第1駆動部M1は、右後輪22及び左後輪21を回転させるモータ部と、制御部60から入力される駆動指令に追従するようにフィードバック制御によりモータ部を駆動するアンプ部と、を備えており、右後輪22及び左後輪21の回転速度を目標回転速度に合わせるように右後輪22及び左後輪21を回転させる。
【0037】
本実施形態では、制御部60は、第1走行部11の走行に従動するように第2走行部12を走行させるように構成されている。すなわち、制御部60は、第1駆動部M1による右後輪22及び左後輪21の駆動状態に応じて従動的に、第2駆動部M2による右前輪24及び左前輪23の駆動状態を制御することで、第1走行部11の走行に従動するように第2走行部12を走行させる。例えば、制御部60は、第1走行部11の走行に従動して第2走行部12が走行するように、第2駆動部M2による右前輪24及び左前輪23の駆動トルクを制御する。制御部60が、第2駆動部M2による右前輪24及び左前輪23の駆動トルクがゼロとなるように制御(トルクフリー制御)することで、第1走行部11の走行に従動するように第2走行部12を走行させてもよい。
【0038】
本実施形態では、レール検査装置1は、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、右後輪22及び左後輪21の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、を測定する測定部Sを備えている。すなわち、レール検査装置1は、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する測定部Sを備えており、当該測定部Sは、右後輪22及び左後輪21の回転速度又は当該回転速度に比例する速度も測定する。図12に示す例では、第1駆動部M1に、右後輪22及び左後輪21の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する第1測定部S1(例えば、エンコーダ)が設けられていると共に、第2駆動部M2に、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する第2測定部S2(例えば、エンコーダ)が設けられており、レール検査装置1は、これらの第1測定部S1及び第2測定部S2を測定部Sとして用いている。すなわち、レール検査装置1は、第1測定部S1及び第2測定部S2を含む測定部Sを備えている。上述したように、第1駆動部M1は、フィードバック制御を行うように構成されており、第1測定部S1は、当該フィードバック制御に用いられるフィードバック値を取得するために第1駆動部M1に設けられている。
【0039】
ところで、台車10が、図3に示すような曲率が一定のカーブ区間72に進入してから退出するまでの間には、台車10の姿勢は、図5に示すように、第0姿勢P0、第1姿勢P1、第2姿勢P2、第3姿勢P3、第4姿勢P4、第5姿勢P5、第6姿勢P6、及び第7姿勢P7に順に変化する。以下では、左前補助輪53及び左後補助輪51の位置を基準に台車10の各姿勢を定義しているが、左前補助輪53及び左後補助輪51を右前補助輪54及び右後補助輪52に置き換えて台車10の各姿勢を定義してもよい。
【0040】
第0姿勢P0は、2つの左前補助輪53のうちの前側X1の左前補助輪53が第1境界B1に到達する時点の台車10の姿勢である。図3に示すように、第1境界B1は、カーブ区間72と当該カーブ区間72に対して後側X2の直線区間71との境界Bであり、後述する第2境界B2は、カーブ区間72と当該カーブ区間72に対して前側X1の直線区間71との境界Bである。第1姿勢P1は、2つの左前補助輪53のうちの後側X2の左前補助輪53が第1境界B1に到達する時点の台車10の姿勢である。第2姿勢P2は、2つの左後補助輪51のうちの前側X1の左後補助輪51が第1境界B1に到達する時点の台車10の姿勢である。第3姿勢P3は、2つの左後補助輪51のうちの後側X2の左後補助輪51が第1境界B1に到達する時点の台車10の姿勢である。
【0041】
第4姿勢P4は、2つの左前補助輪53のうちの前側X1の左前補助輪53が第2境界B2に到達する時点の台車10の姿勢である。第5姿勢P5は、2つの左前補助輪53のうちの後側X2の左前補助輪53が第2境界B2に到達する時点の台車10の姿勢である。第6姿勢P6は、2つの左後補助輪51のうちの前側X1の左後補助輪51が第2境界B2に到達する時点の台車10の姿勢である。第7姿勢P7は、2つの左後補助輪51のうちの後側X2の左後補助輪51が第2境界B2に到達する時点の台車10の姿勢である。
【0042】
台車10が直線区間71からカーブ区間72に入る際には、右前輪24及び左前輪23のカーブ区間72への進入に伴い、台車10の姿勢が第0姿勢P0から第1姿勢P1に変化する。このような台車10の姿勢の変化に伴い、前輪回転速度VF(右前輪24及び左前輪23の回転速度)と後輪回転速度VR(右後輪22及び左後輪21の回転速度)との差である前後輪速度差VDは、ゼロ或いはゼロに近い値から、カーブ区間72の曲率に応じて定まる値に変化する。ここでは、前輪回転速度VFから後輪回転速度VRを減算した値を、後輪回転速度VRで除算した値を、前後輪速度差VDとする。本実施形態では、右前輪24及び左前輪23のうちの内輪となる方が、対応する走行レール80に接触して転動するため、図7の下側のグラフに示すように、台車10の姿勢が第0姿勢P0から第1姿勢P1に変化するのに伴い、前輪回転速度VFが後輪回転速度VRに対して低下する。
【0043】
図7の下側のグラフは、台車10がカーブ区間72を含む走行経路70を走行する際の、前輪回転速度VF、後輪回転速度VR、及び前後輪速度差VDの時間変化の一例を示している(後に参照する図9及び図11においても同様)。図7は、後輪回転速度VRが第2速度V2に制御されている状態で、台車10がカーブ区間72に入る状況を示しており、右前輪24及び左前輪23が直線区間71からカーブ区間72に入る時期であるカーブ進入時期T2以降、後輪回転速度VRが第2速度V2に維持されている状態で、前輪回転速度VFが第2速度V2から第1速度V1に近い速度まで低下している。これに伴い、カーブ進入時期T2以降、前後輪速度差VDが、ゼロ或いはゼロに近い値から大きく(具体的には、負側に大きく)なっている。ここで、前後輪速度差VDが負の第1しきい値を負側に超えた場合に出力される信号を第1出力信号G1とし、前後輪速度差VDが正の第2しきい値を正側に超えた場合に出力される信号を第2出力信号G2とする。図7の上側のグラフは、第1出力信号G1及び第2出力信号G2の時間変化の一例を示しており、“1”の値が、信号が出力されていることを示している(後に参照する図9及び図11においても同様)。
【0044】
上記のように前後輪速度差VDがゼロ或いはゼロに近い値から負側に大きくなった後、右後輪22及び左後輪21のカーブ区間72への進入に伴い、台車10の姿勢が第2姿勢P2から第3姿勢P3に変化する。このような台車10の姿勢の変化に伴い、前後輪速度差VDは、ゼロ或いはゼロに近い値まで低下する。図7では、台車10の幅方向Yの中央部の速度変化を小さく抑えるために、台車10の姿勢が第2姿勢P2から第3姿勢P3に変化する期間に、後輪回転速度VRを第2速度V2から第1速度V1まで低下させている。その後、台車10の姿勢が第3姿勢P3から第4姿勢P4に変化する期間では、後輪回転速度VRが第1速度V1に維持されている。
【0045】
台車10がカーブ区間72から直線区間71に入る際には、右前輪24及び左前輪23の直線区間71への進入に伴い、台車10の姿勢が第4姿勢P4から第5姿勢P5に変化する。このような台車10の姿勢の変化に伴い、前輪回転速度VFが後輪回転速度VRに対して上昇する。図7に示す例では、後輪回転速度VRが第1速度V1に維持されている状態で、前輪回転速度VFが第1速度V1から第2速度V2に近い速度まで上昇している。これに伴い、前後輪速度差VDは、ゼロ或いはゼロに近い値から大きく(具体的には、正側に大きく)なっている。
【0046】
上記のように前後輪速度差VDがゼロ或いはゼロに近い値から正側に大きくなった後、右後輪22及び左後輪21の直線区間71への進入に伴い、台車10の姿勢が第6姿勢P6から第7姿勢P7に変化する。このような台車10の姿勢の変化に伴い、前後輪速度差VDは、ゼロ或いはゼロに近い値まで低下する。図7では、台車10の幅方向Yの中央部の速度変化を小さく抑えるために、台車10の姿勢が第6姿勢P6から第7姿勢P7に変化する期間に、後輪回転速度VRを第1速度V1から第2速度V2まで上昇させている。
【0047】
次に、案内レール83の設置位置が適正範囲内であるか否かの検査について説明する。図12に示すように、レール検査装置1は、接触時期判定処理とカーブ進入時期判定処理とレール検査処理とを実行する判定部61を備えている。上述したように、本実施形態では、レール検査装置1が備える台車10は、物品2を保持して搬送する搬送車であり、判定部61は、例えば、搬送車の走行中に、接触時期判定処理、カーブ進入時期判定処理、及びレール検査処理を実行する。
【0048】
判定部61は、接触時期判定処理を実行する接触時期判定部62と、カーブ進入時期判定処理を実行するカーブ進入時期判定部63と、レール検査処理を実行するレール検査部64と、を備えている。判定部61が備えるこれら複数の機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことが可能に構成されている。なお、これら複数の機能部は、少なくとも論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。
【0049】
本実施形態では、制御部60が判定部61を備えており、制御部60が備える演算処理装置が、記憶部に記憶されている各プログラムを実行することで、接触時期判定部62としての機能(接触時期判定機能)と、カーブ進入時期判定部63としての機能(カーブ進入時期判定機能)と、レール検査部64としての機能(レール検査機能)とが実現される。
【0050】
接触時期判定処理は、案内輪40が案内レール83に接触した時期である接触時期T1を判定する処理である。台車10が直線区間71を走行する場合には案内輪40が案内レール83から離間し、台車10がカーブ区間72を走行する場合には案内輪40が案内レール83に接触して転動するため、台車10が直線区間71からカーブ区間72に入る過程で、案内輪40が案内レール83に接触する。本実施形態では、案内輪40(具体的には、前案内輪42)の案内レール83への接触時の衝撃によって生じる前輪回転速度VFの振動に基づいて、接触時期T1を判定する。
【0051】
具体的には、本実施形態では、レール検査装置1は、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する測定部Sを備えている。そして、接触時期判定処理では、測定部Sにより検出される前輪回転速度VF又は前輪回転速度VFに比例する速度の振動が生じた時期(例えば、生じ始めた時期)を、接触時期T1と判定する(図9図11参照)。このように、本実施形態では、判定部61(具体的には、接触時期判定部62)は、測定部Sにより検出される速度の振動が生じた時期を接触時期T1と判定する。
【0052】
カーブ進入時期判定処理は、右前輪24及び左前輪23が直線区間71からカーブ区間72に入った時期であるカーブ進入時期T2を判定する処理である。上述したように、右前輪24及び左前輪23が直線区間71からカーブ区間72に入る時期であるカーブ進入時期T2以降、前後輪速度差VDがゼロ或いはゼロに近い値から負側又は正側に大きくなる。本実施形態では、カーブ進入時期T2以降、前後輪速度差VDがゼロ或いはゼロに近い値から負側に大きくなる。本実施形態では、カーブ進入時期T2以降に大きくなる前後輪速度差VDに基づいて、カーブ進入時期T2を判定する。
【0053】
具体的には、本実施形態では、レール検査装置1は、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、右後輪22及び左後輪21の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、を測定する測定部Sを備えている。そして、カーブ進入時期判定処理では、測定部Sの検出結果に基づく前後輪速度差VDが規定値以上となった時期を、カーブ進入時期T2と判定する(図7参照)。本実施形態では、前後輪速度差VDが負側に規定値以上となった時期を、カーブ進入時期T2と判定する。すなわち、第1出力信号G1が出力された時期を、カーブ進入時期T2と判定する。このように、本実施形態では、判定部61は、測定部Sの検出結果に基づく、右前輪24及び左前輪23の回転速度と右後輪22及び左後輪21の回転速度との差である前後輪速度差VDが規定値以上となった時期をカーブ進入時期T2と判定する。
【0054】
図7には、前後輪速度差VDとして、右前輪24及び左前輪23の回転速度と右後輪22及び左後輪21の回転速度との差の値を、薄い破線で示し、当該差の値から高周波成分を除去した値を、濃い破線で示している(後に参照する図9及び図11においても同様)。カーブ進入時期T2をより適切に判定するために、判定部61が、前後輪速度差VDとして、右前輪24及び左前輪23の回転速度と右後輪22及び左後輪21の回転速度との差の値から高周波成分を除去した値を用いてカーブ進入時期判定処理を行う構成とすると好適である。
【0055】
図6に示すように、本実施形態では、案内レール83におけるカーブ区間72に配置されている部分は、幅方向Yにおける案内輪40が接触する側(本実施形態では、幅方向Yの内側)に、上下方向Z視でカーブ区間72の曲線形状に沿う案内面83Bを備えている。また、本実施形態では、案内レール83における直線区間71に配置されている部分は、幅方向Yにおける案内輪40が接触する側(本実施形態では、幅方向Yの内側)に、上下方向Z視で走行方向Xに対して傾斜したテーパ面83Aを備えている。テーパ面83Aは、上下方向Z視で、境界Bから走行方向Xに離れるに従って案内輪40の移動軌跡から離れる側(本実施形態では、幅方向Yの外側(旋回中心から離れる側))へ向かうように傾斜している。このようなテーパ面83Aを備えることで、図8に示すように、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して幅方向Yの一方側(本実施形態では、幅方向Yの内側)にずれている場合に、案内輪40をテーパ面83Aの作用によって案内面83Bに案内することが可能となっている。
【0056】
レール検査処理は、カーブ進入時期T2と接触時期T1との前後関係に基づいて、案内レール83の設置位置が適正範囲内であるか否かを判定する処理である。上述したように、本実施形態では、案内レール83は、一対の走行レール80に対して上側Z2に配置されている。そのため、図8に示すように、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して幅方向Yにおける接触輪20Aの側(図8に示す例では、幅方向Yの内側)にずれている場合には、右前輪24及び左前輪23が境界Bに到達する時点よりも前の時点で、案内輪40(本実施形態では、前案内輪42)が案内レール83のテーパ面83Aに接触する(図8において破線で示す前案内輪42を参照)。この結果、図9に示すように、接触時期T1は、カーブ進入時期T2に対して前の時期となり、案内レール83の設置位置が幅方向Yにおける接触輪20Aの側の位置になるに従って、接触時期T1はカーブ進入時期T2に対してより前の時期となる。
【0057】
このようなカーブ進入時期T2と接触時期T1との関係に着目して、本実施形態では、レール検査処理では、接触時期T1が、カーブ進入時期T2に対して、予め定めた判定範囲を超えて前であった場合、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける接触輪20Aの側にずれていると判定するように構成されている。なお、図9に示すように、前輪回転速度VFと後輪回転速度VRとの差の値から高周波成分を除去することで、案内輪40の案内レール83(具体的には、テーパ面83A)への接触時の衝撃によって生じる前輪回転速度VFの振動を、前後輪速度差VDから除去する(或いは、実質的に除去する)ことができる。これにより、第1出力信号G1に基づきカーブ進入時期T2をより適切に判定することができる。なお、図9に示す第1出力信号G1は、高周波成分を除去する前の前後輪速度差VDに対応する信号であるため、第1出力信号G1は、カーブ進入時期T2だけでなく接触時期T1においても出力されているが、前輪回転速度VFと後輪回転速度VRとの差の値から高周波成分を除去した値を前後輪速度差VDとして用いることで、第1出力信号G1が、接触時期T1には出力されずにカーブ進入時期T2において出力されるようにすることができる。
【0058】
一方、図6に示すように、案内レール83の設置位置が適正範囲内である場合には、右前輪24及び左前輪23が境界Bに到達するのに合わせて、案内輪40(本実施形態では、前案内輪42)が案内レール83に接触する(図6において破線で示す前案内輪42を参照)。よって、案内レール83の設置位置が適正範囲内である場合には、接触時期T1とカーブ進入時期T2との時期的な前後関係は、規定の範囲内となる。本実施形態では、案内レール83の設置位置が適正範囲内である場合には、図7に示すように、接触時期T1とカーブ進入時期T2とは同程度の時期となる。なお、図6に示すように、案内輪40が、案内レール83におけるテーパ面83Aと案内面83Bとの境界部分に接触する場合、図7に示すように、案内輪40の案内レール83への接触時の衝撃によって生じる前輪回転速度VFの振動は小さい。案内輪40の案内レール83への接触時の衝撃によって生じる前輪回転速度VFの振動が非常に小さい場合等、案内輪40の案内レール83への接触に伴う前輪回転速度VFの振動を、右前輪24及び左前輪23のカーブ区間72への進入に伴う前輪回転速度VFの変化と区別できない(言い換えれば、分離できない)場合には、例えば、判定部61が、カーブ進入時期T2と同じ時期を接触時期T1と判定する構成とすることができる。
【0059】
本実施形態では、案内レール83は、一対の走行レール80に対して上側Z2に配置されている。そのため、図10に示すように、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して幅方向Yにおける離間輪20Bの側(図10に示す例では、幅方向Yの外側)にずれている場合には、右前輪24及び左前輪23が境界Bに到達した時点よりも後の時点で、案内輪40(本実施形態では、前案内輪42)が案内レール83の案内面83Bに接触する(図10において破線で示す前案内輪42を参照)。そのため、接触時期T1は、カーブ進入時期T2に対して後の時期となるが、本実施形態では、カーブ進入時期T2の判定が、案内レール83による案内輪40の案内作用による台車10の挙動変化(具体的には、前後輪速度差VDの変化)に基づき行われる。そのため、本実施形態では、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して幅方向Yにおける離間輪20Bの側にずれている場合であっても、案内レール83の設置位置が適正範囲内である場合と同様に、カーブ進入時期T2と接触時期T1とは同程度の時期であると判定される。
【0060】
このようなカーブ進入時期T2と接触時期T1との関係に着目して、本実施形態では、レール検査処理では、接触時期T1とカーブ進入時期T2との差が、予め定めた判定範囲内である場合に、案内レール83の設置位置が適正範囲内、又は、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける離間輪20Bの側にずれていると判定するように構成されている。ここでの、判定範囲の大きさは、例えば、上述した判定範囲と同じ大きさとすることができる。
【0061】
なお、上述したように、案内レール83の設置位置が適正範囲内である場合には、案内輪40の案内レール83への接触時の衝撃によって生じる前輪回転速度VFの振動は小さい。一方、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して幅方向Yにおける離間輪20Bの側にずれている場合には、図10に示すように、前側X1の前案内輪42が案内面83Bに接触した際に、後側X2の前案内輪42と案内面83Bとの間に形成される隙間3の存在によって第2走行部12が第2軸心A2回りに揺動することで、案内レール83の設置位置が適正範囲内である場合に比べて大きな振動が前輪回転速度VFに現れる(図10参照)。この点に鑑みて、レール検査処理において、接触時期T1とカーブ進入時期T2との差が予め定めた判定範囲内である場合に、前輪回転速度VFに現れる振動の大きさが規定のしきい値以上である場合には、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける離間輪20Bの側にずれていると判定し、前輪回転速度VFに現れる振動の大きさが当該しきい値未満である場合には、案内レール83の設置位置が適正範囲内であると判定する構成とすることもできる。
【0062】
〔その他の実施形態〕
次に、レール検査装置のその他の実施形態について説明する。
【0063】
(1)上記の実施形態では、レール検査装置1が、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する測定部Sを備え、判定部61が、測定部Sにより検出される速度の振動が生じた時期を接触時期T1と判定する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、レール検査装置1が、案内輪40(具体的には、前案内輪42)の回転速度の検出結果或いは台車10の振動の検出結果等に基づいて、接触時期T1を判定する構成とすることもできる。
【0064】
(2)上記の実施形態では、レール検査装置1が、右前輪24及び左前輪23の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、右後輪22及び左後輪21の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、を測定する測定部Sを備え、判定部61が、測定部Sの検出結果に基づく、右前輪24及び左前輪23の回転速度と右後輪22及び左後輪21の回転速度との差である前後輪速度差VDが規定値以上となった時期をカーブ進入時期T2と判定する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、第1境界B1に対応する位置に設けられた被検出体を台車10(具体的には、台車10に設けられた検出装置)が検出した時期を、カーブ進入時期T2と判定する構成や、台車10の現在の推定位置である推定現在位置に基づき、カーブ進入時期T2を判定する構成等とすることができる。台車10の推定現在位置は、例えば、アドレス情報(走行方向Xに沿った位置を示す情報)を保持する情報保持体を台車10(具体的には、台車10に設けられた読取装置)が読み取ってからの、台車10の走行距離(例えば、ロータリエンコーダを用いて計測される走行距離)に基づき導出される。
【0065】
このように、カーブ進入時期T2の判定を、案内レール83による案内輪40の案内作用による台車10の挙動変化(具体的には、前後輪速度差VDの変化)に基づき行わない場合には、レール検査処理において以下のように判定する構成としてもよい。具体的には、レール検査処理では、接触時期T1とカーブ進入時期T2との差が、予め定めた判定範囲内である場合に、案内レール83の設置位置が適正範囲内であると判定し、接触時期T1が、カーブ進入時期T2に対して、予め定めた判定範囲を超えて後であった場合、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける離間輪20Bの側にずれていると判定する。
【0066】
(3)上記の実施形態では、右前輪24及び右後輪22の組と左前輪23及び左後輪21の組とのうちの、カーブ区間72において内輪となる組が、接触輪20Aとなり、カーブ区間72において外輪となる組が、離間輪20Bとなる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、右前輪24及び右後輪22の組と左前輪23及び左後輪21の組とのうちの、カーブ区間72において外輪となる組が、接触輪20Aとなり、カーブ区間72において内輪となる組が、離間輪20Bとなる構成とすることもできる。この場合において、上記の実施形態と同様に案内レール83が一対の走行レール80に対して上側Z2に配置される場合、案内輪40は、案内レール83に対して幅方向Yの外側から接触する。
【0067】
(4)上記の実施形態では、案内レール83が、一対の走行レール80に対して上側Z2に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、案内レール83が、一対の走行レール80に対して下側Z1に配置される構成とすることもできる。例えば、上記の実施形態とは異なり、本体部13が第1走行部11及び第2走行部12に対して上側Z2に配置される場合に、このように案内レール83が一対の走行レール80に対して下側Z1に配置される構成とすることができる。案内レール83が一対の走行レール80に対して下側Z1に配置される場合、上記の実施形態とは異なり、案内輪40は、案内レール83に対して、幅方向Yにおける離間輪20Bの側から接触する。よって、この場合には、レール検査処理では、接触時期T1が、カーブ進入時期T2に対して、予め定めた判定範囲を超えて前であった場合、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける離間輪20Bの側にずれていると判定する構成とすると好適である。また、レール検査処理では、接触時期T1とカーブ進入時期T2との差が、予め定めた判定範囲内である場合に、案内レール83の設置位置が適正範囲内、又は、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける接触輪20Aの側にずれていると判定する構成とすると好適である。
【0068】
なお、カーブ進入時期T2の判定を、案内レール83による案内輪40の案内作用による台車10の挙動変化(具体的には、前後輪速度差VDの変化)に基づき行わない場合には、レール検査処理において以下のように判定する構成としてもよい。具体的には、レール検査処理では、接触時期T1とカーブ進入時期T2との差が、予め定めた判定範囲内である場合に、案内レール83の設置位置が適正範囲内であると判定し、接触時期T1が、カーブ進入時期T2に対して、予め定めた判定範囲を超えて後であった場合、案内レール83の設置位置が適正範囲に対して、幅方向Yにおける接触輪20Aの側にずれていると判定する。
【0069】
(5)上記の実施形態では、案内レール83が、上下方向Z視で一対の走行レール80の間の幅方向Yの中央部に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、案内レール83が、上下方向Z視で、一対の走行レール80の間の幅方向Yの中央部に対して幅方向Yの内側又は外側に配置される構成とすることもできる。この場合、上記の実施形態とは異なり、案内輪40(上記実施形態では、後案内輪41及び前案内輪42)の幅方向Yの位置が、幅方向Yの中央部に固定される構成としてもよい。
【0070】
(6)上記の実施形態では、台車10が、物品2を保持して搬送する搬送車である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、レール検査装置1が、案内レール83の設置位置が適正範囲内であるか否かの検査のための専用の台車10を備える構成とすることもできる。
【0071】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0072】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明したレール検査装置の概要について説明する。
【0073】
一対の走行レール及び案内レールに沿って走行方向に走行する台車を備えたレール検査装置であって、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、一対の前記走行レールは、前記幅方向に並んで互いに平行に配置されていると共に、前記走行方向が直線状となる直線区間と、前記走行方向が曲線状となるカーブ区間と、を備え、前記案内レールは、前記カーブ区間に少なくとも設置されていると共に、一対の前記走行レールに対して上下方向の異なる位置において一対の前記走行レールの少なくとも一方と平行に配置され、前記台車は、前記幅方向に並ぶ右前輪及び左前輪と、前記右前輪及び前記左前輪よりも前記走行方向の後側に配置され、前記幅方向に並ぶ右後輪及び左後輪と、案内輪と、を備え、前記右前輪及び前記右後輪は、一対の前記走行レールの一方である右レール上を転動するように設けられ、前記左前輪及び前記左後輪は、一対の前記走行レールの他方である左レール上を転動するように設けられ、前記案内輪は、前記案内レールに対して前記幅方向の一方側から接触して転動するように設けられ、前記台車が前記直線区間を走行する場合には、前記右前輪及び前記右後輪が前記右レールに接触して転動すると共に、前記左前輪及び前記左後輪が前記左レールに接触して転動し、前記案内輪が前記案内レールから離間し、前記台車が前記カーブ区間を走行する場合には、前記右前輪及び前記右後輪の組と前記左前輪及び前記左後輪の組との一方が、対応する前記走行レールに接触して転動する接触輪となると共に、前記右前輪及び前記右後輪の組と前記左前輪及び前記左後輪の組との他方が、対応する前記走行レールから離間する離間輪となり、更に、前記案内輪が前記案内レールに接触して転動し、接触時期判定処理とカーブ進入時期判定処理とレール検査処理とを実行する判定部を更に備え、前記接触時期判定処理は、前記案内輪が前記案内レールに接触した時期である接触時期を判定する処理であり、前記カーブ進入時期判定処理は、前記右前輪及び前記左前輪が前記直線区間から前記カーブ区間に入った時期であるカーブ進入時期を判定する処理であり、前記レール検査処理は、前記カーブ進入時期と前記接触時期との前後関係に基づいて、前記案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かを判定する処理である。
【0074】
本構成では、台車が直線区間を走行する場合には案内輪が案内レールから離間し、台車がカーブ区間を走行する場合には案内輪が案内レールに接触して転動するため、台車が直線区間からカーブ区間に入る過程で、案内輪が案内レールに接触する。案内レールの設置位置が適正範囲内である場合には、台車の右前輪及び左前輪が直線区間からカーブ区間に入るのに合わせて、案内輪が案内レールに接触する。この場合、案内輪が案内レールに接触する時期である接触時期と、右前輪及び左前輪が直線区間からカーブ区間に入る時期であるカーブ進入時期との時期的な前後関係が、規定の範囲内となる。一方、案内レールの設置位置が適正範囲内でない場合には、接触時期とカーブ進入時期との時期的な前後関係が、規定の範囲外となる。本構成によれば、このようなカーブ進入時期と接触時期との関係に着目して、カーブ進入時期と接触時期との前後関係に基づいて、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かを判定することができる。このように、本構成によれば、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かの検査を、台車の挙動に基づき行うことが可能となっている。
【0075】
ここで、前記案内レールは、一対の前記走行レールに対して上側に配置され、前記レール検査処理では、前記接触時期が、前記カーブ進入時期に対して、予め定めた判定範囲を超えて前であった場合、前記案内レールの設置位置が前記適正範囲に対して、前記幅方向における前記接触輪の側にずれていると判定すると好適である。
【0076】
案内レールが一対の走行レールに対して上側に配置されている場合、台車がカーブ区間を走行中は、台車の姿勢を、接触輪が対応する走行レールに接触すると共に離間輪が対応する走行レールから離間した姿勢に維持するために、案内輪は、案内レールに対して幅方向における接触輪の側から接触する。そのため、案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における接触輪の側にずれている場合、案内レールの設置位置が幅方向における接触輪の側の位置になるに従って、接触時期はカーブ進入時期に対してより前の時期となる。本構成によれば、このようなカーブ進入時期と接触時期との関係に着目して、案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における接触輪の側にずれていることを、適切に判定することができる。
【0077】
また、前記案内レールは、一対の前記走行レールに対して上側に配置され、前記レール検査処理では、前記接触時期と前記カーブ進入時期との差が、予め定めた判定範囲内である場合に、前記案内レールの設置位置が前記適正範囲内、又は、前記案内レールの設置位置が前記適正範囲に対して、前記幅方向における前記離間輪の側にずれていると判定すると好適である。
【0078】
上述したように、案内レールが一対の走行レールに対して上側に配置されている場合、台車がカーブ区間を走行中は、案内輪は、案内レールに対して幅方向における接触輪の側から接触する。そのため、案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における離間輪の側にずれている場合、案内レールの設置位置が幅方向における離間輪の側の位置になるに従って、接触時期はカーブ進入時期に対してより後の時期となる。但し、カーブ進入時期の判定を、案内レールによる案内輪の案内作用による台車の挙動変化に基づき行う場合、カーブ進入時期判定処理で判定されるカーブ進入時期は、接触時期と同様に、案内レールの設置位置が幅方向における離間輪の側の位置になるに従ってより後の時期となる。その結果、案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における離間輪の側にずれている場合であっても、案内レールの設置位置が適正範囲内である場合と同様に、カーブ進入時期と接触時期とは同程度の時期であると判定される。本構成によれば、カーブ進入時期の判定を、上記のように案内レールによる案内輪の案内作用による台車の挙動変化に基づき行う場合において、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか、案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における離間輪の側にずれているかの、いずれかであることを、適切に判定することができる。言い換えれば、案内レールの設置位置が適正範囲に対して幅方向における接触輪の側にずれていないことを、適切に判定することができる。
【0079】
また、前記右前輪及び前記左前輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する測定部を更に備え、前記判定部は、前記測定部により検出される速度の振動が生じた時期を前記接触時期と判定すると好適である。
【0080】
本構成によれば、案内輪の案内レールへの接触時の衝撃によって生じる、右前輪及び左前輪の回転速度の振動に基づいて、接触時期を適切に判定することができる。なお、台車が自走式の台車である場合には、右前輪及び左前輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度を測定する測定部が、台車の走行挙動を制御するために設けられている場合が多い。このような場合に、本構成によれば、追加のセンサ等を設けることなく、台車に既存の測定部を利用して接触時期の判定を行うことができる。
【0081】
また、前記右前輪及び前記左前輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、前記右後輪及び前記左後輪の回転速度又は当該回転速度に比例する速度と、を測定する測定部を更に備え、前記判定部は、前記測定部の検出結果に基づく、前記右前輪及び前記左前輪の回転速度と前記右後輪及び前記左後輪の回転速度との差である前後輪速度差が規定値以上となった時期を前記カーブ進入時期と判定すると好適である。
【0082】
台車が直線区間からカーブ区間に入る際には、右前輪及び左前輪のカーブ区間への進入に伴い、右前輪、左前輪、右後輪、及び左後輪が直線区間に配置された状態から、右前輪及び左前輪がカーブ区間に配置されると共に右後輪及び左後輪が直線区間に配置された状態に変化する。このような状態の変化に伴い、右前輪及び左前輪の回転速度と右後輪及び左後輪の回転速度との差である前後輪速度差は、ゼロ或いはゼロに近い値から、カーブ区間の曲率に応じて定まる値に変化する。本構成によれば、右前輪及び左前輪のカーブ区間への進入に伴う前後輪速度差のこのような変化を検出することで、カーブ進入時期を適切に判定することができる。
【0083】
上記の構成において、前記判定部は、前記前後輪速度差として、前記右前輪及び前記左前輪の回転速度と前記右後輪及び前記左後輪の回転速度との差の値から高周波成分を除去した値を用いて前記カーブ進入時期判定処理を行うと好適である。
【0084】
本構成によれば、カーブ進入時期の判定に用いる前後輪速度差を、右前輪及び左前輪の回転速度と右後輪及び左後輪の回転速度との差の値から細かい振動成分を除去した値とすることができるため、カーブ進入時期をより適切に判定することができる。
【0085】
また、前記台車は、物品を保持して搬送する搬送車であり、前記判定部は、前記搬送車の走行中に、前記接触時期判定処理、前記カーブ進入時期判定処理、及び前記レール検査処理を実行すると好適である。
【0086】
本構成によれば、案内レールの設置位置が適正範囲内であるか否かの検査のための専用の台車を用いることなく、物品を搬送する搬送車を当該検査のための台車として利用することができる。そして、この検査を、搬送車の走行中に行うことができるため、搬送車による物品の搬送を行いながら検査も行うことができる。
【0087】
本開示に係るレール検査装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0088】
1:レール検査装置
2:物品
10:台車
20A:接触輪
20B:離間輪
21:左後輪
22:右後輪
23:左前輪
24:右前輪
40:案内輪
61:判定部
71:直線区間
72:カーブ区間
80:走行レール
81:左レール
82:右レール
83:案内レール
S:測定部
T1:接触時期
T2:カーブ進入時期
VD:前後輪速度差
X:走行方向
X2:後側
Y:幅方向
Z:上下方向
Z2:上側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12